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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048122
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】電動制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/138 20060101AFI20230330BHJP
   F16D 65/28 20060101ALI20230330BHJP
   F16D 41/22 20060101ALI20230330BHJP
   F16D 41/02 20060101ALI20230330BHJP
   F16D 121/04 20120101ALN20230330BHJP
   F16D 125/34 20120101ALN20230330BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20230330BHJP
【FI】
B60T13/138 A
F16D65/28
F16D41/22
F16D41/02 Z
F16D121:04
F16D125:34
F16D121:24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145319
(22)【出願日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2021156613
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】榊原 優一
(72)【発明者】
【氏名】前野 良汰
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳
(72)【発明者】
【氏名】大竹 毅
(72)【発明者】
【氏名】小野田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】荒川 晴生
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
【Fターム(参考)】
3D048BB02
3D048BB45
3D048CC54
3D048HH15
3D048HH18
3D048NN01
3D048QQ07
3J058AA41
3J058BA44
3J058CC03
3J058CC15
3J058CC33
3J058CC63
3J058CC77
3J058FA01
(57)【要約】
【課題】制動力の発生中の電気モータの動力喪失により発生する衝撃を緩和する。
【解決手段】電動制動装置10は、電気モータ15から直動変換機構16への正方向の回転トルクの伝達に応じたピストン19の直動により同ピストン19が押圧を加えることで車輪13に制動力を発生させる。こうした電動制動装置10に、既定値以上の大きさの、正方向とは逆方向の回転トルクが加わったときに電気モータ15と直動変換機構16の間の回転トルクの伝達を切断するワンウェイクラッチ42を設けるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータにより発生させた回転トルクを直動変換機構に伝達し、前記直動変換機構により前記回転トルクをシリンダ内に設けられたピストンの直線方向の推進力に変換し、車両の車輪と共に回転する回転部に、前記ピストンの推進力に応じて作動する摩擦材を押し付けることで、前記車両に制動力を発生させる電動制動装置において、
前記電気モータと前記直動変換機構との間で前記回転トルクを相互に伝達するトルク伝達機構であって、前記摩擦材が前記回転部から離間する離間方向の前記回転トルクが既定値以上の大きさになると、前記回転トルクの伝達を切断するトルク伝達機構を備えている
電動制動装置。
【請求項2】
前記トルク伝達機構は、互いに噛み合う第1回転部と第2回転部とを有し、前記第1回転部には凹部が形成され、前記第2回転部に板ばねが設けられ、
前記板ばねが前記凹部に係合することにより前記回転トルクが伝達可能となり、前記離間方向の回転トルクが前記既定値以上の大きさになると前記板ばねの前記凹部への係合が解除される
請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項3】
前記トルク伝達機構は、前記直動変換機構と同直動変換機構に前記回転トルクを直接伝える回転部品との間に設けられている請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項4】
前記トルク伝達機構は、回転が禁止された状態となっているときに前記電気モータと前記直動変換機構との間の前記回転トルクの伝達を許容する一方で、前記離間方向の前記回転トルクが前記既定値以上の大きさになると回転が許容された状態となって前記電気モータと前記直動変換機構との間の前記回転トルクの伝達を切断する回転要素を有する請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項5】
前記トルク伝達機構は、
互いに対向する第1クラッチ部及び第2クラッチ部と、
前記第1クラッチ部における前記第2クラッチ部に対向する部分に設けられて前記第2クラッチ部に向う方向に突出する凸部と、
前記第2クラッチ部に設けられて前記凸部と係合する凹部と、
前記第1クラッチ部及び前記第2クラッチ部の一方を他方に向けて押圧する弾性部材と、
を有しており、
前記第1クラッチ部及び前記第2クラッチ部の一方は、前記回転要素と一体に回転し、他方は前記トルク伝達機構を収容するハウジング内に回転不能に設置されたものであり、
前記凸部及び前記凹部の少なくとも一方は、前記離間方向の回転トルクを前記弾性部材による押圧力に抗する抗力に変換する形状に成形され、
前記弾性部材の押圧により前記凹部が前記凸部と係合することにより、前記回転要素の回転が禁止され、
前記離間方向の回転トルクが前記既定値以上の大きさになると前記抗力が前記押圧力よりも大きくなって前記凸部と前記凹部との係合が解除される、
請求項4に記載の電動制動装置。
【請求項6】
前記トルク伝達機構は、前記モータと前記直動変換機構との間に同軸上に設けられる遊星歯車機構であり、前記回転要素は同遊星歯車機構のリングギアである請求項4に記載の電動制動装置。
【請求項7】
前記電気モータにより発生させる前記離間方向の回転トルクを、前記既定値未満となる範囲で制御をする制御部を備える請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電動制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータの動力で制動力を発生する電動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータを動力としたシリンダ内でのピストンの直線運動により制動力を発生する電動制動装置が知られている。電動制動装置には、ブレーキ液を介してピストンの押圧を摩擦部材に伝達して制動力を発生するウェット式の電動制動装置と、ピストンの押圧を摩擦部材に直接伝達して制動力を発生するドライ式の電動制動装置と、がある。
【0003】
こうした電動制動装置では、制動力の発生中に、電力失陥等により電気モータが動力を喪失すると、ピストンが押し戻される。そして、シリンダ内での直動範囲の端にピストンが突き当たったときの衝撃で、電動制動装置の構成部品の耐久性が損なわれる可能性がある。これに対して、特許文献1には、そうした衝撃から構成部品を保護するためのクラッチ機構を備えた電動制動装置が記載されている。同文献の電動制動装置が備えるクラッチ機構は、シリンダ内でのピストンが所定の位置を超えて押し戻されたときに、電気モータと直動変換機構との間の動力伝達経路を切断するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102018214188号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなクラッチ機構を設ければ、上記衝撃から電動制動装置の構成部品を保護することは可能ではある。しかしながら、そうしたクラッチ機構は、設置スペースや部品コストの点で、採用できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電動制動装置は、電気モータにより発生させた回転トルクを直動変換機構に伝達し、直動変換機構により回転トルクをシリンダ内に設けられたピストンの直線方向の推進力に変換し、車両の車輪と共に回転する回転部に、ピストンの推進力に応じて作動する摩擦材を押し付けることで、車両に制動力を発生させる。そして、同電動制動装置は、電気モータと直動変換機構との間で回転トルクを相互に伝達するトルク伝達機構であって、摩擦材が回転部から離間する離間方向の回転トルクが既定値以上の大きさになると、回転トルクの伝達を切断するトルク伝達機構を備えている。
【0007】
上記電動制動装置では、電気モータが回転トルクを発生すると、その回転トルクが直動変換機構に伝達される。伝達された回転トルクは、直動変換機構により、ピストンを直線運動させるための推進力に変換される。そして、ピストンの推進力に応じて作動する摩擦材を、回転部に押し付けることで、車輪に制動力を発生させている。制動力の発生中のピストンには、回転部への摩擦材の押圧に釣り合う反力が加わっている。以下の説明では、摩擦材を回転部に押し付ける方向のピストンの直線運動を同ピストンの前進と記載し、摩擦材が回転部から離間する方向のピストンの直線運動を同ピストンの後退と記載する。
【0008】
制動力の発生中に、電力失陥等によって電気モータが動力を喪失すると、上記反力により、ピストンが押し下げられて後退する。このときの後退方向へのピストンの直線運動は、直動変換機構により回転運動に変換される。これにより、電気モータ、直動変換機構間のトルク伝達経路上の各回転部品が連れ回りする。
【0009】
シリンダ内での直動範囲の端に突き当たるまでピストンが押し下げられると、ピストンは動作を停止する。後退中のピストンの停止には、ピストン及びピストンに連動して運動している各部材の運動エネルギの合計分のエネルギが必要となる。よって、ピストン停止時には、上記運動エネルギの合計分のエネルギを有した衝撃が発生する。
【0010】
一方、上記電動制動装置における電気モータ、直動変換機構間のトルク伝達経路には、摩擦材が回転部から離間する離間方向の回転トルクが既定値以上の大きさになると、回転トルクの伝達を切断するトルク伝達機構が設けられている。直動範囲の端に突き当たってピストンの後退が停止しても、トルク伝達経路上の各回転部品は、回転を継続しようとする。そのため、このときのトルク伝達機構には、離間方向の回転トルクが加わる。これにより、トルク伝達機構が回転トルクの伝達を切断すると、ピストンと共に運動を停止する部材が少なくなる。そしてその分、ピストンの停止時の衝撃に変換される運動エネルギが少なくなる。したがって、上記電動制動装置によれば、制動力の発生中の電気モータの動力喪失により発生する衝撃を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電動制動装置の第1実施形態の構成を模式的に示す図である。
図2図1の2-2線に沿ったねじ軸及び連結部材の断面図である。
図3】上記実施形態が備えるワンウェイクラッチの制動力発生時の状態を示す断面図である。
図4】同ワンウェイクラッチにおける離間方向の回転トルク入力時の状態を示す断面図である。
図5】第2実施形態の電動制動装置におけるワンウェイクラッチ及びその周辺部の断面図である。
図6】第3実施形態の電動制動装置の構成を模式的に示す図である。
図7】同電動制動装置が備えるワンウェイクラッチの分解斜視図である。
図8】リングギアの逆回転方向の回転トルクが加わっているときの凸部及び凹部の状態を示す図である。
図9】リングギアの正回転方向の回転トルクが加わっているときの凸部及び凹部の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、電動制動装置の第1実施形態を、図1図4に従って説明する。
<電動制動装置10の構成>
図1に示すように、電動制動装置10には、リザーバタンク11及びホイールシリンダ12に接続されている。リザーバタンク11は、ブレーキ液を貯留するタンクである。電動制動装置10は、ホイールシリンダ12の液圧を発生する。ホイールシリンダ12は、液圧の発生に応じて摩擦材12Aを作動させて、車輪13と共に回転する回転部であるブレーキディスク12Bに押し付けることで、車両の車輪13に制動力を発生させる。
【0013】
電動制動装置10は、シリンダ機構14、電気モータ15、直動変換機構16、及び回転伝達機構17を備えている。回転伝達機構17は、電気モータ15の回転を減速して直動変換機構16に伝達する。直動変換機構16は、回転伝達機構17を通じて伝達された電気モータ15により発生させた回転トルクを、シリンダ機構14に内蔵されたピストン19の直線方向の推進力に変換する。シリンダ機構14、電気モータ15、直動変換機構16、及び回転伝達機構17は、ハウジング10A内に収容されている。
【0014】
シリンダ機構14は、ハウジング10A内に形成されたシリンダ18と、シリンダ18内に直動自在に配置されたピストン19と、を有する。シリンダ18内には、ブレーキ液が導入される液室20がピストン19により区画形成されている。液室20の容積は、シリンダ18内でのピストン19の移動に応じて変化する。以下の説明では、液室20の容積を縮小する方向へのピストン19の移動を同ピストン19の前進と記載する。また、液室20の容積を拡大する方向へのピストン19の移動を同ピストン19の後退と記載する。さらに、ピストン19の直動方向のうち、ピストン19の前進側を前進方向F、ピストン19の後退側を後退方向Rと記載する。
【0015】
シリンダ18には、液室20を外部に連通するポートとして、入力ポート21及び出力ポート22の2つのポートが形成されている。そして、液室20は、入力ポート21を通じてリザーバタンク11に接続されている。また、液室20は、出力ポート22を通じてホイールシリンダ12に接続されている。出力ポート22は、シリンダ18内でのピストン19の移動位置に拘わらず、液室20に連通した状態が維持されるように形成されている。一方、入力ポート21は、ピストン19が最後退位置から一定量以上前進すると、液室20との連通がピストン19により遮断される。以下の説明では、入力ポート21が液室20に連通した状態と同連通をピストン19が遮断した状態とが切り替わるピストン19の移動位置を初期位置と記載する。
【0016】
電気モータ15は、回転子23と固定子24とを有している。回転子23には、モータ軸25が一体となって回転するように連結されている。一方、回転伝達機構17は、モータ軸25に固定された第1歯車26、第1歯車26に噛み合わされた第2歯車27、及び第2歯車27に噛み合わされた第3歯車28の3つの平歯車を有している。第3歯車28には、第1歯車26よりも歯数の多い歯車が用いられている。直動変換機構16には、第3歯車28を通じて、電気モータ15の回転が入力される。
【0017】
直動変換機構16は、ねじ軸29と、ねじ軸29の回転に応じて直動するナット30と、を有したボールねじ機構である。ナット30は、ピストン19に連結されている。ねじ軸29は、連結部材35を介して第3歯車28に接続されている。連結部材35は、第3歯車28と一体となって回転するように連結されている。一方、ねじ軸29と連結部材35との連結部には、ワンウェイクラッチ42が設けられている。詳細は後述するが、ワンウェイクラッチ42は、既定値TR以上の大きさの、正方向とは逆方向の回転トルクが加わると、ねじ軸29と連結部材35との間の回転トルクの伝達を切断する。なお、ここでの正方向の回転トルクとは、ピストン19を前進させる方向の回転トルクを表している。また、以下の説明では、正方向とは逆方向の回転トルクを負方向の回転トルクと記載する。
【0018】
なお、ピストン19が前進すると、ホイールシリンダ12の液圧が増加して、摩擦材12Aがブレーキディスク12Bに押し付けられる。一方、ピストン19が後退すると、ホイールシリンダ12の液圧が低下して、摩擦材12Aがブレーキディスク12Bから離間する。よって、上記負方向の回転トルクは、摩擦材12Aがブレーキディスク12Bから離間する離間方向の回転トルクである。
【0019】
なお、ナット30には、後退方向Rに突き出したストッパ30Aが形成されている。シリンダ18内でのピストン19の直動範囲における後退方向Rの端は、ナット30のストッパ30Aが第3歯車28と当接する位置となる。以下の説明では、ナット30のストッパ30Aが第3歯車28と当接するピストン19の位置を、同ピストン19の最後退位置と記載する。
【0020】
さらに、電動制動装置10は、制御部31を備えている。制御部31は、各種制御を実行する1つ又は複数のプロセッサと、制御用のプログラムやデータを記憶したメモリと、を備える電子制御装置である。制御部31には、ブレーキペダル32Aの踏込み量であるペダルストロークSを検出するストロークセンサ32の検出信号が入力されている。また、制御部31には、電動制動装置10がホイールシリンダ12に出力する液圧である出力液圧Pを検出する液圧センサ33の検出信号も入力されている。
【0021】
こうした電動制動装置10では、電気モータ15が正方向の回転トルクを発生すると、直動変換機構16により、その正方向の回転トルクが、前進方向Fのピストン19の推進力に変換される。こうした推進力が加わるとピストン19がシリンダ18内を前進して、液室20内のブレーキ液を押圧する。電動制動装置10は、液室20内のブレーキ液をピストン19が押圧してホイールシリンダ12の液圧を発生することで、車輪13に制動力を発生させる。制御部31は、電気モータ15が発生する正方向の回転トルクの調整により、車輪13に発生する制動力を制御している。詳細には、制動力の制御に際して制御部31はまず、ペダルストロークS等に基づき、出力液圧Pの目標値である目標液圧を決定する。続いて制御部31は、目標液圧分の出力液圧Pが得られる電気モータ15の電流値を演算して、演算した値分電流を電気モータ15に流す。さらに制御部31は、出力液圧Pの検出値と目標液圧との偏差に基づき、電気モータ15の電流値をフィードバック調整している。
【0022】
<ワンウェイクラッチ42の構成>
次に、図2図4を併せ参照して、直動変換機構16のねじ軸29と連結部材35との間に介設されたワンウェイクラッチ42の構成について説明する。
【0023】
図2は、図1の2-2線に沿ったねじ軸29及び連結部材35の断面構造を示している。図2に示すように、ねじ軸29における後退方向Rの端面には、円筒形状の挿入穴34が形成されている。そして、ねじ軸29及び連結部材35は、連結部材35の端部が挿入穴34内に挿入された状態で電動制動装置10に組付けられている。挿入穴34の内周には、ピストン19の直動方向に延びる、断面矩形の溝であるキー溝37が形成されている。また、連結部材35の外周にも、同様のキー溝36が形成されている。なお、第3歯車28は、キー溝37への係合を通じて、一体となって回転するように連結部材35に連結されている。
【0024】
連結部材35のキー溝36内には、板ばね38が設置されている。板ばね38は、V字状に折り曲げられた金属板であり、キー溝36に固定された固定部39と、固定部39から折り立てられた可動部40と、を有している。以下の説明では、ピストン19を前進させる側へのねじ軸29の回転方向を正回転方向とし、正回転方向とは逆のねじ軸29の回転方向を逆回転方向とする。図2図4の場合、図中の反時計回り方向が正回転方向となっている。板ばね38は、固定部39と可動部40との折り曲げ部分がキー溝36の逆回転方向の側壁付近に位置するように設置されている。そして、板ばね38は、可動部40に外力が加わっていない状態では、可動部40の先端部がキー溝36外に突き出すように形成されている。そのため、連結部材35に対するねじ軸29の相対回転位置が、両キー溝36、37が対向する既定の位置にあるときに、可動部40の先端部がキー溝37内に突出する。そして、これにより、連結部材35のキー溝36に設置された板ばね38が、ねじ軸29のキー溝37に係合する。
【0025】
図3に、連結部材35が正回転方向に回転しているときのワンウェイクラッチ42の状態を示す。図3に示すように、ねじ軸29に対して連結部材35が正回転方向に相対回転すると、板ばね38の可動部40の先端部が、ねじ軸29のキー溝37の正回転方向の側壁に当接する。これにより、板ばね38はキー溝37に係合した状態となる。こうした状態では、板ばね38を通じて、連結部材35からねじ軸29へと正方向の回転トルクが伝達される。
【0026】
図4に、連結部材35が逆回転方向に回転しているときのワンウェイクラッチ42の状態を示す。ねじ軸29に対して連結部材35が逆回転方向に相対回転すると、ねじ軸29のキー溝37の逆回転方向の側壁により、板ばね38の可動部40が押し下げられる。ねじ軸29のキー溝37内に可動部40の一部が残っている間は、板ばね38を通じて、連結部材35からねじ軸29に負方向の回転トルクが伝達される。一方、ねじ軸29のキー溝37から完全に離脱するまで可動部40が押し下げられると、キー溝37への板ばね38の係合が解除されるため、板ばね38を通じては回転トルクが伝達されなくなる。このようにワンウェイクラッチ42は、既定値TR以上の負方向の回転トルクが加わると、ねじ軸29と連結部材35との間の、ひいては電気モータ15と直動変換機構16の間の回転トルクの伝達を切断する。
【0027】
<第1実施形態の作用効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
電動制動装置10は、電気モータ15から直動変換機構16への正方向の回転トルクの伝達に応じたピストン19の直動により、液室20内のブレーキ液に押圧を加えることで車輪13に制動力を発生させている。こうした制動力の発生中に、電力失陥等によって電気モータ15が動力を喪失すると、液室20の液圧により、ピストン19が押し下げられて後退する。このときの後退方向Rへのピストン19の直線運動は、直動変換機構16により回転運動に変換される。電気モータ15と直動変換機構16のトルク伝達経路上の各回転部品が、ピストン19の後退に応じて連れ回りする。すなわち、回転伝達機構17の第1歯車26、第2歯車27及び第3歯車28と、電気モータ15の回転子23及びモータ軸25が、ピストン19の後退動作に連動して逆回転方向に回転する。
【0028】
ピストン19が最後退位置まで後退して、ストッパ30Aが第3歯車28に突き当たると、ピストン19は後退動作を停止する。一方、上記各回転部品は、慣性のため、逆回転方向の回転を継続しようとする。そのため、ワンウェイクラッチ42には、負方向の回転トルクが加わる。こうした負方向の回転トルクにより、ワンウェイクラッチ42が回転トルクの伝達を切断すると、ピストン19とのトルク伝達が維持される回転部品は、ねじ軸29との2つの部材のみとなる。すなわち、ピストン19の後退運動の停止と共に運動を停止する部材は、ねじ軸29及びピストン19と同時に停止するナット30のみとなる。
【0029】
一方、ピストン19の後退運動の停止には、ピストン19及びピストン19に連動して運動している全ての部材の運動エネルギの合計分のエネルギが必要となる。よって、ピストン停止時には、上記運動エネルギの合計分のエネルギを有した衝撃が発生する。これに対して、本実施形態では、ワンウェイクラッチ42が回転トルクの伝達を切断することで、ピストン19の後退運動の停止と共に運動を停止する部材が少なくなり、運動を停止する部品の質量が減少する。そしてその分、ピストン19の後退運動の停止時の衝撃に変換される運動エネルギが少なくなる。したがって、本実施形態の電動制動装置10によれば、制動力の発生中の電気モータ15の動力喪失により発生する衝撃を緩和できる。
【0030】
なお、本実施形態では、V字状に折られた板材からなる板ばね38によりワンウェイクラッチ42を構成している。このようにワンウェイクラッチ42が簡易な構成なため、その設置に伴う製造コストの増加が抑えられる。
【0031】
さらに、本実施形態では、ねじ軸29と第3歯車28との連結部、すなわち直動変換機構16と回転伝達機構17との連結部にワンウェイクラッチ42を設置している。そのため、ピストン19の後退停止と共に回転運動を停止する部材がねじ軸29のみとなり、衝撃の緩和効果が大きくなる。
【0032】
なお、本実施形態では、ねじ軸29に形成されたキー溝37が凹部に、板ばね38が設けられた連結部材35が第1回転部に、それぞれ対応している。また、上記凹部としてのキー溝37が形成されたねじ軸29が、第1回転部と互いに噛み合う第2回転部に対応している。さらに、本実施形態では、第3歯車28が、直動変換機構16に直接回転トルクを伝える回転部品に対応している。
【0033】
また、ワンウェイクラッチ42は、電気モータ15と直動変換機構16との相互の回転トルクの伝達を担う機構である。また、ワンウェイクラッチ42は、摩擦材12Aが回転部としてのブレーキディスク12Bから離間する離間方向の回転トルクが既定値以上の大きさになると、回転トルクの伝達を切断する。よって、本実施形態では、こうしたワンウェイクラッチ42がトルク伝達機構に対応している。
【0034】
(第2実施形態)
続いて、図5を併せ参照して、電動制動装置の第2実施形態を説明する。図5には、第2実施形態の電動制動装置におけるワンウェイクラッチ42及びその周辺部の断面構造が示されている。本実施形態においても、ワンウェイクラッチ42は、ねじ軸29と連結部材35との連結部に設置されている。一方、本実施形態では、ワンウェイクラッチ42と共に、Oリング41が、ねじ軸29と連結部材35との連結部に併設されている。
【0035】
こうした本実施形態では、ワンウェイクラッチ42が回転トルクの伝達を切断した状態となっている場合にも、ねじ軸29と連結部材35との間でのOリング41を通じた回転トルクは維持される。そのため、Oリング41の設置により、電気モータ15、直動変換機構16間で伝達可能な負方向の回転トルクの上限を高められる。なお、ねじ軸29及び連結部材35の摺動面間に設置されて両摺動面に摺動抵抗を発生する、Oリング41以外の弾性体を、Oリング41の代わりに設置してもよい。
【0036】
(第3実施形態)
続いて、図6図9を併せ参照して、電動制動装置の第3実施形態を説明する。本実施形態にあって、上記実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0037】
<電動制動装置50の構成>
図6に示すように、本実施形態の電動制動装置50は、第1実施形態の電動制動装置10と同様に、シリンダ機構14、電気モータ15、及び直動変換機構16を備えている。ただし、本実施形態の電動制動装置50では、遊星歯車機構51を介して、電気モータ15、及び直動変換機構16が連結されている。また、本実施形態の電動制動装置50では、電気モータ15、遊星歯車機構51、直動変換機構16、及びシリンダ機構14が同軸上に配置されている。なお、電動制動装置50は、遊星歯車機構51、直動変換機構16、及びシリンダ機構14を内部に収容するとともに、電気モータ15が取り付けられたハウジング52を備えている。
【0038】
遊星歯車機構51は、サンギア53、キャリア54、及びリングギア55の3つの回転要素を有している。遊星歯車機構51のサンギア53には、電気モータ15のモータ軸25が一体となって回転するように連結されている。また、遊星歯車機構51のキャリア54には、直動変換機構16のねじ軸29が一体となって回転するように連結されている。なお、キャリア54には、サンギア53及びリングギア55の双方に噛み合うプラネタリギア56が、自転可能、かつキャリア54と共に公転可能に設置されている。なお、リングギア55は、シリンダ18内でのピストン19の直動方向に一定量の移動が許容された状態でハウジング52内に設置されている。
【0039】
<ワンウェイクラッチ57の構成>
遊星歯車機構51は、リングギア55の回転を禁止した状態と、同リングギア55の回転を許容した状態とを切替えるワンウェイクラッチ57を有している。遊星歯車機構51は、ワンウェイクラッチ57がリングギア55の回転を禁止した状態となっているときには、電気モータ15と直動変換機構16との間の回転トルクの伝達を許容する。一方、遊星歯車機構51は、ワンウェイクラッチ57がリングギア55の回転を許容した状態となっているときには、電気モータ15と直動変換機構16との間の回転トルクの伝達を切断する。
【0040】
ワンウェイクラッチ57は、リングギア55、クラッチプレート58、及びウェーブワッシャ59により構成されている。クラッチプレート58は、ハウジング52内におけるリングギア55よりも後退方向Rの部分に、同リングギア55に対向して配置された円環形状の部材である。ウェーブワッシャ59は、リングギア55をクラッチプレート58に向けて押圧する弾性部材である。なお、クラッチプレート58は、ハウジング52内におけるシリンダ機構14、直動変換機構16、及び遊星歯車機構51の収容部と、電気モータ15の取付部と、を区画する仕切り壁60に固定されている。これにより、クラッチプレート58は、ハウジング52内に回転不能に設置されている。
【0041】
図7に示すように、リングギア55におけるクラッチプレート58に対向する部分には、クラッチプレート58に向う方向に突出する複数の凸部61が、周方向に等間隔に並んで配置されている。一方、クラッチプレート58におけるリングギア55に対向する部分には、凸部61と同数の凹部62が周方向に等間隔に並んで配置されている。凹部62は、凸部61が係合可能な形状に形成されている。すなわち、凹部62は、凸部61をミラー反転した形状に形成されている。なお、リングギア55及びクラッチプレート58の周方向における凸部61及び凹部62の両側面のうち、ねじ軸29の逆回転方向に位置する面は、周方向にほぼ垂直な面となっている。一方、上記両側面のうち、ねじ軸29の正回転方向に位置する面は、周方向に対して傾斜した傾斜面となっている。
【0042】
<第3実施形態の作用、効果>
次に、図8及び図9を併せ参照して、本実施形態の電動制動装置50の作用を説明する。ピストン19が停止しているときのリングギア55は、ウェーブワッシャ59の押圧により後退方向Rに移動する。よって、図8に示すように、このときのワンウェイクラッチ57は、リングギア55の凸部61とクラッチプレート58の凹部62とが係合して、リングギア55の回転を禁止した状態となる。
【0043】
ここで、モータ軸25が正回転方向に回転するように電気モータ15を駆動すると、遊星歯車機構51のサンギア53が正回転方向に回転する。このとき、リングギア55が回転しなければ、サンギア53からキャリア54へと回転トルクが伝達される。そして、キャリア54と一体に回転するねじ軸29にも正回転方向の回転トルクが伝達されて、ピストン19が前進方向Fに移動する。これにより、液室20内のブレーキ液に押圧が加えられることで、車輪13に制動力が発生する。
【0044】
なお、このときのリングギア55には、図8に白抜き矢印で示すような、逆回転方向の回転トルクが加わる。クラッチプレート58は、リングギア55に加わった逆回転方向の回転トルクを、凹部62の逆回転方向の側面P1で受ける。上記のように、凸部61及び凹部62における逆回転方向の側面P1は、周方向にほぼ垂直な面となっている。よって、リングギア55に逆回転方向の回転トルクが加わっても、凸部61及び凹部62の係合によりリングギア55の回転が禁止された状態が維持される。
【0045】
こうした制動力の発生中に、電力失陥等によって電気モータ15が動力を喪失すると、液室20の液圧により、ピストン19が押し下げられて後退する。このときの後退方向Rへのピストン19の直線運動は、直動変換機構16により回転運動に変換される。そして、キャリア54がねじ軸29と共に逆回転方向に回転する。このときのリングギア55は回転が禁止された状態にあるため、キャリア54からサンギア53に回転トルクが伝達される。
【0046】
ピストン19は、最後退位置まで後退すると、後退動作を停止する。一方、電気モータ15、直動変換機構16間の回転トルクの伝達経路に設けられた各回転部品は、慣性のため、回転を継続しようとする。このときの遊星歯車機構51では、直動変換機構16に連結されたキャリア54は、ピストン19の後退運動の停止に応じて逆回転方向の回転を停止しようとする。一方、電気モータ15に連結されたサンギア53は、逆回転方向の回転を継続しようとする。その結果、リングギア55には、正回転方向の回転トルクが加わることになる。すなわち、リングギア55にとって正回転方向の回転トルクは、図1に示す摩擦材12Aが回転部であるブレーキディスク12Bから離間する離間方向の回転トルクとなる。
【0047】
図9に示すように、このときのクラッチプレート58は、リングギア55に加わった正回転方向の回転トルクを、凹部62の正回転方向の側面P2で受ける。上記のように凸部61及び凹部62の正回転方向の側面P2は、傾斜した面となっている。そのため、リングギア55に正回転方向の回転トルクが加わると、リングギア55を前進方向Fに押圧する力が発生する。すなわち、凸部61及び凹部62は、リングギア55に加わる正回転方向の回転トルクを、ウェーブワッシャ59による押圧力に抗する抗力に変換する形状に成形されている。こうした抗力により、ウェーブワッシャ59の押圧力に抗してリングギア55が前進方向Fに移動すると、凸部61及び凹部62の係合が解除される。凸部61及び凹部62の係合が解除されると、リングギア55の回転が許容されて、遊星歯車機構51を通じた直動変換機構16、電気モータ15間のトルク伝達が切断される。よって、ピストン19の後退運動の停止と共に運動を停止する部材は、ナット30、ねじ軸29、及びサンギア53のみとなる。したがって、本実施形態の電動制動装置50によれば、制動力の発生中の電気モータ15の動力喪失により発生する衝撃を緩和できる。
【0048】
なお、凸部61及び凹部62の係合が解除されるときの正回転方向の回転トルクの大きさは、ウェーブワッシャ59のばね力、及び傾斜面の傾斜角により調整できる。本実施形態では、電気モータ15の動力喪失後にピストン19の後退が最後退位置に停止したときに凸部61及び凹部62の係合が解除されるように、ウェーブワッシャ59のばね力、及び傾斜面の傾斜角が設定されている。すなわち、ばね力及び径射角は、上記既定値TR以上の負方向の回転トルクが加わると、抗力がウェーブワッシャ59よりも大きくなって、凸部61と凹部62との係合が解除されるように設定されている。
【0049】
こうした本実施形態では、遊星歯車機構51がトルク伝達機構に対応する。また、遊星歯車機構51のリングギア55は、次の回転要素となっている。すなわち、リングギア55は、回転が禁止された状態となっているときに電気モータ15と直動変換機構16との間の回転トルクの伝達を許容する。また、リングギア55は、摩擦材が回転部から離間する離間方向の回転トルクが既定値以上の大きさになると回転が許容された状態となる。そして、リングギア55は、回転が許容された状態となることで、電気モータ15と直動変換機構16との間の回転トルクの伝達を切断する。さらに本実施形態では、リングギア55が第1クラッチ部に、クラッチプレート58が第2クラッチ部に、それぞれ対応している。
【0050】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0051】
<電気モータ15の制御について>
上記実施形態では、電気モータ15が発生する正方向の回転トルクを調整することで、車輪13の制動力を制御していた。そして、制動力を減少させるときのシリンダ18内でのピストン19の後退動作は、液室20の液圧を推力として行っていた。これに対して、上記のようなワンウェイクラッチ42が設けられた電動制動装置10では、下記の態様で電気モータ15を制御すれば、電気モータ15の動力を用いてピストン19の後退動作を行うことが可能となる。
【0052】
電気モータ15から直動変換機構16に負方向の回転トルクを伝達すると、直動変換機構16によりその負方向の回転トルクが後退方向Rの直動運動に変換される。ただし、電動制動装置10には、既定値TR以上の負方向の回転トルクが加わると、回転トルクの伝達を切断するワンウェイクラッチ42が設けられている。こうしたワンウェイクラッチ42が設けられた電動制動装置10では、ワンウェイクラッチ42に加わる負方向の回転トルクが既定値TR未満となる範囲で電気モータ15を制御すれば、電気モータ15の動力を用いたピストン19の後退動作を行える。なお、電気モータ15の動力によるピストン19の後退動作は、初期位置と最後退位置との間でピストン19を移動させる場合や、ピストン19を急速に後退させる場合に実施するとよい。
【0053】
<直動変換機構16の構成について>
直動変換機構16を、ナット30の回転に応じてねじ軸29が直動するように構成してもよい。その場合、ナット30が、一体となって回転するように第3歯車28に連結されるとともに、ねじ軸29が、一体となって直動するようにピストン19に連結される。こうした場合にも、電気モータ15の動力喪失により発生する衝撃を緩和する上では、ナット30と第3歯車28との連結部に、ワンウェイクラッチを設置することが望ましい。
【0054】
<回転伝達機構17の構成について>
電気モータ15の回転運動を直動変換機構16に伝達する回転伝達機構17の構成を変更してもよい。上記以外の回転伝達機構17には、例えば傘場歯車機構、遊星歯車機構、巻き掛け伝動機構などがある。また、回転伝達機構17を省略して、モータ軸25を直動変換機構16に直結するようにしてもよい。
【0055】
<第1及び第2実施形態のワンウェイクラッチの構成について>
スプラグ式、カム式等の上記以外の方式のワンウェイクラッチを採用してもよい。また、電気モータ15と直動変換機構16との回転トルクの伝達経路における上記以外の部分にワンウェイクラッチを設けるようにしてもよい。例えば、モータ軸25と第1歯車26との連結部や、モータ軸25と回転子23との連結部に、ワンウェイクラッチを設けるようにしてもよい。
【0056】
<第3実施形態のワンウェイクラッチ57の構成について>
・凸部61及び凹部62の数は、1以上であればよい。また、凸部61及び凹部62の数を、異なる数としてもよい。
【0057】
・リングギア55をシリンダ18内でのピストン19の直動方向に移動可能に設置せずに、クラッチプレート58を同直動方向に移動可能に設置するようにしてもよい。その場合のウェーブワッシャ59は、クラッチプレート58を前進方向Fに押圧するように設置するとよい。
【0058】
・凸部61が設けられた第1クラッチ部を、リングギア55とは別体の部品として構成してもよい。
・凸部61及び凹部62の形状は、適宜に変更してもよい。
【0059】
・クラッチプレート58におけるリングギア55に対向する部分に、リングギア55に向かう方向に突出する凸部を設け、リングギア55におけるクラッチプレート58に対向する部分には、凸部が係合される凹部を設けてもよい。この場合、クラッチプレート58が第1クラッチ部に、リングギア55が第2クラッチ部に、それぞれ対応することになる。
【0060】
・ウェーブワッシャ59の代わりに、コイルばね等の弾性部材を設けるようにしてもよい。
<遊星歯車機構51の構成について>
・遊星歯車機構51において、電気モータ15に連結される回転要素、直動変換機構16に連結される回転要素、ワンウェイクラッチ57により回転が禁止・許容される回転要素の組合せは任意に変更してもよい。
【0061】
<制御部31の構成について>
制御部31は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェアなどの1つ以上の専用のハードウェア回路又はこれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。専用のハードウェアとしては、例えば、特定用途向け集積回路であるASICを挙げることができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【符号の説明】
【0062】
10,50…電動制動装置
10A,52…ハウジング
11…リザーバタンク
12…ホイールシリンダ
12A…摩擦材
12B…ブレーキディスク
13…車輪
14…シリンダ機構
15…電気モータ
16…直動変換機構
17…回転伝達機構
18…シリンダ
19…ピストン
20…液室
21…入力ポート
22…出力ポート
23…回転子
24…固定子
25…モータ軸
26…第1歯車
27…第2歯車
28…第3歯車
29…ねじ軸
30…ナット
31…制御部
32…ストロークセンサ
33…液圧センサ
34…挿入穴
35…連結部材
36…キー溝
37…キー溝
38…板ばね
39…固定部
40…可動部
41…Oリング
42,57…ワンウェイクラッチ
51…遊星歯車機構
53…サンギア
54…キャリア
55…リングギア
56…プラネタリギア
58…クラッチプレート
59…ウェーブワッシャ
60…仕切り壁
61…凸部
62…凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9