(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048485
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】測高装置、測高方法、測高プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/02 20060101AFI20230331BHJP
G01S 13/06 20060101ALI20230331BHJP
G01S 5/04 20060101ALN20230331BHJP
【FI】
G01S7/02 212
G01S13/06
G01S5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157823
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012087
【氏名又は名称】株式会社光電製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
【テーマコード(参考)】
5J062
5J070
【Fターム(参考)】
5J062AA01
5J062BB03
5J062CC14
5J062DD23
5J062HH04
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC12
5J070AD01
5J070AE04
5J070AE05
5J070AF01
5J070AG01
5J070AK13
5J070AK40
5J070BD01
(57)【要約】
【課題】簡素かつ安価なレーダーで対象物の高度を測定する。
【解決手段】本発明の測高装置は、複数のレーダーを用いて対象物の高度を測定する。レーダーは、水平方向の計測精度の方が垂直方向の計測精度よりも高く設定され、対象物との直線距離を計測する。測高装置は、記録部、信号識別部、計算部を備える。記録部は、あらかじめレーダーごとの水平面座標と高度の情報を記録している。信号識別部は、レーダーごとに、検波信号と方位情報と時刻情報に基づいて、対象物までの直線距離と方位情報と時刻情報とを組み合わせた対象物情報を出力する。計算部は、時刻情報の差があらかじめ定めた時間範囲内の、複数のレーダーから得られた対象物情報同士に矛盾が生じない水平面座標と高度の組合せである対象物位置候補を求め、少なくとも求めた高度を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向の計測精度の方が垂直方向の計測精度よりも高く設定され、対象物との直線距離を計測する複数のレーダーを用いて対象物の高度を測定する測高装置であって、
前記レーダーは、
電波を送受信し、検波信号を出力するアンテナと、
前記アンテナを回転させるとともに、前記アンテナの方位情報を出力する回転部と、
時刻情報を出力する時刻情報部と、
を備え、
前記測高装置は、
あらかじめ前記レーダーごとの水平面座標と高度の情報を記録している記録部と、
前記レーダーごとに、検波信号と方位情報と時刻情報に基づいて、対象物までの直線距離と方位情報と時刻情報とを組み合わせた対象物情報を出力する信号識別部と、
時刻情報の差があらかじめ定めた時間範囲内の、複数のレーダーから得られた対象物情報同士に矛盾が生じない水平面座標と高度の組合せである対象物位置候補を求め、少なくとも求めた高度を出力する計算部
を備える
ことを特徴とする測高装置。
【請求項2】
請求項1記載の測高装置であって、
前記計算部は、複数のレーダーから得られた対象物情報から水平面座標と高度との組み合わせの候補である対象物位置候補を求め、矛盾が生じない対象物位置候補を選択し、対象物の水平面座標と高度の組合せを求める
ことを特徴とする測高装置。
【請求項3】
請求項1記載の測高装置であって、
前記計算部は、
あらかじめ複数の高度候補を定めておき、前記対象物情報ごとかつ前記高度候補ごとに、対象物の高度が当該高度候補の場合の水平面座標を求めることで、水平面座標と高度との組み合わせである対象物位置候補を複数求める座標計算部と、
複数のレーダーから得られた対象物情報から求めた前記対象物位置候補を対比し、矛盾が生じない対象物位置候補を選択し、対象物の水平面座標と高度の組合せを求める位置比較部と
を有する
ことを特徴とする測高装置。
【請求項4】
請求項1記載の測高装置であって、
前記計算部は、
複数のレーダーから得られた対象物情報の方位情報から、対象物の水平面座標の候補である水平面座標候補を求める座標候補計算部と、
前記対象物情報ごとかつ前記水平面座標候補ごとに対象物の高度を求めることで、水平面座標と高度との組み合わせである対象物位置候補を求める高度計算部と、
複数のレーダーから得られた対象物情報から求めた前記対象物位置候補を対比し、矛盾が生じない対象物位置候補を選択し、対象物の水平面座標と高度の組合せを求める位置比較部と
を有する
ことを特徴とする測高装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれかに記載の測高装置であって、
1つの対象物情報から求めた複数の対象物位置候補の中に、他のレーダーから得られた対象物情報から求めた対象物位置候補と矛盾が生じない対象物位置候補が複数存在する場合は、当該複数の対象物位置候補の位置に対象物が存在すると認定する
ことを特徴とする測高装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の測高装置であって、
前記信号識別部は、
前記検波信号に基づいて対象物の面積も予測し、前記対象物情報には、前記面積の情報も含まれる
ことを特徴とする測高装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の測高装置であって、
前記記録部は、求めた対象物の水平面座標と高度の組合せを時刻情報と対応付けて記録し、
対象物の軌跡を、前記記録部に記録された対象物の水平面座標と高度の組合せと時刻情報に基づいて求める軌跡推定部
も備える
ことを特徴とする測高装置。
【請求項8】
請求項7記載の測高装置であって、
前記軌跡と時刻情報から、対象物の移動速度を求める速度推定部
も備える
ことを特徴とする測高装置。
【請求項9】
水平方向の計測精度の方が垂直方向の計測精度よりも高く設定され、対象物との直線距離を計測する複数のレーダーを用いて対象物の高度を測定する測高方法であって、
前記レーダーは、
電波を送受信し、検波信号を出力するアンテナと、
前記アンテナを回転させるとともに、前記アンテナの方位情報を出力する回転部と、
時刻情報を出力する時刻情報部と、
を備え、
前記測高方法は、
あらかじめ前記レーダーごとの水平面座標と高度の情報を記録しておき、
前記レーダーごとに、検波信号と方位情報と時刻情報に基づいて、対象物までの直線距離と方位情報と時刻情報とを組み合わせた対象物情報を出力する信号識別ステップと、
時刻情報の差があらかじめ定めた時間範囲内の、複数のレーダーから得られた対象物情報同士に矛盾が生じない水平面座標と高度の組合せである対象物位置候補を求め、少なくとも求めた高度を出力する計算ステップ
を実行する測高方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の測高装置として、コンピュータを機能させるための測高プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のレーダーを用いて対象物の高度を測定する測高装置、測高方法、測高プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
広く流通しているレーダーには水平方向に狭く、垂直方向に比較的広い指向性(ファンビームパターン)をもつアンテナを水平方向に回転させる捜索レーダーがあり、例えば、船舶用レーダーに使用されている。垂直方向に広い指向性をもつため、対象物を特定しない周囲の状況監視には適している。しかし、得られる情報が2次元であるため飛行物体等の高度情報を把握することはできない。
レーダーを用いた測高技術ではペンシルビームを用いた方式がある(非特許文献1)。この方式では垂直方向にも狭い指向性をもたせたペンシルビームを形成し、それを電子的もしくは機械的に走査することで対象物体のレーダーに対する仰角を測定して高度を求める。ペンシルビームを形成するためにはアンテナの寸法を水平方向、垂直方向ともに大きくする必要があり、装置が大型になる。ファンビームを用いた測高技術ではVビーム方式がある(非特許文献1)。これは2本のアンテナでV字形のファンビームを形成し、それぞれのアンテナから得られる測定結果と2アンテナ間の幾何学的な関係から対象物体の高度を測定する方式である。
この解決策として特許文献1では艦船などに搭載した際の揺動を利用した測高技術を示している。また、特許文献2では複数の送信局と1つの受信局を用いたマルチスタティック方式での測高技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-122659号公報
【特許文献2】特開平11-125674号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】伊藤信一著、「レーダシステムの基礎理論」コロナ社、2015年11月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファンビームパターンをもつアンテナは簡素かつ安価であるが高度は測定できない。ファンビームを用いた測高技術では、ビームをV字にするために2台の空中線を必要とするなど、ハードウェア構成が大規模になるという問題点がある。特許文献1の技術では、適用環境が限定されてしまうという課題がある。特許文献2の技術では、高度推定に位相を用いているため位相安定度の高い送受信機が必要となる。
本発明は、このような状況に鑑みて行われたもので、簡素かつ安価なレーダーで対象物の高度を測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の測高装置は、複数のレーダーを用いて対象物の高度を測定する。レーダーは、アンテナと回転部と時刻情報部を備え、水平方向の計測精度の方が垂直方向の計測精度よりも高く設定され、対象物との直線距離を計測する。アンテナは、電波を送受信し、検波信号を出力する。回転部は、アンテナを回転させるとともに、アンテナの方位情報を出力する。時刻情報部は、時刻情報を出力する。測高装置は、記録部、信号識別部、計算部を備える。記録部は、あらかじめレーダーごとの水平面座標と高度の情報を記録している。信号識別部は、レーダーごとに、検波信号と方位情報と時刻情報に基づいて、対象物までの直線距離と方位情報と時刻情報とを組み合わせた対象物情報を出力する。計算部は、時刻情報の差があらかじめ定めた時間範囲内の、複数のレーダーから得られた対象物情報同士に矛盾が生じない水平面座標と高度の組合せである対象物位置候補を求め、少なくとも求めた高度を出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の測高装置によれば、ファンビームパターンをもつアンテナを用いたレーダーが少なくとも2つあれば、対象物の高度を測定できる。よって、簡素かつ安価なレーダーで対象物の高度を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の測高装置を用いた場合の構成例を示す図。
【
図3】ファンビームパターンをもつアンテナの指向性を示す図。
【
図4】複数のレーダーで1つの対象物を検出するときの様子を示す図。
【
図5】対象物までの直線距離が同じ場合の高度候補と水平面での距離の関係を示す図。
【
図6】2つのレーダーから得られた対象物情報に基づく水平面座標を水平面にプロットした図。
【
図7】レーダーからの方位と直線距離が同じ2つの対象物がある場合を示す図。
【
図8】レーダーからの方位が同じ2つの対象物がある場合の水平面の様子を示す図。
【
図9】対象物が2つある場合の2つのレーダーから得られた対象物情報に基づく水平面座標を水平面にプロットした図。
【
図10】変形例1の測高装置を用いた場合の構成例を示す図。
【
図11】変形例1の測高方法の処理フローを示す図。
【
図12】2つのレーダーで1つの対象物を検出するときの様子を示す図。
【
図13】対象物の高度と水平面での距離との関係を示す図。
【
図14】水平面上では交点が2つ存在する場合の様子を示す図。
【
図15】レーダーから得られる対象物までの直線距離が2つとなる場合の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例0010】
図1に実施例1の測高装置を用いた場合の構成例を示す。
図2に実施例1の測高方法の処理フローを示す。
図3は、ファンビームパターンをもつアンテナの指向性を示す図である。
図3(A)は水平面での指向性ビームの形状の例を示している。この図では、水平面をX軸とY軸を用いて示している。例えば、X軸は東西方向、Y軸は南北方向のように定めればよい。
図3(A)では指向性ビームはY軸方向に向いた例を示している。
図3(B)は垂直面での指向性ビームの形状の例を示している。横軸はY軸、縦軸はZ軸である。この図では、Z軸が垂直方向である。
【0011】
実施例1の測高装置100は、複数のレーダー200
1,…,200
Nを用いて対象物の高度を測定する。ただし、Nは2以上の整数、nは1以上N以下の整数とする。レーダー200
nは、アンテナ210と回転部220と時刻情報部230を備える。アンテナ210は、指向性が水平方向の計測精度の方が垂直方向の計測精度よりも高くなるように設定され、対象物との直線距離を計測する。例えば、
図3に示すようなファンビームパターンをもつアンテナを用いればよい。アンテナ210は、アンテナ部211と送受信部212を有し、アンテナ部211が電波を送受信し、送受信部212が検波信号を出力する。なお、送受信部212は、後述する回転部220から方位情報を受信し、時刻情報部230から時刻情報を受信し、検波信号と方位情報と時刻情報を測高装置100に送信すればよい。
【0012】
回転部220は、モーター221と回転制御部222を有する。回転部220は、回転制御部222が指定する角速度もしくは角度になるようにモーター221を制御することで、アンテナを水平方向に回転させる。また、回転制御部222は、アンテナ210の方位情報を出力する。「アンテナを回転させる」とは、アンテナ210全体を回転させることと、アンテナ部211のみを回転させることの両方を含んだ意味である。言い換えると、電波の放出方向を水平方向に回転できればよい。
【0013】
時刻情報部230は、時刻情報を出力する。時刻情報部230は、他のレーダーの時刻情報部230と通信することで、アンテナ210からの電波の送受信を同期させてもよいし、時刻情報を一致させるようにしてもよい。また、時刻情報部230は、GPSなどの外部の時刻情報を基準として動作させてもよい。この場合は、他のレーダーの時刻情報部230と通信をしなくても、アンテナ210からの電波の送受信を同期させることが可能である。
【0014】
測高装置100は、記録部190、信号識別部110、計算部120を備える。また、測高装置100は、軌跡推定部130、速度推定部140も備えてもよい。記録部190は、あらかじめレーダー2001,…,200Nごとの水平面座標と高度の情報を記録している。水平面座標としては、例えば緯度と経度があるが、これに限る必要はない。例えば、農園の水平面に直交座標系を設定し、原点からの距離で表現した水平面座標でもよい。高度としては、例えば海抜があるが、これに限る必要はない。例えば、農園の1点の高さを基準とし、基準との高度差で表現してもよい。
【0015】
測高装置100は、それぞれのレーダー2001,…,200Nから、検波信号と方位情報と時刻情報を受信する(S210)。信号識別部110は、レーダー2001,…,200Nごとに、検波信号と方位情報と時刻情報に基づいて、対象物までの直線距離と方位情報と時刻情報とを組み合わせた対象物情報を出力する(S110)。なお、記録部190が、過去の対象物の水平面座標と高度の組合せを時刻情報と対応付けて記録している場合は、信号識別部110は、指定された時刻での対象物までの直線距離と方位情報を検波信号と方位情報と時刻情報に基づいて推定し、対象物情報としてもよい。また、信号識別部110は、検波信号に基づいて対象物の面積も予測し、対象物情報に対象物の面積の情報も含めてもよい。
【0016】
計算部120は、時刻情報の差があらかじめ定めた時間範囲内の、複数のレーダー2001,…,200Nから得られた対象物情報同士に矛盾が生じない水平面座標と高度の組合せである対象物位置候補を求め、少なくとも求めた高度を出力する(S120)。計算部120は、例えば、まず、複数のレーダー2001,…,200Nから得られた対象物情報から水平面座標と高度との組み合わせの候補である対象物位置候補を求める。その後、計算部120は、矛盾が生じない対象物位置候補を選択し、対象物の水平面座標と高度の組合せを求めればよい。「矛盾が生じない」とは、水平面座標と高度の組合せを対比したときに誤差の範囲(許容範囲)と判断できる程度の差であることを意味している。
【0017】
ここで、「時刻情報の差があらかじめ定めた時間範囲内」について説明する。
図4に複数のレーダーで1つの対象物を検出するときの様子を示す。この図では水平面の様子を示しており、横軸がX軸、縦軸がY軸である。
図4ではそれぞれのレーダー200
nから対象物の方向に線が描かれている。しかし、レーダー200
nのアンテナ210は回転しているので、2つのレーダー200
1,200
2が1つの対象物を検出するタイミングは異なる。つまり、レーダー200
1が対象物を検出する時刻とレーダー200
2が対象物を検出する時刻は正確には一致しないことがほとんどである。そこで、計算部120は、アンテナ210が1回転する程度の時間差を「あらかじめ定めた時間範囲内」とし、同じ時間に検出された情報として処理すればよい。なお、信号識別部110が指定した時刻での対象物までの直線距離と方位情報を推定して対象物情報とする場合であれば、「あらかじめ定めた時間範囲内」は、アンテナ210が1回転する程度の時間差よりも短くできる。
【0018】
実施例1の計算部120は、座標計算部122と位置比較部125を備える。座標計算部122は、あらかじめ複数の高度候補を定めておき、対象物情報ごとかつ高度候補ごとに、対象物の高度が当該高度候補の場合の水平面座標を求める。この処理によって、座標計算部122は、水平面座標と高度との組み合わせである対象物位置候補を複数求める(S122)。
図5に、対象物までの直線距離が同じ場合の高度候補と水平面での距離の関係を示す。横軸は
図4のレーダー200
1から伸びた直線の方向であり、縦軸は高度である。h
1(0)はレーダー200
1の高度であり、h(1),h(2),h(3),h(4)は、あらかじめ定めた複数の高度候補の例である。R
1(t)は、時刻t(正確には、時刻tで表現されるあらかじめ定めた時間範囲)での対象物までの直線距離である。
【0019】
L
1(t,1)は時刻tのときの高度候補h(1)の場合のレーダー200
1からの水平面での距離、L
1(t,2)は時刻tのときの高度候補h(2)の場合のレーダー200
1からの水平面での距離、L
1(t,3)は時刻tのときの高度候補h(3)の場合のレーダー200
1からの水平面での距離、L
1(t,4)は時刻tのときの高度候補h(4)の場合のレーダー200
1からの水平面での距離である。例えば、地球の半径を考慮する必要がある場合の以下のようにL
1(t,m)を求めればよい。
【数1】
ただし、R
eは等価地球半径、
図5の場合はm=1,…,4とする。また、地球の半径を意識する必要がないときは、以下のように計算してもよい。
【数2】
【0020】
そして、方位情報に基づいて、L1(t,1),L1(t,2),L1(t,3),L1(t,4)に対応する水平面座標(X1(t,1),Y1(t,1)),(X1(t,2),Y1(t,2)),(X1(t,3),Y1(t,3)),(X1(t,4),Y1(t,4))が求められる。
【0021】
同様に、レーダー2002からの水平面での距離L2(t,1),L2(t,2),L2(t,3),L2(t,4)も求められる。そして、水平面座標(X2(t,1),Y2(t,1)),(X2(t,2),Y2(t,2)),(X2(t,3),Y2(t,3)),(X2(t,4),Y2(t,4))が求められる。
【0022】
位置比較部125は、複数のレーダー200
1,…,200
Nから得られた対象物情報から求めた対象物位置候補を対比し、矛盾が生じない対象物位置候補を選択し、対象物の水平面座標と高度の組合せを求める(S125)。
図6に、レーダー200
1とレーダー200
2から得られた対象物情報に基づく水平面座標を水平面にプロットした図を示す。
図6の場合、(X
1(t,2),Y
1(t,2))と(X
2(t,2),Y
2(t,2))の水平面座標が近いことが分かる。上述したように、レーダー200
1での検出時刻とレーダー200
2での検出時刻は正確には一致しないし、レーダー自体にも誤差がある。また、実際の高度と高度候補との差もある。したがって、これらの誤差を総合的に考慮して、矛盾が生じない(誤差が許容範囲である)対象物位置候補を選択すればよい。したがって、
図6の場合であれば、位置比較部125はh(2)を対象物の高度とする。水平面座標は、(X
1(t,2),Y
1(t,2))と(X
2(t,2),Y
2(t,2))のいずれか一方を選択してもよいし、平均を水平面座標としてもよいし、対象物情報に含まれる時刻情報と時刻tとの差を考慮した重み付け平均を水平面座標としてもよい。
【0023】
図7は、レーダー200
1からの方位と直線距離が同じ2つの対象物がある場合を示している。
図8は、レーダー200
1からの方位が同じ2つの対象物がある場合の水平面の様子を示している。
図9に、レーダー200
1とレーダー200
2から得られた対象物情報に基づく水平面座標を水平面にプロットした図を示す。
図9の場合、(X
1(t,2),Y
1(t,2))と(X
2(t,2),Y
2(t,2))の水平面座標が近く、(X
1(t,4),Y
1(t,4))と(X
2(t,4),Y
2(t,4))の水平面座標が近いことが分かる。このように、1つの対象物情報から求めた複数の対象物位置候補の中に、他のレーダーから得られた対象物情報から求めた対象物位置候補と矛盾が生じない対象物位置候補が複数存在することもある。この場合は、複数の対象物位置候補の位置に対象物が存在すると認定すればよい。
【0024】
測高装置100が軌跡推定部130も備える場合は、記録部190は、求めた対象物の水平面座標と高度の組合せを時刻情報と対応付けて記録する。そして、軌跡推定部130は、対象物の軌跡を、記録部190に記録された対象物の水平面座標と高度の組合せと時刻情報に基づいて求める。測高装置100が速度推定部140も備える場合は、軌跡と時刻情報から、対象物の移動速度を求めればよい。また、軌跡推定部130は、2つの対象物が近い位置になった後の軌跡の推定では、対象物情報に対象物の面積の情報が含まれているときは面積を考慮して軌跡を推定してもよい。また、速度推定部140も備えるときは、移動速度を考慮して軌跡を推定してもよい。
【0025】
実施例1の測高装置によれば、ファンビームパターンをもつアンテナを用いたレーダーが少なくとも2つあれば、対象物の高度を測定できる。よって、簡素かつ安価なレーダーで対象物の高度を測定できる。例えば、農場のようなエリアでドローンを飛行させる場合に、農場の2か所以上の位置にファンビームパターンをもつアンテナを用いたレーダーを配置すれば、簡素かつ安価にドローンの水平面座標と高度を確認できる。また、本発明の測高装置であれば、ドローンを2台以上使用する場合でも、それぞれのドローンの水平面座標と高度を確認できる。また、ペンシルビームを用いた場合は、ビームが細いため、広範囲の監視には時間がかかるという問題がある。しかし、実施例1の測高装置であれば、ファンビームパターンをもつアンテナでの対象物を特定しない広い範囲の状況監視と、特定した対象物の3次元(水平座標と高度)での位置情報取得との両立が可能である。
[変形例1]
【0026】
図10に変形例1の測高装置を用いた場合の構成例を示す。
図11に変形例1の測高方法の処理フローを示す。実施例1の測高装置100の計算部120は、座標計算部122と位置比較部125を備えた。変形例1の測高装置101の計算部121は、座標候補計算部123、高度計算部124、位置比較部125を備える。異なる構成は計算部だけであり、その他の構成は、測高装置100と同じである。処理フローも計算ステップS121が異なるだけであり、他の処理フローは同じである。
【0027】
なお、計算部121も、計算部120と同様に、時刻情報の差があらかじめ定めた時間範囲内の、複数のレーダー2001,…,200Nから得られた対象物情報同士に矛盾が生じない水平面座標と高度の組合せである対象物位置候補を求め、少なくとも求めた高度を出力する(S121)。計算部121は、まず、複数のレーダー2001,…,200Nから得られた対象物情報から水平面座標と高度との組み合わせの候補である対象物位置候補を求める点も同じである。その後、計算部121は、矛盾が生じない対象物位置候補を選択し、対象物の水平面座標と高度の組合せを求める点も同じである。つまり、基本的な処理の考え方は同じであるが、以下に示す具体的な処理が異なる。
【0028】
計算部121は、座標候補計算部123、高度計算部124、位置比較部125を備える。座標候補計算部123は、複数のレーダー200
1,…,200
Nから得られた対象物情報の方位情報から、対象物の水平面座標の候補である水平面座標候補を求める(S123)。
図12に2つのレーダーで1つの対象物を検出するときの様子を示す。
図12では、水平面座標候補は(X(t,1),Y(t,1))である。複数のレーダー200
1,…,200
Nから得られた対象物情報の方位情報に基づいて直線を引くと、対象物付近で交差する。直線が3つ以上になると正確には1点で交わらないが、交点の平均値などを対象物の水平面座標候補とすればよい。
【0029】
高度計算部124は、対象物情報ごとかつ水平面座標候補ごとに対象物の高度を求めることで、水平面座標と高度との組み合わせである対象物位置候補を求める(S124)。
図13に対象物の高度と水平面での距離との関係を示す。水平距離L
1(t,1)は、水平面座標候補(X(t,1),Y(t,1))とレーダー200
1の水平面座標から求めればよい。高度h(t,1)は、地球の半径を考慮する必要がある場合とない場合を考慮して、対象物までの直線距離R
1(t,1)と水平距離L
1(t,1)から求めればよい。
【0030】
位置比較部125は、実施例1と同様に、複数のレーダー2001,…,200Nから得られた対象物情報から求めた対象物位置候補を対比し、矛盾が生じない対象物位置候補を選択し、対象物の水平面座標と高度の組合せを求める(S125)。
【0031】
計算部121の場合は、まず水平面座標を求め、その後高度を求めるので、対象物位置候補が矛盾することは理論的にはないと考えられる。ただし、同じ方位に2以上の対象物がある場合などには、矛盾が生じない対象物位置候補を選択する必要がある。
図14に水平面上では交点が2つ存在する場合の様子を示す。
図15にレーダー200
1から得られる対象物までの直線距離が2つとなる場合の様子を示す。
図15では、直線距離R
1(t,1)と直線距離R
1(t,2)が同じ距離とする。この場合、レーダー200
1から取得される対象物情報は2つである。しかし、実際には3つの対象物が存在することもあり得る。2つ存在するか、3つ存在するかは、他のレーダー200
2から取得される対象物情報も考慮して矛盾が生じない対象物位置候補を選択すればよい。
【0032】
変形例1の測高装置も、実施例1の測高装置と同様の効果が得られる。よって、本発明の測高装置によれば、ファンビームパターンをもつアンテナを用いたレーダーが少なくとも2つあれば、対象物の高度を測定できる。よって、簡素かつ安価なレーダーで対象物の高度を測定できる。
【0033】
[プログラム、記録媒体]
上述の測高装置の処理は、
図16に示すコンピュータ2000の記録部2020に、上記方法の各ステップを実行させるプログラムを読み込ませ、制御部2010、入力部2030、出力部2040、表示部2050などに動作させることで実施できる。
【0034】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。
【0035】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0036】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録媒体に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0037】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、本装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。