(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048371
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】チョコレート改質剤およびそれを含有するチョコレート
(51)【国際特許分類】
A23G 1/32 20060101AFI20230331BHJP
A23L 29/10 20160101ALN20230331BHJP
【FI】
A23G1/32
A23L29/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157643
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】市邊 愛佳
(72)【発明者】
【氏名】村尾 友紀
(72)【発明者】
【氏名】村井 卓也
【テーマコード(参考)】
4B014
4B035
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GK07
4B014GL06
4B014GP01
4B014GP14
4B014GP27
4B014GQ05
4B035LC03
4B035LG09
4B035LG57
4B035LK13
4B035LK17
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP31
4B035LP59
(57)【要約】
【課題】
チョコレートの固化性や離型性、結晶安定化速度を改善し、その結果生産性を向上させることのできるチョコレート改質剤およびチョコレートを提供すること。
【解決手段】
本発明では、HLBが2~12のポリグリセリン脂肪酸エステルからなるチョコレート改質剤であって、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が炭素数12~18の飽和脂肪酸、炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とするチョコレート改質剤をチョコレートに添加することで上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLBが2~12のポリグリセリン脂肪酸エステルからなるチョコレート改質剤であって、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が炭素数12~18の飽和脂肪酸、炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とするチョコレート改質剤。
【請求項2】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度が3~10であることを特徴とする請求項1に記載のチョコレート改質剤。
【請求項3】
請求項1又は2の何れかに記載のチョコレート改質剤を0.2~1重量%含有するチョコレート。
【請求項4】
テンパリング処理された請求項3に記載のチョコレート。
【請求項5】
成型チョコレートであることを特徴とする請求項3又は4に記載のチョコレート。
【請求項6】
テンパリング処理後に型を用いて成型する請求項3~5のいずれかに記載のチョコレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレート改質剤およびチョコレート改質剤を含有するチョコレートに関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、カカオマス、糖類、乳成分等から製造されるものであり、子供から大人まで幅広い年代の層に人気のある嗜好品である。近年、チョコレートの需要はますます伸びてきており、高品質であることに加え、生産性向上が求められる。
【0003】
工業的にチョコレートを大量に製造する場合、チョコレートの融液をモールドに流し込み、冷却固化後にモールドから離型させる。その後、チョコレートに含まれる油脂結晶を安定化させ、チョコレートの硬度を高めるため、約20℃で約5~7日間のエイジングを経て流通される。したがって、チョコレートの油脂の結晶安定化を促進し、型離れを向上させることは、離型速度を早め、歩留まり率を改善させることにつながり、チョコレート製造メーカーの生産性向上によるコストダウンに貢献できる。
【0004】
チョコレートに含まれるココアバターは結晶化の際に体積が減少することでチョコレートを収縮させることが報告されており、型離れの向上にはチョコレートの結晶構造を密にパッキングすることが重要であると考えられる(非特許文献)。チョコレートの結晶はI型結晶からVI型結晶まで様々な多形をとり、融点はI型からVI型にかけて高くなる。テンパリング処理によって収縮度の高い結晶構造に整えるが、VI型結晶は融点が高く口どけが悪くなるため、V型の結晶に整える必要がある。チョコレートの結晶構造は、示差走査熱量計にて冷却又は加熱した際の結晶化熱又は融解熱を測定することによって推測することが可能である。
【0005】
チョコレートに粉末油脂を添加し、固化速度を改善することで離型性を向上させる方法が検討されており、例えばグリセリンの1位~3位に炭素数10~22の脂肪酸残基を有するトリグリセリドを含む油脂成分を含有する粉末油脂組成物を用いることが提案されている(特許文献1)。しかし、融点の高いS3型のトリグリセリドを使用すると、チョコレートの口どけの悪化やワキシー感につながる。さらにこのような特定のトリグリセリド組成にするためには、油脂原料を化学的にもしくは酵素的にエステル交換した後に、分別を実施する必要があり、その製造法の複雑さからコストが高くなることが問題となる。
【0006】
一方で、チョコレートに乳化剤を添加して、チョコレートの固化速度を向上させる方法が検討されており、例えば、エステル化率が28~60%であり、かつソルビトール型含量が20~40%であるソルビタン脂肪酸エステルを用いることが提案されている(特許文献2)。しかし、ソルビタン脂肪酸エステルを用いる方法では十分な効果が得られず、さらなる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-046783号公報
【特許文献2】特開2009-209350号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】古谷野哲夫、チョコレートの結晶学、日本結晶学会誌、56、319-322、2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明では、チョコレートの固化性や離型性、結晶安定化速度を改善し、その結果生産性を向上させることのできる、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルからなるチョコレート改質剤およびチョコレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、HLBが2~12のポリグリセリン脂肪酸エステルからなるチョコレート改質剤であって、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が炭素数12~18の飽和脂肪酸、炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とするチョコレート改質剤をチョコレートに添加することで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、チョコレート改質剤として特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを添加することでチョコレートが安定した結晶状態を取りやすくなり、その結果固化性や離型性が向上するため生産効率の高いチョコレートを提供することができる。さらに、本発明のチョコレート改質剤は、高融点の極度硬化油や他の添加剤に比べて融点が低いため、チョコレートに添加した際に口どけへの影響も少ない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0013】
本発明の実施の形態のチョコレート改質剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルである。
【0014】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン同士を脱水縮合したポリグリセリンと脂肪酸のエステル化反応によって得られ、ポリグリセリンの種類(重合度)、脂肪酸の種類(炭素数、二重結合の数)、エステル組成等により、多種類存在する。そして、その種類毎に異なる性質を示すことが知られている。
【0015】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンは、その平均重合度が限定されるものではないが、2~20であることが好ましく、3~10であることが更に好ましく、4~6であることが最も好ましい。ここで、平均重合度は、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)である。詳しくは、下記式(1)および下記式(2)から算出される。
【0016】
分子量=74n+18 ・・・(1)
水酸基価=56110(n+2)/分子量・・・(2)
【0017】
上記式(2)中の水酸基価とは、ポリグリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのポリグリセリンに含まれる遊離ヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法、2003年度版」に準じて算出される。
【0018】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数12~18の飽和脂肪酸、炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上である。炭素数12~18の飽和脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。炭素数18~22の不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸およびその縮合物等が挙げられる。これらの中でも特に、チョコレートの結晶性を改善できる点から、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸で構成されることが好ましく、ステアリン酸、パルミチン酸で構成されることがより好ましく、ステアリン酸で構成されることが最も好ましい。
【0019】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、従来公知のエステル化反応により製造することができる。例えば、脂肪酸とポリグリセリンとを水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒の存在下でエステル化反応させることにより製造することができる。エステル化は、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率が所望の値になるまで行われる。
【0020】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は10~90%であり、好ましくは15~85%であり、より好ましくは20~30%である。ここで、エステル化率とは、水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、ポリグリセリンに付加する脂肪酸のモル数(M)としたとき、下記式(3)で算出される値である。水酸基価とは、上記式(2)により算出される値である。
エステル化率(%)=(M/(n+2))×100・・・(3)
【0021】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは2~12であり、好ましくは4~10であり、より好ましくは7~9である。HLBはアトラス法を用い、エステルのけん化価および脂肪酸の中和価から算出したものであり、以下の式(4)により算出する。また、式(4)中のけん化価および中和価は社団法人日本油化学会編纂「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法、2003年度版」に準じて測定する。
【0022】
HLB=20×(1-けん化価/中和価)・・・(4)
【0023】
本発明でいうチョコレートは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会) 乃至法規上の規定により限定されるものではなく、食用油脂、糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、冷却工程等の一部乃至全部)を経て製造されたもののことである。また、本発明におけるチョコレートは、ダークチョコレート、ミルクチョコレートの他に、ホワイトチョコレート、抹茶チョコレートやいちごチョコレートなどのカラーチョコレートも含むものである。
【0024】
本発明に係るチョコレートは、ポリグリセリン脂肪酸エステルを好ましくは0.05~5質量%含有し、より好ましくは0.2~1重量%含有する。
【0025】
本発明におけるチョコレートは、油脂含量が20~70質量%であることが好ましく、25~65質量%であることがより好ましい。なお、チョコレート中の油脂とは、カカオマスやココアパウダー等に由来する油脂も含むものである。
【0026】
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂は、限定されないが、例えば、パーム油、ココアバター、シア脂、サル脂、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂等の植物油脂や動物油脂、並びにこれらを分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂の単品又は、これらの組み合わせ油脂の精製油を挙げることができる。これらの食用油脂は2種以上が組み合わされて使用される場合もある。チョコレート類に使用される油脂としては、チョコレートを製造する際のテンパリングの要否により、テンパリング型と非テンパリング型があるが、何れも用いることができる。ただし、モールド成型をするためには、流し込んだチョコレートが冷却固化によって収縮する必要がある。非テンパリング型のチョコレートにも本発明は用いることができるが、テンパリング型のチョコレートの方が好適である。
【0027】
本発明に用いるテンパリング型油脂は、チョコレートが固化する際に、油脂を安定した結晶構造にするために温度制御が必要であり、対称型トリアシルグリセロール、例えばPOS(パルミト・オレオ・ステアリン)、POP(パルミト・オレオ・パルミチン)、SOS(ステアロ・オレオ・ステアリン)というようにトリアシルグリセロールの1,3位に飽和脂肪酸、2位に不飽和脂肪酸であるオレイン酸が結合しているという特徴がある。
【0028】
テンパリング型油脂の原料としては、チョコレートの主成分であるココアバター、シア脂、サル脂、ハイオレイックひまわり油などのトリグリセリドの1,3位に選択的に飽和脂肪酸を導入した酵素エステル交換油脂、パーム油等の溶剤分別で得られるものが代表的である。
【0029】
本発明に係るチョコレートは、適正なテンパリング状態を取りやすくするために対称型トリアシルグリセロールを油脂中に40~90質量%含有することが好ましい。そのため、テンパリング型油脂を油脂中に45質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましい。
【0030】
本発明に係るチョコレートは、油脂およびポリグリセリン脂肪酸エステル以外にも、その他の成分として、例えば周知のチョコレート成分であるカカオ分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品(全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエー蛋白、粉末チーズ等)、糖類・甘味類(砂糖、乳糖、キシリトール、エリスリトール、アスパルテーム等)の他、公知の食品素材(例えば、澱粉、デキストリン、大豆蛋白、ナッツ類、抹茶、果物粉末等)や、香料、香辛料、乳化剤、着色料等を添加することができる。本発明のチョコレートは、上記成分の中で、糖類を20~70質量%含むことが好ましく、25~65質量%含むことがより好ましい。糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、砂糖、麦芽糖、乳糖、パラチノース、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、トレハロース等が挙げられる。
【0031】
本発明のチョコレートは、チョコレート製造の常法により製造することができる。すなわち、原材料のミキシング、ロール掛け等によるリファイニング、コンチング工程の後、生地を冷却固化することにより製造することができる。
【0032】
本発明のチョコレートは成型チョコレートであることが好ましい。成型チョコレートとは、チョコレートを任意の形状に成型したものを指す。成型方法としては、チョコレート溶液を平板上に滴下する方法、所定形状の型へ流し込む方法、平板上に流し固化前に所定形状にカットする方法等が例示され、本願では所定形状の型へ流し込む方法が好適である。形状は特に限定するものではないが、半球、チップ状(円錐)、ペレット状、直方体、立方体、円柱などが挙げられる。
【0033】
本発明のチョコレートはテンパリング工程もしくはシーディング工程を経ることが望ましい。テンパリング工程は、融解したチョコレートに安定な結晶核を生じさせるために行われる温度処理である。例えば、40~50℃で融解したチョコレートの品温を27~28℃まで下げ、その後再び29~31℃程度まで品温を上げる操作が知られている。シーディング工程は、テンパリング処理の代わりに安定な結晶核として機能するシード剤を融解したチョコレートに分散させる操作が知られている。いずれかの処理を経ることで、チョコレートに含まれる油脂結晶を安定なV型の結晶構造にすることができる。
【実施例0034】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0035】
<合成例1>
平均重合度が4のポリグリセリン100gとステアリン酸127.8gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性および窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率25%のポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB8)を得た。
【0036】
<合成例2>
平均重合度が4のポリグリセリン100gとパルミチン酸56.3gとステアリン酸68.2gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性および窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率23%のポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB8)を得た。
【0037】
<合成例3>
平均重合度が6のポリグリセリン100gとパルミチン酸28.2gとステアリン酸34.1gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性および窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率16%のポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB12)を得た。
【0038】
<合成例4>
平均重合度が6のポリグリセリン100gとパルミチン酸117.8gとステアリン酸144.8gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性および窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率67%のポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB4)を得た。
【0039】
<合成例5>
平均重合度が10のポリグリセリン100gとオレイン酸341.2gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性および窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率84%のポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB3)を得た。
【0040】
<合成例6>
平均重合度が10のポリグリセリン100gとオレイン酸169.2gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性および窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率42%のポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB6)を得た。
【0041】
<比較合成例1>
平均重合度が10のポリグリセリン100gとカプリル酸24.5gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性および窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率12%のポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB16)を得た。
【0042】
<実施例1>
クーベルチュールチョコレート200gを完全に融解させ、合成例1のポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5重量%添加後、60℃で均一に溶解させた。チョコレートをテンパリングマシンに投入し、メルティングを開始した。品温が42.2℃になった時にシード剤として細かく刻んだチョコレートを32.8g添加し、28℃まで冷却した。その後、再び温度を上昇させ、30℃になった時点でテンパリングを終了し、チョコレートを得た。
【0043】
<実施例2~6>
ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、それぞれ合成例2~6を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてチョコレートを調製した。
【0044】
<比較例1>
ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、比較合成例1のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてチョコレートを調製した。
【0045】
<比較例2>
ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてチョコレートを調製した。
【0046】
実施例1~6と比較例1、2のチョコレートについて、型離れ率、型離れ時間、口どけ感の評価を行い、結果を表1に示した。
【0047】
<型離れ率の評価方法>
上記で得られたテンパリング直後のチョコレート100gを型に流し、5℃で15分間固化させた。型にはポリカーボネート製の半球成型モールド(24個取り)を使用した。冷却後、型を平らな台の上で10回叩きつけ、型から完全に離型したチョコレートの数を計測した。チョコレート全数に対する離型したチョコレートの割合を算出し型離れ率とした。
[型離れ率の評価基準]
◎:型離れ率が70%以上
○:型離れ率が50%以上70%未満
×:型離れ率が50%未満
【0048】
<型離れ時間の評価方法>
上記で得られたテンパリング直後のチョコレート100gを型に流して5℃で固化させた。15分間毎に、型から完全に離れたチョコレートの数を目視で数え、型離れ率が90%以上になるまでの時間を計測した。
[型離れ時間の評価基準]
◎:型離れ時間が30分未満
〇:型離れ時間が30分以上45分未満
×:型離れ時間が45分以上60分以内
【0049】
<口どけ感の評価方法>
上記で得られたテンパリング直後のチョコレート100gを型に流し、5℃で15分間固化させた。離型したチョコレートを用いて、5人の熟練したパネラーが以下の基準に従って口どけ感を協議して評価した。
[口どけ感の評価基準]
◎:口どけが良く、口残りや異味が感じられなかった。
〇:口どけが良く、口残りや異味がほとんど感じられなかった。
×:口どけが悪く、口残りや異味がかなり感じられた。
【0050】
【0051】
表1から分かるように、本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステルからなるチョコレート改質剤を添加したチョコレートは、型離れ率が向上しており、かつポリグリセリン脂肪酸エステルによる口どけや風味への影響も感じられなかった。