(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048406
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】牽引運搬車両の周辺監視システム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/00 20060101AFI20230331BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20230331BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20230331BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20230331BHJP
B62D 53/00 20060101ALN20230331BHJP
【FI】
G08B21/00 U
G08B25/00 510M
G08B25/04 K
G08B21/02
B62D53/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157699
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517332845
【氏名又は名称】Arithmer株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 圭三
(72)【発明者】
【氏名】高桑 俊康
(72)【発明者】
【氏名】田坂 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】太田 和伸
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086AA54
5C086BA22
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA33
5C086FA02
5C086FA11
5C087AA11
5C087AA32
5C087DD03
5C087DD14
5C087DD27
5C087GG02
5C087GG14
5C087GG59
5C087GG66
(57)【要約】
【課題】コストの増大を抑えつつ、牽引台車と作業者との接触を抑制することが可能な牽引運搬車両の周辺監視システムを提供する。
【解決手段】牽引運搬車両によって牽引される牽引台車21,22,…と作業者との接触を監視するための周辺監視システムである。牽引運搬車両に設けられ単一のカメラと、カメラによって撮像された各牽引台車の一部の画像21a,22a,…に基づき、各牽引台車の全体の存在領域21b,22b,…を推定し、存在領域21b,22b,…に基づいてリスクエリアRAを設定する危険領域設定部と、リスクエリアRA内に作業者が入っていると判定した場合に、牽引台車21,22,…と作業者との接触を予測する予測部と、パトロールライトおよびスピーカーと、を備えている。パトロールライトおよびスピーカーは、牽引台車21,22,…と作業者との接触が予測された場合に作動する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引運搬車両によって列をなすように牽引される複数台の牽引台車と作業者との接触を監視するための、牽引運搬車両の周辺監視システムであって、
上記牽引運搬車両または先頭の牽引台車に設けられ、当該牽引運搬車両周辺の作業者と、後方の複数台の牽引台車と、を撮像する単一のカメラと、
上記カメラによって撮像された上記各牽引台車の一部の画像に基づいて危険領域を設定する危険領域設定手段と、
上記カメラによって撮像された作業者の画像に基づいて、上記危険領域設定手段によって設定された危険領域内に作業者が入っていると判定した場合に、上記牽引台車と作業者との接触を予測する予測手段と、
上記牽引台車と作業者との接触を回避させる接触回避手段と、を備え、
上記接触回避手段は、上記予測手段によって、上記牽引台車と作業者との接触が予測された場合に、作動するように構成されていることを特徴とする牽引運搬車両の周辺監視システム。
【請求項2】
上記請求項1に記載の牽引運搬車両の周辺監視システムにおいて、
上記予測手段は、上記カメラによって撮像された画像における作業者を囲む区画を、床面に投影した仮想線が、危険領域内に入っていると判定した場合に、上記牽引台車と作業者との接触を予測するように構成されていることを特徴とする牽引運搬車両の周辺監視システム。
【請求項3】
上記請求項1に記載の牽引運搬車両の周辺監視システムにおいて、
上記接触回避手段は、音および/または光によって、作業者への注意喚起を行うように構成されていることを特徴とする牽引運搬車両の周辺監視システム。
【請求項4】
上記請求項1に記載の牽引運搬車両の周辺監視システムにおいて、
上記接触回避手段は、上記牽引運搬車両に減速、停止または進路変更を行わせるように構成されていることを特徴とする牽引運搬車両の周辺監視システム。
【請求項5】
牽引運搬車両によって牽引される牽引台車と作業者との接触を監視するための、牽引運搬車両の周辺監視システムであって、
上記牽引運搬車両に設けられ、当該牽引運搬車両周辺の作業者と、上記牽引台車と、を撮像する単一のカメラと、
上記カメラによって撮像された上記牽引台車の一部の画像に基づいて危険領域を設定する危険領域設定手段と、
上記カメラによって撮像された作業者の画像に基づいて、上記危険領域設定手段によって設定された危険領域内に作業者が入っていると判定した場合に、上記牽引台車と作業者との接触を予測する予測手段と、
上記牽引台車と作業者との接触を回避させる接触回避手段と、を備え、
上記接触回避手段は、上記予測手段によって、上記牽引台車と作業者との接触が予測された場合に、作動するように構成されていることを特徴とする牽引運搬車両の周辺監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引運搬車両の周辺監視システムに関し、特に、牽引運搬車両によって牽引される牽引台車と、牽引運搬車両周辺の作業者との接触を監視するための周辺監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の生産工場では、生産に使用される部品等を、牽引運搬車両によって列をなすように牽引される複数台の牽引台車に積み込み、かかる部品が使用される作業ステーションに搬送することが従来から行われている。
【0003】
このような牽引運搬車両および牽引台車には種々のものがあり、例えば特許文献1には、可動台車(牽引台車)に設けられた、構成要素(物品)を保持するための構成要素支持体を、可動台車に対して移動可能とすることによって、構成要素を可動台車上で正確に位置決めすることができるようにした搬送装置が開示されている。
【0004】
この特許文献1のものでは、一の構成要素支持体に保持された構成要素の位置を、別の構成要素支持体に保持された構成要素の位置と比較してモニタするために、可動台車にカメラが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、列をなすように複数台の牽引台車を牽引する牽引運搬車両では、牽引運搬車両の運転操作によって、牽引台車の挙動が変化(内輪差が拡大)するため、同じ生産工場内で作業を行っている作業者と牽引台車とが接触する所謂「巻き込み」が発生するおそれがある。このような内輪差による巻き込みは、運転者の注意だけでは、その発生を抑えることが難しい。
【0007】
そこで、生産工場内における高い位置に定点カメラを設けて、かかる定点カメラによって牽引台車と作業者との接触を監視することが考えられるが、定点カメラは設置費用が嵩む上、容易に移設することができないことから、生産工場内のレイアウト変更や、牽引運搬車両の経路変更に対応することが困難であるという問題がある。
【0008】
また、上記特許文献1のもののように、牽引台車にカメラを設けて、牽引台車と作業者との接触を監視することが考えられる。
【0009】
しかしながら、このような手法では、カメラによって撮像できる範囲は監視可能であるものの、カメラによって撮像できない範囲については監視が行き届かないという問題がある。そこで、牽引台車の周辺をすべて撮像可能となるように複数のカメラを設けることも考えられるが、これでは、コストが増大する上、装置構成が複雑になってしまうという問題がある。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コストの増大を抑えつつ、牽引台車と作業者との接触を抑制することが可能な牽引運搬車両の周辺監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明に係る牽引運搬車両の周辺監視システムでは、1台のカメラによって撮像された各牽引台車の一部の画像に基づいて、リスクエリア(危険領域)を設定するようにしている。
【0012】
具体的には、本発明は、牽引運搬車両によって列をなすように牽引される複数台の牽引台車と作業者との接触を監視するための、牽引運搬車両の周辺監視システムを対象としている。
【0013】
そして、この周辺監視システムは、上記牽引運搬車両または先頭の牽引台車に設けられ、当該牽引運搬車両周辺の作業者と、後方の複数台の牽引台車と、を撮像する単一のカメラと、上記カメラによって撮像された上記各牽引台車の一部の画像に基づいて危険領域を設定する危険領域設定手段と、上記カメラによって撮像された作業者の画像に基づいて、上記危険領域設定手段によって設定された危険領域内に作業者が入っていると判定した場合に、上記牽引台車と作業者との接触を予測する予測手段と、上記牽引台車と作業者との接触を回避させる接触回避手段と、を備え、上記接触回避手段は、上記予測手段によって、上記牽引台車と作業者との接触が予測された場合に、作動するように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、危険領域設定手段が、カメラによって撮像された各牽引台車の一部の画像に基づいて危険領域を設定することから、カメラによって撮像できない範囲についても、牽引台車と作業者との接触を監視することが可能となる。
【0015】
また、予測手段が、作業者が危険領域内に入っているか否かを判定することで、複数台の牽引台車と作業者との接触を容易かつ正確に予測することができる。そうして、予測手段によって、牽引台車と作業者との接触が予測されると、牽引台車と作業者との接触を回避させる接触回避手段が作動することから、牽引台車と作業者との接触を確実に抑制することができる。
【0016】
しかも、牽引運搬車両または先頭の牽引台車に設けられた、1台(単一)のカメラを用いて撮像された画像に基づいて、複数台の牽引台車と作業者との接触を予測することから、定点カメラとは異なり、生産工場内のレイアウト変更や、牽引運搬車両の経路変更に対応可能であるとともに、定点カメラや複数のカメラを設ける場合に比して、コストの増大を抑えることができる。
【0017】
ところで、作業者と牽引台車との接触を判定する場合には、作業者の位置を点に置き換えることが多いが、これでは、作業者の位置を正確に表しているとは言い難く、それ故、作業者と牽引台車との接触を正確に予測することが困難となる。
【0018】
そこで、上記周辺監視システムでは、上記予測手段は、上記カメラによって撮像された画像における作業者を囲む区画を、床面に投影した仮想線が、危険領域内に入っていると判定した場合に、上記牽引台車と作業者との接触を予測するように構成されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、カメラによって撮像された画像における作業者を囲む区画を、床面に投影した仮想線を用いることで、作業者の存在する領域が正確に表されることから、作業者の位置を点に置き換える場合に比して、作業者と牽引台車との接触の予測精度を向上させることができる。
【0020】
また、上記周辺監視システムでは、上記接触回避手段は、音および/または光によって、作業者への注意喚起を行うように構成されていてもよい。
【0021】
この構成によれば、牽引運搬車両周辺の作業者に対し、牽引台車と作業者とが接触する危険があることを、音および/または光によって確実に伝えることで、作業者に注意喚起を促して、牽引台車と作業者との接触を確実に抑制することができる。
【0022】
さらに、上記周辺監視システムでは、上記接触回避手段は、上記牽引運搬車両に減速、停止または進路変更を行わせるように構成されていてもよい。
【0023】
この構成によれば、予測手段によって、牽引台車と作業者との接触が予測された場合には、接触回避手段が牽引運搬車両に減速、停止または進路変更を行わせることから、牽引台車と作業者との接触をより一層確実に抑制することができる。
【0024】
また、本発明の牽引運搬車両の周辺監視システムは、複数台の牽引台車を用いる、工場内での物流のみならず、単一の牽引台車を用いる、建屋間での物流にも応用することができる。
【0025】
具体的には、本発明は、牽引運搬車両によって牽引される牽引台車と作業者との接触を監視するための、牽引運搬車両の周辺監視システムであって、上記牽引運搬車両に設けられ、当該牽引運搬車両周辺の作業者と、上記牽引台車と、を撮像する単一のカメラと、上記カメラによって撮像された上記牽引台車の一部の画像に基づいて危険領域を設定する危険領域設定手段と、上記カメラによって撮像された作業者の画像に基づいて、上記危険領域設定手段によって設定された危険領域内に作業者が入っていると判定した場合に、上記牽引台車と作業者との接触を予測する予測手段と、上記牽引台車と作業者との接触を回避させる接触回避手段と、を備え、上記接触回避手段は、上記予測手段によって、上記牽引台車と作業者との接触が予測された場合に、作動するように構成されていることを特徴とするものである。
【0026】
この構成によれば、牽引台車と作業者との接触が予測されると、牽引台車と作業者との接触を回避させる接触回避手段が作動することから、牽引運搬車両が相対的に狭い建屋間を走行する場合でも、牽引台車と建屋との間に作業者が挟まれるのを確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明に係る牽引運搬車両の周辺監視システムによれば、コストの増大を抑えつつ、牽引台車と作業者との接触を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態1に係る牽引運搬車両の周辺監視システムを模式的に示す図である。
【
図2】周辺監視システムを模式的に示すブロック図である。
【
図3】リスクエリアの設定手法を模式的に説明する図である。
【
図4】作業者に関する画像処理手法を模式的に説明する図である。
【
図5】牽引台車と作業者との接触の予測手法を模式的に説明する図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係る周辺監視システムを模式的に示す図である。
【
図7】従来の周辺監視システムを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
(実施形態1)
-全体構成-
図1は、本実施形態に係る牽引運搬車両10の周辺監視システム1を模式的に示す図であり、
図2は、周辺監視システム1を模式的に示すブロック図である。この周辺監視システム1は、
図1に示すように、工場内において、牽引運搬車両10によって列をなすように牽引される複数台の牽引台車20,21,22,23,…と、工場内で作業する作業者P(
図4参照)との接触を監視するためのものである。この周辺監視システム1は、
図1および
図2に示すように、牽引運搬車両10と、複数台(例えば8台~10台)の牽引台車20,21,22,23,…と、カメラ30と、処理装置40と、工場内に設置されたパトロールライト50およびスピーカー51と、を備えている。
【0031】
-牽引運搬車両-
牽引運搬車両10は、オペレータOの運転によって工場内で物流を行うものであり、複数台の牽引台車20,21,22,23,…に積み込まれた、生産に使用される部品60を、当該部品60が使用される作業ステーションに搬送する。この牽引運搬車両10は、
図2に示すように、通信部11と、電動モータ12と、操舵装置13と、ブレーキ装置14と、記憶部15と、制御部16と、ライト17と、スピーカー18と、舵角センサ19と、を備えている。
【0032】
通信部11は、後述する処理装置40の通信部41と、無線通信を行うことで各種情報の遣り取りを行うことが可能に構成されている。電動モータ12は、牽引運搬車両10の駆動源であり、制御部16によってその回転数が制御されるようになっている。操舵装置13は、オペレータOが手動で操舵角を制御する手動操舵制御と、制御部16の指令により自動で操舵角を制御する自動操舵制御と、を実現可能に構成されている。また、ブレーキ装置14も、オペレータOによる手動ブレーキと、制御部16の指令による自動ブレーキと、を実現可能に構成されている。記憶部15には、各牽引台車20,21,22,23,…の寸法等が記憶されている。ライト17は、制御部16の指令により、点灯または点滅するように構成されている。スピーカー18は、制御部16の指令により、警告音を発するように構成されている。舵角センサ19は、牽引運搬車両10の操舵軸(図示せず)の切れ角を検出するように構成されている。
【0033】
-カメラ-
カメラ30は、
図1に示すように、後方を向くように牽引運搬車両10に固定されていて、牽引運搬車両10周辺の作業者Pと、後方の複数台の牽引台車20,21,22,23,…と、を撮像するように構成されている。カメラ30によって撮像された画像データは、例えば牽引運搬車両10の記憶部15に記憶された後、通信部11によって処理装置40の通信部41へ送信されるようになっている。
【0034】
なお、本実施形態では、カメラ30を牽引運搬車両10に固定しているが、これに限らず、例えば、牽引運搬車両10の運転操作に起因する挙動(内輪差)の変化が小さい先頭の牽引台車20にカメラ30を固定して、牽引台車20よりも後方の牽引台車21,22,23,…を撮像するようにしてもよい。
【0035】
-処理装置-
処理装置40は、例えばパーソナルコンピュータであり、各種プログラム等に基づいて演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)や、各種プログラムや各種プログラムを実行する際に参照されるマップなどが記憶されているROM(Read Only Memory)や、CPUによる演算結果などを一時的に記憶するメモリであるRAM(Random Access Memory)等で構成されている。この処理装置40は、
図2に示すように、通信部41と、画像処理部42と、危険領域設定部43と、予測部44と、指令生成部45と、を備えている。これらの構成部41~45は、CPUによるプログラムの実行を通じて、所定の目的に合致した機能を実現するように構成されている。
【0036】
通信部41は、牽引運搬車両10の通信部11から、カメラ30によって撮像された画像データ、舵角センサ19によって検出された、画像データが撮像された際の操舵軸の切れ角、および、記憶部15に記憶された牽引台車20,21,22,23,…の寸法を受信する。
【0037】
図3は、リスクエリアRAの設定手法を模式的に説明する図である。画像処理部42は、
図3(a)に示す画像データから、
図3(b)に示すように、各牽引台車21,22,23,24,25における、カメラ30によって撮像された一部の画像21a,22a,23a,24a,25aを抽出するように構成されている。
【0038】
危険領域設定部(危険領域設定手段)43は、カメラ30によって撮像された牽引台車21,22,23,24の一部の画像21a,22a,23a,24aに基づき、各牽引台車21,22,23,24の全体の存在領域21b,22b,23b,24bを推定し、当該存在領域21b,22b,23b,24bに基づいてリスクエリア(危険領域)RAを設定するように構成されている。
【0039】
具体的には、危険領域設定部43は、
図3(b)に示す、画像処理部42によって抽出された一部の画像21a,22a,23a,24a,25aと、舵角センサ19によって検出された、画像データが撮像された際の操舵軸の切れ角と、牽引台車21,22,23,24の寸法と、に基づいて、
図3(c)に示すように、各牽引台車21,22,23,24の全体の存在領域21b,22b,23b,24bを推定する。これにより、カメラ30によって撮像できる範囲のみならず、カメラ30によって撮像できない範囲についても、各牽引台車21,22,23,24と作業者Pとの接触を監視することが可能となる。なお、本実施形態において、「存在領域」とは、牽引台車21,22,23,24の形状を床面に投影した領域を意味する。
【0040】
そうして、危険領域設定部43は、安全を見て、推定された各存在領域21b,22b,23b,24bを、
図3(d)に示すように、例えば各牽引台車21,22,23,24の車幅方向両側に1m~2mだけ拡大(延長)した領域を、リスクエリアRAとして設定する。
【0041】
ところで、作業者Pと牽引台車21,22,…との接触を判定する場合には、
図4(a)に示すように、作業者Pの位置を点Dに置き換えることが多いが、これでは、作業者Pの位置を正確に表しているとは言い難く、それ故、作業者Pと牽引台車21,22,…との接触を正確に予測することが困難となる。
【0042】
そこで、本実施形態の周辺監視システム1では、カメラ30によって撮像された画像における作業者Pを囲む区画31を、
図4(b)に示すように、床面に投影した仮想線Lに置き換えるように、画像処理部42を構成している。このように、作業者Pを囲む区画31を床面に投影した仮想線Lを用いることで、作業者Pの存在する領域が正確に表されることから、作業者Pの位置を点Dに置き換える場合に比して、作業者Pと牽引台車21,22,23,24との接触の予測精度を向上させることができる。
【0043】
予測部(予測手段)44は、カメラ30によって撮像された作業者Pの画像に基づいて、危険領域設定部43によって設定されたリスクエリアRA内に作業者Pが入っていると判定した場合に、牽引台車21,22,23,24と作業者Pとの接触を予測するように構成されている。
【0044】
具体的には、予測部44は、危険領域設定部43によって設定された、
図5(a)に示すリスクエリアRAの画像と、画像処理部42によって置き換えられた、
図5(b)に示す仮想線Lの画像と、を重ね合わせる。そうして、予測部44は、
図5(c)に示すように、作業者Pの存在する領域を置き換えた仮想線LがリスクエリアRA内に入っていると判定した場合に、牽引台車21,22,23,24と作業者Pとの接触を予測する。
【0045】
指令生成部45は、予測部44によって、牽引台車21,22,…と作業者Pとの接触が予測された場合に、下記の第1~第3指令の少なくとも1つを生成するように構成されている。
【0046】
〈第1指令〉
指令生成部45は、牽引台車21,22,…と作業者Pとの接触が予測された場合に、牽引運搬車両10のライト17を点灯または点滅させるとともに、牽引運搬車両10のスピーカー18から警告音を出力させる第1指令を生成するように構成されている。
【0047】
かかる第1指令は、通信部41から牽引運搬車両10の通信部11へ送信されて、牽引運搬車両10の制御部16へ入力される。第1指令を受けた制御部16は、ライト17を点灯または点滅させるとともに、スピーカー18から警告音を出力させることで、作業者Pへの注意喚起を行う。これにより、牽引運搬車両10周辺の作業者Pに対し、牽引台車21,22,…と作業者Pとが接触する危険があることを、光および音によって確実に伝えることができるので、作業者Pに注意喚起を促して、牽引台車21,22,…と作業者Pとの接触を抑制することができる。
【0048】
この場合、請求項との関係では、ライト17およびスピーカー18が、「牽引台車と作業者との接触が予測された場合に作動するように構成された、牽引台車と作業者との接触を回避させる接触回避手段」に相当する。
【0049】
〈第2指令〉
指令生成部45は、牽引台車21,22,…と作業者Pとの接触が予測された場合に、工場内に設置されたパトロールライト50を点灯させるとともに、工場内に設置されたスピーカー51から警告音を出力させる第2指令を生成するように構成されている。
【0050】
第2指令を受けることで、パトロールライト50が点灯するとともに、スピーカー51が警告音を出力することで、作業者Pへの注意喚起を行う。これにより、牽引運搬車両10周辺の作業者Pに対し、牽引台車21,22,…と作業者Pとが接触する危険があることを、光および音によって確実に伝えることができるので、作業者Pに注意喚起を促して、牽引台車21,22,…と作業者Pとの接触を抑制することができる。
【0051】
この場合、請求項との関係では、パトロールライト50およびスピーカー51が、「牽引台車と作業者との接触が予測された場合に作動するように構成された、牽引台車と作業者との接触を回避させる接触回避手段」に相当する。
【0052】
〈第3指令〉
指令生成部45は、牽引台車21,22,…と作業者Pとの接触が予測された場合に、牽引運搬車両10に減速、停止または進路変更を行わせる第3指令を生成するように構成されている。
【0053】
かかる第3指令は、通信部41から牽引運搬車両10の通信部11へ送信されて、牽引運搬車両10の制御部16へ入力される。第3指令を受けた制御部16は、例えば電動モータ12の回転数を低減させることで牽引運搬車両10を減速させ、または、ブレーキ装置14を作動させることで牽引運搬車両10を自動停止させ、または、操舵装置13を制御して牽引運搬車両10の進路を自動操舵制御にて変更させる。これにより、牽引台車21,22,…と作業者Pとの接触を抑制することができる。
【0054】
この場合、請求項との関係では、電動モータ12、ブレーキ装置14または操舵装置13が、「牽引台車と作業者との接触が予測された場合に作動するように構成された、牽引台車と作業者との接触を回避させる接触回避手段」に相当する。
【0055】
なお、第1指令、第2指令および第3指令は、それぞれ単独で実行してもよいし、例えば第2指令と第3指令とを同時に実行して、パトロールライト50の点灯およびスピーカー51の警告音による注意喚起とともに、牽引運搬車両10に減速、停止または進路変更を行わせてもよい。
【0056】
-効果-
本実施形態によれば、カメラ30によって撮像された牽引台車21,22,23,24の一部の画像21a,22a,23a,24aに基づき、各牽引台車21,22,23,24の全体の存在領域21b,22b,23b,24bを推定し、当該存在領域21b,22b,23b,24bに基づいてリスクエリアRAを設定することから、カメラ30によって撮像できない範囲についても、牽引台車21,22,23,24と作業者Pとの接触を監視することが可能となる。
【0057】
また、作業者PがリスクエリアRA内に入っているか否かを判定することで、複数台の牽引台車21,22,23,24と作業者Pとの接触を容易かつ正確に予測することができる。そうして、予測部44によって、牽引台車21,22,23,24と作業者Pとの接触が予測されると、パトロールライト50およびスピーカー51等が作動したり、牽引運搬車両10に減速、停止または進路変更を行わせたりすることから、牽引台車21,22,23,24と作業者Pとの接触を確実に抑制することができる。
【0058】
しかも、1台のカメラ30を用いて撮像された、牽引台車21,22,23,24および作業者Pの画像に基づいて、複数台の牽引台車21,22,23,24と作業者Pとの接触を予測することから、定点カメラとは異なり、生産工場内のレイアウト変更や、牽引運搬車両の経路変更に対応可能であるとともに、定点カメラや複数のカメラを設ける場合に比して、コストの増大を抑えることができる。
【0059】
なお、上記説明において、各牽引台車21,22,23,24の全体の存在領域21b,22b,23b,24bを推定してから、当該存在領域21b,22b,23b,24bに基づいてリスクエリアRAを設定するとしたが、本実施形態に係る周辺監視システム1は、牽引台車21,22,23,24の一部の画像21a,22a,23a,24aに基づいてリスクエリアRAを設定するとしてもよい。例えば、各牽引台車の側面のみを検出し、その側面に対して前方にリスクエリアを設定してもよい。これにより、牽引台車の側面の検出に応じてリスクエリアを設定することができるので、牽引台車に載置される物体の形状に起因する検出精度の低下を回避できる。また、各牽引台車の側面を異なる色彩で縞模様に着色することで、各牽引台車の側面の検出精度を高めることができる。
【0060】
(実施形態2)
本実施形態は、周辺監視システムを、工場外を走行する自動運転車両に適用する点が、より具体的には、構内で建屋間を走行する自動運転車両に適用する点が、上記実施形態1と異なるものである。以下、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
【0061】
図6は、本実施形態に係る周辺監視システム1’を模式的に示す図である。この周辺監視システム1’は、建屋90間において、自動運転車両(牽引運搬車両)70によって牽引される牽引台車80と、作業者Pとの接触を監視するためのものである。この周辺監視システム1’は、
図6(a)に示すように、自動運転車両70と、牽引台車80と、カメラ30’と、処理装置40’と、を備えている。
【0062】
自動運転車両70は、建屋90間での物流を行うものであり、牽引台車80に積み込まれた部品(図示せず)を、一の建屋90から他の建屋90に搬送する。この自動運転車両70には、
図6(a)に示すように、オペレータOが乗っているが、不図示のECU等により自動で、発進、停止、方向転換等が行われるようになっている。
【0063】
カメラ30’は、後方を向くように自動運転車両70に固定されていて、自動運転車両70周辺の作業者Pと、牽引台車80と、を撮像するように構成されている。処理装置40’は、実施形態1とは異なり、自動運転車両70に固定されている。処理装置40’は、実施形態1の処理装置40とほぼ同様の構成になっていて、画像処理部や、危険領域設定部や、予測部等を備えている。
【0064】
ここで、本実施形態を理解し易くするために、自動運転車両が建屋間を走行する場合の従来の周辺監視システムについて説明する。
【0065】
図7は、従来の周辺監視システム101を模式的に示す図である。従来の周辺監視システム101は、
図7(a)に示すように、自動運転車両170と、牽引台車180と、定点カメラ130と、電柱133と、制御盤140と、を備えている。
【0066】
従来の周辺監視システム101では、電柱133の上端部に設けられた定点カメラ130で、自動運転車両170周辺を撮像し、牽引台車180と作業者Pとの接触が予測される場合には、制御盤140にて自動運転車両170を制御し、自動運転車両170のライト(図示せず)を点灯させたり、自動運転車両170のスピーカー(図示せず)から警告音を出力させたり、自動運転車両170に進路変更を行わせたりすることで、牽引台車180と建屋90と間に作業者Pが挟み込まれるのを回避させるようにしていた。
【0067】
しかしながら、このような従来の周辺監視システム101には、以下のような問題がある。すなわち、
図7(b)の太線矢印で示すように自動運転車両170を建屋90間で走行させる場合には、自動運転車両170の方向転換が行われる、破線Aで囲まれた十字路および破線Bで囲まれた十字路の両方で、牽引台車180と作業者Pとの接触可能性をチェックする必要がある。そうすると、破線Aで囲まれた十字路および破線Bで囲まれた十字路の両方において、電柱133を新設し、新設された電柱133の上端部に定点カメラ130を設けるとともに、制御盤140を設置する必要がある。これら定点カメラ130、電柱133および制御盤140を設置するには、1か所あたり約500万円を要するため、十字路ごとにこれらの設備を設けると、コストが増大するという問題がある。
【0068】
そこで、本実施形態では、実施形態1と同様に、1台のカメラ30’によって撮像された牽引台車80の一部の画像に基づいて、牽引台車80の全体の存在範囲を推定するようにしている。
【0069】
具体的には、
図6(b)の太線矢印で示すように自動運転車両70を建屋90間で走行させる場合には、処理装置40’の危険領域設定部が、カメラ30’によって撮像された牽引台車80の一部の画像に基づき、牽引台車80の全体の存在領域を推定し、当該存在領域に基づいてリスクエリアを設定する。処理装置40’の予測部は、カメラ30’によって撮像された作業者Pの画像に基づいて、作業者Pがリスクエリアに入っていると判定した場合に、牽引台車80と作業者Pとの接触を予測する。そうして、処理装置40’は、牽引台車80と作業者Pとの接触が予測された場合には、自動運転車両70のライト(図示せず)を点灯させたり、自動運転車両70のスピーカー(図示せず)から警告音を出力させたり、自動運転車両70に減速、停止または進路変更を行わせたりすることで、牽引台車80と建屋90との間に作業者Pが挟まれるのを抑制するように構成されている。
【0070】
-効果-
本実施形態によれば、十字路ごとに定点カメラ130、電柱133および制御盤140を設ける必要がなく、自動運転車両70に固定された1台のカメラ30’によって撮像された牽引台車80の一部の画像に基づいて、牽引台車80と作業者Pとの接触を抑制することができるので、コストを大幅に削減しつつ、自動運転車両70が相対的に狭い建屋90間を走行する場合でも、牽引台車80と建屋90との間に作業者Pが挟まれるのを確実に抑制することが可能となる。
【0071】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0072】
上記実施形態1では、オペレータOが牽引運搬車両10を運転するようにしたが、これに限らず、牽引運搬車両10を自動運転車両として構成してもよい。
【0073】
また、上記実施形態1では、1台の牽引運搬車両10に本発明を適用したが、これに限らず、例えば工場内を走行する複数台の牽引運搬車両10に本発明を適用して、複数台の牽引運搬車両10を1台の処理装置40で制御するようにしてもよい。
【0074】
さらに、上記実施形態2では、牽引運搬車両を自動運転車両70として構成したが、これに限らず、オペレータOが牽引運搬車両を運転するようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態2では、処理装置40’を自動運転車両70に設けたが、これに限らず、例えば処理装置40’を一の建屋90に設けて、遠隔で自動運転車両70を制御するようにしてもよい。
【0076】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によると、コストの増大を抑えつつ、牽引台車と作業者との接触を抑制することができるので、牽引運搬車両によって牽引される牽引台車と作業者との接触を監視するための周辺監視システムに適用して極めて有益である。
【符号の説明】
【0078】
1,1’ 周辺監視システム
10 牽引運搬車両
12 電動モータ(接触回避手段)
13 操舵装置(接触回避手段)
14 ブレーキ装置(接触回避手段)
17 ライト(接触回避手段)
18 スピーカー(接触回避手段)
20 先頭の牽引台車
21~25 牽引台車
21a~25a 一部の画像
30,30’ カメラ
31 区画
43 危険領域設定部(危険領域設定手段)
44 予測部(予測手段)
50 パトロールライト(接触回避手段)
51 スピーカー(接触回避手段)
70 自動運転車両(牽引運搬車両)
80 牽引台車
L 仮想線
P 作業者
RA リスクエリア(危険領域)