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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048672
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】アキシャルギャップモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/14 20060101AFI20230331BHJP
   H02K 21/24 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
H02K1/14
H02K21/24 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158116
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】太田 智
(72)【発明者】
【氏名】沖津 隆志
【テーマコード(参考)】
5H601
5H621
【Fターム(参考)】
5H601AA01
5H601AA16
5H601AA26
5H601CC01
5H601CC15
5H601CC21
5H601DD09
5H601DD12
5H601DD18
5H601DD22
5H601DD31
5H601DD47
5H601EE18
5H601EE35
5H601GA02
5H601GA30
5H601GA32
5H601GA39
5H601GB05
5H601GB48
5H601GC03
5H601GC14
5H601GD08
5H601GE02
5H601JJ04
5H601JJ05
5H601KK08
5H601KK26
5H621BB02
5H621GA01
5H621GA04
5H621GA13
5H621GB08
5H621JK11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機械的強度の確保及び発熱の低減の両立について改善したステータを提供する。
【解決手段】ステータ11と、ステータと軸方向に対向するロータと、を有するアキシャルギャップモータであって、ステータは、周方向に配置された複数のステータコア121と、ステータコアを収容するステータケース111とを有し、ステータコアは、軸方向端に、ロータと対向する対向部を有し、ステータケースは、金属材料から成り、ステータケースは、対向部をロータに向けて露出させる開口部112cを有し、ステータケースは開口部を囲む部位の少なくとも一部が切断された切断部を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、前記ステータと軸方向に対向するロータと、を有するアキシャルギャップモータであって、
前記ステータは、周方向に配置された複数のステータコアと、前記ステータコアを収容するステータケースとを有し、
前記ステータコアは、軸方向端に、前記ロータと対向する対向部を有し、
前記ステータケースは、金属材料から成り、
前記ステータケースは、前記対向部を前記ロータに向けて露出させる開口部を有し、
前記ステータケースは前記開口部を囲む部位の少なくとも一部が切断された切断部を有する、
アキシャルギャップモータ。
【請求項2】
前記ステータケースは、前記ロータと軸方向に対向する面の外縁から内縁に向けて径方向に延びて周方向に配置された複数の枠部を有し、
前記開口部は、前記ロータと軸方向に対向する面の外縁と、前記複数の枠部のうちの一つと、該一つの枠部に隣接する枠部と、前記ロータと軸方向に対向する面の内縁とで囲まれて成る、
請求項1に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項3】
前記切断部と繋がる補填部をさらに有し、
前記補填部は、樹脂材料から成る、
請求項2に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項4】
前記切断部は、前記複数の枠部のうちの一つの径方向内側端と、該一つの枠部に隣接する枠部の径方向内側端との間が切断されて成る、
請求項3項に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項5】
前記複数の枠部の径方向内側端と前記補填部とを嵌め合う嵌め合い部を有する、
請求項4項に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項6】
前記切断部は、前記枠部が径方向内側と径方向外側とに切断されて成る、
請求項2に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項7】
前記ステータケースは、前記ロータと軸方向に対向する面を含む蓋部を有し、
前記蓋部は、軸方向と直交する方向に拡がる複数の板部材を軸方向に積層して成り、
前記複数の板部材のそれぞれは、前記複数の枠部を有し、
前記複数の板部材のそれぞれは、前記複数の枠部の少なくとも一つに前記切断部を有し、
前記複数の板部材のうちの一つの前記切断部は、該一つの板部材と異なる他の板部材の前記複数の枠部のうち前記切断部を有しない枠部と軸方向に重なる、
請求項6に記載のアキシャルギャップモータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップモータに関する。
【背景技術】
【0002】
アキシャルギャップモータは、ステータとロータとが軸方向にギャップを介して対向するように配置される。このアキシャルギャップモータのステータは、周方向に複数配置されたスタータコアをケースに収容して構成される。
【0003】
ところで、ケースが金属材料の場合、ケースに渦電流が発生しこの渦電流によって発熱するという問題があった。そこで、特許文献1では、ケースを樹脂材料にすることで、渦電流の発生を防ぎ、ケースの発熱を抑えることが出来るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-99191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにケースを樹脂材料にした場合、ケースが金属材料の場合と比べて機械的強度が弱いため、小型化、高密度化において不利になる場合があるという問題があった。
【0006】
このため、従来は、アキシャルギャップモータのステータの機械的強度の確保及び発熱の低減の両立に改善の余地があった。
【0007】
本発明は、ステータの機械的強度の確保及び発熱の低減の両立について改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るアキシャルギャップモータは、ステータと、前記ステータと軸方向に対向するロータと、を有するアキシャルギャップモータであって、前記ステータは、周方向に配置された複数のステータコアと、前記ステータコアを収容するステータケースとを有し、前記ステータコアは、軸方向端に、前記ロータと対向する対向部を有し、前記ステータケースは、金属材料から成り、前記ステータケースは、前記対向部を前記ロータに向けて露出させる開口部を有し、前記ステータケースは前記開口部を囲む部位の少なくとも一部が切断された切断部を有する。
【0009】
上記の一態様のアキシャルギャップモータにおいて、前記ステータケースは、前記ロータと軸方向に対向する面の外縁から内縁に向けて径方向に延びて周方向に配置された複数の枠部を有し、前記開口部は、前記ロータと軸方向に対向する面の外縁と、前記複数の枠部のうちの一つと、該一つの枠部に隣接する枠部と、前記ロータと軸方向に対向する面の内縁とで囲まれて成る。
【0010】
上記の一態様のアキシャルギャップモータにおいて、前記切断部と繋がる補填部をさらに有し、前記補填部は、樹脂材料から成る。
【0011】
上記の一態様のアキシャルギャップモータにおいて、前記切断部は、前記複数の枠部のうちの一つの径方向内側端と、該一つの枠部に隣接する枠部の径方向内側端との間が切断されて成る。
【0012】
上記の一態様のアキシャルギャップモータにおいて、前記複数の枠部の径方向内側端と前記補填部とを嵌め合う嵌め合い部を有する。
【0013】
上記の一態様のアキシャルギャップモータにおいて、前記切断部は、前記枠部が径方向内側と径方向外側とに切断されて成る。
【0014】
上記の一態様のアキシャルギャップモータにおいて、前記ステータケースは、前記ロータと軸方向に対向する面を含む蓋部を有し、前記蓋部は、軸方向と直交する方向に拡がる複数の板部材を軸方向に積層して成り、前記複数の板部材のそれぞれは、前記複数の枠部を有し、前記複数の板部材のそれぞれは、前記複数の枠部の少なくとも一つに前記切断部を有し、前記複数の板部材のうちの一つの前記切断部は、該一つの板部材と異なる他の板部材の前記複数の枠部のうち前記切断部を有しない枠部と軸方向に重なる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、ステータの機械的強度の確保及び発熱の低減の両立について改善することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係るモータの斜視図である。
図2図1のモータ10を、中心軸Jを通り、X軸と直交する面で切断して示す側断面である。
図3図1のモータ10を-Z側から見た分解斜視図である。
図4図1のモータ10のステータ11を示す斜視図である。
図5図4のステータ11を、ステータケース112を外した状態で示す斜視図である。
図6図5に示す状態から、さらにステータコアユニット120を外した状態を示す斜視図である。
図7図4に示したステータケース112及び内径部材114に代えて用いることが出来るステータケース及び内径部材の変形例を示す図である。
図8】電磁界解析によって計算した渦電流損失密度を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るステータケースについて示す図である。
図10】本発明の第3実施形態に係るステータケースについて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るアキシャルギャップモータについて説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0018】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。Y軸方向は、中心軸Jに対する径方向のうち図2の上下方向とする。X軸方向は、Z軸方向及びY軸方向の両方と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれにおいても、図中に示す矢印が指す側を+側、反対側を-側とする。
【0019】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「一方側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側)を「他方側」と呼ぶ。なお、一方側及び他方側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。径方向において中心軸Jに近づく側を「径方向内側」と呼び、中心軸Jから遠ざかる側を「径方向外側」と呼ぶ。
【0020】
なお、本明細書において、「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、「径方向に延びる」とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また「平行」とは、厳密に平行な場合に加えて、互いに成す角が45°未満の範囲で傾いた場合も含む。また「軸方向と直交する方向に拡がる」とは、厳密に軸方向(Z軸方向)と直交する方向に拡がる場合に加えて、軸方向(Z軸方向)と直交する方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に拡がる場合も含む。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るモータの斜視図である。図1のモータ10は、アキシャルギャップモータの一例である。図2は、図1のモータ10を、中心軸Jを通り、X軸と直交する面で切断して示す側断面図である。
【0022】
モータ10は、中心軸Jに沿って延びるシャフト14と、ステータ11と、ステータ11の軸方向一方側に配置されたフレーム12と、ステータ11の軸方向他方側に配置されたフレーム13と、を有する。ステータ11は、ステータケース111及びステータケース112を有する。ステータケース111は、軸方向他方側に底を有する有底円筒形状である。ステータケース112は、円板形状である。ステータ11は、ステータケース111とステータケース112とを組み合わせたときにステータケース111及びステータケース112内に形成される空間に、ステータコア121(図5参照)を収容して構成される。
【0023】
モータ10は、ステータ11内に冷却液を流入させる流入口16及びステータ11内の冷却液を流出させる流出口15を有する。流入口16はステータ11の-Y側に設けられており、流出口15はステータ11の+Y側に設けられている。流入口16は、ステータケース111の貫通孔111bに嵌め込まれ、流出口15は、ステータケース111の貫通孔111aに嵌め込まれる。
【0024】
モータ10は、ロータ20及びロータ21を有する。ロータ20は、ステータ11と軸方向に対向し、ステータ11よりも軸方向一方側に配置される。フレーム12は、ロータ20を軸方向一方側から覆う。フレーム12は、ステータケース111に固定される。ロータ21は、ステータ11と軸方向に対向し、ステータ11よりも軸方向他方側に配置される。フレーム13は、ロータ21を軸方向他方側から覆う。フレーム13は、ステータケース112に固定される。
【0025】
フレーム12は、軸方向に貫通する貫通孔12aを有する。詳しくは後述する内径部材113は、軸方向に貫通する貫通孔113cを有する。詳しくは後述する内径部材114は、軸方向に貫通する貫通孔114aを有する。フレーム13は軸方向に貫通する貫通孔13aを有する。シャフト14は、貫通孔12a、貫通孔113c、貫通孔114a及び貫通孔13aを貫通する。
【0026】
モータ10は、軸受22a及び軸受22bを有する。軸受22aは、貫通孔12aの径方向内側に配置される。軸受22bは、貫通孔13aの径方向内側に配置される。軸受22a及び軸受22bは、中心軸Jに沿って回転可能なようにシャフト14を軸支する。
【0027】
ロータ20は、ロータコア20a及び磁石20bを有する。ロータコア20aは、円板形状である。磁石20bは、ロータコア20aの面のうちステータ11と対向する面(軸方向他方側の面)に固定される。磁石20bは、ギャップを介してステータ11と対向する。
本実施形態では、ロータ20は、周方向に配置された8個の磁石20bを有する。磁石20bの数はこれに限られるものではない。ロータ21は、ロータコア21a及び磁石21bを有する。ロータコア21aは、円板形状である。磁石21bは、ロータコア21aの面のうちステータ11と対向する面(軸方向一方側の面)に固定される。磁石21bは、ギャップを介してステータ11と対向する。本実施形態では、ロータ21は、周方向に配置された8個の磁石21bを有する。磁石21bの数はこれに限られるものではない。ロータコア20a及びロータコア21aは、シャフト14に固定される。
【0028】
図3は、図1のモータ10を-Z側から見た分解斜視図である。モータ10は、ボルト17a及びボルト17bを有する。フレーム12は、ボルト17aによって、ステータ11の軸方向一方側に固定される。フレーム13は、ボルト17bによって、ステータ11の軸方向他方側に固定される。
【0029】
図4は、図1のモータ10のステータ11を示す斜視図である。図5は、図4のステータ11を、ステータケース112を外した状態で示す斜視図である。ステータケース112は、ボルト17bが嵌まるボルト穴112aを有する。ステータ11は、ボルト115を有する。ステータケース112は、ボルト115が嵌まるボルト穴112bを有する。ステータケース112は、ボルト115によってステータケース111に固定される。ステータケース111は、軸方向一方側の面に、ボルト17aが嵌まるボルト穴(不図示)を有する。ステータケース111は、ボルト115が嵌まるボルト穴111cを有する。
【0030】
ステータ11は、ステータコア121を有する。ステータコア121の軸方向一方側端は、ロータ20と対向する対向部の一例である。ステータコア121の軸方向他方側端は、ロータ21と対向する対向部の一例である。なお、ステータコア121をボビン(不図示)で覆い、コイル(不図示)を巻き回した構成を、ステータコアユニット120と呼ぶ。本実施形態では、ステータ11は、周方向に配置された12個のステータコア121を有する。ステータコア121の数はこれに限られるものではない。
【0031】
ステータケース112は、金属材料から成る。ステータケース112は、ステータコア121の軸方向一方側端が露出する開口部112cを有する。開口部112cは、ステータコア121と同じ数だけ設けられている。
【0032】
ステータケース112は、枠部112dを有する。枠部112dは、ロータ20と軸方向に対向する面の外縁から内縁に向けて径方向に延びる。枠部112dは、周方向に複数配置される。開口部112cは、ロータ20と軸方向に対向する面の外縁と、複数の枠部112dのうちの一つと、この一つの枠部112dに隣接する枠部112dと、ロータ20と軸方向に対向する面の内縁とで囲まれて成る。枠部112dは、径方向内側端に端部112eを有する。端部112eは、開口部112cを囲む部位の少なくとも一部が切断された切断部の一例である。すなわち、この場合の切断部は、複数の枠部112dのうちの一つの径方向内側端と、この一つの枠部112dに隣接する枠部112dの径方向内側端との間が切断されて成る。
【0033】
ステータ11は、内径部材114を有する。内径部材114は、円環状の板部材である。内径部材114は、樹脂材料から成る。内径部材114の外周は、端部112eと繋がる。ステータケース112と内径部材114とは、例えばインサート成形によって一体成形される。内径部材114は、切断部と繋がる補填部の一例である。
【0034】
図6は、図5に示す状態から、さらにステータコアユニット120を外した状態を示す斜視図である。ステータケース111は、金属材料から成る。ステータケース111は、ステータコア121の軸方向他方側端が露出する開口部111cを有する。開口部111cは、ステータコア121と同じ数だけ設けられている。
【0035】
ステータケース111は、枠部111dを有する。枠部111dは、ロータ21と軸方向に対向する面の外縁である外縁部111aから内縁に向けて径方向に延びる。枠部111dは、周方向に複数配置される。開口部111cは、外縁部111aと、複数の枠部111dのうちの一つと、この一つの枠部111dに隣接する枠部111dと、ロータ21と軸方向に対向する面の内縁とで囲まれて成る。枠部111dは、径方向内側端に端部111eを有する。端部111eは、開口部111cを囲む部位の少なくとも一部が切断された切断部の一例である。すなわち、この場合の切断部は、複数の枠部111dのうちの一つの径方向内側端と、この一つの枠部111dに隣接する枠部112dの径方向内側端との間が切断されて成る。
【0036】
ステータ11は、内径部材113を有する。内径部材113は、円環状の板部材である円環部113aと、円環部113aの内周から軸方向一方側に延びる円筒状部材である円筒部113bと、を有する。円環部113aと円筒部113bとは一体の部材である。内径部材113は、樹脂材料から成る。円環部113aの外周は、端部111eと繋がる。ステータケース111と内径部材113とは、例えばインサート成形によって一体成形される。内径部材113は、切断部と繋がる補填部の一例である。
【0037】
図7は、図4に示したステータケース112及び内径部材114に代えて用いることが出来るステータケース及び内径部材の変形例を示す図である。図7は、変形例であるステータケース1112及び内径部材1114を軸方向一方側から見た平面図である。
【0038】
ステータケース1112は金属材料から成る。ステータケース1112は、枠部1112dを有する。枠部1112dは、径方向内側端に端部1112eを有する。内径部材1114は、円環状の板部材である。内径部材1114は、樹脂材料から成る。内径部材114の外周は、端部1112eと繋がる。端部1112eは、径方向外側に凹む凹部1112fを有する。内径部材114の外周は、径方向外側に突出する凸部1114bを有する。凹部1112fと凸部1114bとは互いに嵌め合う。凹部1112f及び凸部1114bは、複数の枠部1112dの径方向内側端と、補填部としての内径部材1114とを嵌め合う嵌め合い部の一例である。これにより、枠部1112dと内径部材1114との外れを、ステータケース112及び内径部材114の例よりも防ぐことが出来る。なお、ステータケース111側も同様の構造とすることが出来る。
【0039】
図8は、電磁界解析によって計算した渦電流損失密度を示す図である。図8(A)は、内径部材114を用いずに、内径側で枠部同士が金属で繋がっている場合の例についての渦電流損失密度を示す図である。図8(B)は、図4に示したように内径部材114を用いた場合の例についての渦電流損失密度を示す図である。
【0040】
図8(A)の例では、ステータケース2112は金属材料から成る。複数の枠部2112d同士は径方向内側部2113で繋がっており、すべて金属で、ステータコイルの端部を囲む渦電流の経路が出来ている。このため、図8(A)の例では、渦電流損失密度が高い。
【0041】
図8(B)の例では、ステータケース112は金属材料から成る。一方、内径部材114は樹脂材料から成る。このため、ステータコイルの端部を囲む渦電流の経路が出来ていない。このため、図8(B)の例では、図8(A)の例と比べて渦電流損失密度が低い。このため、本実施形態の構造により、損失が大きく低減されていることがわかる。
【0042】
<第2実施形態>
図9は、本発明の第2実施形態に係るステータケースについて示す図である。本実施形態のステータケース3112は、図4に示したステータケース112及び内径部材114に代えて用いることが出来る。その他の構造は、第1実施形態と同様であるので詳しい説明は省略する。図9は、ステータケース3112を軸方向一方側から見た平面図である。
【0043】
本実施形態では、第1実施形態で内径部材114を用いていた箇所にも、金属材料のステータケース3112を用いる。ステータケース3112は、金属材料から成る。ステータケース3112は、ステータコア121の軸方向一方側端が露出する開口部を囲む枠部3112dを有する。ステータケース3112は、内径部3114を有する。内径部3114は、複数の枠部3112d同士を内径側で接続する。
【0044】
本実施形態では、U-V相間の枠部3112dにスリット3116を設け、V-W相間の枠部3112dにスリット3117を設けている。スリット3116及びスリット3117は、各枠部3112dの周方向全体に達し、軸方向に貫通する。スリット3116及びスリット3117は、開口部を囲む部位の少なくとも一部が切断された切断部の一例である。すなわち、この場合の切断部は、枠部3112dが径方向内側と径方向外側とに切断されて成る。
【0045】
このように、スリット3116及びスリット3117を設けたことで、開口部の周囲に生じる渦電流の経路を断つことが出来る。例えば、破線の矢印Aで示す経路では、スリット3116及びスリット3117によって渦電流の経路が経たれている。なお、ステータケース111側も同様の構造とすることが出来る。
【0046】
本実施形態では、W-U相間にスリットを設けないことで、内径部3114が枠部3112dから脱落しない構造としている。このため、一点鎖線の矢印Bで示すUVW相の周りや一点鎖線の矢印Cで示すUVW相の周りでは、金属材料で経路が繋がっている。しかしながら、UVW相の周りでは、UVWのそれぞれの磁束が足され、この大きな渦電流のループは発生せず、本実施形態によれば損失を低減する効果を有する。
【0047】
<第3実施形態>
図10は、本発明の第3実施形態に係るステータケースについて示す図である。図9に示した第2実施形態では、スリットが軸方向に貫通しているため、流入口16からステータ11内に流入させた冷却液が流出口15に達しないでスリットから外部に流出する可能性がある。この場合、冷却効率が低下する可能性がある。そこで、本実施形態では、複数の板状のステータケースを積層することで、スリットが軸方向に貫通しない構造とする。
【0048】
本実施形態では、第2実施形態のステータケース3112に加えて、ステータケース3112を周方向に30度回転させたステータケース4112、及びステータケース4112を周方向に30度回転させたステータケース5112を設ける。図10(A)は、ステータケース3112を軸方向一方側から見た平面図である。図10(A)は、ステータケース3112を軸方向一方側から見た平面図である。図10(B)は、ステータケース4112を軸方向一方側から見た平面図である。図10(C)は、ステータケース5112を軸方向一方側から見た平面図である。本実施形態では、第2実施形態のようにステータケース3112を単独で用いることに代えて、ステータケース3112、ステータケース4112及びステータケース5112を軸方向に積層したステータケースを用いる。この積層したステータケースは、ロータ20と軸方向に対向する面を含む蓋部の一例である。この蓋部は、軸方向と直交する方向に拡がる複数の板部材(ステータケース3112、ステータケース4112及びステータケース5112)を軸方向に積層して成る。積層は、例えば接着剤など、既知の如何なる方法を用いてもよい。その他の構造は、第1実施形態と同様であるので詳しい説明は省略する。なお、ステータケース111側も同様の構造とすることが出来る。
【0049】
ステータケース3112は、金属材料から成る。ステータケース3112は、ステータコア121の軸方向一方側端が露出する開口部を囲む枠部3112dを有する。ステータケース3112は、U-V相間の枠部3112dにスリット3116を設け、V-W相間の枠部3112dにスリット3117を設けている。
【0050】
ステータケース4112は、金属材料から成る。ステータケース4112は、ステータコア121の軸方向一方側端が露出する開口部を囲む枠部4112dを有する。ステータケース4112は、W-U相間の枠部4112dにスリット4118を設け、U-V相間の枠部4112dにスリット4116を設けている。
【0051】
ステータケース5112は、金属材料から成る。ステータケース5112は、ステータコア121の軸方向一方側端が露出する開口部を囲む枠部5112dを有する。ステータケース5112は、V-W相間の枠部5112dにスリット5117を設け、W-U相間の枠部4112dにスリット5118を設けている。
【0052】
スリット3116、3117、4116、4118、5117及び5118は、開口部を囲む部位の少なくとも一部が切断された切断部の一例である。すなわち、この場合の切断部は、枠部3112d、4112d又は5112dが径方向内側と径方向外側とに切断されて成る。
【0053】
複数の板部材(すなわちステータケース3112、4112及び5112)のうちの一つの切断部(すなわちスリット3116、3117、4116、4118、5117又は5118)は、この一つの板部材と異なる他の板部材の複数の枠部のうち切断部を有しない枠部と軸方向に重なる。このため、積層されたステータケースでは、スリットが軸方向に貫通しておらず、流入口16からステータ11内に流入させた冷却液は、スリットから流出せず。流出口15に達する。
【0054】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
10…モータ、11…ステータ、12…フレーム、13…フレーム、14…シャフト、111…ステータケース、111c…開口部、112…ステータケース、112c…開口部、121…ステータコア

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10