(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048277
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】玄関ドア装置
(51)【国際特許分類】
E05D 7/10 20060101AFI20230331BHJP
E05D 5/04 20060101ALI20230331BHJP
E06B 3/00 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
E05D7/10
E05D5/04 Z
E06B3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157487
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(71)【出願人】
【識別番号】000196314
【氏名又は名称】株式会社ニシムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】村岡 和弥
(72)【発明者】
【氏名】林 宏一
【テーマコード(参考)】
2E030
【Fターム(参考)】
2E030AB01
2E030BB03
2E030JA01
2E030JB02
2E030JC01
(57)【要約】
【課題】吊り込み作業性を維持しつつ、防犯性及びメンテナンス性を両立させることができる玄関ドア装置を提供すること。
【解決手段】丁番は、ドア本体側丁番部材の上軸孔に貫通された軸部材の下端を受け入れてドア本体を仮吊り込みする仮吊り込み部材を備える。仮吊り込み部材は、上方に向けて突出する円筒壁部と、円筒壁部の一部に設けられ、軸部材の下端を円筒壁部の内側に横方向から挿入可能な切り欠き部と、円筒壁部の内面に縦方向に沿って設けられ、第1の突起が係合した場合に、下軸孔に対する軸部材の挿入及び抜去を許容する縦溝と、を備える。円筒壁部の周方向に沿う縦溝の幅は、ドア本体の開閉方向に沿う所定の角度範囲で第1の突起を係合可能となるように、軸部材の周方向に沿う第1の突起の幅よりも大きく形成される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、前記枠体に丁番を介して開閉可能に取り付けられるドア本体と、を備え、
前記丁番は、
前記枠体に固定され、下軸孔を有する枠体側丁番部材と、
前記ドア本体に固定され、上軸孔を有するドア本体側丁番部材と、
前記ドア本体側丁番部材の前記上軸孔内に軸方向にスライド可能に貫通され、下端近傍に第1の突起を有する軸部材と、
前記枠体側丁番部材の上端に回転不能に設けられ、前記ドア本体側丁番部材の前記上軸孔に貫通された前記軸部材の下端を受け入れて前記ドア本体を仮吊り込みする仮吊り込み部材と、を備え、
前記仮吊り込み部材は、
前記枠体側丁番部材の上端から上方に向けて突出する円筒壁部と、
前記円筒壁部の一部に設けられ、前記ドア本体側丁番部材の前記上軸孔内に貫通された前記軸部材の下端を前記円筒壁部の内側に横方向から挿入可能な切り欠き部と、
前記円筒壁部の内面に縦方向に沿って設けられ、前記軸部材の前記第1の突起が係合した場合に、前記枠体側丁番部材の前記下軸孔に対する前記軸部材の挿入及び抜去を許容する縦溝と、を備え、
前記円筒壁部の周方向に沿う前記縦溝の幅は、前記ドア本体の開閉方向に沿う所定の角度範囲で前記第1の突起を係合可能となるように、前記軸部材の周方向に沿う前記第1の突起の幅よりも大きく形成される、玄関ドア装置。
【請求項2】
前記所定の角度範囲は、前記ドア本体の閉鎖状態を0°としたとき、70°以上90°以下の範囲である、請求項1に記載の玄関ドア装置。
【請求項3】
前記ドア本体側丁番部材の前記上軸孔内に、縦方向に延びる凹溝部が設けられ、
前記軸部材は、前記第1の突起よりも上方の位置に、前記凹溝部に係合することによって前記上軸孔内で回転不能に規制される第2の突起を有する、請求項1又は2に記載の玄関ドア装置。
【請求項4】
前記ドア本体側丁番部材の前記凹溝部に、上方にスライドした前記軸部材の前記第2の突起に当接することによって、前記軸部材の上位置を規制する段部が設けられる、請求項3に記載の玄関ドア装置。
【請求項5】
前記仮吊り込み部材は、前記枠体側丁番部材の前記下軸孔内に回転不能に挿入されるとともに、前記円筒壁部の内側と連通して前記軸部材が貫通可能な挿入筒部を有し、
前記縦溝は、前記円筒壁部の内面から前記挿入筒部の内面に亘って貫通して設けられ、
前記枠体側丁番部材の前記下軸孔内に挿入された前記軸部材の前記第1の突起は、前記挿入筒部よりも下方に配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の玄関ドア装置。
【請求項6】
前記円筒壁部は、上端部の内面に前記切り欠き部から前記縦溝に亘って設けられ、前記円筒壁部の内側に挿入される前記軸部材の前記第1の突起を前記縦溝に向けて通過可能な横溝を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の玄関ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、玄関ドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドア本体を丁番によって枠体に開閉可能に取り付けたドア装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このドア装置は、枠体側丁番部材の上端に、ドア本体側丁番部材を貫通するピンの下端を横方向から挿入可能な仮吊り込み部材を有する。このドア装置によれば、ドア本体を吊り込む際に、枠体側丁番部材の仮吊り込み部に対して、ドア本体を横方向に移動させながらピンの位置合わせ作業を行うことができる。ドア本体を上方から下方に落とし込む必要がないため、吊り込み作業を簡単に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のドア装置は室内用であり、ドア本体の閉鎖時でもピンを上方に引き抜き可能である。そのため、このドア装置は、玄関ドア装置に適用する際に、防犯性の観点で課題を有する。その一方で、ドア本体等のメンテナンス作業時には、ドア本体を枠体から容易に取り外すことができることが必要である。
【0005】
よって、吊り込み作業性を維持しつつ、防犯性及びメンテナンス性を両立させることができる玄関ドア装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の玄関ドア装置は、枠体と、前記枠体に丁番を介して開閉可能に取り付けられるドア本体と、を備え、前記丁番は、前記枠体に固定され、下軸孔を有する枠体側丁番部材と、前記ドア本体に固定され、上軸孔を有するドア本体側丁番部材と、前記ドア本体側丁番部材の前記上軸孔内に軸方向にスライド可能に貫通され、下端近傍に第1の突起を有する軸部材と、前記枠体側丁番部材の上端に回転不能に設けられ、前記ドア本体側丁番部材の前記上軸孔に貫通された前記軸部材の下端を受け入れて前記ドア本体を仮吊り込みする仮吊り込み部材と、を備え、前記仮吊り込み部材は、前記枠体側丁番部材の上端から上方に向けて突出する円筒壁部と、前記円筒壁部の一部に設けられ、前記ドア本体側丁番部材の前記上軸孔内に貫通された前記軸部材の下端を前記円筒壁部の内側に横方向から挿入可能な切り欠き部と、前記円筒壁部の内面に縦方向に沿って設けられ、前記軸部材の前記第1の突起が係合した場合に、前記枠体側丁番部材の前記下軸孔に対する前記軸部材の挿入及び抜去を許容する縦溝と、を備え、前記円筒壁部の周方向に沿う前記縦溝の幅は、前記ドア本体の開閉方向に沿う所定の角度範囲で前記第1の突起を係合可能となるように、前記軸部材の周方向に沿う前記第1の突起の幅よりも大きく形成される、玄関ドア装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】玄関ドア装置を屋外側から見た正面図である。
【
図2】玄関ドア装置におけるドア本体と枠体とを分解して示す斜視図である。
【
図3】玄関ドア装置における上用丁番を分解して示す斜視図である。
【
図4】玄関ドア装置における枠体側丁番部材の下軸孔内にドア本体側丁番部材側から軸部材が挿入される様子を示す縦断面図である。
【
図6】玄関ドア装置における枠体側丁番部材の仮吊り込み部材を示す斜視図である。
【
図7】玄関ドア装置における枠体側丁番部材の仮吊り込み部材に軸部材が横方向から挿入される様子を示す平面図である。
【
図8】玄関ドア装置における仮吊り込み時のドア本体の角度範囲を示す平面図である。
【
図9】玄関ドア装置における下用丁番を分解して示す斜視図である。
【
図10】玄関ドア装置の下用丁番におけるドア本体側丁番部材の内部を示す縦断面図である。
【
図11】玄関ドア装置におけるドア本体の吊り込み作業を示す図である。
【
図12】玄関ドア装置における枠体側丁番部材の仮吊り込み部材に軸部材が挿入された状態を示す斜視図である。
【
図13】玄関ドア装置におけるドア本体の吊り込み作業時のドア本体の移動軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の玄関ドア装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の玄関ドア装置1を屋外側から見た図である。
図1において、玄関ドア装置1は、建物躯体の開口部に設けられる枠体2と、この枠体2の内側に、複数の丁番4,5を介して開閉可能に取り付けられるドア本体3と、を備える。
【0009】
枠体2は、上枠21と、下枠22と、左右の縦枠23,24とを矩形に枠組みすることによって構成される。枠体2の下枠22は必ずしも設けられなくてもよい。本実施形態の玄関ドア装置1は、ドア本体3を枠体2に対して屋外側に向けて開く外開きタイプのドア装置である。以下の図中に示されるX方向は、玄関ドア装置1の屋外側を示す。
【0010】
ドア本体3は、吊元側に高さ方向に所定の間隔をあけて配置される少なくとも2つの丁番4,5を介して、枠体2の縦枠24に取り付けられる。本実施形態の玄関ドア装置1は、高さ方向の上位及び中位に配置される2つの上用丁番4,4と、下位に配置される1つの下用丁番5との3つの丁番を有する。本開示の玄関ドア装置1は、上用丁番4,4に特徴を有する。2つの上用丁番4,4は同一構成である。
【0011】
まず、
図2を参照して、上用丁番4及び下用丁番5の概要について説明する。上用丁番4は、縦枠24の内面24aに固定される枠体側丁番部材41と、ドア本体3の吊元側の外側面3aに固定されるドア本体側丁番部材42と、によって構成される。ドア本体側丁番部材42は、枠体側丁番部材41の上側に配置される。ドア本体側丁番部材42は、円筒部422を貫通する軸部材43によって、枠体側丁番部材41に対して開閉可能に連結される。ドア本体側丁番部材42には、上方から円筒部422の外側を覆う軸カバー44が取り付けられる。
【0012】
下用丁番5は、縦枠24の内面24aに取り付けられる枠体側丁番部材51と、ドア本体3の吊元側の外側面3aに取り付けられるドア本体側丁番部材52と、によって構成される。ドア本体側丁番部材52は、枠体側丁番部材51の上側に配置される。ドア本体側丁番部材52は、円筒部522を貫通する軸部材53によって、枠体側丁番部材51に対して開閉可能に連結される。ドア本体側丁番部材52には、上方から円筒部522の外側を覆う軸カバー54が取り付けられる。
【0013】
次に、上用丁番4の構成について、
図3、
図4及び
図5を参照してさらに詳しく説明する。枠体側丁番部材41は、金属製の板材によって形成される。枠体側丁番部材41は、縦枠24の内面24aに取り付けられる矩形状の羽根板部411と、羽根板部411の側方に連続して設けられ、縦枠24から屋外側に突出して配置される円筒部412と、を有する。羽根板部411には、縦枠24の内面24aにねじ止めするためのねじが貫通する複数のねじ孔411aが設けられる。
図4では、軸カバー44は省略されている。
【0014】
円筒部412は、羽根板部411の側方に延びる板材を円筒状に巻き込むことによって形成される。これによって、円筒部412の内側には、枠体側丁番部材41を縦方向に貫通する下軸孔413が形成される。円筒状に巻き込んだ板材の先端は、羽根板部411と円筒部412との境界部に近接し、下軸孔413内を縦方向に延びる凹溝部414を形成している。下軸孔413の上端には、仮吊り込み部材6が取り付けられる。この仮吊り込み部材6についてはさらに後段で説明する。下軸孔413の下端は、義星415によって塞がれる。
【0015】
ドア本体側丁番部材42は、金属製の板材によって形成される。ドア本体側丁番部材42は、ドア本体3の吊元側の外側面3aに取り付けられる矩形状の羽根板部421と、羽根板部421の側方に連続して設けられ、ドア本体3から屋外側に突出して配置される円筒部422と、を有する。羽根板部421には、ドア本体3の外側面3aにねじ止めするためのねじが貫通する複数のねじ孔421aが設けられる。
【0016】
円筒部422は、羽根板部421の側方に延びる板材を円筒状に巻き込むことによって形成される。円筒部422の内側には、ドア本体側丁番部材42を縦方向に貫通する上軸孔423が形成される。この上軸孔423の内径は、枠体側丁番部材41の下軸孔413の内径よりも小さく、軸部材43の軸部431の外径に略等しい。円筒状に巻き込んだ板材の先端は、羽根板部421と円筒部422との境界部に近接し、上軸孔423内を縦方向に延びる凹溝部424を形成している。
【0017】
円筒部422の上端近傍には、円筒部422の一部分を全周に亘って円筒状に切り欠いた開口部425が設けられる。開口部425には、樹脂製の環状部材からなる軸止めリング426が挿入される。軸止めリング426の内径は、軸部材43の軸部431の外径と同一もしくは僅かに小さい。軸止めリング426は、外周の一部に設けられる切断部426aによって弾性的に拡開可能である。軸止めリング426は、弾性的に拡開した状態で、円筒部422の径方向外側から開口部425に挿入され、上軸孔423に挿入された軸部材43の軸部431の外周に嵌着される。軸止めリング426は、円筒部422に対して軸方向に移動不能である。軸止めリング426は、円筒部422の凹溝部424を横断するように配置され、凹溝部424内に段部427を形成する(
図4参照)。
【0018】
軸部材43は、金属製の棒状体であり、上用丁番4の回動軸を構成する。軸部材43は、長尺に延びる軸部431と、軸部431の上端に設けられ、軸部431よりも大径の頭部432と、を有する。軸部431は、ドア本体側丁番部材42の上軸孔423の長さよりも長尺に形成される。詳しくは、軸部431は、上軸孔423の上端から最も深く挿入されたときに、上軸孔423を貫通して上軸孔423の下端から突出し、枠体側丁番部材41の下軸孔413内に十分な長さで挿入可能な長さを有する。
【0019】
軸部材43の軸部431の外周面には、それぞれ径方向外側に向けて突出する第1の突起433と、第2の突起434と、が設けられる。第1の突起433及び第2の突起434は、軸部431の軸方向に沿う同一直線上に配置される。第1の突起433は、軸部431の下端431aの近傍に配置される。第2の突起434は、第1の突起433よりも上方に間隔をおいて配置される。詳しくは、第2の突起434は、
図4中の実線で示すように、軸部材43の軸部431が上軸孔423内に最も深く挿入されても、上軸孔423の下端から下方に抜け出さない位置に設けられる。第1の突起433及び第2の突起434の突出高さ、軸方向の長さ、及び周方向の幅は同一である。
【0020】
軸部材43の軸部431は、
図5に示すように、第1の突起433及び第2の突起434を上軸孔423内の凹溝部424に位置合わせした状態で、上軸孔423内に挿入される。これによって、第1の突起433及び第2の突起434と凹溝部424とが係合し、軸部材43は、凹溝部424に沿って上軸孔423内を上下に直線的にスライド可能である。これに対し、上軸孔423の内径は軸部431の外径に略等しいため、第1の突起433及び第2の突起434と凹溝部424とが係合することによって、軸部材43は、上軸孔423に対して軸周りに回転不能である。
【0021】
枠体側丁番部材41の下軸孔413の内径は、軸部材43の第1の突起433を含む軸部431の外径以上である。そのため、軸部431の第1の突起433が下軸孔413内に配置された軸部材43は、ドア本体3の開閉操作によってドア本体側丁番部材42が回転するのに伴って、下軸孔413に対して軸周りに回転可能である。
【0022】
ドア本体3の吊り込み作業時、上軸孔423内の軸部材43は、作業者の操作によって、
図4中の鎖線で示す位置まで上方にスライドされる。このとき、軸部431は、軸止めリング426の内面を摺動し、第2の突起434が、軸止めリング426によって凹溝部424内に形成される段部427に下方から当接する。これによって、軸部材43の上位置が規制されるとともに、軸部材43は、軸止めリング426の摩擦力によって、上位置に保持される。このとき、軸部431の下端431aは、
図4に示すように、上軸孔423の下端から長さLだけ下方に突出する。軸部431の第1の突起433は、上軸孔423の下端から下方に抜け出た位置に配置される。この状態において、上側の第2の突起434は、上軸孔423の凹溝部424に係合したままであるため、軸部材43が上軸孔423に対して軸周りに回転することはない。
【0023】
次に、枠体側丁番部材41の仮吊り込み部材6について、
図3、
図4、
図6~
図8を参照して説明する。仮吊り込み部材6は、樹脂材によって成形された一体成形品であり、枠体側丁番部材41の上端に取り付けられる。
【0024】
仮吊り込み部材6は、枠体側丁番部材41の下軸孔413内に挿入される挿入筒部61と、挿入筒部61の上端に設けられるフランジ部62と、フランジ部62の上面に設けられる円筒壁部63と、を有する。
【0025】
挿入筒部61の外径は、下軸孔413の内径に略等しい。挿入筒部61の内側には、ドア本体側丁番部材42の上軸孔423を貫通する軸部材43の軸部431が挿入される軸挿入孔612が形成される。軸挿入孔612は、挿入筒部61を貫通している。軸挿入孔612の内径は、軸部431の外径に略等しい。
【0026】
挿入筒部61の軸方向の長さは、
図4中の実線に示すように、ドア本体側丁番部材42の上軸孔423内の軸部材43が最も下方に押し込まれたときに、軸部431が軸挿入孔612を貫通し、挿入筒部61の下端よりも下方の下軸孔413内に突出し得る長さを有する。軸部材43が最も下方に押し込まれたとき、軸部431の第1の突起433は、挿入筒部61よりも下方の下軸孔413内に配置される。
【0027】
挿入筒部61の外周面には、軸方向に延びる1本の突条部611が設けられる。挿入筒部61は、突条部611を下軸孔413内の凹溝部414に位置合わせした状態で、下軸孔413内に挿入される。これによって、仮吊り込み部材6は、下軸孔413に対して軸周りに回転不能に取り付けられる。
【0028】
フランジ部62は、挿入筒部61の外径よりも大径であり、挿入筒部61の上端において径方向外側に張り出している。フランジ部62は、円筒部412の上端面に当接し、挿入筒部61を下軸孔413の上端に保持する。
【0029】
円筒壁部63は、フランジ部62の上面に開口する軸挿入孔612の外周を略円筒状に取り囲むように設けられる。円筒壁部63の内側は、軸挿入孔612に連通している。仮吊り込み部材6が下軸孔413に取り付けられた際、円筒壁部63は、枠体側丁番部材41の上端から上方に向けて突出する。円筒壁部63の外径は、フランジ部62の外径よりも小さく、ドア本体側丁番部材42の円筒部422の外径に略等しい。円筒壁部63の突出高さは、
図4中の鎖線で示すように、上方に最もスライドした軸部材43の軸部431の下端431aが、上軸孔423から下方に突出する長さLと同一もしくは僅かに高い。
【0030】
円筒壁部63には、切り欠き部631が設けられる。切り欠き部631は、円筒壁部63の壁部の一部を、円筒壁部63の上端からフランジ部62の上面にかけて所定の幅で除去した形状を有する。
図7に示すように、切り欠き部631の幅W1は、軸部材43の軸部431の外径よりも大きく、軸部431下端を、円筒壁部63の内側に横方向から挿入可能な幅を有する。切り欠き部631は、仮吊り込み部材6が枠体側丁番部材41に取り付けられた状態で、円筒壁部63における屋内側を向いた位置に設けられる。したがって、軸部431の下端431aの挿入方向は、屋内側から屋外側に向けて、縦枠24の内面24aに対して略平行になる。
【0031】
円筒壁部63の内面63aには、縦溝632が設けられる。縦溝632は、円筒壁部63の内面63aから、フランジ部62の内側を経由して挿入筒部61の内面に亘り、軸方向に貫通して設けられる。すなわち、縦溝632は、仮吊り込み部材6の上端から下端に至る仮吊り込み部材6の全体に亘って、縦方向に沿って延びている。
【0032】
縦溝632は、軸部431の第1の突起433を収容して係合可能な幅及び深さを有する。軸挿入孔612の内径は、軸部431の外径に略等しいため、枠体側丁番部材41の下軸孔413とドア本体側丁番部材42の上軸孔423とが同軸状に配置された状態で、
図4中の実線で示すように、ドア本体側丁番部材42の軸部材43が下軸孔413に挿入される際、及び下軸孔413から抜去される際、軸部431の第1の突起433は、縦溝632内のみを通過可能である。すなわち、縦溝632は、軸部431の第1の突起433が係合したときだけ、軸部材43が仮吊り込み部材6の軸挿入孔612及び下軸孔413に対して挿入及び抜去されることを許容する。
【0033】
図7に示すように、円筒壁部63の周方向に沿う縦溝632の幅W2は、ドア本体3の開閉方向に沿う所定の角度範囲で軸部431の第1の突起433を係合可能となるように、軸部431の周方向に沿う第1の突起433の幅よりも大きく形成される。本実施形態の縦溝632の幅W2は、軸挿入孔612の中心に対して、周方向に約20°の角度の幅となるように形成されている。
【0034】
図7に示すように、縦溝632は、枠体側丁番部材41が縦枠24の内面24aに取り付けられた状態で、円筒壁部63の内面63aにおける切り欠き部631の近傍、且つ縦枠24の内面24aに対して遠い側に配置される。詳しくは、縦溝632は、
図8において、ドア本体3の閉鎖状態を0°としたとき、ドア本体3の角度範囲θ1、θ2が、それぞれ70°、90°となる位置に配置される。すなわち、縦溝632に第1の突起433が係合し得る範囲は、ドア本体3が70°以上90°以下の角度範囲である場合に制限される。
【0035】
但し、縦溝632に第1の突起433が係合し得る範囲は、本実施形態のように、ドア本体3が70°以上90°以下の角度範囲である場合に制限されない。例えば、縦溝632の幅W2を、20°以上100°以下の角度の幅に形成することによって、ドア本体3が50°以上150°以下の角度範囲である場合に、縦溝632と第1の突起433とが係合し得るように構成されてもよい。
【0036】
図6~
図8に示すように、円筒壁部63の上端側の内面63aには、切り欠き部631から内面63aに沿って横方向に延びる横溝633が設けられる。横溝633は、縦枠24の内面24aから遠い側の切り欠き部613の端部631aから縦溝632に亘って設けられる。横溝633は、円筒壁部63の上方及び切り欠き部613の端部631aの外側に向けて開放している。
【0037】
横溝633は、ドア本体3の吊り込み時に、
図8に示すように、軸部431から突出する第1の突起433との干渉を防止する。すなわち、円筒壁部63の内側に挿入された軸部431が、ドア本体3の開閉操作によって回転した際に、横溝633は、第1の突起433を、円筒壁部63に引っ掛けることなく縦溝632まで円滑に通過させることができる。ドア本体3がさらに開方向に操作されると、第1の突起433は、縦溝632において切り欠き部613の端部631aから遠く且つ縦溝632の径方向に延びる溝内壁面632aに突き当たる。これによって、作業者は、第1の突起433が縦溝632内に配置されたことを知覚することができるため、第1の突起433を、縦溝632との係合位置に容易に配置させることができる。
【0038】
次に、下用丁番5について、
図9及び
図10を参照してさらに詳しく説明する。枠体側丁番部材51は、金属製の板材によって形成される。枠体側丁番部材51は、縦枠24の内面24aに取り付けられる羽根板部511と、羽根板部511の側方に連続して設けられ、縦枠24から屋外側に突出して配置される円筒部512と、を有する。
【0039】
羽根板部511は、矩形状に形成される。羽根板部511には、縦枠24の内面24aにねじ止めするためのねじが貫通する複数のねじ孔511aが設けられる。
【0040】
円筒部512は、羽根板部511の側方に延びる板材を円筒状に巻き込むことによって形成される。円筒部512の内側には、枠体側丁番部材51を縦方向に貫通する下軸孔513が形成される。
【0041】
下軸孔513の上端には、軸受部材514が取り付けられる。軸受部材514には、ドア本体側丁番部材52に設けられる軸部材53の下端が挿入される軸挿入孔514aが形成される。軸挿入孔514aは、下軸孔513に連通している。下軸孔513の下端には、下軸孔513を塞ぐ義星515が取り付けられる。
【0042】
ドア本体側丁番部材52は、金属製の板材によって形成される。ドア本体側丁番部材52は、ドア本体3の吊元側の外側面3aに取り付けられる羽根板部521と、羽根板部521の側方に連続して設けられ、ドア本体3から屋外側に突出して配置される円筒部522と、を有する。
【0043】
羽根板部521は、矩形状に形成される。羽根板部521には、縦枠24の内面24aにねじ止めするためのねじが貫通する複数のねじ孔521aが設けられる。
【0044】
円筒部522は、羽根板部521の側方に延びる板材を円筒状に巻き込むことによって形成される。円筒部522の内側には、ドア本体側丁番部材52を縦方向に貫通する上軸孔523が形成される。
【0045】
円筒部522の上端近傍には、円筒部522を全周に亘って円筒状に切り欠いた開口部524が設けられる。開口部524は、上軸孔523に連通している。開口部524には、略円板状の軸調整部材525が挿入される。軸調整部材525の中央には、雌ねじ孔525aが貫通して形成される。雌ねじ孔525aには、円筒部522の上軸孔523の上方から、高さ調整ねじ526が螺合している。
【0046】
軸部材53は、金属製の棒状体であり、下用丁番5の開閉時の回動軸を構成する。軸部材53の中途部には、径方向外側に張り出したフランジ部531が設けられる。フランジ部531は、軸部材53が枠体側丁番部材51の軸受部材514の軸挿入孔514aに挿入された際に、軸受部材514の上端面に当接する。
【0047】
軸部材53の上端部53aは、僅かに小径に形成される。軸部材53の上端部53aには、上方から外嵌合される軸固定部材527が取り付けられる。軸部材53の上端部53aの外周面にはローレット加工が施され、軸固定部材527を回転不能に固定している。軸調整部材525の雌ねじ孔525aに螺合された高さ調整ねじ526の下端は、軸固定部材527の上端面527aに当接している。
【0048】
次に、ドア本体3の吊り込み作業の手順について詳しく説明する。まず、吊り込み作業に先立ち、上用丁番4のドア本体側丁番部材42の軸部材43を、
図4中の鎖線で示すように、最も上方に引き上げて上位置に配置する。軸部431の下端431aは、ドア本体側丁番部材42の上軸孔423から下方に長さLだけ突出する。
【0049】
まず、
図11に示すように、下用丁番5のドア本体側丁番部材52を、下用丁番5の枠体側丁番部材51に連結する。詳しくは、軸部材53の下端部を、
図2に示すように、枠体側丁番部材51の上端に設けられる軸受部材514の軸挿入孔514aに挿入する。
【0050】
続いて、2つの上用丁番4の連結を行う。詳しくは、下用丁番5が連結されたドア本体3を、
図11に示すように、下用丁番5を支点として、縦枠24に向けて移動させることによって、上用丁番4のドア本体側丁番部材42から下方に突出する軸部材43の軸部431の下端431aを横方向に移動させる。軸部431の下端431aを仮吊り込み部材6の切り欠き部631に通過させることによって、
図12に示すように、軸部431を円筒壁部63の内側に挿入する。これによって、ドア本体側丁番部材42の円筒部422は、仮吊り込み部材6の円筒壁部63の上端面63bに載置され、ドア本体3の仮吊り込みが完了する。
【0051】
仮吊り込み完了後、ドア本体3を屋外側に向けて所定角度だけ開操作すると、ドア本体3の開動作に伴うドア本体側丁番部材42の回転に伴って軸部材43が回転する。軸部材43の回転によって、軸部431の第1の突起433が、切り欠き部631の端部631aから仮吊り込み部材6の横溝633内に入り、横溝633を通過して、縦溝632内に案内される。さらにドア本体3を開方向に移動させると、第1の突起433が縦溝632の溝内壁面632aに突き当たり、第1の突起433が縦溝632内に収容されていることが知覚される。このときのドア本体3の開方向の角度は、閉鎖状態に対して70°以上90°以下の範囲であるため、第1の突起433と縦溝632との位置合わせが容易である。
【0052】
その後、軸部材43を、
図4において実線で示すように、最も下方まで押し込む。軸部材43は、軸部431の第1の突起433を仮吊り込み部材6の縦溝632に係合させた状態で、縦溝632に沿って下方に向けてスライドする。これによって、第1の突起433は、仮吊り込み部材6の挿入筒部61から抜け出て、挿入筒部61の下方に配置される。これによって、ドア本体3が枠体2に完全に吊り込まれる。その後、
図10に示すように、下用丁番5の高さ調整ねじ526をドライバー等によって回転させることによって、ドア本体3の高さを微調整する。
【0053】
以上の作業によってドア本体3を吊り込む際、ドア本体3を実質的に横方向に移動させるだけであり、ドア本体3を上方に大きく持ち上げる必要はない。
図13に示すように、ドア本体3の吊り込み作業時の高さ方向の移動量Δhは極めて小さいため、例えば、枠体2の上方に屋外側に向けて大きく張り出した額縁部材100等が配置されていても、ドア本体3を枠体2に吊り込むことが可能である。
【0054】
ドア本体3の吊り込み完了後、ドア本体3を閉じると、第1の突起433は、軸部材43の回転によって縦溝632の位置から離れ、
図8において二点鎖線で示すように、屋内側を向いた位置に配置される。したがって、軸部材43を上方に引き抜こうとしても、第1の突起433が仮吊り込み部材6の挿入筒部61の下端に引っ掛かり、移動不能である。そのため、ドア本体3が70°以上90°以下の角度範囲以外の角度のとき、例えばドア本体3の閉鎖状態のときには、軸部材43を上方にスライドさせることができず、防犯性が高められる。
【0055】
一方、ドア本体3のメンテナンス時には、ドア本体3を70°以上90°以下の角度範囲で開いたときに、第1の突起433と縦溝632とを係合させ、軸部材43を上方にスライドさせることができる。ドア本体3の所定の角度範囲で、軸部材43を枠体側丁番部材41の下軸孔413から抜去可能であるため、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0056】
以上のとおり、本実施形態に係る玄関ドア装置1は、以下の効果を奏する。すなわち、本実施形態の玄関ドア装置1は、枠体2と、枠体2に上用丁番4及び下用丁番5を介して開閉可能に設けられるドア本体3と、を備える。上用丁番4は、枠体2に固定され、下軸孔413を有する枠体側丁番部材41と、ドア本体3に固定され、上軸孔423を有するドア本体側丁番部材42と、ドア本体側丁番部材42の上軸孔423内に軸方向にスライド可能に貫通され、下端413a近傍に第1の突起433を有する軸部材43と、枠体側丁番部材41の上端に回転不能に設けられ、ドア本体側丁番部材42の上軸孔423に貫通された軸部材43の下端431aを受け入れてドア本体3を仮吊り込みする仮吊り込み部材6と、を備える。仮吊り込み部材6は、枠体側丁番部材41の上端から上方に向けて突出する円筒壁部63と、円筒壁部63の一部に設けられ、ドア本体側丁番部材42の上軸孔423内に貫通された軸部材43の下端431aを円筒壁部63の内側に横方向から挿入可能な切り欠き部631と、円筒壁部63の内面63aに縦方向に沿って設けられ、軸部材43の第1の突起433が係合した場合に、枠体側丁番部材41の下軸孔413に対する軸部材43の挿入及び抜去を許容する縦溝632と、を備える。円筒壁部63の周方向に沿う縦溝632の幅W2は、ドア本体3の開閉方向に沿う所定の角度範囲θ1以上θ2以下で第1の突起433を係合可能となるように、軸部材43の周方向に沿う第1の突起433の幅よりも大きく形成される。これによれば、ドア本体3が所定の角度範囲である場合に軸部材43を枠体側丁番部材41の下軸孔413から抜去可能であるため、仮吊り込み部材6による吊り込み作業性を維持しつつ、防犯性及びメンテナンス性を両立させることができる。
【0057】
本実施形態において、所定の角度範囲は、ドア本体3の閉鎖状態を0°としたとき、70°以上90°以下の範囲とすることができる。これによれば、ドア本体3を70°以上90°以下の角度範囲で開操作することによって、軸部材43を上方にスライド可能であるため、防犯性とドア本体3のメンテナンス性とを高めることができる。
【0058】
本実施形態において、ドア本体側丁番部材42の上軸孔423内に、縦方向に延びる凹溝部424が設けられる。軸部材43は、第1の突起433よりも上方の位置に、凹溝部424に係合することによって上軸孔423内で回転不能に規制される第2の突起434を有する。これによれば、軸部材43を上軸孔423に対して容易に回転不能に配置させることができる。軸部材43のスライド時、第2の突起434が凹溝部424に沿って移動するため、軸部材43を円滑にスライドさせることができる。
【0059】
本実施形態において、ドア本体側丁番部材42の凹溝部424に、上方にスライドした軸部材43の第2の突起434に当接することによって、軸部材43の上位置を規制する段部427が設けられる。これによれば、軸部材43の上位置を容易に規制することができるとともに、軸部材43が上軸孔423から抜け出ることが防止される。
【0060】
本実施形態において、仮吊り込み部材6は、枠体側丁番部材41の下軸孔413内に回転不能に挿入されるとともに、円筒壁部63の内側と連通して軸部材43が貫通可能な挿入筒部61を有する。縦溝632は、円筒壁部63の内面63aから挿入筒部61の内面に亘って貫通して設けられる。枠体側丁番部材41の下軸孔413内に挿入された軸部材43の第1の突起433は、挿入筒部61よりも下方に配置される。これによれば、第1の突起433と縦溝632とが係合していない限り、ドア本体3を上方に持ち上げても、第1の突起433が挿入筒部61の下端に引っ掛かるため、枠体側丁番部材41の下軸孔413から軸部材43を抜去することができない。そのため、玄関ドア装置1の防犯性をさらに高めることができる。
【0061】
本実施形態において、円筒壁部63は、上端部の内面63aに切り欠き部631から縦溝632に亘って設けられ、円筒壁部63の内側に挿入される軸部材43の第1の突起433を縦溝632に向けて通過可能な横溝633を有する。これによれば、ドア本体3の吊り込み時に、軸部材43の第1の突起433と円筒壁部63との干渉が防止される。仮吊り込み完了後、ドア本体3の開操作に伴う軸部材43の回転によって、第1の突起433が横溝633を通過して、縦溝632内に案内することができる。さらにドア本体3を開方向に移動させると、第1の突起433が縦溝632の溝内壁面632aに突き当たるため、作業者に、第1の突起433が縦溝632内に収容されていることを知覚させることができる。そのため、第1の突起433と縦溝632との位置合わせが容易を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
1 玄関ドア装置、 2 枠体、 3 ドア本体、 4 上用丁番、 41 枠体側丁番部材、 413 下軸孔、 413a 軸部材の下端、 42 ドア本体側丁番部材、 423 上軸孔、 424 凹溝部、 427 段部、 43 軸部材、 433 第1の突起、 434 第2の突起、 6 仮吊り込み部材、 61 挿入筒部、 63 円筒壁部、 63a 円筒壁部の内面、 631 切り欠き部、 632 縦溝、 633 横溝、 W2 縦溝の幅