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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048426
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】眼鏡光学物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/10 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
G02C7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157726
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】509333807
【氏名又は名称】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】石崎 貴子
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BE00
(57)【要約】
【課題】眼鏡光学物品の装飾性を高くすることを目的とする。
【解決手段】物体側の面である外面10aと眼球側の面である内面10bとを備え、両面の間に粒径50~150μmの光沢粒子Pを含有する、眼鏡光学物品1及びその関連技術を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側の面である外面と眼球側の面である内面とを備え、両面の間に粒径50~150μmの光沢粒子を含有する、眼鏡光学物品。
【請求項2】
光沢粒子の最大粒径の1.5倍の厚さの層内に光沢粒子が収まった光沢粒子含有層を備える、請求項1に記載の眼鏡光学物品。
【請求項3】
光沢粒子含有層を覆うように設けられたカバー層を備える、請求項2に記載の眼鏡光学物品。
【請求項4】
光沢粒子を含有する基材を備える、請求項1~3のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品。
【請求項5】
基材と、
基材の外面及び内面の少なくともいずれか一つを覆うように設けられた反射防止層と、
を備える、請求項1~4のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品。
【請求項6】
基材と、
基材の外面及び内面の少なくともいずれか一つを覆うように設けられたプライマー層と、
プライマー層を覆うように設けられた主層と、
を備え、
光沢粒子の最大粒径の1.5倍の厚さの層内に光沢粒子が収まった光沢粒子含有層は光沢粒子とプライマー層及び主層の少なくともいずれかとにより構成され、該光沢粒子含有層を覆うように設けられたカバー層は主層により構成される、請求項1~5のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品。
【請求項7】
主層は、平滑層、調光層及びハードコート層の少なくともいずれかを含む、請求項6に記載の眼鏡光学物品。
【請求項8】
主層の厚さは20~200μmである、請求項6又は7に記載の眼鏡光学物品。
【請求項9】
光沢粒子は、金属又は該金属の酸化物粒子、及び、真珠光沢顔料を構成する粒子の少なくともいずれかである、請求項1~8のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品。
【請求項10】
眼鏡光学物品は染色レンズであり、視線通過部分の平均透過率が8%以上である、請求項1~9のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品。
【請求項11】
眼鏡光学物品は透明レンズであり、視線通過部分の平均透過率が60%以上である、請求項1~9のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品。
【請求項12】
眼鏡光学物品は、眼鏡レンズ、該眼鏡レンズを備える眼鏡、サングラス又はゴーグルである、請求項1~11のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品。
【請求項13】
光沢粒子は眼鏡光学物品の外面と内面との間であって眼鏡光学物品を正面視したときの周縁部に偏在する、請求項1~12のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品。
【請求項14】
物体側の面である外面と眼球側の面である内面とを備える眼鏡光学物品の製造方法であって、両面の間に粒径50~150μmの光沢粒子を含有させる、眼鏡光学物品の製造方法。
【請求項15】
基材の外面及び内面の少なくともいずれか一つを覆うように、光沢粒子含有液を塗布する工程を有する、請求項14に記載の眼鏡光学物品の製造方法。
【請求項16】
基材に対し、基材の外面及び内面の少なくともいずれか一つを覆うようにプライマー層を設ける工程と、
プライマー層に光沢粒子を振り掛ける工程と、
光沢粒子を覆うように主層の原料液を塗布する工程と、
を有する、請求項14又は15に記載の眼鏡光学物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡光学物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、眼鏡レンズの部品Bを3D印刷インクの蒸着により得ることが記載されている([0065]等)。そして、特許文献1には、3D印刷インクに含有され得る顔料として金属光沢顔料又は真珠光沢顔料が記載されている([0132])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-537052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、眼鏡レンズ、該眼鏡レンズを備える眼鏡、サングラス又はゴーグルのような眼鏡光学物品には、高い装飾性が求められるようになった。
【0005】
本発明者は、眼鏡光学物品の装飾性を高くする一手段として光沢粒子に着目した。該光沢粒子をより大きくすれば、該光沢粒子がより目に付きやすくなり、ひいては光学物品の装飾性が高くなる。但し、該光沢粒子を大きくするということは、該光沢粒子が、光学物品を通過する光を妨げやすいことを意味する。つまり、特許文献1で顔料を使用しているとしても、金属光沢顔料又は真珠光沢顔料を構成する粒子は目視不可能な程度に小さくするのが一般的な発想である。
【0006】
本発明の一実施例は、眼鏡光学物品の装飾性を高くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、
物体側の面である外面と眼球側の面である内面とを備え、両面の間に粒径50~150μmの光沢粒子を含有する、眼鏡光学物品である。
【0008】
本発明の第2の態様は、
光沢粒子の最大粒径の1.5倍の厚さの層内に光沢粒子が収まった光沢粒子含有層を備える、第1の態様に記載の眼鏡光学物品である。
【0009】
本発明の第3の態様は、
光沢粒子含有層を覆うように設けられたカバー層を備える、第2の態様に記載の眼鏡光学物品である。
【0010】
本発明の第4の態様は、
光沢粒子を含有する基材を備える、第1~第3の態様のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品である。
【0011】
本発明の第5の態様は、
基材と、
基材の外面及び内面の少なくともいずれか一つを覆うように設けられた反射防止層と、
を備える、第1~第4の態様のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品である。
【0012】
本発明の第6の態様は、
基材と、
基材の外面及び内面の少なくともいずれか一つを覆うように設けられたプライマー層と、
プライマー層を覆うように設けられた主層と、
を備え、
光沢粒子の最大粒径の1.5倍の厚さの層内に光沢粒子が収まった光沢粒子含有層は光沢粒子とプライマー層及び主層の少なくともいずれかとにより構成され、該光沢粒子含有層を覆うように設けられたカバー層は主層により構成される、第1~第5の態様のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品である。
【0013】
本発明の第7の態様は、
主層は、平滑層、調光層及びハードコート層の少なくともいずれかを含む、第6の態様に記載の眼鏡光学物品である。
【0014】
本発明の第8の態様は、
主層の厚さは20~200μmである、第6又は第7の態様に記載の眼鏡光学物品である。
【0015】
本発明の第9の態様は、
光沢粒子は、金属又は該金属の酸化物粒子、及び、真珠光沢顔料を構成する粒子の少なくともいずれかである、第1~第8の態様のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品である。
【0016】
本発明の第10の態様は、
眼鏡光学物品は染色レンズであり、視線通過部分の平均透過率が8%以上である、第1~第9の態様のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品である。
【0017】
本発明の第11の態様は、
眼鏡光学物品は透明レンズであり、視線通過部分の平均透過率が60%以上である、第1~第9の態様のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品である。
【0018】
本発明の第12の態様は、
眼鏡光学物品は、眼鏡レンズ、該眼鏡レンズを備える眼鏡、サングラス又はゴーグルである、第1~第11の態様のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品である。
【0019】
本発明の第13の態様は、
光沢粒子は眼鏡光学物品の外面と内面との間であって眼鏡光学物品を正面視したときの周縁部に偏在する、第1~第12の態様のいずれか一つに記載の眼鏡光学物品である。
【0020】
本発明の第14の態様は、
物体側の面である外面と眼球側の面である内面とを備える眼鏡光学物品の製造方法であって、両面の間に粒径50~150μmの光沢粒子を含有させる、眼鏡光学物品の製造方法である。
【0021】
本発明の第15の態様は、
基材の外面及び内面の少なくともいずれか一つを覆うように、光沢粒子含有液を塗布する工程を有する、第14の態様に記載の眼鏡光学物品の製造方法である。
【0022】
本発明の第16の態様は、
基材に対し、基材の外面及び内面の少なくともいずれか一つを覆うようにプライマー層を設ける工程と、
プライマー層に光沢粒子を振り掛ける工程と、
光沢粒子を覆うように主層の原料液を塗布する工程と、
を有する、第14又は第15の態様に記載の眼鏡光学物品の製造方法である。
【0023】
また、上記の態様に組み合わせ可能な他の態様を列挙すると以下のとおりである。
【0024】
本発明の一実施例における眼鏡光学物品は、大きく分けて、本体部である基材と、基材を覆うように設けられる膜とにより構成されてもよい。基材にも光沢粒子を含有させてもよいし、上記膜のみに光沢粒子を含有させてもよい。
【0025】
基材とプライマー層との間にλ/4層を設けても構わない。
【0026】
光沢粒子の形状には限定は無いが、光の反射を効率良く生じさせて光沢を良好に催すべく、非真球形状(例えば魚燐状、フレーク状)の粒子を含有させてもよい。非真球形状の粒子の含有割合は50質量%を超えるのが好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0027】
外面(内面)に設けられた光沢粒子含有層は、外面(内面)側の膜中の光沢粒子のうち90%以上(好適には95%以上、更に好適には99%以上)の数の光沢粒子を含有してもよい。
【0028】
カバー層が含有する該光沢粒子は膜中の該光沢粒子のうち10%以下(好適には5%以下、更に好適には1%以下)の数であってもよい。
【0029】
光沢粒子の最大粒径の1.5倍(好適には1.3倍或いは1.2倍)の厚さの層内に光沢粒子が収まった光沢粒子含有層を備えてもよい。
【0030】
外面(及び/又は内面)に設けられた光沢粒子含有層の最表面側に反射防止層を設けてもよい。
【0031】
光沢粒子の粒径は好適には50~70μmである。
【0032】
主層の厚さの下限は30μmであってもよく、上限は70μmであってもよい。主層の厚さの範囲規定は、プライマー層と主層との合計厚さに適用してもよい。
【0033】
本発明の一実施例の眼鏡光学物品が染色レンズの場合、装用者の視認性を鑑みると、視線通過部分の平均透過率が8%以上であるのが好ましい。本発明の一実施例の眼鏡光学物品が透明レンズの場合、視線通過部分の平均透過率が60%以上であるのが好ましく、75%以上であるのがより好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明の一実施例によれば、眼鏡光学物品の装飾性を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明の一実施例の眼鏡レンズの正面視概略図である。
図2図2は、図1のA-Aでの断面視概略図である。
図3図3は、本発明の一実施例の眼鏡レンズの製造方法を示す断面視概略図である。
図4図4は、<具体例1>の断面視概略図である。
図5図5は、<具体例7>の断面視概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<眼鏡光学物品>
本発明の一実施例は、物体側の面である外面と眼球側の面である内面とを備え、両面の間に粒径50~150μm(好適には50~70μm)の光沢粒子を含有する、眼鏡光学物品に関する。
【0037】
本発明の一実施例における眼鏡光学物品においては、最表面である外面と内面との間に光沢粒子を含有するのであって、外面上にも内面上にも光沢粒子は存在しない。つまり、本発明の一実施例における眼鏡光学物品においては、最表面である外面よりも内部且つもう一つの最表面である内面よりも内部に光沢粒子が存在する。
【0038】
本発明の一実施例における「眼鏡光学物品」とは、眼鏡フレームの形状に合わせた加工前の眼鏡レンズを含むし、アイウェアのうち顔に装着したときに眼と該アイウェアとの間に空間が設けられるものを含む。つまり、本明細書におけるアイウェアはコンタクトレンズを含まない。アイウェアとしては、眼鏡フレームの形状に合わせた加工後の眼鏡レンズを備える眼鏡が含まれる。また、サングラス又はゴーグルも本明細書におけるアイウェアに含まれる。本明細書では、眼鏡光学物品が加工前の眼鏡レンズである場合を主に例示する。
【0039】
図1は、本発明の一実施例の眼鏡レンズの正面視概略図である。
図2は、図1のA-Aでの断面視概略図である。
図3は、本発明の一実施例の眼鏡レンズの製造方法を示す断面視概略図である。
【0040】
眼鏡光学物品10が眼鏡レンズである場合、眼鏡レンズは、単焦点レンズ、多焦点レンズ、累進屈折力レンズ等の各種レンズであってもよい。レンズの種類は、レンズ基材の両面の面形状により決定される。また、レンズ基材表面は、凸面、凹面、平面のいずれであってもよい。通常のレンズ基材及び眼鏡レンズでは、物体側の面は凸面、眼球側の面は凹面であり、いわゆるメニスカス形状である。ただし、本発明は、これに限定されるものではない。
【0041】
本発明の一実施例における「光沢粒子P」とは、眼鏡光学物品10の装用者以外の第三者が該眼鏡光学物品10を見たときに光沢を催す粒子である。この光沢により、眼鏡光学物品10の装飾性が高くなる。
【0042】
光沢粒子Pの素材としては、公知の光沢顔料を使用しても構わない。該光沢顔料としては、金属製顔料でも構わないし非金属製顔料でも構わないし両者を混在させたものでも構わない。光沢粒子Pは、金属又は該金属の酸化物粒子、及び、真珠光沢顔料を構成する粒子の少なくともいずれかであってもよい。雲母チタン、ホウケイ酸やケイ酸などのガラス系、オキシ塩化ビスマス等を光沢粒子Pとして使用しても構わない。
【0043】
光沢粒子Pの形状には限定は無いが、光の反射を効率良く生じさせて光沢を良好に催すべく、非真球形状(例えば魚燐状、フレーク状)の粒子を含有させてもよい。非真球形状の粒子の含有割合は50質量%を超えるのが好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0044】
上記光沢粒子Pの粒径は50~150μm(好適には50~70μm)である。各粒子サイズは、反射型の光学顕微鏡によって倍率100倍程度で粒子を観察して求めることができる。「粒子サイズ」は、粒子の輪郭上の2点を結ぶ直線として最も長い直線の長さ(即ち長径)として求めてもよい。
【0045】
その一具体例としては以下の通りである。粒子を無作為に5つ抽出し、これら粒子についてそれぞれ求められた長径の算術平均を、粒子サイズ、つまり、上記光沢粒子Pの粒径と定義してもよい。
【0046】
本発明の一実施例における眼鏡光学物品10は、大きく分けて、本体部である基材1と、基材1を覆うように設けられる膜とにより構成される(例えば図2図3)。
【0047】
基材1は、基材外面1aと基材内面1bとを有する。眼鏡光学物品10では、この基材外面1a及び/又は基材内面1bに上記膜が形成される。そして、物体側の面である外面10aと眼球側の面である内面10bとが構成される。眼鏡光学物品10が眼鏡又はサングラスの場合は、該膜が形成される部分以外の部材として、耳に掛けるためのテンプルが存在する。
【0048】
眼鏡光学物品10は、上記光沢粒子Pを含有する基材1を備えてもよい。この場合、光沢粒子Pを分散させた基材原料を金型に流し込んで硬化させることにより基材1を作製してもよい。
【0049】
上記膜に光沢粒子Pを含有させる構成の一例は以下の通りである。つまり、眼鏡光学物品10は、基材1と、基材外面1a及び基材内面1bの少なくともいずれか一つを覆うように設けられたプライマー層2と、プライマー層2を覆うように(好適にはプライマー層2と接触して)設けられた主層3と、を備えてもよい(例えば図2図3)。主層3は、プライマー層2に対して主となる層を指す。主層3は、プライマー層2の直上に設けられる層であって反射防止層4の直下までの層を指す。
【0050】
光沢粒子Pの最大粒径の1.5倍の厚さの層内に光沢粒子Pが収まった光沢粒子含有層31はプライマー層2及び主層3の少なくともいずれかにより構成され、該光沢粒子含有層31を覆うように設けられたカバー層32は主層3により構成されるのが好ましい。プライマー層2及び主層3は、光沢粒子Pを除き、主成分(固形分組成において最大質量%の成分、且つ、好適には50質量%を超える成分)が樹脂であるのがよい。
【0051】
なお、基材1にも光沢粒子Pを含有させてもよいし、上記膜のみ(一例としては基材1と反射防止層4との間に挟まれた膜)に光沢粒子Pを含有させてもよい。また、上記膜を構成する各層の少なくともいずれかに光沢粒子Pを含有させてもよく、各層の原料液と光沢粒子Pとを混合したうえで該各層を形成してもよい。但し、その場合、光沢粒子Pの最大粒径よりも該各層の厚さが小さい場合、該各層から光沢粒子Pが露出する可能性が高いため、該露出を防ぐべく、言い方を変えると該露出による凸凹(でこぼこ)を平滑化すべく、他の層を別途設けるのが好ましい。
【0052】
例えば、プライマー層2の原料液と光沢粒子Pとを混合したうえで該プライマー層2を形成する場合、光沢粒子Pの露出を防ぐべく、後掲の平滑層3a又は調光層をプライマー層2の直上に形成するのがよい。調光層の原料液と光沢粒子Pとを混合したうえで該調光層を形成する場合、光沢粒子Pの露出を防ぐべく、ハードコート層3bを調光層の直上に形成するのがよい。
【0053】
ハードコート層3bの原料液と光沢粒子Pとを混合したうえで該ハードコート層3bを形成する場合、光沢粒子Pの最大粒径よりも十分に厚い該ハードコート層3bを形成するのがよい。その一方、光沢粒子Pの最大粒径よりも薄いハードコート層3bを形成し、ハードコート層3bの最表面側から光沢粒子Pが露出する場合であっても、ハードコート層3bの直上に反射防止層4を形成すれば光沢粒子Pは露出しない。つまり、この場合であっても、眼鏡光学物品10においては、最表面である外面10aよりも内部且つもう一つの最表面である内面10bよりも内部に光沢粒子Pが存在する。
【0054】
本発明の一実施例では、耐衝撃性を向上すべく、基材1に対してプライマー層2を形成する。なお、基材1とプライマー層2との間にλ/4層(図2図3では不図示)を設けても構わない。
【0055】
上記λ/4層の詳細については、例えば特開2011-113070号公報の中間層を参照でき、段落0025~0033を参照できる。
上記プライマー層2の詳細については、例えば特開2012-128135号公報の段落0029、0030、又は特開2009-67845号公報の段落0108を参照できる。
【0056】
プライマー層2の原料を基材1に塗布した後(図3(a))、塗布された該原料を硬化する前に光沢粒子Pを所定の箇所に振り掛けた後、該原料を硬化させてもよい(図3(b))。この態様を採用すれば、光沢粒子Pを、眼鏡光学物品10の外面10aと内面10bとの間であって、装用された眼鏡光学物品10を正面視したときの周縁部に偏在させられる(例えば図1)。この「正面視」とは、眼鏡光学物品10を装用した装用者と相対したときの方向である。
【0057】
本発明の一実施例においては、装用された眼鏡光学物品10を正面視したときに装用者の耳側をX1方向、鼻側をX2方向、上方をY1方向、下方をY2方向とする。X1-X2方向、Y1-Y2方向に垂直な方向をZ1-Z2方向とする。Z1-Z2方向は光軸方向でもあってもよい。Z1方向は装用者から見て前方であり、Z2方向は装用者から見て公報である。「正面視」とは、眼鏡光学物品10を装用した装用者をZ2方向に向かって見るときの方向である。「断面視」とは、Z1-Z2方向(眼鏡光学物品10の厚さ方向)での断面視である。
【0058】
光沢粒子Pを上記周縁部に偏在させることは、眼鏡光学物品10の視線通過部分(眼鏡でいう眼鏡レンズの中央寄りの部分)に光沢粒子Pを(ほぼ)配置しないことを意味する。これは、眼鏡光学物品10の装用者にとって快適な視野が得られることを意味する。ここで言う「偏在」とは、正面視において、眼鏡光学物品10の眼前部分(眼鏡で言うところのフレームで保持されている眼鏡レンズ)全体に光沢粒子Pが均等に分散していないことを指す。そして「光沢粒子Pを周縁部に偏在」とは、正面視において、眼鏡光学物品10の視線通過部分よりも周縁部の方が、光沢粒子Pが密集していることを指す。
【0059】
この態様を採用すれば、眼鏡光学物品10の視線通過部分の平均透過率を所定値以上とすることも可能となる(具体的な数値は後述)。ここでの「眼鏡光学物品10の視線通過部分」は、眼鏡光学物品10の眼前部分(眼鏡でいう眼鏡レンズ)を正面視したときの、該眼前部分の中心(幾何中心、光学中心、又は芯取り中心)から半径1cmの円内を指す。ここでは、該円外を周縁部とする。
【0060】
光沢粒子Pを偏在させるのは上記周縁部全体であってもよいし上記周縁部の一部のみであってもよい。上記周縁部の一部のみを選択する場合、偏在させる箇所に限定は無いが、例えば正面視における周縁部の上方に光沢粒子Pを偏在させてもよい。本願各図の例がこの場合に相当する。
【0061】
塗布後のプライマー層2の原料を硬化後、光沢粒子Pの末端はプライマー層2にめり込んでおり、最表面には光沢粒子Pが多数存在するため最表面は凸凹(でこぼこ)である。そして、この光沢粒子Pを覆うように主層3を設けてもよい(図3(c))。
【0062】
主層3は、下地層であるプライマー層2を覆うように設けられる層であり、強度向上機能、場合によっては調光機能を奏する機能層でもある。主層3は、プライマー層2を覆うように設けられた光沢粒子含有層31と、光沢粒子含有層31を覆うように設けられたカバー層32とを備える。一例としては、主層3は、光沢粒子含有層31とカバー層32からなる。
【0063】
主層3は、プライマー層2の該凸凹(でこぼこ)を平坦化してもよい。主層3の素材には限定は無いが、該主層3は、平滑層3a(或いは調光層)及びハードコート層3bの少なくともいずれかを含んでもよいし、少なくともハードコート層3bを含んでもよい。
【0064】
調光層の詳細については、例えば特開2013-114162号公報の実施例1を参照できる。調光層とは、眼鏡光学物品10の眼前部分において、フォトクロミック性を発揮するために基材1上に設けられた層である。調光層の素材は、公知の調光層の素材を使用して構わない。例えば、有機フォトクロミック色素を調光層に含有させても構わない。有機フォトクロミック色素が、明るい屋外では太陽光等の紫外線を含む光に反応して発色し、紫外線が無い状態下、例えば室内に移動すると元の色(無色状態)に戻り高い透過率を回復するという可逆性の作用を利用しても構わない。この作用が、フォトクロミック性と呼ばれている。また、このようなフォトクロミック性により、太陽光の眩しさを低減できる。
【0065】
ハードコート層3bの詳細については、例えば特開2012-128135号公報段落0025、0026、0030、又は特開2019-82631号公報の実施例を参照できる。ハードコート層3bの材料としては特に限定は無いが、有機ケイ素化合物をハードコート液に用いてもよい。有機ケイ素化合物には特に限定は無く、例えばエポキシ系、アクリル系、ビニル系、メタクリル系のシランカップリング剤等を用いることができる。
【0066】
或いは、後掲の<具体例1>に記載のように、主層3は、複数の層により構成されてもよい。例えば、光沢粒子Pの末端がプライマー層2にめり込み且つ最表面に光沢粒子Pによる凸凹(でこぼこ)が生じる場合、この凸凹(でこぼこ)を埋めるべく上記調光層を設けてもよいし、調光機能を有さない層を平滑層3aとして設けてもよい。そして、該調光層又は平滑層3aを覆うようにハードコート層3bを設けてもよい。この平滑層3aの原料には限定は無く、ハードコート層3bの原料(ハードコート液)と同素材でも構わないし、後掲の<具体例1>等に記載のように調光層において有機フォトクロミック色素及びその関連物質を混合していないものを原料として使用しても構わない。主層3の原料液は、別々に用意された複数種類の薬剤により構成されてもよい。該薬剤としては、例えば調光層の原料、ハードコート液、平滑層3aの原料が挙げられる。以降は、該薬剤として調光層の原料又はハードコート液の場合を例示する。
【0067】
上記例に従えば、基材1側から最表面に向かって、プライマー層2、光沢粒子Pが存在する層である光沢粒子含有層31、光沢粒子Pが存在せず且つ主層3の原料液により構成されるカバー層32が順に配置される。
【0068】
ここでは、光沢粒子Pが存在する層のことを光沢粒子含有層31と称する。光沢粒子含有層31は、光沢粒子Pと主層3の原料液とで構成される。そして、光沢粒子含有層31を覆うようにカバー層32が設けられる。カバー層32は、(ほぼ)主層3の原料液のみにより構成され得る。
【0069】
もちろん、主層3の原料液の硬化の際に、光沢粒子Pが最表面側へと泳動し得るが、ごくわずかである。例えば外面側10a(内面側10b)に設けられた光沢粒子含有層31は、外面側10a(内面側10b)側の膜中の光沢粒子Pのうち90%以上(好適には95%以上、更に好適には99%以上)の数の光沢粒子Pを含有する。この状態の光沢粒子含有層31を「光沢粒子Pが収まった光沢粒子含有層31」ともいう(図3(d))。カバー層32が含有する該光沢粒子Pは膜中の該光沢粒子Pのうち10%以下(好適には5%以下、更に好適には1%以下)の数である。
【0070】
光沢粒子Pの最大粒径の1.5倍(好適には1.3倍或いは1.2倍)の厚さの層内に光沢粒子Pが収まった光沢粒子含有層31を備えてもよい。つまり、本発明の一実施例では、眼鏡光学物品10を断面視したとき、光沢粒子Pは、光沢粒子含有層31が設けられる側の基材外面1a及び/又は基材内面1bの表面形状に沿って概ね横一列に揃った状態で眼鏡光学物品10内に存在する。そして、光沢粒子含有層31は、(ほぼ)主層3の原料液のみにより構成されるカバー層32により覆われる。
【0071】
眼鏡光学物品10を正面視したときに光沢粒子Pを周縁部に偏在させる場合、光沢粒子含有層31の視線通過部分においては光沢粒子Pが(ほぼ)存在しない。そのため、光沢粒子含有層31の視線通過部分は、カバー層32と一体となっている(そのため本願各図では光沢粒子含有層31とカバー層32との境界を長破線で記載している)。この場合であっても、光沢粒子Pの最大粒径の1.5倍(好適には1.3倍、更に好適には1.2倍)の厚さの層を、光沢粒子Pが収まった光沢粒子含有層31と称する。光沢粒子含有層31内において正面視での周縁部に光沢粒子Pが偏在するのが好ましい。
【0072】
光沢粒子含有層31の特定の一態様としては、例えば、断面視において、光沢粒子Pの最大粒径の1.5倍(好適には1.3倍或いは1.2倍)の厚さの層であって、光沢粒子Pを最も多く該層内に収める位置に配置された層を、光沢粒子含有層31と特定してもよい。光沢粒子Pの末端がプライマー層2にめり込んでいる場合は、光沢粒子含有層31は、プライマー層2の最表面側を含み、且つ、光沢粒子Pによる凸凹(でこぼこ)を埋める平滑層3a、調光層又はハードコート層3bを含む。
【0073】
そして、光沢粒子含有層31を覆うように設けられる層であって(ほぼ)上記主層3の原料液のみにより構成される層(即ち光沢粒子Pを(ほぼ)含まず、且つ、最表面側に設けられる反射防止層4及び保護層5よりも基材1側の層)をカバー層32と特定してもよい。カバー層32は、ハードコート層3bのみからなる場合もあるし、ハードコート層3bと平滑層3a(又は調光層)からなる場合もあるし、平滑層3a(又は調光層)からなる場合もある。
【0074】
主層3の厚さは20~200μmであってもよい。下限は30μmであってもよい。上限は70μmであってもよい。プライマー層2と主層3とを合わせた厚さに対して本段落の数値範囲の規定を適用してもよい。
【0075】
光沢粒子含有層31を存在させるのは外面側10a及び/又は内面側10bであるが、装飾性を高くして第三者の目に付きやすくすることを考慮すると少なくとも外面側10a又は外面10aのみに光沢粒子含有層31を存在させてもよい。本願の各図は外面側10aのみに光沢粒子含有層31を存在させる場合を例示している。
【0076】
本発明の一実施例における眼鏡光学物品10は、基材1と、基材外面1a及び基材内面1bの少なくともいずれか一つを覆うように設けられた反射防止層4と、を備えてもよい。つまり、光沢粒子Pを内部に備えた状態で、該光沢粒子Pから見て最表面側に反射防止層4を設けてもよい。一具体例としては、基材外面1a(及び/又は基材内面1b)に設けられた光沢粒子含有層31の最表面側に反射防止層4を設けてもよい。例えば、ハードコート層3b(主層3)と接触させて反射防止層4を設けてもよい。そして、外面側10a及び内面側10bの最表面に、反射防止層4等を保護する保護層5を配置してもよい(図2、なお、図3(d)では説明の便宜上、外面側10aのみに保護層5を形成)。
【0077】
眼鏡光学物品10が眼鏡レンズである場合、眼鏡レンズの基材1(レンズ基材)は、特に限定されないが、ガラス、又は、(メタ)アクリル樹脂をはじめとするスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アリル樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR-39)等のアリルカーボネート樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、イソシアネート化合物とジエチレングリコールなどのヒドロキシ化合物との反応で得られたウレタン樹脂、イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂、分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を含有する重合性組成物を硬化して得られる透明樹脂等を挙げることができる。また、無機ガラスも使用可能である。
【0078】
なおレンズ基材としては、染色されていないもの(無色レンズ)を用いてもよく、染色されているもの(染色レンズ)を用いてもよい。レンズ基材の屈折率は、例えば、1.60~1.75程度である。ただしレンズ基材の屈折率は、これに限定されるものではなく、上記の範囲内でも、上記の範囲から上下に離れていてもよい。
【0079】
上記光沢粒子Pを含有する眼鏡光学物品10の視線通過部分の平均透過率は、眼鏡光学物品10が上記染色レンズの場合と、そうでない場合(つまり染色が行われていない透明レンズである場合)とで分けて規定してもよい。本明細書における「透過率」は、日立分光光度計UH4150を用いて得られた値である。
【0080】
本発明の一実施例の眼鏡光学物品10が染色レンズの場合、装用者の視認性を鑑みると、視線通過部分の平均透過率が8%以上であるのが好ましい。本発明の一実施例の眼鏡光学物品10が透明レンズの場合、視線通過部分の平均透過率が60%以上であるのが好ましく、75%以上であるのがより好ましい。
【0081】
上記調光層を備えたレンズと上記染色レンズとを組み合わせたものを、本発明の一実施例の眼鏡光学物品10としてもよい。この眼鏡光学物品10としては、グラジ染色がなされた眼鏡レンズが挙げられる。グラジ染色とは、眼鏡レンズの上半分だけを染色し、下半分は無染色としたり、上下で染色の濃度を変えたりする染色方法である。
【0082】
本発明の一実施例の光沢粒子P自体が着色していてもよい。この光沢粒子Pと上記染色レンズとを組み合わせてもよい。
【0083】
<眼鏡光学物品10の製造方法>
本発明の一実施例は、物体側の面である外面10aと眼球側の面である内面10bとを備える眼鏡光学物品10の製造方法である。<眼鏡光学物品10>で説明した内容は以下省略する。
【0084】
本発明の一実施例は、
物体側の面である外面10aと眼球側の面である内面10bとを備える眼鏡光学物品10の製造方法であって、両面の間に粒径50~150μmの光沢粒子Pを含有させる、眼鏡光学物品10の製造方法である。
【0085】
基材外面1a及び基材内面1bの少なくともいずれか一つを覆うように、光沢粒子含有液を塗布する工程を有するのが好ましい。光沢粒子含有液を塗布する対象は、基材1であってもよいし、基材1の直上に設けられた別の層であってもよい。光沢粒子含有液には限定は無く、主層3の原料液であってもよく、調光層の原料液又はハードコート層3bの原料液(ハードコート液)であってもよい。もちろん、光沢粒子Pを分散させた基材原料を金型に流し込んで硬化させることにより基材1を作製してもよい。
【0086】
光沢粒子含有液を塗布する以外の態様としては以下の態様が挙げられる。
基材1に対し、基材外面1a及び基材内面1bの少なくともいずれか一つを覆うようにプライマー層2を設ける工程と、
プライマー層2に光沢粒子Pを振り掛ける工程と、
光沢粒子Pを覆うように主層3の原料液を塗布する工程と、
を有するのが好ましい。光沢粒子Pを振り掛けることにより、装用された眼鏡光学物品10を正面視したときの周縁部に光沢粒子Pを偏在させられる。
【0087】
本発明の技術的範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0088】
以下、本発明の一態様に係る眼鏡光学物品10の具体例を示す。以下の具体例では、眼鏡光学物品10の一例として眼鏡レンズ10を作製した。本発明は、以下の具体例に限定されるものではない。
【0089】
以下の具体例において各材料の詳細は以下の通りである。反射防止層4と保護層5は設けなかった。
・基材1の平面視での直径:60.00mm
・基材1の形状:両面平板(plano)
・基材1の種類:PC(ポリカーボネート)
・基材1の屈折率:1.589
・プライマー層2の原料液:以下のように製造した。
A液(触媒化成株式会社製オプトレイク)20質量部に溶媒のNMPを50質量部添加した。ついで、B液(株式会社ADEKA製アデカボンタイター(登録商標)HUX232)30質量部を滴下して1時間攪拌し全体を100質量部の調合液を得た。この調合液に界面活性剤を添加し、24時間攪拌させた。得られた溶液を、0.5μmのフィルターで濾過したものをプライマー組成物とした(詳しくは特開2009-67845号公報の実施例参照)。
・平滑層3aの原料液:以下のように製造した。
プラスチック製容器にトリメチロールプロパントリメタクリレート20質量部、BPEオリゴマー(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキ、シフェニル)プロパン)35質量部、EB6A(ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート)10質量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート10質量部からなるラジカル重合性組成物を調製した。
このラジカル重合性組成物100質量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製イルガキュア245)を5質量部、紫外線重合開始剤としてCGI-1870(BASF社製)0.6質量部を添加して十分に攪拌混合を行った組成物に、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製KBM503)を攪拌しながら6質量部滴下した(詳しくは特開2013-114162号公報の実施例参照)。
・調光層の原料液:以下のように製造した。
平滑層3aの原料液において、ラジカル重合性組成物100質量部に対し、更に、フォトクロミック色素としてクロメン1(特開2013-114162号公報の[化1]を参照)を3質量部、光安定化剤LS765(ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート)を5質量部を添加して十分に攪拌混合を行ったこと以外は、平滑層3aの原料液と同様に製造した(詳しくは特開2013-114162号公報の実施例参照)。
・ハードコート層3bの原料液:以下のように製造した。
コンポセランSQシリーズ(荒川化学工業株式会社製)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メタノール、CPI-210S(サンアプロ株式会社製)、Y-7006(東レ・ダウコーニング株式会社製)を混合し、固形分濃度を60%とし、ハードコート層3bの原料液を製造した(詳しくは特開2019-82631号公報の実施例参照)。
・光沢粒子P:メルクパフォーマンスマテリアルズ社製のIriodin 100 Silver Pearl(粒径10~60μm)
・各層の形成面:基材外面1a
【0090】
<具体例1>
図4は、<具体例1>の断面視概略図である。
プライマー層2の原料液と光沢粒子Pとを混合し、基材外面1aに対し、プライマー層2を形成した。このプライマー層2の膜厚は光沢粒子Pの最大粒径よりも小さくした。そのため、プライマー層2の最表面側から光沢粒子Pが露出した。プライマー層2の最表面側に対し、平滑層3aの原料を塗布し、厚さ30μmの平滑層3aを設け、露出した光沢粒子Pを埋めた。該平滑層3aに対し、ハードコート層3bの原料液を塗布し、ハードコート層3bを設けた。本例では、光沢粒子含有層31は光沢粒子Pとプライマー層2と平滑層3aにより構成され、カバー層32は平滑層3aとハードコート層3bにより構成される。
【0091】
<具体例2>
<具体例1>において平滑層3aの代わりに調光層を形成した。それ以外は<具体例1>と同様とした。本例では、光沢粒子含有層31は光沢粒子Pとプライマー層2と調光層により構成され、カバー層32は調光層とハードコート層3bにより構成される。
【0092】
<具体例3>
<具体例1>において平滑層3aを設けず、プライマー層2の最表面側に対し、ハードコート層3bの原料を塗布し、ハードコート層3bを設け、露出した光沢粒子Pを埋めた。それ以外は<具体例1>と同様とした。本例では、光沢粒子含有層31は光沢粒子Pとプライマー層2とハードコート層3bにより構成され、カバー層32はハードコート層3bにより構成される。
【0093】
<具体例4>
基材外面1aに対し、プライマー層2の原料液を塗布し、プライマー層2を形成した。そして、プライマー層2に対し、光沢粒子Pを振り掛けた。その後、光沢粒子Pが存在するプライマー層2の最表面側に対し、平滑層3aの原料を塗布し、厚さ30μmの平滑層3aを設け、露出した光沢粒子Pを埋めた。該平滑層3aに対し、ハードコート層3bの原料液を塗布し、ハードコート層3bを設けた。本例では、光沢粒子含有層31はプライマー層2と平滑層3aにより構成され、カバー層32は平滑層3aとハードコート層3bにより構成される。
【0094】
<具体例5>
<具体例4>において平滑層3aの代わりに調光層を形成した。それ以外は<具体例4>と同様とした。本例では、光沢粒子含有層31は光沢粒子Pとプライマー層2と調光層により構成され、カバー層32は調光層とハードコート層3bにより構成される。
【0095】
<具体例6>
<具体例4>において平滑層3aを設けず、プライマー層2の最表面側に対し、ハードコート層3bの原料を塗布し、ハードコート層3bを設け、露出した光沢粒子Pを埋めた。それ以外は<具体例4>と同様とした。本例では、光沢粒子含有層31は光沢粒子Pとプライマー層2とハードコート層3bにより構成され、カバー層32はハードコート層3bにより構成される。
【0096】
<具体例7>
図5は、<具体例7>の断面視概略図である。
基材外面1aに対し、プライマー層2の原料液を塗布し、プライマー層2を形成した。そして、ハードコート層3bの原料液と光沢粒子Pとを混合し、プライマー層2に対し、ハードコート層3bを形成した。このハードコート層3bの膜厚は光沢粒子Pの最大粒径よりも大きくした(該膜厚≦1.2×最大粒径)。そのため、ハードコート層3bの最表面側から光沢粒子Pは露出しなかった。本例では、光沢粒子含有層31は光沢粒子Pとハードコート層3bにより構成され、カバー層32はハードコート層3bの最表面側により構成される。仮に、ハードコート層3bの最表面側から光沢粒子Pが露出したとしても、反射防止層4(及び保護層5)を設け、光沢粒子Pを埋め込めばよい。
【0097】
<具体例8>
基材外面1aに対し、プライマー層2の原料液を塗布し、プライマー層2を形成した。そして、平滑層3aの原料液と光沢粒子Pとを混合し、プライマー層2に対し、平滑層3aを形成した。本例ではプライマー層2が既に平滑なので平滑化の意義は薄いが説明の便宜上平滑層3aと呼称する。そして、平滑層3aに対し、ハードコート層3bの原料液を塗布し、ハードコート層3bを形成した。本例では、光沢粒子含有層31は光沢粒子Pと少なくとも平滑層3aにより構成され、カバー層32は少なくともハードコート層3bにより構成される。
【0098】
<具体例9>
<具体例8>において平滑層3aの代わりに調光層を形成した。それ以外は<具体例8>と同様とした。本例では、光沢粒子含有層31は光沢粒子Pと少なくとも調光層により構成され、カバー層32は少なくともハードコート層3bにより構成される。
【0099】
平滑層3a又は調光層を使用する場合、光沢粒子Pの粒径が大きい場合であっても、本例のように複数の層により光沢粒子Pを埋めることが可能となる。その一方、光沢粒子Pの粒径が小さい場合、ハードコート層3bの原料液と光沢粒子Pとを混合してハードコート層3bを形成したとしても、元々ハードコート層3bは十分な厚さを有するように形成されるため、ハードコート層3b内に光沢粒子Pを収めやすい(光沢粒子Pの露出を抑制できる)。
【符号の説明】
【0100】
10…眼鏡光学物品(眼鏡レンズ)
10a…外面(側)
10b…内面(側)
1…基材
1a…基材外面
1b…基材内面
2…プライマー層
3…主層
31…光沢粒子含有層
32…カバー層
3a…平滑層
3b…ハードコート層
4…反射防止層
5…保護層
P…光沢粒子
図1
図2
図3
図4
図5