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  • 特開-深層曝気装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048616
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】深層曝気装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/22 20230101AFI20230331BHJP
   C02F 7/00 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
C02F3/22 Z
C02F7/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158038
(22)【出願日】2021-09-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000108270
【氏名又は名称】ゼニヤ海洋サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】田尻 康秀
(72)【発明者】
【氏名】西田 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】堤 修
【テーマコード(参考)】
4D029
【Fターム(参考)】
4D029AA01
4D029AB07
4D029BB11
4D029CC08
(57)【要約】
【課題】 上昇流から下降流への転換をする内筒の開口部周囲及び吐出部の渦の発生を抑制して、流速を減少させずに循環を促すことで、深層の曝気を効率よく行うことが可能な深層曝気装置を提供する。
【解決手段】 上に設置されたコンプレッサー30と、コンプレッサー30から送気ホース31を介して圧縮空気が送気される水底に係留された散気管20と、散気管20から放出された圧縮空気の気泡によって生じた上昇流を深層で循環させる装置本体10と、を備えてなり、装置本体10の整流板13は、上向き凸状に湾曲形成されたことを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサーから送気ホースを介して圧縮空気が送気される水底に係留された散気管と、前記散気管から放出された圧縮空気の気泡によって生じた上昇流を深層で循環させる装置本体と、を備えた深層曝気装置であって、
前記装置本体は、前記散気管の上方に配置された二重管構造であり、上昇流が流れる内筒と、上昇流の一部から気泡を分離するとともに下降流にする外筒と、上昇流から下降流への転換を整流する整流板と、前記外筒内の空気溜まりから空気を放出する空気抜き管と、を有し、
前記整流板は、前記内筒の上部に固定された脚部と、前記脚部間によって前記内筒の前記開口部に対向する位置に固定された板状部と、を有し、
前記板状部は、上向き凸状に湾曲形成されたことを特徴とする深層曝気装置。
【請求項2】
内筒は、上下方向の両端が開口する開口部と、前記開口部の周囲に流路を狭めるように形成された膨出部と、を有することを特徴とする請求項1記載の深層曝気装置。
【請求項3】
膨出部は、内筒の上端の開口部を狭める内側膨出部と、内筒の外周面と外筒の内周面との間の流路を狭める外側膨出部と、を有することを特徴とする請求項2記載の深層曝気装置。
【請求項4】
外筒は、有頂円筒体であり、下部に下降流を深層に吐出する吐出部を有し、
前記吐出部は、下降流を深層に吐出する吐出口に向かって徐々に狭まるように形成されることを特徴とする請求項1記載の深層曝気装置。
【請求項5】
空気抜き管は、略U字形状の管体であり、外筒の上部の内側において上昇流の一部から分離した気泡が蓄積した空気溜まりに位置する空気入り口と、他方が外筒の上部の外側に位置する空気放出口と、外筒の上部に対して着脱自在となるように空気抜き管の周囲に設けられた取付部と、を有することを特徴とする請求項1記載の深層曝気装置。
【請求項6】
空気抜き管は、外筒の上部の中央に配置された第1の空気抜き管と、前記第1の空気抜き管に隣接した位置に配置された第2の空気抜き管と、からなり、前記第1の空気抜き管の空気入り口よりも低い位置に前記第2の空気抜き管の空気入り口が配置されることを特徴とする請求項1又は5のいずれか一項に記載の深層曝気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムや河川、湖沼、海などの水域における水質保全設備であり、とりわけ、閉鎖水域における深層水の溶存酸素量を増加させて水質を改善する深層曝気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水底に沈設されたアンカーに係留された散気管を介して圧縮空気を上方に散気して上昇流を起こし、散気管上方に係留された装置本体の二重管によって上昇流を下降流に転じさせ、深層水の循環を行うことで深層水の溶存酸素量を増加させる水没式の深層曝気装置が提案されている(例えば特許文献1-3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-16592号公報
【特許文献2】特開平8-39094号公報
【特許文献3】特開2005-58954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した深層曝気装置は、装置本体内において上昇流から下降流に転換を促す整流板などによって渦が発生して、上昇流及び下降流の流速が減少してしまい、深層水の循環する効率が低下してしまうおそれがあった。
【0005】
また、装置本体の上部の排気管にフロート弁を設け、空気のみ排気する構造であり、弁の可動部が異物の影響で動作不良を生じた場合、水没式の曝気装置であるため、水深深くに設置された装置本体の内部にそのバルブが設けられることから、外部から目視確認出来ずメンテナンスも非常に困難であるものであった。
【0006】
したがって、本発明は、上昇流から下降流への転換をする内筒の開口部周囲及び吐出部の渦の発生を抑制して、流速を減少させずに循環を促すことで、深層の曝気を効率よく行うこと、及び、空気抜き管のメンテナンスを容易に行うことが可能な深層曝気装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、コンプレッサーから送気ホースを介して圧縮空気が送気される水底に係留された散気管と、前記散気管から放出された圧縮空気の気泡によって生じた上昇流を深層で循環させる装置本体と、を備えた深層曝気装置であって、
前記装置本体は、前記散気管の上方に配置された二重管構造であり、上昇流が流れる内筒と、上昇流の一部から気泡を分離するとともに下降流にする外筒と、上昇流から下降流への転換を整流する整流板と、前記外筒内の空気溜まりから空気を放出する空気抜き管と、を有し、
前記整流板は、前記内筒の上部に固定された脚部と、前記脚部間によって前記内筒の前記開口部に対向する位置に固定された板状部と、を有し、
前記板状部は、上向き凸状に湾曲形成されたことを特徴とするものである。
【0008】
また、上述した構成に加え、内筒は、上下方向の両端が開口する開口部と、前記開口部の周囲に流路を狭めるように形成された膨出部と、を有することが好ましい。
【0009】
また、上述した構成に加え、膨出部は、内筒の上端の開口部を狭める内側膨出部と、内筒の外周面と外筒の内周面との間の流路を狭める外側膨出部と、を有することが好ましい。
【0010】
また、上述した構成に加え、外筒は、有頂円筒体であり、下部に下降流を深層に吐出する吐出部を有し、
前記吐出部は、下降流を深層に吐出する吐出口に向かって徐々に狭まるように形成されることが好ましい。
【0011】
また、上述した構成に加え、空気抜き管は、略U字形状の管体であり、外筒の上部の内側において上昇流の一部から分離した気泡が蓄積した空気溜まりに位置する空気入り口と、他方が外筒の上部の外側に位置する空気放出口と、外筒の上部に対して着脱自在となるように空気抜き管の周囲に設けられた取付部と、を有することが好ましい。
【0012】
また、上述した構成に加え、空気抜き管は、外筒の上部の中央に配置された第1の空気抜き管と、前記第1の空気抜き管に隣接した位置に配置された第2の空気抜き管と、からなり、前記第1の空気抜き管の空気入り口よりも低い位置に前記第2の空気抜き管の空気入り口が配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上昇流から下降流への転換をする内筒の開口部周囲及び吐出部の渦の発生を抑制して、流速を減少させずに効率よく循環させることで、深層の曝気を行うことが可能である。
【0014】
また、本発明は、空気抜き管の取付部によって取り外し自在とすることで、装置本体を深層に係留した状態でもメンテナンスを容易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の深層曝気装置の一例を示す概略図である。
図2図1の装置本体における外筒の上部及び下部付近の構造を示す概略断面図である。
図3】本発明の深層曝気装置内における上昇流及び下降流の流速方向を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る深層曝気装置の一例について図1-3に基づいて詳細に説明する。
【0017】
(実施形態)
深層曝気装置は、図1に示すように、地上に設置されたコンプレッサー30と、コンプレッサー30から送気ホース31を介して圧縮空気が送気される水底に係留された散気管20と、散気管20から放出された圧縮空気の気泡によって生じた上昇流を深層で循環させる装置本体10と、を主要部として構成される。
【0018】
散気管20は、水底に沈設されたシンカー21に係留索21aを介して係留され、コンプレッサー30から配設された送気ホース31を接続する空気配管20aを有する。
【0019】
装置本体10は、図1、2に示すように、散気管20の上方に配置された二重管構造であり、散気管20から深層水に放出された圧縮空気の気泡によって生じた上昇流が流れる内筒11と、上昇流の一部から気泡を分離するとともに下降流にする外筒12と、上昇流から下降流への転換を整流する整流板13と、外筒12の上部内の空気溜まりから空気を放出する空気抜き管14と、を有する。
【0020】
内筒11は、繊維強化プラスチック素材から形成された円筒状体であり、上下方向の両端が開口する開口部11aと、整流板13に対向する開口部11aの周囲に流路を狭めるように形成された膨出部11bを有する。
【0021】
この膨出部11bは、内筒11の上端の開口部11aを狭める内側膨出部11cと、内筒11の外周面と外筒12の内周面との間の流路を狭める外側膨出部11dと、からなり、この内側膨出部11cは、上昇流の流速密度を開口部11aの中央付近に集中させるため、断面略半円形状に膨出して形成される。また、外側膨出部11dは、後述する整流板13の板状部13aと対向する角部を板状部13aと同程度に丸みを帯びて形成される。
【0022】
外筒12は、繊維強化プラスチック素材から形成された有頂円筒体であり、下部に下降流を深層に吐出する吐出部12aを有する。この吐出部12aは、下降流を深層に吐出する吐出口12bに向かって徐々に狭まるように、吐出部12aの上部が斜め下方に傾斜して形成され、吐出部12a下部と内筒11の外周面に隣接する湾曲した隅部12cと、を有する。
【0023】
吐出部12aは、吐出口12bを徐々に狭まるように形成したことで、吐出口12bにおける逆流の発生を防止するとともに、内筒11近傍の隅部12cを湾曲形状とすることで、下降流を深層に吐出する際に渦の発生を抑制し、下降流の流速の減少を低減させて効率よく深層に吐出することが可能である。
【0024】
また、この外筒12の外周面には、装置本体10の浮力を調整するフロート12dと、水面上に浮遊する表示ブイ12eを係留する索体と、が固定される。また、この外筒12の上部の内周面には、外筒12の上部に空気抜き管14が複数設けられている場合、空気抜き管14間に仕切板12fを設けることが好ましい。
【0025】
整流板13は、内筒11の上部に固定された脚部13b、13bと、脚部13b、13b間に内筒11の上方の開口部11aに対向する位置に固定された板状部13aと、板状部13aの中央に形成された空気抜き穴13cを有する。この板状部13aは、内筒11の膨出部11bまでの同程度までの横幅を有し、上向き凸状に湾曲形成されたものである。
【0026】
空気抜き管14は、略U字形状の管体であり、外筒12の上部の内側において上昇流の一部から分離した気泡が蓄積した空気溜まりに位置する空気入り口14dと、外筒12の上部の水層に位置する空気放出口14eと、外筒12の上部に対して着脱自在となるように空気抜き管14の周囲に設けられたフランジ形状の取付部14fと、を有する。この空気抜き管14は、外筒12の上部中央に配置され、空気溜まりから排気される空気量を調整する流量調整用バルブ14cを有し、この空気抜き管14の下部の湾曲部分はなるべく短くなるようにして、水が溜まりにくい形状にすることが好ましい。
【0027】
また、空気抜き管14は、外筒12の上部に対して複数設けてもよく、具体的には、外筒12の上部中央に配置された第1の空気抜き管14aと、第1の空気抜き管14aに隣接した位置に配置された第2の空気抜き管14bと、からなり、第1の空気抜き管14aの空気入り口14dよりも低い位置に第2の空気抜き管14bの空気入り口14dが配置される。
【0028】
この空気抜き管14は、上述のように、第1の空気抜き管14aの空気入り口14dが内部水面以上の高さに位置し、第2の空気抜き管14bの空気入り口14dが内部水面以下に位置するようにすれば、通常使用時においての第1の空気抜き管14aのみによって空気溜まりから排気を行う。そして、通常使用時において空気溜まりから排気を行っている第1の空気抜き管14aが水中に含まれる異物などによって閉塞され、空気溜まり内の空気量が増加して内部水面が下がった場合、第2の空気抜き管14bの空気入り口14dが、内部水面よりも高い位置となって空気溜まりから緊急的に空気を排気するものである。また、通常使用時に排気する第1の空気抜き管14aの閉塞が解消した場合、第2の空気抜き管14bによって、空気を一定量排気することで内部水面が上昇し、再び第1の空気抜き管14aによって排気を行うものである。
【0029】
次に、上述した深層曝気装置における上昇流及び下降流の流速方向について図3に基づいて説明する。図3は、上述した深層曝気装置の装置本体10内の上昇流及び下降流の流速方向を矢印で示すものである。
【0030】
従来の深層曝気装置は、図示しないが、平板状の整流板によって、上昇流から下降流に転換する内筒近傍で下降流が剥離して渦が発生してしまい、内筒の外周面近傍には流速が減少してしまう状態となっている。また、吐出部の吐出口上部近傍では、下降流を深層に吐出させる際に、逆流が発生して、流速が減少してしまう状態となっている。
【0031】
そこで、本発明の深層曝気装置は、図3に示すように、装置本体10内に配置された湾曲した整流板13、及び、内筒11の開口部11aに設けた膨出部11bによって、内筒11の開口部11a近傍で下降流を剥離させずに渦の発生を抑制することで、上昇流から下降流に転換する際の流速が減少するのを低減することができる。
【0032】
したがって、上述した構成に基づく深層曝気装置によって、上昇流から下降流への転換をする内筒11の開口部11a周囲及び吐出部の渦の発生を抑制して、流速を減少させずに深層水を循環させることで、深層の曝気をして溶存酸素量の増加を効率よく行うことが可能である。
【0033】
また、空気抜き管14の取付部14fによって外筒12の上部に対して取り外し自在とすることで、装置本体10を深層に水没した状態のままでもメンテナンスを容易に行うことが可能である。
【0034】
上記の実施形態では本発明の好ましい実施形態を例示したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で改善や変更が可能である。例えば、空気抜き管14に、流量調整用バルブ14c以外に開閉弁などを設けてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…装置本体、
11…内筒、11a…開口部、11b…膨出部、11c…内側膨出部、
11d…外側膨出部、
12…外筒、12a…吐出部、12b…吐出口、12c…隅部、12d…フロート、
12e…表示ブイ、12f…仕切板、
13…整流板、13a…板状部、13b…脚部、13c…空気抜き穴、
14…空気抜き管、14a…第1の空気抜き管、14b…第2の空気抜き管、
14c…流量調整用バルブ、14d…空気入り口、14e…空気放出口、
14f…取付部、
20…散気管、20a…空気配管、
21…シンカー、21a…係留索、
30…コンプレッサー、31…送気ホース。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサーから送気ホースを介して圧縮空気が送気される水底に係留された散気管と、前記散気管から放出された圧縮空気の気泡によって生じた上昇流を深層で循環させる装置本体と、を備えた深層曝気装置であって、
前記装置本体は、前記散気管の上方に配置された二重管構造であり、上昇流が流れる内筒と、上昇流の一部から気泡を分離するとともに下降流にする外筒と、上昇流から下降流への転換を整流する整流板と、前記外筒内の空気溜まりから空気を放出する空気抜き管と、を有し、
前記整流板は、前記内筒の上部に固定された脚部と、前記脚部間によって前記内筒の前記開口部に対向する位置に固定された板状部と、を有し、
前記板状部は、上向き凸状に湾曲形成され
前記内筒は、上下方向の両端が開口する開口部と、前記開口部の周囲に流路を狭めるように形成された膨出部と、を有し、
前記膨出部は、前記内筒の上端の前記開口部を狭める内側膨出部と、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面との間の流路を狭める外側膨出部とを有し、
前記内側膨出部は断面略半円形状に膨出して形成され、前記外側膨出部は前記整流板の前記板状部と対向する角部を前記板状部と同程度に丸みを帯びて形成されることを特徴とする深層曝気装置。
【請求項2】
外筒は、有頂円筒体であり、下部に下降流を深層に吐出する吐出部を有し、
前記吐出部は、下降流を深層に吐出する吐出口に向かって徐々に狭まるように形成されることを特徴とする請求項1記載の深層曝気装置。
【請求項3】
空気抜き管は、略U字形状の管体であり、外筒の上部の内側において上昇流の一部から分離した気泡が蓄積した空気溜まりに位置する空気入り口と、他方が外筒の上部の外側に位置する空気放出口と、外筒の上部に対して着脱自在となるように空気抜き管の周囲に設けられた取付部と、を有することを特徴とする請求項1記載の深層曝気装置。
【請求項4】
空気抜き管は、外筒の上部の中央に配置された第1の空気抜き管と、前記第1の空気抜き管に隣接した位置に配置された第2の空気抜き管と、からなり、前記第1の空気抜き管の空気入り口よりも低い位置に前記第2の空気抜き管の空気入り口が配置されることを特徴とする請求項1又はのいずれか一項に記載の深層曝気装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムや河川、湖沼、海などの水域における水質保全設備であり、とりわけ、閉鎖水域における深層水の溶存酸素量を増加させて水質を改善する深層曝気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水底に沈設されたアンカーに係留された散気管を介して圧縮空気を上方に散気して上昇流を起こし、散気管上方に係留された装置本体の二重管によって上昇流を下降流に転じさせ、深層水の循環を行うことで深層水の溶存酸素量を増加させる水没式の深層曝気装置が提案されている(例えば特許文献1-3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-16592号公報
【特許文献2】特開平8-39094号公報
【特許文献3】特開2005-58954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した深層曝気装置は、装置本体内において上昇流から下降流に転換を促す整流板などによって渦が発生して、上昇流及び下降流の流速が減少してしまい、深層水の循環する効率が低下してしまうおそれがあった。
【0005】
また、装置本体の上部の排気管にフロート弁を設け、空気のみ排気する構造であり、弁の可動部が異物の影響で動作不良を生じた場合、水没式の曝気装置であるため、水深深くに設置された装置本体の内部にそのバルブが設けられることから、外部から目視確認出来ずメンテナンスも非常に困難であるものであった。
【0006】
したがって、本発明は、上昇流から下降流への転換をする内筒の開口部周囲及び吐出部の渦の発生を抑制して、流速を減少させずに循環を促すことで、深層の曝気を効率よく行うこと、及び、空気抜き管のメンテナンスを容易に行うことが可能な深層曝気装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、コンプレッサーから送気ホースを介して圧縮空気が送気される水底に係留された散気管と、前記散気管から放出された圧縮空気の気泡によって生じた上昇流を深層で循環させる装置本体と、を備えた深層曝気装置であって、
前記装置本体は、前記散気管の上方に配置された二重管構造であり、上昇流が流れる内筒と、上昇流の一部から気泡を分離するとともに下降流にする外筒と、上昇流から下降流への転換を整流する整流板と、前記外筒内の空気溜まりから空気を放出する空気抜き管と、を有し、
前記整流板は、前記内筒の上部に固定された脚部と、前記脚部間によって前記内筒の前記開口部に対向する位置に固定された板状部と、を有し、
前記板状部は、上向き凸状に湾曲形成され、前記内筒は、上下方向の両端が開口する開口部と、前記開口部の周囲に流路を狭めるように形成された膨出部と、を有し、
前記膨出部は、前記内筒の上端の前記開口部を狭める内側膨出部と、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面との間の流路を狭める外側膨出部とを有し、
前記内側膨出部は断面略半円形状に膨出して形成され、前記外側膨出部は前記整流板の前記板状部と対向する角部を前記板状部と同程度に丸みを帯びて形成されることを特徴とするものである。
【0008】
また、上述した構成に加え、外筒は、有頂円筒体であり、下部に下降流を深層に吐出する吐出部を有し、前記吐出部は、下降流を深層に吐出する吐出口に向かって徐々に狭まるように形成されることが好ましい。
【0009】
また、上述した構成に加え、空気抜き管は、略U字形状の管体であり、外筒の上部の内側において上昇流の一部から分離した気泡が蓄積した空気溜まりに位置する空気入り口と、他方が外筒の上部の外側に位置する空気放出口と、外筒の上部に対して着脱自在となるように空気抜き管の周囲に設けられた取付部と、を有することが好ましい。
【0010】
また、上述した構成に加え、空気抜き管は、外筒の上部の中央に配置された第1の空気抜き管と、前記第1の空気抜き管に隣接した位置に配置された第2の空気抜き管と、からなり、前記第1の空気抜き管の空気入り口よりも低い位置に前記第2の空気抜き管の空気入り口が配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上昇流から下降流への転換をする内筒の開口部周囲及び吐出部の渦の発生を抑制して、流速を減少させずに効率よく循環させることで、深層の曝気を行うことが可能である。
【0012】
また、本発明は、空気抜き管の取付部によって取り外し自在とすることで、装置本体を深層に係留した状態でもメンテナンスを容易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の深層曝気装置の一例を示す概略図である。
図2図1の装置本体における外筒の上部及び下部付近の構造を示す概略断面図である。
図3】本発明の深層曝気装置内における上昇流及び下降流の流速方向を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る深層曝気装置の一例について図1-3に基づいて詳細に説明する。
【0015】
(実施形態)
深層曝気装置は、図1に示すように、地上に設置されたコンプレッサー30と、コンプレッサー30から送気ホース31を介して圧縮空気が送気される水底に係留された散気管20と、散気管20から放出された圧縮空気の気泡によって生じた上昇流を深層で循環させる装置本体10と、を主要部として構成される。
【0016】
散気管20は、水底に沈設されたシンカー21に係留索21aを介して係留され、コンプレッサー30から配設された送気ホース31を接続する空気配管20aを有する。
【0017】
装置本体10は、図1、2に示すように、散気管20の上方に配置された二重管構造であり、散気管20から深層水に放出された圧縮空気の気泡によって生じた上昇流が流れる内筒11と、上昇流の一部から気泡を分離するとともに下降流にする外筒12と、上昇流から下降流への転換を整流する整流板13と、外筒12の上部内の空気溜まりから空気を放出する空気抜き管14と、を有する。
【0018】
内筒11は、繊維強化プラスチック素材から形成された円筒状体であり、上下方向の両端が開口する開口部11aと、整流板13に対向する開口部11aの周囲に流路を狭めるように形成された膨出部11bを有する。
【0019】
この膨出部11bは、内筒11の上端の開口部11aを狭める内側膨出部11cと、内筒11の外周面と外筒12の内周面との間の流路を狭める外側膨出部11dと、からなり、この内側膨出部11cは、上昇流の流速密度を開口部11aの中央付近に集中させるため、断面略半円形状に膨出して形成される。また、外側膨出部11dは、後述する整流板13の板状部13aと対向する角部を板状部13aと同程度に丸みを帯びて形成される。
【0020】
外筒12は、繊維強化プラスチック素材から形成された有頂円筒体であり、下部に下降流を深層に吐出する吐出部12aを有する。この吐出部12aは、下降流を深層に吐出する吐出口12bに向かって徐々に狭まるように、吐出部12aの上部が斜め下方に傾斜して形成され、吐出部12a下部と内筒11の外周面に隣接する湾曲した隅部12cと、を有する。
【0021】
吐出部12aは、吐出口12bを徐々に狭まるように形成したことで、吐出口12bにおける逆流の発生を防止するとともに、内筒11近傍の隅部12cを湾曲形状とすることで、下降流を深層に吐出する際に渦の発生を抑制し、下降流の流速の減少を低減させて効率よく深層に吐出することが可能である。
【0022】
また、この外筒12の外周面には、装置本体10の浮力を調整するフロート12dと、水面上に浮遊する表示ブイ12eを係留する索体と、が固定される。また、この外筒12の上部の内周面には、外筒12の上部に空気抜き管14が複数設けられている場合、空気抜き管14間に仕切板12fを設けることが好ましい。
【0023】
整流板13は、内筒11の上部に固定された脚部13b、13bと、脚部13b、13b間に内筒11の上方の開口部11aに対向する位置に固定された板状部13aと、板状部13aの中央に形成された空気抜き穴13cを有する。この板状部13aは、内筒11の膨出部11bまでの同程度までの横幅を有し、上向き凸状に湾曲形成されたものである。
【0024】
空気抜き管14は、略U字形状の管体であり、外筒12の上部の内側において上昇流の一部から分離した気泡が蓄積した空気溜まりに位置する空気入り口14dと、外筒12の上部の水層に位置する空気放出口14eと、外筒12の上部に対して着脱自在となるように空気抜き管14の周囲に設けられたフランジ形状の取付部14fと、を有する。この空気抜き管14は、外筒12の上部中央に配置され、空気溜まりから排気される空気量を調整する流量調整用バルブ14cを有し、この空気抜き管14の下部の湾曲部分はなるべく短くなるようにして、水が溜まりにくい形状にすることが好ましい。
【0025】
また、空気抜き管14は、外筒12の上部に対して複数設けてもよく、具体的には、外筒12の上部中央に配置された第1の空気抜き管14aと、第1の空気抜き管14aに隣接した位置に配置された第2の空気抜き管14bと、からなり、第1の空気抜き管14aの空気入り口14dよりも低い位置に第2の空気抜き管14bの空気入り口14dが配置される。
【0026】
この空気抜き管14は、上述のように、第1の空気抜き管14aの空気入り口14dが内部水面以上の高さに位置し、第2の空気抜き管14bの空気入り口14dが内部水面以下に位置するようにすれば、通常使用時においての第1の空気抜き管14aのみによって空気溜まりから排気を行う。そして、通常使用時において空気溜まりから排気を行っている第1の空気抜き管14aが水中に含まれる異物などによって閉塞され、空気溜まり内の空気量が増加して内部水面が下がった場合、第2の空気抜き管14bの空気入り口14dが、内部水面よりも高い位置となって空気溜まりから緊急的に空気を排気するものである。また、通常使用時に排気する第1の空気抜き管14aの閉塞が解消した場合、第2の空気抜き管14bによって、空気を一定量排気することで内部水面が上昇し、再び第1の空気抜き管14aによって排気を行うものである。
【0027】
次に、上述した深層曝気装置における上昇流及び下降流の流速方向について図3に基づいて説明する。図3は、上述した深層曝気装置の装置本体10内の上昇流及び下降流の流速方向を矢印で示すものである。
【0028】
従来の深層曝気装置は、図示しないが、平板状の整流板によって、上昇流から下降流に転換する内筒近傍で下降流が剥離して渦が発生してしまい、内筒の外周面近傍には流速が減少してしまう状態となっている。また、吐出部の吐出口上部近傍では、下降流を深層に吐出させる際に、逆流が発生して、流速が減少してしまう状態となっている。
【0029】
そこで、本発明の深層曝気装置は、図3に示すように、装置本体10内に配置された湾曲した整流板13、及び、内筒11の開口部11aに設けた膨出部11bによって、内筒11の開口部11a近傍で下降流を剥離させずに渦の発生を抑制することで、上昇流から下降流に転換する際の流速が減少するのを低減することができる。
【0030】
したがって、上述した構成に基づく深層曝気装置によって、上昇流から下降流への転換をする内筒11の開口部11a周囲及び吐出部の渦の発生を抑制して、流速を減少させずに深層水を循環させることで、深層の曝気をして溶存酸素量の増加を効率よく行うことが可能である。
【0031】
また、空気抜き管14の取付部14fによって外筒12の上部に対して取り外し自在とすることで、装置本体10を深層に水没した状態のままでもメンテナンスを容易に行うことが可能である。
【0032】
上記の実施形態では本発明の好ましい実施形態を例示したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で改善や変更が可能である。例えば、空気抜き管14に、流量調整用バルブ14c以外に開閉弁などを設けてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10…装置本体、
11…内筒、11a…開口部、11b…膨出部、11c…内側膨出部、
11d…外側膨出部、
12…外筒、12a…吐出部、12b…吐出口、12c…隅部、12d…フロート、
12e…表示ブイ、12f…仕切板、
13…整流板、13a…板状部、13b…脚部、13c…空気抜き穴、
14…空気抜き管、14a…第1の空気抜き管、14b…第2の空気抜き管、
14c…流量調整用バルブ、14d…空気入り口、14e…空気放出口、
14f…取付部、
20…散気管、20a…空気配管、
21…シンカー、21a…係留索、
30…コンプレッサー、31…送気ホース。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
コンプレッサーから送気ホースを介して圧縮空気が送気される水底に係留された散気管と、前記散気管から放出された圧縮空気の気泡によって生じた上昇流を深層で循環させる装置本体と、を備えた深層曝気装置であって、
前記装置本体は、前記散気管の上方に配置された二重管構造であり、上昇流が流れる内筒と、上昇流の一部から気泡を分離するとともに下降流にする外筒と、上昇流から下降流への転換を整流する整流板と、前記外筒内の空気溜まりから空気を放出する空気抜き管と、を有し、
前記整流板は、前記内筒の上部に固定された脚部と、前記脚部間によって前記内筒の上下方向の両端が開口する開口部に対向する位置に固定された板状部と、を有し、
前記板状部は、上向き凸状に湾曲形成され、
前記内筒は、前記開口部の周囲に流路を狭めるように形成された膨出部を有し、
前記膨出部は、前記内筒の上端の前記開口部を狭める内側膨出部と、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面との間の流路を狭める外側膨出部とを有し、
前記内側膨出部は断面略半円形状に膨出して形成され、前記外側膨出部は整流板の板状部と対向する角部を前記板状部と同程度に丸みを帯びて形成されることを特徴とする深層曝気装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、コンプレッサーから送気ホースを介して圧縮空気が送気される水底に係留された散気管と、前記散気管から放出された圧縮空気の気泡によって生じた上昇流を深層で循環させる装置本体と、を備えた深層曝気装置であって、
前記装置本体は、前記散気管の上方に配置された二重管構造であり、上昇流が流れる内筒と、上昇流の一部から気泡を分離するとともに下降流にする外筒と、上昇流から下降流への転換を整流する整流板と、前記外筒内の空気溜まりから空気を放出する空気抜き管と、を有し、
前記整流板は、前記内筒の上部に固定された脚部と、前記脚部間によって前記内筒の上下方向の両端が開口する開口部に対向する位置に固定された板状部と、を有し、
前記板状部は、上向き凸状に湾曲形成され、前記内筒は、前記開口部の周囲に流路を狭めるように形成された膨出部を有し、
前記膨出部は、前記内筒の上端の前記開口部を狭める内側膨出部と、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面との間の流路を狭める外側膨出部とを有し、
前記内側膨出部は断面略半円形状に膨出して形成され、前記外側膨出部は整流板の板状部と対向する角部を前記板状部と同程度に丸みを帯びて形成されることを特徴とするものである。