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特開2023-48123プリンタ噴射機構及びプリンタ噴射機構を用いるプリンタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048123
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】プリンタ噴射機構及びプリンタ噴射機構を用いるプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/50 20210101AFI20230330BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230330BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230330BHJP
   B22F 10/22 20210101ALI20230330BHJP
   B22F 3/115 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B22F12/50
B33Y30/00
B33Y10/00
B22F10/22
B22F3/115
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145512
(22)【出願日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】17/449,019
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド、ケイ.、ビーゲルセン
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA02
4K018AA03
4K018AA06
4K018AA07
4K018AA13
4K018AA14
4K018AA24
4K018BA01
4K018BA02
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA07
4K018BA08
4K018BA13
4K018BA20
4K018BB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】3Dプリンタ及び3Dプリンタ噴射機構の提供。
【解決手段】アレイ内に配置された複数のエジェクタ導管106が、印刷材料104を受け入れるように配置された第1の端部と、エジェクタノズル108を備える第2の端部と、印刷材料が第1の端部から第2の端部までエジェクタ導管を通過することを可能にするためのエジェクタ導管の内面によって画定された通路とを備え、エジェクタノズルが、第1の電極110と、第2の電極112とを備え、第1の電極の少なくとも1つの表面が通路内に露出しており、第2の電極の少なくとも1つの表面が、通路内に露出している複数のエジェクタ導管と、複数のエジェクタ導管の各々のエジェクタノズルと電気的に接触している電流パルス生成システムと、エジェクタノズル内に配置された磁束領域を生成する磁場源130と、プリント基板に対するアレイの相対位置を制御するための位置決めシステムとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元(「3D」)プリンタであって、
アレイ内に配置された複数のエジェクタ導管であって、各エジェクタ導管が、印刷材料を受け入れるように配置された第1の端部と、エジェクタノズルを備える第2の端部と、前記印刷材料が前記第1の端部から前記第2の端部まで前記エジェクタ導管を通過することを可能にするための前記エジェクタ導管の内面によって画定された通路と、を備え、前記エジェクタノズルが、第1の電極と、第2の電極と、を備え、前記第1の電極の少なくとも1つの表面が、前記通路内に露出しており、前記第2の電極の少なくとも1つの表面が、前記通路内に露出している、複数のエジェクタ導管と、
前記複数のエジェクタ導管の各々の前記エジェクタノズルと電気的に接触している、電流パルス生成システムと、
前記3Dプリンタの動作中に、前記エジェクタノズル内に配置された磁束領域を生成するように、前記エジェクタ導管の前記第2の端部に十分に近接している、磁場源と、
前記3Dプリンタの動作中に、プリント基板が前記複数のエジェクタ導管の各々の前記エジェクタノズルから噴射可能な印刷材料を受容することを可能にする様式で、前記プリント基板に対する前記アレイの相対位置を制御するための位置決めシステムと、
を備える、3次元(「3D」)プリンタ。
【請求項2】
導電性印刷材料を前進させるためのフィーダ機構を更に備える、請求項1に記載の3次元プリンタ。
【請求項3】
固体印刷材料を液体印刷材料に溶融するための加熱機構と、前記液体印刷材料を保持するためのリザーバであって、前記複数のエジェクタ導管と流体接続している、リザーバを更に備える、請求項1に記載の3次元プリンタ。
【請求項4】
前記磁場源が、磁石と、前記磁石に取り付けられた磁束ガイドと、を備える磁束回路であり、前記磁束ガイドが、前記複数のエジェクタ導管の各々に対して前記エジェクタノズルに近接して配置されている、請求項1に記載の3次元プリンタ。
【請求項5】
前記磁場源が、永久磁石を備える、請求項1に記載の3次元プリンタ。
【請求項6】
前記磁場源を冷却するための冷却システムを更に備える、請求項5に記載の3次元プリンタ。
【請求項7】
前記電流パルス生成システムが、電源、少なくとも1つの電流スイッチ、及び回路内に配置された少なくとも1つのパルス制御デバイスを備え、前記パルス制御デバイスが、電流振幅及びパルス長から選択された1つ以上の特性の可変制御を提供するように構成されている、請求項1に記載の3次元プリンタ。
【請求項8】
前記エジェクタノズルが、第3の電極と、第4の電極と、を更に備える、請求項1に記載の3次元プリンタ。
【請求項9】
前記第1の電極と前記第2の電極との間に横方向に配置された電気絶縁材料を更に備える3次元プリンタであって、前記第1の電極と前記第2の電極との間の前記電気絶縁材料が、第1の電気絶縁材料であり、前記エジェクタノズルの上方の前記複数のエジェクタ導管の各々の少なくとも一部分が、第2の電気絶縁材料を備え、前記第1の電気絶縁材料が、前記第2の電気絶縁材料と同じであるか、又は異なる、請求項1に記載の3次元プリンタ。
【請求項10】
前記第1の電気絶縁材料及び前記第2の電気絶縁材料が、両方とも、金属酸化物、セラミック、及びそれらの組み合わせから独立して選択される、耐火材料である、請求項9に記載の3次元プリンタ。
【請求項11】
前記複数のエジェクタ導管が、エジェクタハウジング内に支持されている、請求項1に記載の3次元プリンタ。
【請求項12】
前記3Dプリンタの動作中に、前記エジェクタ導管を囲む前記エジェクタハウジングの少なくとも一部分を加熱するための加熱器機構であって、前記電流パルス生成システムから分離されている、加熱器機構を更に備える、請求項11に記載の3次元プリンタ。
【請求項13】
前記エジェクタノズルが、約10マイクロメートル~約1000マイクロメートルの範囲の内幅を有する、請求項1に記載の3次元プリンタ。
【請求項14】
前記エジェクタノズルが、約10マイクロメートル~約200マイクロメートルの範囲の内幅を有する、請求項1に記載の3次元プリンタ。
【請求項15】
前記アレイが、X軸上に配置されたM列のエジェクタ導管と、Y軸上に配置されたN行のエジェクタ導管と、を有し、Mが、2~1000の範囲の整数であり、Nが、1~2の範囲の整数である、請求項1に記載の3次元プリンタ。
【請求項16】
Mが、5~1000の範囲の整数である、請求項15に記載の3次元プリンタ。
【請求項17】
アレイ内に配置された複数のエジェクタ導管であって、各エジェクタ導管が、印刷材料を受け入れるように配置された第1の端部と、エジェクタノズルを備える第2の端部と、前記印刷材料が前記第1の端部から前記第2の端部まで前記エジェクタ導管を通過することを可能にするための前記エジェクタ導管の内面によって画定された通路と、を備え、前記エジェクタノズルが、第1の電極と、第2の電極と、を備え、前記第1の電極の少なくとも1つの表面が、前記通路内に露出しており、前記第2の電極の少なくとも1つの表面が、前記通路内に露出している、複数のエジェクタ導管と、
前記複数のエジェクタ導管の各々の前記エジェクタノズルと電気的に接触している、電流パルス生成システムと、
前記3Dプリンタの動作中に、前記エジェクタノズル内に配置された磁束領域を生成するように、前記エジェクタ導管の前記第2の端部に十分に近接している、磁場源と、
を備える、プリンタ噴射機構。
【請求項18】
前記磁場源が、磁石と、前記磁石に取り付けられた磁束ガイドと、を備える磁束回路であり、前記磁束ガイドが、前記複数のエジェクタ導管の各々に対して前記エジェクタノズルに近接して配置されている、請求項17に記載のプリンタ噴射機構。
【請求項19】
前記磁場源が、永久磁石を備える、請求項17に記載のプリンタ噴射機構。
【請求項20】
前記磁場源を冷却するための冷却システムを更に備える、請求項17に記載のプリンタ噴射機構。
【請求項21】
アレイ内に配置された複数のエジェクタ導管であって、各エジェクタ導管が、印刷材料を受け入れるように配置された第1の端部と、エジェクタノズルを備える第2の端部と、前記印刷材料が前記第1の端部から前記第2の端部まで前記エジェクタ導管を通過することを可能にするための前記エジェクタ導管の内面によって画定された通路と、を備え、前記エジェクタノズルが、第1の電極と、第2の電極と、を備え、前記第1の電極の少なくとも1つの表面が、前記通路内に露出しており、前記第2の電極の少なくとも1つの表面が、前記通路内に露出している、複数のエジェクタ導管
を備える、3次元(「3D」)プリンタ噴射機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリンタ噴射機構、及びプリンタ噴射機構を用いる、本明細書では3次元(「3D」)プリンタと称される、積層造形のために使用されるプリンタを対象とする。
【背景技術】
【0002】
本明細書で3次元(「3D」)印刷とも称される積層造形は、既知の製造技術である。例えば、溶融アルミニウム及び他の金属から3D物体を構築するための3次元プリンタは、当該技術分野において既知である。
【0003】
1つのそのような3Dプリンタは、米国特許第9,616,494号に開示されている。3Dプリンタは、電磁コイルによって印加されたDCパルスを使用して、応答して溶融アルミニウム液滴を吐出することによって機能する。液滴の標的となるプラテンは、液滴を接続かつ蓄積させて、3次元物体を生成することを可能にするように並進する。しかしながら、この3Dプリンタから噴出された溶融アルミニウムの液滴は、約0.5mm以上の直径を有する。これにより、高容量スループット金属部品の製造が可能になる。しかしながら、比較的大きな液滴サイズは、それによって印刷された3D物体の望ましくない程度の多孔率、並びに製造中の平坦でないビルド表面、溶接されていない液滴、及び形状のばらつきをもたらし得る。これらの全ては、不十分な引張強度などの物理的特性の劣化、並びに最終物体による不良な外観の問題、及び/又は非常に細かい詳細で物体を印刷することができないなどにつながる可能性がある。
【0004】
したがって、例えば、液体金属プリンタなどの3次元プリンタから作製された3次元物体の品質を改善するための方法及びシステムは、当該技術分野における一歩前進となるであろう。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一実施形態は、3次元(「3D」)プリンタを対象とする。3Dプリンタは、アレイ内に配置された複数のエジェクタ導管であって、各エジェクタ導管が、印刷材料を受け入れるように配置された第1の端部と、エジェクタノズルを備える第2の端部と、印刷材料が第1の端部から第2の端部までエジェクタ導管を通過することを可能にするためのエジェクタ導管の内面によって画定された通路と、を備え、エジェクタノズルが、第1の電極と、第2の電極と、を備え、第1の電極の少なくとも1つの表面が、通路内に露出しており、第2の電極の少なくとも1つの表面が、通路内に露出している、複数のエジェクタ導管と、複数のエジェクタ導管の各々のエジェクタノズルと電気的に接触している、電流パルス生成システムと、3Dプリンタの動作中に、エジェクタノズル内に配置された磁束領域を生成するように、エジェクタ導管の第2の端部に十分に近接している、磁場源と、3Dプリンタの動作中に、プリント基板が複数のエジェクタ導管の各々のエジェクタノズルから噴射可能な印刷材料を受容することを可能にする様式で、プリント基板に対するアレイの相対位置を制御するための位置決めシステムと、を備える。
【0006】
本開示の別の実施形態は、プリンタ噴射機構を対象とする。プリンタ噴射機構は、アレイ内に配置された複数のエジェクタ導管であって、各エジェクタ導管が、印刷材料を受け入れるように配置された第1の端部と、エジェクタノズルを備える第2の端部と、印刷材料が第1の端部から第2の端部までエジェクタ導管を通過することを可能にするためのエジェクタ導管の内面によって画定された通路と、を備え、エジェクタノズルが、第1の電極と、第2の電極と、を備え、第1の電極の少なくとも1つの表面が、通路内に露出しており、第2の電極の少なくとも1つの表面が、通路内に露出している、複数のエジェクタ導管と、複数のエジェクタ導管の各々のエジェクタノズルと電気的に接触している、電流パルス生成システムと、3Dプリンタの動作中に、エジェクタノズル内に配置された磁束領域を生成するように、エジェクタ導管の第2の端部に十分に近接している、磁場源と、を備える。
【0007】
本開示の更に別の実施形態は、3次元(「3D」)プリンタ噴射機構を対象とする。3Dプリンタ噴射機構は、アレイ内に配置された複数のエジェクタ導管を備え、各エジェクタ導管は、印刷材料を受け入れるように配置された第1の端部と、エジェクタノズルを備える第2の端部と、印刷材料が第1の端部から第2の端部までエジェクタ導管を通過することを可能にするためのエジェクタ導管の内面によって画定された通路と、を備える。エジェクタノズルは、第1の電極と、第2の電極と、を備え、第1の電極の少なくとも1つの表面は、通路内に露出しており、第2の電極の少なくとも1つの表面は、通路内に露出している。
【0008】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも、あくまで例示的かつ説明的なものであり、請求されるように、本教示を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本教示の実施形態を例解し、説明とともに本教示の原理を説明する役割を果たす。
図1】本開示の一実施形態による、プリンタ噴射機構の概略図を例解している。
図2】本開示の一実施例による、プリンタ噴射機構用のエジェクタ導管のアレイの上面概略図を例解している。
図3】本開示の一実施形態による、プリンタ噴射機構の概略側面図を例解している。
図4】電極対を備えるエジェクタノズルの底面図を例解している。本開示の一実施形態による、電流パルス生成システムは、電極対と電気的に接触して例解されている。
図5】本開示の一実施形態による、磁場源が、磁石及び磁束ガイドを備える、磁束回路である、プリンタ噴射機構の概略側面図を例解している。
図6】本開示の一実施形態による、磁場源が、磁石及び磁束ガイドを備える、磁束回路である、プリンタ噴射機構の概略斜視図を例解している。
図7】本開示の一実施形態による、図6のプリンタ噴射機構に用いられるエジェクタ導管アレイの概略側面図を例解している。
図8】本開示の一実施形態による、正方形断面の流路を有するエジェクタノズルの概略底面図を例解している。
図9】本開示の一実施形態による、正方形断面の流路を有するエジェクタノズルの概略底面図を例解している。
図10】エジェクタ導管の概略断面図の実施例を例解している。本開示の一実施形態による、エジェクタ導管のエジェクタノズル内に配置された電極にわたって電流パルスを生成するために用いられ得る、電流パルス生成システムがまた例解されている。
図11】エジェクタ導管の概略断面図の実施例を例解している。本開示の一実施形態による、エジェクタ導管のエジェクタノズル内に配置された電極にわたって電流パルスを生成するために用いられ得る、電流パルス生成システムがまた例解されている。
図12】本開示の一実施形態による、内径dを有するエジェクタノズルの概略的な断面図を例解している。
図13】本開示の一実施形態による、エジェクタ導管の概略断面側面図を例解している。
図14】本開示の一実施形態による、磁場源が背景に示されている、エジェクタ導管のアレイの概略図を例解している。
図15】本開示の一実施形態による、プリンタ噴射機構の概略図を例解している。
図16】本開示の一実施形態による、互い違いに配置されているエジェクタ導管の列を備える、プリンタ噴射機構の概略上面図を例解している。
図17】本開示の一実施形態による、ベントを備えるエジェクタ導管の概略断面側面図を例解している。
図18A】本開示の一実施形態による、複数のベントを備えるエジェクタノズルの概略底面図を例解している。
図18B】本開示の一実施形態による、図18Aのエジェクタノズルを含むエジェクタ導管106の一部分の概略断面図を例解している。
図19】本開示の一実施形態による、3Dプリンタのブロック図である。
図20】本開示の一実施形態による、液滴を同時に噴出して、プリント基板上に3D物体を印刷する、複数のエジェクタ導管を備える、プリンタ噴射機構の概略側面図を例解している。
図21】本開示の一実施形態による、プリンタ噴射機構から印刷材料を噴射するための方法の流れ図である。
図22】本開示の一実施形態による、3Dプリンタの概略図である。
【0010】
これらの図のいくつかの詳細は簡略化されており、厳密な構造精度、詳細、及び縮尺は維持されるものではなく、実施形態の理解を容易にするように描かれていることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、本教示の実施形態を詳細に参照し、それらの実施例は、添付図面に例解される。図中、同様の参照番号は、全体を通して、同一の要素を指定するために使用される。以下の説明では、その一部をなし、本教示が実践され得る具体的な例示的な実施形態が例解として示される添付図面を参照する。したがって、以下の説明は、単なる例示に過ぎない。
【0012】
本開示は、ジェットアレイ内に配置された複数のエジェクタ導管と、プリンタ噴射機構を用いる3Dプリンタと、を備える、プリンタ噴射機構を対象とする。印刷材料を噴射するためのそのような噴射機構を用いる方法もまた、開示される。プリンタ噴射機構は、本明細書でより詳細に説明されるように、印刷材料を噴射するための力を提供するために電流及び磁場を用いるように設計されている。本明細書に開示される噴射機構、及び印刷方法は、以下の利点のうちの1つ以上を提供することができる:広範囲の金属及び他の材料を選択的に噴射する能力、選択可能な液滴体積を噴射する能力、微細及び/又は選択可能な特徴サイズの印刷を可能にする小さな液滴サイズを噴射する能力、並びに比較的高いスループットで印刷する能力。
【0013】
プリンタ噴射機構
図1は、本開示の一実施形態による、プリンタ噴射機構100の実施例を例解している。プリンタ噴射機構100は、印刷される印刷材料104を前進させるためのフィーダ機構102を備える。例示的な印刷材料104は、選択された合金の事前形成されたワイヤ、溶融金属又は以下でより詳細に考察されるような他の材料である。複数のエジェクタ導管106が、アレイ107内に配置されている。各エジェクタ導管106は、フィーダ機構102から印刷材料104を受け入れるように配置された第1の端部106Aを備える。第2の端部106Bは、エジェクタノズル108を備える。図2は、プリンタ噴射機構100の上面図を例解している。エジェクタ導管106の各々の内面によって画定された通路106Cは、印刷材料104が第1の端部106Aから第2の端部106Bまでエジェクタ導管106を通過することを可能にする。
【0014】
エジェクタノズル108は、印刷材料104に電流を供給するために使用される、第1の電極110及び第2の電極112を含む、少なくとも一対の電極を備える。第1の電極110の少なくとも1つの表面は、通路106C内に露出しており、第2の電極112の少なくとも1つの表面は、通路106C内に露出している。図4に示される電流パルス生成システム114は、複数のエジェクタ導管106の各々のエジェクタノズル108の少なくとも1つの電極対と電気的に接触している。電流パルス生成システム114は、導電性印刷材料104がエジェクタノズル108内に配置されたときに、主に第1の電極110と第2の電極112との間に電流のパルスを流すことができる。
【0015】
図1及び図3に示すように、磁場源130は、複数のエジェクタ導管106の第2の端部又はエジェクタノズル108に近接している。エジェクタノズルに近接する磁場源130の配置は、エジェクタノズル108内の磁束領域133を提供することができ、それによって、磁束領域を更に上流に配置する特定の利点を可能にする。例えば、利点は、ローレンツ力が低減された質量(例えば、電極110、112とエジェクタノズル108の出口との間の電流パルス担持領域内の印刷材料104の質量だけで効果的に)に作用し、それによって、所与の電流に対する印刷材料104のより高いピーク噴出速度を可能にすることである。一方、ローレンツ力生成磁場源130及び電極110、112をエジェクタ導管106内でより上流に配置した場合、同じ電流パルスは、より長い列の印刷材料104をより低いピーク速度に加速するであろう。本開示の目的のために、用語「磁束領域(flux region)」又は「磁束領域(magnetic flux region)」は、磁場源130の近接によってより大きい磁束密度を有するエジェクタ導管106の通路内の任意の領域であり、磁場源130が存在しない場合、磁束密度は、室温(22℃)で空気(例えば、空の通路)内で測定される。
【0016】
磁場源130は、エジェクタノズル108の動作中に導電性印刷材料104を通る電流の流れに対して実質的に垂直である磁場を提供し、それによって、エジェクタノズル108内の導電性印刷材料104上にローレンツ力を生成させるように構成されている。印刷材料104を通る電流の流路は、エジェクタノズル108内の電極110、112の配置によって決定される。
【0017】
磁場源130は、永久磁石又は電磁石電流パルス生成システムなどの所望の磁場を提供することができる、任意の好適なタイプの磁石132を備えることができる。図3は、磁場源130が、各々がエジェクタ導管106の対向する側面に近接して配置されているN極132a及びS極132bを備える、永久磁石又は他のタイプの磁石(例えば、電磁石)であり得る1つ以上の磁石132であり得る、実施例を例解している。図3に示すN極132a及びS極132bは、同じ磁石又は2つの異なる磁石からのものであり得る。配線110w及び配線112wは、図4により明確に示されるように、電極110及び112(明確にするために図3に示されていない)を電流パルス生成システム114にそれぞれ接続する、ワイヤ又は他の導電性ラインを表す。
【0018】
別の実施形態では、図5に示すように、磁場源130は、磁束密度Bを提供するための磁石132と、磁束ガイド134と、を備える、磁束回路である。一実施例では、磁束ガイド134aの第1の部分は、磁石132のN極132aに取り付けられている(図5)。磁束ガイド134bの第2の部分は、磁石132のS極132bに取り付けられている。N極132a及びS極132bは、例えば、同じ磁石の2つの端部、又は2つの異なる磁石の2つの端部であり得る。磁束ガイド134a及び134bの部分の対向する端部は、エジェクタノズル108に近接して配置され、エジェクタノズル108を所望の磁場にさらすように磁束を伝導又は誘導する。磁石132は、永久磁石又は電磁石などの任意の磁場生成デバイスであり得る。
【0019】
本開示の目的のために、「磁束ガイド」という用語は、磁束の経路を制限し、それを目標体積に誘導することができる、任意の部材又は他のデバイスを意味すると考えることができる。一実施形態では、磁束ガイド134は、磁束を誘導するための任意の好適な材料を含む、部材である。一実施例として、磁束ガイドは、磁場生成デバイスから所望の目標体積まで磁束を運ぶように成形された部材であり、エジェクタノズル108の近くの動作温度での高い透過性及び高い磁気飽和の一方又は両方を有する材料を含む。一実施例では、材料は、本明細書に説明される動作温度のうちのいずれかなどの所望の動作温度で、所望の磁気飽和(例えば、約0.5~約2テスラなどの約0.1~約2テスラ)を有することができる。そのような材料の例としては、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、鉄及び鉄合金が挙げられ、合金は、ニッケル、コバルト、及び/又は鉄の組み合わせ、並びにケイ素(例えば、ケイ素鉄及びケイ素鋼)などの他の材料を含み得る。任意の他のタイプの磁束ガイドがまた、用いられ得る。
【0020】
図5における配線110w及び配線112wは、図4により明確に示されるように、電極110及び112(明確にするために図5に示されていない)を電流パルス生成システム114にそれぞれ接続する、ワイヤ又は他の導電性ラインを表す。電流i(ドットで表され、図5のページの中又はその外への方向に流れる)が、エジェクタノズル108内の電極110、112の間の導電性印刷材料4を通ってパルス化されるときに、電流の流れは、磁場133の平均方向(磁束密度Bとして示される平均方向)に対して実質的に垂直(例えば、垂直又は10%以内の垂直)である平均方向にあり、ローレンツ力は、電流が流れる導電性印刷材料104上に生成される。例解目的のために、図5にドットとして示されている平均電流方向iは、ページに向かっている。当業者は、エジェクタ導管内の液体に対する実現力が、i及びBが交差する液体の体積にわたるi(xyz)×B(xyz)の積分として計算され得、ここで、x、y、及びzは、その体積を記述するデカルト座標を表すことを理解するであろう。本明細書で使用されるような「平均方向」という用語は、i及びBがエジェクタ導管内で交差する液体の体積全体にわたる電流の近似平均方向及び磁束の近似平均方向を示すことを意味する。当業者は、磁束密度及び電流の平均方向を決定する方法を理解するであろう。
【0021】
一般的に言えば、ローレンツ力は、電流iと磁束密度Bの外積に比例する。したがって、電流が印刷材料104を通ってパルスされる噴出ノズル108の領域における磁場の磁束密度が高いほど、一定電流パルス振幅を与えられた場合、印刷材料104上のローレンツ力が高くなる。したがって、より高い磁束密度を提供することにより、より小さい電流パルス振幅を可能にし、一方で、依然として印刷材料104に所望の噴出力を提供することができる。
【0022】
エジェクタノズル108の電流パルス領域で実現される磁束密度は、磁場源130の磁場強度、磁場源130と電流パルス領域への近接、いずれかの磁束ガイドの形状、及び磁場が延在している媒体の性質(例えば、導電性印刷材料104のタイプ)に依存するであろう。一実施形態では、磁場源130は、所望の磁束密度を提供するために、エジェクタノズル108の電流パルス領域に比較的近接して配置される。これは、磁場源130の磁石132又は磁束ガイド134のいずれかを、ノズル108に十分に近接して配置して、例えば、0.5~2テスラなどの、約0.1~2テスラの所望の磁束密度を提供することによって達成され得る。エジェクタノズル108の通路106Cの磁場源130と長手方向軸lとの間の例示的な距離Xmnは、約0.5mm~約5mm、又は約1mm~約2mmなどの、約0.1mm~約10mmの範囲を含み、ここで、Xmnは、i)エジェクタノズル108の通路106Cの長手方向軸lと、2)磁石132(磁束ガイドがない場合)又は磁束ガイド134(磁場源130が磁束回路である場合)のいずれかとの間の最も近い距離である。
【0023】
エジェクタノズル108は、噴出される導電性印刷材料の溶融温度以上で動作し得る。これらの温度は、多くの場合、400℃超である。そのような高温は、多くの磁性材料に対する磁気強度の低減及び/又は磁気の完全な損失をもたらし得る。磁場源130として磁石132及び磁束ガイド134を備える磁束回路を用いる利点は、磁石132をエジェクタノズルからある距離に維持することができ、それによって、磁石をエジェクタノズル108に近接する温度と比較して、低減された動作温度に磁石をより簡単に保つことができることである。
【0024】
所望される場合、磁石132を単独で又は磁束ガイド134とともに冷却するために磁石132を冷却するための冷却システム142(図5)も用いることができ、それにより、磁場強度の低減を回避するために、磁石132(及び任意選択的に磁束ガイド134)を所望の動作温度に維持する。冷却ガス及び/又は冷却液体が、ポンプ、ファン、送風機、圧縮機、又はそれらの任意の組み合わせなどの機械的システムによって循環される強制流体冷却システムなどの任意の好適な冷却システム142を用いて、磁性材料を冷却することができる。そのようなシステムの例としては、冷蔵システム、水又は他の液体などの流体を流すための1つ以上の強制空気システムを挙げることができ、それにより、磁石(例えば、ラジエータ、及び磁性材料からラジエータによって冷却される水又は他の流体への熱伝導経路)を冷却することができる。一実施例では、冷却システム142は、磁石/磁束ガイドの温度を決定するために磁石及び/又は磁束ガイドに近接して配置された1つ以上の温度センサ142b(例えば、熱電対)と、所望の温度を維持するために、冷却システムの冷却器142d(例えば、ポンプ、ファン、送風機、圧縮機、又は本明細書に教示される任意の冷却器を含む任意の他の所望の冷却器)の冷却出力を増加又は減少させるためのコントローラ142c(例えば、手動コントローラ、又はコンピュータプロセスを有する自動コントローラ)と、を含む、フィードバックループ142aを備え得る。磁石132及び/又は磁束ガイド134を冷却するために、任意の他の好適な冷却システム142を用いることができる。冷却システム142に加えて、又は冷却システム142の代わりに、磁石及び/又は磁束ガイドは、任意の好適な絶縁体によってエジェクタ導管からの熱から熱的に隔離され得る。図6は、例えば、エジェクタ導管と磁石及び/又は磁束ガイドとの間に配置された断熱材料又は排気チャンバの一方又は両方を含むことができる、好適な絶縁体139の例を例解している。例えば、絶縁体139は、絶縁体139の斜線領域によって表される薄い真空ギャップを任意選択的に含むことができ、外側チャンバ壁又は層と磁場源130との間に配置され、ここで、外側チャンバ壁又は層は、絶縁体139の外側ラインによって表される。
【0025】
磁石132及び磁束ガイド134を備える磁束回路の例を図6に示す。磁束ガイド134は、アレイ107(図7)のエジェクタノズル108が印刷材料104の噴出を可能にするように配置されているギャップ136を除く、閉鎖磁束ループとして構成される。エジェクタノズル108は、エジェクタハウジング120の幅寸法Wよりも短い、幅寸法Wを有するアレイ107の拡張部分107a内に配置されており、ギャップ136内に嵌合して、それによって、磁束ガイド134とエジェクタノズル108内のパルス領域との間の距離を減少させる。例えば、Wは、約0.5mm~約2mmなどの、約0.2mm~約10mmの範囲であり得、Wは、約1mm~約10mmなどの、約0.5mm~約100mmの範囲であり得る。別の例として、Wは、Wのサイズの約70%~約1%、例えば、約50%~約10%の範囲であり得る。これは、本明細書で考察されるように、印刷材料に所望の噴出力を提供しながら、電流が低減されることを可能にするという利点を有する、パルス領域における磁束密度の増加を可能にすることができる。導管138を通る通過は、フィーダ機構の一部として、アレイ107に印刷材料104の流れを提供することができる。
【0026】
一実施形態では、磁場源130は、アレイ107に統合されていない(例えば、エジェクタ導管自体のアレイに近接して配置されるが、組み込まれない)。一実施形態では、磁場源130は、例えば、図2図6、及び図16に示されるように、エジェクタノズル108の対向する側面上に配置され、ノズルのアレイの長さと平行である。この配置により、少なくとも磁場源130が任意の所与の行のエジェクタ導管106の間に配置されていないため、アレイの所与の行のエジェクタノズルをより密に充填することができる。アレイ107が2つの行のエジェクタ導管106を備える場合、例えば、図16に示されるように、磁場源130aは、任意選択的に、行間に配置される。
【0027】
再び図1及び図4を参照すると、エジェクタノズル108から印刷材料104の少なくとも一部分を噴出又は噴射するための所望の運動量を提供するために、電極110、112に十分な電流が提供される。電流の量及び電流パルスの長さは、当業者によって決定され得る。電極110及び112は、導電性印刷材料104との電気的接触を提供するように構成され得る。一実施例として、印刷材料が固体フィラメントである場合、電極110、112の一方又は両方は、任意の所望のばね機構113(図9)、又は通路106Cの長手方向軸lに対して横方向に、かつ長手方向軸に向かう方向に電極の一方若しくは両方を位置的に付勢する他の電極設計を使用して、軽くばねをかけることができる。このようにして、印刷材料104がエジェクタの動作中にノズル108内に送給されるときに、電極は、印刷材料104に対して押し付けられる。フィラメントに対してかかる付勢接触力を提供することができる好適なばね機構及び/又は電極設計は、当業者によって決定され得る。
【0028】
電極110、112は、印刷中のエジェクタノズル温度に耐えながら、印刷材料104に電気的接触を提供するのに好適な任意の材料を含むことができる。好適な材料の例には、本明細書に説明されるような耐火金属を含む印刷材料よりも高い溶融温度を有する金属、アルミニウム、アルミニウム合金(例えば、1000シリーズ、2000シリーズ、3000シリーズ、4000シリーズ、5000シリーズ、6061及び6063などの6000シリーズ、並びに7000シリーズのアルミニウム合金)、マグネシウム、マグネシウム合金、鉄、鉄合金(例えば、鋼)、銅、銅合金(例えば、亜鉛)、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、及び銀合金、が含まれる。上記金属の好適な合金は、例えば、アルミニウム、マグネシウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、タングステン、又は他の元素耐火金属のいずれか、パラジウム、銀、本明細書に列挙される他の耐火金属合金のうちのいずれかなどのうちの2つ以上の混合物などの、元素耐火金属を含む上記元素金属のうちの任意の2つ以上の混合物などの任意の所望の金属の混合物を含み得る。電極110及び112は、耐食性であり得る。例えば、本明細書に説明される電極110及び112のいずれかは、任意選択的に、溶融印刷材料による腐食に抵抗する、パラジウムなどの貴金属を含む不動態化コーティング144(例えば、図9)でコーティングされている。一例では、本明細書の電極のいずれかは、タングステン、別の耐火金属、銅、又は電極に好適なものとして本明細書で教示される他の金属のいずれかを含み得、パラジウムなどの貴金属を含む不動態化層でコーティングされている。電極上の耐食性コーティングとして貴金属を用いることは、一般に周知である。
【0029】
本明細書で電流パルス生成回路とも称される電流パルス生成システム114は、比較的短期間(例えば、単一電流パルス)で印刷材料104の所望の電磁力(例えば、ローレンツ力)誘導運動量を提供するのに十分な振幅を有する電流のパルスを生成する能力を有する。電流パルスは、生成された電磁力から生じる印刷材料の十分な運動量を生成し、例えば、3Dプリンタの動作中に、エジェクタノズル108からの印刷材料104の脱離及び噴出を引き起こす。噴出のために十分なアンペア数の所望のパルスを提供することができる任意のタイプの電流パルス生成回路を用いることができる。好適な電流パルス生成回路は、当該技術分野において周知であり、任意の所望の電流パルス生成システムを使用することができる。電流パルス生成システムは、例えば、図4図10、及び図11に示されるように、エジェクタノズルの第1の電極110及び第2の電極112などの、本明細書に説明されるエジェクタデバイス内の電極対(例えば、全ての電極対)のうちの任意の1つ以上と電気的に接続されている。一実施形態では、電流パルス生成システム114は、エジェクタノズル108と電気的に接続された電流源(例えば、第1の電極110に接続された電流源、及びエジェクタノズルの第2の電極112と電気的に接続された電流シンク)を備える。別の実施形態では、電流パルス生成システム114は、(例えば、ノズルの第1の電極110と第2の電極112との間に所望の電圧を印加するように)エジェクタノズル108と電気的に接続された電圧源を備える。好適な電流源及び電圧源の例は、当該技術分野において周知である。
【0030】
図4を参照すると、電流パルス生成システム114の回路は、パルス生成器、波形生成器、又は所望の電流パルスを生成することができる他のデバイスなどの、少なくとも1つのパルス制御デバイス114cによって動作する電源114a及び少なくとも1つの電流スイッチ114bを備えることができる。別個に示されているが、スイッチ114bは、任意選択的に、パルス制御デバイス114cの一部であり得る。パルス制御デバイス114cは、電流パルス生成システムのコンピュータ制御を提供するようにプログラム可能であり得る。電源114aは、所望の電流を供給することができるDC電源又はスイッチング電源などの任意の電源であり得る。スイッチ114bは、パルス制御デバイス114cと組み合わせて所望の電流パルスを提供することができる任意のスイッチであり得る。例としては、FET又はMEMSスイッチを含む、高電流可能スイッチが含まれる。当業者によって理解されるように、増幅器、抵抗器などの他の回路構成要素が、任意選択的に含まれ得る。本明細書に説明されるように、電流パルス生成システム114は、電極110及び112を使用して、エジェクタノズル108内の印刷材料に電気的に接続され得る。
【0031】
図10は、低デューティサイクルで少量の時間にわたって比較的高い電流パルスを提供するために用いられ得る可能性がある、電流パルス生成回路の例を例解している。図10の電流パルス生成システム114は、スイッチング電源などのDC電源である電源114a、及びスイッチ114bとして機能する複数のFETS(例えば、GaAs FETS又は他のFETS)を用いて、1つ以上のコンデンサを充電する。図10の電流パルス生成システム114は、本明細書に説明されるように、電極110及び112を使用して、エジェクタノズル108内の印刷材料に電気的に接続されている。荷電コンデンサは、印刷材料を横切って所望の電流パルス118を提供するように放電され得る。一般的な回路設計は、DC電圧源、電流フィードバック抵抗器を備えた高電力演算増幅器、及び/又はGaAs nMOSトランジスタなどの高速低直列インピーダンススイッチを用いることができる。そのような回路は、一般に周知である。急速双極スイッチングは、例えば、高電流Hブリッジを使用して同様に適用され得る。好適な電流パルスを提供することができる任意の他の好適な電流パルス生成回路を用いることができる。
【0032】
印刷材料の抵抗率は、加熱され及び/又は相変化するときに変化するが、電流パルスの所望の振幅及び/又は持続時間を決定するときに考慮され得る。所望される場合、電流パルス生成システム114によって供給される電流の量は、パルスによって引き起こされる印刷材料104の加熱及び/又は相変化によって起こり得る抵抗率の変化にもかかわらず、所望のアンペア数を印刷材料に提供するために、電流パルス118の持続時間にわたって意図的に変化することができる。
【0033】
一実施形態では、電流パルス生成システム114は、プログラム可能なパルス制御デバイスを含む。パルス制御システム160(図10)は、パルスコントローラ162及び計算システム164を備える、プログラム可能なパルス制御デバイスの例である。パルスコントローラ162は、例えば、電流パルス生成システム114の回路構成要素(例えば、電流スイッチ、電源及び/又は他の構成要素)とインターフェースして、電流パルスが第1の電極110と第2の電極112との間に流れるときに所望のパルス特性を有する電流パルスを生成する、CPU170及びメモリ172を備える、マイクロコントローラであり得る。パルスコントローラ162は、非一時的コンピュータ可読媒体(例えば、計算システム164のメモリ166)に埋め込まれたコンピュータ実行可能命令を実行することができる、計算システム164によって駆動され得る。計算システム164は、(例えば、CPU170及びメモリ172などのパルスコントローラ162に統合されたCPU及びメモリを用いることができる)パルスコントローラ162自体の一部として統合され得、又は例えば、パルスコントローラ162とインターフェース接続するメモリ166及びCPU168を含む、別個のコンピュータシステム(図10に示すような)であり得る。計算システム164の非一時的コンピュータ可読媒体に埋め込まれたコンピュータ実行可能命令は、とりわけ、計算システム164のCPU168に命令して、本明細書に説明されるような印刷材料104の噴出のために、パルス長、振幅、及び/又はパルス形状などの少なくとも1つの所望のパルス特性を決定することができる。計算システム164は、印刷材料104の所望の噴出特性を提供するパルス特性を計算するために数学的アルゴリズムを使用することなどによって、任意の好適な方法で少なくとも1つの所望のパルス特性を決定することができ、例えば、印刷材料のタイプ、エジェクタのパルス履歴、及び/又はプリンタ噴射機構からのフィードバックを考慮に入れることができる。そのようなフィードバックは、例えば、リアルタイム磁束変動、ノズル温度、印刷材料温度、及び/又は他のデータを含み得る。コンピュータシステム164及びパルスコントローラ162の一方又は両方の非一時的コンピュータ可読媒体(例えば、メモリ166又は172)に埋め込まれた追加のコンピュータ実行可能命令は、電流パルス生成システムの電圧源又は電流源に第1の電極110と第2の電極112との間に電流を流させるための命令又は電気信号を送信するために、パルス制御システム160のCPU(例えば、CPU168及び/又はCPU170)によって実行される。結果として生じる電流は、少なくとも1つのパルス特性を有する電流パルス118を含む。第1の電極110及び第2の電極112にわたる電流パルスを制御することにより、印刷材料104の噴出は、液滴体積、噴出された印刷材料の速度、及び噴出速度(例えば、1秒当たりの噴出数)などを含めて、制御され得る。
【0034】
上述のように、所望のパルス特性を決定するときに、計算システム164は、任意選択的に、例えば、デューティサイクルの変化によって引き起こされるノズル108における温度変化による、印刷材料104、又はシステム(例えば、磁石又は磁束ガイドに対する温度の影響)の導電率、熱膨張、磁束、又は他の温度依存性の特性の影響などを補償することができる。例えば、場合によっては、デューティサイクルは、高い場合があり、1つのパルスは、別のパルスにすばやく続く場合がある。これは、エジェクタノズル108、エジェクタ導管106がエジェクタノズル及び/又はその中に含まれる印刷材料104に近接して、より低いデューティサイクル状況と比較して温度を局所的に上昇させ得る可能性がある。そのような温度変化は、印刷材料噴出に影響を及ぼし得る。パルス特性を決定する際のこれらの効果を考慮することにより、電流パルス生成システムの計算システム164は、プリンタ噴射機構100の噴出特性を制御及び/又は改善することができる。
【0035】
図11は、図11の電流パルス生成回路が、二対以上の電極110a、112a、110b、112b、及び110c、112cを備えるエジェクタノズル108とともに用いられ得ることを除いて、図10の電流パルス生成回路と同様の電流パルス生成回路を例解している。3対の電極が示されているが、1~10個の電極対、又は2~5個の電極対などの任意の数の電極対を用いることができる。そのような設計は、図10の単一電極対設計と比較して、印刷材料を通る改善された制御及び/又はより高い電流密度を可能にし得る可能性がある。例えば、ノズル当たりの複数の電極は、可変体積液滴噴出を可能にし得、各噴出の液滴体積は、電流パルスを所望の数の電極対に送ることによって変化させることができる。したがって、より小さい液滴は、単一の電極対110a、112aを通る電流をパルスすることによって噴出され得、一方で、より大きい液滴は、2つの電極対110a、112a及び110b、112b、又は3つ以上の電極対を通る電流をパルスすることによって噴出され得る。図10に例解されるようなパルス制御システム160を用いて、図11の電流パルス生成回路を制御することもできる。本開示のデバイスのうちのいずれも、図11について本明細書に説明されるものと同様に、エジェクタノズル108内の複数の電極対を用いることができる。
【0036】
エジェクタノズル108は、エジェクタ導管106の端部分であり、プリンタ噴射機構100の動作中に印刷材料を噴出するように配置されている。エジェクタノズル108の通路106Cは、エジェクタ導管106の通路106Cの形又は異なる形状を有することができる。図4は、電極110、電極112、及び電極110と電極112との間に横方向に配置された電気絶縁体部分111によって境界付けられた円形断面を有する、通路106Cを有するエジェクタノズル108を示している。電気絶縁体部分111は、例えば、シリカ又はエジェクタ導管106に好適であるとして本明細書に説明される他の絶縁材料のうちのいずれかなど、エジェクタ導管106の電気絶縁材料と同じ又は異なることができる、絶縁材料を含む。正方形断面を有するエジェクタノズル108の実施例が、図8及び図9に示されている。正方形断面は、図4の円形断面よりも、印刷材料104を通るより均一な電流分布流を提供し得る可能性がある。例えば、他の多角形、楕円形などの任意の他の所望の断面形状が、通路106Cに用いられ得る。
【0037】
図12を参照すると、エジェクタノズル108は、通路106Cの断面が円形である場合の直径である、内幅dを有する。通路106Cの断面が円形ではない場合、dは、対向する絶縁体部分111間の最短直線の長さであり、ここで、直線は、通路106Cの図1図8、及び図9に示される長手方向軸「l」(ここで、長手方向軸は、図8及び図9のページに向かっている)を通過する。dを決定するために使用されるエジェクタノズル108の断面は、断面が通路106Cと交差する点において、長手方向軸「l」に対する全ての方向に垂直である平面にある。(例えば、dの場合の値がエジェクタノズル108の長さに沿って変化する場合などの)dに1つを越える可能な値が存在する場合、dは、エジェクタノズル108についての可能なd値の最小値である。dの場合の例示的な値は、例えば、約10マイクロメートル~約1000マイクロメートル、約20マイクロメートル~約500マイクロメートル、約50マイクロメートル~約200マイクロメートル、又は約100マイクロメートルを含む。一実施形態では、dは、約10マイクロメートル~約90、80、70若しくは50マイクロメートル、又は約10マイクロメートル~約25マイクロメートルなどの、約10マイクロメートル~100マイクロメートル未満のサイズの範囲である。第1の電極110及び第2の電極112の長さl(図4)(又は図11など、複数の電極対が用いられる場合の複数の電極対の組み合わされた長さ)は、例えば、内幅d(例えば、直径)の約1~約10倍などの任意の好適な長さにすることができる。長さlの好適な値の例は、約10マイクロメートル~約5000マイクロメートル、約10マイクロメートル~約1000マイクロメートルなど、約10マイクロメートル~約500マイクロメートルなど、又は約15マイクロメートル~約100マイクロメートル(例えば、90、80、70マイクロメートル以下)である。一実施形態では、電極110、112は、エジェクタノズル108内に完全に配置され、かつ/又はエジェクタノズル108の先端(例えば、最も端の位置)に配置される。
【0038】
エジェクタノズル108は、エジェクタ導管106の最も端の部分であり、本明細書に説明されるように、例えば、エジェクタノズル108の内幅d(例えば、直径)の約1~約10倍の範囲である、長さL図7)を有する。他の実施例では、ノズルの長さLは、例えば、dの約1~約5倍、dの約1~約3倍、dの約1~約2倍、又はdとおよそ同じ範囲である。一実施形態では、電極の長さlは、エジェクタノズルの長さLに等しい。
【0039】
エジェクタノズル108の設計及び材料は、エジェクタ導管106の残りの部分と同じ又は異なり得る。ノズルの長さを含むエジェクタ導管106の全長は、例えば、電極110及び112の長さlの約2~約100倍、又は約4~20倍である長さなどの任意の好適な長さであり得る。
【0040】
一実施形態では、図1及び図2に例解されるように、エジェクタ導管106の通路106Cは、第1の端部106Aに第1の幅を有し、第1の幅は、通路106Cがエジェクタノズル108内の印刷材料の周りに密接に適合することを可能にしながら、材料が固体のワイヤとして導入される場合に印刷材料が第1の端部106A内に容易にねじ込まれることを可能にするために、エジェクタノズル108の内幅dよりも広い。一実施形態では、通路106Cは、第1の幅から内幅まで徐々に先細になっていて、固体フィラメントの形態の印刷材料104が通路106Cに引っ掛かること、及び/又は望ましくなく遮断することを回避することができる。
【0041】
フィーダ機構102は、任意の好適な機械システム、圧力駆動システム、又は印刷材料104をエジェクタ導管106に送給することができる他のシステムであり得る。フィーダ機構は、印刷材料104を移動させるための移動体102a(図22)として機能することができる1つ以上のポンプ、アクチュエータ、又はそれらの組み合わせを備えることができる。好適なアクチュエータの例としては、電気モータ、圧電モータ、インチウォームアクチュエータ、油圧アクチュエータ、及び空気圧アクチュエータが含まれる。使用されるフィーダ機構102のタイプは、用いられる印刷材料104のタイプに依存するであろう。一実施例では、印刷材料104は、複数のフィラメントを含み、フィーダ機構102は、複数のフィラメントを前進させるための機構である。本開示の目的のための「フィラメント」という用語は、固体のワイヤ状フィラメント、又は液体で満たされた毛細管若しくは他の液体で満たされた導管などの液体フィラメントの両方を含むように定義される。固体フィラメントのフィーダ機構の例としては、当該技術分野において周知であるスプールフィーダ及びインチウォームアクチュエータが含まれる。当業者によって理解されるように、固体フィラメントの形態、乾燥粉末、又は他の固体形態のエジェクタ導管106に固体印刷材料104をラチェット又は他の方法で前進させるための他のフィーダデバイスがまた、フィーダ機構102として用いられ得る。
【0042】
実施形態では、フィーダ機構102は、液体フィラメントなどの液体印刷材料をエジェクタ導管106内に供給し、液体印刷材料をエジェクタノズル108に前進させるための任意の好適な機構であり得る。液体印刷材料のための好適なフィーダ機構の例としては、リザーバ又は印刷材料(例えば、溶融金属)の他の供給源からの液体を前進させ、それによって、噴出後にエジェクタノズル108を安定的に補充するのに十分な毛細管力及び/又は過剰圧力を用いる機構が含まれる(例えば、フィーダ機構は、噴出後にエジェクタノズルを自動的に補充するように設計され得る)。フィーダ機構は、例えば、ポンプ、フィーダ導管、及び/若しくは(例えば、リザーバ内の印刷材料のある充填レベルを維持することによって)印刷材料で充填されて静水圧ヘッドを提供することができる印刷材料リザーバ構成、又は過剰圧力を印加するための任意の他のデバイスを備えることができる。そのようなフィーダ機構は、当該技術分野において周知である。当業者は、適切なフィーダ機構を容易に決定することができるであろう。
【0043】
一実施形態では、フィーダ機構102は、異なる送給速度で、各エジェクタ導管106に印刷材料を供給することができる。一例として、複数のフィラメントを前進させるためのフィーダ機構102は、別個に制御可能な送給速度で複数のフィラメントの各々を漸増的に前進させるための別個の機構を備える。したがって、一実施形態では、各エジェクタにおける噴出速度が印刷のために、所望に応じて、増加又は減少するにつれて、送給速度は、次の噴出前にエジェクタノズルへの印刷材料104の補充を満たすことができる。
【0044】
複数のエジェクタ導管106の各々の少なくとも一部分は、電極110、112の動作中の電気的短絡を回避するために好適な電気絶縁を提供する電気絶縁材料を含む。電気絶縁材料は、所望の構造的完全性を維持しながら、プロセス温度に耐えるように選択され得る。一実施形態では、電極110及び112を除くエジェクタ導管106全体は、例えば、図1に示されるように、電気絶縁材料であり得る。一実施形態では、導管106は、絶縁材料で覆われた導電性材料を含むことができる。導管106に用いられる電気絶縁材料は、例えば、金属酸化物(例えば、ドープ又はドープされていないシリカなどのガラス)、セラミック、及びそれらの組み合わせから選択される耐火材料などの耐火材料であり得る。本開示の目的のために、「耐火材料」という用語は、1気圧で1000℃以上の融点を有する任意の材料として広く定義される。例えば、耐火材料は、約1200℃~約4000℃、又は約1400℃~約3500℃、又は約1700℃~約3500℃、又は約2000℃~約3500℃などの、1000℃~約4000℃の範囲の融点を有することができる。エジェクタ導管は、これらの範囲外の融点を有する、非耐火性材料を含むことができる。例えば、印刷材料104が導電性はんだ材料である場合、エジェクタ導管は、800℃、700℃、500℃以下などの、1000℃未満の融点を有する材料で作製することができる可能性がある。
【0045】
一実施形態では、エジェクタ導管106は、複数のエジェクタ導管106の各々の少なくとも一部分が金属などの熱伝導性材料を含む場合など、電気絶縁材料及び他の材料の組み合わせを含む。熱伝導性材料は、所望に応じて印刷材料104の温度を上昇及び維持するために、加熱器機構126(図2図9、及び図11)から印刷材料104に熱エネルギーを伝達するために用いられ得る。加熱器機構126は、以下でより詳細に説明される。図13は、エジェクタ導管106が、電気的に絶縁された内側導管部分115と、内側導管部分の電気絶縁材料とは異なる熱伝導性材料を含む外側導管部分116と、を備える、1つのそのような実施形態の例を例解している。図14は、アレイ内に配置されたエジェクタ導管106が各々、電気的に絶縁される内側導管部分115を備える、更に別の例示的な構成を含む。第1の外側導管部分116は、内側導管部分115の上部領域を囲むように配置されている。第1の外側導管部分116は、熱伝導性材料を含む。第2の外側導管部分117は、内側導管部分115の下部領域を囲むように配置されている。第2の外側導管部分117は、内側導管部分115の電気絶縁材料と同じ又は異なり得る、第2の電気的絶縁材料を含む。第2の外側導管部分117は、図14の第1の外側導管部分116とほぼ同じ厚さに見えるが、電極110及び112と導管106内で用いられる任意の導電性材料との間に十分な電気絶縁が提供される限り、第2の外側導管部分117は、第1の外側導管部分116よりも薄くなり得る。更に別の実施形態では、内側導管部分115は、電極110及び112のための電気絶縁を提供するのに十分に厚く(例えば、内側導管部分115が電極110及び112の幅よりも厚いなど)、その場合、第1の外側導管部分116は、エジェクタ導管106の全長に延在することができる。エジェクタ導管106のための様々な他の設計を実装することができる。内側導管部分115(図13及び図14)及び第2の外側導管部分117の電気絶縁材料は、例えば、エジェクタ導管106として使用するための本明細書に説明される電気絶縁材料のいずれかを含むことができる。図13及び図14の外側導管部分116は、印刷材料104に熱を伝達するための効果的な熱伝導率を提供し、かつ構造的完全性を維持しながらプロセス温度に耐えることができる、任意の熱伝導性材料を含むことができる。熱伝導性材料の例としては、銅、銅合金、白金及び白金合金などの印刷用途のための好適な高熱コンダクタンス及び融点を有するグラファイト、耐火金属、又は他の金属、並びにそれらの組み合わせが含まれる。本明細書で使用される場合、「耐火金属」という用語は、例えば、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、バナジウム、クロム、ジルコニウム、ハフニウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、及び本明細書に列挙される耐火金属のうちのいずれかの2つ以上の合金、又は鉄、ニッケル、銅、銀などの他の金属を有する耐火金属のうちの1つ以上の合金などのこれらの金属のうちのいずれかの合金を含む、元素耐火金属及びそれらの合金を含むように定義される。好適な耐火金属合金は、当該技術分野において既知である。
【0046】
図2を参照すると、複数のエジェクタ導管106は、エジェクタハウジング120内に支持されている。エジェクタ導管106は、ハウジング材料とは別個の構造であり得、エジェクタハウジング120に任意の好適な様式で装着され得る。代替的な実施形態では、複数のエジェクタ導管は、エジェクタハウジング120と一体であり得る。例えば、導管は、穿孔されるか、又は別様にハウジング材料に直接的に形成される毛細管又はより大きな導管として形成され得る。導管は、任意選択的に、エジェクタハウジング120とは異なるが、それと一体である材料を含むエジェクタ導管106の内面を提供するようにコーティングされ得る。そのような導管をハウジング材料に直接的に形成するための技術、並びに導管をコーティングするための技術は、一般に周知である。実施形態では、エジェクタ導管106は、エジェクタハウジング120と異なる材料又は同じ材料を含むことができる。
【0047】
エジェクタハウジング120は、噴射プロセス温度に耐えることができ、かつエジェクタ導管106に所望の支持を提供することができる、任意の好適な材料を含む。好適なハウジング材料の例としては、アルミニウム、銅、真鍮、及び鋼、耐火金属、セラミック、他の耐火材料などの金属、プロセス温度に耐えることができるポリマー(例えば、150℃~650℃以上、200℃~300℃などの融点を有するポリマー)、並びに金属被覆セラミック及びセラミック被覆金属などのそれらの組み合わせが含まれる。複合ハウジング材料の例は、ムライトなどのセラミックでクラッドされた銅であり、ここで、銅及びムライトは、同様の熱膨張係数を有する。用いられる具体的な材料は、噴射される印刷材料に依存することができる。
【0048】
一実施形態では、プリンタ噴射機構100は、例えば、図2図14図15、及び図16に示されるように、3次元プリンタの動作中に、エジェクタ導管106を囲むエジェクタ導管106の少なくとも一部分及び任意選択的にエジェクタハウジング120を加熱するための加熱器機構126を備える。実施形態では、図15を参照すると、加熱器機構126は、リザーバ140の温度を印刷材料104の溶融温度以上に維持することができる。リザーバ140は、複数のエジェクタ導管106と流体接続している。一実施例では、加熱器機構126は、印刷材料104を印刷材料104の溶融温度又はそれを超える温度になるように十分な熱エネルギーを提供し、リザーバ140に保持され、エジェクタ導管106からノズル108までリザーバ140から流れる間に、印刷材料104を溶融温度以上に維持することができる。エジェクタ導管106は、本明細書に説明されるエジェクタ導管のうちのいずれかと同じように構成され得る。
【0049】
一実施形態では、図14を参照すると、加熱器機構126は、印刷材料をエジェクタノズル108に流す前に、印刷材料104を固体から液体に溶融させるために、及び/若しくは印刷材料104を液体形態に維持するために、十分な熱エネルギーを提供することができ、又は代替的に、印刷材料104を溶融温度のすぐ下の温度に上げることができる。印刷材料104がエジェクタノズル108に入る前に溶融されない場合、電極110、112間の電気パルスは両方とも、ノズル内の印刷材料104を溶融し、かつ噴出のためにローレンツ力を供給することができる。しかしながら、印刷材料をエジェクタノズル108内に流す前に印刷材料104を溶融することにより、導管106を通して、かつエジェクタノズル108内への液体形態の印刷材料の搬送の容易さなどの特定の利点、並びに印刷材料104を溶融することと、及び単位時間当たりの可能な噴出数を増加させ得る可能性がある、1つ以上の電流パルスを使用して噴出力を提供することの両方を回避する能力を提供することができる。
【0050】
加熱器機構126は、例えば、任意の好適なタイプの抵抗加熱器、誘導加熱器、放射加熱器、又はこれらのいずれかの組み合わせを含むことができる。例えば、加熱器機構126は、図14及び図15に例解されるように、リザーバ140又は導管106の周りに配置された加熱要素127を備える。加熱要素127は、例として、抵抗加熱コイル又は誘導コイルの形態であり得る。一実施例として、好適な抵抗加熱器機構は、ハウジング内に埋め込まれているか、又はエジェクタ導管106及び/若しくはリザーバ140を囲む、オーミック蛇行トレースを備え、加熱器機構126は、電流パルス生成システム114及び/又は電極110、112とは別個である。
【0051】
一実施形態では、エジェクタ導管106のアレイは、X軸上に配置されたM列のエジェクタ導管と、Y軸上に配置されたN行のエジェクタ導管と、を含み、ここで、Mは、例えば、約2~約1000の範囲の整数であり、Nは、1~2の範囲の整数である。例えば、図2のアレイに対して、Mは、3であり、Nは、1であり、一方で、図16のアレイに対して、Mは、3であり、Nは、2である。他の実施例では、Mは、約5~1000、50~1000、100~900、250~750、又は500~1000の範囲の整数である。
【0052】
一実施形態では、エジェクタ導管106の行は、直線的に配置されており、各行のエジェクタ導管106は、例えば、図16に示されるように、近接するパッキングを容易にするために、隣接する行のエジェクタ導管に対して互い違いに配置されている。代替的な実施形態(図示せず)では、エジェクタ導管106の列は、直線的に配置されており、各列のエジェクタ導管106は、隣接する列のエジェクタ導管に対して互い違いに配置されている。複数のアレイは、所望に応じて、システム内の行又は列の数を拡張するために積み重ねられ得る。
【0053】
印刷材料の噴出中の液滴形成は、エジェクタノズル108内又はその外部の任意の好適な機構によって生じ得る。一実施形態では、液滴を形成するための印刷材料の脱離は、ノズル108内などのエジェクタ導管106の内部に印刷材料をネッキングオフすることによって起こり得る。そのような実施形態では、エジェクタ導管106は、任意選択的に、図17に例解されるような1つ以上のベント135を含むことができる。ベント135は、エジェクタノズル108内の位置又はその近くなど、エジェクタノズル108内又はそのすぐ上に配置することができ、ここで、エジェクタ導管106内の残りの印刷材料104から噴出される印刷材料104のネッキングオフが、液滴形成中に発生する。ベント135は、空気又は他の周囲ガス(矢印137によって例解されるように)がエジェクタ導管106内に、及び/又は印刷材料104が噴出されるとエジェクタノズル108内に流れることを可能にする。これにより、印刷材料104が噴出され、エジェクタ導管106内の残りの印刷材料104からより容易に分離され、及び/又はエジェクタノズル108からより容易に噴出されることが可能になり得る。1つ以上のベント135は、印刷材料104が噴出されるにつれて周囲ガスがエジェクタノズルに流れることを可能にする、任意の様式で構成され得る。図18A及び図18Bは、ベント135がエジェクタノズル108の内面上の溝の形態をとる別の実施例を例解している。任意の他の好適なベント構成を用いることができる。一実施形態では、図17図18A、及び図18Bのようなベント135は、液体印刷材料104の表面張力が、大量の印刷材料がベント135内にエジェクタ導管から流出することを可能にしないように十分に小さいが、周囲ガスが溝を通ってエジェクタノズル108内に流れることを可能にするのに十分な大きい寸法を有する。例えば、図17のベント135の幅及び/若しくは長さ、若しくは円形状のベント(図示せず)の場合の直径、又は図18の溝幅は、液体印刷材料の貫通が低減又は排除されるように、エジェクタノズルの内径よりも10倍以上小さくなり得る。ベントは、当該技術分野において周知のエッチング技術又はレーザアブレーションなどによって、任意の好適な手段によって形成することができる。
【0054】
本開示は、いかなる具体的な液滴形成及び/又は脱離モードにも限定されることを意図するものではない。例えば、液滴は、エジェクタ導管106内部の脱離ゾーンでネックオフ及び脱離し得るが、液滴が、エジェクタ導管106の外側にネックオフ及び脱離し得、その後、エジェクタ導管106内への未脱離印刷材料104が後退し得るということもまた可能である。したがって、液滴の噴射のモードは、エジェクタノズル108から自由空間への溶融印刷材料104のローレンツ力による「押出」、続いて電流パルスが終了し、印刷材料104が冷却/収縮するときに押出印刷材料104の脱加速/後退を含むことができる。液滴を噴射及び/又は脱離する他のモードもまた、実現され得る。
【0055】
本明細書に説明されるプリンタ噴射機構100は、印刷材料の噴射に好適な任意のタイプのプリンタで用いられ得る。一実施形態では、プリンタは、3D物体を印刷するために使用可能な3次元(「3D」)プリンタである。例示的な3Dプリンタ150のブロック図は、図19に示されている。3Dプリンタ150は、本明細書に説明されるように、エジェクタ導管106のアレイ107を含むプリンタ噴射機構100のうちのいずれかを備えることができる。更に、3Dプリンタは、プリント基板154に対するアレイ107の相対位置を制御するための位置決めシステム152を備えることができる。「プリント基板154に対するアレイ107の相対位置を制御する」という句は、アレイ107及びプリント基板154の一方又は両方が、アレイとプリント基板との相対位置を変更するために移動し得ることを意味する。プリント基板154とアレイ107の相対位置は、プリント基板154が複数のエジェクタ導管から噴射可能な印刷材料104を受容し、それによって、3D物体を形成するように配置されるように、印刷中に修正される。位置決めシステム152は、プリント基板154を配置するためのプリント基板取り扱い機構156と、アレイ107及び任意選択的に、電流パルス生成システム114の一部、又はそれへの電気的接続などのプリンタ噴射機構100の他の部分を配置するためのアレイ位置決め機構158と、のうちの一方又は両方を備えることができる。プリント基板154は、3次元物体を印刷することが望ましい任意の基板を含むことができる。プリント基板154の例は、3Dプリンタ150の一部である構築プレート、又は印刷後に3D物体が取り外され得る他の一時的な基板である。別の例では、プリント基板154は、例えば、プリント基板154が回路の一部分が印刷されているプリント回路基板である場合など、印刷後に3次元物体に恒久的に取り付けられることが意図され得る。
【0056】
プリント基板取り扱い機構156は、3Dプリンタ150の動作中にアレイ107内に配置された複数のエジェクタ導管から噴射可能な印刷材料を受容するように、プリント基板154を配置するのに好適な任意の機構であり得る。一実施形態では、プリント基板取り扱い機構156は、プリント基板154を、噴射印刷材料が目標とされる所望の位置にx軸、y軸及び/又はz軸に沿った方向で移動させることによって、構築プレート又は他の基板などのプリント基板154を配置する能力を有する。アレイ位置決め機構158は、噴射印刷材料104が標的化される所望の位置にx軸、y軸、及び/又はz軸のうちの1つ以上に沿った方向でアレイ107を移動させるのに好適な任意の機構であり得る。プリント基板取り扱い機構156及びアレイ位置決め機構158のいずれか又は両方を含む、位置決めシステム152は、例えば、トラック182を備えるシステムを使用して、プリント基板154及びアレイ107を互いに対して配置するための移動体として機能することができる、1つ以上のアクチュエータ180(図22)を備えることができる。好適なアクチュエータの例としては、電気モータ、圧電モータ、油圧アクチュエータ、及び空気圧アクチュエータが含まれる。図22は、プリント基板154を支持するための作動(例えば、モータ付き)X-Yステージ184と、垂直方向の配置を可能にするために、プリンタ噴射機構100の全て又は一部分100aが1つ以上のアクチュエータ180を使用して移動され得る、垂直トラックシステム186と、を備える、そのような位置決めシステム152の例を例解している。プリンタ噴射機構100の部分100aは、アレイ、本電流パルス生成システムの全部又は一部、及び磁場源内に配置された複数のエジェクタ導管を含む垂直な位置決めのために垂直トラックシステム186に取り付けられた本明細書に説明されるプリンタ噴射機構100の構成要素のうちのいずれかを備えることができる。フィーダ機構102は、(図22に例解されるように)垂直トラックシステム186に直接的に取り付けられないように配置され得るか、又は他の実施形態では、垂直トラックシステム186に直接的に取り付けられ得る。別の実施形態では、位置決めシステム152は、プリント基板154を3次元で支持及び配置するための作動(例えば、モータ付き)X-Y-Zステージを備え、プリンタ噴射機構100の部分100a(例えば、印刷ヘッド)の位置は固定されている。プリントヘッドをその取り付けられたフィーダ及び支持要素で固定し、プリント基板154を3Dでのみ移動させることが、一般にはより容易である。しかしながら、相対運動のための任意の手段を使用することができる。
【0057】
言及されるように、位置決めシステム152は、プリント基板取り扱い機構156及びアレイ位置決め機構158の一方又は両方を備えることができる。一例として、プリント基板取り扱い機構156を使用して、プリント基板154をx軸及びy軸の両方に沿って移動させることができ、アレイ位置決め機構158を使用して、アレイ107及び任意選択的にプリンタ噴射機構100の全体又はその任意の部分をz軸に沿って移動させ、それによって、プリント基板154及びアレイ107を3Dプリンタの動作中に3次元で互いに対して位置決めすることを可能にすることができる。一実施例として、この考察の目的のために、x軸及びz軸は、図20の印刷動作に対して例解される通りであり、y軸(図示せず)は、紙の中の方向にあり、x軸及びy軸は、プリント基板154の上面に対して平行であり、z軸は、プリント基板154の上面に対して垂直である。
【0058】
一実施形態では、プリント基板154は、構築プレートであり、任意選択的に、構築プレート154内に配置されるか若しくはそれに近接している、又は放射加熱ランプ若しくはレーザの場合、構築プレートが放射エネルギーで衝突することを可能にするように配置される、抵抗加熱要素、誘導加熱コイル、放射加熱ランプ若しくはレーザ、又はこれらの2つ以上の組み合わせなどの加熱器機構155を用いる。加熱器機構155は、構築プレート及び/又はその上に印刷されている3D物体を所望の堆積温度に加熱するのに十分な熱エネルギーを提供することができる。加熱機構を有する構築プレートを含む好適な構築プレートは、当該技術分野において周知である。
【0059】
印刷材料を噴射する方法
本開示の実施形態は、プリンタ噴射機構から印刷材料を噴射するための方法を対象とする。図21の200に説明されるように、方法は、アレイ内に配置された複数のエジェクタ導管106(図1及び図2)に導電性である印刷材料104を供給することを含む。エジェクタ導管106は、印刷材料を受け入れるように構成された第1の端部106Aと、エジェクタノズル108を備える第2の端部106Bと、を備える。エジェクタノズル108は、例えば、約10マイクロメートル~約1000マイクロメートルの範囲の内幅(例えば、直径)、又は本明細書に開示される他のエジェクタノズルの幅のいずれかを有することができる。本明細書に説明される方法では、エジェクタノズル108は、本明細書でより詳細に考察するように、印刷材料を介して電気パルスの形態で電流を供給するための電極110、112を備える。
【0060】
図21の202に示されるように、印刷材料104は、印刷材料104がエジェクタノズル108内に配置されるまで、アレイ107のエジェクタ導管106のうちの1つ以上内に前進される。一実施例として、印刷材料104は、エジェクタノズル108を少なくとも部分的に充填する(例えば、完全に充填する、又は実質的に充填する)ように前進され得る。
【0061】
一実施形態では、印刷材料104は、固体又は液体として供給され、次いで、液相としてエジェクタノズル108に前進される。例えば、印刷材料104は、固体又は液相中の1つ以上のフィラメントの形態でリザーバ140又は複数のエジェクタ導管106に供給され得る。印刷材料104が固体として供給される場合、印刷材料は、例えば、本明細書に説明されるように、加熱器機構126を使用して溶融するように加熱される。溶融は、エジェクタノズル108への印刷材料の前進中に任意の時点で起こり得る。一実施例では、溶融は、印刷材料がリザーバ140に入る前に、若しくはちょうど入ったときにリザーバ140内で、又は複数のエジェクタ導管106内で起こり得る。したがって、印刷材料は、任意選択的に、固体としてある距離を前進され、次いで、エジェクタノズル108に流れる前に溶融するように加熱され得る。溶融が生じると、液体又は溶融した印刷材料104は、溶融温度以上に維持され、印刷材料をエジェクタノズル108に流すことによって前進される。
【0062】
別の実施形態では、印刷材料104は、固体形態で1つ以上のエジェクタ導管106の各々に個別に供給される、複数の固体フィラメントを含む。次いで、固体印刷材料104は、各エジェクタノズル108に所望の送給速度で通路106Cを介して別個に前進される。次いで、電極110、112間の電流パルスを用いて、エジェクタノズル108内の印刷材料104を溶融することができる。次いで、得られた液体印刷材料をエジェクタノズル108から噴出するためのローレンツ力を生成するために、第2のパルスを用いることができる。
【0063】
印刷材料の所望の送給速度は、各エジェクタノズル108に対して異なり得る。送給速度は、印刷材料がエジェクタノズル108から噴出されている速度に応じ得、次いで、各ノズルからの単位時間当たりの噴出の数及び噴出当たりの液滴サイズに依存する。
【0064】
図21の204に示されるように、エジェクタノズル108内に磁場が提供され、それによって、エジェクタノズル内に配置された印刷材料104内に磁束領域133が形成される。これは、例えば、本明細書に説明されるように、磁場源130によって供給される磁場にエジェクタノズル108の少なくとも一部分を浸漬することによって達成され得る。一実施形態では、エジェクタノズル108は、プリンタ噴射機構100の動作全体を通して磁場に連続的にさらされたままである。別の実施形態では、磁場は、例えば、磁束ガイド134を磁石132から接続及び切断するスイッチを使用することによって、又は磁束ガイド134と組み合わせて電磁石を使用し、かつ電磁石をオン及びオフに切り替えることによって、所望に応じて、定期的にオン及びオフにされる。この場合、磁場は、電流が電極110、112間でパルスされてローレンツ力を提供するときに、オンになるように制御される。一実施形態では、磁場はオフにされ、一方で、電極110、112間の第1の電流パルスがノズル108内の固体印刷材料を溶融するために使用され、次いで、溶融印刷材料の噴出のためのローレンツ力を生成するために使用される第2の電流パルスの前に、磁場はオンにされる。
【0065】
図21の206に示されるように、電流は、エジェクタノズルのうちの少なくとも1つにおいて印刷材料104の磁束領域133を通してパルスされて、印刷材料104の一部分をエジェクタノズル108のうちの少なくとも1つから、例えば、プリント基材上に噴出するのに十分な運動量を提供する。電流を流すことは、例えば、本明細書の電流パルス生成システムのうちのいずれかなどの電流パルス生成システム114を用いて、第1の電極110と第2の電極112との間に電流パルスを送ることを含み得る。
【0066】
電流iが、エジェクタノズル108内の電極110、112間の導電性印刷材料4を通して、磁場Bの方向に対して実質的に垂直な方向にパルス化されるときに、ローレンツ力が、電流が流れる導電性印刷材料104上に生成される。一般的に言えば、ローレンツ力、したがってエジェクタノズル108から噴出される印刷材料の噴出力、又は運動量は、磁束領域での電流iと磁束密度Bの外積に比例するであろう。
【0067】
噴出された印刷材料の所望の運動量を達成するために使用される電流の量及び電流パルスの長さは、印刷材料のタイプ、磁束領域の磁束密度、及び噴出される印刷材料の量などに依存し、当業者によって容易に決定され得る。噴出のための運動量を提供にすることに加えて、より短い電流パルス長はまた、より速い噴出速度(例えば、同じエジェクタノズルからの1秒当たりの印刷材料の噴出数の増加)を可能にすることができる可能性がある。
【0068】
一実施形態では、導電性印刷材料104を通って電流パルスを流して、液体印刷材料104の一部分をエジェクタノズル108から噴出させた直後に、電極110と電極112との間の電流の方向は、逆になる。電流の方向を反転させると、ノズル108内に残っている印刷材料104の部分に対するローレンツ力が逆転し、それによって、液体印刷材料の列の一部分を印刷ノズル108に引き戻す。これは、液滴が印刷材料の残りの列からより容易に破壊されるように、液滴が形成される、液体印刷材料のネッキングオフポイントでの力を増加させるのに役立ち得る。代替の実施形態では、電流パルスを導電性印刷材料104を通して流して、液体をエジェクタノズル108から押し出した直後に、電流の流れが停止される。この実施形態では、電流の初期パルスは、電極110と電極112との間の電流の流れの方向を逆転させることなく、所望の液滴形成及び印刷材料104の噴出を提供するのに十分である。
【0069】
単一の電流パルスを使用して印刷材料104の噴出を達成することを上記で教示したが、同じ又は複数の対の電極からのいずれかで噴出を達成するために、2つ以上の電流パルスを使用することも有用であり得る。例えば、2、3、又はそれ以上の急速なパルスを用いて、単一のより長いパルスとは対照的に、印刷材料の所望の噴出を達成することができる。概して、任意の所望の波形を任意選択的に選択して、流体の流れ及び噴出を最適化することができる。
【0070】
液滴サイズは、オンデマンドで個別に選択することができる。一実施形態では、液滴サイズは、各パルスの電流パルスエネルギーを変化させる(例えば、電流パルスのパルス長及び/又は振幅を変化させる)ことによって変化し得る。別の実施形態では、複数のアドレス可能な電極対(図11に示されるものと同様であり、各電極が独立して駆動される)を用いて、液滴体積を変化させることができる。したがって、動作中、電流生成システムは、エジェクタノズル108における第1の数の電極対(例えば、図11の電極対110a、112a、110b、112b、及び110c、112cのうちの1つ以上)の間に電気パルスを送るために使用されて、第1の液滴体積を噴出し、続いて第2の数の電極対の間に電気パルスを送って、第1の液滴体積とは異なる第2の液滴体積を噴出することができ、第1の数の電極対は、第2の数の電極対とは異なる。したがって、このプロセスでは、第1の噴出中に噴出された印刷材料の液滴サイズは、第2の噴出中に噴出された印刷材料の液滴サイズとは異なる。
【0071】
噴出当たりの液滴サイズは、印刷される物体の詳細の所望のサイズ、印刷材料の特定の特性(例えば、熱伝達及び膨張特性)、印刷材料に提供される電流パルスの特性、ノズルサイズなどを含む、様々な要因に基づいて選択され得る。液滴は、概して、噴出ノズル108の内径と同じくらい小さい直径サイズを有し得るが、より長い長さの印刷材料(液体フィラメントなど)が噴出される場合、著しく大きい直径を有し得る可能性がある。一実施形態では、単一の噴出(例えば、単一のパルスを使用する)で噴出された印刷材料の長さは、印刷材料が噴射される毎、印刷ノズル108の内幅(例えば、直径)の約1倍~約10倍である。
【0072】
印刷材料104の噴出後、追加の印刷材料104をエジェクタノズル又はノズル108を充填するために前進させ、次いで、電流パルスを繰り返して、追加の印刷材料を噴出することができる。ノズルを充填するために印刷材料を前進させ、噴出のためにパルスを提供するこのプロセスは、印刷が完了するまで、アレイ内のエジェクタノズル108の各々について所望される任意の回数を繰り返すことができ、それによって、3D物体を形成する。印刷中、印刷材料104の噴出は、特定の印刷プロセスが実行されることを遂行するために、所望に応じて、2つ以上のエジェクタノズル108から同時に、及び/又はアレイ内のエジェクタノズル108の全てから同時に、アレイ内の単一のエジェクタノズル108から生じ得る。
【0073】
一実施形態では、印刷材料のうちの少なくとも一部分を噴出することは、エジェクタノズルに近接してシースガスを流すことを含み、シースガスは、不活性ガス及び還元ガスの一方又は両方を含む。シースガスを用いる実施例は、図3及び図6の矢印210によって例解されている。シースガス流は、例えば、アレイ107及び/又はエジェクタハウジング120内など、プリンタ噴射機構100内又はその近くに配置されたシースガスベント212を通してシースガスを流すことによってなど、任意の好適な様式で達成され得る。一実施形態では、シースガスは、堆積前に印刷材料を冷却することを回避するために、所望の温度に維持される。例えば、シースガス温度は、印刷材料の融点以上であり得る。このようにして、所望される場合、基材上への堆積が生じるまで、印刷材料を溶融状態に維持することができる。一実施形態では、シースガスは、それらが噴出されるときに液滴とほぼ同じ速度で、及びほぼ同じ方向に移動することができる。
【0074】
磁場は、本明細書に説明される磁場源のうちのいずれかを含む、任意の好適な供給源によって提供され得る。一実施形態では、磁場源は、永久磁石を含む。方法は、磁場強度の大きな低減を回避するために、永久磁石を冷却して、磁石の温度をキュリー温度を下回るように、又は推奨される動作範囲内に、低減させることを含むことができる。例えば、磁石は、約0℃~約160℃の範囲の温度などの、200℃未満の温度に維持されるように冷却され得る。磁石の冷却は、本明細書に説明されるように、磁束ガイド134の有無にかかわらず用いられる磁石132について起こり得る。例えば、磁石に近接する冷却流体を循環させることによって(例えば、磁石を囲む空間を冷却するように配置された導管(図示せず)を通して冷却流体を流すことによって、又は磁石の表面にわたって冷却流体を流すこと、若しくは磁石若しくは磁束ガイドの内部を通して冷却剤を流すことによって)、任意の好適な冷却技術を使用することができる。冷却流体は、ポンプ、ファン、送風機及び/又は圧縮機などの任意の好適な機械システムを使用して循環されて、磁石を冷却することができる。一実施形態では、磁束ガイドは、磁石を冷却する代わりに、又はそれに加えて、所望の動作範囲に冷却され得る。磁石を冷却するための本明細書に列挙される技術及び/又は冷却システムのうちのいずれかは、磁束ガイドを冷却するために用いられ得る。
【0075】
プリンタ噴射機構は、およそ印刷材料104の溶融温度以上である、エジェクタノズル温度で動作することができる。例えば、ノズル温度は、約50℃~約2000℃、約100℃~約1800℃、約150℃~約1600℃、約500℃~約1000℃、又は約600℃~約1000℃の範囲であり得る。耐火金属である印刷材料104の場合、ノズル温度は、例えば、約2000℃~約3000℃、又は約2000℃~約2500℃の範囲であり得る。
【0076】
印刷材料104は、任意の導電性材料であり得る。一例では、印刷材料は、少なくとも1つの金属を含む。少なくとも1つの金属は、例えば、スズ、スズ合金、鉛、鉛合金(例えば、スズ及び鉛の一方又は両方を含むはんだ)、アルミニウム、アルミニウム合金(例えば、1000シリーズ、2000シリーズ、3000シリーズ、4000シリーズ、5000シリーズ、6061及び6063などの6000シリーズ、並びに7000シリーズのアルミ合金)、マグネシウム、マグネシウム合金、鉄、鉄合金(例えば、鋼)、銅、銅合金(例えば、亜鉛)、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金から選択され得る。上記の金属の好適な合金は、任意の所望の金属の混合物、例えば、上記元素金属印刷材料(例えば、アルミニウム、マグネシウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、銀などの2つ以上の混合物)のうちのいずれかの2つ以上の混合物を含むことができる。一実施形態では、印刷材料104は、90重量%超、例えば、約95重量%~100重量%、又は98重量%~100重量%、又は99重量%~100重量%、又は99.5重量%~100重量%、又は9.8重量%~100重量%、又は99.9重量%~100重量%の金属含有量を有する。
【0077】
一実施形態では、印刷材料104は、(例えば、室温(20℃)で導電性である)20℃で約1x10-6オームm又は約×1x10-7オームm~約×1x10-8オームmなどの、20℃で1x10-5オームm未満の抵抗率を有する。一実施形態では、印刷材料104は、約1x10-6オームm~約1x10-8オームmなどの1x10-5オームm未満の抵抗率を有し、一方で、固体形態、液体形態、又は固体及び液体の両方の形態であり、一方で、融解温度の300℃以内の温度である。印刷材料は、任意の所望の溶融温度を有することができる。実施例では、印刷材料は、約50℃~約3000℃、約50℃~約2000℃、約100℃~約1800℃、約150℃~約1600℃、約500℃~約1000℃、又は約600℃~約1000℃の範囲の融解温度を有する。耐火金属である印刷材料104の場合、ノズル温度は、例えば、約2000℃~約3000℃、又は約2000℃~約2500℃の範囲であり得る。
【0078】
本明細書に説明される印刷材料のうちのいずれかは、複数の固体若しくは液体フィラメント、粉末、又は液体印刷材料のリザーバなどの任意の好適な形態でエジェクタ導管106に供給され得る。固体の形態の印刷材料104は、約10マイクロメートル~約500マイクロメートル、約50マイクロメートル~約200マイクロメートル、又は約100マイクロメートルなどの、約1マイクロメートル~約1000マイクロメートル以上の範囲の幅(例えば、直径)などの任意の好適な幅を有することができる。固体フィラメントは、円形、楕円形、長方形又は他の多角形などの任意の所望の断面形状を有することができる。プロセスがエジェクタノズル108内のフィラメントの溶融を含む場合、固体フィラメントの断面形状は、エジェクタノズル108の断面形状の断面形状と同じであり得る(例えば、ノズルを通るフィラメントの送給を可能にするように寸法が小さい)。
【0079】
印刷材料104は、液滴の形態の液体としてエジェクタノズル108から噴出される。液滴は、任意選択的に、比較的小さい液滴サイズを有し得、これは、細かい詳細の印刷を可能にすることができる。実施例として、液滴直径は、約0.001mm~約0.2mm、約0.005mm~約0.1mm、約0.01mm~約0.05mmの範囲であり得る。より大きな直径の液滴もまた、約0.5mm、約1mm、約2mm以上の液滴など、所望される場合に形成され得る可能性がある。一実施形態では、液滴直径は、90マイクロメートル、80マイクロメートル、又は70マイクロメートル以下など、100マイクロメートル(0.1mm)未満である。
【0080】
本開示の方法は、所望に応じて、任意の数のエジェクタ導管106から同時に又は別個に印刷材料104を堆積させるために用いられ得る。方法はまた、アレイ内の多数である可能性のあるエジェクタ導管106及び各エジェクタ導管106からの可能性のある高い噴出速度のために、比較的高い全体的な堆積速度を依然として提供しながら、任意の1つのエジェクタノズル108からの少量の材料の堆積を可能にすることができる。
【0081】
本明細書に説明される噴射印刷材料のためのプリンタ噴射機構は、様々な印刷方法で用いることができる。例えば、本明細書に説明されるプリンタ噴射機構のうちのいずれかも、印刷材料104(図1)がエジェクタノズル108から噴出され、構築プレートなどのプリント基板154(図19及び図20)上に堆積される、3次元印刷の方法において用いることができる。プリント基板154及びエジェクタノズル108のアレイ107の一方又は両方は、任意の好適な様式で、印刷中に3次元で(例えば、x軸、y軸、及びz軸に沿った方向に)互いに対して相対的に移動し、それによって3D物体を形成することができる。当該技術分野において周知であるように、3D印刷は、3D物体の所望の厚さが実現されるまで、各液滴又は層を互いに積み重ねることができる、複数の液滴又は材料層を印刷することを含む。図20は、プリント基板154上に3D物体202を印刷するために液滴200を同時に噴出する複数のエジェクタ導管106を備える、プリンタ噴射機構100の実施例を例解している。液滴200の多くの層204は、3D物体202が完了するまで、次に1つの層又は液滴を堆積させることができる。当業者によって容易に理解されるように、液滴及び/又は層は、任意の所望の順序で積み重ねることができ、例えば、第1の下層204が、後続の層を始める前に完了している、又は完了していない場合があり、材料堆積の順序に対して認識可能な層パターンが存在する、又は存在しない場合がある。むしろ、層の液滴、層、及び/又は部分は、3D物体を完成させるために任意の所望の順序で積み重ねられ得る。
【0082】
以下の実施例は、単に例解的なものであり、特許請求の範囲に記載されるような本発明の範囲を意図したものではなく、限定するものでもない。
【0083】
理論実施例
実施例1:ローレンツ力を使用した溶融金属の噴出:0.0001メートルの直径を有するアルミニウムワイヤを耐火チューブ(例えば、溶融シリカ)に送給する。耐火チューブは、その端部に配置された2つの電極を含む。電極は、電流源に接続され、チューブの端部に近接するワイヤ材料に電流が流れるように、チューブ内に配置される。その動作温度内に冷却される永久磁石は、耐火チューブの端部に近接して配置されて、チューブの端部近くに磁束領域133を提供する。磁束領域133において磁石によって提供される磁場の強度は、約0.8テスラである。ワイヤ材料の場合、ワイヤの少なくとも一部分を溶融し、シリカチューブの端部に近接する液体として維持するため、液体のメニスカスは、シリカチューブの端部に配置される。電流源を使用すると、磁束領域133内のシリカチューブの0.0001メートルの端部部分を通って単一の電流パルスが流れ、それによって、液体アルミニウムにローレンツ力を印加する。溶融材料の自由メニスカスは、チューブ内で軸方向に加速する。表1に示されるように、チューブ内の溶融アルミニウムの加速度は、溶融材料の液滴を液体から脱離させ、それをチューブから噴出するのにかかるエネルギーを上回るエネルギーに対応し、したがって、チューブから溶融材料の液滴を噴射する。
【0084】
【表1】
【0085】
本開示の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体的な実施例に記載する数値は、可能な限り正確に報告する。しかしながら、いかなる数値も、それぞれの試験測定において見られる標準偏差から必然的に生じるある誤差を本質的に含む。更に、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に含まれる任意及び全てのサブ範囲を包含すると理解されるべきである。
【0086】
本教示は1つ以上の実装形態に関して例解されているが、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例解された実施例に対して変更及び/又は修正を行うことができる。加えて、本教示の特定の特徴がいくつかの実装形態のうちの1つにのみ関して開示されていることがあり得るが、そのような特徴は、任意の所与の機能又は特定の機能のために所望されかつ有利であり得るものとして、他の実装形態の1つ以上の他の特徴と組み合わされ得る。更に、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、又はそれらの変形が発明を実施するための形態及び特許請求の範囲のいずれかで使用される限りにおいて、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の方法で包括的であることが意図されている。更に、本明細書における考察及び特許請求の範囲内の「約」という用語は、変更が、例解された実装形態へのプロセス又は構造の非適合性をもたらさない限り、列挙された値が幾分変更され得ることを示す。最後に、「例示的な」は、説明が理想的であることを示唆するのではなく、例として使用されていることを示す。
【0087】
上記で開示されたものの変形、並びに他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることは、理解されるであろう。様々な現在予期されていない、又は先行例のない代替物、修正、変形、若しくは改善が、以後に当業者によってなされ得、それらも以下の特許請求の範囲によって包含されることを意図している。
図1
図2
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図11
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