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2023-48527エッチング液、金属含有層のエッチング方法、及び金属配線の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048527
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】エッチング液、金属含有層のエッチング方法、及び金属配線の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/16 20060101AFI20230331BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
C23F1/16
H01L21/306 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157893
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】谷津 克也
【テーマコード(参考)】
4K057
5F043
【Fターム(参考)】
4K057WA02
4K057WA04
4K057WA09
4K057WB03
4K057WB04
4K057WB08
4K057WE04
4K057WE11
4K057WE12
4K057WE25
4K057WF06
4K057WN01
5F043AA26
5F043BB18
5F043GG02
5F043GG10
(57)【要約】
【課題】エッチング後表面のラフネスを低減可能な、エッチング液、前記エッチング液を用いたエッチング方法、及び金属配線の形成方法を提供する。
【解決手段】過酸化水素と、キトサンと、を含み、pHが0.1以上4.0以下である、金属含有層のエッチングに用いるエッチング液。また、過酸化水素と、キトサンと、有機酸と、を含む、金属含有層のエッチングに用いるエッチング液。また、前記エッチング液を金属含有層に接触させる工程を含む、金属含有層のエッチング方法。また、前記エッチング液を用いた、金属含有層をエッチングする工程を含む、金属配線の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素と、キトサンと、を含み、pHが0.1以上4.0以下である、金属含有層のエッチングに用いるエッチング液。
【請求項2】
有機酸をさらに含む、請求項1に記載のエッチング液。
【請求項3】
過酸化水素と、キトサンと、有機酸と、を含む、金属含有層のエッチングに用いるエッチング液。
【請求項4】
pHが0.1以上4.0以下である、請求項3に記載のエッチング液。
【請求項5】
前記金属含有層が、モリブデン、銅、コバルト、ニッケル、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のエッチング液。
【請求項6】
金属配線の形成に用いる、請求項1~5のいずれか一項に記載のエッチング液。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のエッチング液に、金属含有層を接触させる工程を含む、金属含有層のエッチング方法。
【請求項8】
請求項6に記載のエッチング液を用いて、金属含有層をエッチングする工程を含む、金属配線の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング液、金属含有層のエッチング方法、及び金属配線の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスは、多段階の様々な加工工程で構成されている。そのような加工工程には、半導体層や電極等をエッチング等によりパターニングするプロセスも含まれる。配線等の金属材料としては、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)等が用いられている。
【0003】
モリブデン等の金属配線形成プロセスに用いられるエッチング液としては、過酸化水素水溶液;リン酸、硝酸及び酢酸の混合液;硝酸、フッ酸及び酢酸の混合液;水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウム及びリン酸ナトリムのアルカリ性水溶液等が知られている。また、銅層及びモリブデン層を含む多層薄膜用エッチング液として、過酸化水素、フッ素原子を含有しない無機酸、有機酸、アミン化合物、アゾール化合物、及び過酸化水素安定剤を含有するエッチング液が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5051323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属表面のエッチングプロセスでは、エッチング後の金属表面の粗さ(表面ラフネス)を低減することが求められるが、これまで表面ラフネスが十分に低減できるエッチング液はなかった。表面ラフネスの低減が十分でないと、後工程で不具合が発生し、歩留まりの低下を生じる場合がある。
また、半導体積層構造を有する素子では、上下配線のプラグ接合において、上限配線間の近接による電流リークが問題となる。これを防ぐためには、リセスプロセスによる配線の微小エッチングが必要となる。そのような微小エッチングにおいては、プラグ接合部に不具合が生じないように、表面ラフネスを低減したエッチングが求められる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、エッチング後の表面ラフネスを低減可能な、エッチング液、前記エッチング液を用いたエッチング方法、及び金属配線の形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0008】
本発明の第1の態様は、過酸化水素と、キトサンと、を含み、pHが0.1以上4.0以下である、金属含有層のエッチングに用いるエッチング液である。
【0009】
本発明の第2の態様は、過酸化水素と、キトサンと、有機酸と、を含む、金属含有層のエッチングに用いるエッチング液である。
【0010】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様のエッチング液に、金属含有層を接触させる工程を含む、金属含有層のエッチング方法である。
【0011】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様のエッチング液を用いて、金属含有層をエッチングする工程を含む、金属配線の形成方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エッチング後の表面ラフネスを低減可能な、エッチング液、前記エッチング液を用いたエッチング方法、及び金属配線の形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(エッチング液)
本発明の一実施形態にかかるエッチング液は、金属含有層のエッチングに用いられる。本実施形態にかかるエッチング液は、過酸化水素と、キトサンと、を含む。
【0014】
<過酸化水素>
本実施形態のエッチング液は、過酸化水素(H)を含有する。本実施形態のエッチング液において、過酸化水素は、酸化剤として機能する。
【0015】
本実施形態のエッチング液において、過酸化水素の含有量は、エッチング対象の金属のエッチングが可能であれば、特に限定されない。過酸化水素の含有量としては、例えば、エッチング液の全質量に対し、0.05~40質量%が挙げられる。過酸化水素の含有量の下限値としては、例えば、エッチング液の全質量に対し、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、又は5質量%以上が挙げられる。過酸化水素の含有量が前記下限値以上であると、エッチング対象の金属に対するエッチングレートがより良好となる。過酸化水素の含有量の上限値としては、例えば、エッチング液の全質量に対し、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、又は15質量%以下が挙げられる。過酸化水素の含有量が前記上限値以下であると、エッチング後の金属の表面ラフネスが低減しやすくなる。前記上限値及び下限値は、任意に組合せることができる。
【0016】
<キトサン>
本実施形態のエッチング液は、キトサンを含有する。本実施形態のエッチング液において、キトサンは、表面ラフネスの抑制剤として機能する。キトサンは、下記繰り返し単位から構成される多糖類である。
【0017】
【化1】
【0018】
本実施形態のエッチング液において、キトサンの含有量は、エッチング対象の金属のエッチングが可能であれば、特に限定されない。キトサンの含有量としては、例えば、エッチング液の全質量に対し、0.0001~10質量%が挙げられる。過酸化水素の含有量の下限値としては、例えば、エッチング液の全質量に対し、0.0005質量%以上、0.001質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.03質量%以上、又は0.05質量%以上が挙げられる。キトサンの含有量が前記下限値以上であると、エッチング後の金属の表面ラフネスがより低減される。キトサンの含有量の上限値としては、例えば、エッチング液の全質量に対し、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、又は1質量%以下が挙げられる。キトサンの含有量が前記上限値以下であると、エッチングレートがより良好となる。前記上限値及び下限値は、任意に組合せることができる。
【0019】
<酸成分>
本実施形態のエッチング液は、酸成分を含有することが好ましい。本実施形態のエッチング液において、酸成分は、キトサンの安定化剤として機能し得る。エッチング液が酸成分を含有することにより、エッチング液中でキトサンが安定化し、エッチング後の金属の表面ラフネスが低減されやすくなる。
【0020】
酸成分は、キトサンの安定化が図れる限り、特に限定されない。酸成分は、有機酸であってもよく、無機酸であってもよい。無機酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、次亜リン酸、炭酸、スルファミン酸等が挙げられる。中でも、無機酸は、リン酸が好ましい。
【0021】
有機酸としては、例えば、カルボン酸が挙げられる。カルボン酸は、モノカルボン酸であってもよく、多価カルボン酸であってもよいが、モノカルボン酸が好ましい。カルボン酸は、脂肪族カルボン酸であってもよく、芳香族カルボン酸であってもよいが、脂肪族カルボン酸が好ましい。脂肪族カルボン酸の炭素原子数としては、例えば、炭素原子数1~18が挙げられ、炭素原子数1~14が好ましく、炭素原子数1~10がより好ましく、炭素原子数1~6がさら好ましく、炭素原子数1~3が特に好ましい。芳香族カルボン酸の炭素原子数としては、炭素原子数6~10が挙げられる。
【0022】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、グリコール酸、ジグリコール酸、ピルビン酸、酪酸、ヒドロキシ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪族モノカルボン酸;酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸;クエン酸、プロパントリカルボン酸、trans-アコニット酸等の脂肪族トリカルボン酸等が挙げられる。
芳香族カルボン酸としては、安息香酸、サリチル酸、マンデル酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
中でも、有機酸としては、脂肪族モノカルボン酸が好ましく、酢酸、グリコール酸、乳酸がより好ましい。
本実施形態のエッチング液は、カルボン酸以外の有機酸を含有しないものであってもよく、上記酸成分として例示した成分のいずれか1種以上を含有しないものであってもよい。本実施形態のエッチング液は、例えば、芳香族カルボン酸、多価カルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び4価以上のカルボン酸のいずれか1種以上を含有しないものであってもよい。
【0023】
酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のエッチング液において、酸成分の含有量は、エッチング対象の金属のエッチングが可能であれば、特に限定されない。酸成分の含有量としては、例えば、エッチング液の全質量に対し、0.05~40質量%が挙げられる。酸成分の含有量の下限値としては、例えば、エッチング液の全質量に対し、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上が挙げられる。酸成分の含有量が前記下限値以上であると、エッチング後の金属の表面ラフネスが低減されやすくなる。酸成分の含有量の上限値としては、例えば、エッチング液の全質量に対し、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、又は10質量%以下が挙げられる。酸成分の含有量が前記上限値以下であると、エッチングレートが良好に維持されやすい。前記上限値及び下限値は、任意に組合せることができる。
【0024】
酸成分は、エッチング液のpHを調整するために用いられてもよい。例えば、エッチング液の他の成分を水に溶解した後、所望のpHとなるように、酸成分を添加してもよい。この場合、エッチング液のpHを測定しながらエッチング液に酸成分を添加していき、所望のpHとなった時点で、酸成分の添加を終了してもよい。本実施形態のエッチング液において、酸成分の含有量は、エッチング液のpHを所望の範囲に調整するために必要な量であってもよい。
【0025】
<pH>
本実施形態のエッチング液のpHは、特に限定されないが、0.1以上4.0以下が好ましい。エッチング液のpHが前記範囲内であると、エッチング液中のキトサンが安定化し、表面ラフネスが低減されやすくなる。エッチング液のpHの下限値としては、例えば、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、又は0.8以上が挙げられる。エッチング液のpHの上限値としては、例えば、3.9以下、3.8以下、3.7以下、3.6以下、又は3.5以下が挙げられる。前記上限値及び下限値は、任意に組合せることができる。
【0026】
<任意成分>
本実施形態のエッチング液は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分に加えて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、水、極性有機溶剤、アミン化合物、アゾール類、過酸化水素安定剤、pH調整剤、及び界面活性剤等が挙げられる。
【0027】
≪水≫
本実施形態のエッチング液は、上記成分の溶媒として水を含むことが好ましい。水は、不可避的に混入する微量成分を含んでいてもよい。本実施形態のエッチング液に用いられる水は、蒸留水、イオン交換水、及び超純水などの浄化処理を施された水が好ましく、半導体製造に一般的に使用される超純水を用いることがより好ましい。
本実施形態のエッチング液中の水の含有量は、特に限定されないが、エッチング液の全質量に対し、30~99質量%が挙げられる。水の含有量は、他の成分を所望の含有量とするために調整されてもよい。
【0028】
≪極性有機溶媒≫
本実施形態のエッチング液は、本発明の効果を損なわない範囲で、極性有機溶剤を含有してもよい。極性有機溶剤としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、フルフリルアルコール、及び2-メチルー2,4-ペンタンジオール等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル)等が挙げられる。極性有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のエッチング液は、極性溶媒を含有しないものであってもよく、前記例示した極性溶媒のいずれか1種以上を含有しないものであってもよい。
【0029】
≪アミン化合物≫
本実施形態のエッチング液は、本発明の効果を損なわない範囲で、アミン化合物を含有してもよい。アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、1,3-ジアミノブタン、2,3-ジアミノブタン、ペンタメチレンジアミン、2,4-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、N-メチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、トリメチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、トリエチルエチレンジアミン、1,2,3-トリアミノプロパン、ヒドラジン、トリス(2-アミノエチル)アミン、テトラ(アミノメチル)メタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチルペンタミン、ヘプタエチレンオクタミン、ノナエチレンデカミン、ジアザビシクロウンデセン等のポリアミン;エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、N-プロピルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノール、N-メチルイソプロパノールアミン、N-エチルイソプロパノールアミン、N-プロピルイソプロパノールアミン、2-アミノプロパン-1-オール、N-メチル-2-アミノ-プロパン-1-オール、N-エチル-2-アミノ-プロパン-1-オール、1-アミノプロパン-3-オール、N-メチル-1-アミノプロパン-3-オール、N-エチル-1-アミノプロパン-3-オール、1-アミノブタン-2-オール、N-メチル-1-アミノブタン-2-オール、N-エチル-1-アミノブタン-2オール、2-アミノブタン-1-オール、N-メチル-2-アミノブタン-1-オール、N-エチル-2-アミノブタン-1-オール、3-アミノブタン-1-オール、N-メチル-3-アミノブタン-1-オール、N-エチル-3-アミノブタン-1-オール、1-アミノブタン-4-オール、N-メチル1-アミノブタン-4-オール、N-エチル-1-アミノブタン-4-オール、1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オール、2-アミノ-2-メチルプロパン-1-オール、1-アミノペンタン-4-オール、2-アミノ-4-メチルペンタン-1-オール、2-アミノヘキサン-1-オール、3-アミノヘプタン-4-オール、1-アミノオクタン-2-オール、5-アミノオクタン-4-オール、1-アミノプパン-2,3-ジオール、2-アミノプロパン-1,3-ジオール、トリス(オキシメチル)アミノメタン、1,2-ジアミノプロパン-3-オール、1,3-ジアミノプロパン-2-オール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、ジグリコールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。アミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のエッチング液は、アミン化合物を含有しないものであってもよく、前記例示したアミン化合物のいずれか1種以上を含有しないものであってもよい。
【0030】
≪アゾール類≫
本実施形態のエッチング液は、本発明の効果を損なわない範囲で、アゾール類を含有してもよい。アゾール類としては、例えば、1H-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、3-アミノ-1H-トリアゾール等のトリアゾール類;1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール等のテトラゾール類;1H-イミダゾール、1H-ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;1,3-チアゾール、4-メチルチアゾール等のチアゾール類等が挙げられる。アゾール類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のエッチング液は、アゾール類を含有しないものであってもよく、前記例示したアゾール類のいずれか1種以上を含有しないものであってもよい。
【0031】
≪過酸化水素安定剤≫
本実施形態のエッチング液は、本発明の効果を損なわない範囲で、過酸化水素安定剤を含有してもよい。過酸化水素安定剤は、過酸化水素の分解を抑制する物質である。過酸化水素安定剤としては、例えば、フェニル尿素、アリル尿素、1,3-ジメチル尿素、チオ尿素等の尿素系過酸化水素安定剤;フェニル酢酸アミド;フェニルエチレングリコール等が挙げられる。過酸化水素安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のエッチング液は、過酸化水素安定剤を含有しないものであってもよく、前記例示した過酸化水素安定剤のいずれか1種以上を含有しないものであってもよい。
【0032】
≪pH調整剤≫
本実施形態のエッチング液は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸成分以外のpH調整剤を含有してもよい。pH調整剤としては、例えば、塩基性化合物が挙げられる。塩基性化合物は、有機塩基性化合物であってもよく、無機塩基性化合物であってもよい。
無機塩基性化合物は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を含む無機化合物及びその塩が挙げられる。例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられる。
有機塩基性化合物としては、四級アンモニウム塩、アルキルアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)等が挙げられる。四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド及びトリエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
pH調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のエッチング液は、酸成分以外のpH調整剤を含有しないものであってもよく、前記例示したpH調整剤のいずれか1種以上を含有しないものであってもよい。
【0033】
≪界面活性剤≫
本実施形態のエッチング液は、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0034】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤等が挙げられる。
【0035】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、脂肪酸アミドスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルプロピオン酸、アルキルホスホン酸、脂肪酸の塩等が挙げられる。「塩」としてはアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0036】
カチオン界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、アルキルピリジウム系界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン型界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤、アミンオキサイド型界面活性剤等が挙げられる。
【0038】
界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のエッチング液は、界面活性剤を含有しないものであってもよく、前記例示した界面活性剤のいずれか1種以上を含有しないものであってもよい。
【0039】
≪その他≫
本実施形態のエッチング液は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記例示した成分以外の任意の成分を含有してもよい。例えば、エッチング液の添加剤として公知である各種添加剤を含有してもよい。
本実施形態のエッチング液は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)プロセスに用いられるようなスラリーを含有してもよく、スラリーを含有しなくてもよい。本実施形態のエッチング液は、研磨剤を含有してもよく、含有しなくてもよい。研磨剤としては、例えば、金属酸化物粒子(アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア等)が挙げられる。
【0040】
<被処理体>
本実施形態のエッチング液は、金属含有層のエッチングに用いられる。本実施形態のエッチング液は、金属含有層を含む被処理体をエッチング処理の対象とする。エッチング対象の金属としては、例えば、モリブデン、銅、コバルト、ニッケル、及びタングステン等が挙げられる。
被処理体の具体例としては、金属含有層を有する基板等が挙げられる。基板としては、特に限定されず、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の各種基板が挙げられる。基板としては、半導体デバイス作製のために使用される基板が好ましい。基板は、適宜、金属含有層以外の層を含んでもよい。基板は、層構造に加えて、各種構造を備えてもよい。基板は、例えば、金属配線、ゲート構造、ソース構造、ドレイン構造、絶縁層、強磁性層、及び非磁性層等を有してもよい。基板のデバイス面の最上層が金属含有層である必要はなく、例えば、多層構造の中間層が金属含有層であってもよい。
基板の大きさ、厚さ、形状、層構造等は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0041】
金属含有層は、モリブデン、銅、コバルト、ニッケル、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。金属含有層は、金属膜であることが好ましく、モリブデン、銅、コバルト、ニッケル、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属膜であることがより好ましい。基板上の金属含有層の厚さは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。金属含有層の厚さとしては、例えば、1~500nm、1~300nm、1~200nm、1~100nm、又は1~50nm等が挙げられる。
金属含有層は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。金属含有層は、例えば、異なる種類の金属で形成された層が積層された多層構造であってもよい。多層構造は、例えば、モリブデン層、銅層、コバルト層、ニッケル層、及びタングステン層からなる群より選択される2種以上の金属層を含むものでもよい。
ことができる。
【0042】
本実施形態のエッチング液は、金属含有層をエッチングして、金属配線を形成するために用いられてもよい。例えば、モリブデン、銅、コバルト、ニッケル、又はタングステンを含む金属含有層をエッチングして、モリブデン、銅、コバルト、ニッケル、又はタングステンを含む金属配線を形成することができる。
【0043】
本実施形態のエッチング液によれば、過酸化水素及びキトサンを含むため、表面ラフネスを抑制しつつ、金属含有層のエッチングを行うことができる。エッチング液中のキトサンにより金属含有層の表面が保護されることで、エッチングによる表面ラフネスの増大を抑制できると推測される。
エッチング後の金属表面のラフネスが大きいと、後工程における不具合発生、上下配線の接合部における電流リーク、又はプラグ接合部の接続不良等のリスクが生じる。特に、リセスエッチングにおいては、表面ラフネスの低減が求められる。本実施形態のエッチング液によれば、金属ラフネスが低減された金属表面を形成できるため、金属配線形成のためのエッチング、特にリセスエッチング等に好適に用いることができる。
【0044】
(金属含有層のエッチング方法)
本発明の一実施形態にかかる金属含有層のエッチング方法は、前記実施形態のエッチング液に、金属含有層を接触させる工程を含む。
【0045】
本実施形態のエッチング方法において、エッチング対象となる金属含有層は、上記と同様のものが挙げられる。金属含有層は、モリブデン、銅、コバルト、ニッケル、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0046】
エッチング液に、金属含有層を接触させる方法は、特に限定されない。かかる方法としては、例えば、スプレー法、浸漬法、液盛り法、液かけ流し法等が挙げられるが、これらに限定されない。
スプレー法では、例えば、金属含有層を所定の方向に搬送もしくは回転させ、その空間にエッチング液を噴射して、金属含有層に前記エッチング液を接触させる。必要に応じて、スピンコーターを用いて基板を回転させながら前記エッチング液を噴霧してもよい。
浸漬法では、エッチング液に金属含有層を浸漬して、金属含有層にエッチング液を接触させる。この際、必要に応じてエッチング液を攪拌しながら金属含有層を浸漬してもよい。
液盛り法では、金属含有層にエッチング液を盛って、金属含有層とエッチング液とを接触させる。
これらのエッチング処理の方法は、金属含有層の構造や材料等に応じて適宜選択することができる。スプレー法、又は液盛り法の場合、金属含有層へのエッチング液の供給量は、金属含有層における被処理面が、エッチング液で十分に濡れる量であればよい。
また、液かけ流し法では、金属含有層を有する基材を必要に応じた回転速度で回転させながら、エッチング液を金属含有層へ十分に濡れる量を吐出接触させる。
【0047】
エッチング処理の温度は、特に限定されず、エッチング液にエッチング対象の金属が溶解する温度であればよい。エッチング処理の温度としては、例えば、20~60℃が挙げられる。スプレー法、浸漬法、及び液盛り法のいずれの場合も、エッチング液の温度を高くすることで、エッチングレートは上昇する。エッチング処理の温度は、エッチングレート、エッチング液の組成変化、作業性、安全性、コスト等を考慮して、適宜、選択することができる。
【0048】
エッチング処理の時間は、エッチング処理の目的、エッチングにより除去する金属量(例えば、金属含有層の厚さなど)、及びエッチング処理条件に応じて、適宜、選択すればよい。
【0049】
エッチング処理の目的は特に限定されず、金属含有層(例えば、基板上の金属含有層)の微細加工であってもよく、被処理体(例えば、金属含有層を有する基板)に付着する金属含有付着物の除去であってもよく、金属含有層(例えば、基板上の金属含有層)の洗浄であってもよい。
エッチング処理の目的が、金属含有層の微細加工である場合、通常、エッチングされるべきでない箇所をマスクにより被覆したうえで、金属含有層とエッチング液とを接触させてもよい。
エッチング処理の目的が、被処理体に付着する金属含有付着物の除去である場合、エッチング液を被処理体に接触させることで、金属含有付着物が溶解し、被処理体から金属付着物を除去することができる。
エッチング処理の目的が、金属含有層の洗浄である場合、エッチング液を金属含有層に接触させることで、金属含有層の表面に付着するパーティクル等の不純物が短時間で除去することができる。
【0050】
本実施形態のエッチング方法によれば、上記実施形態のエッチング液を用いて、金属含有層のエッチングを行う。そのため、表面ラフネスの増大を抑制しつつ、良好にエッチングを行うことができる。これにより、エッチング処理後の表面ラフネスが低減された金属含有層を得ることができる。
【0051】
(金属配線形成方法)
本発明の一実施形態にかかる金属配線の形成方法は、前記実施形態のエッチング液を用いて、金属含有層をエッチングする工程を含む。
【0052】
<エッチング工程>
金属含有層は、上記と同様のものが挙げられる。金属含有層は、モリブデン、銅、コバルト、ニッケル、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0053】
金属含有層のエッチングは、上記と同様の方法で行うことができる。金属含有層のエッチングは、エッチングされるべきでない箇所をマスクにより被覆したうえで、行ってもよい。前記マスクは、レジスト膜により形成してもよい。例えば、金属含有層上に、レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、所望のパターンマスクを介して露光する。次いで、現像液によりレジスト膜を現像することで、パターンが転写されたレジストパターンが形成される。このレジストパターンをマスクとし、金属含有層をエッチングすることにより、金属含有層に所望の配線パターンを形成することができる。
金属配線を形成するエッチングは、リセスエッチングであってもよい。
【0054】
<任意工程>
本実施形態の金属配線の製造方法は、エッチング工程に加えて任意の工程を含んでもよい。任意工程としては、例えば、金属配線を形成する際に行われる公知の工程を特に制限なく含むことができる。かかる工程としては、例えば、ゲート構造、ソース構造、ドレイン構造、絶縁層、強磁性層、及び非磁性層等の各構造の形成工程(層形成、上記エッチング処理以外のエッチング、化学機械研磨、変成等)、レジスト膜形成工程、露光工程、現像工程、熱処理工程、洗浄工程、検査工程等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの任意工程は、必要に応じ、エッチング工程の前又は後に、適宜行うことができる。
【0055】
本実施形態の金属配線の製造方法によれば、前記実施形態のエッチング液を用いて金属含有層をエッチングするため、表面ラフネスが低減された金属配線を得ることができる。
【実施例0056】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0057】
<エッチング液の調製>
(実施例1)
200mLビーカーに、30質量%過酸化水素水溶液16.7g、酢酸5g、キトサン1g、及び純水77.3gを加え、撹拌して溶解させ、実施例1のエッチング液を得た。エッチング液のpHは、25℃、pHメーター(堀場製作所)により測定した。
【0058】
(実施例2~13、比較例1~2)
表1に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、各例のエッチング液を得た。
【0059】
【表1】
【0060】
<エッチング処理>
基板は、シリコンウエハー上に、モリブデン被膜が50nmの膜厚で形成された基板を使用した。
各例のエッチング液を、200mLビーカーに入れ、スターラーで、300rpm回転による撹拌を行った。前記撹拌中のエッチング液に、基板を浸漬して、所定時間後に引き上げた。次いで、5質量%酢酸水溶液にて、基板を流水洗浄した。次いで、純水にて基板を流水洗浄し、スプレードライを行った。
【0061】
[エッチングレートの評価]
上記<エッチング処理>で処理する前と後の基板におけるモリブデン被膜の膜厚を、蛍光X線分析(XRF)装置(リガク社製ZSX Primus)を用いて測定した。測定されたエッチング処理前後の膜厚から、エッチングレートを算出した。これを「エッチングレート」として、表2に示した。
【0062】
[表面粗さの評価]
上記<エッチング処理>で処理した後の基板の表面を、AFM(原子間力顕微鏡:タカノ株式会社製)により観察、1μm角あたりの二乗平均平方根高さ(表面粗さ)Rq(nm)を求めた。同様に、エッチング処理を行っていない基板の表面の表面粗さRq0(nm)を求めた。Rq/Rq0を求め、これを「表面粗さ[Rq/Rq0]」として、表2に示した。
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示すように、実施例1~13では、比較例1~2と比較して、表面粗さが抑制されていた。また、エッチングレートも良好であった。
以上の結果から、実施例のエッチング液を用いることにより、良好なエッチングレートを維持したまま、表面粗さを低減できることが確認された。