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特開2023-48153フォトレジスト工程に使用される高純度アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法
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  • 特開-フォトレジスト工程に使用される高純度アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048153
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】フォトレジスト工程に使用される高純度アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/54 20060101AFI20230330BHJP
   C07C 67/56 20060101ALI20230330BHJP
   C07C 69/16 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
C07C67/54
C07C67/56
C07C69/16
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152939
(22)【出願日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0127311
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522379462
【氏名又は名称】載元産業株式會社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シム ソン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ピョン キ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ファン
(72)【発明者】
【氏名】シン ヨン ソ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ファ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ホ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AD11
4H006AD17
4H006AD40
4H006BC51
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フォトレジスト工程用高純度アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステル(AGAECE)の精製方法を提供する。
【解決手段】塩基性物質を多孔性吸着剤に含浸させる段階;塩基性物質が含浸された前記多孔性吸着剤に式1で示されるAGAECEを通過させて酸価を下げる段階;および前記多孔性吸着剤を通過したAGAECEを蒸留する段階を含み、前記蒸留段階で酸化防止剤を投入することを特徴とする、フォトレジスト工程用AGAECEの精製方法とする。

【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性物質を多孔性吸着剤に含浸させる段階;
塩基性物質が含浸された前記多孔性吸着剤に原料であるアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステル(以下、AGAECEと称する)を通過させて酸価を下げる段階;および
前記多孔性吸着剤を通過したAGAECEを蒸留する段階を含み、
前記AGAECEは、下記化学式1で示され、
前記蒸留段階で酸化防止剤を投入することを特徴とする、フォトレジスト工程用アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法:
【化1】

前記化学式1において、
は、水素またはC~Cのアルキル基であり、
およびRは、互いに独立して水素またはC~C11のアルキル基であり、
nは1ないし11の整数であり、 但し、nが2以上の整数である場合、Rそれぞれは、互いに同一であるか、相異する。
【請求項2】
前記蒸留されたAGAECEを塩基性イオン交換樹脂に通過させる段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のフォトレジスト工程用アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法。
【請求項3】
前記AGAECEは、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと表記する)であることを特徴とする、請求項1に記載のフォトレジスト工程用アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法。
【請求項4】
前記原料であるAGAECEの純度は、99.90~99.95%であり、酸価は、20ppm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のフォトレジスト工程用アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法。
【請求項5】
前記蒸留段階以後のAGAECEの酸価は、20ppm未満であることを特徴とする、請求項1に記載のフォトレジスト工程用アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法。
【請求項6】
前記AGAECEは、PGMEAであり、
原料であるPGMEAには、不純物であるプロピレングリコールメチルエーテルが45ppm以上含有されており、酸価が100ppmを超過し、
前記蒸留段階以後のPGMEAの酸価は、20ppm未満であり、前記塩基性イオン交換樹脂の通過後、PGMEAの酸価は、10 ppm未満であり、
前記蒸留段階以後のPGMEAに含有されたプロピレングリコールメチルエーテルの含量は、25ppm以下であり、前記塩基性イオン交換樹脂の通過後には、20ppm以下であることを特徴とする、請求項2に記載のフォトレジスト工程用アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法。
【請求項7】
前記塩基性物質は、KOH、NaOH、Ba(OH)、CsOH、Sr(OH)、Ca(OH)、LiOH、RbOH、n‐BuLi、NaCO、NaH、NaHCO、KCO、KHCO、CaCO、CaHCO、LDA(Lithium diisopropylamide)、LDEA(Lithium diethylamide)および((CHSi)NLi(Lithium bis(trimethylsilyl)amide)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のフォトレジスト工程用アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法。
【請求項8】
前記多孔性吸着剤は、メソポーラスシリカ、ゼオライト、多孔性金属酸化物、多孔性クレイ、活性炭、多孔性活性アルミナ、エアロゲルおよびMOF(metal‐organic framework)からなる群より1つ以上が選択されることを特徴とする、請求項1に記載のフォトレジスト工程用アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法。
【請求項9】
前記の塩基性物質が含侵された多孔性吸着剤に前記AGAECEを通過させるが、前記多孔性吸着剤の体積(m)対比時間当たりの通過量が1倍ないし4倍の速度を維持して通過させることを特徴とする、請求項1に記載のフォトレジスト工程用アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法。
【請求項10】
前記蒸留段階における蒸留温度は、80~140℃であることを特徴とする、請求項1に記載のフォトレジスト工程用アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法。
【請求項11】
請求項1の精製方法によって精製されたアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルであって、
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルは、純度が99.99%以上であり、酸価が20ppm未満であることを特徴とする、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法に関し、より詳細には、EUV/ArF光源を用いるフォトレジスト工程に使用される半導体級高純度AGAECE(Alkylene glycol monoalkyl ether carboxylic acid ester)を精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路のように微細な回路パターンは、基板上に形成されている導電性金属膜または酸化膜などに感光性化合物および溶媒を含むフォトレジストを回転塗布法によって均一に塗布した後、露光、現像、エッチングおよび剥離工程を経て所望の微細回路パターンを具現する方法を通じて製造される。
【0003】
このとき、後続工程である露光工程は、紫外線領域の短波長の光を用いて、塗布膜に所望のパターンを微細に露光する方式で具現されるため、外部および内部の汚染に非常に敏感である。
【0004】
したがって、塗布工程において基板の端部または後面部に塗布された不要なフォトレジスト残渣およびその他の汚染物は、後続工程である露光工程において致命的な汚染源になり得るため、必ず除去しなければならない。このような汚染物を除去するために、以前からシンナーがEBR(エッジビード除去、edge bead removing)工程に使用されてきた。
【0005】
最近、半導体の集積度が増加しながら、短波長であるArF光源または極紫外線(EUV)光源を用いるフォトレジストが適用されており、集積回路の製造単価にフォトレジストの使用量が及ぼす影響が相当に大きくなるにつれ、原価節減のために、フォトレジストの使用量を減らそうとする要求が継続してきた。
【0006】
このような要求により、フォトレジストを塗布する前にシンナーで先に基板の表面を処理することによって少量のフォトレジストだけを使用してもフォトレジストが基板全面に均一に塗布できるようにするRRC(フォトレジスト節減、reducing resist consumption)工程が適用されてきた。集積度の増加とともに基板(ウェハー)の口径が大きくなりながら、RRC工程の重要性がさらに増大しており、既存のEBR工程が十分に進行できながらも、RRC効率の高いシンナーの開発が要求されている。
【0007】
このようなRRC工程とEBR工程に使用されるシンナー組成物の中において最も重要な物質は、AGAECE(Alkylene glycol monoalkyl ether carboxylic acid ester)である。半導体工程、特にArFまたはEUVなどのような短波長または極端波長の光源を使用して、微細線幅を有するパターン形成のとき、フォトレジスト物質の純度および酸価は極めて重要である。
【0008】
フォトレジスト工程に使用される物質は、純度、水分、酸度などにおいて要求特性が非常に厳格であるが、たとえば、半導体級AGAECEは、純度が99.99%であり、酸価が20ppm以下であり、水分が50ppm以下であることが要求される。
【0009】
大韓民国登録特許第10‐1306336号公報および大韓民国登録特許第10‐1274477号公報は、PGMEAの精製方法を開示しているが、これは、LCD製造工程に使用される程度の純度を維持する廃PGMEAを原料として使用しているため、それを精製しても半導体級工程には使用できない問題点がある。
【0010】
一方、フォトリソグラフィー工程においてフォトレジスト塗布の前後に使用されるAGAECEに残存する酸(Acid)の含量が高い場合、フォトレジスト(PR)レジンの分解速度や硬化速度に影響を及ぼし、現像液として使用されるKOH、TMAHなどの水溶性アルカリ溶液と反応して、チップの欠陥発生の要因として作用する場合があり、半導体装備を腐食させる場合がある。
【0011】
したがって、フォトレジスト工程においてパターン形成過程の精度に及ぼす影響を最小化するためには、原料である工業用AGAECEを半導体工程に使用できる程度の高純度に精製すると同時に残存する酸の含量を最小化することが極めて重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10‐1306336号公報(2013.09.09公告)
【特許文献2】大韓民国登録特許第10‐1274477号公報(2013.06.07公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、工業用アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルを吸着工程および蒸留工程などを導入して精製することによって酸価を下げ、不純物を最小化して高純度のフォトレジスト工程用アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルで精製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面によると、塩基性物質を多孔性吸着剤に含浸させる段階;塩基性物質が含浸された上記多孔性吸着剤に原料であるアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステル(以下、AGAECEと称する)を通過させて酸価を下げる段階;および上記多孔性吸着剤を通過したAGAECEを蒸留する段階を含むフォトレジスト工程用アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの精製方法を提供する。このとき、上記AGAECEは、下記化学式1で示され、上記蒸留段階で酸化防止剤を投入する。
【0015】
【化1】
【0016】
上記化学式1において、Rは、水素またはC~Cのアルキル基であり、RおよびRは、互いに独立して水素またはC~C11のアルキル基であり、nは、1ないし11の整数であり、但し、nが2以上の整数である場合、Rそれぞれは、互いに同一であるか、相異する。
【0017】
また、本発明は、上記蒸留されたAGAECEを塩基性イオン交換樹脂に通過させる段階をさらに含むことができる。
【0018】
上記AGAECEは、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと表記する)であり得る。
【0019】
上記原料であるAGAECEの純度は、99.90~99.95%であり、酸価は、20ppm以上であり得る。
【0020】
上記蒸留工程以後のAGAECEの酸価は、20ppm未満であってもよく、上記塩基性イオン交換樹脂に通過させた後、AGAECEの酸価は、10ppm未満であってもよい。
【0021】
原料である上記PGMEAの酸価は、100ppmを超過し、不純物であるプロピレングリコールメチルエーテルが45ppm以上含有されており、上記蒸留工程以後のPGMEAの酸価は、20ppm未満であり、上記プロピレングリコールメチルエーテルが25ppm以下含有されていてもよく、上記蒸留工程以後のPGMEAに含有されているプロピレングリコールメチルエーテルの含量は、25ppm以下であり、上記塩基性イオン交換樹脂の通過後には、20ppm以下であってもよい。
【0022】
上記フォトレジスト工程において使用される光源は、超微細線幅工程に使用されるEUVまたはArF光源であり得る。
【0023】
本発明の他の側面によると、上記精製方法によって精製されたアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルを提供する。このとき、精製されたアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステルの純度は、99.99%以上であり、酸価は、20ppm未満であり得る。
【発明の効果】
【0024】
本発明の実施例によると、低い酸価および高純度を維持する半導体級AGAECEを製造することができるため、半導体製造工程の収率を向上させることができ、微細工程の不良率を下げ、半導体の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】PGMEAが多孔性吸着剤を通過する速度による吸着率を示したグラフである。
図2】原料である工業用PGMEAの ガスクロマトグラムである。
図3】本発明の実施例によって精製されたPGMEAのガスクロマトグラムである。
図4】本発明の実施例によって精製されたPGMEAのNMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を説明するにあたって、関連する公知構成または機能に対する具体的な説明が本発明の要旨を逸脱すると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0027】
本明細書で使用されている用語「高純度」とは、99.99%以上の純度を意味する。
【0028】
本明細書で使用されている用語「酸価(acidity)」は、酸性物質の量(ppm)を意味する。
【0029】
本明細書で使用されている用語「アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステル」は、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステル(以下、AGAECEとも表記する)以外の他の不純物を含む。したがって、原料AGAECEと記載しても、それは純粋AGAECE単一物質を意味するのではなく、不純物が含まれた状態を意味し、最終の精製品であるAGAECEにも極少量の不純物が含まれることがある。
【0030】
本明細書では、使用されている工業用AGAECE原料には、リサイクルを通じて回収したものは含まれない。リサイクルを通じて精製回収する場合、多成分が含まれており、半導体工程、特にフォトレジスト工程に使用するには適していないからである。たとえば、原料AGAECEの純度は、99.0%以上であり得る。
【0031】
まず、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステル(以下、AGAECEとも表記する)について説明する。
【0032】
AGAECEを化学式で示すと、下記化学式1の通りである。
【0033】
【化2】
【0034】
上記化学式1において、Rは、水素またはC~Cのアルキル基であり、RおよびRは、互いに独立して水素またはC~C11のアルキル基であり、nは1ないし11の整数であり、 但し、nが2以上の整数である場合、Rそれぞれは、互いに同一であるか、相異する。
【0035】
上記化学式1で示される化合物は、以下のような化合物であり得るが、それに限定されるものではない。
【0036】
【化3】
【0037】
上記AGAECEは、一般的に、下記反応式1によって製造され得る。
【0038】
【化4】
【0039】
上記反応式1によって生成されたAGAECEは、下記反応式2のように加水分解され得る。
【0040】
【化5】
【0041】
たとえば、PGMEA(propylene glycol methyl ether acetate)は、下記反応式3によって製造され、加水分解され得る。
【0042】
【化6】
【0043】
PGMEAは熱に弱く、水分が存在すれば加水分解が起きやすいが、溶剤性が良好であるために、フォトレジスト工程のときにシンナーとして多く使用される。
【0044】
上記反応式2および反応式3で分かるように、加水分解反応が起きれば不純物である生成物が含まれるようになり、結局、高純度のAGAECEを製造することが困難になって、製造工程の効率も低下される結果をもたらす。したがって、AGAECEを製造する過程中に発生する水を除去する必要がある。
【0045】
また、AGAECEを製造する工程中に残存する酸(acid)は、半導体装備の腐食をもたらすことがあり、フォトレジストレジンの分解速度や硬化速度に影響を及ぼしかねないだけでなく、現像液に使用されるアルカリ溶液と反応して、チップの欠陥要因として作用するために、これを最小化させる必要がある。
【0046】
したがって、本発明によると、半導体級高純度AGAECEを精製/製造することができるが、以下、本発明の実施例によるAGAECEの精製方法について詳細に説明する。
【0047】
本発明の実施例によるフォトレジスト工程用AGAECEの精製方法は、塩基性物質を多孔性吸着剤に含浸させる段階;塩基性物質が含浸された上記多孔性吸着剤に工業用AGAECEを通過させる段階;上記多孔性吸着剤を通過したAGAECEを蒸留する段階;および蒸留された上記AGAECEを塩基性イオン交換樹脂に通過させる段階を含む。
【0048】
まず、原料であるAGAECEを準備する。このような原料には、未知の様々な不純物や水分が含有されている。原料であるAGAECEの純度は、99.00~99.97%、好ましくは、99.90~99.95%であり、原料であるAGAECEの酸価は、100ppmを超過することがある。
【0049】
たとえば、PGMEA(propylene glycol methyl ether acetate、PMAとも表記する)の場合、図2に示すように、精製前には、未知の不純物やPM(propylene glycol methyl ether、PGMEとも表記する)、PGMEAの異性体などが含まれており、PGMEAの純度は、99.94011%であることが分かる。
【0050】
次いで、塩基性物質を多孔性吸着剤に含浸させる。
【0051】
上記多孔性吸着剤は、メソポーラスシリカ、ゼオライト、多孔性金属酸化物、多孔性クレイ、活性炭、多孔性活性アルミナ、エアロゲルおよびMOF(metal‐organic framework)からなる群より1つ以上が選択され得るが、これに限定されるものではなく、吸着性を有する多孔性物質であれば使用可能であろう。
【0052】
上記活性炭は、原料としてヤシの木、木材、おがくずや木炭などを使用して製造され得る。
【0053】
上記塩基性物質は、KOH、NaOH、Ba(OH)、CsOH、Sr(OH)、Ca(OH)、LiOH、RbOH、n‐BuLi、NaCO、NaH、NaHCO、KCO、KHCO、CaCO、CaHCO、LDA(Lithium diisopropylamide)、LDEA(Lithium diethylamide)および(CHSi)NLi(Lithium bis(trimethylsilyl)amide)からなる群より1つ以上が選択され得る。
【0054】
このような塩基性物質の溶媒としては、水または有機溶媒を使用することができ、溶液100重量部に対して溶質5~80重量富を使用することによって、5~80重量%濃度の塩基性物質を製造して使用することができる。
【0055】
上記の塩基性物質は、上記多孔性吸着剤100重量部に対して10~120重量部が使用され得る。
【0056】
上記塩基性物質を多孔性吸着剤に含浸させた直後、100~700℃、好ましくは、500~700℃で焼成させることができる。多孔性吸着剤に塩基性物質を含浸させた後に焼成させると、多孔性吸着剤に塩基性物質がより堅固に結合された状態を維持することができる。
【0057】
次いで、塩基性物質が含浸された多孔性吸着剤に原料である工業用AGAECEを通過させる。
【0058】
原料である工業用AGAECEには、前述のように、製造工程中に使用された酸が残存する場合があり、加水分解反応などによって不純物や酸が生成される場合がある。このような原料である工業用AGAECEを塩基性物質が含浸された多孔性吸着剤に通過させると、水分および酸を除去することができる。
【0059】
多孔性吸着剤は、AGAECEとの反応性がないため、このような多孔性吸着剤に酸と中和反応をよく引き起こし得る塩基性物質が沈着されていれば、原料であるAGAECEが通過しながら、酸と水分が選択的に除去され得る。したがって、多孔性吸着剤にAGAECEを通過させることによって、水分除去とともに酸価を下げる効果が期待できる。
【0060】
そこで、原料であるAGAECEを通過させる速度が重要であるが、遅すぎる速度で通過させると、AGAECEに含まれている酸(acid)の除去効率は高いが生産性が低下され、速すぎる速度で通過させると、AGAECEに含まれている酸を効果的に吸着し難くなるため、吸着効率が低下される。
【0061】
したがって、多孔性吸着剤の体積対比時間当たり1~8倍、好ましくは、1~4倍のAGAECEが通過されるように、速度を調節することが重要である。ここで、通過速度は、SV(Space Velocity)で示されるが、SVは、時間当たり通過量(m/hr)を多孔性吸着剤の体積(m)で割った値として定義される。
【0062】
図1は、PGMEAが多孔性吸着剤を通過する速度による吸着率を示したグラフである。
【0063】
図1を参照すると、SV=1ないしSV=3までは、吸着率が一定に高い反面、SV=3以上になると、吸着率が顕著に減少するが、SV=7ないしSV=8では、吸着率が非常に低調であった。したがって、多孔性吸着剤にAGAECEをSV=1ないしSV=8の速度で通過させることが好ましく、SV=1ないしSV=4の速度で通過させることがより好ましい。
【0064】
塩基性物質が含浸された多孔性吸着剤にAGAECEを通過させると、酸価を半分水準に落とすことができる。たとえば、酸価が100~130ppmである原料PGMEAを塩基性物質が含浸された多孔性吸着剤に通過させると、45~60ppmレベルまで落とすことができる。
【0065】
しかしながら、多孔性吸着剤にAGAECEを通過させても依然として半導体級で使用可能な程度の純度や酸価を維持することは困難である。
【0066】
したがって、多孔性吸着剤を通過したAGAECEを蒸留させる工程が必要である(S140)。すなわち、真空蒸留工程を通じて残存する酸と不純物を追加的に除去することが好ましい。
【0067】
このような真空蒸留工程では、トレーコラム(Tray column)や、パッキングコラム(Packed Column)を使用することができ、80~140℃、好ましくは、80~100℃で蒸留することができる。
【0068】
しかしながら、AGAECEは、化合物内にエステル(ester)結合を有しており、水分によって加水分解が起こりやすく、熱によって酸化反応が起こりやすいため、蒸留工程の間、不純物であるアルキレングリコールモノアルキルエーテルが発生することができる。たとえば、PGMEAを蒸留する過程において加水分解によって不純物であるPGMEが発生することができる。
【0069】
したがって、蒸留工程の間、加水分解を防止し、不純物の生成を防止するために、酸化防止剤を投入することが好ましい。このとき、酸化防止剤として下記1次酸化防止剤と2次酸化防止剤を組み合わせて投入するか、またはそれぞれを投入することができる。
【0070】
上記1次酸化防止剤としては、フェノリック酸化防止剤(Phenolic antioxidant)系列として代表的に使用されるのは、BHT(Butylated hydroxytoluene)、MeHQ(Hydroquinone monomethylether)、TBC(4‐tert‐Butylcatechol)、HQ(Hydroquinone)、Songnox 1010、Songnox 1076、Songnox 1135、Songnox 2450、Songnox 1035のような製品を使用することができる。
【0071】
上記2次酸化防止剤としては、ホスファイト酸化防止剤としてトリス(2,4‐ジ‐ターシャリー‐ブチルフェニル)ホスファイト(tris(2,4‐di‐tert‐butylphenyl)phosphite)、ビス(2,4‐ジ‐ターシャリー‐ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト)(bis(2,4‐di‐tert‐butylphenyl pentaerythritol diphosphate))などを使用することができる。
【0072】
上記1次酸化防止剤と2次酸化防止剤は、全体PGMEA重量対比10~10,000ppm、好ましくは、100~2,000ppmまで投入することができる。
【0073】
蒸留工程段階まで経ると、半導体級水準の純度および酸価を維持するAGAECEを製造することができる。
【0074】
最後に、蒸留したAGAECEの酸価をより下げるために、追加的に塩基性イオン交換樹脂に通過させる工程を行なうことができる。
【0075】
上記塩基性イオン交換樹脂は、たとえば、ポリスチレンとジビニルベンゼンが架橋された共重合体に交換基でトリメチルアンモニウム(Trimethylammonium)またはジメチルエタノールアンモニウム(Dimethyl ethanolammonium)を含むゲルタイプ(Gel type)または多孔性タイプ(Porous Type)であり得る。
【0076】
上記塩基性イオン交換樹脂は、イオン形態が‐OHまたは‐Clタイプからなる群より選択されたいずれかであり得るが、‐OHタイプがより効果的に酸価を有する物質を除去することができる。上記塩基性イオン交換樹脂は、強塩基性であることが好ましい場合がある。
【0077】
多孔性吸着剤を通過させる段階と同様に、蒸留工程を経たAGAECEを塩基性イオン交換樹脂に通過させるときにもまた、通過速度が重要であるが、SV=1ないしSV=10の速度で通過させることができ、好ましくは、SV=1ないしSV=5の速度で通過させることができる。
【0078】
このように、蒸留工程の段階を経たAGAECEを塩基性イオン交換樹脂に通過させると、高純度および低い酸価を維持する高品質の半導体級AGAECEを製造することができる。
【0079】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0080】
実施例および比較例
【0081】
<実施例1>
活性炭を120℃で24時間乾燥させた後、乾燥された活性炭10gを20wt.%NaOH水溶液20gに入れ、2時間撹拌する。NaOHが十分に吸収された活性炭を窒素雰囲気下で100℃で2時間保持した後、10℃/min昇温して600℃で3時間保持した後に常温に冷却して吸着剤として使用した。
【0082】
直径が3cm、高さが10cmであるガラス管にNaOHが含浸された上記活性炭10gを満たし、PGMEA(Propylene glycol monomethyl ether acetate)をSV=3の速度で通過させながら、酸価(Acid value)を測定する。
【0083】
次いで、NaOHが含浸された活性炭を通過したサンプルを直径が10cmである30段(Tray)蒸留カラムに供給し、ボトム温度80~100℃を保持しながら、酸化防止剤であるBHT(Butylated hydroxytoluene)を溶液重量対比500ppm投入して蒸留する。蒸留工程を通じてゼオライト吸着剤で除去されない酸(Acid)が追加的に除去されたPGMEAを得ることができる。
【0084】
最終的に、蒸留工程を通じて収得したPGMEAを強塩基性イオン交換樹脂であるSAR‐10(samyang Corporation)を使用して、SV=3の速度で通過させることによって、フォトレジスト工程に使用可能な半導体級高純度のPGMEAを製造した。
【0085】
<実施例2>
塩基性物質としてNaOHの代わりに、20wt.%KOH水溶液20gを使用したことを除いては、上記実施例1と同様の方法でPGMEAを製造した。
【0086】
<実施例3>
ゼオライトを140℃で24時間乾燥させた後、乾燥されたゼオライト10gを20wt.%NaOH水溶液20gに入れ、2時間撹拌する。NaOHが十分に吸収されたゼオライトを窒素雰囲気下で400℃で2時間保持した後、10℃/min昇温して600℃で3時間保持した後に常温に冷却して吸着剤として使用した。
【0087】
直径が3cm、高さが10cmであるガラス管にNaOHが含浸されたゼオライト10gを満たし、PGMEAをSV=3の速度で通過させながら、酸価を測定する。
【0088】
次いで、NaOHが含浸されたゼオライトを通過したサンプルを直径が10cmである30段(Tray)蒸留カラムに供給し、ボトム温度80~100℃を保持しながら、酸化防止剤であるTBC(4‐tert.‐Butylcatechol)を溶液重量対比500ppm投入して蒸留する。蒸留工程を通じてゼオライト吸着剤で除去されない酸(Acid)が追加的に除去されたPGMEAを得ることができる。
【0089】
最終的に、蒸留工程を通じて収得したPGMEAを強塩基性イオン交換樹脂であるSAR‐10(samyang Corporation)を使用してSV=3の速度で通過させることによって、フォトレジスト工程に使用可能な半導体級高純度のPGMEAを製造した。
【0090】
<実施例4>
NaOHが十分に吸収された粒状活性炭を窒素雰囲気下で400℃で2時間保持したことを除いては、実施例1と同様の方法でPGMEAを製造した。
【0091】
<比較例>
NaOHの代わりに、水20gを活性炭に含浸したことを除いては、実施例1と同様の方法でPGMEAを製造した。
【0092】
上記実施例1ないし4、および比較例によって各段階別に収得した材料(以下では、これをPGMEAと表記することもあるが、これは、純粋の単一物質PGMEAではなく、不純物が極微量含有された組成物を意味する)の酸価および不純物であるPM(propylene glycol methylether)の量は、下表1ないし5の通りである。
【0093】
下記表1は、多孔性吸着剤を通過したPGMEAの酸価(acidity)を通過倍率によって測定したものである。ここで、通過倍率とは、多孔性吸着剤を通過したPGMEAの累積された量を意味する。
【0094】
【表1】
【0095】
上記表1で分かるように、本発明の実施例1ないし4によって多孔性吸着剤を通過したPGMEAの酸価は、初期123ppmから49~57ppmに顕著に減少した反面、比較例によって水に含浸した多孔性吸着剤を通過したPGMEAの酸価は、初期123ppmと同等水準であるか、またはそれよりもさらに高い値を維持した。
【0096】
したがって、原料であるPGMEAを多孔性吸着剤に通過させるだけでも酸価を相当に下げ得ることを確認することができる。
【0097】
下記表2は、多孔性吸着剤を通過したPGMEAに残存するPMの量を示す。
【0098】
【表2】
【0099】
上記の表2で分かるように、多孔性吸着剤を通過させても不純物であるPMがほとんど除去されないことを確認することができる。
【0100】
したがって、PMの残存量が実験初期値と同等水準の範囲内にあることから、多孔性吸着剤を通過するだけでは不純物を効果的に除去することが困難であることを確認することができる。
【0101】
下記表3は、蒸留工程を経たPGMEAの酸価およびPMの量を示す。
【0102】
【表3】
【0103】
上記の表3で分かるように、本発明の実施例による場合、酸価が49~57ppmを維持するPGMEAを酸化防止剤の投入後に蒸留すれば、酸価14~15ppm水準に顕著に下げ得ることが分かる反面、比較例による場合、酸価を下げることが困難であることが分かる。
【0104】
したがって、酸化防止剤を投入して蒸留工程を実施すると、PGMEAの酸価を半導体級要求条件に符合する程度に顕著に下げ得ることを確認することができる。
【0105】
さらに、本発明の実施例による場合、PGMEAに含有された不純物PMの量が44~51ppmであったことを蒸留工程を通じて20~22ppm水準に顕著に減少させ得ることが分かる反面、比較例による場合には、不純物をほとんど除去できないことが分かる。
【0106】
下記表4は、蒸留工程を経たPGMEAを塩基性イオン交換樹脂に通過させた後、測定した酸価を示す。
【0107】
【表4】
【0108】
上記の表4を参照すると、塩基性イオン交換樹脂を通過させると、本発明の実施例の場合、通過前に14~15ppm水準であった酸価を4~6ppm水準に顕著に減少させることができる反面、比較例によると、PGMEAの通過量が累積されるほど酸価が顕著に増加することが分かる。
【0109】
下記表5は、蒸留工程を経たPGMEAを塩基性イオン交換樹脂に通過させた後、測定したPMの残存量を示す。
【0110】
【表5】
【0111】
上記の表5を参照すると、塩基性イオン交換樹脂を通過させると、本発明の実施例の場合や比較例の場合、PMの残存量が通過前後において大きな差がない。
【0112】
したがって、本発明によってPGMEAを精製(製造)する場合、酸価を顕著に下げながら、高純度のPGMEAを得ることができ、それは半導体級で要求されるスペックに符合されることが分かる。
【0113】
図2は、原料である工業用PGMEAの精製前のガスクロマトグラムであり、図3は、本発明の実施例1によって精製されたPGMEAのガスクロマトグラムであり、図4は、本発明の実施例1によって精製されたPGMEAのNMRスペクトルである。
【0114】
下記表6は、PGMEAの精製前の滞留時間によるピークの高さ、面積、面積%および成分名を示したものであり、これに対するチャートが図2に示されている。成分名においてUKは未知の物質を、Purityは純粋なPGMEAを、Isomerはβ‐PGMEAのような異性体を意味する。
【0115】
【表6】
【0116】
下記表7は、PGMEAの精製後の滞留時間によるピークの高さ、面積、面積%および成分名を示したものであり、これに対するチャートが図3に示されている。
【0117】
【表7】
【0118】
図2図3、上記表6および表7を参照すると、精製前には、未知の不純物と異性体(アイソマー)、PMなどの不純物が含有されており、PGMEAの純度が99.94011%である反面、精製後には、未知の不純物がすべて除去され、PMおよびアイソマーも多量除去され、その量が顕著に減少した結果、PGMEAの純度が99.994836%を維持することを確認することができる。
【0119】
さらに、本発明の実施例によって製造された製品がPGMEAであることを図4のNMRスペクトルを通じて確認することができる。
【0120】
以上の説明は、本発明を例示的に説明したものに過ぎず、本発明に属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な変形が可能であろう。したがって、本明細書に開示されている実施例は、本発明を限定するものではなく、説明するためのものであり、そのような実施例によって本発明の思想と範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内のすべての技術は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4