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▶ 株式会社呉竹の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048687
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】建築資材用マーキング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230331BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230331BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158134
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000142920
【氏名又は名称】株式会社呉竹
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 盛弘
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038JA20
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA09
4J038NA01
4J038NA04
4J038NA12
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】 水で湿潤された建築資材の面にマーキングした場合、またはマーキングした建築資材の面が水に曝された場合、のいずれにおいてもマーキング部の滲みを抑制することが可能な建築資材用マーキング組成物を提供する。
【解決手段】 顔料と、HLB値が6.0~13.5の界面活性剤と、水とを含む建築資材用マーキング組成物が提供される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、HLB値が6.0~13.5の界面活性剤と、水とを含む建築資材用マーキング組成物。
【請求項2】
前記顔料は、前記顔料、前記界面活性剤および前記水の総量に対して3~30重量%の範囲で配合される請求項1に記載の建築資材用マーキング組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤は、前記顔料、前記界面活性剤および前記水の総量に対して3~30重量%の範囲で配合される請求項1または2に記載の建築資材用マーキング組成物。
【請求項4】
グリコール類をさらに含み、前記グリコール類は前記顔料、前記界面活性剤、前記グリコールおよび前記水の総量に対して3~30重量%の範囲で配合される請求項1ないし3いずれか1項に記載の建築資材用マーキング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築資材用マーキング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築資材、例えば木材は、組立前の加工工程等において、墨打ち技術により墨液の線を施す、マーキングが行われている。しかしながら、雨天に建築資材に墨液の線を施すと、線が水で滲むため、マーキングとしての役目を果たさなくなる。
【0003】
このようなことから、顔料、水溶性高分子および水を含むマーキング組成物を墨打ち技術に用いることが提案されている。
【0004】
しかしながら、雨天に前記マーキング組成物を用いて建築資材にマーキングしても、墨液を用いたのと同様な問題を生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、雨水等の水で湿潤された建築資材の面にマーキングした場合、またはマーキングした建築資材の面が雨水等の水に曝された場合、のいずれにおいてもマーキング部の滲みを抑制することが可能な建築資材用マーキング組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、顔料と、HLB値が6.0~13.5の界面活性剤と、水とを含む建築資材用マーキング組成物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、雨水等の水で湿潤された建築資材の面にマーキングした場合、またはマーキングした建築資材の面が雨水等の水に曝された場合、のいずれにおいてもマーキング部の滲みを抑制して鮮明なマーキング部を維持することが可能な建築資材用マーキング組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る建築資材用マーキング組成物を詳細に説明する。
【0009】
実施形態に係る建築資材用マーキング組成物は、顔料と、HLB値が6.0~13.5の界面活性剤と、水とを含む。
【0010】
顔料は、例えば以下に例示する黒色顔料、青色顔料、赤色顔料、黄色顔料、緑色顔料、白色顔料等を用いることができる。
【0011】
黒色顔料は、例えば東海カーボン株式会社製のトーカブラック#7360SBまたはトーカブラック#7550F、三菱ケミカル株式会社製の#44、#32、#30またはMA-100、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社製のHIBLACK10またはPrintex3、或いはキャボット・スペシャルティー・ケミカルズ・インク製のMONARCH 800またはMONARCH 460等の各種カーボンブラックを用いることができる。
【0012】
青色顔料は、例えばHOLLYDAY PIGMENT製のULTRAMARINE Blue32またはULTRAMARINE Blue56、大日精化工業株式会社製のMILORI BLUE FX-9050、MILORI BLUE FX-6940、クロモファインブルー5057またはクロモファインブルー5206、或いはDIC株式会社製のFASTOGEN(登録商標) BLUE RSEまたはFASTOGEN(登録商標) BLUE RSKE等を用いることができる。
【0013】
赤色顔料は、例えばCLARIANT製のPERMANENT Red FGR、大日精化工業株式会社製のクロモファインレッド6820、クロモファインレッド6830、セイカファーストレッド1531Bまたはセイカファーストレッド1548、或いはDIC株式会社製のSYMULER(登録商標) FAST RED4608またはSYMULER(登録商標) LAKE RED C CONC210等を用いることができる。
【0014】
黄色顔料は、例えばCLARIANT製のNovoperm Yellow FGL、大日精化工業株式会社製のセイカファーストイエロー2030、セイカファーストイエロー2070またはセイカファーストイエロー2520、或いはDIC株式会社製のSYMULER(登録商標) FAST YELLOW 8GFまたはSYMULER(登録商標) FAST YELLOW 4340等を用いることができる。
【0015】
緑色顔料は、例えば大日精化工業株式会社製のクロモファイングリーン5301、クロモファイングリーン5310またはクロモファイングリーン5370等を用いることができる。
【0016】
白色顔料は、例えばルチル型である石原産業製のR-550またはCR-80、堺化学製のR-901またはR-960、帝国化工製のJR-800またはJR-801、或いはアナタース型である石原産業製のA-100またはW-10等用いることができる。これらの白色顔料には、例えば炭酸カルシウム、シリカ(ホワイトカーボン)、アルミナホワイト、各種カオリンクレー、タルク等の増量および調色用の体質顔料を適宜添加することができる。
【0017】
顔料は、顔料、界面活性剤および水の総量に対して3~30重量%の範囲で配合することが好ましい。顔料は、同総量に対して3~20重量%の範囲で配合することがより好ましい。
【0018】
界面活性剤は、HLB値が6.0~13.5である。ここで、前記HLB値とはHydrophilic-Lipophilic Balanceの頭文字を取ったもので、界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値である。HLB値は、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなる。
【0019】
HLB値が5.0未満の界面活性剤を含むマーキング組成物は、顔料の分散性が劣るため、着色性が低下してマーキングに適さなくなる。HLB値が13.5を超える界面活性剤を含むマーキング組成物は、水で湿潤された建築資材の面にマーキングした場合、またはマーキングした建築資材の面が水に曝された場合、のいずれにおいてもマーキング部が滲んで不鮮明になる。好ましいHLB値は、6.0~13.5、さらに好ましいHLB値は6.2~9.5である。
【0020】
HLB値が6.0~13.5の界面活性剤は、例えばポリオキシレエチレンオレイルエーテル、ポリオキシレエチレンラウリルアミン、ポリオキシレエチレンラウリルエーテル、ポリオキシレエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシレエチレンナフチルエーテルなどのポリオキシレエチレンアルキルエーテル、またはポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、或いはオキシエチレン-オキシプロピレン共重合体等を用いることができる。
【0021】
前記界面活性剤は、顔料、界面活性剤および水の総量に対して3~30重量%の範囲で配合することが好ましい。より好ましい界面活性剤の配合量は、同総量に対して3~20重量%、さらに好ましくは5~15重量%である。
【0022】
実施形態に係る建築資材用マーキング組成物は、グリコール類を遅乾剤としてさらに含むことを許容する。グリコール類は、ジエチレングリコールが好ましい。グリコール類は、顔料、HLB値が6.0~13.5の界面活性剤、グリコール類および水の総量に対して10~50重量%の範囲で配合することが好ましい。
【0023】
実施形態に係る建築資材用マーキング組成物は、その他の添加剤、例えば防腐剤、消泡剤等を必要に応じて更に含有することを許容する。
【0024】
実施形態に係る建築資材用マーキング組成物が適用される建築資材は、例えば木材、コンクリート、紙、石膏ボード、鉄骨、ガラス等を挙げることができる。
【0025】
実施形態に係る建築資材用マーキング組成物による建築資材の表面へのマーキングは、線、または数字、記号、漢字、カタカナのような文字、或いは絵柄を挙げることができる。
【0026】
以上説明した実施形態に係る建築資材用マーキング組成物によれば、顔料および水にHLB値が6.0~13.5の界面活性剤を含むことによって、当該マーキング組成物を水で湿潤された建築資材の面にマーキングをする場合、当該マーキング組成物を建築資材の面がマーキングした後に水に曝された場合、のいずれにおいても、マーキング部の滲みを抑制してマーキング部を鮮明な状態に維持することができる。
【0027】
特に、前記界面活性剤を顔料、界面活性剤および水の総量に対して3~30重量%の範囲で配合した建築資材用マーキング組成物によれば、雨水等の水が関与する条件においてもマーキング部の滲みをより効果的に抑制することが可能になる。
【実施例0028】
以下、実施例を詳細に説明する。
(実施例1)
顔料であるカーボンブラック6重量%、界面活性剤であるHLB値が6.2のポリオキシエチレンラウリルアミン(青木油脂工業社製商品名:ブラウノンL-202)13重量%、ジエチレングリコール35重量%、残部が水からなる建築資材用マーキング組成物を調製した。
【0029】
(実施例2)
界面活性剤としてHLB値が8.3のポリオキシエチレンラウリルエーテル(青木油脂工業社製商品名:ブラウノンEL-1503P)を用いた以外、実施例1と同様な成分組成および組成割合の建築資材用マーキング組成物を調製した。
【0030】
(実施例3)
界面活性剤としてHLB値が9.5のポリオキシラウリルエーテル(第一工業製薬社製商品名:DSK NL-40)を用いた以外、実施例1と同様な成分組成および組成割合の建築資材用マーキング組成物を調製した。
【0031】
(実施例4)
界面活性剤としてHLB値が10.5のポリオキシエチレンラウリルエーテル(青木油脂工業社製商品名:ブラウノンEL-1505)を用いた以外、実施例1と同様な成分組成および組成割合の建築資材用マーキング組成物を調製した。
【0032】
(実施例5)
界面活性剤としてHLB値が10.8のポリオキシエチレンラウリルエーテル(青木油脂工業社製商品名:ブラウノンEL-1505P)を用いた以外、実施例1と同様な成分組成および組成割合の建築資材用マーキング組成物を調製した。
【0033】
(実施例6)
界面活性剤としてHLB値が12.3のポリオキシエチレンイソデシルエーテル(第一工業製薬社製商品名:ノインゲンSD-60)を用いた以外、実施例1と同様な成分組成および組成割合の建築資材用マーキング組成物を調製した。
【0034】
(実施例7)
界面活性剤としてHLB値が13.2のポリオキシエチレンイソデシルエーテル(第一工業製薬製社商品名:ノインゲンSD-70)を用いた以外、実施例1と同様な成分組成および組成割合の建築資材用マーキング組成物を調製した。
【0035】
(比較例1)
界面活性剤としてHLB値が3.2のポリオキシエチレンヒマシ油(青木油脂工業社製商品名:ブラウノンBR-404)を用いた以外、実施例1と同様な成分組成および組成割合の建築資材用マーキング組成物を調製した。
【0036】
(比較例2)
界面活性剤としてHLB値が4.3のソルビタンモノオレート(青木油脂工業社製商品名:ブラウノンP-80)を用いた以外、実施例1と同様な成分組成および組成割合の建築資材用マーキング組成物を調製した。
【0037】
(比較例3)
界面活性剤としてHLB値が5のポリオキシエチレンオイルエーテル(青木油脂工業社製商品名:ブラウノンEN-1502)を用いた以外、実施例1と同様な成分組成および組成割合の建築資材用マーキング組成物を調製した。
【0038】
(比較例4)
界面活性剤としてHLB値が13.8のポリオキシエチレンナフチルエーテル(第一工業製薬製商品名:ノインゲンEN)を用いた以外、実施例1と同様な成分組成および組成割合の建築資材用マーキング組成物を調製した。
【0039】
(比較例5)
界面活性剤としてHLB値が14.3のポリオキシエチレンイソデシルエーテル(第一工業製薬製商品名:ノインゲンSD-80)を用いた以外、実施例1と同様な成分組成および組成割合の建築資材用マーキング組成物を調製した。
【0040】
(比較例6)
界面活性剤としてHLB値が15のポリオキシエチレン-β-ナフチルエーテル(青木油脂工業社製商品名:ブラウノンBN-10)を用いた以外、実施例1と同様な成分組成および組成割合の建築資材用マーキング組成物を調製した。
【0041】
得られた実施例1~7および比較例1~6のマーキング組成物を以下に示す試験により評価した。
【0042】
<試験>
建築資材の木材に類似した性質を有するA4サイズのコピー用紙を用意した。コピー用紙をガラス板上に置き、コピー用紙の表面全体に霧吹きにより水が溜まるまで均一に湿潤した後、コピー用紙の水滴をペーパータオルによりコピー用紙を傾けても水が流れない程度に水滴を吸収して試験紙に供した。この試験紙は、コピー用紙重量が約3.95g、水重量が約6.37gであった。
【0043】
次いで、前記試験紙に実施例1~7および比較例1~6のマーキング組成物を市販の坪線(糸太さが約1mm)を使用してそれぞれ墨打ちしてマーキング線(墨打ち線)を形成した。
【0044】
マーキングした後、3分間放置した時のマーキング線の滲み状態を目視で観察した。目視観察において、マーキング線が滲み出しにより5mm以下の場合を“優”、5mmを超え、14mm以下の場合を“良”、14mmを超える場合を“不良”、と判定した。この判定を下記表1に評価結果として示す。
【0045】
【表1】
【0046】
前記表1から明らかなように顔料(カーボンブラック)および水と共にHLB値が6.0~13.5の界面活性剤を含む実施例1~7のマーキング組成物は、水で湿潤されたA4サイズのコピー用紙にマーキング線を形成した場合において、マーキング線の滲みを抑制でき、鮮明なマーキング線を維持できることがわかる。
【0047】
これに対し、HLB値が6.0未満であるHLB値3.2,4.3の界面活性剤を含む比較例1、2のマーキング組成物は、顔料が分散されず、団子状になるため、前記試験に適用できなかった。
【0048】
また、HLB値が6.0未満であるHLB値5の界面活性剤を含む比較例3のマーキング組成物は、顔料がムース状になるため、前記試験に適用できなかった。
【0049】
さらに、HLB値が13.5を超えるHLB値13.8,14.3,15の界面活性剤を含む比較例4~6のマーキング組成物は、評価結果が不良と判定された。