(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048181
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
B23D 21/14 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
B23D21/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157345
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 忠久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠治
(72)【発明者】
【氏名】永嶋 充
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 久之
(57)【要約】
【課題】切断位置の自由度が高い切断装置を提供する。
【解決手段】切断装置20は、鋼管部11の径方向に伸縮可能な複数の支持フレーム26を有する支持機構21と、鋼管部11の径方向に伸縮可能に構成されて先端部に切断刃を有する複数の切断フレーム46を備えた切断機構22と、支持機構21の中心部に対して切断機構22の中心部を回転可能に連結する連結部24と、支持機構21に対し、鋼管部11の中心軸線周りに切断機構22を回転させる回転機構23と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管部の径方向に伸縮可能な複数の支持フレームを有する支持機構と、
前記鋼管部の径方向に伸縮可能に構成されて先端部に切断刃を有する複数の切断フレームを備えた切断機構と、
前記支持機構の中心部に対して前記切断機構の中心部を回転可能に連結する連結部と、
前記支持機構に対し、前記鋼管部の中心軸線周りに前記切断機構を回転させる回転機構と、を備える
切断装置。
【請求項2】
前記切断フレームの伸縮方向に前記切断刃を移動させて、前記切断フレームからの前記切断刃の突出量を調整する切断刃調整機構を備える
請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記支持機構は、
前記支持フレームの先端部に、前記鋼管部の内周面に押し当てられる押し当て部材を有し、前記押し当て部材が着脱可能に構成されている
請求項1または2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記回転機構は、
前記切断機構に固定された従動ギヤと、
前記従動ギヤに噛合する複数の駆動ギヤと、
前記複数の駆動ギヤの各々に対応して設けられ、前記支持機構に固定されて前記対応する駆動ギヤを駆動する複数の駆動機と、を有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の切断装置。
【請求項5】
前記複数の駆動ギヤは、前記切断機構の回転軸線を中心とした対称位置に配置され、
前記複数の駆動機は、前記切断機構の回転軸線を中心とした対称位置に配置されている
請求項4に記載の切断装置。
【請求項6】
前記切断機構は、
前記切断機構の回転方向において互いに隣接する一対の前記切断フレームの先端部を連結するリンク機構を有し、
前記リンク機構は、
前記一対の切断フレームの一方に、上下方向に延びる回転軸線を回転中心として回転可能に基端部が連結される円弧状の第1リンクと、
前記一対の切断フレームの他方に、上下方向に延びる回転軸線を回転中心として回転可能に基端部が連結される円弧状の第2リンクと、を有し、
前記第1リンクの先端部と前記第2リンクの先端部とが、上下方向に延びる回転軸線を回転中心として回転可能に連結されており、
前記切断刃によって前記鋼管部が切断可能な切断長さに前記切断フレームがあるときに、前記第1リンクと前記第2リンクとが前記鋼管部に沿う円弧を描くように配置される
請求項1~5のいずれか一項に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力発電装置などに用いられる大口径の鋼管部を内側から切断する切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洋上風力発電装置の構造として、海底に設置した基礎構造体に風力発電機を固定して支持させる着床式が知られている。着床式の基礎構造体は、例えば、海底に下端部側を固定し、海中から海面上方に向かって延びる鋼管部を備えた大口径の杭(支柱、モノパイル)によって構築される。
【0003】
ところで、この種の洋上風力発電装置を解体する際には、上述した大口径の杭を撤去することも必要になる。大口径の杭は、そのままの状態で撤去することが困難であるため、例えば、長尺の鋼管部を所望位置で切断して部分ごとに分けて撤去してゆく。
【0004】
こうした大口径の杭の切断に適用可能な切断装置として、特許文献1には、鋼管部を当該鋼管部の内側から切断可能な切断装置が開示されている。特許文献1に記載の切断装置は、鋼管部の横断面方向に延びるプレート状のプラットホームに対して、複数の脚を有する支持アッセンブリを介して支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の切断装置は、支持アッセンブリを介してプラットホームに支持されるため、切断位置がプラットホームの位置に依存してしまう。そのため、所望の位置で切断するためにはプラットホームを設置する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する切断装置は、鋼管部の径方向に伸縮可能な複数の支持フレームを有する支持機構と、前記鋼管部の径方向に伸縮可能に構成されて先端部に切断刃を有する複数の切断フレームを備えた切断機構と、前記支持機構の中心部に対して前記切断機構の中心部を回転可能に連結する連結部と、前記支持機構に対し、前記鋼管部の中心軸線周りに前記切断機構を回転させる回転機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鋼管部を切断する際の切断位置についての自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】切断装置の一実施形態の概略構成を示す側面図。
【
図3】(a)最短長さにあるときの支持フレームの概略構成を一部の部材を断面で示す図、(b)押し当て長さにあるときの支持フレームの概略構成を一部の部材を断面で示す図。
【
図4】押し当て長さにあるときの支持機構の概略構成を示す上面図。
【
図6】(a)最短長さにあるときの切断フレームの概略構成を一部の部材を断面で示す図、(b)切断長さにあるときの切断フレームの概略構成を一部の部材を断面で示す図、(c)切断長さにある切断フレームにおいて、切断刃が最大突出量にあるときの概略構成を一部の部材を断面で示す図。
【
図7】切断フレームの伸縮時におけるリンク機構の作動態様を示す上面図。
【
図8】
図1における回転機構付近を示す部分拡大図。
【
図9】支持フレームが押し当て長さまで伸長した状態の概略構成を示す側面図。
【
図10】切断フレームが切断長さまで伸長した状態の概略構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1~
図10を参照して、切断装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、切断装置20は、例えば洋上風力発電装置に用いられる円管状で大口径の杭(支柱、モノパイル)などの鋼管部11を内側から切断する装置である。切断装置20は、クレーンなどによって吊り下げられた状態で鋼管部11の内部を昇降して所望の切断位置へと配置される。
【0011】
切断装置20は、支持機構21、切断機構22、および、回転機構23を有する。切断機構22は、支持機構21の下方に位置している。支持機構21と切断機構22は、その中心部が連結部24を介して連結されている。連結部24は、支持機構21に対して切断機構22を回転可能に連結している。回転機構23は、支持機構21と切断機構22との間であって連結部24の周囲に設けられている。回転機構23は、回転軸線22Aを回転中心として、支持機構21に対して切断機構22を正逆回転させる。
【0012】
(支持機構)
図2に示すように、支持機構21は、その中心部から鋼管部11の径方向に延びる複数の支持フレーム26を有している。各支持フレーム26は、鋼管部11の径方向において伸縮可能に構成されている。複数の支持フレーム26は、支持機構21の中心部において連結されているとともに切断機構22の回転軸線22A周りにおいて等間隔で設けられている。本実施形態の支持機構21は、8本の支持フレーム26を有している。
【0013】
図3(a)および
図3(b)に示すように、支持フレーム26は、内側支持フレーム31と外側支持フレーム32とを有する。内側支持フレーム31は、筒状の形状を有する。外側支持フレーム32は、内側支持フレーム31に内挿されている。支持フレーム26は、内側支持フレーム31の延在方向に沿って外側支持フレーム32が移動することにより、
図3(a)に示す最短長さと
図3(b)に示す押し当て長さとの間を伸縮する。なお、内側支持フレーム31には、クレーンの玉掛ワイヤなどが係合可能な図示されないワイヤ係合部が設けられている。
【0014】
支持機構21は、各支持フレーム26に、内側支持フレーム31に対して外側支持フレーム32を移動させる支持用ジャッキ33を有している。
支持用ジャッキ33は、支持用シリンダ34と支持用ロッド35とを有する。支持用シリンダ34および支持用ロッド35は、内側支持フレーム31の延在方向に沿って延びている。本実施形態において、支持用シリンダ34は、内側支持フレーム31の上面に固定されている。また、支持用ロッド35は、その先端部が外側支持フレーム32の上面に固定されている。支持用ジャッキ33は、支持用シリンダ34に対して支持用ロッド35が内側支持フレーム31の延在方向に沿って移動することで支持フレーム26を伸縮させる。
【0015】
支持用ジャッキ33は、支持機構21の中心部の上面に設置された油圧供給機37(
図1、
図2参照)によって油圧が給排され、これにより、支持用シリンダ34の延在方向に沿って支持用ロッド35が進退(伸縮)移動する。各支持フレーム26の支持用ジャッキ33には、油圧供給機37から同じ油圧が給排されるように構成されている。これにより、各支持フレーム26の伸縮量を同じにすることができる。
【0016】
外側支持フレーム32の先端部には、押し当て部材40が着脱可能に取り付けられている。押し当て部材40は、支持フレーム26が伸長することで鋼管部11の内周面11aに押し当てられる部位である。押し当て部材40は、支持フレーム26の伸張方向側に、鋼管部11の内周面11aに押し当てられて鋼管部11に密着する密着部(押圧部)41を有している。密着部41は、弾性部材によって構成されている。密着部41は、鋼管部11の内周面11aに押圧して密着する密着面(押圧面)41aを有する。密着面41aは、鋼管部11の内周面11aに沿うように外側(内周面11a側)に凸の円弧面状に形成されている。
【0017】
図4に示すように、支持機構21においては、支持用ジャッキ33に油圧供給機37から油圧が供給されると、各支持フレーム26が鋼管部11の径方向外側へ伸長する。そして、支持フレーム26が押し当て長さまで伸張すると、押し当て部材40の密着部41が鋼管部11に押し当てられて鋼管部11の内周面11aに密着する。これにより、切断装置20は、鋼管部11に支持される。鋼管部11に支持された切断装置20は、鋼管部11の中心軸線に対して切断機構22の回転軸線22Aが一致(略一致を含む)するように配置される。
【0018】
(切断機構)
図5に示すように、切断機構22は、その中心部から鋼管部11の径方向に延びる複数の切断フレーム46を有している。複数の切断フレーム46は、切断機構22の中心部において連結されているとともに切断機構22の回転軸線22A周りにおいて等間隔で設けられている。本実施形態の切断機構22は、8本の切断フレーム46を有している。
【0019】
図6(a)、
図6(b)および、
図6(c)に示すように、各切断フレーム46は、鋼管部11の径方向において伸縮可能に構成されている。具体的には、切断フレーム46は、内側切断フレーム47と外側切断フレーム48とを有する。内側切断フレーム47は、筒状の形状を有する。外側切断フレーム48は、筒状のフレーム本体49が内側切断フレーム47に内挿されている。切断フレーム46は、内側切断フレーム47の延在方向に沿って外側切断フレーム48のフレーム本体49が移動することにより、
図6(a)に示す最短長さと
図6(b)および
図6(c)に示す切断長さとの間を伸縮する。切断長さは、外側切断フレーム48の先端面と鋼管部11の内周面11aとが所定の離間距離のもとで対向する長さである。
【0020】
切断機構22は、内側切断フレーム47に対して外側切断フレーム48を移動させる切断用ジャッキ50を各切断フレーム46に有している。切断用ジャッキ50は、切断用シリンダ51と切断用ロッド52とを有する。切断用シリンダ51および切断用ロッド52は、内側切断フレーム47の延在方向に沿って延びている。
【0021】
本実施形態において、切断用シリンダ51は、内側切断フレーム47の下面に固定されている。また、切断用ロッド52は、その先端部が外側切断フレーム48の下面に固定されている。切断用ジャッキ50は、切断用シリンダ51に対して切断用ロッド52が進退移動することで切断フレーム46を伸縮させる。
【0022】
切断用ジャッキ50は、油圧供給機37(
図1、
図2参照)によって油圧が給排され、これにより、切断用シリンダ51の延在方向に沿って切断用ロッド52が進退(伸縮)移動する。各切断フレーム46の切断用ジャッキ50には、油圧供給機37から同じ油圧が給排されるように構成されている。これにより、各切断フレーム46の伸縮量を同じにすることができる。なお、切断用ジャッキ50に用いる油圧供給機37と、支持用ジャッキ33に用いる油圧供給機37とは、それぞれ個別の油圧供給機であってもよい。
【0023】
図6、
図7に示すように、外側切断フレーム48は、先端部にリンク連結部材55を有する。リンク連結部材55は、後述するリンク機構65が連結される部位である。リンク機構65は、切断機構22の回転軸線22A周りにおいて、互いに隣接する一対の切断フレーム46の先端部を連結する機構である。
【0024】
リンク連結部材55は、鋼管部11の内周面11aに沿うように、鋼管部11の径方向外側(内周面11a側)に凸の円弧状に形成されている。リンク連結部材55は、切断機構22の回転方向においてフレーム本体49よりも突出する部分にリンク機構65を構成するリンク(66,67)が連結される。
【0025】
切断フレーム46は、外側切断フレーム48の先端部に切断刃57を有する。切断刃57は、リンク連結部材55からの突出量が切断刃調整機構58によって調整可能に構成されている。なお、本実施形態において、切断刃調整機構58は、外側切断フレーム48のフレーム本体49の内部に設けられている。
【0026】
切断刃調整機構58は、切断刃用シリンダ59と切断刃用ロッド60とを有する。切断刃用シリンダ59および切断刃用ロッド60は、フレーム本体49の延在方向に沿って延びている。切断刃用シリンダ59は、例えば、フレーム本体49の内面に固定されている。切断刃用ロッド60は、その先端部に切断刃57が着脱可能に取り付けられている。
【0027】
切断刃調整機構58は、切断刃用シリンダ59に対して切断刃用ロッド60がフレーム本体49の延在方向に沿って進退移動する。これにより、
図6(a)および
図6(b)に示す収納位置と
図6(c)に示す最大突出位置との間で切断刃57を移動させることができる。
【0028】
切断刃調整機構58は、油圧供給機37によって油圧が給排されることで切断刃用ロッド60が移動する。各切断フレーム46の切断刃調整機構58には、油圧供給機37から同じ油圧が給排されるように構成されている。これにより、各切断フレーム46において切断刃57の突出量を同じにすることができる。
【0029】
(リンク機構)
図7に示すように、リンク機構65は、一対の切断フレーム46に対して着脱可能に連結される。リンク機構65は、第1リンク66と第2リンク67とを有する。本実施形態において、第1リンク66は、時計回り方向側に位置する切断フレーム46に連結された板状のリンクである。第2リンク67は、反時計回り方向側に位置する切断フレーム46に連結された板状のリンクである。本実施形態において、第1リンク66および第2リンク67は、
図7に示す状態(
図6(b)に示す収納位置と
図6(c)に示す最大突出位置とに相当する状態)で、鋼管部11の径方向外側(内周面11a側)に凸の円弧状に形成されている。また、本実施形態の複数の第1リンク66および複数の第2リンク67は、
図7に示す状態で、鋼管部11の内周面11aに沿って配され、円環状を呈するように構成されている。
【0030】
第1リンク66の基端部は、一対の切断フレーム46の一方に、上下方向に延びる第1基端回転軸部68を回転中心として正逆回転可能に、また、着脱可能に連結されている。第2リンク67の基端部は、一対の切断フレーム46の他方に、上下方向に延びる第2基端回転軸部69を回転中心として正逆回転可能に、また、着脱可能に連結されている。第1リンク66の先端部と第2リンク67の先端部は、上下方向に延びる先端回転軸部70を回転中心として回転可能に連結されている。
【0031】
第1リンク66および第2リンク67は、切断フレーム46が切断長さにあるときに鋼管部11に沿うように配置される。すなわち、前述のように、本実施形態の複数の第1リンク66および複数の第2リンク67は、
図7に示す状態(
図6(b)に示す収納位置と
図6(c)に示す最大突出位置とに相当する状態)で、鋼管部11の内周面11aに沿って円環状を呈するように配設される。また、第1リンク66および第2リンク67は、その先端部が切断機構22の中心部側に付勢されている。各リンク66,67の付勢力は、基端部に設けられる付勢部材によって付与されてもよいし、一方のリンクの先端部と切断機構22の中心部とを繋ぐ付勢部材によって付与されてもよい。こうした付勢力により、第1リンク66および第2リンク67は、切断フレーム46が切断長さ以外にあるときは、
図7に二点鎖線で示すように、切断フレーム46の伸縮に応じて鋼管部11の径方向の内側へ折れ曲がる。先端回転軸部70は、一対の切断フレーム46がなす角の二等分線上を切断フレーム46の伸縮に応じて移動する。
【0032】
こうした構成の切断機構22においては、切断用ジャッキ50に油圧供給機37から油圧が供給されると、各切断フレーム46が鋼管部11の径方向外側へ伸長する。切断フレーム46が切断長さまで伸張すると、回転機構23が駆動されて切断機構22が回転軸線22Aを回転中心として回転する。そして、切断刃調整機構58に油圧供給機37から油圧が供給されることにより、回転しながら切断刃57の突出量を徐々に大きくする。これにより、切断刃57が回転しながら鋼管部11に切り込まれ、切断機構22によって鋼管部11が切断される。
【0033】
(回転機構)
図8に示すように、回転機構23は、従動ギヤ73、複数の駆動ギヤ74、および、複数の駆動機75を有する。
【0034】
従動ギヤ73は、例えば、切断フレーム46の内側切断フレーム47の上面に固定されている。従動ギヤ73は、外周部に歯形を有する環状の平歯車である。従動ギヤ73は、支持機構21と切断機構22との間において、連結部24を同軸で囲繞するように設けられている。
【0035】
複数の駆動ギヤ74は、従動ギヤ73に噛合する歯形を外周部に有する平歯車である。複数の駆動ギヤ74は、例えば、切断装置20の上面視において、切断機構22の回転軸線22Aを中心とした対称位置に配置されている。本実施形態の回転機構23は、2つの駆動ギヤ74を有している。各駆動ギヤ74は、駆動機75の出力軸75Aに連結されている。各駆動ギヤ74は、駆動機75の正逆駆動によって上下方向に延びる回転軸を中心に正逆回転する。
【0036】
駆動機75は、複数の駆動ギヤ74の各々に対応して設けられている。駆動機75は、例えば、支持フレーム26の下面に対して固定されている。本実施形態の駆動機75は、切断装置20の上面視において、切断機構22の回転軸線22Aを中心とした対称位置に配置されている。駆動機75は、油圧供給機37から油圧が供給されることにより、従動ギヤ73が所定の回転方向に正逆回転するように駆動ギヤ74を回転させる。
【0037】
(切断手順)
切断装置20を用いて鋼管部11を切断する際の手順について説明する。
まず、切断装置20が鋼管部11の内部へと搬送される。具体的には、支持フレーム26および切断フレーム46を最短長さにした状態で、クレーンなどを用いて切断装置20を鋼管部11の内部へ搬送する。そして、鋼管部11の内部の所定の切断位置まで切断装置20を下降させる(
図1、
図2参照)。
【0038】
図9に示すように、切断位置に到達すると、切断装置20の位置決めを行う。具体的には、支持用ジャッキ33を用いて支持フレーム26を押し当て長さまで伸長させて、押し当て部材40の密着部41を鋼管部11の内周面11aに密着させる。これにより、鋼管部11に対して切断装置20が位置決めされる。
【0039】
図10に示すように、位置決めが完了すると、切断装置20は切断を開始する。具体的には、切断用ジャッキ50を用いて切断フレーム46を切断長さまで伸長させたのち、回転機構23の各駆動機75を駆動して切断機構22を回転させる。そして、切断機構22を回転させたままで切断刃調整機構58を駆動して、
図6(b)および
図6(c)に示したように切断刃57を収納位置から最大突出位置へと徐々に移動させる。このとき、切断刃57は、鋼管部11に切り込まれ、鋼管部11を削りながら最大突出位置まで突出する。切断刃57が最大突出位置まで移動したとき、鋼管部11は切断されている。
【0040】
切断が終了すると、回転機構23を停止させるとともに、切断刃調整機構58が切断刃57を収納位置まで移動させる。そして、切断用ジャッキ50を用いて切断フレーム46を切断長さから最短長さへと収縮させたのち、支持用ジャッキ33を用いて支持フレーム26を押し当て長さから最短長さへと収縮させる。これにより、切断装置20による鋼管部11の切断が完了する。
【0041】
なお、切断後においては、切断用ジャッキ50を用いて切断フレーム46を切断長さから最短長さへと収縮させる。また、支持フレーム26を押し当て長さのままとし、支持機構21で切断分離した鋼管部11を支持させる。そして、切断分離した鋼管部11と切断装置20とを引き上げて回収するようにしてもよい。
【0042】
また、切断位置到達後の一連の流れは、油圧供給機37の操作装置を用いたオペレータの操作に基づいて行われてもよい。また、油圧供給機37を制御可能な制御装置によって自動的に行われてもよい。この場合、制御装置には、押し当て長さや切断長さ等の切断条件が予め入力される。
【0043】
本実施形態の効果について説明する。
(1)切断装置20は、鋼管部11の径方向に伸縮可能な複数の支持フレーム26を有する支持機構21と、鋼管部11の径方向に伸縮可能に構成されて先端部に切断刃57を有する複数の切断フレーム46を備えた切断機構22と、支持機構21の中心部に対して切断機構22の中心部を回転可能に連結する連結部24と、支持機構21に対し、鋼管部11の中心軸線周りに切断機構22を回転させる回転機構23と、を備える。
【0044】
こうした切断装置20においては、鋼管部11の内周面11aに支持フレーム26の先端部を押し当てることにより、鋼管部11の内部において、所望の切断位置に切断装置20を配置することができる。その結果、鋼管部11の切断位置の自由度を向上させることができる。
【0045】
(2)切断装置20は、切断フレーム46の伸縮方向に切断刃57を移動させて、切断フレーム46からの切断刃57の突出量を調整する切断刃調整機構58を備える。
これにより、切断フレーム46を所定の切断長さに維持した状態で切断刃57の突出量を調整しながら好適に切り込ませて鋼管部11を切断することができる。
【0046】
(3)支持機構21は、支持フレーム26の先端部に、鋼管部11の内周面11aに押し当てられる押し当て部材40を有し、押し当て部材40が着脱可能に構成されている。すなわち、支持機構21は、鋼管部11の径に合わせて押し当て部材40を付け替えることが可能に構成されている。
これにより、鋼管部11の内周面11aに対して、より強固に押し当て部材40を密着させることができる。
【0047】
(4)回転機構23は、切断機構22に固定された従動ギヤ73と、従動ギヤ73に噛合する複数の駆動ギヤ74と、複数の駆動ギヤ74の各々に対応して設けられ、支持機構21に固定されて対応する駆動ギヤ74を駆動する複数の駆動機75と、を有する。
これにより、複数の駆動機75で切断機構22を回転させることから、より強い力で切断機構22を回転させることができる。
【0048】
(5)複数の駆動ギヤ74は、切断機構22の回転軸線22Aを中心にした対称位置に配置されている。また、複数の駆動機75は、切断機構22の回転軸線22Aを中心とした対称位置に配置されている。
これにより、切断装置20の重量配分についてバランスをとることができる。その結果、例えば、クレーンなどを用いて切断装置20を昇降させる際に切断装置20が安定しやすくなる。
【0049】
(6)切断機構22は、回転方向において互いに隣接する一対の切断フレーム46の先端部を連結するリンク機構65を有する。リンク機構65は、一対の切断フレーム46の一方に、上下方向に延びる回転軸を回転中心として回転可能に基端部が連結される円弧状の第1リンク66と、一対の切断フレーム46の他方に、上下方向に延びる回転軸を回転中心として回転可能に基端部が連結される円弧状の第2リンク67と、を有し、第1リンク66の先端部と第2リンク67の先端部とが、上下方向に延びる回転軸を回転中心として回転可能に連結されている。そして、切断刃57によって鋼管部11が切断可能な切断長さに切断フレーム46があるときに、第1リンク66と第2リンク67とが鋼管部11に沿う円弧を描くように配置される。
【0050】
これにより、鋼管部11を切断しているときに切断フレーム46に作用する抵抗力を他の切断フレーム46に効果的に分散させることができる。すなわち、1つの切断フレーム46に作用する抵抗力を切断機構22全体で受けることができる。
【0051】
(7)支持機構21の下方に切断機構22が配置されている。
これにより、鋼管部11の切断時、切断された方の鋼管部11に切断装置20を支持させた状態にすることができる。その結果、クレーンを用いて切断装置20を上昇させることで切断部分の引き上げを行うことができる。
【0052】
(8)リンク機構65は、第1リンク66および第2リンク67が切断機構22に対して着脱可能に構成されている。
これにより、切断対象となる鋼管部11の径に合わせて、リンク機構65を構成することができる。
【0053】
以上、切断装置の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・切断装置20は、切断機構22の回転軸線22A周りにおいて互いに隣接する一対の切断フレーム46を連結するリンク機構65を備えていなくともよい。
【0055】
・回転機構23は、上面視において、複数の駆動機75が切断機構22の回転軸線22Aを中心とした対称位置に配置されている構成に限られない。回転機構23は、上面視において、複数の駆動機75が切断機構22の回転軸線22A周りにおいて等間隔で設けられていてもよい。これにより、切断装置20の重量配分のバランスをとりつつ、駆動ギヤ74の設置個数についての自由度を向上させることができる。
【0056】
・回転機構23は、従動ギヤ73、複数の駆動ギヤ74、および、複数の駆動機75を用いた構成に限られない。回転機構23は、例えば、駆動機75の出力軸が切断機構22の中心部に連結されている構成であってもよい。
【0057】
・支持フレーム26は、外側支持フレーム32に対して押し当て部材40が固定されている構成であってもよい。こうした構成においては、弾性部材からなる密着部41の厚みを大きくすることが好ましい。また、必ずしも弾性部材の密着部41を具備しなくてもよい。例えば、密着部41を非弾性部材で構成してもよいし、本実施形態のような密着部41を備えずに押し当て部材40自体を鋼管部11に押圧させるように構成してもよい。
【0058】
・各支持用ジャッキ33には、油圧供給機37から同じ油圧が給排されるように構成されている。これに限らず、例えば、各支持用ジャッキ33に対する油圧を監視して、支持用ジャッキ33ごとに油圧が制御されてもよい。すなわち、支持フレーム26ごとに伸縮量や内周面11aへの押し当て力などが制御されてもよい。こうした構成によれば、真円形状でない鋼管部11に対しても切断装置20を支持させることができる。
【0059】
・各切断用ジャッキ50には、油圧供給機37から同じ油圧が給排されるように構成されている。これに限らず、例えば、超音波センサなどを用いて鋼管部11の内周面11aとの離間距離を計測しながら、切断用ジャッキ50ごとに油圧が制御されてもよい。こうした構成によれば、真円形状でない鋼管部11であっても内周面11aから所定の離間距離だけ離れた位置に各切断フレーム46を配置することができる。
【0060】
・切断機構22は、切断フレーム46からの切断刃57の突出量を調整する切断刃調整機構58を備えている。すなわち、切断刃57の突出量は可変となっている。これに限らず、切断刃57は、切断フレーム46からの突出量が一定であってもよい。こうした構成であっても、切断機構22を回転させながら切断フレーム46を伸長させることにより、鋼管部11を切断することができる。
【0061】
・各切断刃調整機構58には、油圧供給機37から同じ油圧が給排されるように構成されている。これに限らず、例えば、各切断刃調整機構58に対する油圧を監視して、切断刃調整機構58ごとに油圧が制御されてもよい。こうした構成によれば、切断フレーム46ごとに切断刃57の突出量を制御することができる。
【0062】
・切断装置20は、支持機構21の上方に切断機構22が配置されている構成であってもよい。
【0063】
・また、本実施形態では、切断装置20によって、洋上風力発電装置に用いられる杭(支柱、モノパイル)の鋼管部11を切断するように説明を行ったが、洋上風力発電装置に用いられる杭以外の鋼管部11を切断するために切断装置20を用いてもよい。
【符号の説明】
【0064】
11…鋼管部、11a…内周面、20…切断装置、21…支持機構、22…切断機構、22A…回転軸線、23…回転機構、24…連結部、26…支持フレーム、31…内側支持フレーム、32…外側支持フレーム、33…支持用ジャッキ、34…支持用シリンダ、35…支持用ロッド、37…油圧供給機、40…押し当て部材、41…密着部、41a…密着面、46…切断フレーム、47…内側切断フレーム、48…外側切断フレーム、49…フレーム本体、50…切断用ジャッキ、51…切断用シリンダ、52…切断用ロッド、55…リンク連結部材、57…切断刃、58…切断刃調整機構、59…切断刃用シリンダ、60…切断刃用ロッド、65…リンク機構、66…第1リンク、67…第2リンク、68…第1基端回転軸部、69…第2基端回転軸部、70…先端回転軸部、73…従動ギヤ、74…駆動ギヤ、75…駆動機、75A…出力軸。