(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048298
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】嵩上げユニット、嵩上げ構造体、及び嵩上げユニットの設置方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/10 20060101AFI20230331BHJP
E02B 3/14 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
E02B3/10
E02B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157520
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】506140033
【氏名又は名称】株式会社日本ランテック
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 辰也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 素晴
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA20
2D118BA02
2D118BA07
2D118CA07
2D118FA01
2D118FB11
2D118HA03
2D118HA10
2D118HA12
2D118HA48
2D118HB09
(57)【要約】
【課題】低コストで製造及び設置することができ且つ軽量である嵩上げユニットを提供する。
【解決手段】上面と該上面から水域側に傾斜する傾斜面を有する堤防を嵩上げする嵩上げユニットは、中空板状の基部、及び前記基部から直立する中空板状の壁部を有する断面L字状且つ樹脂製の中空ブロックと、壁板、前記壁板に対して傾斜した基礎板であって前記壁板の下端部から前記壁板の一面側の下方へと延びる基礎板、及び前記壁板と前記基礎板との接続部に沿って前記壁板の他面側に突出する畝状の封止部を有するブラケットと、前記中空ブロックの基部を前記堤防の上面に固定するためのアンカーを備える。前記嵩上げユニットが前記堤防に設置されるときに、前記中空ブロックの前記壁部が前記堤防の水域側に向けられ、前記ブラケットの前記壁板が前記中空ブロックの前記壁部に当接され、前記ブラケットの前記基礎板が前記堤防の傾斜面に当接され、且つ前記ブラケットの前記封止部が前記中空ブロックと前記堤防との間に位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と該上面から水域側に傾斜する傾斜面を有する堤防を嵩上げする嵩上げユニットであって、
中空板状の基部、及び前記基部から直立する中空板状の壁部を有する断面L字状且つ樹脂製の中空ブロックと、
壁板、前記壁板に対して傾斜した基礎板であって前記壁板の下端部から前記壁板の一面側の下方へと延びる基礎板、及び前記壁板と前記基礎板との接続部に沿って前記壁板の他面側に突出する畝状の封止部を有するブラケットと、
前記中空ブロックの基部を前記堤防の上面に固定するためのアンカーを備え、
前記嵩上げユニットが前記堤防に設置されるときに、前記中空ブロックの前記壁部が前記堤防の水域側に向けられ、前記ブラケットの前記壁板が前記中空ブロックの前記壁部に当接され、前記ブラケットの前記基礎板が前記堤防の傾斜面に当接され、且つ前記ブラケットの前記封止部が前記中空ブロックと前記堤防との間に位置する嵩上げユニット。
【請求項2】
前記中空ブロックは、前記基部と前記壁部との接続部に沿った方向の一端側に設けられた第1接続部と、該方向の他端側に設けられた第2接続部とを備え、
第1接続部は前記壁部の厚さ方向と直交する第1面を有し、
第2接続部は前記壁部の厚さ方向と直交する第2面であって、前記中空ブロックに隣接して設置された他の中空ブロックの第1接続部の第1面に当接するように構成された第2面を有する請求項1に記載の嵩上げユニット。
【請求項3】
前記中空ブロックは、前記中空ブロックのくびれにより形成されるリブを有する請求項1又は2に記載の嵩上げユニット。
【請求項4】
前記ブラケットの前記壁板の高さが、前記中空ブロックの前記壁部の高さの1/3以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の嵩上げユニット。
【請求項5】
前記中空ブロックに、前記中空ブロックの内部に重りを注入するための開口部が設けられた請求項1~4のいずれか一項に記載の嵩上げユニット。
【請求項6】
前記中空ブロックに、前記重りを入れる際に前記中空ブロックの内部の気体を排出する排出口が設けられた請求項5に記載の嵩上げユニット。
【請求項7】
前記ブラケットは、前記基礎板と前記壁板との接続部に沿った方向の一端側に設けられた第1接続部と、該方向の他端側に設けられた第2接続部とを備え、
第1接続部は前記壁板の厚さ方向と直交する第1面を有し、
第2接続部は前記壁板の厚さ方向と直交する第2面であって、前記ブラケットに隣接して設置された他のブラケットの第1接続部の第1面に当接するように構成された第2面を有する請求項1~6のいずれか一項に記載の嵩上げユニット。
【請求項8】
前記アンカーは、地中に打ち込まれるアンカー部と、前記アンカー部に枢動可能に連結されたロッド部とを有する枢動アンカーである請求項1~7のいずれか一項に記載の嵩上げユニット。
【請求項9】
前記中空ブロックの前記基部の上に設置される路面形成板を更に備える請求項1~8のいずれか一項に記載の嵩上げユニット。
【請求項10】
前記堤防の延在方向に連なって設置された複数の嵩上げユニットを含む嵩上げ構造体であって、
前記複数の嵩上げユニットの各々が請求項1~9のいずれか一項に記載の嵩上げユニットである嵩上げ構造体。
【請求項11】
前記複数の嵩上げユニットの少なくとも1つの前記中空ブロックが、前記堤防の延在方向に沿って湾曲している請求項10に記載の嵩上げ構造体。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の嵩上げユニットを前記堤防に設置する方法であって、
前記アンカーを用いて前記中空ブロックを前記堤防に固定することと、
前記中空ブロックの内部に重りを注入することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵩上げユニット、嵩上げ構造体、及び嵩上げユニットの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の水害の多発に伴い、河川等に設けられた堤防を嵩上げすることが望まれている。堤防を嵩上げする方法の一例として、特許文献1には、既設の堤防の天端位置に、プレキャストコンクリート製の堤防嵩上げ用構造物を、堤防の延長方向に沿って連続的に配設することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された嵩上げ方法は、嵩上げ用構造物の製造及び設置に多くの費用を要する。また、嵩上げ用構造物の重量が大きいため、堤防の下の土壌が堅固ではない場合は、嵩上げ構造体の重みで堤防に沈みが生じ、十分な嵩上げがなされないおそれもある。
【0005】
本発明は、低コストで製造及び設置することができ且つ軽量である嵩上げユニット、嵩上げ構造体、及び当該嵩上げユニットの設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、
上面と該上面から水域側に傾斜する傾斜面を有する堤防を嵩上げする嵩上げユニットであって、
中空板状の基部、及び前記基部から直立する中空板状の壁部を有する断面L字状且つ樹脂製の中空ブロックと、
壁板、前記壁板に対して傾斜した基礎板であって前記壁板の下端部から前記壁板の一面側の下方へと延びる基礎板、及び前記壁板と前記基礎板との接続部に沿って前記壁板の他面側に突出する畝状の封止部を有するブラケットと、
前記中空ブロックの基部を前記堤防の上面に固定するためのアンカーを備え、
前記嵩上げユニットが前記堤防に設置されるときに、前記中空ブロックの前記壁部が前記堤防の水域側に向けられ、前記ブラケットの前記壁板が前記中空ブロックの前記壁部に当接され、前記ブラケットの前記基礎板が前記堤防の傾斜面に当接され、且つ前記ブラケットの前記封止部が前記中空ブロックと前記堤防との間に位置する嵩上げユニットが提供される。
【0007】
第1の態様の嵩上げユニットにおいて、前記中空ブロックは、前記基部と前記壁部との接続部に沿った方向の一端側に設けられた第1接続部と、該方向の他端側に設けられた第2接続部とを備えてもよい。第1接続部は前記壁部の厚さ方向と直交する第1面を有してもよく、第2接続部は前記壁部の厚さ方向と直交する第2面であって、前記中空ブロックに隣接して設置された他の中空ブロックの第1接続部の第1面に当接するように構成された第2面を有してもよい。
【0008】
第1の態様の嵩上げユニットにおいて、前記中空ブロックは、前記中空ブロックのくびれにより形成されるリブを有してもよい。
【0009】
第1の態様の嵩上げユニットにおいて、前記ブラケットの前記壁板の高さが、前記中空ブロックの前記壁部の高さの1/3以下であってもよい。
【0010】
第1の態様の嵩上げユニットにおいて、前記中空ブロックに、前記中空ブロックの内部に重りを注入するための開口部が設けられてもよい。
【0011】
第1の態様の嵩上げユニットにおいて、前記中空ブロックに、前記重りを入れる際に前記中空ブロックの内部の気体を排出する排出口が設けられてもよい。
【0012】
第1の態様の嵩上げユニットにおいて、前記ブラケットは、前記基礎板と前記壁板との接続部に沿った方向の一端側に設けられた第1接続部と、該方向の他端側に設けられた第2接続部とを備えてもよい。第1接続部は前記壁板の厚さ方向と直交する第1面を有してもよく、第2接続部は前記壁板の厚さ方向と直交する第2面であって、前記ブラケットに隣接して設置された他のブラケットの第1接続部の第1面に当接するように構成された第2面を有してもよい。
【0013】
第1の態様の嵩上げユニットにおいて、前記アンカーは、地中に打ち込まれるアンカー部と、前記アンカー部に枢動可能に連結されたロッド部とを有する枢動アンカーであってもよい。
【0014】
第1の態様の嵩上げユニットは、前記中空ブロックの前記基部の上に設置される路面形成板を更に備えてもよい。
【0015】
本発明の第2の態様に従えば、
前記堤防の延在方向に連なって設置された複数の嵩上げユニットを含む嵩上げ構造体であって、
前記複数の嵩上げユニットの各々が第1の態様の嵩上げユニットである嵩上げ構造体が提供される。
【0016】
本発明の第2の態様において、前記複数の嵩上げユニットの少なくとも1つの前記中空ブロックが、前記堤防の延在方向に沿って湾曲していてもよい。
【0017】
本発明の第3の態様に従えば、
第1の態様の嵩上げユニットを前記堤防に設置する方法であって、
前記アンカーを用いて前記中空ブロックを前記堤防に固定することと、
前記中空ブロックの内部に重りを注入することを含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の嵩上げユニット及び嵩上げ構造体は、低コストで製造及び設置することができ且つ軽量である。本発明の嵩上げユニットの設置方法は、低コストで製造された軽量の嵩上げユニットを低コストで設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、嵩上げユニット及び嵩上げ構造体の概略的な構成を示す側面図である。
【
図2】
図2は、ブロックを後方から見た斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、
図3のIVa-IVa線に沿った断面図であり、ブロックの左側の連結部における断面図に相当する。
図4(b)は
図3のIVb-IVb線に沿った断面図であり、ブロックの本体部における断面図に相当する。
図4(c)は
図3のIVc-IVc線に沿った断面図であり、ブロックの本体部のリブ部における断面図に相当する。
図4(d)は
図3のIVd-IVd線に沿った断面図であり、ブロックの右側の連結部における断面図に相当する。
【
図5】
図5は、ブラケットを後方から見た斜視図である。
【
図6】
図6(a)~
図6(c)は、ブラケットを幅方向と直交する面により切断した断面図である。
図6(a)は、幅方向の左端部近傍の、第1連結凹部が存在する領域の断面図である。
図6(b)は、幅方向の中央部における断面図である。
図6(c)は、幅方向の右端部近傍の、第2連結凹部が存在する領域の断面図である。
【
図7】
図7は、主アンカー(枢動アンカー)の概略的な構成を示す側面図である。
【
図8】
図8(a)~
図8(d)は、堤防に嵩上げユニットを設置して嵩上げ構造体を形成する工程を示す側面図である。
図8(a)は堤防の上面に凹部を形成した状態を、
図8(b)は凹部内に主アンカーを打設した状態を、
図8(c)は凹部内にブロックを設置した状態を、
図8(d)はブロックの河川側にブラケットを設置した状態をそれぞれ示す。
【
図9】
図9(a)~
図9(c)は、堤防に嵩上げユニットを設置して嵩上げ構造体を形成する工程を示す平面図である。
図9(a)は凹部内に主アンカーを打設した状態を、
図9(b)は堤防の延在方向に沿ってブロックを連設した状態を、
図9(c)はブロックの河川側に、堤防の延在方向に沿ってブラケットを連設した状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
本発明の実施形態の嵩上げユニット100、及びその設置方法を、嵩上げユニット100を河川の堤防EMに設置して嵩上げ構造体1000を形成する場合を例として説明する。
【0021】
[全体構成]
図1に示す通り、嵩上げユニット100は、堤防EMの上面に配置されるブロック10と、ブロック10の河川側に配置されるブラケット20と、ブロック10を堤防EMに固定する主アンカー31及び副アンカー32と、ブラケット20を堤防EMに固定するブラケットアンカー40と、ブロック10上に配置された路面形成板50とを主に備える。
【0022】
[ブロック10]
ブロック10(
図2~
図4)は、樹脂により一体成形された中空のブロック体である。樹脂は一例として高密度ポリエチレンとし得る。ブロック10は例えば、樹脂のブロー成形により形成し得る。
【0023】
ブロック10は、本体部11と、本体部11の両端部に設けられた連結部12及び連結部13とを有する。本体部11は、中空板状の基部111と、中空板状の壁部112とを主に有する。
【0024】
ブロック10においては、連結部12、13が本体部11を挟む方向を幅方向と呼ぶ。また、幅方向に直交し且つ基部111に沿って延びる方向を前後方向と呼び、幅方向に直交し且つ壁部112に沿って延びる方向を上下方向と呼ぶ。
【0025】
前後方向においては、壁部112が存在する方を前方とし、その反対側を後方とする。上下方向においては、基部111が存在する方を下方とし、その反対側を上方とする。幅方向においては、後方から前方を見た状態における左方、右方をそれぞれ左方、右方とする。
【0026】
[本体部11]
基部111は、天板111a、底板111b、後板111d、左板111e、及び右板111fにより構成される中空板状の部分である。
【0027】
天板111a(
図4(b))は後端部が前端部よりも下方に位置するように傾いた略平板である。天板111aはその前端部近傍に、天板111aが上方に向かって湾曲した湾曲部cv
111を有する。
【0028】
底板111b(
図4(b))は、上下方向と直交する面内に延びる略平板であり、天板111aと上下方向に対向している。底板111bはその前端部近傍に、底板111bが上方に向かって湾曲した湾曲部CV
111を有する。
【0029】
後板111d(
図4(b))は、上後方に凸となるように湾曲して、天板111aの後端部と底板111bの後端部とを繋いでいる。
【0030】
左板111e(
図2、
図3)は幅方向と直交する面内に延びる平板であり、天板111aの左端部、底板111bの左端部、及び後板111dの左端部を繋いでいる。右板111f(
図2、
図3)は幅方向と直交する面内に延びる平板であり、天板111aの右端部、底板111bの右端部、及び後板111dの右端部を繋いでいる。
【0031】
基部111の内部には、天板111a、底板111b、後板111d、左板111e、及び右板111fに囲まれた空間(空洞)H111が画定されている。
【0032】
壁部112は、前板112c、後板112d、左板112e、右板112f、及び天板112aにより構成される中空板状の部分である。
【0033】
前板112c(
図4(b))は前後方向と直交する面内に延びる略平板である。前板112cはその下端部近傍に、前板112が後方に向かって湾曲した湾曲部CV
112を有する。
【0034】
前板112cの湾曲部CV112が、基部111の底板111bの湾曲部CV111に接続されることにより、前板112cと底板111bとが接続されている。前板112cと底板111bとの接続部の近傍には、湾曲部CV112と湾曲部CV111とにより、下前方に凸となるように湾曲した湾曲部CV11が形成されている。
【0035】
後板112d(
図4(b))は、下端部が上端部よりも後方に位置するように傾いた略平板であり、前板112cと前後方向に対向している。後板112dはその下端部近傍に、後板112dが後方に向かって湾曲した湾曲部cv
112を有する。
【0036】
後板112dの湾曲部cv112が、基部111の天板111aの湾曲部cv111に接続されることにより、後板112dと天板111aとが接続されている。後板112dと天板111aとの接続部の近傍には、湾曲部cv112と湾曲部cv111とにより、下前方に凸となるように湾曲した湾曲部cv11が形成されている。
【0037】
天板112a(
図4(b))は、上後方に凸となるように湾曲して、前板112cの上端部と後板112dの上端部とを繋いでいる。
【0038】
左板112e(
図2、
図3)は幅方向と直交する面内に延びる平板であり、前板112cの左端部、後板112dの左端部、及び天板112aの左端部を繋いでいる。左板112eの下端部は、基部111の左板111eの前端部に接続されている。互いに対して面一である左板111eと左板112eとにより、本体部11の左板11eが構成される。
【0039】
右板112f(
図2、
図3)は幅方向と直交する面内に延びる平板であり、前板112cの右端部、後板112dの右端部、及び天板112aの右端部を繋いでいる。右板112fの下端部は、基部111の右板111fの前端部に接続されている。互いに対して面一である右板111fと右板112fとにより、本体部11の右板11fが構成される。
【0040】
壁部112の内部には、天板112a、前板112c、後板112d、左板112e、及び右板112fに囲まれた空間(空洞)H112が画定されている。空間H112は基部111の空間H111と連通している。空間H111と空間H112とにより空間H11が構成される。
【0041】
本体部11には、本体部11のくびれにより形成されたリブRB(
図2、
図3)が、幅方向に等間隔に並んで5つ設けられている。5つのリブRBの各々は、基部111において前後方向に延びる前後リブRB1と、壁部112において上下方向に延びる上下リブRB2とを含む。
【0042】
前後リブRB1は、基部111の天板111aを前後方向に延びる溝状に窪ませて、天板111aを底板111bに当接させた形状を有する(
図4(c))。前後リブRB1において、天板111aは底板111bに溶着していてもよい。上下リブRB2は、壁部112の後板112dを上下方向に延びる溝状に窪ませて、後板112dを前板112cに当接させた形状を有する(
図4(c))。上下リブRB2において、後板112dは前板112cに溶着していてもよい。前後リブRB1の前端が上下リブRB2の下端に接続している。
【0043】
リブRBを有することにより、基部111、及び壁部112ともに、曲げやねじりに対する強度が高くなる。本体部11の内部の空間H
11は、5つのリブRBにより、幅方向に並ぶ6つの空間に分離(区画)されている。本実施形態では、
図4(c)に示すように前後リブRB1の後端部と上下リブRB2の上端部に隙間が存在しているため、幅方向に並ぶ6つの空間は、当該隙間を介して連通している。
【0044】
本体部11の基部111には、注入口IN(
図2)が設けられている。注入口INは、天板111aの湾曲部cv
111の近傍に、幅方向に並んで6つ設けられている。注入口INは、空間H
11を5つのリブRBにより分割して画定される6つの空間の各々について1つずつ設けられている。
【0045】
本体部11の壁部112には、排出口EXが設けられている。排出口EXは、後板112dの上端近傍に、幅方向に並んで6つ設けられている。排出口EXも、空間H11を5つのリブRBにより分割して画定される6つの空間の各々について1つずつ設けられている。
【0046】
[連結部12、13]
連結部12は、本体部11の左端部に設けられている。連結部12は、連結基部121と連結壁部122とを有する。
【0047】
連結基部121(
図4(a))は、上下方向と直交する面内に延びる略平板である。連結基部121はその前端部近傍に、連結基部121が上方に向かって湾曲した湾曲部CV
121を有する。連結基部121の右端部は、基部111の左板111eに接続されている。
【0048】
連結壁部122(
図4(a))は、前後方向と直交する面内に延びる略平板である。連結壁部122はその下端部近傍に、連結壁部122が後方に向かって湾曲した湾曲部CV
122を有する。連結壁部122の右端部は、壁部112の左板112eに接続されている。
【0049】
連結壁部122の湾曲部CV122が、連結基部121の湾曲部CV121に接続されることにより、連結壁部122と連結基部121とが接続されている。連結壁部122と連結基部121との接続部の近傍には、湾曲部CV121と湾曲部CV122とにより、下前方に凸となるように湾曲した湾曲部CV12が形成されている。
【0050】
連結基部121の下面は基部111の底板111bの下面よりも上方に位置し、連結壁部122の前面は壁部112の前板112cの前面よりも後方に位置する。
【0051】
連結部13は、本体部11の右端部に設けられている。連結部13は、連結基部131と連結壁部132(
図4(d))とを有する。
【0052】
連結基部131(
図4(d))は、上下方向と直交する面内に延びる略平板である。連結基部131はその前端部近傍に、連結基部131が上方に向かって湾曲した湾曲部CV
131を有する。連結基部131の左端部は、基部111の右板111fに接続されている。
【0053】
連結壁部132は、前後方向と直交する面内に延びる略平板である。連結壁部132はその下端部近傍に、連結壁部132が後方に向かって湾曲した湾曲部CV132を有する。連結壁部132の左端部は、壁部112の右板112fに接続されている。
【0054】
連結壁部132の湾曲部CV132が、連結基部131の湾曲部CV131に接続されることにより、連結壁部132と連結基部131とが接続されている。連結壁部132と連結基部131との接続部の近傍には、湾曲部CV131と湾曲部CV132とにより、下前方に凸となるように湾曲した湾曲部CV13が形成されている。
【0055】
連結基部131の下面は基部111の底板111bの下面と面一であり、連結壁部132の前面は壁部112の前板112cの前面と面一である。また湾曲部CV13の下前側の面は、本体部11の湾曲部CV11の下前側の面と面一である。
【0056】
[貫通孔TH1、TH2、TH3]
その他、ブロック10には、主アンカー31によるブロック10の堤防EMへの固定を行うための貫通孔TH1、副アンカー32によるブロック10の堤防EMへの固定を行うための貫通孔TH2、及びブロック10とブラケット20との接続を行うための貫通孔TH3が、それぞれ3つずつ設けられている。
【0057】
貫通孔TH1は、連結部12の連結基部121の湾曲部CV121の近傍と、連結部13の連結基部131の湾曲部CV131の近傍と、幅方向の中央部に位置するリブRBの前後リブRB1の前端近傍に設けられている。貫通孔TH1は、ブロック10の前後方向の中央部(及び/又は底板111bの前後方向の中央部)よりも前側に設けられている。
【0058】
貫通孔TH2は、連結部12の連結基部121の後端の近傍と、連結部13の連結基部131の後端の近傍と、幅方向の中央部に位置するリブRBの前後リブRB1の後端近傍に設けられている。
【0059】
貫通孔TH3は、連結部12の連結壁部122の湾曲部CV122の近傍と、連結部13の連結壁部132の湾曲部CV132の近傍と、幅方向の中央部に位置するリブRBの上下リブRB2の下端近傍に設けられている。
【0060】
[寸法等]
上記の構成を有するブロック10の本体部11において、壁部112の前板112cと基部111の底板111bとは直交しており、壁部112は基部111から直立している。ブロック10は幅方向に見てL字状である。
【0061】
壁部112の高さ(基部111の底板111bの下面から壁部112の前板112cの上端部までの高さ)は、一例として300mm~700mm程度とし得る。基部111の長さ(壁部112の前板112cの前面から基部111の底板111bの後端部までの長さ)は、一例として300mm~700mm程度とし得る。壁部112の高さと基部111の長さは同一であってもよい。
【0062】
本体部11の幅方向の長さは一例として1000mm~2000mm程度とし得る。連結部12、13の幅方向の長さは一例として50mm~200mm程度とし得る。
【0063】
[ブラケット20]
ブラケット20(
図5、
図6)は、樹脂により一体成形された中空体である。樹脂は一例として高密度ポリエチレンとし得る。ブラケット20は例えば、樹脂のブロー成形により形成し得る。
【0064】
ブラケット20は、基礎板部21と、壁板部22と、畝状の封止部23とを主に有する。
【0065】
ブラケット20においては、封止部23が延びる方向を幅方向と呼ぶ。また、幅方向に直交し且つ壁板部22に沿って延びる方向を上下方向と呼び、幅方向及び上下方向に直交する方向を前後方向と呼ぶ。
【0066】
前後方向においては、壁板部22に対して基礎板部21が存在する方を前方とし、その反対側を後方とする。上下方向においては、基礎板部21に対して壁板部22が存在する方を上方とし、その反対側を下方とする。幅方向においては、後方から前方を見た状態における左方、右方をそれぞれ左方、右方とする。
【0067】
基礎板部21は、幅方向を長手方向とする中空の矩形板であり、上面21aと下面21bを有する。基礎板部21は、前端部が後端部よりも下方に位置するように傾いている。基礎板部21の下面21bは平坦面である。
【0068】
壁板部22は、幅方向を長手方向とする矩形板であり、前面22cと後面22dを有する。壁板部22の後面22dは平坦面である。壁板部22の下端部が基礎板部21の後端部(上端部)に接続されている。
【0069】
基礎板部21の上面21aと壁板部22の前面22cとにより、ブラケット20の前面20cが形成されている。前面20cは、下後方に向けて凸となるように湾曲した湾曲面である。
【0070】
封止部23は、基礎板部21と壁板部22との接続部から後方に突出し且つ幅方向に延びる畝状の部分である。
【0071】
封止部23の上面23aは、壁板部22の後面22dの下端部から下後方へと延びる湾曲面である。上面23aは下前方へ凸となるように湾曲している。
【0072】
封止部23の下面23bは、基礎板部21の下面21bの上端部から上後方へと延びる湾曲面である。下面23bは上前方へ凸となるように湾曲している。
【0073】
封止部23の後面23dは、前後方向に直交する面内に延びる平坦面である。後面23dは上面23aと下面23bとを繋ぐ。
【0074】
ブラケット20の左端部には、第1連結凹部CR1が設けられている。第1連結凹部CR1においては、封止部23が存在せず、且つ基礎板部21の下面21bと壁板部22の後面22dとが窪んでいる(
図6(a))。
【0075】
ブラケット20の右端部には、第2連結凹部CR2が設けられている。第2連結凹部CR2においては、ブラケット20の前面20cが窪んでいる(
図6(c))。
【0076】
その他、ブラケット20には、ブラケットアンカー40によるブラケット20の堤防EMへの固定を行うための貫通孔TH4、及びブロック10とブラケット20との接続を行うための貫通孔TH5が、それぞれ2つずつ設けられている。
【0077】
貫通孔TH4は、第1連結凹部CR1、第2連結凹部CR2のそれぞれの内部において、基礎板部21の前端近傍に設けられている。貫通孔TH5は、第1連結凹部CR1、第2連結凹部CR2のそれぞれの内部において、壁板部22の上端近傍に設けられている。
【0078】
[寸法等]
上記の構成を有するブラケット20において、基礎板部21の壁板部22に対する傾斜角θ(
図6(b)。幅方向に見た、壁板部22の後面22dに対する基礎板部21の下面21bの傾斜角)は、一例として、110°~120°程度、125°~135°程度の2通りとし得る。即ち、本実施形態のブラケット20は、傾斜角θが互いに異なる2種類のブラケットを含む。
【0079】
壁板部22の高さ(封止部23の後面23dの下端部から壁板部22の後面22dの上端部までの、後面22dに沿った寸法(上下方向の寸法))は、一例として100mm~200mm程度とし得る。本実施形態では、壁板部22の高さは、ブロック10の壁部112の高さの1/3以下である。また、基礎板部21の高さ(壁板部22の後面22d(前後方向における後面22dの位置)から基礎板部21の下面21bの前端部までの、下面21bに沿った寸法)は、一例として100mm~200mm程度とし得る。壁板部22の高さと基礎板部21の高さは同一であってもよい。
【0080】
ブラケット20の幅方向の長さは一例として800mm~2000mm程度とし得る。第1連結凹部CR1、第2連結凹部CR2の幅方向の長さは一例として50mm~150mm程度とし得る。ブラケット20の上下方向、前後方向、及び幅方向の寸法はそれぞれ、ブロック10の上下方向、前後方向、及び幅法等の寸法よりも小さい。
【0081】
[主アンカー31、副アンカー32、ブラケットアンカー40]
主アンカー31は、本実施形態では枢動アンカーである。主アンカー31は、
図7に示すとおり、アンカー部311とロッド部312とを有する。アンカー部311には、凹孔311hが設けられている。アンカー部311とロッド部312とは、連結部313において枢動可能に連結されている。
【0082】
副アンカー32、及びブラケットアンカー40は、本実施形態ではL型アンカーである。
【0083】
[路面形成板50]
路面形成板50(
図1)は、一例として樹脂、コンクリート、金属等で形成された板状部材とし得る。樹脂としては、例えば高密度ポリエチレンを用い得る。路面形成板50は、滑り止め用の溝や突起が形成された上面50aを有する。
【0084】
[設置方法]
嵩上げユニット100は、具体的には例えば、次のようにして堤防EMに設置される。
【0085】
(1)
図8(a)に示すように、堤防EMの上面の河川側の領域に凹部Rを形成する。また、必要に応じて堤防EMの上面から河川側に向かって傾斜する斜面SLの傾斜角を調整する。
【0086】
ここで、斜面SLの傾斜角の調整は、鉛直方向に対する斜面SLの角度が、ブラケット20の2通りの傾斜角θのいずれかに一致又は近似するように行う。これにより、ブラケット20がブロック10及び堤防EMに当接した良好な設置状態を実現することが容易となる(詳細後述)。
【0087】
(2)
図8(b)、
図9(a)に示すように、凹部Rの底面Rb(堤防EMの上面の一部である)に、主アンカー31を打設する。具体的には、打ち込み用ロッド(不図示)の一端部をアンカー部311の凹孔311hに挿入し、打ち込み用のロッドの他端部を叩いてアンカー部311を地中に打ち込む。その後、打ち込み用ロッドを抜去し、ロッド312を上方に引き上げる。これにより、ロッド312に対してアンカー部311が枢動し、主アンカー31は、アンカー部311の面積が大きい側面がロッド312の延びる方向に直交する状態(即ち、大きな引抜き抵抗を有した状態)で地中に設置される。
【0088】
(3)
図8(c)、
図9(b)に示すように、複数のブロック10を、堤防EMの延在方向に沿って並べる。ブロック10の各々は、ブロック10の幅方向が堤防EMの延在方向に一致又は略一致し、且つ壁部112の前板112cが河川側を向くように設置される。ブロック10は、凹部Rの内部に、3つの貫通孔TH1の各々を設置済の主アンカー31のロッド312が通るように配置される。
【0089】
あるブロック10(以下、適宜「基準ブロック」と呼ぶ)は、あるブロック10の左側に隣接して配置されたブロック10(以下、適宜「隣接ブロック」と呼ぶ)の連結部13の上に基準ブロック12の連結部12が重なるように配置される。この状態において、基準ブロックの連結部12に設けられた貫通孔TH1、TH2、TH3はそれぞれ、隣接ブロックの連結部13に設けられた貫通孔TH1、TH2、TH3と重複する。
【0090】
連結部12と連結部13とが重複した領域においては、隣接ブロックの連結部13の連結基部131の上面が基準ブロックの連結部12の連結基部121の下面に当接する。また、隣接ブロックの連結部13の連結壁部132の後面が基準ブロックの連結部12の連結壁部122の前面に当接する。
【0091】
このように、連結部12、13を設けることにより、隣接するブロック10の間で当接面を広くすることができ、水の侵入をより良好に抑制することができる。
【0092】
ブロック10の設置後、主アンカー31の各々のロッド312にナットN(
図8(c))を締める。これにより、ブロック10は堤防EMの上面に押し付けられ、堤防EMに固定される。また、ブロック10の貫通孔TH2を介して副アンカー32を打ち込み、ブロック10をより強固に堤防EMに固定する。
【0093】
(4)
図8(d)、
図9(c)に示すように、ブロック10の河川側において、複数のブラケット20を、堤防EMの延在方向に沿って並べる。ブラケット20の各々は、ブラケット20の幅方向が堤防EMの延在方向に一致又は略一致し、且つ前面20cが河川側を向くように設置される。
【0094】
ブラケット20は、傾斜角θが異なる2通りのブラケット20の中から、設置箇所における堤防EMの斜面SLの傾斜角に一致又は近似したブラケット20を選択して設置していく。したがって、設置されたブラケット20は、基礎板部21の下面21bが堤防EMの傾斜面SLに当接し、壁板部22の後面22dがブロック10の壁部112の前板112c及び連結壁部132に当接する。
【0095】
また、封止部23は、ブロック10の基部111と凹部Rの底面Rbとの間に嵌入される。封止部23の上面23aは、ブロック10の曲面CV11及び曲面CV13に当接する。
【0096】
あるブラケット20(以下、適宜「基準ブラケット」と呼ぶ)は、基準ブラケットの左側に配置されたブラケット20(以下、適宜「隣接ブラケット」と呼ぶ)の第2連結凹部CR2に基準ブラケットの第1連結凹部CR1が重なるように配置される。この状態において、基準ブラケットの第1連結凹部CR1に設けられた貫通孔TH4、TH5はそれぞれ、隣接ブラケットの第2連結凹部CR2に設けられた貫通孔TH4、TH5と重複する。また、貫通孔TH5はブロック10の貫通孔TH3と重複する。
【0097】
図9(c)に示す通り、本実施形態ではブラケット20の幅方向の長さがブロック10の幅方向の長さの略半分である。堤防の延在方向において、ブロック10の貫通孔TH1、TH2、TH3が設置される位置と、ブラケット20の貫通孔TH4、TH5が設置される位置とは一致する。
【0098】
基準ブラケットと隣接ブラケットとが重複した領域においては、隣接ブラケットの第2連結凹部CR2における前面20cが基準ブラケットの第1連結凹部CR1における基礎板部21の下面21bと壁板部22の後面22dに当接する。このように、第1、第2連結凹部CR1、CR2を設けることで隣接するブラケット20の間で当接面を広くすることができ、水の侵入をより良好に抑制することができる。
【0099】
ブラケット20の設置後、ブラケット20の貫通孔TH4を介してブラケットアンカー40を打ち込み、ブラケット20を堤防EMに固定する。また、ブラケット20の貫通孔TH5とブロック10の貫通孔TH3とにボルト(不図示)を通して、ブラケット20をブロック10に固定する。
【0100】
(5)その後、ブロック10の注入孔INを介して、ブロックの本体部11の空間11Eにモルタルを注入し、固化させる。モルタルの注入時、空間11E内の空気は排気口EXから排出される。注入口INは固化したモルタルにより閉塞される。
【0101】
モルタルは、ブロック10の内部において重りとして機能するとともに、天板111aを下から支えて天板111aの凹みを防止する機能も果たす。注入するモルタルの量は必要な重りの重量に応じて任意に設定し得るが、一例として基部111内の空間H111が満たされる程度とし得る。なお、モルタルに代えて発泡ウレタン等の発泡剤を注入してもよい。
【0102】
最後に、ブロック10の基部111の上に路面形成板50を設置する(
図1)。路面形成板50は、上面50aが堤防EMの上面と面一又は略面一となるように配置される。路面形成板50を、ブロック10の本体部11の基部111に、ボルト等を用いて固定してもよい。路面形成板50により、堤防EM上の歩行者や車両等によりブロック10が損傷されることを防止でき、且つ歩行者や車両の滑りを抑制できる。
【0103】
以上により、嵩上げユニット100が堤防EMに沿って連設された嵩上げ構造体1000が形成される。
【0104】
本実施形態の嵩上げユニット100の有利な効果を以下にまとめる。
【0105】
本実施形態の嵩上げユニット100は、主に、各々が樹脂により形成された中空体であるブロック10及びブラケット20により構成されている。したがって、低コストで製造及び設置することができ且つ軽量である。
【0106】
本実施形態の嵩上げユニット100は、ブロック10とブラケット20とが別体であり、ブロック10は幅方向に見てL字状である。このように、嵩上げユニット100の中で最も体積の大きいブロック10を重ねやすいL字状とすることで、嵩上げユニット100の設置場所までの輸送を効率よく行えるため、輸送コストを軽減できる。
【0107】
また、嵩上げユニット100の中で最も体積の大きいブロック10を複雑形状ではないL字状とすることで、樹脂製の中空体を得るための加工が容易となり、製造コストを抑制することができる。
【0108】
本実施形態の嵩上げユニット100は、ブロック10よりも体積の小さいブラケット20が、基礎板部21の壁板部22に対する傾斜角θが互いに異なる2通りのバリエーションを有する。このように、体積の小さいブラケット20にバリエーションを与えることで、製造コストの上昇を抑制しつつ、嵩上げユニット100の汎用性を高めることが出来る。仮に、体積の大きいブロック10についてバリエーションを与えようとすると、金型の製造等のコストが高くなり、製造コストの抑制は難しくなる。
【0109】
本実施形態の嵩上げユニット100においては、ブロック10の河川側にブラケット20が設置されており、ブラケット20の壁板部22がブロック10に当接している。したがって、河川の増水時に、ブロック10と堤防EMの間への水の侵入が良好に抑制される。また、ブロック10の壁部112が河川側に押された場合も、壁部112の河川側への転倒がブラケット20の壁板部22により抑制される。
【0110】
本実施形態の嵩上げユニット100においては、ブラケット20が封止部23を有し、設置状態においては封止部23がブロック10と堤防EMの間に嵌入されて配置される。したがって、河川の増水時に、ブロック10と堤防EMの間への水の侵入が良好に抑制される。
【0111】
河川法は、実際に河川に設置される嵩上げユニットに対して、(1)流水の通常の作用に対して安全な構造であること、(2)予想される荷重によって洗掘破壊、滑り破壊又は浸透破壊が生じない構造であること、及び(3)主要な部分がコンクリート、鋼矢板若しくはこれらに準ずるものによる構造のものとし、又はコンクリート構造若しくはこれに準ずる構造の胸壁を有するものであることを要求しているが、本実施形態の嵩上げユニット100は、これらの要求を満たしつつ、低コストで製造及び設置することができる。
【0112】
本実施形態の嵩上げユニット100の設置方法、及び嵩上げ構造体1000においても、上記と同様の効果が奏される。
【0113】
<変形例>
上記の実施形態において、次の変形態様を用いることもできる。
【0114】
上記実施形態のブロック10においては、壁部112の前板112cと基部111の底板111bとは直交しているがこれには限られない。壁部112の前板112cと基部111の底板111bとの間の角度(幅方向に見た角度)は、80°~100°の範囲とし得る。本発明において「壁部が基部から直立する」、及び「断面L字状」とは、前板112cと底板111cとの間の角度が80°~100°の範囲内であることを意味する。
【0115】
上記実施形態のブロック10において、本体部11の幅方向と直交する面による断面形状はL字状(略L字状)である任意の形状とし得る。例えば、基部111の天板111aは底板111bと平行であってよく、壁部112の後板112dは前板112cと平行であってよい。また、湾曲部CV11を有さなくてもよい。この場合、底板111bの前端部と前板112cの下端部とにより直角の屈曲部が画定される。ブラケット20の封止部23は例えば、底板111と堤防EMの間に、堤防EMの上面を押し下げて嵌入される。
【0116】
本体部11の基部111と壁部112とを同一の形状及び寸法とし、連結部12、13の連結基部121、131と連結壁部122、132とを同一の形状及び寸法としてもよい(連結壁部122、132の上端近傍には、連結基部121、131の貫通孔TH2に対応する位置に貫通孔が設けられる)。この場合、ブロック10は、鉛直方向から後方に45°傾いた方向及び幅方向に沿って延びる面に関して対称形となる。これにより、現場においては基部と壁部を区別なく使用(設置)でき、同一のブロック10を、河川の両岸に同様に配置することができる。
【0117】
上記実施形態のブロック10において、リブRB、連結部12、13を省略してもよい。連結部12、13を有さないブロック10を用いて嵩上げ構造体1000を形成する場合は、隣接するブロック10の間にシーリング剤を配置してもよい。
【0118】
上記実施形態のブロック10において、連結部12、13の連結基部121、131及び連結壁部122、132は、平板ではなく曲板状、波板状等であってもよい。例えば、連結基部121と連結基部131とを互いに当接可能な波板状とすることで、連結基部121と連結基部131との当接面の面積をより大きくすることが出来、水の侵入をより良好に抑制できる。連結壁部122と連結壁部132についても同様である。また、連結壁部122、132の上端近傍に貫通孔を設け、連結時には当該貫通孔を介したボルト締めを行ってもよい。これにより、連結壁部122、132をより良好に密接させて水の侵入をより良好に防止することができる。
【0119】
上記実施形態のブロック10においては、連結部12、13の連結基部121、131及び連結壁部122、132は一枚の板状部材により形成されているがこれには限られない。連結基部121、131及び連結壁部122、132は、対向する一対の板部により構成された中空板であってもよく、一対の板部が融着した構造であってもよい。また、中空板は、貫通孔TH1~TH3の近傍において対向する一対の板部同士が当接且つ融着していてもよい。
【0120】
上記実施形態のブロック10において、連結部12、13は連結壁部122、132を有するのみでもよい。連結基部121、132よりも河川側に配置される連結壁部122、132のみを備える態様でも、水の侵入を良好に抑制し得る。
【0121】
上記実施形態のブロック10において、注入口IN、排出口EXの位置は任意である。注入口INを壁部112に設けてもよく、排出口EXを基部111に設けてもよい。また、注入口IN及び/又は排出口EXを省略してもよい。
【0122】
上記実施形態のブラケット20は中空体であるが、中実体であってもよい。
【0123】
上記実施形態においては、ブラケット20は、基礎板部21の壁板部22に対する傾斜角θが互いに異なる2種類のブラケットを含むが、これには限られない。ブラケット20の傾斜角θのバリエーションは、1種類のみであってもよく、3種類以上の任意の数であってもよい。
【0124】
上記実施形態においては、ブラケット20の壁板部22の高さは、ブロック10の壁部112の高さの1/3以下であるが、これには限られない。ブラケット20の壁板部22の高さは任意であり、ブロック10の壁部112の高さの1/2以下であってもよい。
【0125】
上記実施形態のブラケット20において、第1、第2連結凹部CR1、CR2の形状は適宜変更し得る。例えば、第1連結凹部CR1は、壁板部22の後面22dが窪んでおり、基礎板部21及び封止部23が存在しない構成とし得る。この場合、第2連結凹部CR2においては、壁板部22の前面22cのみが窪んでいる。また、上記実施形態のブラケット20において、第1、第2連結凹部CR1、CR2を省略してもよい。第1、第2連結凹部CR1、CR2を有さないブラケット20を用いて嵩上げ構造体1000を形成する場合は、隣接するブラケット20の間にシーリング剤を配置してもよい。
【0126】
上記実施形態の嵩上げユニット100の設置方法において、重りとして、モルタルに代えて水を注入してもよい。その他、任意の流体、粉体、固体を重りとして使用し得る。また、ブラケット20にもモルタル等の重りを注入してもよい。注入口は設置時にドリル等で形成してもよく、予め設けておいてもよい。また、上記実施形態の嵩上げユニット100の設置方法において、重りを注入しなくてもよい。
【0127】
上記実施形態の嵩上げユニット100の設置方法において、副アンカー32の打設を省略してもよい。また、ブラケット20の固定は、ブラケットアンカー40のみで行ってもよく、ブロック10へ固定するための不図示のボルト(又はその他の締結具)のみで行ってもよい。
【0128】
上記実施形態の嵩上げユニット100の設置方法において、ブロック10とブラケット20との当接部に、樹脂シートや水膨張ゴム等の水密用シート材を挟み込んでもよい。これにより、水の侵入がより良好に抑制される。
【0129】
上記実施形態の嵩上げユニット100の設置方法において、主アンカー31、副アンカー32、及びブラケットアンカー40は任意のアンカーを用い得る。例えばすべてのアンカーを枢動アンカーとしてもよく、すべてのアンカーをL型アンカーとしてもよい。
【0130】
上記実施形態の嵩上げユニット100の設置方法において、路面形成板50の設置は省略してもよい。この場合は、ブロック10の基部111の天板111aに滑り止め加工を施してもよい。
【0131】
上記実施形態の嵩上げユニット100の設置方法において、堤防EMが延在方向に沿って湾曲している場合には、隣接するブロック10の連結を湾曲ブロック70を介在させて行っても良く、隣接するブラケット20の連結を湾曲ブラケット80を介在させて行ってもよい。
【0132】
湾曲ブロック70は、樹脂により一体成形された中空のブロック体であり、
図10に示す通り、本体部71と、本体部71の両端部に設けられた連結部72及び連結部73とを有する。
【0133】
本体部71はブロック10の本体部11と同様の中空体である。本体部71は、本体部11の幅方向の寸法を小さくし、且つ幅方向に沿って湾曲(本明細書において「湾曲」は「屈曲」を含む)させた構造を有する。湾曲の角度θ
71(
図10)は任意に設定し得る。
図10においては壁部側(河川側)に凸となるように湾曲しているが、基部側(陸地側)に凸となるように湾曲していてもよい。湾曲ブロック70の幅方向の寸法は、一例として300mm~500mm程度とし得る。
【0134】
連結部72、73はそれぞれ、ブロック10の連結部12、13と同様の構造を有する。即ち連結部72は連結基部721と連結壁部722を有し、連結部73は連結基部731と連結壁部732を有する。連結基部721、731には貫通孔TH1、TH2が設けられており、連結壁部722、732には貫通孔TH3が設けられている。湾曲ブロック70にブロック10を連結する際に、湾曲ブロック70に対するブロック10の角度(平面視における角度)を微調整できるように、貫通孔TH1~TH3を円弧状、直線状等の長孔としてもよい。これにより、堤防EMの湾曲に合わせたブロック10の配置がより容易となる。
【0135】
湾曲ブラケット80は樹脂により一体成形された中空体であり、基礎板部81と、壁板部82と、畝状の封止部83とを主に有する。湾曲ブラケット80は、ブラケット20の幅方向の寸法を小さくし、且つ幅方向に沿って湾曲させた構造を有する。湾曲の角度θ
80(
図11)は任意に設定し得る。
図11においては基礎板部81側(河川側)に凸となるように湾曲しているが、封止部83側(陸地側)に凸となるように湾曲していてもよい。湾曲ブラケット80の幅方向の寸法は、一例として300mm~500mm程度とし得る。
【0136】
湾曲ブラケット80の両端部には、ブラケット20と同様に第1連結凹部CR1、第2連結凹部CR2が設けられている。第1連結凹部CR1、第2連結凹部CR2のそれぞれの内部に、貫通孔TH4、TH5が設けられている。湾曲ブラケット80にブラケット20を連結する際に、湾曲ブラケット80に対するブラケット20の角度(平面視における角度)を微調整できるように、貫通孔TH4、TH5を円弧状、直線状等の長孔としてもよい。これにより、堤防EMの湾曲に合わせたブラケット20の配置がより容易となる。
【0137】
湾曲ブロック70、湾曲ブラケット80の上には、これらと同様に湾曲した路面形成板を配置し得る。
【0138】
なお、上記実施形態のブロック10、ブラケット20を、湾曲ブロック70、湾曲ブラケット80と同様に、幅方向に沿って湾曲させてもよい。湾曲部は幅方向に任意の位置に設け得るが、例えば本体部11、ブラケット20の幅方向中央部であってよい。
【0139】
ブロック10と、傾斜角θが互いに異なる複数種類のブラケット20との組み合わせにより嵩上げキットを構成してもよい。
【0140】
上記実施形態においては、嵩上げユニット100を河川の堤防を嵩上げする目的で河川の堤防EMに設置する場合を例として説明した。しかしながら、嵩上げユニット100は、海や湖沼など、任意の水域のための堤防の嵩上げに用いることができる。
【0141】
本発明の特徴を維持する限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0142】
10 ブロック
11 本体部
111 基部
112 壁部
12、13 連結部
20 ブラケット
21 基礎板部
22 壁板部
23 封止部
31 主アンカー
32 副アンカー
40 ブラケットアンカー
50 路面形成板
70 湾曲ブロック
80 湾曲ブラケット