(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048467
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
A61M25/09 516
A61M25/09 550
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157795
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近岡 空
(72)【発明者】
【氏名】花井 愛珠
(72)【発明者】
【氏名】川島 尚也
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA29
4C267BB20
4C267CC09
4C267GG14
4C267GG21
4C267GG22
4C267GG23
4C267GG24
4C267HH01
(57)【要約】
【課題】コアシャフトにおける剛性ギャップを緩和し、第1のシャフトと第2のシャフトとの接合強度の向上を図る。
【解決手段】ガイドワイヤは、コアシャフトを備え、コアシャフトは、コアシャフトの先端側に位置する第1のシャフトと、第1のシャフトの基端部が接合される先端部を有し、かつ、第1のシャフトとは材質の異なる第2のシャフトと、を有する。第2のシャフトの先端部の外周面には、第2のシャフトの先端から第2のシャフトの基端側に向かって延びている溝が形成されている。第1のシャフトの基端部は、第2のシャフトの溝内に挿入されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトを備えるガイドワイヤであって、
前記コアシャフトは、前記コアシャフトの先端側に位置する第1のシャフトと、前記第1のシャフトの基端部が接合される先端部を有し、かつ、前記第1のシャフトとは材質の異なる第2のシャフトと、を有し、
前記第2のシャフトの前記先端部の外周面には、前記第2のシャフトの先端から前記第2のシャフトの基端側に向かって延びている溝が形成されており、
前記第1のシャフトの前記基端部は、前記第2のシャフトの前記溝内に挿入されている、
ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤであって、
前記第1のシャフトと前記第2のシャフトとの接合部分の横断面において、前記第1のシャフトの前記基端部の外周面のうち、前記第2のシャフトの前記溝から露出する部分の輪郭線は、前記第1のシャフトの外形の外接円よりも前記第2のシャフトの外形の外接円寄りに位置している、
ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記第2のシャフトの溝の基端部における底面は、前記第2のシャフトの基端に近づくにつれて前記第2のシャフトの外周面に近づくように傾斜している、
ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記第2のシャフトの溝の底面は、前記第2のシャフトの前記先端に近づくにつれて前記第2のシャフトの中心軸に近づくように傾斜している傾斜部分を有している、
ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記第1のシャフトの前記基端部のうち、前記溝の深さ方向の長さは、前記第2のシャフトの前記溝の深さよりも大きい、
ガイドワイヤ。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記第1のシャフトの前記基端部のうち、前記溝の深さ方向の長さは、前記第2のシャフトの前記溝の深さよりも小さい、
ガイドワイヤ。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記第2のシャフトの前記溝の底面と、前記第1のシャフトの前記基端部のうち前記溝の底面に対向する面とは、互いに平坦であり、かつ、面接触している、
ガイドワイヤ。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記第2のシャフトの先端部において、前記溝の底面は、前記第2のシャフトの中心軸に対して前記溝の開口とは反対側に位置している、
ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、医療用のガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
血管等における狭窄部や閉塞部(以下、「病変部」という。)を治療または検査する方法として、カテーテルを用いた方法が広く行われている。一般に、カテーテルを血管等における病変部に案内するために、ガイドワイヤが用いられる。ガイドワイヤは、例えば金属材料により形成されるコアシャフトを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
コアシャフトは、ステンレス製のリボンと、ニッケル-チタン合金製のコアとを有しており、リボンの基端部とコアの先端部とが接合されている。具体的には、リボンの基端部の外周面とコアの先端部の外周面とが互いに対向した状態で接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のガイドワイヤのコアシャフトでは、単に、リボンの基端部の外周面とコアの先端部の外周面とが接合されているだけなので、リボンとコアとの接合部分と、該接合部分よりも先端側或いは基端側の部分との間の剛性ギャップが大きくなる。また、リボンとコアとの接合面積を十分に確保できないため、リボンとコアとの接合強度が低い。
【0006】
なお、このような課題は、互いに異なる材質の部材同士が接合されたガイドワイヤに共通の問題である。とりわけ、ニッケル-チタン合金製コアは、超弾性特性を有しているため、ステンレス製リボンとの剛性ギャップが大きく、両者の接合は困難である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示されるガイドワイヤは、コアシャフトを備えるガイドワイヤであって、前記コアシャフトは、前記コアシャフトの先端側に位置する第1のシャフトと、前記第1のシャフトの基端部に接合された先端部を有し、かつ、前記第1のシャフトとは材質の異なる第2のシャフトと、を有し、前記第2のシャフトの前記先端部の外周面には、前記第2のシャフトの先端から前記第2のシャフトの基端側に向かって延びている溝が形成されており、前記第1のシャフトの前記基端部は、前記第2のシャフトの前記溝内に挿入されるとともに、前記第1のシャフトの前記基端部のうち、少なくとも、前記コアシャフトの軸周りの周方向における両側が、前記第2のシャフトのうち、前記溝を構成する内壁面に接合されている。
【0010】
本ガイドワイヤでは、上述したように、第1のシャフトの基端部は、第2のシャフトの外周面に形成された溝内に挿入される。そのため、本ガイドワイヤによれば、第2のシャフトに溝が形成された分だけ、第1のシャフトと第2のシャフトとの接合部分の剛性が低いため、単にシャフトの外周面同士を接合した従来構成に比べて、コアシャフトにおける剛性ギャップを緩和することができる。また、本ガイドワイヤでは、第1のシャフトの基端部は、第2のシャフトの溝を構成する内壁面に挟まれている。そのため、本ガイドワイヤによれば、上記従来構成に比べて、第1のシャフトと第2のシャフトとの接合強度の向上を図ることができる。
【0011】
(2)上記ガイドワイヤにおいて、前記第1のシャフトと前記第2のシャフトとの接合部分の横断面において、前記第1のシャフトの前記基端部の外周面のうち、前記第2のシャフトの前記溝から露出する部分の輪郭線は、前記第1のシャフトの外形の外接円よりも前記第2のシャフトの外形の外接円寄りに位置している構成としてもよい。本ガイドワイヤでは、接合部分の横断面において、第1のシャフトの基端部の外周面のうち、第2のシャフトの溝から露出する部分の輪郭線は、第1のシャフトの外形の外接円よりも第2のシャフトの外形の外接円寄りに位置している。そのため、本ガイドワイヤによれば、第2のシャフトの溝から露出する部分の輪郭線が、第1のシャフトの外形の外接円寄りに位置する構成に比べて、第2のシャフトに対する第1のシャフトの突出に起因する回転性能の低下を抑制することができる。
【0012】
(3)上記ガイドワイヤにおいて、前記第2のシャフトの溝の基端部における底面は、前記第2のシャフトの基端に近づくにつれて前記第2のシャフトの外周面に近づくように傾斜している構成としてもよい。本ガイドワイヤでは、第2のシャフトの溝の基端部における底面は、第2のシャフトの基端に近づくにつれて第2のシャフトの外周面に近づくように傾斜している。そのため、本ガイドワイヤによれば、第2のシャフトの溝の基端部における底面が傾斜していない構成に比べて、溝の底面と第2のシャフトの外周面との段差の存在に起因する応力集中を緩和することができる。
【0013】
(4)上記ガイドワイヤにおいて、前記第2のシャフトの溝の底面は、前記第2のシャフトの前記先端に近づくにつれて前記第2のシャフトの中心軸に近づくように傾斜している傾斜部分を有している構成としてもよい。本ガイドワイヤでは、第2のシャフトの溝の底面は、前記第2のシャフトの前記先端に近づくにつれて前記第2のシャフトの中心軸に近づくように傾斜している傾斜部分を有している。そのため、本ガイドワイヤによれば、第2のシャフトの溝の底面が上記傾斜部分を有しない構成に比べて、第1のシャフトと第2のシャフトとの中心軸のずれを抑制することができる。
【0014】
(5)上記ガイドワイヤにおいて、前記第1のシャフトの前記基端部のうち、前記溝の深さ方向の長さは、前記第2のシャフトの前記溝の深さよりも大きい構成としてもよい。本ガイドワイヤによれば、例えば第1のシャフトの基端部の長さが第2のシャフトの溝の深さよりも小さい構成に比べて、第1のシャフトの基端部の強度低下を抑制することができる。
【0015】
(6)上記ガイドワイヤにおいて、前記第1のシャフトの前記基端部のうち、前記溝の深さ方向の長さは、前記第2のシャフトの前記溝の深さよりも小さい構成としてもよい。本ガイドワイヤによれば、例えば第1のシャフトの基端部の長さが第2のシャフトの溝の深さよりも大きい構成に比べて、第2のシャフトに対する第1のシャフトの突出に起因するガイドワイヤの回転性能の低下を抑制することができる。
【0016】
(7)上記ガイドワイヤにおいて、前記第2のシャフトの前記溝の底面と、前記第1のシャフトの前記基端部のうち前記溝の底面に対向する面とは、互いに平坦であり、かつ、面接触している構成としてもよい。本ガイドワイヤによれば、例えば第1のシャフトの基端部が溝の底面に点接触あるいは線接触する構成に比べて、第2のシャフトに対する第1のシャフトの基端部の安定性およびトルク伝達性を向上させることができる。
【0017】
(8)上記ガイドワイヤにおいて、前記第2のシャフトの先端部において、前記溝の底面は、前記第2のシャフトの中心軸に対して前記溝の開口とは反対側に位置している構成としてもよい。本ガイドワイヤによれば、例えば第2のシャフトの先端部において、溝の底面が第2のシャフトの中心軸に対して溝の開口側に位置している構成に比べて、第1のシャフトの基端部と第2のシャフトとの中心軸同士が近いため、ガイドワイヤの回転性能を向上させることができる。
【0018】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えばガイドワイヤやその製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態におけるガイドワイヤの全体構成を概略的に示す側面図
【
図2】
図1のII-IIの位置におけるコアシャフトの接合部分の横断面構成を示す図
【
図4】第1実施形態の変形例におけるコアシャフトの接合部分の横断面構成を示す図
【
図5】第2実施形態におけるガイドワイヤのコアシャフトの接合部分の縦断面構成を拡大して示す断面図
【
図6】
図5のV-Vの位置におけるコアシャフトの接合部分の横断面構成を示す断面図
【
図7】第3実施形態におけるガイドワイヤの全体構成を概略的に示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施形態:
A-1.ガイドワイヤ100の構成:
図1は、第1実施形態におけるガイドワイヤ100の全体構成を概略的に示す側面図である。
図1には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されており、X軸正方向視におけるガイドワイヤ100の全体構成が示されている。
図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。これらの点は、
図2以降の図についても同様である。
図1では、後述するコイル体20については、断面(具体的には、YZ断面)構成が示されている。
図1では、ガイドワイヤ100が全体としてZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、ガイドワイヤ100は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。なお、以下において、ガイドワイヤ100及びガイドワイヤ100の各構成部材について、先端を含み先端から基端側に向かって中途まで延びる部分を「先端部」という。同様に、ガイドワイヤ100及びガイドワイヤ100の各構成部材について、基端を含み基端から先端側に向かって中途まで延びる部分を「基端部」という。
【0021】
ガイドワイヤ100は、例えば血管等における病変部(狭窄部や閉塞部)にカテーテル(図示しない)を案内するために、血管等に挿入される医療用デバイスである。
図1に示すように、ガイドワイヤ100は、コアシャフト10と、コイル体20と、先端側接合部30と、基端側接合部40とを備えている。
【0022】
コアシャフト10は、先端側が細径であり、基端側が太径である棒状の部材である。コアシャフト10は、コアシャフト10の先端を含む第1のシャフト11と、第1のシャフト11に対してコアシャフト10の基端側に位置する第2のシャフト12とを備えている。第1のシャフト11の基端部と、第2のシャフト12の先端部とが、接合部15によって接合されている。接合部15は、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだやエポキシ系接着剤などの接着剤により構成されている。
【0023】
第1のシャフト11は、棒状の部材である。本実施形態では、第1のシャフト11は、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)を含む材料によって形成されている。第1のシャフト11は、「リボン」または「シェイピングリボン」と呼ばれることがある。
【0024】
具体的には、第1のシャフト11は、横断面が円形であり、外径が全長にわたって略同一の丸棒の部材である。横断面とは、コアシャフト10の軸方向(本実施形態では、Z軸方向)に直交する断面(本実施形態では、XY断面)である(第2実施形態以降においても同様)。なお、本実施形態では、コアシャフト10の軸方向は、ガイドワイヤ100の軸方向と一致している。なお、第1のシャフト11の横断面の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、楕円形、三角形や四角形などの多角形であってもよい。
【0025】
第2のシャフト12は、第2の細径部120と、第2の太径部121と、第2のテーパ部122とを有している。なお、
図1では、第2のシャフト12の第2の太径部121の一部の図示が省略されている。
【0026】
第2のシャフト12の第2の細径部120は、第2のシャフト12の先端を含む部分である。第2の細径部120は、横断面が円形である棒状をなしている。
【0027】
第2のシャフト12の第2の太径部121は、第2の細径部120に対してコアシャフト10の基端側に位置し、横断面が第2の細径部120より外径が大きい円形である棒状をなしている。
【0028】
第2のシャフト12の第2のテーパ部122は、第2の細径部120と第2の太径部121との間に位置している。第2のテーパ部122は、第2の細径部120との境界位置から第2の太径部121との境界位置に向けて外径が徐々に大きくなっている。
【0029】
なお、第2のシャフト12の各部の横断面の形状は、特に限定されるものではなく、例えば三角形や四角形などの多角形であってもよい。
【0030】
第2のシャフト12の材質は、第1のシャフト11の材質とは異なる。第2のシャフト12を形成する材料としては、例えば、金属材料、より具体的には、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等が挙げられるが、本実施形態では、Ni-Ti合金等の超弾性合金を含む材料により形成されている。本実施形態においては、超弾性合金を含む材料により形成された第2のシャフト12を備える構成であることにより、ガイドワイヤ100が屈曲した血管等を進行した際にも、変形した第2のシャフト12の形状が元の形状に戻る性能(「復元性」と呼ばれることがある。)を発揮することができ、これにより、ガイドワイヤ100の操作性や血管選択性を確保することができる。
【0031】
コイル体20は、1本の素線を螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材である。コイル体20は、コアシャフト10の先端部(具体的には、第1のシャフト11と、第2のシャフト12の第2の細径部120と第2のテーパ部122と第2の太径部121の一部)の外周を取り囲むように配置されている。
【0032】
コイル体20は、例えば、金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、またはコバルト合金といった放射線透過性合金や、金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)といった放射線不透過性合金により構成される。コイル体20の少なくとも一部が放射線不透過性の材料で形成されている場合には、手技者は、放射線透視画像下でコイル体20の位置を把握することができる。
【0033】
先端側接合部30は、コアシャフト10の先端とコイル体20の先端とを接合している。先端側接合部30の内部に、コアシャフト10の先端とコイル体20の先端とが埋め込まれるようにして固着されている。先端側接合部30の先端側の外周面は、滑らかな面(例えば、略半球面)となっている。先端側接合部30は、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだやエポキシ系接着剤などの接着剤により構成される。コアシャフト10に対して先端側に先端側接合部30が配置されていることによって、コアシャフト10が血管壁などに当接することが防止され、ひいてはコアシャフト10が損傷等することが抑制される。
【0034】
基端側接合部40は、コアシャフト10の基端側とコイル体20の基端側とを接合する部材である。基端側接合部40は、上述した先端側接合部30と同様の材料により構成される。なお、基端側接合部40は、コイル体20の基端側に限定されず、コイル体20のどの位置に配置されていても良い。
【0035】
A-2.第1のシャフト11と第2のシャフト12との接合部分の詳細構成:
図1には、X軸正方向視における第1のシャフト11と第2のシャフト12との接合部分(X1の部分)の構成が拡大して示されている。
図2は、
図1のII-IIの位置における接合部分の横断面構成を示す図である。
図2には、Z軸負方向視における接合部分の横断面構成が示されている。なお、
図2において、符号R1は、第1のシャフト11の横断面形状の第1の外接円であり、符号Pは、第1の外接円R1の中心軸である。また、符号R2は、第2のシャフト12の第2の細径部120の横断面形状の第2の外接円(コアシャフト10の接合部分の外形の輪郭線に重なっている)であり、符号Qは、第2の外接円R2の中心軸である。なお、第1のシャフト11の基端の最大幅(外径)は、例えば40μm以上、60μm以下であり、第2のシャフト12(第2の細径部120)の先端の最大幅(外径)は、例えば50μm以上、70μm以下である。
【0036】
図1に示すように、第2のシャフト12の第2の細径部120の外周面には、溝125が形成されている。溝125は、第2のシャフト12(第2の細径部120)の先端から第2のシャフト12の基端側に向かって延びている。溝125は、コアシャフト10の軸方向(Z軸方向)に沿って直線状に延びている。
【0037】
図2に示すように、第2のシャフト12(第2の細径部120)のうち、溝125を構成する内壁面は、一対の対向面125Aと、底面125Bと、を有している。
【0038】
一対の対向面125Aは、中心軸Qを挟んで互いに対向するように配置された壁面である。本実施形態では、一対の対向面125Aは、互いに略平行であるが、底面125Bから開口に向かった広がるテーパ面であってもよい。底面125Bは、一対の対向面125Aの奥側深さ方向(
図2ではX軸正方向)の端部同士をつなぐ面である。本実施形態では、底面125Bは、第2の細径部120の一の径方向(
図2では、X軸方向)に直交する平面である。なお、
図2では、各対向面125Aと底面125Bとの連結部分(隅部)の形状は、円弧状に面取りされているが、角張った形状でもよい。また、溝125の開口幅D1は、溝125の深さD2よりも広い。また、本実施形態では、溝125の開口幅D1は、溝125の全長にわたって略同一であり、溝125の深さD2は、溝125の全長にわたって略同一である。溝125の開口幅D1は、例えば40μm以上、60μm以下であり、溝125の深さD2は、例えば20μm以上、40μm以下である。
【0039】
図2に示すように、第1のシャフト11の基端部の外周面は、左右一対の側周面11Aと、内側周面11Bと、外側周面11Cと、を有している。
【0040】
左右一対の側周面11Aは、第2のシャフト12(第2の細径部120)の中心軸Qを挟んで左右一対の面であり、各側周面11Aは、第2の細径部120の各対向面125Aに対向している。第1のシャフト11と第2のシャフト12との接合部分の横断面において、一対の側周面11Aは、第1の外接円R1上に位置する曲面である。また、一対の側周面11A同士の距離は、内側周面11B(第2の細径部120の底面125B)に近づくにつれて連続的に狭くなっている。内側周面11Bは、第2の細径部120の底面125Bに対向する面である。本実施形態では、内側周面11Bは、底面125Bに平行な平面である。外側周面11Cは、第1のシャフト11の基端部の外周面のうち、第2のシャフト12の溝125から外部に露出する部分の表面である。接合部分の横断面において、外側周面11Cは、第2の外接円R2上に位置する曲面である。
【0041】
接合部15は、第1のシャフト11の基端部の外周面と、第2のシャフト12の溝125を構成する内壁面とを接合している。具体的には、第1のシャフト11の一対の側周面11Aが、接合部15を介して、第2のシャフト12の一対の対向面125Aに接合されている。また、第1のシャフト11の内側周面11Bが、接合部15を介して、第2のシャフト12の底面125Bに接合されている。
図2では、第1のシャフト11の基端部の外周面と、第2のシャフト12の溝125を構成する内壁面との間に、接合部15が隙間無く充填された状態が例示されているが、第1のシャフト11の基端部の外周面と、第2のシャフト12の溝125を構成する内壁面との間に、一部隙間(空間)が形成されていてもよい。
【0042】
なお、
図2では、第1のシャフト11の側周面11Aの一部と第2のシャフト12の対向面125Aとの間に接合部15が介在せずに直接接触している構成例が示されているが、例えば後述の
図3(B)に示すように、第1のシャフト11の側周面11Aと第2のシャフト12の対向面125Aとの間に全体的に接合部15が介在してもよい。要するに、第1のシャフト11の側周面11Aと第2のシャフト12の対向面125Aとが離脱不能に接合されていればよい。第1のシャフト11の内側周面11Bと第2のシャフト12の底面125Bとの接合についても同様である。
【0043】
A-3.製造方法:
図3は、ガイドワイヤ100の製造工程の一部を示す説明図である。まず、加工前の第1のシャフト11である第1の素材11Pと、加工前の第2のシャフト12である第2の素材12Pとを準備する。第1の素材11Pは、例えばステンレス鋼を含む材料により形成され、横断面の形状が円形の棒状の部材である(
図3(A)の第1の外接円R1参照)。第2の素材12Pは、例えばNi-Ti合金を含む材料により形成され、横断面の形状が円形の棒状の部材である(
図3(A)の第2の外接円R2参照)。第2の素材12Pの外径は、第1の素材11Pの外径よりも大きい。
【0044】
次に、第1の素材11Pに対して、第1の素材11Pの中心軸Pに直交する一の方向からプレス加工を施して、一対の平坦面11D,11Dを有する一次加工後の第1の素材11Qを形成する。一対の平坦面11D,11Dの一方の面(
図3(A)では下面)は、上述の内側周面11Bである。また、第2の素材12Pに対して、例えばレーザ加工を施して、溝125が形成された第2のシャフト12(第2の細径部120)を形成する。
【0045】
次に、
図3(A)に示すように、第2のシャフト12の溝125を構成する内壁面に接合材15Pを塗布し、その後に、第1の素材11Pの基端部を溝125内に挿入して接合(例えばロウ付け接合)する。これにより、接合部15が、第2のシャフト12の内壁面と第1の素材11Pの基端部との間の隙間を埋めるように充填された状態となる(
図1および
図2参照)。
【0046】
図3(B)には、一次加工後の第1の素材11Qと第2のシャフト12との接合部分の横断面構成が示されている。
図3(B)に示すように、第1の素材11Qは、第2のシャフト12(第2の細径部120)の第2の外接円R2の外側に突出した部分(以下、突出部分13)という)を有する。そこで、この突出部分13を切削等により除去する加工を施すことにより、上記外側周面11Cを有する第1のシャフト11が形成される。すなわち、第1の素材11Pと第2のシャフト12との接合部分の横断面形状は、略真円になっている(
図2参照)。
【0047】
その後、コアシャフト10に対してコイル体20および先端側接合部30等を取り付けることにより、ガイドワイヤ100の製造が完了する。
【0048】
A-4.第1実施形態の効果:
以上説明したように、コアシャフト10において、第1のシャフト11の基端部は、第2のシャフト12の外周面に形成された溝125内に挿入される(
図2参照)。そのため、本実施形態によれば、第2のシャフト12に溝125が形成された分だけ第2のシャフト12が薄くなり、第1のシャフト11と第2のシャフト12との接合部分の剛性が低いため、単にシャフトの外周面同士を接合した従来構成に比べて、コアシャフト10における剛性ギャップを緩和することができる。具体的には、第1のシャフト11と、第1のシャフト11と第2のシャフト12との接合部分と、第2のシャフト12の第2の細径部120との間の剛性ギャップが低減されている。その結果、例えば剛性ギャップに起因するガイドワイヤ100の損傷の発生やトルク伝達性の低下を抑制することができる。
【0049】
第1のシャフト11の基端部のうち、少なくとも、コアシャフト10の軸周りの周方向における両側(一対の側周面11A)が、第2のシャフト12のうち、溝125を構成する内壁面に接合されている(
図2参照)。すなわち、第1のシャフト11の基端部は、第2のシャフト12の溝125を構成する内壁面(一対の対向面125A)に挟まれた状態で接合されている。そのため、本実施形態によれば、第1のシャフト11の基端部は、一対の対向面125Aにサポートされ、また、上記従来構成に比べて、接合面積を広く確保できる分だけ、第1のシャフト11と第2のシャフト12との接合強度の向上を図ることができる。
【0050】
ここで、本実施形態のように、第2のシャフト12(第2の素材12P)が極めて細い場合、第2の素材12Pの先端面に、第1のシャフト11の基端部を挿入するための穴を形成することは極めて困難である。しかし、このような構成であっても、本実施形態によれば、コアシャフト10における剛性ギャップを緩和しつつ、第1のシャフト11と第2のシャフト12との接合強度の向上を図ることができる。
【0051】
第1のシャフト11と第2のシャフト12との接合部分の横断面において、第1のシャフト11の基端部の外周面のうち、第2のシャフト12の溝125から露出する部分(外側周面11C)の輪郭線は、第1のシャフト11の第1の外接円R1よりも第2のシャフト12の第2の外接円R2寄りに位置している(
図2参照)。そのため、本実施形態によれば、第2のシャフト12の溝125から露出する部分の輪郭線が、第1のシャフト11の第1の外接円R1寄りに位置する構成(
図3(B)参照)に比べて、第2のシャフト12に対する第1のシャフト11の突出に起因する回転性能の低下を抑制することができる。
【0052】
なお、ここでいう回転性能とは、ガイドワイヤ100の基端部を(ガイドワイヤの軸の周方向に)回転させた際に、ガイドワイヤ100の先端部が追従して回転する、いわゆるトルクレスポンス性(基端部の回転に対する先端部の回転の追従性)を意味する。第1のシャフト11と第2のシャフト12との接合部分の横断面形状が真円に近いほど、トルクレスポンス性が向上する。本実施形態では、上述したように、第1のシャフト11の突出部分13を除去することにより、接合部分の横断面形状は、略真円になっているため、トルクレスポンス性が極めて高くなっている。
【0053】
第1のシャフト11の基端部のうち、溝125の深さ方向(X軸方向)の長さHは、第2のシャフト12の溝125の深さD2よりも大きい(
図2参照)。このため、例えば第1のシャフト11の基端部の長さHが第2のシャフトの溝125の深さD2よりも小さい構成に比べて、第1のシャフト11の基端部の強度低下を抑制することができる。
【0054】
第2のシャフト12の溝125の底面125Bと、第1のシャフト11の基端部の内側周面11Bとは、互いに平坦であり、かつ、面接触している(
図2参照)。このため、例えば第1のシャフト11の基端部が溝125の底面125Bに点接触あるいは線接触する構成に比べて、第2のシャフト12に対する第1のシャフト11の基端部の安定性およびトルク伝達性を向上させることができる。
【0055】
A-5.第1実施形態の変形例:
図4は、第1実施形態の変形例におけるコアシャフトの接合部分の横断面構成を示す図である。
図4に示すように、本変形例のコアシャフト10xでは、第1のシャフト11xの外側周面11Cxは、第1のシャフト11xの第1の外接円R1に一致している。また、第1のシャフト11xの基端部(溝125に挿入された部分)の高さH(溝125の深さ方向の長さ)は、溝125の深さD2よりも大きい。この変形例によれば、上記第1実施形態に比べて、第1のシャフト11xの基端部が太い分だけ、第1のシャフト11xの強度低下を抑制することができる。
【0056】
第2のシャフト12の先端部において、溝125の底面125Bは、第2のシャフト12の中心軸Qに対して溝125の開口とは反対側(X軸正方向側)に位置している。このため、例えば第2のシャフト12の先端部において、溝125の底面125Bが第2のシャフト12の中心軸Qに対して溝125の開口側(X軸負方向側)に位置している構成に比べて、第1のシャフト11xの基端部と第2のシャフト12との中心軸同士が近いため、ガイドワイヤ100の回転性能を向上させることができる。
【0057】
B.第2実施形態:
B-1.ガイドワイヤ100aの構成:
図5は、第2実施形態におけるガイドワイヤ100aのコアシャフト10aの接合部分の縦断面構成を拡大して示す断面図である。縦断面とは、コアシャフト10aの軸方向(本実施形態では、Z軸方向)に平行な断面(本実施形態では、YZ断面)である。
図5では、ガイドワイヤ100aの構成のうち、コアシャフト10aの接合部分の縦断面構成だけが示されている。
図6は、
図5のV-Vの位置におけるコアシャフト10aの接合部分の横断面構成を示す断面図である。
図6には、Z軸負方向視におけるコアシャフト10aの接合部分の横断面構成が示されている。
【0058】
第2実施形態のガイドワイヤ100aの構成は、上述した第1実施形態のガイドワイヤ100の構成と比較して、コアシャフト10aの接合部分の構成が異なっている。以下では、第2実施形態のガイドワイヤ100aの構成の内、上述した第1実施形態のガイドワイヤ100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0059】
図5および
図6に示すように、ガイドワイヤ100aは、コアシャフト10aの先端を含む第1のシャフト11aと、第1のシャフト11aに対してコアシャフト10aの基端側に位置する第2のシャフト12aとを備えている。第1のシャフト11aの基端部と、第2のシャフト12aの先端部とが、接合部15aによって接合されている(
図6参照)。
【0060】
第2のシャフト12aは、上記第1実施形態の第2のシャフト12と略同一形状であり、第2のシャフト12aの第2の細径部120aに形成された溝125aの形状が、上記第1実施形態の第2の細径部120に形成された溝125の形状とは異なる。具体的には、
図5に示すように、溝125aの基端部における底面(内壁面126a)は、第2のシャフト12aの基端に近づくにつれて第2のシャフト12aの外周面に近づくように傾斜している。具体的には、溝125aの基端部における底面は、第2のシャフト12aの中心軸Qaに対して直線状に傾斜し、第2のシャフト12aの外周面に達している。すなわち、溝125aの基端部における底面と第2のシャフト12aの外周面との間に段差が存在しない。
【0061】
また、第2のシャフト12aの溝125aの底面は、第2のシャフト12a(第2の細径部120a)の先端に近づくにつれて第2のシャフト12aの中心軸Qaに近づくように傾斜している傾斜部分を有している。具体的には、溝125aの底面は、全体として、第2のシャフト12aの先端に近づくにつれて第2のシャフト12aの中心軸Qaに近づくように直線状に傾斜している。なお、
図6に示すように、接合部分の横断面において、第2のシャフト12aのうち、溝125aを構成する内壁面126aの形状は、例えばU字状(円弧状)である。
【0062】
図5に示すように、第1のシャフト11aは、棒状の部材であり、第1のシャフト11aの基端部は、第2のシャフト12aの溝125a内に収容されている。具体的には、第1のシャフト11aは、第2のシャフト12aの溝125aを構成する内壁面126a(底面)に沿って第2の細径部120aの中心軸Qaに対して直線状に傾斜するように配置されており、第2の細径部120aの中心軸Qaに近づくように延びている。
【0063】
図6に示すように、第1のシャフト11aの基端部の外周面は、内側面11Eと、外側面11Fとを有している。内側面11Eは、第2の細径部120aの内壁面126aに対向する面である。具体的には、第1のシャフト11aと第2のシャフト12aとの接合部分の横断面において、内側面11Eは、第1のシャフト11aの第3の外接円R3上に位置する。符号Paは、第3の外接円R3の中心軸である。外側面11Fは、第1のシャフト11aの基端部の外周面のうち、第2のシャフト12aの溝125aから外部に露出する部分の表面である(
図5参照)。上記接合部分の横断面において、外側面11Fは、第2の細径部120aの第4の外接円R4上に位置する曲面である。符号Qaは、第4の外接円R4の中心軸である。すなわち、第1のシャフト11aのうち、第2のシャフト12aの溝125aから外部に突出する突出部分13aが除去されている(
図5および
図6参照)。
【0064】
接合部15aは、第1のシャフト11aの基端部の外周面と、第2のシャフト12aの溝125aを構成する内壁面126aとを接合している。具体的には、第1のシャフト11aの内側面11Eが、接合部15aを介して、第2のシャフト12aの内壁面126aに接合されている(
図6参照)。
【0065】
B-2.第2実施形態の効果:
以上説明したように、第2実施形態では、第1のシャフト11aの基端部は、第2のシャフト12aの外周面に形成された溝125a内に挿入される(
図5等参照)。そのため、本実施形態によれば、第2のシャフト12aに溝125aが形成された分だけ第2のシャフト12aが薄くなり、第1のシャフト11aと第2のシャフト12aとの接合部分の剛性が低いため、単にシャフトの外周面同士を接合した従来構成に比べて、コアシャフト10aにおける剛性ギャップを緩和することができる。
【0066】
第1のシャフト11aの基端部のうち、少なくとも、コアシャフト10aの軸周りの周方向における両側(内側面11E)が、第2のシャフト12aのうち、溝125aを構成する内壁面126aに接合されている(
図6参照)。すなわち、第1のシャフト11aの基端部は、第2のシャフト12aの溝125を構成する内壁面126aに挟まれた状態で接合されている。そのため、本実施形態によれば、第1のシャフト11aの基端部は、内壁面126aにサポートされ、また、上記従来構成に比べて、接合面積を広く確保できる分だけ、第1のシャフト11aと第2のシャフト12aとの接合強度の向上を図ることができる。
【0067】
第1のシャフト11aと第2のシャフト12aとの接合部分の横断面において、第1のシャフト11aの基端部の外周面のうち、第2のシャフト12aの溝125aから露出する部分(外側面11F)の輪郭線は、第1のシャフト11aの第3の外接円R3よりも第2のシャフト12aの第4の外接円R4寄りに位置している(
図6参照)。そのため、本実施形態によれば、第2のシャフト12aの溝125aから露出する部分の輪郭線が、第1のシャフト11aの第3の外接円R3寄りに位置する構成に比べて、第2のシャフト12aに対する第1のシャフト11aの突出に起因する回転性能の低下を抑制することができる。
【0068】
第2のシャフト12aの溝125aの底面は、第2のシャフト12aの先端に近づくにつれて第2のシャフト12aの中心軸Qaに近づくように傾斜している傾斜部分を有している(
図5参照)。これにより、本実施形態によれば、第2のシャフト12aの溝125aの基端部における底面が傾斜していない構成に比べて、溝125aの底面と第2のシャフト12aの外周面との段差の存在に起因する応力集中を緩和することができる。特に、本実施形態では、溝125aの基端部における底面と第2のシャフト12aの外周面との間に段差が存在しないため、より効果的に応力集中を緩和することができる。
【0069】
第2のシャフト12aの溝125aの底面は、第2のシャフト12aの先端に近づくにつれて第2のシャフト12aの中心軸Qaに近づくように傾斜している傾斜部分を有している。これにより、本実施形態によれば、第2のシャフト12aの溝125aの底面が上記傾斜部分を有しない構成に比べて、第1のシャフト11aと第2のシャフト12aとの中心軸のずれが抑制され、その結果、軸ずれに起因する回転性能の低下を抑制することができる。
【0070】
C.第3実施形態:
図7は、第3実施形態におけるガイドワイヤ100bの全体構成を概略的に示す側面図である。第3実施形態のガイドワイヤ100bの構成では、内側コイル体50を備える点で、第1実施形態のガイドワイヤ100の構成とは異なる。以下では、第3実施形態のガイドワイヤ100bの構成の内、上述した第1実施形態のガイドワイヤ100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0071】
内側コイル体50は、コアシャフト10の先端部(具体的には、第1のシャフト11と、第2のシャフト12の第2の細径部120と第2のテーパ部122の一部)を保護するための保護体である。内側コイル体50は、コイル体20内に収容され、かつ、コアシャフト10の先端部の外周を取り囲むように配置されている。内側コイル体50の先端は、先端側接合部30に接合され、内側コイル体50の基端は、基端側接合部53を介して第2のシャフト12の第2のテーパ部122に接合され、内側コイル体50の中間部は、中間接合部52を介して第2のシャフト12の第2のテーパ部122に接合されている。
【0072】
内側コイル体50は、1本の素線を螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材である。内側コイル体50は、例えば、金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、またはコバルト合金といった放射線透過性合金や、金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)といった放射線不透過性合金により構成される。
【0073】
本実施形態によれば、内側コイル体50を備えるガイドワイヤ100bにおいて、コアシャフト10における剛性ギャップを緩和しつつ、回転追従性を高めることができる。
【0074】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0075】
上記実施形態におけるガイドワイヤ100,100a,100bの構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態において、第1のシャフト11,11aや第2のシャフト12,12aは、外径が全長にわたって略同一の形状でもよい。
【0076】
上記実施形態において、溝125,125aは、例えば、第2の細径部120,120aの中心軸Q,Qaに対して傾斜した方向に延びていてもよいし、中心軸Q,Qa周りに螺旋状に延びていてもよい。
【0077】
上記第1実施形態において、溝125は、横断面の形状がU字状やV字状でもよい。また、上記第1実施形態において、溝125を構成する内壁面は、第2の細径部120の先端に近づくにつれて中心軸Qに近づく傾斜部分を有してもよい。これにより、第1のシャフト11と第2のシャフト12との中心軸P,Qのずれを抑制することができる。また、上記第1実施形態において、溝125の基端部の底面は、第2のシャフト12の基端に近づくにつれて第2のシャフト12の外周面に近づくように傾斜していてもよい。これにより、溝125の底面と第2のシャフト12の外周面との段差の存在に起因する応力集中を緩和することができる。上記第1実施形態において、第2のシャフト12の溝125の底面125Bと、第1のシャフト11の基端部の内側周面11Bとの少なくても一方は、非平坦面(例えば曲面)であり、互いに点接触あるいは線接触する構成でもよい。また、第2のシャフト12の先端部において、溝125の底面125Bが第2のシャフト12の中心軸Qに対して溝125の開口側に位置している構成でもよい。
【0078】
上記第1実施形態において、溝125を構成する一対の対向面125Aは、溝125の開口に近づくにつれて互いの距離が長くなるように開口していてもよい。また、上記第1実施形態において、溝125の開口幅D1は、溝125の深さD2と同じでもよいし、深さD2よりも狭くてもよい。また、上記第1実施形態において、溝125の開口幅D1は、第2の細径部120の先端に近づくにつれて幅広になっていてもよいし、溝125の深さD2は、第2の細径部120の先端に近づくにつれて深くなっていてもよい。上記各実施形態では、第1のシャフト11,11x,11aは、第2のシャフト12,12aの溝125,125aを構成する内壁面に接合されていたが、接合されていなくてもよく、例えば接触しているだけでもよい。上記各実施形態において、第1のシャフト11,11x,11aの基端部のうち、溝125の深さ方向の長さは、第2のシャフト12,12aの溝125,125aの深さD2よりも小さくてもよい。この構成によれば、第2のシャフト12,12aに対する第1のシャフト11,11x,11aの突出に起因するガイドワイヤ100,100a,100bの回転性能の低下を抑制することができる。
【0079】
上記第1実施形態において、接合部分の横断面で、外側周面11Cは、第2の外接円R2よりも内側に位置してもよいし、第2の外接円R2よりも外側に位置してもよい。ただし、外側周面11Cが、第1の外接円R1よりも第2の外接円R2寄りに位置していれば、第2のシャフト12に対する第1のシャフト11の突出に起因する回転性能の低下を抑制することができる。また、上記第1実施形態において、第2実施形態における内側コイル体50に相当する構成を備えてもよい。
【0080】
上記第2実施形態において、第2のシャフト12aの溝125aの底面は、第2のシャフト12aの中心軸Qaに略平行に延びていてもよい。また、第2のシャフト12aの溝125aの底面は、一部分だけに上記傾斜部分を含んでもよい。例えば、第2のシャフト12aの溝125aの底面は、傾斜部分と、該傾斜部分に対して先端側および基端側に位置し、かつ、第2のシャフト12aの中心軸Qaに略平行な平行部分とを有してもよい。上記第2実施形態において、溝125aは、横断面の形状が矩形状やV字状でもよい。
【0081】
上記実施形態において、ガイドワイヤ100,100a,100bは、先端側接合部30を備えていなくてもよい。
【0082】
また、上記実施形態のガイドワイヤ100、100a,100bを構成する各部材の材料は、あくまで一例であり、種々変形可能である。また、上記実施形態のガイドワイヤ100,100aの製造方法は、あくまで一例であり、他の方法でも製造可能である。
【符号の説明】
【0083】
10,10a,10x:コアシャフト 11,11a,11x:第1のシャフト 11A:側周面 11B:内側周面 11C,11Cx:外側周面 11D:平坦面 11E:内側面 11F:外側面 11P,11Q:第1の素材 12,12a:第2のシャフト 12P:第2の素材 13,13a:突出部分 15,15a:接合部 15P:接合材 20:コイル体 30:先端側接合部 40,53:基端側接合部 50:内側コイル体 52:中間接合部 100,100a,100b:ガイドワイヤ 120,120a:第2の細径部 121:第2の太径部 122:第2のテーパ部 125,125a:溝 125A:対向面 125B:底面 126a:内壁面 D1:開口幅 D2:深さ