IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋エンジニアリング株式会社の特許一覧

特開2023-48175アンモニア分解混合物の製造方法及び製造装置
<>
  • 特開-アンモニア分解混合物の製造方法及び製造装置 図1
  • 特開-アンモニア分解混合物の製造方法及び製造装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048175
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】アンモニア分解混合物の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
C01B3/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157339
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000222174
【氏名又は名称】東洋エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】岡島 聡
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 あづさ
(72)【発明者】
【氏名】栗原 大季
(57)【要約】
【課題】アンモニアを燃料に用いた場合でも効率よくアンモニアを分解してアンモニア分解混合物の製造する方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明では、燃料を媒体Aとの熱交換により予熱し、予熱された前記燃料を燃焼器に導入して燃焼させ、生成した排ガスを排出するとともに、原料アンモニアを媒体Bとの熱交換により予熱し、予熱された前記原料アンモニアを、前記燃料の燃焼により発生した熱を輻射させて加熱可能な位置に設けられた分解部に導入して分解反応を行い、得られたアンモニア分解混合物を回収する。その際、前記媒体A及び前記媒体Bとして、それぞれ独立して、前記排ガス及び/又は前記アンモニア分解混合物を用いる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を媒体Aとの熱交換により予熱する工程と、
予熱された前記燃料を燃焼器に導入し、前記燃料を燃焼させる工程と、
前記燃料の燃焼により生成した排ガスを排出する工程と、
原料アンモニアを媒体Bとの熱交換により予熱する工程と、
予熱された前記原料アンモニアを、前記燃料の燃焼により発生した熱を輻射させて加熱可能な位置に設けられた分解部に導入し、前記原料アンモニアの分解反応を行って、アンモニア分解混合物を得る工程と、
前記アンモニア分解混合物を回収する工程と
を有し、
前記媒体A及び前記媒体Bとして、それぞれ独立して、前記排ガス及び/又は前記アンモニア分解混合物を用いる
アンモニア分解混合物の製造方法。
【請求項2】
前記燃料として、燃料アンモニア及び/又は前記アンモニア分解混合物を用いる
請求項1に記載のアンモニア分解混合物の製造方法。
【請求項3】
前記媒体A及び前記媒体Bとして、いずれも前記排ガスを用いる
請求項1又は2に記載のアンモニア分解混合物の製造方法。
【請求項4】
前記媒体Aとして、前記排ガスを用い、
前記媒体Bとして、前記アンモニア分解混合物を用いる
請求項1又は2に記載のアンモニア分解混合物の製造方法。
【請求項5】
酸素含有ガスを媒体Cとの熱交換により予熱する工程と、
予熱された前記酸素含有ガスを、予熱された前記燃料に混合する工程と
をさらに有し、
前記媒体Cとして、前記排ガス及び/又は前記アンモニア分解混合物を用いる
請求項1~4のいずれか1項に記載のアンモニア分解混合物の製造方法。
【請求項6】
前記媒体Cとして、前記排ガスを用いる
請求項5に記載のアンモニア分解混合物の製造方法。
【請求項7】
ボイラー水を媒体Dとの熱交換により加熱する工程
をさらに有し、
前記媒体Dとして、前記排ガス及び/又は前記アンモニア分解混合物を用いる
請求項1~6のいずれか1項に記載のアンモニア分解混合物の製造方法。
【請求項8】
前記媒体Dとして、前記排ガス及び前記アンモニア分解混合物の両方を用いる
請求項7に記載のアンモニア分解混合物の製造方法。
【請求項9】
前記燃料を気化させる工程
をさらに有する
請求項1~8のいずれか1項に記載のアンモニア分解混合物の製造方法。
【請求項10】
前記原料アンモニアを気化させる工程
をさらに有する
請求項1~9のいずれか1項に記載のアンモニア分解混合物の製造方法。
【請求項11】
燃料を媒体Aとの熱交換により予熱する燃料予熱部と、
予熱された前記燃料を導入し、前記燃料を燃焼させる燃焼器と、
前記燃料の燃焼により生成した排ガスを排出する排ガス排出部と、
原料アンモニアを媒体Bとの熱交換により予熱する原料アンモニア予熱部と、
前記燃料の燃焼により発生した熱を輻射させて加熱可能な位置に設けられ、予熱された前記原料アンモニアを導入し、前記原料アンモニアの分解反応を行って、アンモニア分解混合物を得る分解部と、
前記アンモニア分解混合物を回収するアンモニア分解物回収部と
を有し、
前記媒体A及び前記媒体Bとして、それぞれ独立して、前記排ガス及び/又は前記アンモニア分解混合物を用いる
アンモニア分解混合物の製造装置。
【請求項12】
前記燃料として、燃料アンモニア及び/又は前記アンモニア分解混合物を用いる
請求項11に記載のアンモニア分解混合物の製造装置。
【請求項13】
前記媒体A及び前記媒体Bとして、いずれも前記排ガスを用いる
請求項11又は12に記載のアンモニア分解混合物の製造装置。
【請求項14】
前記媒体Aとして、前記排ガスを用い、
前記媒体Bとして、前記アンモニア分解混合物を用いる
請求項11又は12に記載のアンモニア分解混合物の製造装置。
【請求項15】
酸素含有ガスを媒体Cとの熱交換により予熱する酸素含有ガス予熱部と、
予熱された前記酸素含有ガスを、予熱された前記燃料に混合する酸素含有ガス混合部と
をさらに有し、
前記媒体Cとして、前記排ガス及び/又は前記アンモニア分解混合物を用いる
請求項11~14のいずれか1項に記載のアンモニア分解混合物の製造装置。
【請求項16】
前記媒体Cとして、前記排ガスを用いる
請求項15に記載のアンモニア分解混合物の製造装置。
【請求項17】
ボイラー水を媒体Dとの熱交換により加熱するボイラー水加熱部
をさらに有し、
前記媒体Dとして、前記排ガス及び/又は前記アンモニア分解混合物を用いる
請求項11~16のいずれか1項に記載のアンモニア分解混合物の製造装置。
【請求項18】
前記媒体Dとして、前記排ガス及び前記アンモニア分解混合物の両方を用いる
請求項17に記載のアンモニア分解混合物の製造装置。
【請求項19】
前記燃料を気化させる燃料気化器
をさらに有する
請求項11~18のいずれか1項に記載のアンモニア分解混合物の製造装置。
【請求項20】
前記原料アンモニアを気化させる原料アンモニア気化器
をさらに有する
請求項11~19のいずれか1項に記載のアンモニア分解混合物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア分解混合物の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電機のガスタービンや燃焼炉の燃料として、石炭、石油、天然ガスといった化石資源が用いられてきた。しかし、化石資源を燃焼させるとCOが発生するという環境上の問題が起きることから、燃焼してもCOを発生させない水素を燃料として使用することが検討されている。
【0003】
ただし、水素は、液体になりにくく、輸送することが困難なものである。一方、水素含有化合物であるアンモニアは、比較的容易に液体にすることができ、かつルテニウム又はニッケル触媒に代表されるアンモニア分解触媒の存在下、下記反応式により水素と窒素に分解することができる。
2NH→N+3H
すなわち、液体の状態にしたアンモニアを輸送し、それを必要な場所で分解することで、燃料として使用する水素を得ることができることから、アンモニアは水素を燃料として使用する際の水素キャリアとして注目されている。
【0004】
アンモニアを水素キャリアとして使用する際には、そのアンモニアを効率よく分解する技術が重要になる。ここで、アンモニア分解反応は吸熱反応であることから、反応の進行とともに原料アンモニアを予熱(加熱)したり、分解部に熱を供給して加熱する必要がある。ところが、この加熱のために化石資源を燃焼させればCOが発生し、また電気で加熱するとしても再生可能エネルギー由来の電気でない限りは発電の過程でCOが発生している。これは、アンモニアを水素キャリアとして利用し、水素を燃料として使用しようとするコンセプトに逆行することになる。
【0005】
そこで、加熱のための燃料としてもアンモニアを利用する方法が考えられる。アンモニアは、酸素又は酸素含有ガスの存在下、下記反応式により燃焼するため、燃焼してもCOは発生しない。
4NH+3O→2N+6H
これらを組み合わせた所謂オートサーマル式のアンモニア分解装置が、特許文献1に記載されている。具体的には、特許文献1には、自己熱分解型反応器と、熱交換器とを備え、該熱交換器を用い、前記自己熱分解型反応器からのアンモニア分解ガスで、気化アンモニアを加熱し、加熱した気化アンモニアを前記自己熱分解型反応器で自己熱分解することを特徴とするアンモニア分解システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-189467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されたアンモニア分解システムでは、アンモニアの燃焼反応と分解反応の両方を反応器内で行うことから、空気をプロセスガスに混入させることになる。そのため、ガスボリュームが増加することから、後段のコンプレッサー等機器費が増加し、また反応器出口の水素濃度が低下しガス体積あたりのカロリーが低下してしまう。さらに、部分燃焼により局地的な高温領域が発生することで触媒寿命の低下が懸念され、そのリスクを下げるための高度な温度制御が要求される。
【0008】
そこで、本発明は、アンモニアを燃料に用いた場合でも効率よくアンモニアを分解してアンモニア分解混合物の製造する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、燃料を媒体Aとの熱交換により予熱する工程と、
予熱された前記燃料を燃焼器に導入し、前記燃料を燃焼させる工程と、
前記燃料の燃焼により生成した排ガスを排出する工程と、
原料アンモニアを媒体Bとの熱交換により予熱する工程と、
予熱された前記原料アンモニアを、前記燃料の燃焼により発生した熱を輻射させて加熱可能な位置に設けられた分解部に導入し、前記原料アンモニアの分解反応を行って、アンモニア分解混合物を得る工程と、
前記アンモニア分解混合物を回収する工程と
を有し、
前記媒体A及び前記媒体Bとして、それぞれ独立して、前記排ガス及び/又は前記アンモニア分解混合物を用いる
アンモニア分解混合物の製造方法である。
【0010】
また、本発明は、燃料を媒体Aとの熱交換により予熱する燃料予熱部と、
予熱された前記燃料を導入し、前記燃料を燃焼させる燃焼器と、
前記燃料の燃焼により生成した排ガスを排出する排ガス排出部と、
原料アンモニアを媒体Bとの熱交換により予熱する原料アンモニア予熱部と、
前記燃料の燃焼により発生した熱を輻射させて加熱可能な位置に設けられ、予熱された前記原料アンモニアを導入し、前記原料アンモニアの分解反応を行って、アンモニア分解混合物を得る分解部と、
前記アンモニア分解混合物を回収するアンモニア分解物回収部と
を有し、
前記媒体A及び前記媒体Bとして、それぞれ独立して、前記排ガス及び/又は前記アンモニア分解混合物を用いる
アンモニア分解混合物の製造装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アンモニアを燃料に用いた場合でも効率よくアンモニアを分解してアンモニア分解混合物の製造する方法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るアンモニア分解混合物の製造装置の構成を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るアンモニア分解混合物の製造装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るアンモニア分解混合物の製造装置の構成例を図1及び図2に示す。図1及び図2の装置では、アンモニアを保管するアンモニアタンク1と、アンモニアを分解するアンモニア分解炉2とを有する。アンモニア分解炉2は、燃料アンモニア10を燃焼させるバーナー(燃焼器)15と、燃料アンモニア10の燃焼により発生した熱を輻射させる輻射部14と、燃料アンモニア10の燃焼により生成した排ガスを対流させる対流部16と、原料アンモニア20の分解反応を行う分解部24を有している。アンモニアタンク1には、原料及び燃料として使用可能なアンモニアが液体の状態で保管されていることが好ましい。なお、図1及び図2の装置では、アンモニア分解反応の原料としてアンモニアを用いつつ、その反応を行う分解部の加熱のための燃料としてもアンモニアを用いていることから、両者を区別する必要がある場合には、それぞれ「原料アンモニア」及び「燃料アンモニア」と称する。
【0014】
アンモニアタンク1からの燃料アンモニア10は、必要に応じて加圧され、燃料アンモニア気化器11にて加熱・気化される。その後、燃料アンモニア予熱部において媒体Aとの熱交換により予熱される。図1及び図2の装置では、アンモニア分解炉2の対流部16(輻射部14の下流位置)を燃料アンモニア予熱部12とすることで、燃料アンモニア10を予熱する媒体Aとして、燃料アンモニア10の燃焼により生成した排ガスを用いている。なお、熱交換により燃料アンモニア10を予熱する媒体Aとして、燃料アンモニア10の燃焼により生成した排ガスの代わりに、又はその排ガスに加えて、原料アンモニア20の分解反応により得られたアンモニア分解混合物を用いることもできる。媒体Aとしてアンモニア分解混合物を用いる方法としては、例えば、原料アンモニア20の分解反応により得られたアンモニア分解混合物が通過する熱交換器に燃料アンモニア10を導入する方法が挙げられる。
【0015】
ここで、図1及び図2の装置では、燃料としてアンモニアを利用しているが、本発明は、それに限らない。燃料として、アンモニアの代わりに、又はアンモニアに加えて、原料アンモニア20の分解反応により得られたアンモニア分解混合物(燃料となるのはアンモニア分解混合物に含まれる水素及び残留アンモニア)を用いることもできる。さらに、アンモニア及び/又はアンモニア分解混合物に加えて、石炭、石油、天然ガスといった化石資源を用いることもできる。燃料として化石資源のみを用いることも原理的には可能であるが、COの発生を抑制する観点からすると、燃料アンモニアやアンモニア分解混合物(水素及び残留アンモニア)などCOを発生しない燃料を用いることが好ましい。
【0016】
次いで、予熱された燃料アンモニア10は、分解部24の入口付近に設置されたバーナー15に導入される。このとき、燃料アンモニア10は、酸素含有ガス混合部33において空気などの酸素含有ガス30と混合され、バーナー15にて酸素含有ガス中の酸素と反応して燃焼する。なお、燃料アンモニア10の燃焼により発生した熱は、輻射部14において分解部24に輻射される。輻射部14からの輻射熱により加熱可能な位置設けられた分解部24の入口付近は、特に、後述する原料アンモニア20の分解反応により局所的に熱不足となることから、図1及び図2の装置のように、分解部24の入口付近にバーナー15を設置することで、アンモニア分解反応に適した熱の供給を行うことができ、結果として触媒の使用量を少なくすることができる。バーナー15による燃焼方向(バーナー15の向き)に関しては、分解部24の入口付近に効率よく熱を供給することを考慮して定めればよく、例えば、下向き燃焼、横向き燃焼、又はその組み合わせが採用できる。そして、燃料アンモニア10の燃焼により生成した排ガスは、対流部16において適宜熱交換による加熱(予熱)用の媒体として利用されつつ、最終的には排ガス排出部19から排出される。
【0017】
酸素含有ガス30は、必要に応じて、酸素含有ガス予熱部おいて媒体Cとの熱交換により予熱される。図1及び図2の装置では、アンモニア分解炉2の対流部16(輻射部14の下流位置)を酸素含有ガス予熱部32とすることで、酸素含有ガス30を予熱する媒体Cとして、燃料アンモニア10の燃焼により生成した排ガスを用いている。なお、熱交換により酸素含有ガス30を予熱する媒体Cとして、燃料アンモニア10の燃焼により生成した排ガスの代わりに、又はその排ガスに加えて、原料アンモニア20の分解反応により得られたアンモニア分解混合物を用いることもできる。媒体Cとしてアンモニア分解混合物を用いる方法としては、例えば、原料アンモニア20の分解反応により得られたアンモニア分解混合物が通過する熱交換器に酸素含有ガス30を導入する方法が挙げられる。
【0018】
一方、アンモニアタンク1からの原料アンモニア20は、必要に応じて加圧され、原料アンモニア気化器21にて加熱・気化される。その後、原料アンモニア予熱部において媒体Bとの熱交換により予熱される。図1の装置では、アンモニア分解炉2の対流部16(輻射部14の下流位置)を燃料アンモニア予熱部22とすることで、原料アンモニア20を予熱する媒体Bとして、燃料アンモニア10の燃焼により生成した排ガスを用いている。なお、熱交換により原料アンモニア20を予熱する媒体Bとして、燃料アンモニア10の燃焼により生成した排ガスの代わりに、又はその排ガスに加えて、原料アンモニア20の分解反応により得られたアンモニア分解混合物を用いることもできる。媒体Bとしてアンモニア分解混合物を用いる方法としては、例えば、図2の装置のように、原料アンモニア20の分解反応により得られたアンモニア分解混合物が通過する熱交換器27bに原料アンモニア20を導入する方法が挙げられる。
【0019】
次いで、予熱された原料アンモニア20は、分解部24に導入される。分解部24は、燃料アンモニア10がバーナー15で燃焼することで発生した熱が輻射部14において輻射されることで加熱可能な位置に設けられており、燃料アンモニア10を燃焼させることで得られた熱により加熱することが可能である。ただし、分解部24は、輻射部14とは連通しておらず、燃料アンモニア10及び酸素含有ガス30の混合物と、原料アンモニア20は混合しない。分解部24内にはアンモニア分解触媒25(一般的にはルテニウム又はニッケル触媒)が配置されており、それにより分解部24内で原料アンモニア20の分解反応が起きて、アンモニア分解混合物が得られる。そして、原料アンモニア20の分解反応により得られたアンモニア分解混合物は、適宜熱交換による加熱(予熱)用の媒体として利用されつつ、最終的にはアンモニア分解物回収部29から回収される。
【0020】
さらに、排ガス及び/又はアンモニア分解混合物の熱を再利用する観点から、ボイラー水加熱部において媒体Dとの熱交換によりボイラー水40を加熱することが好ましい。図1及び図2の装置では、原料アンモニア20の分解反応により得られたアンモニア分解混合物が通過する熱交換器27aにボイラー水40(液体の水)を導入して水蒸気を発生させ(以下、液体の水の一部又は全部が水蒸気となったものも、単に「ボイラー水」と呼ぶ。)、かつアンモニア分解炉2の対流部16(輻射部14の下流位置)をボイラー水加熱部42とすることで、ボイラー水40を加熱する媒体Dとして、原料アンモニア20の分解反応により得られたアンモニア分解混合物及び燃料アンモニア10の燃焼により生成した排ガスの両方を用いている。なお、熱交換によりボイラー水40を加熱する媒体Dとして、燃料アンモニア10の燃焼により生成した排ガス又は原料アンモニア20の分解反応により得られたアンモニア分解混合物のいずれか一方のみを用いることもできる。加熱されたボイラー水はボイラー水排出部49から排出された後、例えば、燃料アンモニア気化器11及び/又は原料アンモニア気化器21の熱源として用いることもでき、他の熱源として用いることもできる。
【0021】
なお、例えば、図1及び図2の装置では、燃料アンモニア10の燃焼により生成した排ガスとの熱交換により予熱(加熱)するため、対流部16の上流側から、原料アンモニア予熱部22(図2はなし)、原料アンモニア予熱部12、ボイラー水加熱部42、及び酸素含有ガス予熱部32がこの順に配置されているが、この配列順は、排ガスの熱を用いて効率よく予熱(加熱)できるように適宜設定することができる。また、例えば、図2の装置では、原料アンモニア20の分解反応により得られたアンモニア分解混合物との熱交換により予熱(加熱)するため、上流側から、熱交換器27b(原料アンモニア予熱用)及び熱交換器27a(ボイラー水加熱用)がこの順に配置されているが、この配列順は、アンモニア分解混合物の熱を用いて効率よく予熱(加熱)できるように適宜設定することができる。
【0022】
本発明によれば、アンモニアを燃料に用いた場合でも効率よくアンモニアを分解してアンモニア分解混合物の製造することが可能である。特に、燃料としてアンモニアやアンモニア分解混合物を用いることで、COを発生させずにアンモニア分解混合物の製造することが可能となることから、アンモニアを水素キャリアとして利用し、水素を燃料として使用するシステムとして好適である。さらに、燃料の燃焼により生成した排ガス又は原料アンモニアの分解反応により得られたアンモニア分解混合物の熱と熱交換して、燃料、原料アンモニア、酸素含有ガス、又はボイラー水などを予熱(加熱)することで、熱効率を高めることができる。
【0023】
また、本発明では、空気などの酸素含有ガスをプロセスガスに混入させる必要がない。そのため、ガスボリュームが増加しないことから、後段のコンプレッサー等機器費を押さえることができ、また反応器出口の水素濃度が低下せずガス体積あたりのカロリーが高いままとなる。さらに、プロセス側で燃焼反応が起きないため、部分燃焼により局地的な高温領域が発生することがなく、触媒寿命が低下するリスクが低下し、温度制御も容易である。
【0024】
本発明により製造されたアンモニア分解混合物に含まれる水素は、例えば、発電機のガスタービンや燃焼炉の燃料として用いることができる。なお、本発明により製造されたアンモニア分解混合物に含まれる残留アンモニアは少量であることから、発電機のガスタービンや燃焼炉の燃料としてアンモニア分解混合物をそのまま用いることができ、必要に応じて残留アンモニア及び/又は窒素を除去して水素の濃度を高めたものを用いることもできる。
【実施例0025】
<実施例1>
図1に示す構成の装置を用いてアンモニア分解混合物を製造した。なお、酸素含有ガスとしては空気を用いた。装置の稼働条件及び結果は、以下のとおりである。
【0026】
(1)原料の流量
燃料アンモニア:1945kmol/h
原料アンモニア:5556kmol/h
空気 :7694kmol/h
ボイラー水 :5151kmol/h
【0027】
(2)各成分の温度
(a)燃料アンモニア
燃料アンモニア気化器11通過前:-33℃(0.6MPa)
燃料アンモニア気化器11通過後: 18℃
燃料アンモニア予熱部12通過後:290℃(0.2MPa)
(b)空気(酸素含有ガス)
酸素含有ガス予熱部32通過前 : 25℃
酸素含有ガス予熱部32通過後 :300℃
(c)排ガス
原料アンモニア予熱部22通過前:900℃
燃料アンモニア予熱部12通過前:608℃
ボイラー水加熱部42通過前 :548℃
酸素含有ガス予熱部32通過前 :328℃
排ガス排出部19 :130℃
(d)原料アンモニア
原料アンモニア気化器21通過前:-33℃(3.65MPa)
原料アンモニア気化器21通過後: 91℃
原料アンモニア予熱部22通過後:500℃
(e)アンモニア分解混合物
熱交換器27a通過前 :750℃
アンモニア分解物回収部29 :250℃(2.8MPa)
(f)ボイラー水
熱交換器27a通過前 :133℃(5.10MPa)
ボイラー水加熱部42通過前 :263℃
ボイラー水排出部49 :387℃(4.70MPa)
【0028】
(3)アンモニア分解混合物中の各成分の流量
水素 :8334kmol/h
窒素 :2778kmol/h
残留アンモニア: 0kmol/h
【0029】
<実施例2>
図2に示す構成の装置を用いてアンモニア分解混合物を製造した。なお、酸素含有ガスとしては空気を用いた。装置の稼働条件及び結果は、以下のとおりである。
【0030】
(1)原料の流量
燃料アンモニア:1942kmol/h
原料アンモニア:5556kmol/h
空気 :7645kmol/h
ボイラー水 :5115kmol/h
【0031】
(2)各成分の温度
(a)燃料アンモニア
燃料アンモニア気化器11通過前:-33℃(0.6MPa)
燃料アンモニア気化器11通過後: 18℃
燃料アンモニア予熱部12通過後:290℃(0.2MPa)
(b)空気(酸素含有ガス)
酸素含有ガス予熱部32通過前 : 25℃
酸素含有ガス予熱部32通過後 :300℃
(c)排ガス
燃料アンモニア予熱部12通過前:900℃
ボイラー水加熱部42通過前 :843℃
酸素含有ガス予熱部32通過前 :328℃
排ガス排出部19 :130℃
(d)原料アンモニア
原料アンモニア気化器21通過前:-33℃(3.65MPa)
原料アンモニア気化器21通過後: 91℃
熱交換器27a通過後 :500℃
(e)アンモニア分解混合物
熱交換器27b通過前 :750℃
熱交換器27a通過前 :430℃
アンモニア分解物回収部29 :250℃(2.8MPa)
(f)ボイラー水
熱交換器27a通過前 :133℃(5.10MPa)
ボイラー水加熱部42通過前 :262℃
ボイラー水排出部49 :387℃(4.70MPa)
【0032】
(3)アンモニア分解混合物中の各成分の流量
水素 :8334kmol/h
窒素 :2778kmol/h
残留アンモニア: 0kmol/h
【符号の説明】
【0033】
1 アンモニアタンク
2 アンモニア分解炉
10 燃料アンモニア
11 燃料アンモニア気化器
12 燃料アンモニア予熱部
14 輻射部
15 バーナー(燃焼器)
16 対流部
19 排ガス排出部
20 原料アンモニア
21 原料アンモニア気化器
22 原料アンモニア予熱部
24 分解部
25 アンモニア分解触媒
27a 熱交換器
27b 熱交換器
29 アンモニア分解物回収部
30 酸素含有ガス
32 酸素含有ガス予熱部
33 酸素含有ガス混合部
40 ボイラー水
42 ボイラー水加熱部
49 ボイラー水排出部
図1
図2