(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048220
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】人工石の製造方法および施工方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/08 20060101AFI20230331BHJP
E02D 15/08 20060101ALI20230331BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20230331BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20230331BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20230331BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20230331BHJP
C04B 18/30 20060101ALI20230331BHJP
C04B 40/02 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
C04B28/08
E02D15/08
E02D3/12
C04B28/02
C04B18/14 F
C04B18/08 Z
C04B18/30
C04B40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157400
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕一
【テーマコード(参考)】
2D040
2D045
4G112
【Fターム(参考)】
2D040BB05
2D040CA04
2D040CA09
2D045BA02
2D045CA11
4G112PA27
4G112PA28
4G112PA35
4G112RA00
(57)【要約】
【課題】従来の工程を削減して作業性を向上させ、打設・養生・脱型・破砕の各工程および仮置き用ヤードが不要な人工石の製造方法および施工方法を提供する。
【解決手段】この人工石の製造方法は、泥土と製鋼スラグと結合材とを所定の配合割合で混合する混合工程S03と、前記混合による混合材料が所定のスランプ以下であることを確認した後に、固結前の混合材料を一体的にまたは分割して人工石の水中使用位置に投入する投入工程S10と、水中使用位置に投入された混合材料が所定の強度を発現するまで混合材料を水中で養生する水中養生工程S11と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泥土と製鋼スラグと結合材とを混合して人工石を製造する方法であって、
前記泥土と前記製鋼スラグと前記結合材とを所定の配合割合で混合する混合工程と、
前記混合による混合材料が所定のスランプ以下であることを確認した後に、固結前の前記混合材料を一体的にまたは分割して前記人工石の水中使用位置に投入する投入工程と、
前記水中使用位置に投入された前記混合材料が所定の強度を発現するまで前記混合材料を水中で養生する水中養生工程と、を含む人工石の製造方法。
【請求項2】
前記スランプは0~7cmの範囲内の所定値である請求項1に記載の人工石の製造方法。
【請求項3】
前記混合材料のスランプを前記混合時および/または前記投入前に測定する請求項1または2に記載の人工石の製造方法。
【請求項4】
前記混合材料について混合後の経過時間とスランプとの関係を予め求めておく請求項1乃至3のいずれかに記載の人工石の製造方法。
【請求項5】
前記結合材は、セメント、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末のいずれか1つもしくは2つ、または全部である請求項1乃至4のいずれかに記載の人工石の製造方法。
【請求項6】
泥土と製鋼スラグと結合材との混合による人工石を水中使用位置に施工する方法であって、
請求項1乃至5のいずれかに記載の人工石の製造方法における前記混合工程と、前記投入工程と、前記水中養生工程と、を含む人工石の施工方法。
【請求項7】
前記投入工程を、グラブ、バックホウのバケットまたはトレミー管を用いて行う請求項6に記載の人工石の施工方法。
【請求項8】
前記混合工程における配合材料および/または配合割合を調整することで、前記混合材料が前記スランプまで低下する時間を調整する請求項6または7に記載の人工石の施工方法。
【請求項9】
前記混合材料が前記スランプまで低下する時間を調整することで、前記混合後から前記投入前までの間に前記混合材料の運搬時間を確保する請求項8に記載の人工石の施工方法。
【請求項10】
前記混合材料が前記スランプまで低下する時間を調整することで、前記混合後から前記投入までの時間を短縮する請求項8に記載の人工石の施工方法。
【請求項11】
前記混合材料について水中投入実験を行い、水中における前記混合材料の塊の形状維持の状況および前記形状維持に必要な養生時間を予め確認しておく請求項6乃至10のいずれかに記載の人工石の施工方法。
【請求項12】
前記投入後に固結前の前記混合材料の形状を変形させることで前記人工石の形状を調整する請求項6乃至11のいずれかに記載の人工石の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥土と製鋼スラグと結合材とによる人工石の製造方法および施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浚渫土の有効活用の観点から、浚渫土と固化材を混合して人工石(浚渫土固化体)を作製する技術が開発されている(たとえば、特許文献1~6,非特許文献1,2参照)。非特許文献3は、浚渫土砂の有効利用技術であるカルシア改質土に固化材を添加したカルシア人工石をかごマットに充填してブロック状としたかごマット人工石の開発について開示する。
【0003】
従来の人工石の一般的な製造工程について
図4により説明する。事前に浚渫土や土砂からなる泥土とセメント等の結合材との配合試験を行い(S51)、配合を決定する(S52)。この配合で泥土とセメント等とを混合し(S53)、この混合材料を型枠内に打設し(S54)、所定の養生期間(日レベル)養生してから(S55)、脱型し(S56)、所定のサイズに破砕する(S57)。所定のサイズの人工石を所定の養生期間(日レベル)養生してから(S58)、人工石の使用場所まで運搬し(S59)、水中に投入する(S60)。これにより、たとえば、漁礁、藻礁、潜堤、水底マウンド等の水中構造物を構築する。
【0004】
また、
図4において目標強度確認を行う。材料混合工程S53において試料を採取し、圧縮強度試験のための供試体を作製し(S61)、たとえば28日間養生してから(S62)、圧縮強度試験を行う(S63)。圧縮強度試験結果が目標強度を超過していれば(工程S64のYES)、運搬工程S59を実行し、目標強度未満であれば(工程S64のNO)、再配合による混合工程(S53)に戻るかまたは養生工程(S62)に戻り養生期間を延長して再度圧縮強度試験を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-93750号公報
【特許文献2】特開2012-148948号公報
【特許文献3】特開2012-12287号公報
【特許文献4】特開2017-122203号公報
【特許文献5】特開2018-172245号公報
【特許文献6】特開2018-126673号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】出路康夫・谷敷多穂・本田秀樹・高橋克則「浚渫土を用いた人工石材の製造技術」土木学会第66回年次学術講演会 2011. http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2011/66-05/66-05-0594.pdf
【非特許文献2】辻匠・田中裕一・中川雅夫・野中宗一郎・長尾喬平・赤司有三・木曽英滋・ 田崎智晶「浚渫土人工石の材料特性と製造技術」土木学会論文集B3(海洋開発),71巻,2号,pp. I_1173-I_1178,2015.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejoe/71/2/71_I_1173/_article/-char/ja/
【非特許文献3】赤司有三・浅田英幸・府川裕史・滝川光雄・鳥嶋勇一・川下裕幸・勝見武「浚渫土砂を活用したかご マット人工石の開発」土木学会論文集B3(海洋開発),76 巻,2号,pp.I_612-I_617,2020.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejoe/76/2/76_I_612/_article/-char/ja/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の人工石の製造方法は、
図4のように、材料混合、型枠への打設、養生、脱型、破砕等の複数の工程が必要であるため、作業が煩雑であり、製造コストの上昇につながっている。
【0008】
また、人工石は通常、28日間養生後に強度試験を実施し、所定の強度発現を確認した後に水中投入等の施工が行われている。このため、大量の人工石を製造する場合、大面積の製造ヤードや仮置き用ヤードが必要となり、製造期間中ヤードを占有してしまう。また、打設後の養生初期に強度を発現させ、泥土含有固化体を早期に破砕して仮置き用ヤードに積上げて養生する方法もあるが(特許文献4)、ヤードの占有期間短縮の効果は限定的である。また、型枠内への打設を省略した方法もあるが(特許文献6)、仮置き用ヤードや養生期間が必要となる点は同じである。
【0009】
人工石を高波浪条件下で使用するためには、たとえば、10トン程度やそれ以上の大型の人工石を作製する必要があり、非特許文献3のように、かごマット人工石が提案されているが、必ずしも効率的な方法ではない。なお、従来の製造方法では混合材料の型枠への打設時の施工性を考慮して、スランプ試験(JIS A 1101)のスランプ5~10cmを目標とすることが多い。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、従来の工程を削減して作業性を向上させ、打設・養生・脱型・破砕の各工程および仮置き用ヤードが不要な人工石の製造方法および施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための人工石の製造方法は、泥土と製鋼スラグと結合材とを混合して人工石を製造する方法であって、
前記泥土と前記製鋼スラグと前記結合材とを所定の配合割合で混合する混合工程と、前記混合による混合材料が所定のスランプ以下であることを確認した後に、固結前の前記混合材料を一体的にまたは分割して前記人工石の水中使用位置に投入する投入工程と、前記水中使用位置に投入された前記混合材料が所定の強度を発現するまで前記混合材料を水中で養生する水中養生工程と、を含む。
【0012】
この人工石の製造方法によれば、所定のスランプの上限値以下まで低下した固結前の混合材料を一体的にまたは分割して人工石の水中使用位置へと直接に投入することで、混合後の型枠への打設・養生・脱型・破砕の各工程が不要となるため、従来の複数の工程を削減して作業性を向上させることができる。また、混合直後に当該人工石を用いる施工場所に輸送して投入することで、従来必要であった打設・養生・脱型・破砕の各工程および仮置き用ヤードが不要となり、人工石の製造コストを削減できる。
【0013】
上記人工石の製造方法において前記スランプは0~7cmの範囲内の所定値であることが好ましい。これにより、混合材料の流動性を低めにし、投入後の混合材料の形状を維持するとともに、水中投入時の濁り発生を抑制できる。
【0014】
前記混合材料のスランプを前記混合時および/または前記投入前に測定することが好ましい。
【0015】
前記混合材料について混合後の経過時間とスランプとの関係を予め求めておくことが好ましい。これにより、混合材料の混合から所定期間経過後のスランプを推定でき、スランプ測定を省略できる。
【0016】
前記結合材は、セメント、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末のいずれか1つもしくは2つ、または全部であることが好ましい。
【0017】
上記目的を達成するための人工石の施工方法は、泥土と製鋼スラグと結合材との混合による人工石を水中使用位置に施工する方法であって、
上述の人工石の製造方法における前記混合工程と、前記投入工程と、前記水中工程と、を含む。
【0018】
この人工石の施工方法によれば、所定のスランプの上限値以下まで低下した固結前の混合材料を一体的にまたは分割して人工石の水中使用位置へと直接に投入することで、混合後の型枠への打設・養生・脱型・破砕の各工程が不要となるため、従来の複数の工程を削減して作業性を向上させることができる。また、混合直後に当該人工石を用いる施工場所に輸送して投入することで、従来必要であった打設・養生・脱型・破砕の各工程および仮置き用ヤードが不要となり、人工石の施工コストを削減できる。
【0019】
上記人工石の施工方法において前記投入工程を、グラブ、バックホウのバケットまたはトレミー管を用いて行うことができる。
【0020】
前記混合工程における配合材料および/または配合割合を調整することで、前記混合材料が前記スランプまで低下する時間を調整することができる。
【0021】
前記混合材料が前記スランプまで低下する時間を調整することで、前記混合後から前記投入前までの間に前記混合材料の運搬時間を確保することができる。たとえば、陸上または水上で混合した混合材料を土運船等に積み込み投入位置まで運搬する場合、かかる運搬時間に基づいて混合材料が所定のスランプの上限値である7cmまで低下する時間を調整することで、混合材料の投入を効率的に行うことができる。
【0022】
また、前記混合材料が前記スランプまで低下する時間を調整することで、前記混合後から前記投入までの時間を短縮することができる。たとえば、投入位置近くの台船上で前記泥土と前記製鋼スラグと前記結合材との混合を行う場合、混合材料の運搬が不要で、混合完了後の混合材料を比較的短時間の内に水中投入できるため、投入までの時間をかなり短縮でき、投入効率をさらに向上できる。
【0023】
前記混合材料について水中投入実験を行い、水中における前記混合材料の塊の形状維持の状況および前記形状維持に必要な養生時間を予め確認しておくことが好ましい。
【0024】
前記投入後に固結前の前記混合材料の形状を、押しや均し等により変形させることで前記人工石の形状の調整や出来形の管理をすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、従来の工程を削減して作業性を向上させ、打設・養生・脱型・破砕の各工程および仮置き用ヤードが不要な人工石の製造方法および施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態による人工石の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図2】本実施形態による人工石の製造方法の別の例を説明するためのフローチャートである。
【
図3】本実験例の配合例A,Bによる各混合材料について混合後の経過時間と測定したスランプとの関係を示す図である。
【
図4】従来の人工石の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】本実験例の配合例Cによる混合材料を混合直後に水中投入した400g程度、直径70~80mm相当の塊の様子を示す図(a)、同じく配合例Cによる混合材料の混合直後に水中投入した塊の様子(左側)および混合後3時間経過後に水中投入した塊の様子(右側)を示す図(b)、および、配合例Dによる混合材料の混合直後に水中投入した塊の様子(左側)および混合後3時間経過後に水中投入した塊の様子(右側)を示す図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
図1は本実施形態による人工石の製造ステップS01~S15を説明するためのフローチャートである。
【0028】
本実施形態による人工石の製造方法について
図1を参照して説明する。まず、事前に浚渫土(粘性土・砂質土)や土砂からなる泥土と製鋼スラグとセメント等の結合材との配合試験を行うことで、混合後の経過時間とスランプ、および投入・養生後の発現強度を確認し(S01)、配合材料と配合割合を決定する(S02)。なお、含水比が大きく異なる泥土は、異なる配合材料として別途配合試験を行う。
【0029】
次に、決定した配合材料と配合割合で浚渫土や土砂からなる泥土と製鋼スラグとセメント等の結合材とを混合する(S03)。かかる混合は、ミキサ、バックホウ、落下混合等により行うことができる。
【0030】
なお、結合材としては、セメント、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末のいずれか1つ、2つ、または全部を用いることができる。高炉スラグ微粉末としては、高炉水砕スラグを粉砕したものまたはこれに石膏を添加したもの等を用いることができる。
【0031】
また、本明細書では、泥土と製鋼スラグと結合材とを混合した固結前の材料を混合材料といい、固結後の所定の強度を発現した材料を人工石という。
【0032】
次に、混合ステップS03で泥土と製鋼スラグと結合材とを混合した混合材料について後工程(投入ステップS07)での水中投入時のスランプを推定する(S04)。混合材料のスランプは、混合後、時間の経過とともに低下するので、混合後から投入前までの混合材料の積み込みや運搬に要する時間に基づいてスランプを推定する。なお、かかるスランプ推定のためにたとえば後述の
図3のような混合後の経過時間とスランプとの関係を予め求めておくことが好ましい。
【0033】
また、固結前の混合材料のスランプが所定値内、たとえば5cm以下となったとき、水中投入を行うが、このとき、混合材料は固結前であることが必要である。
【0034】
スランプ推定S04の結果、積み込みや運搬に要する時間を考慮してもスランプが5cm以下とならない場合(ステップS04のNO)、混合材料を時間レベルの養生期間養生し(S05)、一定時間養生した後に再度測定を行う。
【0035】
スランプ推定S04の結果、積み込みや運搬に要する時間や養生ステップS05の養生時間を考慮してスランプが5cm以下となる場合(ステップS04のYES)、混合材料を水中投入位置まで土運船等で運搬する(S06)。
【0036】
混合材料を載せた土運船等が水中投入位置に到着すると、混合材料のスランプを測定する(S07)。その測定結果が5cm以下とならない場合(ステップS08のNO)、土運船等で混合材料を時間レベルの養生期間養生する(S09)。
【0037】
混合材料のスランプの測定結果が5cm以下となった場合(養生ステップS09の養生時間を考慮した場合も含む)(ステップS08のYES)は、スランプ5cm以下であることが確認されたので、混合材料を分割して所定のサイズにして人工石の水中使用位置に投入する(S10)。かかる分割投入は、グラブやバックホウのバケットを用いて行うことができる。このようにして、固結前に混合材料を運搬し、型枠を使用せずに任意のサイズに分割して水中に投入することができる。また、混合材料を底開式バージ船によりまとめて水中に投入するようにしても、比較的大きな塊(たとえば10トンまたはそれ以上)に分割して投入してもよい。
【0038】
なお、混合材料の固結前とは、固化が進みグラブやバックホウのバケット等による投入ができなくなる前の段階であり、この段階の混合材料は人工石に要求される圧縮強度を発現しておらず、したがって、混合材料を水中投入時にグラブやバケット等により掬いあげて所定サイズに分割することは、固結後の人工石の破砕とは相違するものである。
【0039】
以上のようにして水中使用位置に投入された混合材料を水中で養生し(S11)、所定の強度の人工石とする。
【0040】
また、
図1に示すように、製造施工管理のために、投入前に混合材料から試料を採取し供試体を作製し(S12)、一定期間(通常28日)養生し(S13)、圧縮強度試験を行い(S14)、目標強度以上の圧縮強度を発現することを確認する(S15)。なお、目標強度に達しない場合(ステップS15のNO)、供試体養生ステップS13の養生時間を延長する。また、目標強度に達した場合(ステップS15のYES)、水中投入後の発現強度を推測できる。
【0041】
図1の人工石の製造方法によれば、所定のスランプの上限値以下まで低下した固結前の混合材料を一体的に、または分割して所定サイズとし、人工石の水中使用位置へ直接に投入するので、混合材料の型枠への打設・養生・脱型・破砕の各工程が不要となる。このため、従来の複数の工程を削減して作業性を向上させることができる。また、混合後投入前の混合材料の運搬時間に混合材料が所定のスランプに低下するようにできるので、従来必要であった打設・養生・脱型・破砕の各工程および仮置き用ヤードが不要となり、人工石の製造コストを削減できる。
【0042】
また、水中投入時の混合材料のスランプをたとえば、5cm以下とすることで、混合材料の流動性を低くし、投入後の混合材料の形状を維持するとともに、水中投入時の濁り発生を抑制できる。なお、スランプ5cm以下は投入時の目標値であり、混合直後はこれより大きなスランプであってもよい。
【0043】
次に、本実施形態による人工石の製造方法の別の例について
図2のフローチャートを参照して説明する。
図2は、人工石の水中使用位置周辺の海上で混合材料を製作する海上製作の形態を取る場合である。
図2の事前配合試験ステップS21、配合決定ステップS22,混合ステップS23は、
図1のステップS01,S02,S03と同様にして行うが、配合材料と配合割合の決定に当たっては、混合直後の混合材料のスランプが目標値の5cmまたはその近似値となるようにする。
【0044】
次に、混合材料のスランプを測定し(S24)、その測定結果が5cm以下とならない場合(ステップS25のNO)、混合材料を時間レベルの養生期間養生し(S26)、一定時間養生した後に再度測定を行う。
【0045】
スランプの測定結果が5cm以下となった場合(ステップS25のYES)、混合材料を一体的に、または分割して所定のサイズにし、人工石の水中使用位置に投入する(S27)。投入方法は、
図1の投入ステップS10と同様であってよい。
【0046】
以上のようにして水中使用位置に投入された混合材料を水中で養生し(S28)、所定の強度を発現させた人工石とする。なお、
図2に示すように、製造施工管理のために供試体を作製しステップS12~S15を
図1と同様に行う。
【0047】
図2の人工石の製造方法によれば、所定のスランプまで低下した固結前の混合材料を一体的にまたは分割して所定サイズとし、人工石の水中使用位置へ直接に投入するので、混合材料の型枠への打設・養生・脱型・破砕の各工程が不要となる。このため、従来の複数の工程を削減して作業性を向上させることができる。また、混合材料の配合材料や配合割合を調整し、
図2の混合ステップS23における混合直後のスランプをたとえば、目標値の5cmまたはその近似値となるように調整することで、混合後直ちに混合材料が投入可能である。たとえば、投入位置近くの台船上で混合材料の混合を行うことで、混合材料の運搬を不要とし、混合完了後の混合材料を比較的短時間の内に水中投入できる。これにより、混合材料の投入までの時間をかなり短縮でき、投入効率をさらに向上できる。また、従来必要であった打設・養生・脱型・破砕の各工程および仮置き用ヤードが不要となり、人工石の製造コストを削減できる。
【0048】
図1,
図2のようにして製造された人工石は、護岸等の裏込石、漁礁、藻礁、潜堤、捨石マウンド、人工海山等に使用可能である。また、混合材料の投入により護岸等の裏込構造、漁礁、藻礁、潜堤、捨石マウンド、被覆石、人工海山等の水底構造物・水中構造物を構築可能であるので、
図1,
図2の各ステップは、人工石による水底構造物・水中構造物の施工ステップでもある。
【0049】
上記水底構造物・水中構造物において、本実施形態による人工石により、通常の石積みと同様に1:1~1:3程度の勾配の形成が可能である。
【0050】
本実施形態では、泥土(浚渫土)の混合率40vol%以上、所定の圧縮強度(例えば、9.8N/mm2以上)を想定し、この条件を満たした所定のスランプ値以下となる配合条件を事前の配合試験により決定することが好ましい。また、配合試験時に水槽やビーカーを使用した水中投入実験を行い、水中における塊の形状の維持状況および形状維持に必要な養生時間を確認することが好ましい。なお、人工石の用途によっては9.8N/mm2以上の圧縮強度が必要でない場合があるが、この場合は、9.8N/mm2未満、1.0N/mm2(軟石や軟岩の下限値程度)以上の所定の圧縮強度を目標とする。
【0051】
また、人工石の発現強度は養生温度の影響を受けるため、投入水域の投入時期の水温をもとに、
図1のステップS13の供試体養生を設定した温度(0~30℃ 気中または水中)で行うことで、事前に養生温度の影響を確認することが望ましい。また、水中投入された混合材料が強度発現前に高波浪の影響を受けることがないように、海象条件に応じて、施工の時期やタイミングを調節することが望ましい。
【0052】
また、混合材料の投入施工例としては、以下の3形態があり、実施形態に応じて
図1または
図2に記載したステップが行われる。
(1)陸上での混合→土運船等による運搬→グラブ・バックホウ・底開式バージ等による水中投入
(2)台船等による海上混合→土運船等による運搬→グラブ・バックホウ・底開式バージ船等による水中投入
(3)台船等による海上混合→グラブ・バックホウ等による水中投入
なお、グラブやバックホウの代わりにトレミー管に投入し、その先端から水中へ打設する方法もある。
【0053】
上記使用するグラブやバケットのサイズによって、人工石の大きさが決まる。また、大型のグラブやバケットを使用することにより、大型の人工石の作製が可能である。
【0054】
また、混合材料は、投入時には固結していないため、投入後に押したり、均したりして変形させることで人工石の形状の調整や出来形の管理が可能である。例えば浅場であれば台船上からロングバックホーを用いて投入した人工石の形状を直接形成することができる。また、投入した隣接する塊同士が固着し、より大きな塊となって安定性が増す。
【0055】
(実験例)
次の2つの配合例A,Bにより混合材料を作製し、混合後の経過時間によるスランプの低下状況を調査した。スランプは、JIS A 1101 2005に基づいて測定した。なお、本実験では目標スランプの値は5cmとした。
配合例A:液性限界84.3%・含水比150%の浚渫土:683kg/m3
製鋼スラグ:1154kg/m3
高炉スラグ微粉末:410kg/m3
配合例B:液性限界84.3%・含水比175%の浚渫土:663kg/m3
製鋼スラグ:1140kg/m3
高炉スラグ微粉末:422kg/m3
【0056】
図3に本実験例の配合例A,Bによる各混合材料について混合後の経過時間と測定したスランプとの関係を示す。
図3から配合例A,Bともにスランプは時間の経過とともに低下することがわかる。配合例Aは、混合直後のスランプが5cmであるために、混合直後に投入可能であり、
図2,投入施工例(3)に対応する。また、配合例Bは、混合後からスランプ5cmになるまで2時間程度必要であり、この時間を混合材料の積み込みや運搬に要する時間とすることができ、
図1,投入施工例(1)(2)に対応する。なお、28日材齢圧縮強度は、気中室内での供試体による試験で、配合例A:16.2N/mm
2、配合例B:13.2N/mm
2であった。
【0057】
また、さらなる実験例として、次の配合例C,Dによる各混合材料について、ビーカーを使用した水中投入実験を行い、水中における塊の形状の維持状況の確認を行った。
配合例C:液性限界120.6%・含水比200%の浚渫土:648kg/m3
製鋼スラグ:1143kg/m3
高炉セメント:362kg/m3
配合例D:液性限界120.6%・含水比200%の浚渫土:648kg/m3
製鋼スラグ:834kg/m3
高炉セメント:300kg/m3
フライアッシュ:280kg/m3
【0058】
図5(a)は配合例Cの混合材料を混合直後に水中投入した400g程度、直径70~80mm相当の塊の様子を示す写真、
図5(b)は同じく配合例Cの混合材料の混合直後に水中投入した塊の様子(左側)および混合後3時間経過後に水中投入した塊の様子(右側)を示す写真である。
図5(a)、
図5(b)の(左側)のように、混合材料Cでは、スランプが5cm以下でも、混合直後の水中投入では塊が崩れたが、
図5(b)の(右側)のように、3時間経過後の水中投入では塊の形状が維持された。このため、配合試験時の水中投入実験でかかる現象が確認された場合には、水中投入時期は混合後3時間程度経過後に設定することが好ましい。また、配合例Cにさらにフライアッシュを適度に配合した配合例Dのケースでは、
図5(c)の(左側)のように混合直後の水中投入でも、
図5(c)の(右側)のように3時間経過後の水中投入でも、塊の形状を維持していた。したがって、かかるケースでは、混合直後投入でも3時間経過後投入でもよい。なお、本実験例の3時間経過後の水中投入による塊も、押せば変形する状態であり、実際の塊は、重量が数百kg~数トンになるため自重で変形すると考えられる。また、実際の塊と塊との間に間隙ができ、そのまま固化した場合でも、通常の人工石の水中投入の場合も空隙ができるので、問題とならない。
【0059】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、
図1,
図2では、混合材料の投入時期の決定パラメータである所定のスランプを5cmとしたが、本発明は、これに限定されず、0~7cmの範囲内で別の値としてもよく、この範囲内であると、水中投入後の濁り発生を抑制できる。
【0060】
また、
図1では、混合材料のスランプを投入前に測定ステップS07で測定したが、これに限定されず、混合ステップS03とスランプ推定ステップS04との間に測定するようにしてもよく、スランプ測定は両方で行ってよいが、どちらか一方で行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の人工石の製造方法・施工方法によれば、従来必要であった養生ヤードが不要で、打設・養生・脱型・破砕が不要であり、製造・施工コストを大幅に低減可能である。通常28日養生後、強度確認後に水中投入となるのに対し、混合直後~数時間後の海域投入が可能である。固化前の海域投入直後には混合材料の均しが容易にできる。配筋・かごマット等が不要であるため大型の人工石を簡単に作製できる。また、投入後に混合材料同士が固結した場合、人工石が大型化して安定性が増すことを期待できる。