(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048608
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】流動床式汚泥焼却炉及び流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
F23G5/50 H
F23G5/50 N
F23G5/50 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158027
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592239394
【氏名又は名称】川崎市
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】松井 威喜
(72)【発明者】
【氏名】秋山 肇
(72)【発明者】
【氏名】▲羽▼嶋 南州
(72)【発明者】
【氏名】成島 正昭
(72)【発明者】
【氏名】菅原 充
【テーマコード(参考)】
3K062
【Fターム(参考)】
3K062AA11
3K062AB01
3K062AC02
3K062BA02
3K062BB02
3K062BB04
3K062CA01
3K062CB05
3K062CB06
3K062CB08
3K062DA02
3K062DA08
3K062DA23
3K062DB06
(57)【要約】
【課題】砂層の流動状態を砂層の各所に設けた砂層温度測定器で測定された温度の温度差に基づいて砂層の流動状態を制御し、排ガス中のN
2O濃度を低減すること。
【解決手段】砂層部と前記砂層部の上側に形成されたフリーボード部とを有し、投入された汚泥を燃焼させる流動床式焼却炉であって、前記砂層部に設けられ、砂層の複数箇所の温度を測定する複数個の温度測定器と、前記温度測定器によって測定された砂層の温度の最高温度と最低温度との温度差を計算し、その温度差の値に基づいて前記砂層部に供給される一次空気量を決定し、前記砂層部に供給される一次空気量を制御する制御装置であって、前記温度差が所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を増加させ、前記温度差が所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を減少させるように制御する制御装置と、を有することを特徴とする流動床式汚泥焼却炉。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂層部と前記砂層部の上側に形成されたフリーボード部とを有し、投入された汚泥を燃焼させる流動床式汚泥焼却炉であって、
前記砂層部に設けられ、砂層の複数箇所の温度を測定する複数個の温度測定器と、
前記温度測定器によって測定された砂層の温度の最高温度と最低温度との温度差を計算し、その温度差の値に基づいて前記砂層部に供給される一次空気量を決定し、前記砂層部に供給される一次空気量を制御する制御装置であって、前記温度差が所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を増加させ、前記温度差が所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を減少させるように制御する制御装置と、
を有することを特徴とする流動床式汚泥焼却炉。
【請求項2】
前記制御装置が、前記温度差が前記所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%増加させ、前記温度差が前記所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%減少させるように制御する制御装置であることを特徴とする請求項1に記載の流動床式汚泥焼却炉。
【請求項3】
前記所定の上限値を15℃以上の値に設定し、前記所定の下限値を15℃未満の値に設定することを特徴とする請求項2に記載の流動床式汚泥焼却炉。
【請求項4】
砂層部と前記砂層部の上側に形成されたフリーボード部とを有し、投入された汚泥を燃焼させる流動床式汚泥焼却炉であって、
前記砂層部に設けられ、砂層の複数箇所の温度を測定する複数個の温度測定器と、
前記温度測定器によって測定された砂層の温度の最高温度と最低温度との温度差と前記温度差の変化速度を計算し、その温度差の変化速度の値に基づいて前記砂層部に供給される一次空気量を決定し、前記砂層部に供給される一次空気量を制御する制御装置であって、前記温度差の変化速度が所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を増加させ、前記温度差の変化速度が所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を減少させるように制御する制御装置と、
を有することを特徴とする流動床式汚泥焼却炉。
【請求項5】
前記制御装置が、前記温度差の変化速度が前記所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%増加させ、前記温度差の変化速度が前記所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%減少させるように制御する制御装置であることを特徴とする請求項4に記載の流動床式汚泥焼却炉。
【請求項6】
前記所定の上限値を15℃/h以上の値に設定し、前記所定の下限値を15℃/h未満の値に設定することを特徴とする請求項5に記載の流動床式汚泥焼却炉。
【請求項7】
前記流動床式汚泥焼却炉の焼却炉本体の炉出口から排出された排ガス中のCO濃度を測定するCO濃度測定器を設け、
前記制御装置が、前記CO濃度測定器で測定した前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を減少させ、前記CO濃度測定器で測定した前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を増加させるように制御する制御装置であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の流動床式汚泥焼却炉。
【請求項8】
前記制御装置が、前記CO濃度測定器で測定した前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%減少させ、
前記CO濃度測定器で測定した前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%増加させるように制御する制御装置であることを特徴とする請求項7に記載の流動床式汚泥焼却炉。
【請求項9】
前記所定のCO濃度上限値が10~20PPMであり、前記所定のCO濃度下限値が0~10PPMであることを特徴とする請求項7又は8に記載の流動床式汚泥焼却炉。
【請求項10】
砂層部と前記砂層部の上側に形成されたフリーボード部とを有し、投入された汚泥を燃焼させる流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法であって、
前記砂層部に、異なる位置の砂層の温度を測定する複数個の温度測定器を設け、
前記複数箇所によって測定された砂層の温度の最高温度と最低温度との温度差を計算し、前記温度差が所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を増加させ、前記温度差が所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を減少させるように制御することを特徴とする、流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
【請求項11】
前記温度差が前記所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%増加させ、前記温度差が前記所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%減少させるように制御することを特徴とする請求項10に記載の流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
【請求項12】
前記所定の上限値を15℃以上の値に設定し、前記所定の下限値を15℃未満の値に設定することを特徴とする請求項11に記載の流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
【請求項13】
砂層部と前記砂層部の上側に形成されたフリーボード部とを有し、投入された汚泥を燃焼させる流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法であって、
前記砂層部に、異なる位置の砂層の温度を測定する複数個の温度測定器を設け、
前記温度測定器によって測定された砂層の温度の最高温度と最低温度との温度差と前記温度差の変化速度を計算し、前記温度差の変化速度が所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を増加させ、前記温度差の変化速度が所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を減少させるように制御することを特徴とする、流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
【請求項14】
前記温度差の変化速度が前記所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%増加させ、前記温度差の変化速度が前記所定下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%減少させるように制御することを特徴とする請求項13に記載の流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
【請求項15】
前記所定の上限値を15℃/h以上の値に設定し、前記所定の下限値を15℃/h未満の値に設定することを特徴とする請求項14に記載の流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
【請求項16】
前記流動床式汚泥焼却炉の焼却炉本体の炉出口から排出された排ガス中のCO濃度をCO濃度測定器で測定し、
前記CO濃度測定器で測定した前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を減少させ、
前記CO濃度測定器で測定した前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を増加させることを特徴とする請求項10~15のいずれかに記載の流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
【請求項17】
前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%減少させ、
前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%増加させることを特徴とする請求項16に記載の流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
【請求項18】
前記所定のCO濃度上限値が10~20PPMであり、前記所定のCO濃度下限値が0~10PPMであることを特徴とする請求項16又は17に記載の流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥を燃焼する流動床式汚泥焼却炉及び流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場においては、下水汚泥を燃やすために流動床式汚泥焼却炉などの汚泥焼却炉を設けている。流動床式汚泥焼却炉は、流動媒体として砂を使用した砂層部(流動層)と、燃焼室であるフリーボード部とを有する筒状の焼却炉本体を備えている多段燃焼式の焼却炉であり、汚泥を乾燥、ガス化、燃焼というプロセスで処理している。
【0003】
下水汚泥は窒素成分に富んでいることからその燃焼排ガスには温暖化効果の高いN2Oを含むため、焼却炉から排出されるN2Oを極力少なくすることが望まれている。
また、焼却炉の燃焼状態によっては、煙突から一酸化炭素等の有害未燃物の排出が増大することがあり、一酸化炭素の排出量を抑制する必要がある。
【0004】
特許文献1には、焼却炉本体から排出される燃焼ガスのN2O濃度を測定するN2O濃度センサと、N2O濃度センサの測定値に基づいて前記燃焼空気量を調整する制御装置と、を備え、燃焼空気量に基づいて砂層の流動範囲を制限するようにした流動床式汚泥焼却炉が記載されている。
【0005】
特許文献2には、炉床温度を測定する炉床温度計を流動状態監視手段として用い、その測定値が適正範囲を逸脱した場合、流動不良が発生したと判断し、流動空気量を増加させて流動状態を回復させ、前記測定値が適正範囲に戻った場合には再び流動空気量を減少させ安定運転を継続させるようにした流動床式汚泥焼却炉の燃焼制御方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-142447号公報
【特許文献2】特開平3-244912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃焼制御には従来CO濃度計を用いているが、特許文献1の方法では、N2O濃度計が燃焼制御のために必要となる。
特許文献2では、炉床温度計を用い、その測定値の変化率により流動状態の良/不良を判断する方法や、複数の炉床温度計を用い、その温度差により流動状態の良/不良を判断することが提案されているが、焼却物性状の変化により炉床温度全体が上下する場合には、流動状態の悪化を検出することができないという問題がある。
流動床式汚泥焼却炉では砂層流動状態悪化の現象が生じて運転が不安定になることが大きな問題となっている。
これはN2O濃度を低減させようとして一次空気量を減少させ過ぎたのが理由である。
本発明は砂層の流動状態を砂層の各所に設けた砂層温度測定器で測定された温度の温度差に基づいて制御し、排ガス中のN2O濃度を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するべく発明者らが鋭意検討した結果、出願人は、砂層に砂層温度測定器を複数個設けたとき、この複数個の砂層温度測定器が示す砂層温度の最高温度と最低温度との温度差に上限値と下限値とを設けて、温度差が上限値を超えた場合及び温度差が下限値を下回った場合に砂層部に供給される一次空気量を制御することにより、上記課題を解決することができることを見出して、本発明を完成した。
【0009】
上記課題を解決する本願発明の実施形態は以下に記載するとおりである。
(1)砂層部と前記砂層部の上側に形成されたフリーボード部とを有し、投入された汚泥を燃焼させる流動床式汚泥焼却炉であって、
前記砂層部に設けられ、砂層の複数箇所の温度を測定する複数個の温度測定器と、
前記温度測定器によって測定された砂層の温度の最高温度と最低温度との温度差を計算し、その温度差の値に基づいて前記砂層部に供給される一次空気量を決定し、前記砂層部に供給される一次空気量を制御する制御装置であって、前記温度差が所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を増加させ、前記温度差が所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を減少させるように制御する制御装置と、
を有することを特徴とする流動床式汚泥焼却炉。
(2)前記制御装置が、前記温度差が前記所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%増加させ、前記温度差が前記所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%減少させるように制御する制御装置であることを特徴とする上記(1)に記載の流動床式汚泥焼却炉。
(3)前記所定の上限値を15℃以上の値に設定し、前記所定の下限値を15℃未満の値に設定することを特徴とする上記(2)に記載の流動床式汚泥焼却炉。
(4)砂層部と前記砂層部の上側に形成されたフリーボード部とを有し、投入された汚泥を燃焼させる流動床式汚泥焼却炉であって、
前記砂層部に設けられ、砂層の複数箇所の温度を測定する複数個の温度測定器と、
前記温度測定器によって測定された砂層の温度の最高温度と最低温度との温度差と前記温度差の変化速度を計算し、その温度差の変化速度の値に基づいて前記砂層部に供給される一次空気量を決定し、前記砂層部に供給される一次空気量を制御する制御装置であって、前記温度差の変化速度が所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を増加させ、前記温度差の変化速度が所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を減少させるように制御する制御装置と、
を有することを特徴とする流動床式汚泥焼却炉。
(5)前記制御装置が、前記温度差の変化速度が前記所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%増加させ、前記温度差の変化速度が前記所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%減少させるように制御する制御装置であることを特徴とする上記(4)に記載の流動床式汚泥焼却炉。
(6)前記所定の上限値を15℃/h以上の値に設定し、前記所定の下限値を15℃/h未満の値に設定することを特徴とする上記(5)に記載の流動床式汚泥焼却炉。
(7)前記流動床式汚泥焼却炉の焼却炉本体の炉出口から排出された排ガス中のCO濃度を測定するCO濃度測定器を設け、
前記制御装置が、前記CO濃度測定器で測定した前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を減少させ、前記CO濃度測定器で測定した前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を増加させるように制御する制御装置であることを特徴とする上記(1)~(6)のいずれかに記載の流動床式汚泥焼却炉。
(8)前記制御装置が、前記CO濃度測定器で測定した前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%減少させ、前記CO濃度測定器で測定した前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%増加させるように制御する制御装置であることを特徴とする上記(7)に記載の流動床式汚泥焼却炉。
(9)前記所定のCO濃度上限値が10~20PPMであり、前記所定のCO濃度下限値が0~10PPMであることを特徴とする上記(7)又は(8)に記載の流動床式汚泥焼却炉。
(10)砂層部と前記砂層部の上側に形成されたフリーボード部とを有し、投入された汚泥を燃焼させる流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法であって、
前記砂層部に、異なる位置の砂層の温度を測定する複数個の温度測定器を設け、前記複数箇所によって測定された砂層の温度の最高温度と最低温度との温度差を計算し、前記温度差が所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を増加させ、前記温度差が所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を減少させるように制御することを特徴とする、流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
(11)前記温度差が前記所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%増加させ、前記温度差が前記所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%減少させるように制御することを特徴とする上記(10)に記載の流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
(12)前記所定の上限値を15℃以上の値に設定し、前記所定の下限値を15℃未満の値に設定することを特徴とする上記(11)に記載の流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
(13)砂層部と前記砂層部の上側に形成されたフリーボード部とを有し、投入された汚泥を燃焼させる流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法であって、
前記砂層部に、異なる位置の砂層の温度を測定する複数個の温度測定器を設け、前記温度測定器によって測定された砂層の温度の最高温度と最低温度との温度差と前記温度差の変化速度を計算し、前記温度差の変化速度が所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を増加させ、前記温度差の変化速度が所定の下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を減少させるように制御することを特徴とする、流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
(14)前記温度差の変化速度が前記所定の上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%増加させ、前記温度差の変化速度が前記所定下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%減少させるように制御することを特徴とする上記(13)に記載の流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
(15)前記所定の上限値を15℃/h以上の値に設定し、前記所定の下限値を15℃/h未満の値に設定することを特徴とする上記(14)に記載の流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
(16)前記流動床式汚泥焼却炉の焼却炉本体の炉出口から排出された排ガス中のCO濃度をCO濃度測定器で測定し、
前記CO濃度測定器で測定した前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を減少させ、
前記CO濃度測定器で測定した前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を増加させることを特徴とする上記(10)~(15)のいずれかに記載の流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
(17)前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度上限値を超えた場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%減少させ、
前記排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度下限値を下回った場合には、前記砂層部に供給される一次空気量を1~5%増加させることを特徴とする上記(16)に記載の流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
(18)前記所定のCO濃度上限値が10~20PPMであり、前記所定のCO濃度下限値が0~10PPMであることを特徴とする上記(16)又は(17)に記載の流動床式汚泥焼却炉の自動燃焼制御方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、砂層の流動状態を砂層の各所に設けた砂層温度測定器で測定された温度の温度差に基づいて制御することによって排ガス中のN2O濃度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態の流動床式汚泥焼却炉の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態の流動床式汚泥焼却炉の焼却炉本体の砂層の温度を測定する砂層温度測定器の配置例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態における、砂層温度差及び砂層温度変化速度と一次空気量制御状態とを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態における、炉出口温度と炉出口から排出された排ガス中のN
2O濃度との関係を示す図である。
【
図5】
図5は、煙突出口におけるN
2O濃度値とセラミックフィルター出口におけるCO濃度値とに高い相関があることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の流動床式汚泥焼却炉、及びその自動燃焼制御方法について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態の流動床式汚泥焼却炉1の概略構成図である。流動床式汚泥焼却炉1は、流動砂17を熱媒体として汚泥Mとともに気泡流動層を形成して燃焼する焼却炉である。
流動床式汚泥焼却炉1の焼却炉本体3は、下部に設けられた砂層部S(流動層)と砂層部Sより上方に設けられたフリーボード部Fと、を有しており、焼却炉本体3の側壁に形成された汚泥投入口6と、焼却炉本体3の頂部に設けた炉出口4と、焼却炉本体3の下部に設けられて流動用の空気を供給する一次空気供給部7と、一次空気供給部7の上方に設けられてフリーボード部Fに二次空気を供給する二次空気供給部9と、複数の砂層温度測定器10と、複数のフリーボード温度測定器11と、砂層温度測定器10又は砂層温度測定器10及びフリーボード温度測定器11の測定値に基づいて一次空気供給部7に供給される一次空気の供給量を制御する制御装置27と、を備えている。
【0014】
砂層温度測定器10の設置個数は、例えば、
図2A、Bに示す様に、砂層温度測定器10を砂層の垂直方向に距離を置いて上下二段に設け、下段には
図2Aに示す様に周方向に90度角度をずらして4個設け、上段には
図2Bに示すように下段の設置位置から周方向に45度角度をずらして4個設ける。また、本実施形態ではフリーボード温度測定器11は例えば砂層直上に周方向に120度ずらして3個設けている。
焼却炉本体3の壁際は温度が低く、内壁から150~200mmを超えると砂層の温度が測定できるので、熱電対等の温度測定器は内壁から300mmくらいの所の温度を測定するように配置することが好ましい。
【0015】
流動床式汚泥焼却炉1は、汚泥Mを砂層部Sに投入する汚泥供給装置5を有しており、汚泥Mは、汚泥供給装置5から焼却炉本体3の内部の砂層部Sに投入される。
流動床式汚泥焼却炉1は、燃焼用空気を供給する流動ブロワ21、燃焼用空気を予熱する空気予熱器15、空気予熱器15から流出する予熱された燃焼用空気の供給を受けると共に冷却ブロワ23から外気の供給を受ける空気冷却器25、焼却炉本体3に供給される全空気供給量を調節する全空気量調節弁31、焼却炉本体3に供給される二次空気供給量を調節する二次空気量調節弁32、砂層温度測定器10、フリーボード温度測定器11を備えている。
【0016】
制御装置27は、例えばCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が、記憶部からプログラムを読み出して実行することで構成される。
図1に示したものでは、制御装置27は複数の砂層温度測定器10からのデータ、又は、複数の砂層温度測定器10及びフリーボード温度測定器11からのデータに基づいて、砂層の流動状態を把握し、制御信号を流動ブロワ21、全空気量調節弁31、二次空気量調節弁32に送って、一次空気量を調整し、砂層の流動状態を流動不良が起きず、かつ、N
2Oを低減することができる最適な流動状態を保つ。
【0017】
流動ブロワ21から供給される燃焼用空気が導入される配管は、上流側に配置されている全空気供給配管28と、全空気供給配管28の下流側で分岐する一次空気供給配管29及び二次空気供給配管30と、を有している。流動ブロワ21は、全空気供給配管28を介して一次空気供給配管29及び二次空気供給配管30に空気を供給する。
【0018】
一次空気供給配管29は砂層部Sに一次空気を供給し、二次空気供給配管30は、フリーボード部Fに二次空気を供給する。全空気供給配管28を流れる全空気(砂層部S及びフリーボード部Fに供給される全ての空気)の流量(全空気量)は、一次空気の流量(一次空気量)とフリーボード部Fに供給される二次空気の流量(二次空気量)との合計である。全空気量は、炉出口温度が825~875℃となる様に決定する。
【0019】
図4は炉出口温度と炉出口から排出されたガス中のN
2O濃度との関係を示した図である。
図4に示すように、炉出口温度が825℃以上でN
2O値が低下することから、全空気量は炉出口温度が825℃以上となるように決定する。
また、炉出口温度が875℃を超えると、空気予熱器が損傷する恐れがあり、また、炉から発生する飛灰が溶融固化してしまって排ガスダクトの閉塞をもたらす恐れがある。
このため、全空気量は炉出口温度が875℃を超えないように決定する。
【0020】
また、
図5は煙突出口におけるN
2O濃度値とセラミックフィルター出口におけるCO濃度値との相関を見たものであるが、
図5に示されているように、煙突出口におけるN
2O濃度値とセラミックフィルター出口におけるCO濃度値とには高い相関がある(相関係数0.82)。
従って、CO濃度を下げる制御をすることによってN
2O濃度も低下させることができる。
上記のように、煙突出口におけるN
2O濃度値とセラミックフィルター出口におけるCO濃度値とに高い相関があることから、本発明においては、CO濃度計によってCO濃度値を観察し、このCO濃度値を制御することによってN
2O濃度値を制御する。
【0021】
全空気供給配管28には、全空気量を調整する全空気量調節弁31が設けられている。二次空気供給配管30には、二次空気量を調整する二次空気量調節弁32が設けられている。二次空気量調節弁32が調整されることにより、二次空気量が調整され、その結果、一次空気量が調整される。二次空気量調節弁32によって二次空気量が調整された場合においても、全空気量調節弁31が操作されない限り、全空気量は変化しない。全空気量調節弁31及び二次空気量調節弁32は、制御装置27によって制御される。
【0022】
空気予熱器15は、全空気供給配管28を流れる全空気を予熱する。空気予熱器15は、例えば、焼却炉本体3から排出される排ガスから熱を回収して空気を予熱する。空気予熱器15を出た排ガスはセラミックフィルター33、洗煙処理塔34で処理された後、誘引通風機(IDF)35を介して煙突36に送られる。
【0023】
流動床式汚泥焼却炉1は、砂層部Sの温度Tsを測定する砂層温度測定器10と、砂層直上の温度Tfを測定するフリーボード温度測定器11と、炉出口4から排出された直後の煙道12を流れる排ガスの温度Toを検出する排ガス温度測定器13と、煙道12を流れる排ガスのCO濃度を測定するCO濃度測定器14と、を備えている。
これら測定器10、11、13、14は制御装置27と電気的に接続されている。制御装置27は、これら測定器によって測定された測定値に基づいて、全空気量調節弁31及び二次空気量調節弁32を制御する。
【0024】
次に、汚泥燃焼のプロセスを説明する。
以下では、砂層温度測定器10を
図2に示すように8個設けた場合について説明する。
汚泥Mは図示しない脱水プロセスによって脱水され、汚泥供給装置5により焼却炉本体3に供給される。また、燃焼用空気が流動ブロワ21の吐出圧により全空気供給配管28に導入された後、空気予熱器15で加熱され、砂層部S及びフリーボード部Fに供給される。
燃焼用空気により加熱された砂層部Sの砂粒は、燃焼用空気と発生する燃焼ガスによって、供給された汚泥Mとともに流動し、汚泥Mは流動しながら燃焼する。さらに、燃焼ガスはフリーボード部Fの内部を上昇しながら、二次空気供給配管30を介して供給される二次空気によって燃焼が完結される。燃焼後の排ガスは炉出口4を介して煙道12に導入され、排ガス処理装置へ排出される。
【0025】
次に本実施態様における、流動床式汚泥焼却炉1の制御方法について説明する。
まず、本実施形態の流動床式汚泥焼却炉1を起動し、運転を安定させるまでの流動床式汚泥焼却炉1の立ち上げ工程について説明する。
流動床式汚泥焼却炉1の立ち上げ工程では、焼却炉本体3に汚泥M及び一次空気(燃焼用空気)を供給する。即ち、流動床式汚泥焼却炉1の立ち上げ工程においては、二次空気は使用しない。汚泥M及び一次空気の供給後、流動床式汚泥焼却炉1の各部温度が上昇し、流動床式汚泥焼却炉1の各部温度が安定した状態になった場合に流動床式汚泥焼却炉1の立ち上げ工程は終了する。
【0026】
次に、流動床式汚泥焼却炉1の立ち上げ工程後の流動床式汚泥焼却炉1の制御方法について説明する。
定常運転時には、一次空気量が少ない方が、排ガス中のN2O濃度が少なくなる。従って、N2O濃度を少なくするには、一次空気量を可能な限り少なくする必要がある。
しかしながら、一次空気量が少なすぎると流動状態が悪くなり、効率の良い燃焼焼却処理ができない。さらに悪化すると流動が停止して、焼却が出来なくなる。
そこで、燃焼に影響が出ない最低限度にまで一次空気量を減らすことが本発明の制御方法の目的である。
【0027】
本発明においては一次空気量の増減によって排ガス中のCO濃度を制御することによってN2O濃度を制御するとともに、効率の良い燃焼焼却処理を行う。このため、流動床式汚泥焼却炉1の運転試験を行って、砂層の温度の最高温度と最低温度との温度差がどのような数値(下限値)を下回るとCO濃度(N2O濃度)が所定の値を超えるのか、及び、前記温度差がどのような数値(上限値)を超えると流動状態が悪くなり、効率の良い燃焼焼却処理ができなくなるかを予め運転試験を行って把握し、砂層温度差の上限値及び下限値を設定しておく。
【0028】
また、同様に、流動床式汚泥焼却炉1の運転試験を行って、砂層の温度の最高温度と最低温度との温度差の変化速度の値がどのような数値(下限値)を下回るとCO濃度(N2O濃度)が所定の値を超えるのか、及び、前記温度差の変化速度がどのような数値(上限値)を超えると流動状態が悪くなり、効率の良い燃焼焼却処理ができなくなるかを予め運転試験を行って把握し、砂層温度差の変化速度の上限値及び下限値を設定しておく。
【0029】
本発明に於いては、流動床式汚泥焼却炉1の砂層に砂層温度測定器10を複数個設ける。そして、この複数ある砂層温度測定器10が示す砂層温度の最高温度と最低温度との温度差を算出する。
そして、本発明の第一の態様においては、この温度差に基づいて一次空気量の制御を行う。
具体的には、砂層の温度差が15℃~30℃となった場合には砂層の流動が不足しているため、一次空気量を1~5%増加させように制御する。
一方、砂層の温度差が0~15℃となった場合には砂層の流動が活発すぎるため、一次空気量を1~5%減少させるように制御をする。
上記の制御を行うことにより、排ガス中のN2O濃度を低く保ちつつ焼却炉を安定して運転することができる。
【0030】
上記の制御を行うためには、一次空気量を増加させる制御を開始するための温度差を流動床式汚泥焼却炉1の特性に応じて、15℃~30℃の間の所定の温度(例えば25℃)を上限値(閾値)として設定しておく。
また、一次空気量を減少させる制御を開始するための温度差を流動床式汚泥焼却炉1の特性に応じて、0℃~15℃の間の所定の温度(例えば5℃)を下限値(閾値)として設定しておく。
【0031】
また、本発明の第二の態様においては、この温度差の変化速度に基づいて一次空気量の制御を行う。
具体的には、砂層の温度差の変化速度が15℃/h~30℃/hとなった場合には砂層の流動が不足しているため、一次空気量を1~5%増加させように制御する。
一方、砂層の温度差の変化速度が0℃/h~15℃/hとなった場合には砂層の流動が活発すぎるため、一次空気量を1~5%減少させるように制御する。
上記の制御を行うことにより、排ガス中のN2O濃度を低く保ちつつ焼却炉を安定して運転することができる。
【0032】
上記の制御を行うためには、一次空気量を増加させる制御を開始するための温度差の変化速度を流動床式汚泥焼却炉1の特性に応じて、15℃/h~30℃/hの間の所定の温度(例えば25℃)を上限値(閾値)として設定しておく。
また、一次空気量を減少させる制御を開始するための温度差の変化速度を流動床式汚泥焼却炉1の特性に応じて、0℃/h~15℃/hの間の所定の温度(例えば50℃)を下限値(閾値)として設定しておく。
【0033】
制御装置27の動作について以下説明する。
まず、8個の砂層温度測定器10が示す温度値Tsの最大温度値と最小温度値のデータを所定時間間隔(例えば1分毎)で入手し、その温度差(ΔT)を算出する。
次に所定時間(t分:例えば10分)経過したときに、t分前の温度差(ΔT0)とt分経過後の温度差(ΔTt)の変化速度(変化率)[(ΔT0-ΔTt)/t]を算出する。
そして、現在の温度差が許容範囲であるのか、温度差の変化速度がプラス(+)であるのかマイナス(-)であるのか、その変化速度の絶対値の大きさがどの程度か、その変化速度の状態がどの程度続いているのか等のデータを、蓄積したデータベースと照らし合わせて一次空気量の増減の必要性の有無を決定する。
制御装置27は全空気量調節弁31、二次空気量調節弁32、又は流動ブロワ21に信号を送って一次空気量を増減させる。
【0034】
[実施例1]
図1に示す流動床式汚泥焼却炉1であって、内径:5.0m、フリーボード高さ:8.5mの流動床式汚泥焼却炉1を用いて運転試験を行った。流動砂には珪砂を使用し、静止砂層高さは1.0mとした。汚泥の含水率は75%であり、供給量は6t/hとした。
この流動床式汚泥焼却炉1を用いて運転試験を行い
図3に示す[空気量-砂層温度差、砂層温度差変化速度]のグラフを得た。
なお、実施例では砂層の温度差の上限値を25℃と設定し、温度差の変化速度の下限値を0℃/hとした。
【0035】
図3において複数ある砂層温度の最大値と最小値の差が25℃に達し(
図3中短い矢印の位置参照)、一次空気量を3%増加した結果、
図3の〇において上記温度差が減少でき、流動不良現象が消え、流動床式汚泥焼却炉1の運転が安定化した。
また、砂層温度差の変化速度を利用した1例では、
図3の◎において(
図3中の◎で示した長い矢印の位置参照)、変化速度が0℃/h以下となったため、一次空気量を3%減少させた。その結果、砂層温度差が大きくなった現象が確認できた。
【0036】
また、上記の制御を行った場合でも、何らかの事情により煙突から排出される排ガス中のCO濃度が高くなる(即ちN2O濃度が高くなる)場合がある。
この場合には、排ガス中のCO濃度に予め所定のCO濃度上限値を設定しておき、CO濃度測定器14で測定した排ガス中のCO濃度が前記CO濃度上限値を超えた場合には、前記砂層部Sに供給される一次空気量を1~5%減少させる制御を行う。
【0037】
また、排ガス中のCO濃度を過度に低減させるような操業状態も好ましくない。
そこで、排ガス中のCO濃度に下限値を設定しておき、CO濃度測定器14で測定した排ガス中のCO濃度が所定のCO濃度下限値を下回った場合には、砂層部Sに供給される一次空気量を1~5%増加させるように制御を行う。
N
2O濃度の規制値は30PPMである。このため、運転に際しての管理上限値は安全面から余裕をみて、例えば20PPM未満で管理することとし、このN
2O濃度に対応するCO濃度(
図5の相関図から24PPM)をCO濃度の上限値に設定しても良い。
【0038】
本発明の実施形態においては煙道12に排ガス中のCO濃度を測定するCO濃度測定器14を設け、N2O濃度測定器は特に設けない。
前記したように、CO濃度とN2O濃度とは高い相関がある。また、CO濃度測定器14はN2O濃度測定器より安価で、広く普及している。そこで、N2O濃度測定器を用いてN2O濃度を測定することなく、CO濃度測定器14を用いてCO濃度を測定することにより、N2O濃度の状況を把握することができる。従って、CO濃度測定器14の計測値を制御に用いることで操業を調整し、また、排ガス値を公表する必要がある等の、N2O濃度値をデータとして作製する必要がある場合には、CO濃度から、CO濃度―N2O濃度の相関データに基づいてN2O濃度を算出することができる。
【0039】
以下に、排ガス中のCO濃度の上限値及び下限値を設定して、一次空気量を増減させることにより、N2O濃度及び流動床式汚泥焼却炉1の流動状態を制御した例を示す。
【0040】
[実施例2]
実施例1と同じ流動床式汚泥焼却炉1を用いて運転試験を行った。
砂層温度の最高温度と最低温度の差(以下、砂層温度差)を6℃、一次空気量を8,400Nm3/hとしたところ、セラミックフィルター出口で測定している排ガス中のCO濃度が24PPMに上昇した。この時、煙突出口で測定している排ガス中のN2O濃度も許容値(管理上限値)20PPMに達した。そのため、一次空気量を8,400Nm3/hから8,000Nm3/hに5.0%減少させて前記CO濃度を16PPMに低下させた。
その結果、前記N2O濃度は10PPMまで低下し、砂層温度差も流動状態良好な範囲内の10℃となり、前記焼却炉を好適に安定運転することができた。
【0041】
[実施例3]
実施例1と同じ流動床式汚泥焼却炉1を用いて運転試験を行った。
砂層温度差を20℃、一次空気量を7,800Nm3/hで運転した。この時、セラミックフィルター出口で測定している排ガス中のCO濃度は16PPMであり、煙突出口で測定している排ガス中のN2O濃度は許容値(管理上限値:20PPM)以下の10PPMであったが、一次空気量不足のため、砂層の流動状態が不十分であった。
そこで前記N2O濃度の許容値20PPMに対応する前記CO濃度を超えない範囲で一次空気量を増やし、砂層の流動状態の改善を図った。一次空気量を7,800Nm3/hから8,200Nm3/hに5.0%増加させ、前記CO濃度を20PPMとした。
その結果、前記N2O濃度も許容値以下の15PPMに抑えることができ、砂層温度差も8℃となって砂層流動状態が改善し、前記焼却炉を好適に安定運転することができた。
実施例2、3の結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 流動床式汚泥焼却炉
3 焼却炉本体
4 炉出口
5 汚泥供給装置
6 汚泥投入口
7 一次空気供給部
9 二次空気供給部
10 砂層温度測定器
11 フリーボード温度測定器
12 煙道
13 排ガス温度測定器
14 CO濃度測定器
15 空気予熱器
17 流動砂
19 空気供給ノズル
21 流動ブロワ
23 冷却ブロワ
25 空気冷却器
27 制御装置
28 全空気供給配管
29 一次空気供給配管
30 二次空気供給配管
31 全空気量調節弁
32 二次空気量調節弁
33 セラミックフィルター
34 洗煙処理塔
35 誘引通風機
36 煙突
F フリーボード部
M 汚泥
S 砂層部