IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ いすゞ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-インホイールモータ固定構造 図1
  • 特開-インホイールモータ固定構造 図2
  • 特開-インホイールモータ固定構造 図3
  • 特開-インホイールモータ固定構造 図4
  • 特開-インホイールモータ固定構造 図5
  • 特開-インホイールモータ固定構造 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048210
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】インホイールモータ固定構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 7/00 20060101AFI20230331BHJP
   H02K 7/00 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
B60K7/00
H02K7/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157384
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 充宏
【テーマコード(参考)】
3D235
5H607
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB17
3D235BB18
3D235CC42
3D235GA04
3D235GA13
3D235GA59
3D235GB23
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB14
5H607BB17
5H607DD05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インホイールモータ固定構造において、インホイールモータにおけるステータの直径を小さくし易くする。
【解決手段】インホイールモータ固定構造は、車両の車輪1に固定されており、車輪1と共に回転するロータ21と、ロータ21の内側に設けられており、車両に固定された状態で磁力を発生することにより、ロータ21を回転させるステータ22と、ステータ22におけるロータ21の回転軸上において、ステータ22に固定されているシャフト25と、を有するインホイールモータ2と、シャフト25が挿入されている穴31を有する車両の支持部品3と、を有し、シャフト25の長手方向における少なくとも一部の領域に、シャフト25の周方向に形成されている複数の凸部251が設けられており、穴31の内周面には、複数の凸部251がそれぞれ挿入されている複数の凹部311が形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪に固定されており、前記車輪と共に回転するロータと、
前記ロータの内側に設けられており、前記車両に固定された状態で磁力を発生することにより、前記ロータを回転させるステータと、
前記ステータにおける前記ロータの回転軸上において、前記ステータに固定されているシャフトと、
を有するインホイールモータと、
前記シャフトが挿入されている穴を有する前記車両の支持部品と、
を有し、
前記シャフトの長手方向における少なくとも一部の領域に、前記シャフトの周方向に形成されている複数の凸部が設けられており、
前記穴の内周面には、前記複数の凸部がそれぞれ挿入されている複数の凹部が形成されている、
インホイールモータ固定構造。
【請求項2】
前記複数の凸部のうち少なくとも1つの凸部の形状が他の前記凸部の形状と異なっており、
前記複数の凹部のうち前記少なくとも1つの凸部が挿入されている前記凹部の形状が他の前記凹部の形状と異なっている、
請求項1に記載のインホイールモータ固定構造。
【請求項3】
前記シャフトが前記穴に挿入された状態で、前記シャフトの外側において、前記長手方向における前記支持部品と前記シャフトの前記長手方向における前記支持部品に挿入されている側の端部との間、及び前記長手方向における前記ステータと前記支持部品との間の少なくとも一方に設けられている少なくとも一つ以上の円筒状のスペーサをさらに有する、
請求項1又は2に記載のインホイールモータ固定構造。
【請求項4】
前記シャフトが前記穴に挿入された状態で前記シャフトの前記長手方向における前記支持部品に挿入されている側の端面に設けられており、前記少なくとも一つ以上の前記スペーサの内径よりも大きい外径を有する蓋部をさらに有する、
請求項3に記載のインホイールモータ固定構造。
【請求項5】
前記シャフトは、
前記凸部が設けられている第1領域と、
前記第1領域と接続されており、前記第1領域の外径よりも大きい外径を有する第2領域と、
を有し、
前記少なくとも一つ以上の前記スペーサの内径は、前記第2領域の外径よりも小さい、
請求項3又は4に記載のインホイールモータ固定構造。
【請求項6】
前記第1領域の前記長手方向における長さは、前記長手方向における前記支持部品の長さよりも大きい、
請求項5に記載のインホイールモータ固定構造。
【請求項7】
車両の車輪に固定されており、前記車輪と共に回転するロータと、
前記ロータの内側に設けられており、前記車両に固定された状態で磁力を発生することにより、前記ロータを回転させるステータと、
前記ステータにおける前記ロータの回転軸上において、前記ステータに固定されているシャフトと、
を有し、
前記シャフトの長手方向における少なくとも一部の領域に、前記シャフトの周方向に形成されている複数の凸部が設けられている、
インホイールモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インホイールモータ固定構造及びインホイールモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両にはアウターロータ型のモータであるインホイールモータが設けられている。特許文献1には、ダイレクトドライブモータのステータが、数本のボルトで数本のサスペンションアームに連結されたアップライトに一体的に結合されており、ロータを支持するブラケットの内周部とステータの外周との間に軸受が設置されている構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-31029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の部品に、アウターロータ型のインホイールモータのステータがボルト又はスタッドで締結されている場合、車両の部品とステータとの締結強度を向上させるためには、ボルト又はスタッドを大きくしたり、締結ピッチを広げたりする必要があるため、ステータが大型化する。ステータが大型化すると、ステータとロータとの間のベアリングの幅及び厚みが大きくなることで摩擦力が増加するため、ロータの回転に要するエネルギーが増加してしまうという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、インホイールモータにおけるステータの直径を小さくし易いインホイールモータ固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、車両の車輪に固定されており、前記車輪と共に回転するロータと、前記ロータの内側に設けられており、前記車両に固定された状態で磁力を発生することにより、前記ロータを回転させるステータと、前記ステータにおける前記ロータの回転軸上において、前記ステータに固定されているシャフトと、を有するインホイールモータと、前記シャフトが挿入されている穴を有する前記車両の支持部品と、を有し、前記シャフトの長手方向における少なくとも一部の領域に、前記シャフトの周方向に形成されている複数の凸部が設けられており、前記穴の内周面には、前記複数の凸部がそれぞれ挿入されている複数の凹部が形成されている、インホイールモータ固定構造を提供する。
【0007】
また、前記複数の凸部のうち少なくとも1つの凸部の形状が他の前記凸部の形状と異なっており、前記複数の凹部のうち前記少なくとも1つの凸部が挿入されている前記凹部の形状が他の前記凹部の形状と異なっていてもよい。
【0008】
また、前記シャフトが前記穴に挿入された状態で、前記シャフトの外側において、前記長手方向における前記支持部品と前記シャフトの前記長手方向における前記支持部品に挿入されている側の端部との間、及び前記長手方向における前記ステータと前記支持部品との間の少なくとも一方に設けられている少なくとも一つ以上の円筒状のスペーサをさらに有していてもよい。
【0009】
また、前記シャフトが前記穴に挿入された状態で前記シャフトの前記長手方向における前記支持部品に挿入されている側の端面に設けられており、前記少なくとも一つ以上の前記スペーサの内径よりも大きい外径を有する蓋部をさらに有していてもよい。
【0010】
また、前記シャフトは、前記凸部が設けられている第1領域と、前記第1領域と接続されており、前記第1領域の外径よりも大きい外径を有する第2領域と、を有し、前記少なくとも一つ以上の前記スペーサの内径は、前記第2領域の外径よりも小さくてもよい。また、前記第1領域の前記長手方向における長さは、前記長手方向における前記支持部品の長さよりも大きくてもよい。
【0011】
本発明の第2の態様においては、車両の車輪に固定されており、前記車輪と共に回転するロータと、前記ロータの内側に設けられており、前記車両に固定された状態で磁力を発生することにより、前記ロータを回転させるステータと、前記ステータにおける前記ロータの回転軸上において、前記ステータに固定されているシャフトと、を有し、前記シャフトの長手方向における少なくとも一部の領域に、前記シャフトの周方向に形成されている複数の凸部が設けられている、インホイールモータを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インホイールモータ固定構造において、インホイールモータにおけるステータの直径を小さくし易くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】インホイールモータが車両に設けられている状態を示す。
図2】インホイールモータと、インホイールモータを車両に固定するための固定構造の断面模式図である。
図3】インホイールモータを車両に固定するための固定構造の第1の例を示す。
図4】インホイールモータを車両に固定するための固定構造の第2の例を示す。
図5】インホイールモータを車両に固定するための固定構造の第3の例を示す。
図6】インホイールモータを車両に固定するための固定構造を構成する部材が分離された状態の斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[車両Sの概要]
図1は、インホイールモータ2が車両Sに設けられている状態を示す図である。図1(a)は、車両Sの構成を示す図である。図1(b)は、図1(a)で示す車両Sの左前輪13L及び左後輪14Lを車両Sの車幅方向における内側から見た状態を示す図である。図1(c)は、図1(a)で示す車両Sの右前輪13R及び右後輪14Rを車両Sの車幅方向における内側から見た状態を示す図である。なお、図1(b)と図1(c)は、車両Sの高さ方向において地面Tに対して対称に描かれている。
【0015】
車両Sは、複数の車輪1、複数のインホイールモータ2、複数の支持部品3、及び複数のケーブル4を有する。車輪1は、タイヤ11、及びホイール12を有する。ホイール12は、タイヤ11の内側に設けられている円環状の部品である。
【0016】
車両Sは、複数の車輪1として、複数の前輪13及び複数の後輪14を有する。複数の前輪13は、車両Sの操舵により車両Sの左右方向の向きを変化させる車輪である。複数の前輪13は、車両Sの前後方向における前方側に設けられている車輪である。複数の後輪14は、車両Sの操舵により車両Sの左右方向の向きを変化させない車輪である。複数の後輪14は、車両Sの前後方向における後方側に設けられている車輪である。
【0017】
車両Sは、複数の前輪13として、左前輪13L及び右前輪13Rを有する。左前輪13Lは、車両Sの車幅方向における左側に設けられている前輪である。右前輪13Rは、車両Sの車幅方向における右側に設けられている前輪である。
【0018】
車両Sは、複数の後輪14として、左後輪14L及び右後輪14Rを有する。左後輪14Lは、車両Sの車幅方向における左側に設けられている後輪である。右後輪14Rは、車両Sの車幅方向における右側に設けられている後輪である。
【0019】
インホイールモータ2は、ハイブリッド車又はEV(Electric Vehicle)車の走行用モータとして用いられる。インホイールモータ2は、アウターロータ型のモータである。インホイールモータ2は、車輪1に収容されている。具体的には、インホイールモータ2は、ホイール12に収容されている。
【0020】
インホイールモータ2は、ロータ21、及びステータ22を有する。ロータ21は、車輪1に固定されている。具体的には、ロータ21は、ホイール12に固定されている。ロータ21は、車輪1と共に回転する。
【0021】
ステータ22は、ロータ21の内側に設けられている。ステータ22は、車両Sに固定された状態で磁力を発生することにより、ロータ21を回転させる。ステータ22は、例えばアルミニウムで形成されている。ステータ22は、コイル221とコネクタ222とを有する。
【0022】
支持部品3は、インホイールモータ2を支持する。支持部品3は、例えば、後述するナックル3aを含む。
【0023】
ケーブル4は、インホイールモータ2が直流モータの場合は、バッテリー(不図示)とステータ22との間を接続する。また、ケーブル4は、インホイールモータ2が交流モータの場合は、インバータ(不図示)とステータ22との間を接続する。ケーブル4は、バッテリー又はインバータからステータ22のコイル221に電力を供給する。ケーブル4は、ステータ22のコネクタ222に接続されている。
【0024】
[車両S及びインホイールモータ2の構成]
図2は、インホイールモータ2と、インホイールモータ2を車両Sに固定するための固定構造の断面模式図である。
【0025】
インホイールモータ2は、第1ベアリング23、第2ベアリング24、及びシャフト25を有する。第1ベアリング23は、ステータ22の車両Sの車幅方向における外側において、ロータ21とステータ22との間に設けられている。第2ベアリング24は、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側において、ロータ21とステータ22との間に設けられている。第1ベアリング23及び第2ベアリング24によって、ロータ21がステータ22の外側を回転する際に、ロータ21が振れてしまうのを防いでいる。
【0026】
シャフト25は、ステータ22におけるロータ21の回転軸上において、ステータ22に固定されている。シャフト25は、例えばクロムモリブデン鋼で形成されている。ステータ22がアルミニウムで形成されており、シャフト25がクロムモリブデン鋼で形成されていることで、インホイールモータ2は、強度と軽量化を両立することができる。
【0027】
ロータ21は、磁石211及び締結部212を有する。磁石211は、ステータ22のコイル221に対向して設けられている。締結部212は、ロータ21の車両Sの車幅方向における外側の面に設けられている。締結部212は、ロータ21を車輪1のホイール12に固定するための部位である。締結部212は、例えばスタッドである。
【0028】
ステータ22は、コイル221及びコネクタ222を有する。コイル221は、磁石211に対向して設けられている。コネクタ222は、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側の面に設けられている。コネクタ222には、ケーブル4が接続されている。
【0029】
ところで、複数のインホイールモータ2は、前輪13に収容されているインホイールモータ2のステータ22に設けられているコネクタ222のステータ22の周方向における位置と、後輪14に収容されているインホイールモータ2のステータ22に設けられているコネクタ222のステータ22の周方向における位置とが異なる状態で、複数の車輪1に収容されている。
【0030】
具体的には、図1に示すように、左前輪13Lにおいては、コネクタ222は、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側面上の車両Sの前後方向における後方に位置する。右前輪13Rにおいては、コネクタ222は、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側面上の車両Sの前後方向における前方に位置する。左後輪14Lにおいては、コネクタ222は、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側面上の車両Sの高さ方向における下方に位置する。右後輪14Rにおいては、コネクタ222は、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側面上の車両Sの高さ方向における下方に位置する。
【0031】
図3は、インホイールモータ2を車両Sに固定するための固定構造の第1の例を示す図である。なお、図3に示す車輪1は、図1に示す左後輪14Lに相当する。図4は、インホイールモータ2を車両Sに固定するための固定構造の第2の例を示す図である。なお、図4に示す車輪1は、図1に示す左前輪13Lに相当する。図5は、インホイールモータ2を車両Sに固定するための固定構造の第3の例を示す図である。なお、図5に示す車輪1は、図1に示す右前輪13Rに相当する。
【0032】
図1及び図3に示すように、左後輪14Lにおいては、コネクタ222が、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側面上の下方に位置する。コネクタ222に接続されているケーブル4は、支持部品3の下面に設けられている窪みの内側に位置している。右後輪14Rにおいても、左後輪14Lと同様に、コネクタ222が、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側面上の下方に位置する。コネクタ222に接続されているケーブル4は、支持部品3の下面に設けられている窪みの内側に位置している。
【0033】
一方、図1及び図4に示すように、左前輪13Lにおいては、コネクタ222が、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側面上の後方に位置する。また、図1及び図5に示すように、右前輪13Rにおいては、コネクタ222が、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側面上の前方に位置する。したがって、左前輪13Lにおいては、コネクタ222に接続されているケーブル4は、支持部品3の後方に位置する。また、右前輪13Rにおいては、コネクタ222に接続されているケーブル4は、支持部品3の前方に位置する。その結果、左前輪13L及び右前輪13Rにおいては、操舵により左前輪13L及び右前輪13Rが左右に動いたとしても、ケーブル4が支持部品3と干渉しづらくなる。
【0034】
図3図5に示すように、コネクタ222には複数のケーブル4(図3図5においては3本)が接続されている。図1図4、及び図5に示すように、複数の前輪13に収容されているインホイールモータ2には、複数のケーブル4が車両Sの高さ方向に並ぶようにコネクタ222が設けられている。また、図1、及び図3に示すように、複数の後輪14に収容されているインホイールモータ2には、複数のケーブル4が車両Sの前後方向(すなわち水平方向)に並ぶようにコネクタ222が設けられている。
【0035】
車両Sにおいては、このように複数の前輪13及び複数の後輪14に複数のインホイールモータ2が収容されていることで、左前輪13L及び右前輪13Rにおいては、操舵により左前輪13L及び右前輪13Rが左右に動いたとしても、3本のケーブル4のうちの特定の1本のケーブル4に操舵により引っ張りがかからず3本のケーブル4全体で変形を分散していなし易くなるので、ケーブル4の耐久性が向上する。一方、後輪14においては、複数のケーブル4が支持部品3の下方において車両Sの前後方向に並んでいるので、支持部品3の上方に、各種の部材を搭載するための空間を確保することができる。
【0036】
図4及び図5に示すように、支持部品3は、ナックル3a、サスペンションアッパーアーム3b、サスペンションロアーアーム3c、及びショックアブソーバー3dを有する。ナックル3aは、車輪1を支持する部品である。ナックル3aは、車両Sの高さ方向において延在している。ナックル3aには、後述する穴31が形成されている。
【0037】
サスペンションアッパーアーム3bは、サスペンションを構成する上方のアームである。サスペンションアッパーアーム3bの一端は、ナックル3aの上端に接続されている。サスペンションアッパーアーム3bは、ナックル3aの上端と車体(不図示)との間で延在している。
【0038】
サスペンションロアーアーム3cは、サスペンションを構成する下方のアームである。サスペンションロアーアーム3cは、サスペンションアッパーアーム3bの下方に設けられている。サスペンションロアーアーム3cの一端は、ナックル3aの下端に接続されている。サスペンションロアーアーム3cは、ナックル3aの下端と車体(不図示)との間で延在している。
【0039】
ショックアブソーバー3dは、車両Sの振動を吸収する部品である。ショックアブソーバー3dは、サスペンションアッパーアーム3bとサスペンションロアーアーム3cとの間に設けられている。ショックアブソーバー3dの下端は、サスペンションロアーアーム3cに接続されている。ショックアブソーバー3dは、サスペンションロアーアーム3cと車体(不図示)との間において延伸している。
【0040】
図4に示すように、左前輪13Lにおいては、ケーブル4がサスペンションアッパーアーム3bとショックアブソーバー3dとの間を通らずに、車両Sの後方に向けて延びている。そして、左前輪13Lが正面を向いている状態で、ケーブル4は、サスペンションアッパーアーム3b及びショックアブソーバー3dよりも後方の空間において後方に向かって曲げられた状態になっている。したがって、左前輪13Lが左右のいずれの向きに変化したとしても、ケーブル4に過度なストレスがかからない。
【0041】
図5に示すように、右前輪13Rにおいては、ケーブル4がサスペンションアッパーアーム3bとショックアブソーバー3dとの間を通って、車両Sの後方に向けて延びている。そして、右前輪13Rが正面を向いている状態で、ケーブル4は、サスペンションアッパーアーム3bとショックアブソーバー3dとの間の空間において曲げられた状態になっている。したがって、右前輪13Rが左右のいずれの向きに変化したとしても、ケーブル4に過度なストレスがかからない。
【0042】
[冷却水の流路]
ステータ22のコイル221は高温になるため冷却することが望ましい。ステータ22は、一例として、熱搬送媒体(例えば冷却水)を流すための通路を有する。ステータ22は、通路の入口である流入部223、及び通路の出口である流出部224を有する。ステータ22の周方向における流入部223と流出部224との間のうち、流入部223と流出部224との距離が短い方の間は壁面で隔てられている。流入部223から流入した熱搬送媒体は、ステータ22の周方向における流入部223と流出部224との距離が長い方の間(ステータ22の外周のほとんど)を通路として流れることでコイル221と熱交換した後に、流出部224から流出する。流入部223は、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側面に設けられている。
【0043】
図1に示すように、流出部224は、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側面にステータ22の周方向において流入部223の近傍に設けられている。複数のインホイールモータ2は、車両Sの高さ方向において流入部223及び流出部224の位置がステータ22の中心よりも上方に位置するように設けられている。車両Sにおいては、このように流入部223及び流出部224が配置されるように複数の車輪1に複数のインホイールモータ2が収容されていることで、コイル221と熱交換することで加熱され、軽くなった熱搬送媒体が上方に向かって移動することを利用して圧力損失を補うことができるため、熱搬送媒体を流すポンプの圧力を小さくすることができる。
【0044】
また、複数のインホイールモータ2は、車両Sの高さ方向において流出部224の位置が流入部223の位置よりも上方に位置するように複数の車輪1に収容されている。車両Sにおいては、このように流入部223及び流出部224が配置されるように複数の車輪1に複数のインホイールモータ2が収容されていることで、熱搬送媒体が上方に向かって移動することを利用してさらに圧力損失を補うことができるため、熱搬送媒体を流すポンプの圧力をさらに小さくすることができる。
【0045】
具体的には、図1に示すように、左前輪13Lにおいては、流入部223及び流出部224は、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側面上の前方かつ上方に位置する。右前輪13Rにおいては、流入部223及び流出部224は、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側面上の後方かつ上方に位置する。左後輪14Lにおいては、流入部223及び流出部224は、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側面上の後方かつ上方に位置する。右後輪14Rにおいては、流入部223及び流出部224は、ステータ22の車両Sの車幅方向における内側面上の前方かつ上方に位置する。
【0046】
このように、複数の前輪13に収容されている複数のインホイールモータ2は、複数の前輪13の内側からインホイールモータ2を見た状態におけるコネクタ222と、流入部223と、流出部224との位置関係が、複数の前輪13において同一になるように設けられている。車両Sにおいては、このように複数の前輪13に同一の形状のインホイールモータ2を用いることができる。
【0047】
同様に、複数の後輪14に収容されている複数のインホイールモータ2は、複数の後輪14の内側からインホイールモータ2を見た状態におけるコネクタ222と、流入部223と、流出部224との位置関係が、複数の後輪14において同一になるように設けられている。車両Sにおいては、このように複数の後輪14に同一の形状のインホイールモータ2を用いることができる。
【0048】
なお、流入部223及び流出部224は、通路の両端に設けられた複数の開口部であり、複数の開口部のどちらを流入部223としても流出部224としてもよい。図1に示すように、全ての車輪1において、コネクタ222と複数の開口部との位置関係が同一である。したがって、車両Sにおいては、全ての車輪1に同一の形状のインホイールモータ2を収容することができるので、車両Sの生産効率が向上する。
【0049】
[インホイールモータ2を車両Sに固定するための固定構造]
図6は、インホイールモータ2を車両Sに固定するための固定構造を構成する部材が分離された状態の斜視断面図である。
【0050】
シャフト25は、支持部品3とスプライン嵌合している。シャフト25の長手方向における少なくとも一部の領域には、複数の凸部251が設けられている。複数の凸部251は、シャフト25の周方向に形成されている。凸部251は、シャフト25の長手方向において延在している。
【0051】
シャフト25は、第1領域252、第2領域253、及び複数の穴254を有する。第1領域252は、複数の凸部251を有する領域である。第2領域253は、第1領域252と接続されている。第2領域253は、第1領域252のシャフト25の長手方向におけるステータ22側の端部と接続されている。第2領域253は、第1領域252の外径よりも大きい外径を有する領域である。穴254は、シャフト25が後述する穴31に挿入された状態でシャフト25の長手方向における支持部品3に挿入されている側の端面に設けられている。穴254は、後述する結合部材8が挿入されている。
【0052】
支持部品3は、穴31を有する。穴31には、シャフト25が挿入されている。穴31の内周面には、複数の凹部311が形成されている。複数の凹部311には、複数の凸部251がそれぞれ挿入されている。凹部311は、シャフト25の長手方向において延在している。
【0053】
インホイールモータ2を車両Sに固定するための固定構造においては、前述したように、シャフト25の長手方向における少なくとも一部の領域に、シャフト25の周方向に形成されている複数の凸部251が設けられており、穴31の内周面には、複数の凸部251がそれぞれ挿入されている複数の凹部311が形成されている。したがって、ステータ22に、支持部品3と結合するための複数のスタッドが設けられている構造に比べて、ステータ22と支持部品3との結合強度を維持しつつ、ステータ22の直径を小さくすることができる。
【0054】
第1領域252のシャフト25の長手方向における長さは、シャフト25の長手方向における支持部品3の長さよりも大きい。第1領域252のシャフト25の長手方向における長さがシャフト25の長手方向における支持部品3の長さよりも大きいことで、シャフト25の複数の凸部251が支持部品3の穴31の複数の凹部311に挿入された状態における支持部品3の位置を、車種によって異なる位置にすることができる。したがって、それぞれトレッド幅が異なり、サスペンションの型式が異なる複数の種類の車両Sにおいて、同一の形状のインホイールモータ2を使用することができるので、生産効率及びコストダウンを実現することができる。
【0055】
一例として、複数の凸部251のうち少なくとも1つの凸部251の形状が他の凸部251の形状と異なっており、複数の凹部311のうち少なくとも1つの凸部251が挿入されている凹部311の形状が他の凹部311の形状と異なっている。シャフト25及び支持部品3の穴31にこのように凸部251及び凹部311が形成されていることで、支持部品3にステータ22を固定する際に、支持部品3に対してステータ22の周方向における位置決めをすることができる。このような構造は、図1に示したように、車輪1ごとにインホイールモータ2を異なる向きにした状態でインホイールモータ2を車輪1に固定する際に好適である。
【0056】
インホイールモータ2を車両Sに固定するための固定構造においては、スペーサ5、蓋部6、プレート7、及び結合部材8が設けられている。スペーサ5は、円筒状の部品であり、シャフト25における支持部品3が設けられている領域以外の領域においてシャフト25に結合している。シャフト25には、少なくとも一つ以上のスペーサ5が設けられている。本実施形態では、スペーサ5として、第1スペーサ51、及び第2スペーサ52がシャフト25における支持部品3が設けられている領域の両側に設けられている。
【0057】
第1スペーサ51は、シャフト25が穴31に挿入された状態で、シャフト25の外側において、シャフト25の長手方向における支持部品3とシャフト25の長手方向における支持部品3に挿入されている側の端部との間に設けられている。第2スペーサ52は、シャフト25の長手方向におけるステータ22と支持部品3との間に設けられている。車両Sがこのように少なくとも一つ以上のスペーサ5を有することで、シャフト25の長手方向において、支持部品3に対してステータ22の位置を調節することができる。その結果、トレッド幅が異なる複数の種類の車両Sにおいてインホイールモータ2を共用することができる。
【0058】
少なくとも一つ以上のスペーサ5の内径は、第2領域253の外径よりも小さい。本実施形態においては、第1スペーサ51及び第2スペーサ52の内径は、第2領域253の外径よりも小さい。スペーサ5の内径が、第2領域253の外径よりも小さいことで、スペーサ5のシャフト25の長手方向における第2領域253側への移動が規制される。
【0059】
蓋部6は、シャフト25が穴31に挿入された状態でシャフト25の長手方向における支持部品3に挿入されている側の端面に設けられている。蓋部6は、複数の穴61を有する。穴61は、蓋部6がシャフト25に固定された状態でシャフト25の長手方向において蓋部6を貫通している。穴61は、後述する結合部材8が挿入されている。蓋部6は、少なくとも一つ以上のスペーサ5の内径よりも大きい外径を有する。本実施形態においては、蓋部6は、第1スペーサ51及び第2スペーサ52の内径よりも大きい外径を有する。
【0060】
シャフト25に蓋部6が設けられていることで、シャフト25の外周面と支持部品3の穴31の内周面との間に防塵等が侵入するのを防ぐことができる。また、蓋部6の外径がスペーサ5の内径よりも大きいことで、スペーサ5のシャフト25の長手方向における蓋部6側への移動が規制される。
【0061】
プレート7は、板状の部品である。プレート7は、複数の穴71を有する。穴71は、後述する結合部材8が挿入されている。結合部材8は、蓋部6をシャフト25に結合するための部品である。結合部材8は、例えばボルトを含む。蓋部6は、シャフト25が穴31に挿入された状態でシャフト25の長手方向における支持部品3に挿入されている側の端面に接した状態で、蓋部6の表面にプレート7を載置して、結合部材8をプレート7の穴71、蓋部6の穴61、及びシャフト25の穴254に挿入して穴254に締め付けることで、シャフト25に結合されている。
【0062】
[変形例]
上記実施形態においては、スペーサ5として第1スペーサ51及び第2スペーサ52が設けられている例を示したが、これに限定されない。車両Sには、例えば、スペーサ5として、第1スペーサ51又は第2スペーサ52の一方のみが設けられていてもよい。または、支持部品3がシャフト25の長さと同等の厚みを有することで、車両Sに第1スペーサ51及び第2スペーサ52が共に設けられていなくてもよい。
【0063】
[本実施形態に係るインホイールモータ2による効果]
本実施形態に係るインホイールモータ2においては、支持部品3とスプライン嵌合するシャフト25がステータ22と一体に形成されている。そして、シャフト25の長手方向における少なくとも一部の領域に、シャフト25の周方向に形成されている複数の凸部251が設けられており、穴31の内周面には、複数の凸部251がそれぞれ挿入されている複数の凹部311が形成されている。
【0064】
インホイールモータ2がこのような構造によって支持部品3に固定されることで、ステータ22と支持部品3との結合強度を確保しつつ、ステータ22を小型化することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る車両Sにおいては、前輪13に収容されているインホイールモータ2のステータ22に設けられているコネクタ222のステータ22の周方向における位置と、後輪14に収容されているインホイールモータ2のステータ22に設けられているコネクタ222のステータ22の周方向における位置とが異なる状態で、複数のインホイールモータ2が複数の車輪1に収容されている。
【0066】
したがって、車両Sにおいては、前輪13と後輪14とで、支持部品3に対するインホイールモータ2のステータ22に設けられているコネクタ222のステータ22の周方向における位置が異なる。その結果、左前輪13L及び右前輪13Rにおいては、操舵により左前輪13L及び右前輪13Rが左右に動いたとしても、ケーブル4が支持部品3と干渉しづらくすることができる。
【0067】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0068】
S・・・車両
1・・・車輪
11・・・タイヤ
12・・・ホイール
13・・・前輪
13L・・・左前輪
13R・・・右前輪
14・・・後輪
14L・・・左後輪
14R・・・右後輪
2・・・インホイールモータ
21・・・ロータ
211・・・磁石
212・・・締結部
22・・・ステータ
221・・・コイル
222・・・コネクタ
223・・・流入部
224・・・流出部
23・・・第1ベアリング
24・・・第2ベアリング
25・・・シャフト
251・・・凸部
252・・・第1領域
253・・・第2領域
254・・・穴
3・・・支持部品
31・・・穴
311・・・凹部
3a・・・ナックル
3b・・・サスペンションアッパーアーム
3c・・・サスペンションロアーアーム
3d・・・ショックアブソーバー
4・・・ケーブル
5・・・スペーサ
51・・・第1スペーサ
52・・・第2スペーサ
6・・・蓋部
61・・・穴
7・・・プレート
71・・・穴
8・・・結合部材
T・・・地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪に固定されており、前記車輪と共に回転するロータと、
前記ロータの内側に設けられており、前記車両に固定された状態で磁力を発生することにより、前記ロータを回転させるステータと、
前記ステータにおける前記ロータの回転軸上において、前記ステータに固定されているシャフトと、
を有するインホイールモータと、
前記シャフトが挿入されている穴を有する前記車両の支持部品と、
を有し、
前記シャフトの長手方向における少なくとも一部の領域に、前記シャフトの周方向に形成されている複数の凸部が設けられており、
前記穴の内周面には、前記複数の凸部がそれぞれ挿入されている複数の凹部が形成されており、
前記複数の凸部のうち少なくとも1つの凸部の形状が他の前記凸部の形状と異なっており、
前記複数の凹部のうち前記少なくとも1つの凸部が挿入されている前記凹部の形状が他の前記凹部の形状と異なっている、
インホイールモータ固定構造。
【請求項2】
車両の車輪に固定されており、前記車輪と共に回転するロータと、
前記ロータの内側に設けられており、前記車両に固定された状態で磁力を発生することにより、前記ロータを回転させるステータと、
前記ステータにおける前記ロータの回転軸上において、前記ステータに固定されているシャフトと、
を有するインホイールモータと、
前記シャフトが挿入されている穴を有する前記車両の支持部品と、
を有し、
前記シャフトの長手方向における少なくとも一部の領域に、前記シャフトの周方向に形成されている複数の凸部が設けられており、
前記穴の内周面には、前記複数の凸部がそれぞれ挿入されている複数の凹部が形成されており、
前記シャフトが前記穴に挿入された状態で、前記シャフトの外側において、前記長手方向における前記支持部品と前記シャフトの前記長手方向における前記支持部品に挿入されている側の端部との間、及び前記長手方向における前記ステータと前記支持部品との間の少なくとも一方に設けられている少なくとも一つ以上の円筒状のスペーサをさらに有する、
インホイールモータ固定構造。
【請求項3】
前記シャフトが前記穴に挿入された状態で前記シャフトの前記長手方向における前記支持部品に挿入されている側の端面に設けられており、前記少なくとも一つ以上の前記スペーサの内径よりも大きい外径を有する蓋部をさらに有する、
請求項に記載のインホイールモータ固定構造。
【請求項4】
前記シャフトは、
前記凸部が設けられている第1領域と、
前記第1領域と接続されており、前記第1領域の外径よりも大きい外径を有する第2領域と、
を有し、
前記少なくとも一つ以上の前記スペーサの内径は、前記第2領域の外径よりも小さい、
請求項又はに記載のインホイールモータ固定構造。
【請求項5】
前記第1領域の前記長手方向における長さは、前記長手方向における前記支持部品の長さよりも大きい、
請求項に記載のインホイールモータ固定構造。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、インホイールモータ固定構造に関する。