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特開2023-48520組立て式整流板およびそれを有する送風機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048520
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】組立て式整流板およびそれを有する送風機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/56 20060101AFI20230331BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20230331BHJP
   F04D 29/54 20060101ALI20230331BHJP
   F04D 29/64 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
F04D29/56 C
F24F7/007 101
F04D29/54 E
F04D29/54 G
F04D29/64 C
F04D29/64 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157881
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真生
(72)【発明者】
【氏名】勝又 慎介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 広幸
【テーマコード(参考)】
3H130
3L056
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC09
3H130BA13B
3H130BA95B
3H130BA97B
3H130CA08
3H130EA02B
3H130EA04B
3H130EC17B
3L056BG09
(57)【要約】
【課題】大きな整流板を樹脂で成型しようとすると、大きな金型が必要となる。分割して成型しパーツに分けて作製するとガタが生じやすい。
【解決手段】センターハブと、
前記センターハブを囲うフレームと、
前記センターハブと前記フレームの間に配置された複数のフィンを有し、
前記センターハブと前記フレームおよび複数のフィンは、複数に分割可能であり、
前記フィンは前記分割された前記センターハブおよび前記フレームの少なくとも何れかと一体的に成型されており、
前記分割された複数のセンターハブを1つにまとめて固定するセンターキャップを有することを特徴とする組立て式整流板は、小さな金型で作製したパーツを組み合わせ大きな整流板を作製してもガタが出ることはない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターハブと、
前記センターハブを囲うフレームと、
前記センターハブと前記フレームの間に配置された複数のフィンを有し、
前記センターハブと前記フレームおよび複数のフィンは、複数に分割可能であり、
前記フィンは前記分割された前記センターハブおよび前記フレームの少なくとも何れかと一体的に成型されており、
前記分割された複数のセンターハブを1つにまとめて固定するセンターキャップを有することを特徴とする組立て式整流板。
【請求項2】
前記センターハブと前記フレームは4分割されていることを特徴とする請求項1に記載された組立て式整流板。
【請求項3】
前記フィンはポリプロピレン製であることを特徴とする請求項1または2の何れかに記載された組立て式整流板。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載された組立て式整流板を有する送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は畜舎の天井から吊り下げることもできる送風機の整流板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酪農の分野では、一年を通じた乳量の安定生産と、1頭当たりの乳量の増加および乳脂肪率の増加と言った観点で、工夫が積み上げられている。最近の研究によれば、乳牛は非常に繊細な神経をもっており、ストレスを受けやすい。そして、ストレスは乳量の増減に影響することが分かってきた。そこで、できるだけストレスフリーな状態で飼育することが検討実践されている。
【0003】
乳牛は体内で繊維質を微生物によって分解することでエネルギーを得ている。いわば、体内に発酵工場を有しているに等しい。そのため、低温には比較的強い。しかし、逆に高温になると、体内に熱がたまり強いストレスを感じるようである。したがって、夏場は乳量が減少しがちになる。
【0004】
この問題を解消する方法として、従来畜舎には送風機が配置され、ミスト等との併用によって、夏場の乳牛の体感温度を少しでも下げるような努力がされている。
【0005】
特許文献1では、畜舎の対向する側壁にプッシュ用送風機とプル用送風機を配置し、畜舎の中で風を起こす発明が開示されている。
【0006】
一方、特許文献2には畜舎で使用される吊り下げ型送風機が開示されている。これは畜舎の天井から送風機を吊り下げるタイプのものである。吊り下げ型送風機は、床面に固定脚や補機などが配置されないので畜舎内を有効に利用することができる。また、既存の畜舎に後から設置することもでき、利便性が高い。
【0007】
畜舎等の比較的広い空間で使用される送風機は風を長い距離で到達させる必要がある。一般的に強い風速を得るには、遠心型より軸流型の送風機が用いられる。しかし、軸流型のファンが生み出す旋回流は、そのままでは四方に風速成分が分散するので、無駄が多い。そこで、整流板を用いることで、ファンで生み出された旋回流をできるだけ直線方向へ整流することが行われる。特許文献3には、畜舎などで利用される送風機に取り付け風向を制御する縦ルーバー式風向制御機構(所謂「整流板」)が開示されている。
【0008】
特許文献3のように、現在の畜舎用送風機には、整流板が用いられる場合もある。この点は吊り下げ型の送風機でも同様の事情である。ところで、吊り下げ型の送風機は、総重量を建屋の耐吊り下げ荷重以下にしなければならないという重量問題を有する。つまり、整流板も軽量であることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-216718号公報
【特許文献2】特開昭63-050698号公報
【特許文献3】特許第6541843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
軽量な整流板を作製するには、材質を樹脂にすることが考えられる。しかし、畜舎用送風機のように、ファンの直径が1000mmを超えるような大きな送風機の整流板を樹脂の射出成型で形成しようとすると、非常に大きな金型が必要となる。
【0011】
例えば、直径1000mmの大きさのファンを射出成型する金型となると、成型機容量は2,000t以上が必要で、金型重量は約18tにもなる。このような大きさの装置や金型を実際に作製するのは、現実的ではない。
【0012】
したがって、これを分割して組み立てることが考えられる。整流板を分割し、分割した部品ごとに射出成型すれば、金型の小型化が可能になる。また、金型や整流板の持ち運びが容易にもなる。
【0013】
しかし、整流板を構成する整流フィンを個別の部品とすると、組み立てた際に外側のフレームや整流板の中心にあるセンターハブとの間でガタが生じる恐れがある。これは、送風機として稼働させた際に、低周波数のノイズを発生させる原因となり、乳牛にストレスを与えることとなる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものであり、畜舎用の吊り下げ型送風機の整流板を分割して形成でき、なおかつ組み立てた際にもガタが生じない組立て式整流板を提供するものである。
【0015】
より具体的に本発明に係る組立て式整流板は、
センターハブと、
前記センターハブを囲うフレームと、
前記センターハブと前記フレームの間に配置された複数のフィンを有し、
前記センターハブと前記フレームおよび複数のフィンは、複数に分割可能であり、
前記フィンは前記分割された前記センターハブおよび前記フレームの少なくとも何れかと一体的に成型されており、
前記分割された複数のセンターハブを1つにまとめて固定するセンターキャップを有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記の組立て式整流板を有する送風機も含めてよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る組立て式整流板は、直径が1000mm以上の大きさであっても、分割して成型するため、金型を小さくできるという効果を奏する。またフィンをセンターハブか、フレームのいずれかと一体成型して形成し、最終的に全ての部品をセンターキャップで締め上げるので、分割した際の課題となる組み立てた際のガタを押さえることができ、低周波ノイズによる乳牛へのストレスを抑制することができる。
【0018】
また、組立て式としたので、フィンの形状が異なるピースを組み合わせて1つの整流板とすることができ、さまざまな風向分布の送風エリアを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る組立て式整流板の斜視図である。
図2図1を4分割した時の組立図斜視図である。
図3】組立て式整流板の平面図と側面図である。(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は図3(a)の1/4のピースの平面図、(d)はセンターハブとフィンが一体成型されたものとフレームに分解できる場合の平面図、(e)は、フィンとフレームが一体成型されたものとセンターハブに分解できる場合の平面図である。
図4】組立て式整流板の1/4ピースにおけるファンのバリエーションを例示する図である。
図5】フィンの組み合わせと風速分布を表す図である。(a)は「Type-OO」、(b)は「Type-RO」、(c)は「Type-ΘO」、(d)は「Type-RR」、(e)は「Type-ΘR」、(f)は「Type-ΘΘ」である。
図6図5で紹介したフィンの組み合わせの実際の平面図である。(a)は「Type-ΘR」、(b)は、「Type-RR」、(c)は「Type-ΘΘ」である。
図7】フィンの組み合わせと風速分布を表す図である。(a)は「Type-OO」、(b)は「Type-XO」、(c)は「Type-YO」、(d)は「Type-XX」、(e)は「Type-YX」、(f)は「Type-YY」である。
図8図7で紹介したフィンの組み合わせの実際の平面図である。(a)は「Type-YX」、(b)は、「Type-YY」、(c)は「Type-XX」である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係る組立て式整流板について図面を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0021】
また、本明細書では、「前方」は、風が吹き出す側であり、「後方」はファン50(図3(b)参照。)が配置される方向である。また、整流板の前方から相対し、上下および左右と呼ぶ(図3(a)参照)。本発明に係る組立て式整流板は、軸流送風機の前面に配置され、ファンの旋回流を整流するものである。なお、以下「組立て式整流板」を単に「整流板」と記す。
【0022】
図1に本発明に係る整流板1を示す。整流板1は、フレーム10と、フィン12と、センターハブ14と、センターキャップ16で構成される。フレーム10は直径約1000mm程度の略円形状をしており、前方から後方に向かって緩やかに直径が大きくなるベルマウス形状で形成されている。なお、直径はより大きなもの、またより小さなものもある。
【0023】
各部は重量を軽くするために樹脂で形成される。樹脂材料は特に限定されるものではないが、ポリプロピレン、UV剤配合のポリエチレンが好適に利用できる。
【0024】
フレーム10の内壁10iには、フィン12の一端12aが接続されている。フィン12は、短冊状の部材で、複数本が規則正しく配置されることで、ファン50(図3参照。)が生み出す風を所望の方向の気流成分に整流する。
【0025】
このような役割のフィン12は整流フィン12Tと呼ぶ。一方、後述する図4で説明するように主としてセンターハブ14とフレーム10の間の強度を向上させるためのフィン12もあってよい。このようなフィン12を補強フィン12Sと呼ぶ。もちろん整流フィン12Tが補強フィン12Sを兼ねていてもよい。図1から図3のフィン12は整流フィン12Tとしての性格が強い。
【0026】
なお、整流フィン12Tは、その形状によって気流成分の分布が変わる。したがって、整流フィン12Tの形状はさまざまなパターンがあってもよい。
【0027】
フィン12の他端12bは、センターハブ14と接続されている。センターハブ14は、整流板1の中心に配置され、後方に配置されるファン50(図3参照。)の回転軸に相当する位置に配置されるのが好ましい。
【0028】
センターキャップ16の内面には、雌ネジ溝16gが形成されている。また、分割された状態のセンターハブ14の前側外側面には雄ネジ溝14gが設けられている。この雄ネジ溝14gは、分割された状態のセンターハブ14を1つにまとめると、センターキャップ16の内面の雌ネジ溝16gと螺合する1本の雄ネジ溝14gとなる。
【0029】
図2を参照して、本発明に係る組立て式整流板1は、センターキャップ16以外の部分が複数に分割が可能である。分割された個々の部品をピース30と呼ぶ。個々のピース30はフレーム10とセンターハブ14とフィン12で構成される。組立て式整流板1を複数に分解することで、各ピース30は小さくなり、樹脂の射出成型で形成しても、金型が大きくならないというメリットがある。
【0030】
図2では、4つのピース30に分解できる状態を示しているが、分解できるピース30は4つに限定されない。分解されるのは、フレーム10とセンターハブ14の部分である。それぞれフレーム10の仮想中心軸VC(図1参照。)から同じ角度だけ切り取った対がペアとなっている。図2では、フレーム10a、10b、10c、10dとセンターハブ14a、14b、14c、14dがそれぞれペアである。
【0031】
各フレーム10間は、結合して1つの円形とするために接続用ブラケット20が、両端部に設けられている。また、接続用ブラケット20には、それぞれを連結する際に利用する貫通孔20aも設けられている。
【0032】
フィン12は、すでに説明したように、短冊状の部材であり、一端12aがフレーム10の内壁10iに接続し、他端12bは、センターハブ14に接続している。この時、フィン12は、フレーム10若しくはセンターハブ14の少なくとも何れかと一体的に成型される。一体的に成型されるとは、同一材料で継ぎ目無く形成されていることである。より具体的には同一の金型によって成型されている。
【0033】
以上のようにフレーム10、フィン12、センターハブ14を組み合わせてピース30となる。なお、図2では、4つのピース30を符号30a、30b、30c、30dとして表した。
【0034】
図3を用いて、より具体的にピース30について説明する。図3(a)は、図2の平面図を概念化したものである。送風機のファン50も示している。フレーム10、フィン12、センターハブ14は符号の通りである。図3(b)は、側面視した図である。本発明に係る送風機は、整流板1とファン50とモータ52を有している。ファン50はモータ52で駆動される。ファン50の前方に整流板1が配置される。なお、整流板の厚みはファン50の
外郭の厚みと同じまたファン50の厚みの1.1倍の厚みが好ましい。
【0035】
図3(c)は、図3(a)の1/4をピース30として取り出したもので、フィン12がセンターハブ14とフレーム10の両方に一体的に成型されている場合を示す。また、図3(d)は、フィン12がセンターハブ14と一体的に成型され、フレーム10とはバラバラに成型されている場合を示している。図3(e)は、、フィン12がフレーム10と一体的に成型され、センターハブ14とは別々に成型されている場合を示す。
【0036】
もっとも好ましいピース30の構成は、フィン12がセンターハブ14とフレーム10の両方と一体的に成型される場合(図3(c))である。このような分割方法であれば、分割した部品点数がピース30の4つだけになるので、運びやすく、組立も容易である。また、フレーム10とセンターハブ14とフィン12がそもそも一体的に成型されているので、組立時にガタが生じない。
【0037】
図3(d)や図3(e)の場合のように、フレーム10とフィン12若しくはフィン12とセンターハブ14が組立前に別々の部品の場合は、嵌合する相手方の嵌合位置にフィン12の端部が差し込まれる溝を切るなどの位置決め手段を講じておくのがよい。そして、フィン12の曲がり具合をセンターハブ14とフレーム10との間の距離L(図3(c)参照)より少し長く形成する。
【0038】
このようにすることで、整流板1として組み立てた際に、フィン12がセンターハブ14とフレーム10の間で圧縮応力を受けた状態になる。そのため、その抗力でフィン12は、センターハブ14とフレーム10に密着しガタが生じない。結果、ファン50からの風でも振動はしなくなる。
【0039】
本発明に係る整流板1は、組立て式であるので、分解したピース30毎に異なるフィン12を搭載してもよい。図4には、整流板1を4分割したときのピース30におけるフィン12のパターン例を示す。なお、図4中の全図にわたって、紙面上y方向(上下方向)およびx方向(左右方向)を矢印で示した。
【0040】
図4(a)は、フィン12が、整流板1の仮想中心軸VCから径方向に向かうラジアル方向整流フィン12TΘである。ラジアル方向整流フィン12TΘは、円周方向に気流に対する抵抗として、整流フィン12Tが設けられている。ラジアル方向整流フィン12TΘでは、y方向とx方向のフィン12は、補強フィン12Sも兼ねている。
【0041】
図4(b)は、フィン12が、整流板1の仮想中心軸VCに対して円周方向に向かう径方向整流フィン12TRである。径方向整流フィン12TRは、径方向の気流に対する抵抗として整流フィン12Tが設けられている。径方向整流フィン12TRでは、y方向とx方向のフィン12は、主として補強フィン12Sとして働く。
【0042】
また、径方向整流フィン12TRでは、整流フィン12Tは、補強フィン12Sとだけ接続し、フレーム10およびセンターハブ14とは接続されていない。しかし、補強フィン12Sがフレーム10およびセンターハブ14と接続している。本発明におけるフィン12は、このように補強フィン12Sがフレーム10とセンターハブ14の何れかと一体的に成型されていればよい。
【0043】
また、図4(c)および図4(d)は、整流板1の中心に対してx方向に向かうx方向整流フィン12Xとy方向に向かうy方向整流フィン12Yである。なお、x方向整流フィン12Xを90°回転させ、y軸に対称に折り返せばy方向整流フィン12Yを得る。
【0044】
図4(c)のx方向整流フィン12Xでは、X方向に延びるフィン12は補強フィン12Sとして働き、図4(d)のy方向整流フィン12Yでは、y方向に延びるフィン12が補強フィン12Sとして働く。
【0045】
これらの組み合わせによって、整流板1は、さまざまな気流分布を得ることができる。図5および図7は、これらを組み合わせた際の風速分布をシミュレーションした結果を表形式で表す図である。
【0046】
図5を参照する。横軸には、整流板1において、整流フィン12Tの形状を模式的に示してある。「Type-O」とは、フレーム10だけのもので、後方に配置されたファン50からの風がそのまま示される。「Type-R」は、径方向整流フィン12TRが第1象限と第3象限に設けられた場合である。また、「Type-Θ」は、ラジアル方向フィン12TΘが第1象限と第3象限に設けられた場合である。これらは第2および第4象限には整流フィン12Tはなく、ただの貫通孔である。
【0047】
一方、縦軸は径方向整流フィン12TRとラジアル方向整流フィン12TΘを第2、第4象限に配置した場合である。横軸および縦軸の交わる部分のグラフは、縦軸および横軸の整流フィン12Tの形状を組み合わせたものとなる。例えば、図5中(e)、(d)、(f)を組み合わせた場合の整流板1の整流フィン12Tのパターンを図6に示す。図6(a)、(b)、(c)は、それぞれ図5の(e)、(d)、(f)のパターンに相当する。これらは図5の横軸、縦軸の順に添え字を並べ、図6(a)は「Type-ΘR」、図6(b)は「Type-RR」、図6(c)は「Type-ΘΘ」等と呼ぶ。
【0048】
図5を再度参照する。このような整流フィン12Tによる風速分布がどのようになるかをシミュレーションで求めた。整流板1の直径は1100mmとした。後方のファン50は秒速5.0m/sの気流を前方に向かって放出できるとした。図5に示したのは、整流板1から1m前方で、ファン50の前方からファン50方向を見た際の風速分布を示す。
【0049】
ファン50の回転方向は、風速分布図上で、反時計回りである。各グラフで座標(0,0)は、整流板1およびファン50の回転軸の中心である。2.0m/s以上の風速の部分を1.0m/s以上の風速の部分に模様を入れた。また、グラフ中四角で囲った部分は、横両側0.1mの範囲を示す。シミュレーターはMSC Software Corporation製のSCRYU/Tetraを用いた。
【0050】
例えば、「Type-OO」(図5(a))は、整流フィン12Tがない場合であり、中心(座標(0,0)付近に風速1.0m/sec以上の領域が縦横50cmの領域で円形に発生している。「Type-RO」(図5(b))は、第1、第3象限に径方向整流フィン12TRが設けられた場合であるが、勾玉形状(C字形状)に風速分布が広がっているのが判る。
【0051】
また、「Type-ΘO」(図5(c))では、径方向に設置した整流フィン12Tの方向に細長く気流が得られていた。
【0052】
「Type-RR」(図5(d))や「Type-ΘΘ」(図5(f))では、左右上下に均等な風速分布であった。「Type-ΘR」(図5(e))では、径方向とラジアル方向が合体したような風速分布を得られた。特に「Type-ΘΘ」(図5(f))は、「Type-OO」(図5(a))や「Type-RR」(図5(d))と比べ、風速1.0m/s以上の面積が小さく、よりスポット的に遠くまで風を届かせる効果があると言える。
【0053】
すなわち、送風機を天井の高所に設置する必要がある場合に、地上の牛まで風を到達させることができるフィン12の形状の組合せと言える。逆に、天井の低所に設置する場合は、「Type-ΘO」(図5(c))や「Type-ΘR」(図5(e))を使用することにより、1台の送風機で複数の牛に風を当てることができる。
【0054】
図7および図8には、x方向整流フィン12Xとy方向整流フィン12Yの組み合わせをシミュレーションした結果である。条件は図5の場合と同様である。また「Type-YX」(図7(e))、「Type-XX」(図7(d))、「Type-YY」(図7(f))の全体を図8に示す。
【0055】
図7を参照して、「Type-XX」(図7(d))および「Type-YY」(図7(f))は、それぞれ縦方向、および横方向に広がる風速分布となった。一方、「Type-YX」(図7(e))は、十文字に近い風速分布となった。
【0056】
このように、整流板1を1/4のピース30に分解可能とし、それぞれ異なる整流フィン12Tを有するピース30を組み合わせることで、様々な風速分布を生み出すことができる。そして、整流板1を分解可能にしておくことで、牛舎の環境や区割りを変えた際にも、好適な風速分布を生み出すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、乳牛だけでなく、肉牛の畜舎にも好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 (組立て式整流板)整流板
10(10a、10b、10c、10d) フレーム
10i 内壁
12 フィン
12a 一端
12b 他端
12T 整流フィン
12S 補強フィン
12TΘ ラジアル方向整流フィン
12TR 径方向整流フィン
12X x方向整流フィン
12Y y方向整流フィン
14(14a、14b、14c、14d) センターハブ
14g 雄ネジ溝
16 センターキャップ
16g 雌ネジ溝
20 接続用ブラケット
20a 貫通孔
30(30a、30b、30c、30d) ピース
50 ファン
52 モータ
VC 仮想中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8