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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048201
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】商品容器の外装シート
(51)【国際特許分類】
   B65D 23/00 20060101AFI20230331BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20230331BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
B65D23/00 H
B65D25/20 Q
B65D25/20 P
G09F3/10 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157368
(22)【出願日】2021-09-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】516045551
【氏名又は名称】本州印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077791
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 収二
(72)【発明者】
【氏名】細井 力
【テーマコード(参考)】
3E062
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AB20
3E062DA02
3E062DA07
3E062DA08
3E062JA04
3E062JA08
3E062JB04
3E062JB26
3E062JB27
3E062JC07
3E062JD10
(57)【要約】
【課題】商品容器の外周面に貼着され、商品流通過程における商品管理を可能にする外装シートを提供する。
【解決手段】
シート素材(6)の表面に、商品の法定表示(3)を表示する必須印刷層(3P)が不透明インキにより形成されたものにおいて、必須印刷層(3P)の上に重ねて、各商品容器を他の商品容器から識別するID表示(5)を表示するID印刷層(5P)を透明インキにより積層状態として形成し、シート素材(6)の表面を透明の保護膜(7)により被覆しており、前記ID印刷層(5P)は、必須印刷層(3P)よりも層厚を厚く形成することにより保護膜(7)の表面をID表示(5)の輪郭に沿って隆起させた隆起手段(R)と、ID印刷層(5P)を紫外線の照射を受けたとき蛍光する透明蛍光インキにより形成した蛍光手段(Q)により、可視手段を構成している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品容器の外周面に貼着される外装シートであり、シート素材(6)の表面に、商品の法定表示(3)を不透明インキにより表示する必須印刷層(3P)と、任意表示(2)を不透明インキにより表示する任意印刷層(2P)と、表示を有しない空白部(1a)を形成し、前記法定表示と任意表示と空白部の表面を透明の保護膜(7)により被覆して成る構成において、
前記任意印刷層(2P)と、必須印刷層(3P)と、空白部(1a)のうち、少なくとも1つの上に重ねて、各商品容器を他の商品容器から識別するID表示(5)を表示するID印刷層(5P)を形成しており、
前記ID印刷層(5P)は、透明インキにより形成される一方において、前記保護膜(7)の表面側からID表示を視認可能とする可視手段を設け、
前記可視手段は、任意印刷層(2P)及び必須印刷層(3P)よりもID印刷層(5P)の層厚を肉盛り状に厚く形成することにより保護膜(7)の表面をID表示(5)の輪郭に沿って隆起させた隆起手段(R)と、ID印刷層(5P)を紫外線の照射を受けたとき蛍光する透明蛍光インキにより形成した蛍光手段(Q)のうち、少なくとも一方の手段により構成されて成ることを特徴とする商品容器の外装シート。
【請求項2】
前記可視手段は、ID印刷層(5P)を紫外線の照射を受けたとき蛍光する透明蛍光インキにより層厚が任意印刷層(2P)及び必須印刷層(3P)よりも肉盛り状に厚くなるように形成することにより、前記隆起手段(R)と蛍光手段(Q)の両方の手段を備えるように構成されて成ることを特徴とする請求項1に記載の商品容器の外装シート。
【請求項3】
前記必須印刷層(3P)の上に重ねてID印刷層(5P)を形成した構成において、
前記必須印刷層(3P)は、法定表示(3)の文字又は記号に含まれる線又は点を表す要素印刷層(3a)を点在させ、隣り合う要素印刷層の間に印刷層を有しない空白部(3b)をシート素材の表面に残しており、
前記ID印刷層(5P)は、必須印刷層(3P)に積層された状態で、前記空白部(3b)の上に位置する基層部(5a)と、前記要素印刷層(3a)の上に位置する積層部(5b)を一体に形成して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の商品容器の外装シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品容器の外周面に貼着される外装シートであり、特に、商品流通過程における商品の個別管理を可能にする外装シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品や医薬品等の商品は、ボトルやその他の容器に収納された状態で、流通経路を経て、消費者に供給される。その際、容器の外周面には外装シートが貼着され、外装シートは、フィルムや紙から成るシート素材に種々の表示を含む印刷層が設けられている。このような印刷層は、例えば、商品の法定表示を表示する必須印刷層の他に、文字・図柄等の意匠を含む任意表示を表示する任意印刷層が含まれており、外装シートの外側の表面側から視認可能とされている。
【0003】
前記法定表示は、化粧品や医薬品に関して医薬品医療機器法(旧薬事法)により定められた表示や、公正競争規約、景品表示法等により定められた表示であり、法規により商品に表示することが義務付けられた表示である。このため、印刷層を設けることが必須条件となる。
【0004】
ところで、商品管理を必要とする商品容器の外装シートには、上記の印刷層の他に、各商品容器を他の商品容器から識別するID表示を表示するID印刷層が設けられ、外装シートの外側の表面側から視認可能とされている。
【0005】
前記ID表示に含まれる識別情報は、量産される商品容器に付されるシリアルナンバーとして認識可能なものとされ、外装シートを構成するシート素材の表面に種々の印刷を施す際に、1枚毎の外装シートに対応して、順次連続的に印刷され、販売に供される商品容器の各々に貼着される。
【0006】
そこで、前記ID表示による識別情報を含む外装シートが貼着された商品容器は、商品を収納した状態で、一連の商品容器が数個単位で梱包箱に収容され、出荷される。尚、梱包箱にも、収容物の情報を表示したID表示が印刷表示される。
【0007】
このため、商品を収納した商品容器は、出荷前に、前記ID表示に基づいて、商品供給者(例えば商品のメーカー)により、商品毎の品番や消費期限等の商品情報と、納品先や納品個数等の出荷情報が管理される。そして、その後の流通過程においても、代理店等の流通業者が同様に前記ID表示を参照することができるので、これにより、商品の流通状況の管理が可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-166837号公報
【特許文献2】実用新案登録第3203910号公報
【特許文献3】特許第6560711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、商品の流通過程において、流通業者の一部により、正規の流通路から外れた流通路に向けて商品が不正に流された場合、その商品容器に貼着された外装シートの前記ID表示を確認すれば、不正流通の経路を調査することが可能であるが、悪質な業者の場合、前記ID表示を削除しているため、調査不能となる。
【0010】
このような不正流通は、現に、近年、インターネットウエブサイトで格安に販売されている商品に散見され、遺憾ながら、これらの不正流通商品は、外装シートの一部を切り取る等により、ID表示が削除されているのが現状である。
【0011】
しかしながら、このような事態は、不正流通業者の法的責任はもとより、化粧品や医薬品のような消費期限付き等の商品に関して、メーカーや正規流通業者の管理責任に及ぶおそれがあり、社会的にも放置できないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記問題を解決した商品容器の外装シートを提供するものであり、その手段として構成したところは、商品容器の外周面に貼着される外装シートであり、シート素材の表面に、商品の法定表示を不透明インキにより表示する必須印刷層と、任意表示を不透明インキにより表示する任意印刷層と、表示を有しない空白部を形成し、前記法定表示と任意表示と空白部の表面を透明の保護膜により被覆して成る構成において、前記任意印刷層と、必須印刷層と、空白部のうち、少なくとも1つの上に重ねて、各商品容器を他の商品容器から識別するID表示を表示するID印刷層を形成しており、前記ID印刷層は、透明インキにより形成される一方において、前記保護膜の表面側からID表示を視認可能とする可視手段を設け、前記可視手段は、任意印刷層及び必須印刷層よりもID印刷層の層厚を肉盛り状に厚く形成することにより保護膜の表面をID表示の輪郭に沿って隆起させた隆起手段と、ID印刷層を紫外線の照射を受けたとき蛍光する透明蛍光インキにより形成した蛍光手段のうち、少なくとも一方の手段により構成されて成る点にある。
【0013】
この際、前記可視手段は、ID印刷層を紫外線の照射を受けたとき蛍光する透明蛍光インキにより層厚が任意印刷層及び必須印刷層よりも肉盛り状に厚くなるように形成することにより、前記隆起手段と蛍光手段の両方の手段により構成することが好ましい。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、ID印刷層は必須印刷層の上に重ねて形成されており、前記必須印刷層は、法定表示の文字又は記号に含まれる線又は点を表す要素印刷層を点在させ、隣り合う要素印刷層の間に印刷層を有しない空白部をシート素材の表面に残しており、前記ID印刷層は、必須印刷層に積層された状態で、前記空白部の上に位置する基層部と、前記要素印刷層の上に位置する積層部を一体に形成している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外装シート1は、任意表示2を表示する任意印刷層2Pと、法定表示3を表示する必須印刷層3Pを形成する他、任意印刷層2Pと必須印刷層3Pと空白部1aうち、少なくとも1つの上に重ねてID表示を5表示するID印刷層5Pを設けている。この際、ID印刷層5Pは、透明インキにより形成されているので、任意印刷層2Pや必須印刷層3Pの上に積層されても、任意表示2や法定表示3の視認を妨げれることはなく、外装シート1の本来の目的及び機能に支障を来すことはない。
【0016】
そして、このようにID印刷層5Pは、透明とされているので、視覚により認識し難く、不正流通業者が商品の横流し等により不正流通経路に供給する際に見落とすことを期待することができ、従来のように切り取られるおそれが低くなる。
【0017】
その一方において、透明のID表示5は、保護膜7の表面側からID表示5を視認可能とする可視手段を設けているので、商品管理者においては、ID表示5を読み取ることができ、不正流通の原因調査を行うことが可能である。この際、ID表示5は、リーダ機器を必要とせず、目視だけで識別情報を読み取ることができるので、直ちに調査を開始し、早期に原因を究明することができる。
【0018】
前記可視手段は、透明とされたID印刷層5Pの層厚を肉盛り状に厚く形成することにより透明の保護膜7の表面をID表示5の輪郭に沿って隆起させた隆起手段Rと、ID印刷層5Pを紫外線の照射を受けたとき蛍光する透明蛍光インキにより形成した蛍光手段Qのうち、少なくとも一方の手段又は両方の手段により構成されている。
【0019】
前記蛍光手段Qは、外装シート1に紫外線を照射すると、ID印刷層5Pを蛍光させるので、商品管理者は、市販のブラックライト(紫外線放射器)を使用することにより、ID表示5を簡単容易に読み取ることができる。
【0020】
前記隆起手段Rは、肉盛り状に分厚く形成された透明のID印刷層5Pの輪郭を透明の保護膜7の表面に隆起させている。従って、通常の注意力では視認困難とされているが、商品管理者は、その正確な印刷位置を特定することができるので、隆起した輪郭を視認して判別することにより、ID表示5を読み取ることが可能である。この隆起手段Rは、商品管理者がブラックライトを所持していない場合でも読み取ることができる利点がある。
【0021】
ところで、不正流通業者が透明のID印刷層5PによるID表示5の存在に気付いたときは、外装シート1からID表示5が表示されたシート部分を切り取ることや、シート表面からID印刷層5Pを削り取ること等が予想される。
【0022】
この点を防止するためには、ID印刷層5Pを必須印刷層5Pに重ねて形成しておくことが好ましい。不正流通業者は、不正流通経路の発覚を免れるために外装シート1のうちID表示の部分を切り取ることはあっても、商品の販売のために必ず必要とされる法定表示3の部分を切り取ったり、削り取ったりすることはない。もしも、法定表示3を削除して商品を販売したときは法規違反になるからであり、これにより、切り取りを止めさせる抑止力となり、不正流通を未然に防止することができる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態は、法定表示3の文字等に含まれる線等を表す要素印刷層3aに対して、ID印刷層5Pの基層部5aと積層部5bを混然一体化するように形成しているので、もしもID印刷層5Pを削り取ろうとすると、必ず、要素印刷層3aも削り取られることになり、法定表示3を読み取ることができなくなるので、削り取りを止めさせる抑止力が更に向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の1実施形態に係る外装シートを商品容器の外周面に貼着した状態を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る外装シートの製造工程に関して、(A)はシート素材の1例としてのミラコートタック紙を示す断面図、(B)は法定表示の1例を示す平面図、(C)はシート素材の表面に法定表示を表示した必須印刷層が形成された状態を示す断面図、(D)は法定表示の上に表示されるID表示の1例を示す平面図、(E)はID表示を表示したID印刷層が形成された状態を示す断面図、(F)は保護膜により被覆した状態を示す断面図である。
図3】シート素材の拡大断面図を示しており、(A)は法定表示を表示した必須印刷層が形成された状態の拡大断面図、(B)はID表示を表示したID印刷層が形成された状態の拡大断面図、(C)は保護膜により被覆された状態の拡大断面図である。
図4】ID印刷層におけるID表示を視認可能とする可視手段に関して、(A)は隆起手段の作用を示す斜視図、(B)は発光手段の作用を示す斜視図である。
図5】商品容器の外表面に貼着された外装シートに関して、(A)はID印刷層が透明の状態を示す拡大断面図、(B)はID印刷層が蛍光した状態を示す拡大断面図である。
図6】外装シートの表面から刃物によりID印刷層を不正に切削しようとしたときの作用を示しており、(A)は切削前の状態を示す断面図、(B)は切削後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0026】
図1に示すように、商品を収容ないし包装したパッケージを構成する商品容器Mの外表面には、外装シート1を貼着した状態で出荷され、流通経路を経て販売される。図面にはボトル容器を例示しているが、容器の形態は自由に選択可能である。
【0027】
外装シート1には、表示を有しない空白部1aを除いて、種々の表示が印刷されており、これらの表示には、任意表示2や、法定表示3が含まれており、更に、本発明が特徴とするID表示5が含まれている。前記任意表示2は、後述するような商品情報表示4とされる場合もある。
【0028】
任意表示2は、商品の販売促進を目的とする図柄や写真等の意匠デザインや、文字等の商標や、その他の任意的な表示である。
【0029】
これに対して、法定表示3は、化粧品や医薬品に関して医薬品医療機器法(旧薬事法)により定められた表示や、公正競争規約、景品表示法等により定められた表示等、法規で商品に表示することが義務付けられた表示であり、文字や記号から成り、商品販売のために必須条件とされている表示である。
【0030】
商品情報表示4は、商品容器Mの出荷状況や在庫管理等のための番号や記号等であり、商品容器Mのシリアルナンバーが含まれる場合もあるが、一般的にバーコード又はQRコード(登録商標)や、図形パターンで表されるデータマトリックスコード等のように、これを目視しただけでは情報を読み取ることができないが、リーダ機器等の光学機器により読取り可能とされたコード表示である。
【0031】
これに対して、ID表示5は、各商品容器Mを他の商品容器Mから識別する識別情報であり、英文字や数字の文字等の記号により構成され、これを目視するだけで、情報を商品のシリアルナンバーとしてアナログ的に読取り可能とした表示である。このようなID表示5や前記商品情報表示4に含まれるシリアルナンバーは、裁断前に移送中の連続帯状とされたシート素材に対して印刷機で印刷する際に、一連の通し番号としての識別情報を順に印刷する2つの印刷ヘッダーをプログラムでコンピュータ制御することにより印刷される。
【0032】
本発明は、前記任意表示2(商品情報表示4を含む)と、法定表示3と、空白部1aのうち、少なくとも1つの上に重ねて、前記ID表示5を透明の状態で表示しながらも、可視手段により視認可能としている点に特徴がある。
【0033】
図2は、本発明の1つの実施形態に関して、外装シート1を構成するシート素材6の構成と、上記の表示を印刷することにより外装シート1を製造する工程の1つの例を示している。
【0034】
図示実施形態の場合、図2(A)に示すように、シート素材6は、公知のシール印刷用紙(ミラコートタック)を使用しており、この場合、ラベルシート6aの裏面に粘着剤層6bを介して離型シート6cが一体化されており、全体厚さは約160μmmに形成されている。しかしながら、必ずしもシール印刷用紙に限定されるものではなく、その他のフィルム等から成るシート素材6を使用しても良い。
【0035】
このようなシート素材6の表面(ラベルシート6aの表面)には、不透明インキを使用することにより、上述の任意表示2を表示する任意印刷層2Pと、法定表示3を表示する必須印刷層3Pと、商品情報表示4を表示する商品情報印刷層4Pが印刷機の印刷により形成される。尚、図面には、印刷層2P、3P、4Pをシート素材6の表面に直接形成したものを示しているが、予めシート素材6の表面に印刷形成された下地印刷層の上に形成しても良い。
【0036】
この際、法定表示3は、図2(B)に示すように、記述された文字又や記号等に含まれる線又は点を相互に間隔をあけて点在させることにより構成されている。従って、図2(C)及び図3(A)に示すように、必須印刷層3Pは、前記線又は点を表す要素印刷層3aを点在させたものとして構成され、隣り合う要素印刷層3a、3aの間に印刷層を有しない空白部3bをシート素材6の表面に残している。尚、必須印刷層3Pの層厚は、一般の印刷と同様の約10~15μmmとされている。
【0037】
そこで、本発明が特徴とするID表示5は、図2(D)に示すように、シリアルナンバーをアナログ的に表示する数字や英文字により構成されており、その1字の大きさは、法定表示3の文字又は記号の複数に跨ってオーバラップされる大きさとされている。
【0038】
ところで、上述の任意表示2を表示する任意印刷層2Pと、法定表示3を表示する必須印刷層3Pと、商品情報表示4を表示する商品情報印刷層4Pが不透明インキで形成されているのに対して、ID表示5を表示するID印刷層5Pは、無色透明のインキ、好ましくは、透明蛍光インキにより形成されている。つまり、屋外や屋内における可視光の下においては、肉眼により視認できない無色透明のものとされている。
【0039】
この透明蛍光インキは、可視光を透過する透明のものであるが、ブラックライト(紫外線放射器)から放射されるUV-A領域(波長315~400nm)の紫外線が照射されると、励起状態とされて蛍光する蛍光物質を含有しており、例えば、商品名:デジタルバーニッシュT7995(製造者:セイコーエプソン株式会社)として市販されているものを使用することができる。
【0040】
これにより、ID印刷層5Pは、透明蛍光インキによる蛍光手段Qを構成しており、蛍光手段Qは、紫外線の照射を受けたときにのみ蛍光し、常時は蛍光せずにID印刷層5Pを透明状態に保持する。
【0041】
図2(E)及び図3(B)に示す図示実施形態の場合、ID表示5を表示するID印刷層5Pは、法定表示3を表示する必須印刷層3Pの上に重ねて、透明蛍光インキを積層させるように印刷することにより形成される。この際、ID印刷層5Pの層厚は、約15~20μmmとされており、必須印刷層3Pの層厚よりも肉盛り状に厚く形成されている。
【0042】
例えば、必須印刷層3Pの層厚を10μmmとする場合、ID印刷層5Pの層厚は15μmmとされ、必須印刷層3Pの層厚を15μmmとする場合、ID印刷層5Pの層厚は20μmmとされる。
【0043】
上述のようにID表示5の数字や文字の1字は、法定表示3を構成する文字又は記号の複数文字に跨ってオーバラップする関係とされている。しかも、法定表示3の線又は点を表す要素印刷層3aの上に印刷されており、従って、図3(B)に示すように、ID表示5を表示するID印刷層5Pは、シート素材6の表面における前記空白部3bの上に形成された基層部5aと、前記要素印刷層3aの上に形成された積層部5bにより、一連一体に形成されている。
【0044】
その後、図2(F)及び図3(C)に示すように、シート素材6の表面は、全ての印刷層2P、3P、4P、5Pを含んで、透明の保護膜7により被覆される。図示実施形態の場合、厚さ約20μmmのポリプロピレンフィルムをラミネートすることにより保護膜7が形成されている。
【0045】
この際、ID印刷層5Pは、上述のように肉盛り状として層厚を厚く形成されているので、図3(C)及び図4(A)に示すように、ID印刷層5Pの上に位置して、保護膜7の表面には、ID表示5の輪郭に沿って隆起させられた隆起手段Rが形成される。つまり、透明の保護膜7の表面には、あたかもエンボスのように浮き上がって形成された隆起部によりID表示5の輪郭が表されている。
【0046】
(作用)
以上のように構成した外装シート1は、離形シート6cを剥離することにより粘着剤層6bを露出させ、商品容器Mの表面の所定個所に貼着させられる。そこで、外装シート1の表面は、法定表示3を表示する必須印刷層3Pと、任意表示2を表示する任意印刷層2Pが形成され、更に、必須印刷層3Pに重ねてID表示5を表示するID印刷層5Pが設けられている。この際、ID印刷層5Pは、無色透明のインキにより形成されているので、法定表示3や任意表示2の視認を妨げることはなく、外装シート1の本来の目的及び機能に支障を来すことはない。
【0047】
ところで、不正流通業者が商品を横流し等により不正流通経路に提供する際、ID印刷層5Pは、透明とされているので、視覚により認識し難く、不正流通業者が見落とす可能性が高い。上述のように、商品情報表示4のなかに図形パターンで表されたコード表示が含まれている場合、不正流通業者は、その部分のシートを切り取ることにより、隠滅の目的を達成したと考え得るので、透明のID印刷層5Pを残存したまま商品容器Mを不正流通経路に提供する可能性が高い。
【0048】
そこで、不正流通経路の商品容器Mを入手した商品管理者は、ID印刷層5Pに設けられた可視手段を構成する隆起手段Rと蛍光手段Qに基づいて、ID表示5を読み取ることにより、不正流通の原因調査を行うことができる。
【0049】
図4(A)及び図5(A)に示すように、隆起手段Rは、肉盛り状に分厚く形成された透明のID印刷層5Pの輪郭を透明の保護膜7の表面に隆起させたものであるから、通常の注意力では視認困難であるが、商品管理者は、その印刷位置を正確に特定することができるので、隆起した輪郭を視認して判別することによりID表示5を読み取ることが可能である。
【0050】
図4(B)及び図5(B)に示すように、蛍光手段Qは、紫外線を照射すると、ID印刷層5Pを蛍光させるので、商品管理者は、市販のブラックライト(紫外線放射器)を使用することにより、ID表示5を簡単容易に読み取ることができる。
【0051】
ところで、不正流通業者が透明のID印刷層5PによるID表示5の存在に気付いたときは、外装シート1からID表示5が表示されたシート部分を切り取ることや、シート表面からID印刷層5Pを削り取ること等が予想される。
【0052】
しかしながら、不正流通業者は、不正流通経路の発覚を免れるために外装シート1のうちID表示の部分を切り取ることはあっても、商品の販売のために必ず必要とされる法定表示3の部分を切り取ったり、削り取ったりすることはない。もしも、法定表示3を削除して商品を販売したときは法規違反になるからである。
【0053】
この点について、ID表示5を表示するID印刷層5Pは、法定表示3を表示する必須印刷層3Pの上に重ねて、積層状態として形成されているので、外装シート1からID表示5が表示されたシート部分を切り取ると、同時に法定表示3も切り取られることになるので、切り取りを止めさせる抑止力となり、不正流通を未然に防止することができる。
【0054】
特に、図6(A)に示すように、ID印刷層5Pは、法定表示3の文字等に含まれる線等を表す要素印刷層3aと空白部3bに対して、基層部5aと積層部5bを混然一体化するように積層しているので、保護膜7の上からID印刷層5Pだけを削り取ることはほとんど不可能であり、ID印刷層5Pを削り取ると、図6(B)に示すように、必ず、要素印刷層3aも削り取られることになり、法定表示3を読み取ることができなくなる。このため、不正流通業者に対して、削り取りを止めさせる抑止力となり、不正流通を未然に防止することができる。
【0055】
ID表示5を表示するID印刷層5Pは、図示実施形態のように、法定表示3を表示する必須印刷層3Pの上に重ねて表示することが好ましいが、任意表示2を表示する任意印刷層2Pの上に重ねて表示しても良い。つまり、任意印刷層2Pと必須印刷層3Pの何れか一方の上だけに設けても良く、両方の上に設けても良い。後者の場合、1つのID表示5を任意印刷層2Pと必須印刷層3Pの両方に跨らせるようにしてID印刷層5Pを設けても良く、或いは、同じID表示5を2個所に表示させるようにそれぞれのID印刷層5Pを任意印刷層2Pの上と必須印刷層3Pの上に設けても良い。更に、ID印刷層5Pは、図1に示すように、外装シート1の空白部1aに設けても良く、その表示個所に関して表示個数は単数でも複数でも良い。
【符号の説明】
【0056】
M 商品容器
1 外装シート
1a 空白部
2 任意表示
2P 任意印刷層
3 法定表示
3P 必須印刷層
3a 要素印刷層
3b 空白部
4 商品情報表示
4P 商品情報印刷層
5 ID表示
5P ID印刷層
5a 基層部
5b 積層部
6 シート素材
6a ラベルシート
6b 粘着剤層
6c 離形シート
7 保護膜
Q 蛍光手段
R 隆起手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品容器の外周面に貼着される外装シートであり、シート素材(6)の表面に、商品の法定表示(3)を不透明インキにより表示する必須印刷層(3P)と、任意表示(2)を不透明インキにより表示する任意印刷層(2P)と、表示を有しない空白部(1a)を形成し、前記法定表示と任意表示と空白部の表面を透明の保護膜(7)により被覆して成る構成において、
前記任意印刷層(2P)と、必須印刷層(3P)と、空白部(1a)のうち、少なくとも1つの上に重ねて、各商品容器を他の商品容器から識別するID表示(5)を表示するID印刷層(5P)を形成しており、
前記ID印刷層(5P)は、透明インキにより形成される一方において、前記保護膜(7)の表面側からID表示を視認可能とする可視手段を設け、
前記可視手段は、ID印刷層(5P)を紫外線の照射を受けたとき蛍光する透明蛍光インキで形成した蛍光手段(Q)により構成すると共に、前記透明蛍光インキを任意印刷層(2P)及び必須印刷層(3P)よりも層厚が肉盛り状に厚くなるように形成して保護膜(7)の表面をID表示(5)の輪郭に沿って隆起させた隆起手段(R)により構成されて成ることを特徴とする商品容器の外装シート。
【請求項2】
前記必須印刷層(3P)の上に重ねてID印刷層(5P)を形成した構成において、
前記必須印刷層(3P)は、法定表示(3)の文字又は記号に含まれる線又は点を表す要素印刷層(3a)を点在させ、隣り合う要素印刷層の間に印刷層を有しない空白部(3b)をシート素材の表面に残しており、
前記ID印刷層(5P)は、必須印刷層(3P)に積層された状態で、前記空白部(3b)の上に位置する基層部(5a)と、前記要素印刷層(3a)の上に位置する積層部(5b)を一体に形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の商品容器の外装シート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明は、上記問題を解決した商品容器の外装シートを提供するものであり、その手段として構成したところは、商品容器の外周面に貼着される外装シートであり、シート素材の表面に、商品の法定表示を不透明インキにより表示する必須印刷層と、任意表示を不透明インキにより表示する任意印刷層と、表示を有しない空白部を形成し、前記法定表示と任意表示と空白部の表面を透明の保護膜により被覆して成る構成において、前記任意印刷層と、必須印刷層と、空白部のうち、少なくとも1つの上に重ねて、各商品容器を他の商品容器から識別するID表示を表示するID印刷層を形成しており、前記ID印刷層は、透明インキにより形成される一方において、前記保護膜の表面側からID表示を視認可能とする可視手段を設け、前記可視手段は、ID印刷層を紫外線の照射を受けたとき蛍光する透明蛍光インキで形成した蛍光手段により構成すると共に、前記透明蛍光インキを任意印刷層及び必須印刷層よりも層厚が肉盛り状に厚くなるように形成して保護膜の表面をID表示の輪郭に沿って隆起させた隆起手段により構成されて成る点にある。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
このように、前記可視手段は、ID印刷層を紫外線の照射を受けたとき蛍光する透明蛍光インキにより層厚が任意印刷層及び必須印刷層よりも肉盛り状に厚くなるように形成することにより、前記隆起手段と蛍光手段の両方の手段により構成されていることを特徴としている
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
前記可視手段は、透明とされたID印刷層5Pの層厚を肉盛り状に厚く形成することにより透明の保護膜7の表面をID表示5の輪郭に沿って隆起させた隆起手段Rと、ID印刷層5Pを紫外線の照射を受けたとき蛍光する透明蛍光インキにより形成した蛍光手段Qの両方の手段により構成されている