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特開2023-48703材料送り装置、設定装置及び材料送り装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048703
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】材料送り装置、設定装置及び材料送り装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/02 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
B21D43/02 E
B21D43/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158165
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(71)【出願人】
【識別番号】000128876
【氏名又は名称】株式会社アマダプレスシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 裕和
(72)【発明者】
【氏名】今井 啓
(57)【要約】
【課題】フィードロールを駆動するモータの実効トルクを有効に利用することができる材料送り装置、設定装置及び材料送り装置の制御方法を提供すること。
【解決手段】コイル材に関する情報、プレス装置300に関する情報及びフィーダ200に関する情報が入力される入力部270を備え、入力部270には、コイル材を搬送する第1速度に到達するまでに第1加速度で加速する通常加速度制御と、コイル材を搬送する第1速度よりも速い第2速度に到達するまでに第1加速度よりも低い第2加速度で加速する低加速度制御と、のいずれか一方を選択する情報が入力され、制御部260は、選択された通常加速度制御又は低加速度制御に応じて、コイル材に関する情報、プレス装置300に関する情報及びフィーダ200に関する情報に基づき求めた設定値をコントローラ250に設定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転体と、前記第1回転体に当接し前記第1回転体とともにプレス装置にコイル材を搬送する第2回転体と、前記第1回転体を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を備える材料送り装置であって、
前記コイル材に関する情報、前記プレス装置に関する情報及び前記材料送り装置に関する情報が入力される入力部を備え、
前記入力部には、前記コイル材を搬送する第1速度に到達するまでに第1加速度で加速する第1制御と、前記コイル材を搬送する前記第1速度よりも速い第2速度に到達するまでに前記第1加速度よりも低い第2加速度で加速する第2制御と、のいずれか一方を選択する情報が入力され、
前記制御部は、選択された前記第1制御又は前記第2制御に応じて、前記コイル材に関する情報、前記プレス装置に関する情報及び前記材料送り装置に関する情報に基づき求めた設定値を前記駆動部に設定する、材料送り装置。
【請求項2】
前記設定値には、前記第1速度及び前記第1加速度に応じた第1加速時間、又は、前記第2速度及び前記第2加速度に応じた第2加速時間、が含まれる、請求項1に記載の材料送り装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2制御が選択されたとき、求めた前記第2速度が前記駆動部で許容される許容速度を超えた場合には、前記許容速度に到達するまでの加速度である第3加速度に応じた第3加速時間を求め、前記許容速度及び前記第3加速時間を前記駆動部に設定する、請求項2に記載の材料送り装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1制御が選択されたとき、前記第1速度及び前記第1加速時間に応じた第1実効トルクを求め、前記第1実効トルクが前記駆動部の定格トルクを超えた場合には、前記第1実効トルクが最小となるような前記第1速度及び前記第1加速度を求め、
前記第2制御が選択されたとき、前記第2速度及び前記第2加速時間に応じた第2実効トルクを求め、前記第2実効トルクが前記駆動部の定格トルクを超えた場合には、前記第2実効トルクが最小となるような前記第2速度及び前記第2加速度を求める、請求項3に記載の材料送り装置。
【請求項5】
情報を表示する表示部を備え、
前記制御部は、前記第1速度及び前記第1加速時間、又は、前記第2速度及び前記第2加速時間、に基づいて、前記駆動部の最大トルクと、前記第1回転体及び前記第2回転体と前記コイル材との間の摩擦力と、を求め、前記第1速度又は前記第2速度、前記最大トルク及び前記摩擦力のうち1つでも前記材料送り装置において許容される値を超えた場合には、前記表示部にエラーを表示させる、請求項4に記載の材料送り装置。
【請求項6】
前記コイル材に関する情報には、前記コイル材の厚さ、前記コイル材の幅、前記コイル材の比重が含まれる、請求項5に記載の材料送り装置。
【請求項7】
前記プレス装置に関する情報には、回転数が含まれる、請求項5に記載の材料送り装置。
【請求項8】
前記材料送り装置に関する情報には、前記プレス装置による加工の1回分の前記コイル材の長さである送り長さが含まれ、
前記設定値には、前記送り長さが含まれる、請求項5に記載の材料送り装置。
【請求項9】
第1回転体と、前記第1回転体に当接し前記第1回転体とともに第1機械装置に材料を搬送する第2回転体と、前記第1回転体を駆動する駆動部と、を備える第2機械装置の前記駆動部を制御する制御部を備え、前記制御部が前記駆動部に設定値を設定する設定装置であって、
前記材料に関する情報、前記第1機械装置に関する情報及び前記第2機械装置に関する情報が入力される入力部を備え、
前記入力部には、前記材料を搬送する第1速度に到達するまでに第1加速度で加速する第1制御と、前記材料を搬送する前記第1速度よりも速い第2速度に到達するまでに前記第1加速度よりも低い第2加速度で加速する第2制御と、のいずれか一方を選択する情報が入力され、
前記制御部は、選択された前記第1制御又は前記第2制御に応じて、前記材料に関する情報、前記第1機械装置に関する情報及び前記第2機械装置に関する情報に基づき求めた設定値を前記駆動部に設定する、設定装置。
【請求項10】
第1回転体と、前記第1回転体に当接し前記第1回転体とともにプレス装置にコイル材を搬送する第2回転体と、前記第1回転体を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を備える材料送り装置の制御方法であって、
前記材料送り装置は、前記コイル材に関する情報、前記プレス装置に関する情報及び前記材料送り装置に関する情報が入力される入力部を備え、
前記入力部に、前記コイル材を搬送する第1速度に到達するまでに第1加速度で加速する第1制御と、前記コイル材を搬送する前記第1速度よりも速い第2速度に到達するまでに前記第1加速度よりも低い第2加速度で加速する第2制御と、のいずれか一方を選択する情報が入力される入力工程と、
前記制御部が、選択された前記第1制御又は前記第2制御に応じて、前記コイル材に関する情報、前記プレス装置に関する情報及び前記材料送り装置に関する情報に基づき求めた設定値を前記駆動部に設定する設定工程と、
を備える材料送り装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料送り装置、設定装置及び材料送り装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィードロールを有し、フィードロールによってコイル材をプレス装置に送り出す材料送り装置(以下、フィーダという)がある。フィーダがコイル材をプレス装置に送り出す(以下、搬送するともいう)ときには、コイル材の種類によらず、コイル材を搬送するときの最大の速度(以下、トップスピードという)に対する加速時間、言い換えれば加速度は、一般的には一定に設定されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-118050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コイル材を搬送するときに必要な実効トルクは、コイル材の重量や搬送時の摩擦力等によって変動する。例えば、コイル材の質量が大きい場合には、フィードロールを駆動するモータの実効トルクが不足し、フィードロールとコイル材とがスリップしてしまう。一方、コイル材の質量が小さい場合には、実効トルクに余裕があるにもかかわらず加速度を変更することができない場合が多い。加速度を変更することが可能である場合であっても、最適な加速度の値を得るためにテストの繰り返しが必要になる等、現実的ではない。このため、フィードロールを駆動するモータの実効トルクを、有効に利用することが求められている。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、フィードロールを駆動するモータの実効トルクを有効に利用することができる材料送り装置、設定装置及び材料送り装置の制御方法を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(1)第1回転体と、前記第1回転体に当接し前記第1回転体とともにプレス装置にコイル材を搬送する第2回転体と、前記第1回転体を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を備える材料送り装置であって、
前記コイル材に関する情報、前記プレス装置に関する情報及び前記材料送り装置に関する情報が入力される入力部を備え、
前記入力部には、前記コイル材を搬送する第1速度に到達するまでに第1加速度で加速する第1制御と、前記コイル材を搬送する前記第1速度よりも速い第2速度に到達するまでに前記第1加速度よりも低い第2加速度で加速する第2制御と、のいずれか一方を選択する情報が入力され、
前記制御部は、選択された前記第1制御又は前記第2制御に応じて、前記コイル材に関する情報、前記プレス装置に関する情報及び前記材料送り装置に関する情報に基づき求めた設定値を前記駆動部に設定する、材料送り装置。
(2)第1回転体と、前記第1回転体に当接し前記第1回転体とともに第1機械装置に材料を搬送する第2回転体と、前記第1回転体を駆動する駆動部と、を備える第2機械装置の前記駆動部を制御する制御部を備え、前記制御部が前記駆動部に設定値を設定する設定装置であって、
前記材料に関する情報、前記第1機械装置に関する情報及び前記第2機械装置に関する情報が入力される入力部を備え、
前記入力部には、前記材料を搬送する第1速度に到達するまでに第1加速度で加速する第1制御と、前記材料を搬送する前記第1速度よりも速い第2速度に到達するまでに前記第1加速度よりも低い第2加速度で加速する第2制御と、のいずれか一方を選択する情報が入力され、
前記制御部は、選択された前記第1制御又は前記第2制御に応じて、前記材料に関する情報、前記第1機械装置に関する情報及び前記第2機械装置に関する情報に基づき求めた設定値を前記駆動部に設定する、設定装置。
【0007】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィードロールを駆動するモータの実効トルクを有効に利用することができる材料送り装置、設定装置及び材料送り装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態のプレスシステムの構成を示す概略正面図
図2図2は、実施形態のプレスシステムのブロック図
図3図3は、実施形態のプレス装置の構成を示す概略斜視図
図4図4(a)は、実施形態の設定画面を示す図、図4(b)は、実施形態の送り可能角度を示す図
図5図5(a)は、低加速度モードが選択された場合のトップスピード、加速時間、送り長さの関係を示す図、図5(b)は、トップスピードが許容トップスピードを超えた場合の許容トップスピード、加速時間、送り長さの関係を示す図、図5(c)は、通常加速度モードが選択された場合のトップスピード、加速時間、送り長さの関係を示す図
図6図6は、本実施形態の選択されたモードに応じた加速度制御を行うためのトップスピード、加速時間、送り長さの設定処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
(プレスシステム)
図1は、本実施形態のプレスシステムの構成を示す概略正面図である。図1には搬送方向及び上流、下流、上下方向も示す。本実施形態のプレスシステムは、アンコイラ100、フィーダ200(第2機械装置)、プレス装置300(第1機械装置)を備えている。アンコイラ100及びフィーダ200は、プレス装置300の加工動作に連動して動作する。なお、アンコイラ100とフィーダ200との間に、コイル材の巻き癖を矯正する矯正装置であるレベラが配置されてもよく、さらに、レベラとフィーダ200との間にコイル材の撓み(ループ)を制御するループテーブルが配置されていてもよい。
【0011】
(アンコイラ)
コイル材を保持する保持装置であるアンコイラ100は、マンドレル110、制御部130、駆動部140を有している。マンドレル110には、プレス装置300の加工の対象物(材料)であるコイル材120が保持されている。例えば、コイル状に巻かれたコイル材120の内径がマンドレル110によって保持される。制御部130は、プレス装置300による加工動作と連動するように、駆動部140によってマンドレル110を回転させ、コイル材120の巻きほぐしを行う。
【0012】
(フィーダ)
フィーダ200は、アンコイラ100に保持されたコイル材120をプレス装置300に送る材料送り装置である。図2は、実施形態のプレスシステムのブロック図であり、以下、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0013】
フィーダ200は、下フィードロール210、上フィードロール220、モータ230、アンプ240、コントローラ250、制御部260、入力部270、表示部280、記憶部290を有している。
【0014】
第1回転体である下フィードロール210は、フィーダ200の固定フレーム(不図示)に回転可能に取り付けられている。第2回転体である上フィードロール220は、所定の加圧力に応じて下フィードロール210への押圧の度合いが調整できる範囲で、上下方向に移動可能、かつ回転可能なように取り付けられている。
【0015】
モータ230は、下フィードロール210を回転させる。下フィードロール210の回転はギヤ等(不図示)の伝達手段によって上フィードロール220に伝達される。これにより、下フィードロール210及び上フィードロール220は、コイル材120を所定の送り長さでプレス装置300に送り出す。ここで、送り長さとは、プレス装置300での1回の加工に必要なコイル材120の長さで、フィーダ200がプレス装置300に搬送する1回分のコイル材120の長さである。モータ230は、例えばサーボモータである。モータ230の制御は公知の制御方法によって制御部260により制御されている。
【0016】
アンプ240は、コントローラ250から出力された制御信号に応じてモータ230に電力を供給しモータ230を制御する。コントローラ250は、制御部260によって求められた、後述するトップスピード及び加速時間と、予め入力された送り長さとが設定される。コントローラ250は、設定されたトップスピード、加速時間、送り長さに応じた制御信号をアンプ240に出力する。コントローラ250は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)等である。モータ230、アンプ240、コントローラ250は駆動部として機能する。
【0017】
本実施形態の制御部260は、後述する選択された第1制御又は第2制御に応じて、コイル材120に関する情報、プレス装置300に関する情報及びフィーダ200に関する情報に基づき求めた設定値を、駆動部に設定する。具体的には、制御部260は、入力部270から入力された情報に基づいてトップスピード、加速時間等を求め、トップスピード、加速時間、送り長さをコントローラ250に設定する。制御部260は、プレス装置300のコントローラ314と協働してフィーダ200を制御する。制御部260は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)(いずれも不図示)を有し、CPUがROMに記憶されたプログラムに従い、RAMを作業領域として使用しながらフィーダ200を制御する。なお、プレス装置300による加工中のフィーダ200の動作は公知であり、説明を省略する。
【0018】
入力部270は、作業者からの種々の情報の入力を受け付ける。表示部280は、フィーダ200の種々の情報を表示し作業者に提示する。例えば作業者は、表示部280に表示された設定画面を見ながら、入力部270を操作することで制御部260による演算に必要なパラメータ等を入力する。表示部280は、例えば液晶ディスプレイ等公知の表示手段でよい。入力部270は、例えば表示部280上に実現されたタッチパネルや、キーボード、テンキー等公知の入力手段でよい。後述する図4(a)では、表示部280はタッチパネルであり入力部270でもあるものとする。なお、制御部260、入力部270、表示部280は、設定装置としても機能する。
【0019】
記憶部290には、制御部260がフィーダ200を制御する際に必要な情報が記憶されている。記憶部290には、制御部260がコントローラ250に設定するトップスピード及び加速時間を求める際に必要な、後述する固定パラメータも記憶されている。固定パラメータは、プレスシステムに固有の値であり、例えば、機械慣性モーメント、モータ230の定格トルク及び最大トルク、最大トップスピード、コイル材120のロール径等が含まれる。ここで、ロール径とは、例えば、コイル状に巻かれたコイル材120の外径をいう。
【0020】
(プレス装置)
図1のプレス装置300について、図2図3を用いて説明する。図3は、本実施形態のプレス装置300の構成を示す概略斜視図であり、例えば、一体型ストレートサイドフレーム型又はCフレーム型のプレス装置300の概略図である。また、プレス装置300は、例えば、複数のステージで複数の加工を行う順送プレス加工(順送加工)を行う装置である。図2には、コイル材120の搬送方向や搬送方向における上流(左)、下流(右)、上下方向、及び前後方向(正面、背面)を示している。プレス装置300は、筐体302の内外に、駆動モータ304、伝達機構306、クランク軸308、コンロッド310、スライド312、ボルスタ322を有して構成される。また、プレス装置300は、コントローラ314、記憶部315、表示部316、入力部318、を有している。さらに、プレス装置300は、センサ324、ロータリーエンコーダ325、ギブ326を有している。なお、順送加工はトランスファー・スタンピングともいい、それを構成するトランスファー・プレス・ツールは、それ自体で単一のプレス・ダイ(上型と下型)にすることも、連続したステーションに配置された複数のプレス・ダイにすることもできる。
【0021】
駆動モータ304は、例えばサーボ制御されるサーボモータであり、回転量及び回転方向を制御しつつ伝達機構306、クランク軸308、コンロッド310を介して後述する金型303を上下移動させるものである。伝達機構306は、例えばギヤやベルト等の伝達部材を有して構成され、駆動モータ304のモータ軸の回転をクランク軸308へと伝達するものである。駆動モータ304への制御信号はコントローラ314から送られるようになっている。
【0022】
クランク軸308及びコンロッド310は、伝達機構306により伝達されたモータ軸の回転移動を往復移動(本実施形態では、上下移動。)に変換するためのものである。モータ軸の回転によりクランク軸308が回転し、クランク軸308に一端近傍が連結されたコンロッド310にその回転が伝達されてコンロッド310が上下移動(昇降移動)するようになっている。
【0023】
また、クランク軸308には、クランク軸308の回転に連動して、オン信号又はオフ信号を出力するロータリーカムスイッチ(不図示)が設けられている。ロータリーカムスイッチは、例えばクランク軸308の回転が所定の角度となったとき、言い換えれば加工動作中の所定のタイミングとなったときに、オン信号又はオフ信号を出力する。ロータリーカムスイッチがオン信号(又はオフ信号)を出力するタイミングを、以下、出力タイミングという。コントローラ314は、ロータリーカムスイッチから出力される信号に基づいて、アンコイラ100及びフィーダ200と連動し、加工動作を行っている。
【0024】
コンロッド310の他端近傍にはスライド312が連結されている。コンロッド310の上下移動に伴いスライド312がギブ326に沿って上下移動するようになっている。プレス装置300においては、スライド312と対向するようにボルスタ322が配置されている。スライド312のボルスタ322と対向する側の面(本実施形態では下面。)に金型303の一部としての上型303aが装着される。ボルスタ322のスライド312と対向する側の面(本実施形態では上面。)に金型303の一部として、上型303aと対になる下型303bが装着される。
【0025】
上型303aと下型303bとの間に加工の対象物としてのコイル材120を配置し、上型303aと下型303bとで押圧することにより、プレス装置300によるコイル材120に対するプレス加工が行われる。コイル材120は、例えば図3中左(上流)側から右(下流)側に搬送され、以降、コイル材120の搬送方向を左右方向ともいう。複数工程を有するプレス加工(例えば順送式の加工)においては、コイル材120の搬送方向における上流から序盤の加工が行われ、コイル材120の搬送方向における下流で終盤の加工が行われる。
【0026】
詳しくは、コントローラ314により制御されて駆動モータ304が回転する。駆動モータ304の回転が伝達機構306、クランク軸308を介してコンロッド310へと伝達され、スライド312が上下移動する。スライド312の下方移動によって上型303aと下型303bとが押圧され、コイル材120のプレス加工が行われる。すなわち、プレス装置300において、駆動モータ304、伝達機構306、クランク軸308、コンロッド310、スライド312がプレス部を構成する。伝達機構306には、クランク軸308の回転数を検知するための回転数検知手段であるロータリーエンコーダ325が設けられている。コントローラ314は、ロータリーエンコーダ325によりクランク軸の回転数を検知することで、スライド312の位置を検知することが可能である。
【0027】
加工の際の荷重を検知する荷重検知手段であるセンサ324は、プレス装置300がコイル材120にプレス加工を行う際に、コンロッド310に働く荷重を検知するためのセンサで、例えばロードセルである。センサ324は、例えば、筐体302に設置された歪ゲージであってもよい。センサ324は、コンロッド310のいずれかの位置(例えば、中央近傍位置)に設置されていてもよい。さらに、センサ324は複数設置されていてもよく、例えば筐体302の左右の歪をそれぞれ検知し、検知した結果を加算してトータルの荷重としてもよい。なお、図3において、表示部316が配置されている側がプレス装置300の前側である。
【0028】
コントローラ314は、記憶部315に記憶されている各種プログラムに従ってプレス装置300を制御する。表示部316は、プレス装置300の状態を示すデータを表示する。入力部318は、プレス装置300を操作するために必要なデータを入力するために用いられる。コントローラ314は、フィーダ200とプレス装置300とが連動して加工を行うように制御している。順送加工を行うプレス装置300では、コントローラ314は、1つの加工ステージでの加工が終了すると、フィーダ200によりコイル材120を次の加工ステージに所定の送り速度で所定の送り長さだけ搬送するように制御する。
【0029】
(プレスシステムのブロック図)
図2を用いて本実施形態のプレスシステムの動作について説明する。フィーダ200の制御部260は、表示部280に設定画面を表示させ、作業者に各種パラメータの入力を促す。制御部260は、作業者によって入力部270から入力された各種パラメータに基づき、後述するトップスピード及び加速時間を演算する。制御部260は、演算したトップスピード及び加速時間と入力された送り長さとを設定値として、コントローラ250に設定する。コントローラ250は、設定された設定値に応じた制御信号をアンプ240に出力し、アンプ240を介してモータ230を制御して、下フィードロール210を回転させる。記憶部290には、制御部260がフィーダ200を制御する際に必要な各種の情報やプログラム等が記憶されている。
【0030】
プレス装置300のコントローラ314は、駆動モータ304を制御する。コントローラ314は、表示部316、入力部318とも接続されている。コントローラ314は、予め記憶部315に記憶された各種パラメータや各種プログラム等を読み出し、これらに基づいてプレス装置300の加工動作を制御する。ロータリーエンコーダ325は、駆動モータ304の出力軸(不図示)の回転速度を検知し、検知した結果をコントローラ314に出力する。コントローラ314は、ロータリーエンコーダ325による検知結果に基づいて、駆動モータ304を制御する。また、コントローラ314は、センサ324により加工時に発生する荷重を検知している。アンコイラ100の制御部130は、駆動部140によりマンドレル110を回転させコイル材120を巻きほぐす。
【0031】
マンドレル110の制御部130、フィーダ200の制御部260及びプレス装置300のコントローラ314は、例えばそれぞれの装置が有する通信ポート(不図示)等を介して公知の通信方法によって、互いに各種情報の送受信を行うことが可能である。
【0032】
(設定画面)
図4(a)は、実施形態の設定画面を示す図である。なお、図4(a)に示されている数値は説明を簡易にするための値であり、実際の値を示すものではない。フィーダ200のモータ230の実効トルクを有効に利用するために、フィーダ200のトップスピード及び加速時間を自動で設定する際に必要な情報について説明する。
【0033】
表示部280に表示される設定画面400には、例えば「トップスピード・加速時間 自動設定画面」等が表示される。設定画面400には、モード選択欄410、入力パラメータ入力欄420、変更可能パラメータ表示欄430、入力キー群440が含まれる。モード選択欄410には、作業者が加速度モードを選択するための通常加速度モードボタン412及び低加速度モードボタン414が含まれる。モード選択欄410では2つのボタンのうち1つが選択される。通常加速度モードボタン412が押下されると通常加速度制御が選択される。通常加速度制御は、コイル材120を搬送する第1速度に到達するまでに第1加速度で加速する第1制御に相当する。低加速度モードボタン414が押下されると低加速度制御が選択される。低加速度制御は、コイル材120を搬送する第1速度よりも速い第2速度に到達するまでに第1加速度よりも低い第2加速度で加速する第2制御に相当する。図4(a)では、例えば通常加速度モードボタン412はグレーアウトしており、低加速度モードボタン414が押下され低加速度制御が選択されている。このように、モードは、通常加速度モード及び低加速度モードのいずか一方が選択される。
【0034】
入力パラメータ入力欄420には、コイル材120に関する情報、プレス装置300に関する情報及びフィーダ200に関する情報が入力される。フィーダ200に関する情報には、送り長さ[mm]が含まれる。プレス装置300に関する情報には、プレス装置300の回転数[spm]、プレス装置300の送り可能角度[°]が含まれる。ここで、図4(b)は、実施形態の送り可能角度を示す図である。プレス装置300では、スライド312が上死点から下降し、下死点近傍でコイル材120への加工が行われる。コイル材120への加工が行われている間のクランク軸308の角度を加工角度θ1とする。フィーダ200からプレス装置300へのコイル材120の搬送は、プレス装置300において加工が行われていない期間に行われる。このため、フィーダ200からコイル材120をプレス装置300に送ることが可能な期間は、クランク軸308の角度θ2に相当し、角度θ2が送り可能角度である。送り可能角度θ2は360°から加工角度θ1を減じた角度となる(θ2=360°-θ1)。以降、送り可能角度θ2に相当する時間を送り可能時間という。
【0035】
図4(a)の説明に戻る。入力パラメータ入力欄420には、コイル材120に関する情報が含まれる。コイル材120に関する情報とは、例えば、コイル材120の板厚[mm]、板幅[mm]、長さ[mm]、比重の情報である。コイル材120の板厚は、コイル材120の厚さであり、コイル材120の図1の上下方向の長さである。コイル材120の板幅は、コイル材120の幅であり、コイル材120の搬送方向に略直交する方向、すなわち図3の前後方向の長さである。コイル材120の長さは、所定の長さとすることができ、例えばコイル材120の送り長さであってもよい。比重は、コイル材120の比重である。
【0036】
変更可能パラメータ表示欄430には、工場出荷時又はこれまでの加工時に最適な値が設定され、一般的には変更する必要がないパラメータについての値、言い換えればデフォルトの値が表示されている。変更可能パラメータ表示欄430に表示されているパラメータは、表示されているデフォルトの値を使用することも、また、入力キー群440を用いて新たな値を入力することも可能である。
【0037】
変更可能パラメータ表示欄430には、例えば、フィーダ200において許容されるトップスピード(以下、許容トップスピードという)[m/s]、モータ230の許容最大トルク[N・m]が含まれる。また例えば、変更可能パラメータ表示欄430には、下フィードロール210及び上フィードロール220とコイル材120との間の摩擦係数、上フィードロール220が下フィードロール210又はコイル材120を押圧しているときの加圧力(以下、フィードロール加圧力という)が含まれる。
【0038】
入力キー群440は、作業者が情報を入力する際に用いられる。入力キー群440には、例えば、数字キー、削除キー(DEL)、クリアキー(AC)、入力キー(ENT)等があり、情報の入力、削除等に使用される。通常加速度モードボタン412、低加速度モードボタン414及び入力キー群440は、入力部270に含まれる。
【0039】
(固定パラメータ)
作業者によって変更することができない固定値として、以下のパラメータ(以下、固定パラメータという)がある。なお、図4(a)の設定画面400には固定パラメータは表示されていないが、設定画面400に参考値として固定パラメータを表示するようにしてもよい。固定パラメータには、例えば、機械慣性モーメント[kg・m]、モータ230の定格トルク[N・m]及び最大トルク[N・m]、フィーダ200の最大トップスピード[m/s]、コイル材120のロール径[mm]が含まれる。
【0040】
(低加速度モード)
設定画面400のモード選択欄410で選択される低加速度モードについて説明する。低加速度モードは、フィーダ200の加速度を低くする、例えば、送り可能時間の中で実現可能な加速度のうち最小の加速度(以下、最小加速度という)でコイル材120を搬送するモードである。低加速度モードが選択されると、フィーダ200の制御部260は低加速度制御を実行する。低加速度制御では、コイル材120の滑り(スリップ)を防止又は低減することや、フィーダ200よりも上流側で形成されるコイル材120の撓み(以下、ループという)の量を安定させることが可能となる。
【0041】
制御部260は、設定画面400において設定された各種パラメータを用いて、低加速度制御において設定されるトップスピード及び加速時間を次のようにして求める。まず、プレス装置300の回転数を用いて、次の式(1-1)により、1回転に要する時間であるサイクルタイムが求められる。
サイクルタイム=60/回転数 (1-1)
式(1-1)で求めたサイクルタイムと送り可能角度を用いて、次の式(1-2)により送り時間[s]が求められる。
送り時間[s]=サイクルタイム×送り可能角度/360 (1-2)
なお、送り時間は、送り可能時間からモータ230の整定時間を減じたものとしてもよい。式(1-2)で求めた送り時間と送り長さを用いて、次の式(1-3)によりトップスピードが求められる。
トップスピード=送り長さ/送り時間×2 (1-3)
【0042】
ここで、図5(a)は、低加速度モードが選択された場合のトップスピード、加速時間、送り長さの関係を示す図である。図5(a)の三角形は、送り時間Tconを底辺とし、高さをトップスピードVtopとした三角形であり、三角形の面積Sが送り長さとなっている。この三角形において、左側の傾きaは加速時の加速度を表し、右側の傾きは減速時の加速度を表している。Tθ2は送り可能時間であり、Tsetはモータ230の整定時間である。図5(a)では、送り可能時間Tθ2から整定時間Tsetを減じた値を送り時間Tconとしている。
【0043】
図5(a)から、モータ230を速度ゼロからトップスピードVtopまで加速するために必要な時間(以下、加速時間Taccという)、及び、トップスピードVtopから速度ゼロまでに減速するために必要な時間(以下、減速時間Tdecという)は、次の式(1-4)により求められる。なお、Tcon=Tacc+Tdecである。
加速時間=減速時間=送り時間/2 (1-4)
【0044】
式(1-3)で求めたトップスピードVtopが、許容トップスピードVLtopを超える場合について図5(b)を用いて説明する。図5(b)は、トップスピードVtopが許容トップスピードVLtopを超えた場合の許容トップスピードVLtop、加速時間Tacc、送り長さの関係を示す図である。図5(b)に示すように、許容トップスピードVLtopからトップスピードVtopまでの破線で囲まれた部分の面積を、許容トップスピードVLtopより下になる部分に振り分ける必要がある。このため、送り長さに相当する面積Sを囲む形状が三角形から台形となる。このため、送り長さは、次の式(1-5)により求められる。
送り長さ=(送り時間-加速時間)×許容トップスピード (1-5)
【0045】
式(1-5)を変形して、加速時間及び減速時間は、次の式(1-6)で求められる。
加速時間=減速時間=送り時間-送り長さ/許容トップスピード (1-6)
また、トップスピードには、許容トップスピードが入力される(式(1-7))。
トップスピード=許容トップスピード (1-7)
【0046】
このように制御部260は、低加速度モードが選択されたとき、求めた第2速度であるトップスピードが駆動部で許容される許容速度である許容トップスピードを超えた場合には、許容トップスピードに到達するまでの加速度である第3加速度に応じた第3加速時間を求める。制御部260は、許容トップスピード及び第3加速時間を駆動部に設定する。
【0047】
以上から、式(1-3)又は式(1-7)で求められたトップスピード、式(1-4)又は式(1-6)で求められた加速時間(減速時間)、送り長さが、モータ230のコントローラ250に設定され、モータ230が制御される。
【0048】
なお、式(1-3)又は式(1-7)で求められたトップスピードでは、実効トルクの制限のためコイル材120を搬送することができないおそれもある。この場合、制御部260は、機械慣性モーメント、コイル材120の質量(=板厚×板幅×長さ×比重)、定格トルクに基づいて、総慣性モーメントを求める。なお、総慣性モーメントは、モータ230のトルクから推定して自動で設定されてもよい。
【0049】
制御部260は、実効トルクを次の式(2-1)より求める。
【数1】
【0050】
ここで、加速トルクは、次の式(2-2)により求められる。なお、慣性加速トルクは総慣性モーメントや加速時間等に応じた値である。
加速トルク=慣性加速トルク+ループ引き戻しトルク (2-2)
減速トルクは、次の式(2-3)により求められる。
減速トルク=慣性加速トルク-ループ引き戻しトルク (2-3)
停止トルク及び定速トルクは、次の式(2-4)により求められる。
停止トルク=定速トルク=ループ引き戻しトルク (2-4)
また、ループ引き戻しトルクは、次の式(2-5)により求められる。
ループ引き戻しトルク=コイル材120の質量×9.8×ロール径/2
(2-5)
また、定速時間は、送り時間から加速時間と減速時間とを加算した値を減じた値である(Tcon-Tacc-Tdec)。停止時間は、後述するTstopである。なお、上述した各トルクには、摩擦抵抗トルクが追加されてもよい。
【0051】
制御部260は、式(2-1)で求めた実効トルクと定格トルクとを比較し、実効トルクが定格トルクよりも大きい場合には、許容実効トルクの制限に基づいて、トップスピード及び加速時間を再度、求めることも可能である。この場合については後述する。制御部260は、第2速度に相当するトップスピード及び第2加速度に応じた第2加速時間に相当する加速時間を設定値として駆動部に設定する。
【0052】
(通常加速度モード)
設定画面400のモード選択欄410で選択される通常加速度モードについて説明する。通常加速度モードは、本実施形態では、加速度を最大にしてトップスピードを低くするモードである。通常加速度モードが選択されることで、フィーダ200の制御部260は最大加速度制御を実行する。最大加速度制御では、モータ230の回生抵抗容量を低くすることができる。
【0053】
摩擦係数、フィードロール加圧力、コイル材120の質量(=板厚×板幅×長さ×比重)を用いて、下フィードロール210及び上フィードロール220とコイル材120とがスリップすることなく下フィードロール210及び上フィードロール220がコイル材120を搬送することができるような加速度が求められる。加速度は、次の式(3-1)により求められる。
加速度=フィードロール加圧力×摩擦係数/コイル材120の質量 (3-1)
また、モータ230の最大トルクを用いて、式(3-2)により最大加速度が求められる。
最大加速度=(最大トルク-ループ引き戻しトルク)/
(機械慣性モーメント+ワーク慣性モーメント)×ロール径/2 (3-2)
ここで、ワーク慣性モーメントとは、コイル材120の慣性モーメントである。
【0054】
制御部260は、式(3-1)で求めた加速度と式(3-2)で求めた最大加速度とを比較し、値が小さい方を加速度の設定値とする。サイクルタイム及び送り時間については、式(1-1)及び式(1-2)と同様であり、式(1-1)及び式(1-2)を援用する。
【0055】
ここで、制御部260は、設定した加速度と式(1-2)で求めた送り時間とから求めた長さと、送り長さと、を比較する。制御部260は、比較の結果、
送り長さ>加速度×(送り時間/2)
となった場合、この加速度ではコイル材120を搬送することができないと判断する。このとき、制御部260は、例えば、表示部280に「送り不可」と表示させてもよい。一方、制御部260は、
送り長さ≦加速度×(送り時間/2)
となった場合、次の式(3-3)によりトップスピードを求める。
【数2】
【0056】
ここで、式(3-3)を変形すると、次の式(3-4)が得られる。
【数3】
式(3-4)をさらに変形すると、次の式(3-5)が得られる。
【数4】
式(3-5)をさらに変形すると、次の式(3-6)が得られる。
【数5】
【0057】
制御部260は、式(3-6)により求めたトップスピードが許容トップスピード以上である場合には、例えば、表示部280にエラーである旨を表示させてもよい。制御部260は、式(3-6)で求めたトップスピードが許容トップスピードよりも小さい場合には、次の式(3-7)を用いて、加速時間(又は減速時間)を求める。ここで、図5(c)は、通常加速度モードが選択された場合のトップスピード、加速時間、送り長さの関係を示す図である。図5(c)では、サイクルタイムTc及び停止時間Tstopも図示している。なお、Tc=Tcon+Tstopである。通常加速度モードでの図5(c)に示す加速度(傾きa)は、送り速度、すなわち面積Sが同じである場合、低加速度モードにおける図5(a)の加速度(傾きa)よりも大きい。
加速時間=トップスピード/加速度 (3-7)
【0058】
式(3-6)で求められたトップスピード、式(3-7)で求められた加速時間、送り長さは、コントローラ250へ入力される。すなわち、制御部260は、第1速度に相当するトップスピード及び第1加速度に応じた第1加速時間に相当する加速時間を設定値として駆動部に設定する。なお、実効トルクについては、低加速度モードのときと同様であり、説明を省略する。
【0059】
(実効トルクを最小にする場合)
上述した低加速度モード及び通常加速度モードにおいて、実効トルクが定格トルクよりも大きくなった場合について説明する。実効トルクは、上述した式(2-1)で求められる。式(2-1)は、次の式(4-1)のように変形していくことができる。
【数6】
【0060】
式(4-1)の最後の変形で、平方根の第1項中の分母の()内は、次の式(4-2)となっている。
加速時間-2×加速時間×送り時間+加速時間×送り時間 (4-2)
式(4-2)が「加速時間<送り時間/2」の範囲で最大となるときに、実効トルクは最小となる。式(4-2)を加速時間で微分すると、次の式(4-3)となる。
3×加速時間-4×送り時間×加速時間+送り時間 (4-3)
式(4-3)が0となる極値の加速時間を求めると、加速時間が次の式(4-4)となるときに、加速時間は極大となる。
加速時間=送り時間/3 (4-4)
また、加速時間=送り時間/2となるときの曲線の傾きは、「-(送り時間)/4」となってマイナスであるため、(送り時間/3)から(送り時間/2)までの間は、単調減少となる。
【0061】
したがって、実効トルクを最小化する場合の加速時間は、次の式(4-5)となる。
【数7】
また、トップスピードは、次の式(4-6)となる。
【数8】
【0062】
このように、制御部260は、通常加速度モードが選択されたとき、第1速度及び第1加速時間に応じた第1実効トルクを求め、第1実効トルクが駆動部の定格トルクを超えた場合には、第1実効トルクが最小となるような第1速度及び第1加速度を求める。また、制御部260は、低加速度モードが選択されたとき、第2速度及び第2加速時間に応じた第2実効トルクを求め、第2実効トルクが駆動部の定格トルクを超えた場合には、第2実効トルクが最小となるような第2速度及び第2加速度を求める。式(4-6)で求められたトップスピード、式(4-5)で求められた加速時間、送り長さは、コントローラ250へ入力される。
【0063】
(最終判断)
制御部260は、通常加速度モード及び低加速度モードのいずれの場合においても、最終的に求めたトップスピード及び加速時間を用いて、トップスピード、最大トルク、必要摩擦力を求める。制御部260は、求めたトップスピード、最大トルク、必要摩擦力の1つでも許容値を超える場合には、プレス装置300の回転数を下げるようにしなければならない。このため、制御部260は、トップスピード、最大トルク、必要摩擦力のすべてが、許容値以内か否かの判断を行う。
【0064】
ここで、トップスピードは、次の式(5-1)を満たす必要がある。
トップスピード<許容トップスピード (5-1)
ここで許容トップスピードは、フィーダ200の最大トップスピードである。また、最大トルクは、次の式(5-2)を満たす必要がある。
最大トルク<許容最大トルク (5-2)
ここで、許容最大トルクは、モータ230の最大トルクである。最大トルクは、次の式(5-3)により求められる。
最大トルク=加速トルク+引き戻しトルク (5-3)
さらに、必要摩擦力は、次の式(5-4)を満たす必要がある。
必要摩擦力<フィードロール加圧力×摩擦係数 (5-4)
ここで、必要摩擦力は、次の式(5-5)により求められる。
必要摩擦力=コイル材120の質量×加速度
=コイル材120の質量×トップスピード/加速時間 (5-5)
【0065】
制御部260は、第1速度及び第1加速時間、又は、第2速度及び第2加速時間、に基づいて、駆動部の最大トルクと、下フィードロール210及び上フィードロール220とコイル材120との間の必要摩擦力と、を求める。制御部260は、第1速度又は第2速度であるトップスピード、最大トルク及び摩擦力のうち1つでも許容される値である許容値を超えた場合には、表示部280に、例えば「エラー」や「プレス装置の回転数を下げてください。」等のメッセージを表示させる。
【0066】
(モータの設定値の設定処理)
図6は、本実施形態の選択されたモードに応じた加速度制御を行うためのトップスピード、加速時間、送り長さの設定処理を示すフローチャートであり、フィーダ200の制御方法を示す。制御部260は、プレスシステムの加工が開始される前に、図6の設定処理を実行する。ステップ(以下、Sとする)110で制御部260は、表示部280に上述した設定画面400を表示させて、作業者に対してモードの選択及び必要な情報の入力を促す(入力工程)。
【0067】
S112で制御部260は、作業者が選択したモードが通常加速度モードか否かを判断する。S112で制御部260は、選択されたモードが通常加速度モードであると判断した場合、処理をS114に進め、低加速度モードであると判断した場合、処理をS124に進める。S114で制御部260は、最大加速度制御を実行するために、上述した最大加速度制御におけるトップスピード及び加速時間を求める。S124で制御部260は、低加速度制御を実行するために、上述した低加速度制御におけるトップスピード及び加速時間を求め、処理をS116に進める。
【0068】
S116で制御部260は、S114又はS124で求めたトップスピード及び加速時間に基づき、実効トルクを求め、求めた実効トルクが定格トルク以下であるか否かを判断する。S116で制御部260は、実効トルクが定格トルク以下であると判断した場合、処理をS118に進め、実効トルクが定格トルクよりも大きいと判断した場合、処理をS122に進める。
【0069】
S118で制御部260は、トップスピード、最大トルク、必要摩擦力を求め、トップスピード、最大トルク、必要摩擦力のすべてが許容値以下であるか否かを判断する。S118で制御部260は、トップスピード、最大トルク、必要摩擦力のすべてが許容値以下であると判断した場合、処理をS120に進める。S118で制御部260は、トップスピード、最大トルク、必要摩擦力のうち1つでも許容値を超えていると判断した場合、処理をS126に進める。S120で制御部260は、トップスピード、加速時間及び送り長さをコントローラ250に設定し(設定工程)、処理を終了する。
【0070】
S122で制御部260は、実効トルクが定格トルクよりも大きくなったため、上述した実効トルクを最小にする処理を行い、改めてトップスピード及び加速時間を求め、処理をS118に進める。S126で制御部260は、表示部280にエラーを表示させ、例えば、プレス装置300の回転数を下げるよう指示する情報も表示させて、処理を終了する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、フィードロールを駆動するモータの実効トルクを有効に利用することができる材料送り装置、設定装置及び材料送り装置の制御方法を提供することができる。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能であり、例えば以下のような変形例や趣旨がある。
【0073】
・例えば、レベラとフィーダが一体となったレベラフィーダに、本実施形態の構造及び制御を適用してもよい。
・本実施形態では、フィーダ200の表示部280に設定画面400が表示され、入力部270から情報が入力されたが、これに限定されない。例えば、プレス装置300が有する表示部316に設定画面400が表示され入力部318から情報が入力されてもよい。さらに、制御部260が行った演算をコントローラ314が行い、制御部260に演算結果を送信してもよい。
・本実施形態では、加速時間と減速時間とは等しい時間としたがこれに限定されず、加速時間と減速時間とが異なる時間とされてもよい。
【0074】
(趣旨1)
本発明の材料送り装置は、
第1回転体と、前記第1回転体に当接し前記第1回転体とともにプレス装置にコイル材を搬送する第2回転体と、前記第1回転体を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を備える材料送り装置であって、
前記コイル材に関する情報、前記プレス装置に関する情報及び前記材料送り装置に関する情報が入力される入力部を備え、
前記入力部には、前記コイル材を搬送する第1速度に到達するまでに第1加速度で加速する第1制御と、前記コイル材を搬送する前記第1速度よりも速い第2速度に到達するまでに前記第1加速度よりも低い第2加速度で加速する第2制御と、のいずれか一方を選択する情報が入力され、
前記制御部は、選択された前記第1制御又は前記第2制御に応じて、前記コイル材に関する情報、前記プレス装置に関する情報及び前記材料送り装置に関する情報に基づき求めた設定値を前記駆動部に設定する。
【0075】
(趣旨2)
前記設定値には、前記第1速度及び前記第1加速度に応じた第1加速時間、又は、前記第2速度及び前記第2加速度に応じた第2加速時間、が含まれていてもよい。
【0076】
(趣旨3)
前記制御部は、前記第2制御が選択されたとき、求めた前記第2速度が前記駆動部で許容される許容速度を超えた場合には、前記許容速度に到達するまでの加速度である第3加速度に応じた第3加速時間を求め、前記許容速度及び前記第3加速時間を前記駆動部に設定してもよい。
【0077】
(趣旨4)
前記制御部は、
前記第1制御が選択されたとき、前記第1速度及び前記第1加速時間に応じた第1実効トルクを求め、前記第1実効トルクが前記駆動部の定格トルクを超えた場合には、前記第1実効トルクが最小となるような前記第1速度及び前記第1加速度を求め、
前記第2制御が選択されたとき、前記第2速度及び前記第2加速時間に応じた第2実効トルクを求め、前記第2実効トルクが前記駆動部の定格トルクを超えた場合には、前記第2実効トルクが最小となるような前記第2速度及び前記第2加速度を求めてもよい。
【0078】
(趣旨5)
情報を表示する表示部を備え、
前記制御部は、前記第1速度及び前記第1加速時間、又は、前記第2速度及び前記第2加速時間、に基づいて、前記駆動部の最大トルクと、前記第1回転体及び前記第2回転体と前記コイル材との間の摩擦力と、を求め、前記第1速度又は前記第2速度、前記最大トルク及び前記摩擦力のうち1つでも前記材料送り装置において許容される値を超えた場合には、前記表示部にエラーを表示させてもよい。
【0079】
(趣旨6)
前記コイル材に関する情報には、前記コイル材の厚さ、前記コイル材の幅、前記コイル材の比重が含まれてもよい。
【0080】
(趣旨7)
前記プレス装置に関する情報には、回転数が含まれてもよい。
【0081】
(趣旨8)
前記材料送り装置に関する情報には、前記プレス装置による加工の1回分の前記コイル材の長さである送り長さが含まれ、
前記設定値には、前記送り長さが含まれてもよい。
【0082】
(趣旨9)
本発明の設定装置は、
第1回転体と、前記第1回転体に当接し前記第1回転体とともに第1機械装置に材料を搬送する第2回転体と、前記第1回転体を駆動する駆動部と、を備える第2機械装置の前記駆動部を制御する制御部を備え、前記制御部が前記駆動部に設定値を設定する設定装置であって、
前記材料に関する情報、前記第1機械装置に関する情報及び前記第2機械装置に関する情報が入力される入力部を備え、
前記入力部には、前記材料を搬送する第1速度に到達するまでに第1加速度で加速する第1制御と、前記材料を搬送する前記第1速度よりも速い第2速度に到達するまでに前記第1加速度よりも低い第2加速度で加速する第2制御と、のいずれか一方を選択する情報が入力され、
前記制御部は、選択された前記第1制御又は前記第2制御に応じて、前記材料に関する情報、前記第1機械装置に関する情報及び前記第2機械装置に関する情報に基づき求めた設定値を前記駆動部に設定する。
【0083】
(趣旨10)
本発明の材料送り装置の制御方法は、
第1回転体と、前記第1回転体に当接し前記第1回転体とともにプレス装置にコイル材を搬送する第2回転体と、前記第1回転体を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を備える材料送り装置の制御方法であって、
前記材料送り装置は、前記コイル材に関する情報、前記プレス装置に関する情報及び前記材料送り装置に関する情報が入力される入力部を備え、
前記入力部に、前記コイル材を搬送する第1速度に到達するまでに第1加速度で加速する第1制御と、前記コイル材を搬送する前記第1速度よりも速い第2速度に到達するまでに前記第1加速度よりも低い第2加速度で加速する第2制御と、のいずれか一方を選択する情報が入力される入力工程と、
前記制御部が、選択された前記第1制御又は前記第2制御に応じて、前記コイル材に関する情報、前記プレス装置に関する情報及び前記材料送り装置に関する情報に基づき求めた設定値を前記駆動部に設定する設定工程と、
を備える。
【符号の説明】
【0084】
100 アンコイラ
110 マンドレル
120 コイル材
130 制御部
140 駆動部
200 フィーダ
210 下フィードロール
220 上フィードロール
230 モータ
240 アンプ
250 コントローラ
260 制御部
270 入力部
280 表示部
290 記憶部
300 プレス装置
302 筐体
303 金型 303a 上型 303b 下型
304 駆動モータ
306 伝達機構
308 クランク軸
310 コンロッド
312 スライド
314 コントローラ
315 記憶部
316 表示部
318 入力部
322 ボルスタ
324 センサ
325 ロータリーエンコーダ
326 ギブ
400 設定画面
410 モード選択欄
412 通常加速度モードボタン
414 低加速度モードボタン
420 入力パラメータ入力欄
430 変更可能パラメータ表示欄
440 入力キー群
図1
図2
図3
図4
図5
図6