(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048285
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】予混合装置およびこれを備えた燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23D 14/62 20060101AFI20230331BHJP
F23D 14/02 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
F23D14/62
F23D14/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157500
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小川 恭平
(72)【発明者】
【氏名】杉江 繁男
【テーマコード(参考)】
3K017
【Fターム(参考)】
3K017AA02
3K017AD03
3K017CA04
3K017CB08
3K017CE01
3K017CE03
(57)【要約】
【課題】フラッパの応答性がよく、混合気を適切な空燃比に維持する性能に優れたものにするとともに、点火性能も優れたものにすることが可能な予混合装置を提供する。
【解決手段】空気を流れさせるための気体流通路30と、負圧を利用して燃料ガスを気体流通路30に流出可能とするガス流出口31aと、気体流通路30内に配されたフラッパ5と、を備えている、予混合装置Aであって、フラッパ5が所定の上限位置を超えて開方向に回転することを阻止しつつ、前記上限位置以下の範囲においては、空気流量に対応してフラッパ5の開度が変化することを許容するフラッパ用の動作規制手段6,7を、さらに備えており、動作規制手段6,7は、通常燃焼用の第1の上限位置P1、およびこの第1の上限位置P1よりもフラッパ5の開度が小さく、燃料点火用の第2の上限位置P2のうち、一方を選択的に切り替え設定可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に空気を流れさせるための気体流通路と、
この気体流通路に発生する負圧を利用して、前記気体流通路に燃料ガスを流出可能とする少なくとも1つのガス流出口と、
前記気体流通路内に配されて、前記空気の流れ方向とは交差する方向に延びる軸線周りに回転可能であり、かつ前記気体流通路の空気流量が少ない場合には多い場合よりも開度が小さくなるように、前記空気流量に対応して開度が変化するフラッパと、
を備えている、予混合装置であって、
前記フラッパが所定の上限位置を超えて開方向に回転することを阻止しつつ、前記上限位置以下の範囲においては、前記空気流量に対応して前記フラッパの開度が変化することを許容するフラッパ用の動作規制手段を、さらに備えており、
前記動作規制手段は、前記フラッパの前記上限位置として、通常燃焼用とされる第1の上限位置、およびこの第1の上限位置よりも前記フラッパの開度が小さく、燃料点火用とされる第2の上限位置のうち、一方を選択的に切り替え設定可能であることを特徴とする、予混合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の予混合装置であって、
前記第1および第2の上限位置のうち、少なくとも前記第2の上限位置は、変更可能とされている、予混合装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の予混合装置であって、
前記動作規制手段は、前記フラッパに当接させるための当接部材と、この当接部材を移動させることが可能なアクチュエータと、を備えており、
前記フラッパの上限位置が、前記第2の上限位置に設定される構成は、前記フラッパが前記第2の上限位置にあるときに前記フラッパのそれ以上の回転が阻止されるように、前記フラッパに前記当接部材が当接可能とされた構成であり、
前記フラッパの上限位置が、前記第1の上限位置に設定される構成は、前記フラッパが前記第1の上限位置にあるときに前記フラッパのそれ以上の回転が阻止されるように、前記フラッパに前記当接部材または前記当接部材とは別の部材が当接可能とされた構成である、予混合装置。
【請求項4】
請求項3に記載の予混合装置であって、
前記アクチュエータは、前記当接部材を前記フラッパと対向する方向に往復動自在であり、かつこの往復動ストロークの範囲内において、前記当接部材を所望の位置に固定配置させることが可能である、予混合装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の予混合装置であって、
前記ガス流出口として、前記気体流通路の中心を挟んで互いに反対側の領域に位置するようにして前記気体流通路の内周壁に設けられた第1および第2のガス流出口を備えており、
前記フラッパは、前記第1のガス流出口への対向接近および離反が可能に設けられている一方、前記当接部材は、前記第2のガス流出口を全閉しないように前記第2のガス流出口に挿通され、かつ前記当接部材の一端部は、前記フラッパに当接可能であるとともに、前記当接部材の他端部は、前記気体流通路の外部に設けられた前記アクチュエータに支持されている、予混合装置。
【請求項6】
ファンと、
このファンの吸気側に設けられ、かつ空気と燃料ガスとを混合させてから前記ファンに送り込む予混合装置と、
前記ファンから前記空気と前記燃料ガスとの混合気の供給を受けて前記燃料ガスを燃焼させるバーナと、
を備えている、燃焼装置であって、
前記予混合装置として、請求項1ないし5のいずれかに記載の予混合装置が用いられていることを特徴とする、燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予混合装置およびこれを備えた燃焼装置に関する。
ここで、「予混合」とは、予混合燃焼(Premixing combustion)を行なうことを目的として、空気と燃料ガスとを予め混合させ、可燃混合ガスを生成する処理である。
【背景技術】
【0002】
予混合装置の具体例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載された予混合装置は、一端側が外部に開口し、かつ他端側がファンの吸気側に接続され、ファンが駆動された際に、外部の空気を前記一端側の開口部から流入させて所定方向に流れさせるベンチュリ状の気体流通路を備えている。この気体流通路は、第1および第2の流通路に二分され、かつこれら第1および第2の流通路のそれぞれの内周壁面には、ガス流出口が個別に設けられている。また、一方の第1の流通路には、フラッパが設けられている。このフラッパは、空気の流れ方向と交差する方向に延びる軸線周りに回転可能であって、気体流通路における空気流量が少ない場合には、空気流量が多い場合よりも開度が小さくなる(フラッパが設けられた箇所の流路面積が小さくなる)ように、空気流量に対応して開度が変化する。
【0003】
このような予混合装置においては、気体流通路に空気が流れ、ガス流出口の近傍に負圧が発生することにより、ガス流出口から気体流通路に燃料ガスが流出し、空気と混合される。一方、フラッパは、空気流量が少ない場合には、第1の流通路を閉じるため、第2の流通路の流速は速くなり、この第2の流通路に位置するガス流出口に作用する負圧は強められる。その結果、空気流量が少ない場合においても、前記ガス流出口からは前記負圧によって適当量の燃料ガスを流出させることができ、ターンダウン比を高くすることが可能である。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0005】
すなわち、予混合装置により生成された混合気を、燃焼装置のバーナに送り込んで点火させる場合、気温、湿度、気圧、点火装置への供給電圧、混合気中の燃料ガス成分などの種々の条件如何では、点火に必要なエネルギが大きくなってしまい、点火性能が悪化する場合がある。したがって、このような不具合を適切に解消することが望まれる。
【0006】
前記した不具合を解消するための手段としては、点火装置の放電エネルギを大きくすることが考えられる。ただし、これでは点火装置の大型化や高コスト化を招き、適切ではない。
また、他の手段としては、たとえば特許文献2に記載されているように、モータにより回転可能なバタフライ弁を気体流通路に設け、点火時には、バタフライ弁の弁開度を小さくすることが考えられる。ただし、これでは、通常の燃焼時において、バタフライ弁を空気流量に対応させて迅速に回転させることは困難であるため、特許文献1のフラッパを用いたものと比較すると、応答性が劣り、混合気を適切な空燃比に維持する性能も劣るものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第9677759号公報
【特許文献2】特許第6831285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、フラッパの応答性がよく、混合気を適切な空燃比に維持する性能に優れたものにするとともに、点火性能も優れたものにすることが可能な予混合装置、およびこれを備えた燃焼装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明の第1の側面により提供される予混合装置は、所定方向に空気を流れさせるための気体流通路と、この気体流通路に発生する負圧を利用して、前記気体流通路に燃料ガスを流出可能とする少なくとも1つのガス流出口と、前記気体流通路内に配されて、前記空気の流れ方向とは交差する方向に延びる軸線周りに回転可能であり、かつ前記気体流通路の空気流量が少ない場合には多い場合よりも開度が小さくなるように、前記空気流量に対応して開度が変化するフラッパと、を備えている、予混合装置であって、前記フラッパが所定の上限位置を超えて開方向に回転することを阻止しつつ、前記上限位置以下の範囲においては、前記空気流量に対応して前記フラッパの開度が変化することを許容するフラッパ用の動作規制手段を、さらに備えており、前記動作規制手段は、前記フラッパの前記上限位置として、通常燃焼用とされる第1の上限位置、およびこの第1の上限位置よりも前記フラッパの開度が小さく、燃料点火用とされる第2の上限位置のうち、一方を選択的に切り替え設定可能であることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、本発明に係る予混合装置を、バーナを備えた燃焼装置の構成要素として用いる場合において、燃焼装置の通常の燃焼時には、フラッパ用の動作規制手段を利用し、フラッパの上限位置として、前記第1の上限位置を設定する。フラッパ用の動作規制手段は、フラッパの上限位置については規制するものの、それ以下の範囲において、フラッパが空気流量に対応して回転することを阻害しない。このため、気体流通路における空気流量の変化に対するフラッパの動作の応答性を優れたものとし、混合気を適切な空燃比に維持する性能に優れたものにすることができる。また、高いターンダウン比を得ることもできる。
一方、前記燃焼装置において、燃料点火を行なうときには、フラッパの上限位置として、前記第2の上限位置を設定する。この第2の上限位置を設定すると、前記した第1の上限位置の設定時よりも前記フラッパの最大開度が小さくなり、混合気の空燃比を燃料リッチにすることが可能となるため、点火性能を向上させることができる。
このように、本発明によれば、フラッパの応答性を良好なものにしつつ、点火性能の向上を適切に図ることが可能である。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記第1および第2の上限位置のうち、少なくとも前記第2の上限位置は、変更可能とされている。
【0013】
このような構成によれば、前記第1および第2の上限位置のうち、少なくとも第2の上限位置を変更することができるため、混合気の空燃比の最適化、とくに点火性能がよくなるように混合気の空燃比を最適化することが可能であり、一層好ましいものとなる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記動作規制手段は、前記フラッパに当接させるための当接部材と、この当接部材を移動させることが可能なアクチュエータと、を備えており、前記フラッパの上限位置が、前記第2の上限位置に設定される構成は、前記フラッパが前
記第2の上限位置にあるときに前記フラッパのそれ以上の回転が阻止されるように、前記フラッパに前記当接部材が当接可能とされた構成であり、前記フラッパの上限位置が、前記第1の上限位置に設定される構成は、前記フラッパが前記第1の上限位置にあるときに前記フラッパのそれ以上の回転が阻止されるように、前記フラッパに前記当接部材または前記当接部材とは別の部材が当接可能とされた構成である。
ここで、前記「別の部材」としては、たとえば気体流通路を形成する部材などが該当する(例、後述する実施形態の仕切り壁部32など)。
【0015】
このような構成によれば、フラッパの第1および第2の上限位置のそれぞれの設定を容易かつ適切に行なうことが可能である。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記アクチュエータは、前記当接部材を前記フラッパと対向する方向に往復動自在であり、かつこの往復動ストロークの範囲内において、前記当接部材を所望の位置に固定配置させることが可能である。
【0017】
このような構成によれば、アクチュエータを駆動させて、当接部材の固定配置箇所を変更することにより、フラッパの第1および第2の上限位置のそれぞれを所望の位置へ容易に変更することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記ガス流出口として、前記気体流通路の中心を挟んで互いに反対側の領域に位置するようにして前記気体流通路の内周壁に設けられた第1および第2のガス流出口を備えており、前記フラッパは、前記第1のガス流出口への対向接近および離反が可能に設けられている一方、前記当接部材は、前記第2のガス流出口を全閉しないように前記第2のガス流出口に挿通され、かつ前記当接部材の一端部は、前記フラッパに当接可能であるとともに、前記当接部材の他端部は、前記気体流通路の外部に設けられた前記アクチュエータに支持されている。
【0019】
このような構成によれば、フラッパ用の動作規制手段を構成する当接部材を、第2のガス流出口を利用し、簡易に、かつフラッパの動作規制を適切に図る上で好ましい位置に設けることができる。また、フラッパ用の動作規制手段を構成するアクチュエータも、気体流通路の外部に簡易に設けることが可能となる。
【0020】
本発明の第2の側面により提供される燃焼装置は、ファンと、このファンの吸気側に設けられ、かつ空気と燃料ガスとを混合させてから前記ファンに送り込む予混合装置と、前記ファンから前記空気と前記燃料ガスとの混合気の供給を受けて前記燃料ガスを燃焼させるバーナと、を備えている、燃焼装置であって、前記予混合装置として、本発明の第1の側面により提供される予混合装置が用いられていることを特徴としている。
【0021】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される予混合装置について述べたのと同様な効果が得られる。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る予混合装置を備えた燃焼装置の一例を示す概略説明図である。
【
図3】(a)は、
図1および
図2の予混合装置の断面図であり、(b)は、(a)のIIIb-IIIb断面図である。
【
図4】
図3に示した予混合装置の当接部材を位置変更した状態の一例を示す断面図である。
【
図5】
図1~
図4に示した予混合装置に用いられているフラッパの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1は、予混合装置A、この予混合装置Aにファン1およびバーナ2を組み合わせて構成された燃焼装置B(予混合燃焼装置)、およびこの燃焼装置Bに1次熱交換器11aならびに2次熱交換器11bを組み合わせて構成された温水装置WHを示している。
【0026】
予混合装置Aの詳細については、後述するが、この予混合装置Aを利用して空気と燃料ガスとの混合ガス(可燃混合ガス)が生成され、かつこの混合ガスが、ファン1を経由してバーナ2に供給される。バーナ2は、複数の通気孔20を有する多孔状プレート21を具備する構成であって、ケース10内に収容されている。バーナ2には、不図示の点火用プラグや炎検知センサなどが付属して設けられている。前記混合ガスは、複数の通気孔20を通過し、多孔状プレート21の下方において燃焼する。バーナ2により発生される燃焼ガスは、顕熱回収用の1次熱交換器11a、および潜熱回収用の2次熱交換器11bに順次作用し、これら1次熱交換器11aおよび2次熱交換器11bの内部を通過する湯水は加熱される。このことにより温水が生成され、この温水は所望の給湯先に供給される。
【0027】
温水装置WHは、マイクロコンピュータなどを用いて構成された制御部13を備えているが、この制御部13は、後述するように、予混合装置Aのアクチュエータ7の動作制御も実行する。
【0028】
図2および
図3によく表れているように、予混合装置Aは、装置本体部A0、この装置本体部A0に組み付けられたフラッパ5、このフラッパ5に当接させて動作規制を図るための当接部材6、およびこの当接部材6を移動させるためのアクチュエータ7を備えている。
当接部材6およびアクチュエータ7の組み合わせは、本発明でいうフラッパ用の動作規制手段の一例に相当している。
【0029】
装置本体部A0は、内部にベンチュリ状の気体流通路30を形成し、かつこの気体流通路30の内周壁に第1および第2のガス流出口31a,31bが設けられた筒状の気体流通路形成部3と、その外周囲を囲むハウジング部4とが組み合わされて構成されている。
【0030】
ハウジング部4は、フランジ部40や燃料ガス供給口41を有している。燃料ガス供給口41には、ガス管などの燃料ガス供給部から均圧弁(ゼロガバナ)V1を経由して燃料ガスが供給される(
図1を参照)。気体流通路30とハウジング部4との相互間には、燃料ガス供給口41に供給された燃料ガスを、第1および第2のガス流出口31a,31bに導くことが可能な流路として機能する空間部48が形成されている。
【0031】
装置本体部A0は、フランジ部40を利用してファン1の吸気側に直接接続され、または配管接続されている。ファン1が駆動されると、気体流通路30には、その一端側開口部から外部の空気が流入し、他端側開口部に向けて流れる。この空気の流れに起因して発生する負圧作用により、気体流通路30には、第1および第2のガス流出口31a,31bから燃料ガスが流出し、空気と燃料ガスとの混合気が生成され、ファン1に吸気される。
【0032】
気体流通路30の中央部またはその付近には、気体流通路30を第1および第2の流通路30a,30bに仕切る仕切り壁部32が設けられている。第1および第2のガス流出
口31a,31bは、それら第1および第2の流通路30a,30bに個別に対面するように、気体流通路30の中心を挟んで互いに反対側の領域に位置している。
【0033】
フラッパ5は、気体流通路30における空気流量に対応して回転し、気体流通路30を塞ぐ面積を変化させるための部材である。より具体的には、このフラッパ5は、
図5に示すように、略半円板状のフラッパ本体部50、その先端部から上向きに延設された延設部51、および回転支持用の基端部52を有している。基端部52は、仕切り壁部32の下側に位置するように設けられた軸部9に支持されており、フラッパ5は、気体流通路形成部3における空気の流れ方向とは交差する方向に延びる軸線CL(軸部9の中心軸に相当、
図5も参照)周りに回転可能である。
【0034】
フラッパ5は、その上部寄り領域が第1の流通路30aに位置しており、気体流通路30における空気流量が、所定流量よりも少ない場合には、第1の流通路30および第1のガス流出口31aのそれぞれを塞ぐ閉状態となる。これに対し、前記空気流量が前記所定流量以上である場合には、フラッパ5は、第1のガス流出口31aから離間する方向に回転した開状態となる。ただし、その回転の上限位置としては、後述するように、第1および第2の上限位置P1,P2のいずれかに切り替え設定可能とされている。
【0035】
当接部材6は、たとえば軸状であり、第2のガス流出口31b、および仕切り壁部32に設けられた孔部33に挿通され、かつその先端部(一端部)側は、フラッパ5に当接可能な配置である。当接部材6の基端部(他端部)側は、アクチュエータ7に支持されている。第2のガス流出口31bは、当接部材6が挿通されていることによって全閉状態になったり、あるいは開口サイズが不足するようなことが回避されるように、第1のガス流出口31aよりも大きな開口サイズである。フラッパ本体部50と延設部51との境界部近辺は、側面視において、当接部材6とは反対側に窪むように屈曲している。この屈曲部分に対し、当接部材6の先端部が安定した状態で当接可能となっている。
【0036】
アクチュエータ7は、当接部材6をフラッパ5と対向する方向(水平方向)に往復動自在とし、たとえば直動型のステッピングモータであって、装置本体部A0の外面部にネジ部材98などを利用して組み付けられている。また、アクチュエータ7は、当接部材6の往復動ストロークの範囲内において、当接部材6を所望の位置に固定配置させることが可能である。
当接部材6は、フラッパ5が当接部材6に当接する位置をフラッパ5の回転の上限位置とし、この上限位置を超えて大きな開度で回転することを阻止する。ただし、フラッパ5がそれ以下の開度に回転することは許容する。
【0037】
制御部13は、温水装置WHの各部の動作制御や各種のデータ処理を実行するが、アクチュエータ7を制御して、当接部材6の固定位置を変更することにより、フラッパ5の回転の上限位置として、第1および第2の上限位置P1,P2の一方を選択的に切り替え設定する。
ここで、第1の上限位置P1は、燃焼装置Bの通常燃焼用の位置であり、たとえば
図4に示すように、当接部材6の先端部と気体流通路30の内壁面との距離L1が比較的大きいことにより、フラッパ5が仕切り壁部32にかなり接近し、または当接する位置である。なお、第1の上限位置P1の設定に際し、フラッパ5に当接部材6の先端部を当接させてフラッパ5の位置を規制してもよいが、これに代えて、たとえばフラッパ5を仕切り壁部32に当接させることにより、それ以上の回転を阻止し、かつ当接部材6の先端部については、フラッパ5から離間する配置としてもよい。
第2の上限位置P2は、燃料点火用の位置であり、たとえば
図3(a)に示すように、当接部材6の先端部と気体流通路30の内壁面との距離L2は、前記距離L1よりも短くされていることにより、フラッパ5の最大開度は、第1の上限位置P1の場合よりも小さ
く、フラッパ5が第1のガス流出口31aに接近する位置である。
【0038】
フラッパ5の上限位置は、第1および第2の上限位置P1,P2のいずれか一方に選択的に切り替え設定されるが、この切り替え設定は、燃焼装置Bの動作モードに対応して制御部13の制御により実行される。具体的には、燃焼装置Bのバーナ2において、燃料の点火を行なわせるときには、
図3(a)に示すフラッパ5の第2の上限位置P2が設定される。点火後の通常の燃焼時には、
図4に示すフラッパ5の第1の上限位置P1が設定される。
【0039】
アクチュエータ7は、当接部材6の往復動ストロークの範囲内において、当接部材6を所望の位置に固定配置させることができ、その配置を変更可能である。したがって、フラッパ5の前記した第1および第2の上限位置P1,P2は、いずれも適宜に変更することが可能である。この変更は、たとえば燃焼装置B(温水装置WH)に具備されている不図示のリモコン、あるいは別途設けられた操作部などを操作して行なうことが可能とされている。
【0040】
次に、前記した予混合装置A、および燃焼装置Bの作用について説明する。
【0041】
先ず、燃焼装置Bのバーナ2において、燃料点火を行なうときには、予混合装置Aは、制御部13の制御により、
図3(a)に示したように、フラッパ5の上限位置が第2の上限位置P2である状態に設定される。この状態においては、フラッパ5の開度が小さく抑えられているため、第1のガス流出口31a付近を流れる空気の流速は速められ、第1のガス流出口31aに作用する負圧が強められる。気体流通路30における空気流量が多い場合、本来ならば、フラッパ5は、
図4に示すように大きく回転するものの、燃料点火時においては、そのような回転は当接部材6によって阻止され、前記した
図3(a)の状態が設定される。したがって、第1のガス流出口31aから気体流通路30への燃料ガスの流出量を多めにし、空気と燃料ガスとの混合気としては、空燃比が燃料リッチであって、点火エネルギの小さいものとすることができる。このことにより、点火性能が良くなる。
【0042】
燃料点火が完了し、バーナ2が通常の燃焼モードになると、予混合装置Aは、制御部13の制御により、
図4に示したように、フラッパ5の上限位置が第1の上限位置P1である状態に設定される。この状態においては、フラッパ5の開度を、燃料点火時よりも大きくすることができるため、混合気の空燃比が燃料リッチになることを回避し、バーナ2の通常の燃焼モードに適した空燃比の混合気を得ることが可能となる。一方、フラッパ5の上限位置は当接部材6によって第1の上限位置P1に規制されているものの、フラッパ5がそれ以下の角度に回転することは、当接部材6によって阻害されていない。このため、フラッパ5は応答性に優れており、気体流通路30における空気流量が所定流量よりも少なくなったときには、フラッパ5は、第1の流通路30aおよび第1のガス流出口31aを塞ぐように、迅速に回転する。このことにより、第2の流通路30bにおける空気の流速は速くなり、第2のガス流出口31bから第2の流通路30bへの適当量の燃料ガス流出を適切に継続させることができる。
【0043】
このように、本実施形態によれば、フラッパ5の動作の応答性を優れたものとし、バーナ2の通常燃焼時において、混合気を適切な空燃比に維持する性能に優れたものにすることが可能である。高いターンダウン比を得る上においても、適したものとなる。
なお、気体流通路30における空気流量が所定流量よりも少なくなった際に、フラッパ5が第1の流通路30aおよび第1のガス流出口31aを迅速に塞ぐ動作は、
図3(a)に示した設定状態、すなわちフラッパ5の上限位置を第2の上限位置P2に設定した場合においても、同様に生じさせることができる。
【0044】
本実施形態においては、既述したように、フラッパ5の第1および第2の上限位置P1,P2のそれぞれを、適宜に変更可能とされている。このため、たとえばファン1の出力や、燃料ガスの種類など、予混合装置Aの具体的な使用条件を考慮し、第1および第2の上限位置P1,P2を、最適な位置に調整することができる利点が得られる。
【0045】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る予混合装置、および燃焼装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0046】
上述の実施形態におけるフラッパ5は、第1の流通路30aの空気流量が所定流量以上であるか否かによって、開状態と閉状態とのいずれか一方に切り替わるものとされているが、本発明はこれに限定されない。本発明においては、たとえば第1の流通路30aの空気流量が少なくなるほど、フラッパ5の開度が徐々に小さくなるように、フラッパ5の開度が空気流量に対応して無段階あるいは多段階に変化する構成であってもよい。
また、上述の実施形態においては、気体流通路30を第1および第2の流通路30a,30bに分けた上で、第1の流通路30aにフラッパ5を配置させているが、本発明はこれに限定されない。気体流通路30を複数の流通路に区分することなく、フラッパ5が設けられた構成とすることも可能である。
【0047】
上述の実施形態においては、フラッパ用の動作規制手段が、軸状の当接部材と、これを往復動させるアクチュエータとを組み合わせた構成とされているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、当接部材6としては、軸状以外の部材を用いることができる。また、アクチュエータとしては、直動型のステッピングモータ以外の機器を用いることもできる。
【0048】
本発明におけるフラッパの第1および第2の上限位置は、予混合装置の使用条件などに対応して適宜選択可能、あるいは変更可能であり、その具体的な位置は限定されない。
気体流通路は、ベンチュリ状であることが好ましいが、これに限定されない。ガス流出口は、必ずしも複数設けられていなくてもよく、少なくとも1つ設けられていればよい。フラッパの具体的な形状、材質、サイズなども限定されない。
【0049】
燃料ガスは、たとえばナチュラルガスあるいはLPガスであるが、その具体的な種類は問わない。本発明に係る燃焼装置は、温水装置用に限定されず、たとえば暖房用や焼却用などの他の用途の燃焼装置とすることもできる。また、燃焼ガスを下向きに進行させるタイプに限らず、燃焼ガスをたとえば上向きに進行させるタイプとすることもできる。
【符号の説明】
【0050】
A 予混合装置
A0 装置本体部
B 燃焼装置
CL 軸線
P1,P2 第1および第2の上限位置
1 ファン
2 バーナ
3 気体流通路形成部
30 気体流通路
31a,31b 第1および第2のガス流出口
4 ハウジング部
5 フラッパ
6 当接部材
7 アクチュエータ