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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048711
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20230331BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20230331BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
B60C11/03 100C
B60C11/03 100A
B60C11/13 B
B60C11/12 A
B60C11/12 D
B60C11/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158176
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】則竹 将志
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC19
3D131BC34
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB22V
3D131EB23V
3D131EB28V
3D131EB81V
3D131EB86V
3D131EB90V
3D131EB91V
3D131EB94V
(57)【要約】
【課題】タイヤのウェット性能および耐偏摩耗性能を両立できるタイヤを提供すること。
【解決手段】センター陸部32、33が、タイヤ周方向に延在する周方向細溝41と、一方の端部にてセンター陸部32、33の一方のエッジ部に開口すると共に他方の端部にて周方向細溝41に接続する第一横溝42Aと、一方の端部にてセンター陸部32、33の他方のエッジ部に開口すると共に他方の端部にて周方向細溝41に接続する第二横溝42Bとを備える。また、周方向細溝41が、第一長尺部411A、第一短尺部412A、第二長尺部411Bおよび第二短尺部412Bを繰り返し接続して成るジグザグ形状を有する。また、第一横溝42Aが、ジグザグ形状の第一長尺部411Aに接続し、且つ、第二横溝42Bが、ジグザグ形状の第二長尺部411Bに接続する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のショルダー主溝および1本以上のセンター主溝と、前記ショルダー主溝および前記センター主溝に区画されて成る一対のショルダー陸部および2列以上のセンター陸部とを備えるタイヤであって、
少なくとも1列の前記センター陸部が、タイヤ周方向に延在する周方向細溝と、一方の端部にて前記センター陸部の一方のエッジ部に開口すると共に他方の端部にて前記周方向細溝に接続する第一横溝と、一方の端部にて前記センター陸部の他方のエッジ部に開口すると共に他方の端部にて前記周方向細溝に接続する第二横溝とを備え、
前記周方向細溝が、第一長尺部、第一短尺部、第二長尺部および第二短尺部を繰り返し接続して成るジグザグ形状を有し、
前記第一横溝が、前記ジグザグ形状の前記第一長尺部に接続し、且つ、
前記第二横溝が、前記ジグザグ形状の前記第二長尺部に接続することを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記周方向細溝の溝幅Wsが、0.1[mm]≦Ws≦2.0[mm]の範囲にある請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第一短尺部における前記ジグザグ形状の振幅As1が、前記第二短尺部における前記ジグザグ形状の振幅As2に対して0.10≦As1/As2≦0.90の範囲にある請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ジグザグ形状の最大振幅Asが、前記センター陸部の接地幅Wb2に対して0.05≦As/Wb2≦0.20の範囲にある請求項1~3のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第一長尺部、前記第一短尺部、前記第二長尺部および前記第二短尺部から成る前記ジグザグ形状のピッチ長Psが、前記センター陸部の接地幅Wb2に対して0.50≦Ps/Wb2≦1.10の範囲にある請求項1~4のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項6】
タイヤ周方向に対する前記第二短尺部の傾斜角θs2Bが、前記第一短尺部の傾斜角θs2Aに対して10[deg]≦θs2B-θs2A≦50[deg]の範囲にある請求項1~5のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第一および第二の横溝の溝幅が、0.1[mm]以上2.0[mm]以下の範囲にある請求項1~6のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第一および第二の横溝のそれぞれが、タイヤ周方向に対して傾斜する傾斜部を有し、前記傾斜部の傾斜角が、40[deg]以上80[deg]以下の範囲にあり、且つ、前記第一および第二の横溝の前記傾斜部が、タイヤ周方向に対して相互に同一方向に傾斜する請求項1~7のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記傾斜部の溝深さH21が、前記ショルダー主溝の溝深さHg1に対して0.05≦H21/Hg1≦0.15の範囲にある請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第一および第二の横溝のそれぞれの前記傾斜部が、前記周方向細溝の前記ジグザグ形状の前記長尺部に対して逆方向に傾斜する請求項8または9に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記傾斜部のタイヤ幅方向への延在長さD21が、前記センター陸部の接地幅Wb2に対して0.10≦D21/Wb2≦0.50の範囲にある請求項8~10のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項12】
前記第一および第二の横溝のそれぞれが、前記傾斜部と前記センター陸部のエッジ部とを接続する軸方向部を有し、且つ、前記軸方向部のタイヤ周方向に対する傾斜角が、80[deg]以上110[deg]以下の範囲にある請求項8~11のいずれか一つに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤのウェット性能および耐偏摩耗性能を両立できるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、タイヤのウェット性能および耐偏摩耗性能を両立するために、センター陸部が周方向細溝と幅狭な横溝とを備える構成が採用されている。かかる構成を採用する従来のタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-326433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、タイヤのウェット性能および耐偏摩耗性能を両立できるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明にかかるタイヤは、一対のショルダー主溝および1本以上のセンター主溝と、前記ショルダー主溝および前記センター主溝に区画されて成る一対のショルダー陸部および2列以上のセンター陸部とを備えるタイヤであって、少なくとも1列の前記センター陸部が、タイヤ周方向に延在する周方向細溝と、一方の端部にて前記センター陸部の一方のエッジ部に開口すると共に他方の端部にて前記周方向細溝に接続する第一横溝と、一方の端部にて前記センター陸部の他方のエッジ部に開口すると共に他方の端部にて前記周方向細溝に接続する第二横溝とを備え、前記周方向細溝が、第一長尺部、第一短尺部、第二長尺部および第二短尺部を繰り返し接続して成るジグザグ形状を有し、前記第一横溝が、前記ジグザグ形状の前記第一長尺部に接続し、且つ、前記第二横溝が、前記ジグザグ形状の前記第二長尺部に接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明にかかるタイヤでは、(1)センター陸部が周方向細溝および横溝を有するので、トレッド部センター領域の排水性が向上する。また、(2)周方向細溝が長尺部と短尺部とを交互に接続したジグザグ形状を有し、第一および第二の横溝が周方向細溝の左右から相互に異なる長尺部に接続する。このため、周方向細溝が、ジグザグ形状の短尺部を隣り合う横溝の接続部の間に有する。これにより、センター陸部の踏面における排水性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する。また、第一および第二の横溝の双方が1つの長尺部に対して左右から接続する構成、ならびに、第一および第二の横溝がジグザグ形状の屈曲点に接続する構成と比較して、センター陸部の剛性が確保されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する。上記により、タイヤのウェット性能と耐偏摩耗性能が両立する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図2図2は、図1に記載したタイヤのトレッド面を示す平面図である。
図3図3は、図2に記載したセンター陸部を示す拡大図である。
図4図4は、図3に記載した1つのセンター陸部を示す拡大図である。
図5図5は、図4に記載したセンター陸部の周方向細溝および横溝を示す拡大図である。
図6図6は、図4に記載したセンター陸部を示す断面図である。
図7図7は、図4に記載したセンター陸部を示す断面図である。
図8図8は、図2に記載したショルダー陸部のエッジ部を示す断面図である。
図9図9は、図2に記載したタイヤの変形例を示す平面図である。
図10図10は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図11図11は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図12図12は、従来例のタイヤのトレッド面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0009】
[タイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤ1を示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。この実施の形態では、タイヤの一例として、トラック、バスなどの長距離輸送用の車両に装着される重荷重用空気入りラジアルタイヤについて説明する。
【0010】
同図において、タイヤ子午線方向の断面は、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面として定義される。また、タイヤ赤道面CLは、JATMAに規定されたタイヤ断面幅の中点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面として定義される。また、タイヤ幅方向は、タイヤ回転軸に平行な方向として定義され、タイヤ径方向は、タイヤ回転軸に垂直な方向として定義される。
【0011】
タイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
【0012】
一対のビードコア11、11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、ローアーフィラー121およびアッパーフィラー122から成り、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0013】
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールから成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、ラジアルタイヤであれば絶対値で80[deg]以上90[deg]以下、バイアスタイヤであれば30[deg]以上45[deg]以下のコード角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。
【0014】
ベルト層14は、複数のベルトプライ141~144を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。これらのベルトプライ141~144は、高角度ベルト141と、一対の交差ベルト142、143と、ベルトカバー144と含む。高角度ベルト141は、スチールから成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で45[deg]以上70[deg]以下のコード角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。一対の交差ベルト142、143は、スチールから成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で10[deg]以上55[deg]以下のコード角度を有する。また、一対の交差ベルト142、143は、相互に異符号のコード角度を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造を有する)。ベルトカバー144は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で10[deg]以上55[deg]以下のコード角度を有する。
【0015】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤ1のトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在して、ビード部のリム嵌合面を構成する。
【0016】
[トレッド面]
図2は、図1に記載したタイヤ1のトレッド面を示す平面図である。同図は、オールシーズン用タイヤのトレッド面を示している。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端であり、寸法記号TWは、タイヤ接地幅である。
【0017】
図2に示すように、タイヤ1は、4本の周方向主溝21、22と、5列の陸部31~33とをトレッド面に備える。
【0018】
周方向主溝21、22は、一対のショルダー主溝21、21と、2本のセンター主溝22、22とから構成される。これらの周方向主溝21、22は、タイヤ全周に渡って連続的に延在する環状構造を有する。ショルダー主溝21、21は、複数の周方向主溝21、22のうちタイヤ幅方向の最外側にある周方向主溝であり、タイヤ赤道面CLを境界とする左右の領域のそれぞれで定義される。センター主溝22は、ショルダー主溝21よりもタイヤ赤道面CL側にある周方向主溝として定義される。
【0019】
主溝は、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝として定義される。
【0020】
また、ショルダー主溝21が、8.0[mm]以上13.0[mm]以下の溝幅Wg1(図2参照)および12.0[mm]以上16.5[mm]以下の溝深さHg1(後述する図7参照)を有する。また、センター主溝22が、3.5[mm]以上13.0[mm]以下の溝幅Wg2(図2参照)および12.0[mm]以上16.5[mm]以下の溝深さHg2(後述する図7参照)を有する。また、センター主溝22の溝幅Wg2が、ショルダー主溝21の溝幅Wg1に対して0.14≦Wg2/Wg1≦1.00の範囲にある。
【0021】
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面における溝開口部の対向する溝壁間の距離の最大値として測定される。切欠部あるいは面取部を溝開口部に有する構成では、溝幅方向かつ溝深さ方向に平行な断面視におけるトレッド踏面の延長線と溝壁の延長線との交点を端点として、溝幅が測定される。
【0022】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離の最大値として測定される。また、部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0023】
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「MEASURING RIM」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が規定内圧での最大負荷能力の88[%]である。
【0024】
また、図2の構成では、タイヤ赤道面CLから左右のショルダー主溝21、21の溝中心線までの距離(図中の寸法記号省略)が、タイヤ接地幅TWの26[%]以上32[%]以下の範囲にある。
【0025】
溝中心線は、対向する溝壁間の距離の中点を接続した仮想線として定義される。
【0026】
タイヤ接地幅TWは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大直線距離として測定される。
【0027】
タイヤ接地端Tは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。
【0028】
陸部31~33は、一対のショルダー陸部31、31と、3列のセンター陸部32、33、32とから構成される。これらの陸部31~33は、周方向主溝21、22に区画されて成り、タイヤ全周に渡って延在する環状の踏面を構成する。ショルダー陸部31は、ショルダー主溝21に区画されたタイヤ幅方向外側の陸部として定義される。また、一対のショルダー陸部31、31が、タイヤ赤道面CLを境界とする左右の領域に配置される。センター陸部32、33は、一対のショルダー陸部31、31の間にある陸部として定義される。
【0029】
また、図2において、ショルダー陸部31の接地幅Wb1が、タイヤ接地幅TWに対して0.15≦Wb1/TW≦0.25の範囲にあり、好ましくは0.18≦Wb1/TW≦0.22の範囲にある。また、センター陸部32、33の接地幅Wb2、Wb3が、タイヤ接地幅TWに対して0.13≦Wb2/TW≦0.16および0.13≦Wb3/TW≦0.16の範囲にある。また、センター陸部32、33の接地幅Wb2、Wb3が、ショルダー陸部31の接地幅Wb1に対して0.70≦Wb2/Wb1≦0.85および0.70≦Wb3/Wb1≦0.85の範囲にある。かかる構成では、ショルダー陸部31が幅広構造を有するので、ショルダー陸部31の剛性が確保されて、ショルダー陸部31の偏摩耗が効果的に抑制される。
【0030】
陸部の接地幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときの陸部と平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大直線距離として測定される。
【0031】
また、図2の構成では、上記のように、タイヤ1が一対のショルダー主溝21、21および2本のセンター主溝22、22を備えることにより、一対のショルダー陸部31、31、3列のセンター陸部32、33が定義される。しかし、これに限らず、タイヤ1が単一あるいは3本以上のセンター主溝を備えても良い(図示省略)。前者の構成では、一対のセンター陸部が定義され、後者の構成では、4列以上のセンター陸部が定義される。また、センター陸部33が、タイヤ赤道面CL上に配置されても良いし(図2参照)、タイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。
【0032】
[主溝の溝底のジグザグ形状]
また、図2の構成では、ショルダー主溝21およびセンター主溝22が、溝開口部にてストレート形状のエッジ部を有している。一方で、これらの主溝21、22が、溝底部にてストレート形状を有しても良いし、ジグザグ形状を有しても良い(図示省略)。例えば、主溝21、22の溝開口部がストレート形状を有すると共に溝底部がジグザグ形状を有し、主溝21、22の溝壁面が溝開口部と溝底部とを接続する屈曲面から成ることが好ましい(図示省略)。かかる構成では、主溝21、22の溝壁のトレッド踏面に対する傾斜角(いわゆる溝壁角度)が、上記屈曲面によりタイヤ周方向に向かって変化する。これにより、主溝21、22の排水性が向上し、また陸部31~33の剛性が確保される。
【0033】
[センター陸部]
図3は、図2に記載したセンター陸部32、33を示す拡大図である。図4は、図3に記載した1つのセンター陸部32(33)を示す拡大図である。図5は、図4に記載したセンター陸部32(33)の周方向細溝41および横溝42A、42Bを示す拡大図である。図6および図7は、図4に記載したセンター陸部32(33)を示す断面図である。これらの図において、図6は、周方向細溝41に沿った断面図を示し、図7は、横溝42A、42Bに沿った断面図を示している。
【0034】
図2および図3に示すように、センター陸部32、33は、単一の周方向細溝41と、複数の横溝42A、42Bとを備える。
【0035】
周方向細溝41は、図2に示すように、タイヤ周方向に延在する細溝であり、タイヤ全周に渡って連続的に延在する環状構造を有する。また、図3に示すように、周方向細溝41の溝中心線(図示省略)が、センター陸部32(33)の中央部に配置される。具体的には、センター陸部32(33)の一方のエッジ部から周方向細溝41の溝中心線までの距離が、センター陸部32(33)の接地幅Wb2(Wb3)に対して30[%]以70[%]以下の範囲にある。
【0036】
また、図4において、周方向細溝41の溝幅Wsが、0.1[mm]≦Ws≦2.0[mm]の範囲にあり、好ましくは0.5[mm]≦Ws≦1.5[mm]の範囲にある。また、図6において、周方向細溝41の溝深さHsが、ショルダー主溝21の溝深さHg1に対して0.05≦Hs/Hg1≦0.80の範囲にあり、好ましくは0.10≦Hs/Hg1≦0.65の範囲にある。上記上限により、周方向細溝41の排水性が確保され、上記下限により、周方向細溝41の配置に起因するセンター陸部32、33の剛性低下が抑制される。なお、周方向細溝41の溝幅Wsおよび溝深さHsが、後述のように所定領域で増加あるいは減少しても良いし(図6参照)、タイヤ全周に渡って一定であっても良い(図示省略)。
【0037】
また、図3に示すように、周方向細溝41が、長尺部と短尺部とを交互に接続して成るジグザグ形状を有する。また、長尺部と短尺部とが、タイヤ周方向に対して相互に逆方向に傾斜する。また、ジグザグ形状の最大振幅Asが、センター陸部32の接地幅Wb2に対して0.05≦As/Wb2≦0.20の範囲にあり、好ましくは0.10≦As/Wb2≦0.15の範囲にある。上記下限により、周方向細溝41のジグザグ形状による排水性の向上作用が確保され、上記上限により、センター陸部32、33の剛性が確保される。
【0038】
ジグザグ形状の最大振幅Asは、周方向細溝41の溝中心線の最大振幅として測定される。
【0039】
例えば図4の構成では、図3に示すように、周方向細溝41が、第一長尺部411A、第一短尺部412A、第二長尺部411Bおよび第二短尺部412Bを繰り返し接続して成るジグザグ形状を有する。また、第一および第二の長尺部411A、411Bがタイヤ周方向に対して一方向に傾斜し、第一および第二の短尺部412A、412Bが他方向に傾斜する。
【0040】
また、図4において、第一短尺部412Aにおけるジグザグ形状の振幅As1が、第二短尺部412Bにおけるジグザグ形状の振幅As2に対して0.10≦As1/As2≦0.90の範囲にあり、好ましくは0.40≦As1/As2≦0.60の範囲にある。したがって、ジグザグ形状が、第一短尺部412Aで小さい振幅As1を有し、第二短尺部412Bで大きい振幅As2を有する(As1<As2)。上記下限により、第一短尺部412Aによる排水性の向上作用が確保され、上記上限により、センター陸部32、33の剛性が確保される。なお、図4の構成では、第二短尺部412Bにおけるジグザグ形状の振幅As2が、周方向細溝41のジグザグ形状の最大振幅Asに相当する。
【0041】
また、図4において、上記した第一長尺部411A、第一短尺部412A、第二長尺部411Bおよび第二短尺部412Bから成るジグザグ形状のピッチ長Psが、センター陸部32(33)の接地幅Wb2(Wb3)に対して0.50≦Ps/Wb2≦1.10の範囲にあり、好ましくは0.75≦Ps/Wb2≦0.95の範囲にある。上記下限により、周方向細溝41のジグザグ形状による排水性の向上作用が確保され、上記上限により、センター陸部32、33の剛性が確保される。また、隣り合う一組の長尺部および短尺部411A、412A(411B、412B)のタイヤ周方向の延在距離Ps’が、第一長尺部411Aのピッチ長Psに対して0.30≦Ps’/Ps≦0.70の範囲にあり、好ましくは0.40≦Ps’/Ps≦0.60の範囲にある。
【0042】
第一長尺部411Aおよび第一短尺部412Aのタイヤ周方向の延在距離Ps’は、ジグザグ形状の屈曲点を端点として測定される。
【0043】
また、図4において、タイヤ周方向に対する第一および第二の長尺部411A、411Bの傾斜角θs1が、3[deg]≦θs1≦17「deg]の範囲にあり、好ましくは8[deg]≦θs1≦12[deg]の範囲にある。
【0044】
傾斜角は、第一および第二の長尺部411A、411Bのそれぞれの端点を接続した仮想直線と、タイヤ赤道面CLとのなす角度として測定される。
【0045】
また、第一および第二の長尺部411A、411Bのそれぞれのタイヤ周方向への延在長さ(図中の寸法記号省略)が、上記した隣り合う一組の長尺部および短尺部411A、412A(411B、412B)のタイヤ周方向の延在距離Ps’に対して70[%]以上95[%]以下の範囲にあり、好ましくは80[%]以上90[%]以下の範囲にある。
【0046】
また、図4において、タイヤ周方向に対する第一短尺部412Aの傾斜角θs2Aが、20[deg]≦θs2A≦50[deg]の範囲にあり、好ましくは35[deg]≦θs2A≦45[deg]の範囲にある。また、タイヤ周方向に対する第二短尺部412Bの傾斜角θs2Bが、40[deg]≦θs2B≦80[deg]の範囲にあり、好ましくは55[deg]≦θs2B≦75[deg]の範囲にある。また、タイヤ周方向に対する第二短尺部412Bの傾斜角θs2Bが、第一短尺部412Aの傾斜角θs2Aに対して10[deg]≦θs2B-θs2A≦50[deg]の範囲にあり、好ましくは20[deg]≦θs2B-θs2A≦40[deg]の範囲にある。かかる構成では、大きな振幅As2を有する第二短尺部412Bの傾斜角θs2Bが大きいので、異なる振幅As1、As2を有するジグザグ形状が形成される。これにより、ジグザグ形状による排水性の向上作用を確保しつつ、小さな振幅As1を有する領域にてセンター陸部32(33)の剛性を高め得る。
【0047】
なお、周方向細溝41の溝幅Wsおよび溝深さHsは、上記のようにタイヤ全周に渡って一定であっても良いし、所定位置で周期的に増減しても良い。例えば、周方向細溝41が、ジグザグ形状の第一短尺部412Aを含む領域、より具体的には後述する第一および第二の横溝42A、42Bの接続点を含む領域で、広い溝幅(図中の寸法記号省略)および浅い溝深さHs’(図6参照)を有し得る。一方で、周方向細溝41が、ジグザグ形状の第二短尺部412Bを含む領域で、狭い溝幅(図中の寸法記号省略)および深い溝深さHs(図6参照)を有し得る。これらにより、周方向細溝41の溝容積が確保されてタイヤのウェット性能が確保され、また、センター陸部32、33の剛性が確保されてタイヤの偏摩耗が抑制される。このとき、上記した広い溝幅と狭い溝幅との比が1.0よりも大きく2.0以下の範囲にあることが好ましい。また、上記した浅い溝深さHs’が、周方向細溝41の溝底に形成された底上部41’により実現される。また、浅い溝深さHs’が、0.5[mm]≦Hs’≦4.0[mm]の範囲にあり、また、ショルダー主溝21の溝深さHg1に対して0.05≦Hs’/Hg1≦0.20の範囲にある。
【0048】
複数の横溝42A、42Bは、図3に示すように、第一および第二の横溝42A、42Bから構成される。第一横溝42Aは、一方の端部にてセンター陸部32;33の一方(図中左側)のエッジ部に開口すると共に他方の端部にて周方向細溝41に接続する。第二横溝42Bは、一方の端部にてセンター陸部32;33の他方(図中右側)のエッジ部に開口すると共に他方の端部にて周方向細溝41に接続する。また、一組の横溝42A、42Bが、タイヤ周方向の同位置に配置され、また、複数組の横溝42A、42Bがタイヤ周方向に所定間隔で配列される。
【0049】
また、図4において、第一横溝42Aのピッチ長P1が、センター陸部32(33)の接地幅Wb2(Wb3)に対して0.50≦P1/Wb2≦1.10の範囲にあり、好ましくは0.75≦P1/Wb2≦0.95の範囲にある。上記下限により、横溝42A、42Bによる排水性の向上作用が確保され、上記上限により、センター陸部32、33の剛性が確保される。なお、図4の構成では、第一横溝42Aのピッチ長P1が周方向細溝41のジグザグ形状のピッチ長Psに等しい。このため、周方向細溝41のジグザグ形状の波数が、第一横溝42Aのピッチ数の2倍である。
【0050】
また、図4に示すように、第一横溝42Aと第二横溝42Bとが、周方向細溝41に対してタイヤ周方向に交互に接続する。また、第一および第二の横溝42A、42Bのそれぞれが、周方向細溝41のジグザグ形状の長尺部411A、411Bに接続する。具体的には、図4に示すように、第一横溝42Aが上記した周方向細溝41のジグザグ形状の第一長尺部411Aに対してT字状に接続し、第二横溝42Bが第二長尺部411Bに対してT字状に接続する。また、タイヤ幅方向に隣り合う横溝42A、42Bが、相互に異なる長尺部411A、411Bに接続する。このため、隣り合う横溝42A、42Bの接続点の間に、1つの短尺部412A;412Bおよびその一対の端点(ジグザグ形状の一対の屈曲点)が配置される。また、タイヤ周方向に隣り合う横溝42A、42A;42B、42Bの接続点の間に、一対の長尺部411A、411Bおよび一対の短尺部412A、412Bが配置される。
【0051】
上記の構成では、(1)周方向細溝41が長尺部と短尺部とを交互に接続したジグザグ形状を有し、第一および第二の横溝42A、42Bが周方向細溝41の左右から相互に異なる長尺部411A、411Bに接続する。このため、周方向細溝41が、ジグザグ形状の短尺部412A、412Bを隣り合う横溝42A、42Bの接続部の間に有する。これにより、センター陸部32、33の踏面における排水性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する。また、第一および第二の横溝の双方が1つの長尺部に対して左右から接続する構成(図示省略)、ならびに、第一および第二の横溝がジグザグ形状の屈曲点に接続する構成(図示省略)と比較して、センター陸部32、33の剛性が確保され、横溝42A、42Bに区画されたエッジ部における歪みの集中が緩和されて、センター陸部32、33の偏摩耗が抑制される。これにより、タイヤのウェット性能および耐偏摩耗性能が両立する。
【0052】
また、図4に示すように、第一および第二の横溝42A、42Bが、小さい振幅As1を有する第一短尺部412Aの近傍に配置される。これにより、第一および第二の横溝42A、42Bが大きい振幅As2を有する第二短尺部412Bの近傍に接続する構成(図示省略)と比較して、第一および第二の横溝42A、42Bのタイヤ幅方向への延在長さが確保されて、センター陸部32、33の排水性が向上する。具体的には、図5において、第一短尺部412Aの端点から第一および第二の横溝42A、42Bの接続点までのタイヤ周方向の距離DL1、DL2が、周方向細溝41のジグザグ形状のピッチ長Psに対して3[%]以上20[%]以下の範囲にあり、より好ましくは5[%]以上15[%]以下の範囲にある。上記下限により、センター陸部32、33の剛性が確保されてセンター陸部32、33の偏摩耗が抑制される。上記上限により、横溝42A、42Bが第一短尺部412Aの近傍に配置されたことによる排水性の向上作用が確保される。
【0053】
また、第一および第二の横溝42A、42Bの溝幅W1、W2(図4参照)が、0.1[mm]以上2.0[mm]以下の範囲にあり、好ましくは0.5[mm]以上1.5[mm]以下の範囲にある。上記下限により、横溝42A、42Bの排水性が確保され、上記上限により、横溝42A、42Bの配置に起因するセンター陸部32、33の剛性低下が抑制される。また、横溝42A、42Bの溝幅W1、W2が、後述のように横溝42A、42Bの全域に渡って一定であっても良いし、所定領域で増加あるいは減少しても良い。
【0054】
また、図5において、第一および第二の横溝42A、42Bのそれぞれが、傾斜部421と、軸方向部422と、接続部423とを有する。
【0055】
傾斜部421は、図5に示すように、タイヤ周方向に対して所定の傾斜角φ21A、φ21Bにて傾斜する溝部であり、横溝42A、42Bの長手方向の中央部を構成する。また、第一および第二の横溝42A、42Bの傾斜部421が、周方向細溝41のジグザグ形状の長尺部411A、411Bに対してタイヤ周方向で逆方向に傾斜する。これにより、センター陸部32(33)の剛性バランスが確保される。また、第一および第二の横溝42A、42Bの傾斜部421が、タイヤ周方向に対して相互に同一方向に傾斜する。かかる構成では、第一および第二の横溝がタイヤ周方向に対して相互に逆方向に傾斜する構成(図示省略)と比較して、センター陸部32(33)の剛性バランスが確保され、リブ状のセンター陸部32(33)における歪エネルギーが分散されて、耐偏摩耗性能が向上する。また、傾斜部421の傾斜角φ21A、φ21Bが、40[deg]以上80[deg]以下の範囲にあり、好ましくは50[deg]以上70[deg]以下の範囲にある。また、傾斜部421の傾斜角φ21A、φ21Bが、略同一であり、具体的には-10[deg]≦φ21A-φ21B≦10[deg]の範囲にある。
【0056】
また、第一および第二の横溝42A、42Bが、傾斜部421にて最大溝幅W1、W2(図4参照)をとる。また、傾斜部421の溝深さH21(図7参照)が、0.5[mm]≦H21≦4.0[mm]の範囲にあり、また、ショルダー主溝21の溝深さHg1に対して0.05≦H21/Hg1≦0.15の範囲にある。かかる構成では、傾斜部421が幅広かつ浅い溝部であることにより、横溝42A、42Bの排水性が確保されると共にセンター陸部32(33)の剛性が確保される。
【0057】
また、図5において、傾斜部421のタイヤ幅方向への延在長さD21が、センター陸部32(33)の接地幅Wb2(Wb3)対して0.10≦D21/Wb2≦0.50の範囲にあり、好ましくは0.20≦D21/Wb2≦0.45の範囲にあり、より好ましくは0.24≦D21/Wb2≦0.40の範囲にある。上記下限により、傾斜部421による排水性の向上作用が確保され、上記上限により、後述する軸方向部422のタイヤ幅方向の配置スペースが確保されてセンター陸部32(33)のエッジ部の偏摩耗が抑制される。また、傾斜部421のタイヤ周方向への延在長さL21が、周方向細溝41のジグザグ形状のピッチ長Psに対して0.10≦L21/Ps≦0.40の範囲にあり、好ましくは0.20≦L21/Ps≦0.30の範囲にある。上記下限により、傾斜部421による排水性の向上作用が確保され、上記上限により、センター陸部32(33)の剛性が確保される。なお、図5の構成では、傾斜部421のタイヤ周方向への延在長さL21が、横溝42A、42Bのタイヤ周方向への延在長さL2に等しい。
【0058】
また、図5の構成では、傾斜部421がストレート形状を有することにより、横溝42A、42BがZ字形状ないしはステップ形状を有している。しかし、これに限らず、傾斜部421が円弧形状あるいはS字形状を有することにより、横溝42A、42Bが湾曲形状を有しても良い(図示省略)。
【0059】
軸方向部422は、傾斜部421とセンター陸部32(33)のエッジ部とを接続する溝部であり、タイヤ回転軸に略平行に延在してセンター陸部32(33)のエッジ部に対してT字状に接続する。また、軸方向部422のタイヤ周方向に対する傾斜角(図中の寸法記号省略)が、80[deg]以上110[deg]以下の範囲にある。かかる構成では、横溝42A、42Bがセンター陸部32(33)のエッジ部に対して垂直に接続するので、横溝42A、42Bの開口部を起点としたセンター陸部32(33)のエッジ部の故障が抑制される。
【0060】
また、軸方向部422の溝幅(図中の寸法記号省略)が、0.1[mm]以上2.0[mm]以下の範囲にあり、好ましくは0.5[mm]以上1.5[mm]以下の範囲にある。また、軸方向部422の溝幅が、傾斜部421の溝幅よりも狭く、傾斜部421の溝幅に対して50[%]以上100[%]未満の範囲にあることが好ましい。また、軸方向部422の溝深さH22(図7参照)が、傾斜部421の溝深さH21よりも深く(H21<H22)、ショルダー主溝21の溝深さHg1に対して0.60≦H21/Hg1≦0.80の範囲にある。例えば図5の構成では、後述するマルチサイプ5が横溝42A、42Bの軸方向部422を兼ねることにより、軸方向部422がマルチサイプ5と同等の深さを有している。しかし、これに限らず、軸方向部422が、傾斜部421と同一の深さH21を有することにより、横溝42A、42Bの全体が浅溝構造を有しても良い(図示省略)。
【0061】
図5において、軸方向部422のタイヤ幅方向への延在長さD22が、センター陸部32(33)の接地幅Wb2(Wb3)に対して0.05≦D22/Wb2≦0.20の範囲にあり、好ましくは0.10≦D22/Wb2≦0.15の範囲にある。また、軸方向部422の延在長さD22が、2.0[mm]≦D22≦5.0[mm]の範囲にある。
【0062】
接続部423は、傾斜部421と周方向細溝41とを接続する溝部であり、周方向細溝41のジグザグ形状の長尺部411A、411Bに対してT字状に接続する。また、接続部423のタイヤ周方向に対する傾斜角が、80[deg]以上110[deg]以下の範囲にある。
【0063】
また、接続部423の溝幅(図中の寸法記号省略)が、0.1[mm]以上2.0[mm]以下の範囲にあり、好ましくは0.5[mm]以上1.5[mm]以下の範囲にある。また、接続部423の溝深さ(図中の寸法記号省略。図7参照)が、傾斜部421と同一の深さH21を有する。このため、横溝42A、42Bが、周方向細溝41に対する開口部で浅い溝深さを有している。
【0064】
また、図2において、一対のショルダー陸部31、31の一方(例えば図中左側のショルダー陸部31)に隣り合う第一センター陸部32と、第一センター陸部32に隣り合う第二センター陸部33と、一対のショルダー陸部31、31の他方(例えば図中右側のショルダー陸部31)に隣り合う第三センター陸部32とを定義する。図2の構成では、第一~第三のセンター陸部32、33、32が、上記した周方向細溝41と、第一および第二の横溝42A、42Bとをそれぞれ備える。
【0065】
このとき、図3に示すように、第一センター陸部32の第一および第二の横溝42A、42Bが、タイヤ周方向に相互にオーバーラップして配置される。同様に、第二センター陸部33の第一および第二の横溝42A、42Bが、タイヤ周方向に相互にオーバーラップして配置される。また、図2に示すように、第三センター陸部32の第一および第二の横溝42A、42Bが、タイヤ周方向に相互にオーバーラップして配置される。
【0066】
上記の構成では、第一~第三のセンター陸部32、33、32のそれぞれにて、第一横溝42Aと第二横溝42Bとがタイヤ周方向に相互にオーバーラップして配置されるので、横溝がタイヤ周方向にオフセットして配置される構成(図示省略)と比較して、横溝42A、42Bに区画されたエッジ部における歪みの集中が緩和されて、センター陸部32、33の偏摩耗が抑制される。
【0067】
また、第一~第三のセンター陸部32、33、32のそれぞれにおける第一および第二の横溝42A、42Bのオーバーラップ量DA(図3参照)が、第一横溝42Aのピッチ長P1(図3参照)に対して0.05≦DA/P1≦0.40の範囲にあり、好ましくは0.10≦DA/P1≦0.30の範囲にある。これにより、1つのセンター陸部32;33にて、横溝42A、42Bが相互にオーバーラップすることに起因するセンター陸部32、33のエッジ部の歪みが低減される。
【0068】
横溝42A、42Bのオーバーラップ量DAは、第一および第二の横溝42A、42Bをタイヤ赤道面CLに投影視した時のタイヤ周方向への両者の重複距離として測定される。
【0069】
また、図3に示すように、第一センター陸部32の第一および第二の横溝42A、42Bが、第二センター陸部33の第一および第二の横溝42A、42Bに対してタイヤ周方向にオフセットして配置される。さらに、図2に示すように、第一センター陸部32の第一および第二の横溝42A、42Bと、第二センター陸部33の第一および第二の横溝42A、42Bと、第三センター陸部32の第一および第二の横溝42A、42Bとが、タイヤ周方向に相互にオフセットして配置される。
【0070】
上記の構成では、隣り合うセンター陸部32、33;33、32の横溝42A、42Bがタイヤ周方向に相互にオフセットして配置されるので、横溝がタイヤ周方向にオーバーラップして配置される構成(図示省略)と比較して、横溝42A、42Bによる周期的な共鳴音が相殺されて、走行時の騒音が低減される。
【0071】
また、第一センター陸部32の第一および第二の横溝42A、42Bと第二センター陸部33の第一および第二の横溝42A、42Bとのオフセット量DB(図3参照)が、第一横溝42Aのピッチ長P1(図3参照)に対して0.10≦DB/P1の範囲にあり、好ましくは0.15≦DB/P1の範囲にある。これにより、隣り合うセンター陸部32、33の横溝42A、42Bが相互にオフセットすることによる走行時の騒音低減作用が確保される。比DB/L2の上限は特に限定がないが、隣り合う一対の横溝42A、42Bがオーバーラップしないことが条件となるため、横溝42Aのピッチ長P1(図3参照)との関係により制約を受ける。
【0072】
横溝42A、42Bとのオフセット量DBは、隣り合うセンター陸部32、33の第一および第二の横溝42A、42Bをタイヤ赤道面CLに投影視した時のタイヤ周方向への両者の離間距離として測定される。
【0073】
[ショルダー陸部]
ショルダー陸部31は、図2に示すように、タイヤ周方向に連続した踏面を有するリブである。また、ショルダー陸部31は、後述するマルチサイプ5のみを有し、他の溝あるいはサイプを有していない。このため、ショルダー陸部31が、溝あるいはサイプによりタイヤ周方向に分断されていない、プレーンな踏面を有する。これにより、偏摩耗が発生し易いショルダー陸部31の耐偏摩耗性を向上できる。しかし、これに限らず、ショルダー陸部31が15[mm]以下の深さをもつ浅いサイプあるいは浅い溝を有しても良い(図示省略)。
【0074】
[マルチサイプ]
また、図2の構成では、各陸部31~33が複数のマルチサイプ5を備える。マルチサイプ5は、一方の端部にて陸部31~33のエッジ部に開口すると共に他方の端部にて陸部31~33の内部で終端する短尺なサイプであり、0.3[mm]以上1.5[mm]以下の幅(図中の寸法記号省略)、2.0[mm]以上17[mm]以下の深さH5(図7参照)、および、2.0[mm]以上10[mm]以下の長さ(図中の寸法記号省略。図5参照)を有する。また、複数のマルチサイプ5が、陸部31~33のエッジ部に沿ってタイヤ周方向に配列される。また、マルチサイプ5のピッチ長(図中の寸法記号省略)が、タイヤ周長に対して0.1[%]以上0.6[%]以下の範囲にある。かかる構成では、マルチサイプ5が陸部31~33の剛性を低減することにより、タイヤ接地時における陸部31~33のエッジ部の接地圧が減少する。これにより、偏摩耗(特に、リバーウェア摩耗)の発生が抑制されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する。
【0075】
なお、図2の構成では、図5および図7に示すように、一部のマルチサイプ5がセンター陸部32、33の横溝42A、42Bの軸方向部422を兼ねる。このように、横溝42A、42Bが、マルチサイプ5に接続することでセンター陸部32、33のエッジ部に開口しても良い。このとき、マルチサイプ5が、横溝42A、42Bの傾斜部421の溝幅W1、W2(図4参照)よりも狭い幅を有し、且つ、横溝42A、42Bの傾斜部421の溝深さH21(図7参照)よりも深い深さH5を有することが好ましい。これにより、横溝42A、42Bによる排水作用およびマルチサイプ5による偏摩耗の抑制作用が両立する。
【0076】
[摩耗犠牲リブ]
図8は、図2に記載したショルダー陸部31のエッジ部を示す断面図である。
【0077】
図2および図8に示すように、ショルダー陸部31が、タイヤ接地端T側のエッジ部に沿って延在する細溝61と、この細溝61に区画されて成る細リブ62とを備える。また、細溝61の溝幅W6が1.0[mm]≦W6≦3.0[mm]の範囲にあり、溝深さH6がショルダー主溝21の溝深さHg1(図6参照)に対して0.60≦H6/Hg1≦1.00の範囲にある。かかる構成では、タイヤ転動時にて、細リブ62がいわゆる摩耗犠牲リブとして機能してショルダー陸部31の本体の偏摩耗を抑制する。これにより、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する。
【0078】
また、図8の構成では、細溝61が溝底に円形断面の拡幅部(図中の符号省略)を有する。また、この拡幅部の直径が細溝61の溝幅W6に対して1.2倍以上5倍以下の範囲にある。また、細リブ62の頂面がショルダー陸部31の踏面に対してタイヤ径方向にオフセット配置される。また、細リブ62の頂面のオフセット量D6が、1.0[mm]≦D6≦4.0[mm]の範囲にある。また、細リブ62の頂面の幅(図中の寸法記号省略)が、ショルダー陸部31の接地幅Wb1(図2参照)に対して20[%]以上40[%]以下の半にある。これらにより、摩耗犠牲リブによる偏摩耗の抑制作用が向上する。
【0079】
[変形例]
図9は、図2に記載したタイヤ1の変形例を示す平面図である。同図において、図2と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
図2の構成では、センター主溝22の溝幅Wg2が、ショルダー主溝21の溝幅Wg1に対して同一ないしは若干狭く設定されている。具体的には、センター主溝22の溝幅Wg2が、ショルダー主溝21の溝幅Wg1に対して0.70≦Wg2/Wg1≦1.00の範囲にあり、好ましくは0.80≦Wg2/Wg1≦0.90の範囲にある。したがって、センター主溝22の溝幅Wg2が、ショルダー主溝21の溝幅Wg1に対して同一ないしは若干狭く設定されている。これにより、トレッド部センター領域の排水性が確保されている。かかる構成では、トレッド部センター領域の排水性が向上して、タイヤのウェット性能が高まる点で好ましい。
【0081】
これに対して、図9の構成では、センター主溝22の溝幅Wg2が、ショルダー主溝21の溝幅Wg1よりも狭く、0.14≦Wg2/Wg1≦0.45の範囲にある。また、センター主溝22の溝幅Wg2が3.5[mm]≦Wg2≦6.0[mm]の範囲にある。かかる構成では、トレッド部センター領域の剛性が増加して、タイヤの耐偏摩耗性能が向上し、また、タイヤの転がり抵抗性能が向上する。
【0082】
[効果]
以上説明したように、このタイヤ1は、一対のショルダー主溝21および1本以上のセンター主溝22と、ショルダー主溝21およびセンター主溝22に区画されて成る一対のショルダー陸部31および2列以上のセンター陸部32、33とを備える(図2参照)。また、少なくとも1列のセンター陸部32、33が、タイヤ周方向に延在する周方向細溝41と、一方の端部にてセンター陸部32、33の一方のエッジ部に開口すると共に他方の端部にて周方向細溝41に接続する第一横溝42Aと、一方の端部にてセンター陸部32、33の他方のエッジ部に開口すると共に他方の端部にて周方向細溝41に接続する第二横溝42Bとを備える。また、周方向細溝41が、第一長尺部411A、第一短尺部412A、第二長尺部411Bおよび第二短尺部412Bを繰り返し接続して成るジグザグ形状を有する(図4参照)。また、第一横溝42Aが、ジグザグ形状の第一長尺部411Aに接続し、且つ、第二横溝42Bが、ジグザグ形状の第二長尺部411Bに接続する。
【0083】
かかる構成では、(1)センター陸部32、33が周方向細溝および横溝42A、42Bを有するので、トレッド部センター領域の排水性が向上する。また、(2)周方向細溝41が長尺部と短尺部とを交互に接続したジグザグ形状を有し、第一および第二の横溝42A、42Bが周方向細溝41の左右から相互に異なる長尺部411A、411Bに接続する。このため、周方向細溝41が、ジグザグ形状の短尺部412A、412Bを隣り合う横溝42A、42Bの接続部の間に有する。これにより、センター陸部32、33の踏面における排水性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する。また、第一および第二の横溝の双方が1つの長尺部に対して左右から接続する構成(図示省略)、ならびに、第一および第二の横溝がジグザグ形状の屈曲点に接続する構成(図示省略)と比較して、センター陸部32、33の剛性が確保されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する。上記により、タイヤのウェット性能と耐偏摩耗性能が両立する利点がある。
【0084】
また、このタイヤ1では、周方向細溝41の溝幅Ws(図4参照)が、0.1[mm]≦Ws≦2.0[mm]の範囲にある。上記下限により、周方向細溝41の排水性が確保され、上記上限により、周方向細溝41の配置に起因するセンター陸部32、33の剛性低下が抑制される利点がある。
【0085】
また、このタイヤ1では、第一短尺部412Aにおけるジグザグ形状の振幅As1が、第二短尺部412Bにおけるジグザグ形状の振幅As2に対して0.10≦As1/As2≦0.90の範囲にある(図4参照)。上記下限により、第一短尺部412Aによる排水性の向上作用が確保され、上記上限により、センター陸部32、33の剛性が確保される利点がある。
【0086】
また、このタイヤ1では、ジグザグ形状の最大振幅Asが、センター陸部32(33)の接地幅Wb2(Wb3)に対して0.05≦As/Wb2≦0.20の範囲にある(図4参照)。上記下限により、周方向細溝41のジグザグ形状による排水性の向上作用が確保され、上記上限により、センター陸部32、33の剛性が確保される利点がある。
【0087】
また、このタイヤ1では、第一長尺部411A、第一短尺部412A、第二長尺部411Bおよび第二短尺部412Bから成るジグザグ形状のピッチ長Psが、センター陸部32(33)の接地幅Wb2(Wb3)に対して0.50≦Ps/Wb2≦1.10の範囲にある(図4参照)。上記下限により、周方向細溝41のジグザグ形状による排水性の向上作用が確保され、上記上限により、センター陸部32、33の剛性が確保される利点がある。
【0088】
また、このタイヤ1では、タイヤ周方向に対する第二短尺部412Bの傾斜角θs2Bが、第一短尺部412Aの傾斜角θs2Aに対して10[deg]≦θs2B-θs2A≦50[deg]の範囲にある(図4参照)。かかる構成では、大きな振幅As2を有する第二短尺部412Bの傾斜角θs2Bが大きいので、タイヤ周方向への第二短尺部412Bの延在長さが小さくなる。これにより、タイヤ周方向への第一および第二の短尺部412A、412Bの延在長さが均一化される利点がある。
【0089】
また、このタイヤ1では、第一および第二の横溝42A、42Bの溝幅W1、W2(図4参照)が、0.1[mm]以上2.0[mm]以下の範囲にある。上記下限により、横溝42A、42Bの排水性が確保され、上記上限により、横溝42A、42Bの配置に起因するセンター陸部32、33の剛性低下が抑制される利点がある。
【0090】
また、このタイヤ1では、第一および第二の横溝42A、42Bのそれぞれが、タイヤ周方向に対して傾斜する傾斜部421を有する(図5参照)。また、傾斜部421の傾斜角φ21A、φ21Bが、40[deg]以上80[deg]以下の範囲にある。また、第一および第二の横溝42A、42Bの傾斜部421が、タイヤ周方向に対して相互に同一方向に傾斜する。かかる構成では、第一および第二の横溝がタイヤ周方向に対して相互に逆方向に傾斜する構成(図示省略)と比較して、センター陸部32(33)の剛性バランスが確保され、リブ状のセンター陸部32(33)における歪エネルギーが分散されて、耐偏摩耗性能が向上する利点がある。
【0091】
また、このタイヤ1では、傾斜部421の溝深さH21が、ショルダー主溝21の溝深さHg1に対して0.05≦H21/Hg1≦0.15の範囲にある(図7参照)。上記下限により、横溝42A、42Bの排水性が確保され、上記上限により、センター陸部32(33)の剛性が確保される利点がある。
【0092】
また、このタイヤ1では、第一および第二の横溝42A、42Bのそれぞれの傾斜部421が、周方向細溝41のジグザグ形状の長尺部411A、411Bに対して逆方向に傾斜する(図5参照)。これにより、センター陸部32(33)の剛性バランスが確保される利点がある。
【0093】
また、このタイヤ1では、傾斜部421のタイヤ幅方向への延在長さD21が、センター陸部32(33)の接地幅Wb2に対して0.10≦D21/Wb2≦0.50の範囲にある(図5参照)。上記下限により、傾斜部421による排水性の向上作用が確保され、上記上限により、上記した軸方向部422のタイヤ幅方向の配置スペースが確保されてセンター陸部32(33)のエッジ部の偏摩耗が抑制される利点がある。
【0094】
また、このタイヤ1では、第一および第二の横溝42A、42Bのそれぞれが、傾斜部421とセンター陸部32(33)のエッジ部とを接続する軸方向部422を有する(図5参照)。また、軸方向部422のタイヤ周方向に対する傾斜角(図中の寸法記号省略)が、80[deg]以上110[deg]以下の範囲にある。かかる構成では、横溝42A、42Bがセンター陸部のエッジ部に対して垂直に接続するので、横溝42A、42Bの開口部を起点としたセンター陸部32(33)のエッジ部の故障が抑制される利点がある。
【0095】
[適用対象]
また、このタイヤ1は、車両のステア軸に装着される重荷重用タイヤである。かかるタイヤを適用対象とすることにより、上記したタイヤ性能の向上作用が効果的に得られる。
【0096】
また、この実施の形態では、上記のように、タイヤの一例として空気入りタイヤについて説明した。しかし、これに限らず、この実施の形態に記載された構成は、他のタイヤに対しても、当業者自明の範囲内にて任意に適用できる。他のタイヤとしては、例えば、エアレスタイヤ、ソリッドタイヤなどが挙げられる。
【実施例0097】
図10および図11は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。図12は、従来例のタイヤのトレッド面を示す平面図である。
【0098】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)ウェット制動性能および(2)耐偏摩耗性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ295/75R22.5の試験タイヤがTRAの規定リムに組み付けられ、この試験タイヤにTRAの規定内圧および規定荷重が付与される。また、試験タイヤが、試験車両である2-Dトラクターヘッドに装着される。
【0099】
(1)ウェット制動性能に関する評価では、試験車両が水深1[mm]で散水したアスファルト路を走行し、初速度40[km/h]からの制動距離が測定される。そして、測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。評価は、その数値が大きいほど好ましい。
【0100】
(2)耐偏摩耗性能に関する評価では、試験車両が所定の舗装路を5万[km]走行した後に、陸部のエッジ部のステップ摩耗の深さが観察されて指数評価が行われる。この評価は従来例を基準(100)とした指数評価により行われる。評価は、その数値が大きいほど好ましい。
【0101】
実施例1~15の試験タイヤは、図1および図2の構成を備え、4本の周方向主溝21、22と、一対のショルダー陸部31および3列のセンター陸部32、33とを備える。また、すべてのセンター陸部32、33が、長尺部411A、411Bおよび短尺部412A、412Bを接続して成る周方向細溝41と、周方向細溝41の長尺部411A、411Bに接続する横溝42A、42Bを備える。また、周方向細溝41の第一および第二の短尺部412A、412Bが相互に異なる長さを有する。また、横溝42A、42Bが、タイヤ周方向に千鳥状に配列されて、ジグザグ形状を有する周方向細溝41の長尺部411A、411Bに対して交互に接続する。また、ショルダー主溝21の溝幅Wg1が10.5[mm]であり、溝深さHg1が14.6[mm]である。また、センター主溝22の溝幅Wg2が9.0[mm]であり、溝深さHg2が12.9[mm]である。また、タイヤ接地幅TWが212[mm]であり、ショルダー陸部31の接地幅Wb1が39.5[mm]であり、センター陸部32、33の接地幅Wb2、Wb3がWb2=31.0[mm]、Wb3=32.0[mm]である。また、周方向細溝41の溝幅Wsが0.7[mm]であり、溝深さHsが9.2[mm]である。また、実施例16の試験タイヤは、図9の構成を備え、センター主溝22の溝幅Wg2が4.6[mm]であり、タイヤ接地幅TWが207[mm]であり、ショルダー陸部31の接地幅Wb1が41.4[mm]であることを除き、実施例1の試験タイヤと同じである。
【0102】
従来例の試験タイヤは、実施例1の試験タイヤにおいて、周方向細溝41のジグザグ形状の波数が第一横溝42Aのピッチ数に等しい(図12を参照)。このため、隣り合う第一横溝42A、42Aが、一組の長尺部および短尺部により接続される。また、横溝42A、42Bが、タイヤ周方向に千鳥状に配列されて、ジグザグ形状を有する周方向細溝41の屈曲点に対して交互に接続する。また、隣り合う横溝42A、42Bが、タイヤ周方向に相互にオフセットして配置される。また、隣り合うセンター陸部32、33の横溝42A、42Bが、タイヤ周方向に相互にオーバーラップして配置される。
【0103】
試験結果が示すように、実施例の試験タイヤでは、タイヤのウェット制動性能および耐偏摩耗性能が両立することが分かる。
【符号の説明】
【0104】
1 タイヤ;11 ビードコア;12 ビードフィラー;121 ローアーフィラー;122 アッパーフィラー;13 カーカス層;14 ベルト層;141 高角度ベルト;142、143 交差ベルト;144 ベルトカバー;15 トレッドゴム;16 サイドウォールゴム;17 リムクッションゴム;21 ショルダー主溝;22 センター主溝;31 ショルダー陸部;32、33 センター陸部;41 周方向細溝;41’ 底上部;411A、411B 長尺部;412A、412B 短尺部;42A、42B 横溝;421 傾斜部;422 軸方向部;423 接続部;5 マルチサイプ;61 細溝;62 細リブ
図1
図2
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図12