(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048161
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】焼おにぎり、および、焼おにぎりの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20230330BHJP
【FI】
A23L7/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022196690
(22)【出願日】2022-12-08
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】399107650
【氏名又は名称】株式会社マリノ
(74)【代理人】
【識別番号】100188075
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 修
(72)【発明者】
【氏名】水野 由太佳
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE14
4B023LG01
4B023LK13
4B023LK15
4B023LK20
4B023LL01
4B023LP07
4B023LP20
4B023LT29
(57)【要約】
【課題】食べ進めても形状が崩れにくい焼おにぎりを提供する。
【解決手段】焼おにぎり1は、断面略U字型を呈し、内周面にのみ焦げを有する焼面2が形成されているとともに外周面を覆うように海苔が配されることで海苔面3が形成されている米飯5と、焼面2に覆われる所定厚みの卵焼き6とを備える。
これにより、内周面に一体の固い焼面2が形成されているため、その形状を保ちやすくなっている。
また、焼面2は内周面のみに形成されているため、外周面に海苔Lを配し固定することは容易であり、外周面に海苔面3が形成されることで形状の崩れを抑制できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略U字型を呈し、内周面にのみ焦げを有する焼面が形成されているとともに外周面を覆うように海苔が配されることで海苔面が形成されている米飯と、
前記焼面に覆われる所定厚みの卵焼きとを備える焼おにぎり。
【請求項2】
請求項1に記載の焼おにぎりにおいて、
前記海苔面上に配される具材を備える焼おにぎり。
【請求項3】
請求項2に記載の焼おにぎりにおいて、
前記海苔面と前記具材との間に大葉が配される焼おにぎり。
【請求項4】
板状米飯をトレイ上に配する米飯配置工程と、
前記板状米飯の表面を焦がすことで焼面を形成する焼面形成工程と、
前記板状米飯の裏面に海苔を配することで海苔面を形成する海苔面形成工程と、
前記焼面が内側、前記海苔面が外側となるように所定厚みの卵焼きを挟むとともに前記板状米飯を断面略U字型となるように折り曲げる折り曲げ工程とを備える焼おにぎりの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の焼おにぎりの製造方法において、
前記海苔面上に具材を配する具材配置工程を備えることを特徴とする焼おにぎりの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の焼おにぎりの製造方法において、
前記海苔面と前記具材との間に大葉を配する大葉配置工程を備えることを特徴とする焼おにぎりの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、焼おにぎり、および、焼おにぎりの製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、焼おにぎりの製造方法として、おにぎりの表面に醤油等を塗布し、表面全体を満遍なく焼成する方法が知られている(特許文献1参照。)。
このような焼おにぎりは、表面に一体の固い焼面が形成されているため形状を保つことが可能である。
【0003】
しかし、このような焼おにぎりでは、焼成時に表面の醤油等に内部の水分が引き寄せられてしまい、内部の米飯は水分が不足することで米飯粒が分離しやすくなっており、食べ進めて行くに従い表面外殻の焼面が失われて行き、形状が崩れやすくなってしまう問題があった。
【0004】
そこで、焼おにぎり全体を海苔で包むことで食べ進めた際における形状の崩れを抑制する対策が考えられるが、焼おにぎり表面は固い乾燥した焼面となっているため、容易に海苔が表面に付着することはない。
また、予め、おにぎりを海苔で包みその後焼成することも考えられるが、この場合、海苔が焼成されることでボロボロになるばかりではなく、焼成によって味が苦く変質するとともに海苔本来の風味までもが大きく損なわれてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、食べ進めても形状が崩れにくい焼おにぎりを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
焼おにぎりは、断面略U字型を呈し、内周面にのみ焦げを有する焼面が形成されているとともに外周面を覆うように海苔を配することで海苔面が形成されている米飯と、焼面に覆われる所定厚みの卵焼きとを備える。
【0008】
これにより、焼おにぎりは、内周面に一体の固い焼面が形成されているため、その形状を保ちやすくなっている。
また、焼面は内周面のみに形成されているため、外周面に海苔を配し固定することは容易であり、外周面に対して海苔面が形成されることで形状の崩れを抑制できる。
すなわち、焼おにぎりは、内周側の焼面によって形状の安定化を図れ、外周側の海苔面によって形状崩れの抑制を図ることができる構成となっている。換言すると、焼おにぎりは、焼面と海苔面とが協働することで食べ進めても形状が崩れにくい構成となっている。
【0009】
また、焼面に覆われる卵焼きが芯材となることで、手で保持した際における形状の崩れがさらに抑制されている。
ここで、卵焼きは焼面に覆われているため、容易に米飯中の水分が移動してくることはなく、その形状、固さ等が維持されやすくなっており、容易にその形状が崩れることはない。
【0010】
また、この焼おにぎりの製造方法は、以下に説明する、米飯配置工程、焼面形成工程、海苔面形成工程、および、折り曲げ工程を備える。
米飯配置工程では、板状米飯をトレイ上に配する。
焼面形成工程では、板状米飯の表面を焦がすことで焼面を形成する。
【0011】
また、海苔面形成工程では、板状米飯の裏面に海苔を配することで海苔面を形成する。
そして、折り曲げ工程では、焼面が内側、海苔面が外側となるように所定厚みの卵焼きを挟むとともに板状米飯を断面略U字型となるように折り曲げる。
【0012】
ここで、折り曲げ工程では、所定厚みの卵焼きをガイドとして折り曲げることができるため、卵焼きの厚みを調節することにより折り曲げ部分の曲率を調整でき、焼面の割れ、海苔面の破断等を防ぎ、きれいに板状米飯を断面略U字型となるように折り曲げることができる。
また、板状米飯の厚み、卵焼きの厚み等を揃えることで、容易に略同一形状の焼おにぎりを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】焼おにぎりの製造方法の説明図である(実施例)。
【
図3】焼おにぎりの製造方法の説明図である(実施例)。
【
図4】焼おにぎりの製造方法の説明図である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。
なお、以下の実施例は具体的な一例を開示するものであり、本開示が以下の実施例に限定されないことは言うまでもない。
【実施例0015】
[実施例の構成]
実施例の焼おにぎり1の構成を、
図1を用いて説明する。
焼おにぎり1は、断面略U字型を呈し、内周面にのみ焦げを有する焼面2が形成されているとともに外周面を覆うように海苔Lが配されることで海苔面3が形成されている米飯5と、焼面2に覆われる所定厚みの卵焼き6とを備える。
【0016】
また、焼おにぎり1は、海苔面3上に具材8が配されている。
さらに、海苔面3と具材8との間に大葉9が配されている。
ここで、具材8としては、炙りたらこ、海老天、焼ハラス等のおにぎりの具材として一般的なものが考えられる。
なお、具材8および大葉9は1つであっても複数であってもよい。
【0017】
ここで、焼おにぎり1の製造方法について
図2、3を用いて詳細に説明する。
先ず、
図2(a)に示すように、トレイT上に板状米飯10を配する。より具体的には、例えば、角筒状の型にはめた米飯をトレイT上に配置し型を上方に抜くことで実現している。
【0018】
ここで、トレイT上に板状米飯10を配していることで、板状米飯10の厚みが薄い場合であっても、板状の形態を保つことができ、さらに厚さを揃えるように調整することもできる。
また、板状米飯10を移動させる際にも、トレイTごと移動させることで板状米飯10の形状を維持したまま容易に移動させることができる。
なお、この工程が特許請求の範囲における米飯配置工程に相当する。
【0019】
次に、
図2(b)に示すように、板状米飯10の表面に、タレを塗布する。
ここで、板状米飯10の表面とは、トレイTと接する裏面に対向する上側の面を表している。
なお、タレは刷毛等で塗ってもよいし、スプレー式で表面に塗布する方式であってもよい。
次に、
図2(c)に示すように、板状米飯10の表面に、塩を散布する。
【0020】
次に、
図2(d)に示すように、炎で炙られている金網M上で、トレイTを上下反転させることで、板状米飯10の表面が下側となり、トレイTから金網M上に板状米飯10が落下し、金網Mと板状米飯10の表面が接触する。そして、金網M下の炎に炙られることで板状米飯10の表面全体が焦がされ焼面12が形成される。
なお、この工程が、特許請求の範囲における焼面形成工程に相当する。
【0021】
次に、
図2(e)に示すように、板状米飯10の裏面、すなわち金網Mと接していない側の面全体を覆うように、海苔Lを配することで海苔面13が形成される。
ここで、海苔面13の形成は、海苔Lの風味等を熱から守る観点より、焼面12の形成完了寸前に行うことが好ましい。
なお、この工程が特許請求の範囲における海苔面形成工程に相当する。
【0022】
次に、
図2(f)に示すように、焼面12、海苔面13の形成された板状米飯10を海苔面13がトレイTに接するようにトレイT上に再配置する。
具体的には、板状米飯10を、ヘラ等を用いて、金網Mから剥離させ海苔面13が下になるように上下反転させつつトレイT上に配置している。
【0023】
また、
図2(e)の状態で、海苔面13上にトレイTを接触させ、金網MとトレイTで板状米飯10を挟んだまま、上下を反転させ、金網Mを上方に取り除くことによって板状米飯10をトレイT上に配置してもよい。
なお、金網Mと板状米飯10との接触面積は少ないため、金網Mから板状米飯10を剥離させたり、板状米飯10から金網Mを取り除いたりすることは比較的容易である。
【0024】
次に、
図3(g)に示すように、焼面12上に所定厚みの卵焼き16を配する。
なお、卵焼き16は、板状米飯10の焼面12の略半分の領域を覆うように配されている。
次に、
図3(h)に示すように、卵焼き16の表面にタレを塗布する。
なお、卵焼き16の表面とは、卵焼き16と焼面12とが接触する裏面と対向する上側の面を表している。
【0025】
次に、
図3(i)に示すように、焼面12が内側、海苔面13が外側となるように卵焼き16を挟むとともに板状米飯10を断面略U字型となるように折り曲げる。
なお、この工程が、特許請求の範囲における折り曲げ工程に相当する。
【0026】
次に、
図3(j)に示すように、海苔面13上に大葉19を配する。次いで、
図3(k)に示すように、大葉19上に具材20を配する。
なお、これらの工程がそれぞれ、特許請求の範囲における大葉配置工程、具材配置工程に相当する。
ここで、大葉配置工程と具材配置工程は同時に行ってもよい。すなわち、具材20と大葉19とを一体として海苔面13上に配置してもよい。
【0027】
[実施例の効果]
実施例の焼おにぎり1は、断面略U字型を呈し、内周面にのみ焦げを有する焼面2が形成されているとともに外周面を覆うように海苔が配されることで海苔面3が形成されている米飯5と、焼面2に覆われる所定厚みの卵焼き6とを備える。
【0028】
これにより、焼おにぎり1は、内周面に一体の固い焼面2が形成されているため、その形状を保ちやすくなっている。
また、焼面2は内周面のみに形成されているため、外周面に海苔Lを配し固定することは容易であり、外周面に海苔面3が形成されることで形状の崩れを抑制できる。
【0029】
すなわち、焼おにぎり1は、内周側の焼面2によって形状の安定化を図れ、外周側の海苔面3によって形状崩れの抑制を図ることができる構成となっている。換言すると、焼おにぎり1は、焼面2と海苔面3とが協働することで食べ進めても形状が崩れにくい構成となっている。
【0030】
また、焼面2に覆われる卵焼き6が芯材となることで、手で保持した際における形状の崩れがさらに抑制されている。
ここで、卵焼き6は焼面2に覆われているため、容易に米飯中の水分が移動してくることはなく、その形状、固さ等が維持されやすくなっており、容易にその形状が崩れることはない。
【0031】
また、実施例の焼おにぎり1は、海苔面3上に配される具材8を備える。
これにより、外側から具材8を容易に視認することができるため、具材8を間違える虞がない。
【0032】
また、実施例の焼おにぎり1は、海苔面3と具材8との間に大葉9が配されている。
これにより、大葉9の有する殺菌作用により、具材8の腐敗、劣化等を防ぐことができる。また、水分の多い具材8を用いる際にも、水分が海苔面3に移ることに起因する海苔面3の劣化、破断等を抑制することができる。
【0033】
また、実施例の焼おにぎり1の製造方法は、以下に説明する、米飯配置工程、焼面形成工程、海苔面形成工程、および、折り曲げ工程を備える。
米飯配置工程では、板状米飯10をトレイT上に配する。
焼面形成工程では、板状米飯10の表面を焦がすことで焼面12を形成する。
【0034】
また、海苔面形成では、板状米飯10の裏面に海苔Lを配することで海苔面13を形成する。
そして、折り曲げ工程では、焼面12が内側、海苔面13が外側となるように所定厚みの卵焼き16を挟むとともに板状米飯10を断面略U字型となるように折り曲げる。
【0035】
ここで、折り曲げ工程では、所定厚みの卵焼き16をガイドとして折り曲げることができるため、卵焼き16の厚みを調節することにより折り曲げ部分の曲率を調整でき、焼面12の割れ、海苔面13の破断等を防ぎ、きれいに板状米飯10を断面略U字型となるように折り曲げることができる。
また、板状米飯10の厚み、卵焼き16の厚み等を揃えることで、容易に略同一形状の焼おにぎり1を作成することができる。
【0036】
なお、焼面形成工程の前に
図2(b)に示すように、板状米飯10の表面にタレを塗布していることで、焼面形成工程でタレが焦がされることでカラメル状になり、折り曲げ工程での焼面12の割れが生じにくくなっている。
また、焼面形成工程の前に
図2(c)に示すように、板状米飯10の表面に塩を散布していることで、焼面形成工程で表面近傍の水分の移動が促進され、焼面12の強度も上がっている。
なお、タレ、塩の塗布は、本来的に味を整える効果を有していることは言うまでもない。
【0037】
また、折り曲げ工程の前に卵焼き16の表面に、タレを塗布していることで、折り曲げ工程で焼面12と卵焼き16との間が接着されることになり、焼おにぎり1の形状はより崩れにくくなっている。
なお、タレの塗布は、本来的に味を整える効果を有していることは言うまでもない。
【0038】
また、実施例の焼おにぎり1の製造方法は、海苔面13上に具材20を配する具材配置工程を備える。
これにより、海苔面13上に具材20を配置するだけであるので、特別な技術を必要とせず簡便に具材20を配置できる。
また、具材の20の変更も容易であるため、焼おにぎり1のバリエーションを簡単に増やすことができる。
【0039】
また、実施例の焼おにぎり1の製造方法は、海苔面13と具材20との間に大葉19を配する大葉配置工程を備える。
これにより、大葉19を受け皿の様に利用することで、水分の多い具材20であっても簡便に具材20を海苔面13上に配置することができる。
すなわち、形の崩れやすい具材20であっても先ず大葉19上に配置して、大葉19ごと海苔面13上に移動させることができるので、周囲に液体等をこぼすことなく容易に海苔面13上に具材20を配することが可能である。
【0040】
[変形例]
本願発明はその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形例を考えることができる。
例えば、実施例では、焼おにぎり1は、海苔面3と具材8との間に大葉9が配されていたが、大葉9自身も具材8の1つであるため、海苔面3上に大葉9が1枚だけ配されていてもよく、大葉9が複数枚重ねられたものが配されていてもよい。
【0041】
また、実施例の焼おにぎり1の製造方法では、海苔面形成工程は、焼面形成工程の後となっていたが、
図4に示すように、海苔面形成工程を焼面形成工程の前とすることもできる。
より具体的に説明すると、先ず
図4(a)に示すように、トレイT上に海苔Lを配する。
【0042】
次に、
図4(b)に示すように、海苔L上に板状米飯10の裏面全体が接するように、板状米飯10を配する。
なお、この工程は、海苔Lを介してトレイT上に板状米飯10を配しているため特許請求の範囲における米飯配置工程に相当するとともに、板状米飯10の裏面に海苔Lを配することで海苔面13をも形成しているため海苔面形成工程にも相当する。
次に、
図4(c)に示すように、板状米飯10の表面にタレを塗布し、次に
図4(d)に示すように、板状米飯10の表面に塩を散布する。
【0043】
次に、
図4(e)に示すように、板状米飯10の表面全体がバーナー等を用いた炎に炙られることで板状米飯10の表面が焦がされて焼面12が形成される。
なお、この工程が、特許請求の範囲における焼面形成工程に相当する。
これにより、
図4(f)に示されるように、板状米飯10は
図2(f)と同様な状態でトレイT上に配されていることになる。
【0044】
なお、
図4に示す工程では、板状米飯10の上下反転等は必要ではないので、板状米飯10の上下反転の手間を省けるとともに、板状米飯10の上下反転の際における、板状米飯10の形状崩れ等の発生を抑制することもできる。