(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048718
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230331BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158186
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】袴田 純一
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB58
2C056EC41
2C056EC42
2C056EC73
2C057AF39
2C057AL31
2C057AM15
(57)【要約】
【課題】粒状性を維持しつつ風紋ムラの目立ちやすい中間調領域で風紋ムラを抑制する。
【解決手段】画像データを処理する画像データ処理部11と、画像データから中間調が連続する中間調領域を検出する中間調領域検出手段10と、を備え、画像データ処理部11は画像データからインク吐出量を決定する場合に、中間調領域検出手段10が検出した中間調領域を、中間調領域の濃度に基づく最大インク吐出量の画素とインクを吐出しない画素とで形成し、かつ、最大インク吐出量で形成する画素同士が隣接しないようにインク吐出量を決定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを処理する画像データ処理部と、
前記画像データから中間調が連続する中間調領域を検出する中間調領域検出手段と、を備え、
前記画像データ処理部は前記画像データからインク吐出量を決定する場合に、
前記中間調領域検出手段が検出した前記中間調領域を、前記中間調領域の濃度に基づく最大インク吐出量の画素とインクを吐出しない画素とで形成し、かつ、前記最大インク吐出量で形成する画素同士が隣接しないようにインク吐出量を決定する
ことを特徴とする画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に係り、特に、粒状性を維持しつつ風紋ムラの目立ちやすい中間調領域で風紋ムラを抑制する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ライン型のインクジェット印刷装置は、搬送ベルトにより搬送される用紙に対して、用紙の搬送方向と直交する方向に複数配置されたインクジェットヘッドによりインク液滴を連続吐出することにより印刷を行う。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドのノズルからインクが連続吐出されると、そのインク液滴は自己気流を伴い吐出される。そして印刷媒体の搬送により発生した気流が、自己気流の壁にぶつかり、複雑に気流が乱れることがある。この乱気流により吐出されたインクの着弾位置が所望の位置からずれてしまうと、風紋ムラと呼ばれる濃度ムラが生じる場合があった。
【0004】
この濃度ムラを補正する方法として、特許文献1には、画像データが高解像度でありかつ濃度が所定範囲である場合、自己気流の発生度合いに応じて画像データの解像度を低解像度に変換し、風紋ムラを目立たなくする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の風紋ムラを目立たなくする方法のように、画像データの解像度を低解像度に変換すると、低解像度の領域では液滴サイズが大きくなるため粒状性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、粒状性を維持しつつ風紋ムラの目立ちやすい中間調領域で風紋ムラを抑制する画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像処理装置の特徴は、
画像データを処理する画像データ処理部と、
前記画像データから中間調が連続する中間調領域を検出する中間調領域検出手段と、を備え、
前記画像データ処理部は前記画像データからインク吐出量を決定する場合に、
前記中間調領域検出手段が検出した前記中間調領域を、前記中間調領域の濃度に基づく最大インク吐出量の画素とインクを吐出しない画素とで形成し、かつ、前記最大インク吐出量で形成する画素同士が隣接しないようにインク吐出量を決定する
ことにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る画像処理装置の特徴によれば、粒状性を維持しつつ風紋ムラの目立ちやすい中間調領域で風紋ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る画像処理装置が備える最低ドロップ数変更手段による処理を説明した説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る画像処理装置の処理内容を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0012】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。本図に示すように、画像処理装置1は、中間調領域検出手段10と、画像データ処理部11と、印刷手段15とを備える。
【0014】
中間調領域検出手段10は、受信した印刷ジョブに含まれる画像データから中間調が連続する中間調領域を検出する。
【0015】
例えば、中間調領域検出手段10は、画像データの注目画素周辺領域を参照し、濃度が均一な領域や、非エッジな領域であれば連続吐出領域と判定する。そして、濃度を「0」~「255」の範囲で示す場合、中間調領域検出手段10は、連続吐出領域のうち、平均濃度、または注目画素の濃度が「0」~「47」である場合に低濃度領域であると判定する。平均濃度、または注目画素の濃度が「48」~「207」である場合に中間調領域であると判定する。平均濃度、または注目画素の濃度が「208」~「255」である場合に高濃度領域であると判定する。
【0016】
なお、カラー領域は重色表現され風紋が比較的目立たないが、モノクロ領域では特に風紋が目立つため、無彩色の領域に限定しても良い。
【0017】
画像データ処理部11は、受信した印刷ジョブに含まれる画像データからインク吐出量を決定する場合に、中間調領域検出手段10が検出した中間調領域を、中間調領域の濃度に基づく最大インク吐出量の画素とインクを吐出しない画素とで形成し、かつ、最大インク吐出量で形成する画素同士が隣接しないようにドロップ数(インク吐出量)を決定する。
【0018】
画像データ処理部11は、その機能上、最低ドロップ数変更手段12と、ガンマ補正処理手段13と、ハーフトーン処理手段14とを備える。
【0019】
最低ドロップ数変更手段12は、中間調領域検出手段10が検出した中間調領域に対して、高ドロップと「0」ドロップで表現し、高ドロップ画素に「0」ドロップ画素を隣接させるようにドロップ数を変更する。
【0020】
図2は、最低ドロップ数変更手段12による処理を説明した説明図である。
【0021】
最低ドロップ数変更手段12は、内部メモリに
図2に示す濃度テーブル101を記憶している。
【0022】
濃度テーブル101は、連続吐出領域の濃度ごとに、最低ドロップ数と最大ドロップ数とを関連付けて記憶している。
【0023】
例えば、平均濃度または注目画素の濃度が「0」~「47」である場合は、低濃度領域であり、最小ドロップ数が「1」、最大ドロップ数が「3」としている。平均濃度または注目画素の濃度が「48」~「111」である場合は、中間調領域であり、最小ドロップ数が「2」、最大ドロップ数が「3」としている。平均濃度または注目画素の濃度が「112」~「207」である場合も、中間調領域であるが、最小ドロップ数が「3」、最大ドロップ数が「3」としている。平均濃度または注目画素の濃度が「208」~「255」である場合は、高濃度領域であり、最小ドロップ数が「2」、最大ドロップ数が「3」としている。
【0024】
201~203は、ドロップ数パターンを示している。
【0025】
平均濃度または注目画素の濃度が、低濃度領域である場合、風紋が目立ち難いので、例えば、最低ドロップ数変更手段12は、ドロップ数パターン201の低濃度パターン201aのように、全てのドロップ数を用いて階調性を重視したドロップ数とする。
【0026】
同様に、平均濃度または注目画素の濃度が、高濃度領域である場合も、風紋が目立ち難いので、例えば、最低ドロップ数変更手段12は、ドロップ数パターン202の高濃度パターン202bのように、全てのドロップ数を用いて階調性を重視したドロップ数とする。
【0027】
一方、平均濃度または注目画素の濃度が、中間調領域である場合、風紋が目立ち易いので、例えば、最低ドロップ数変更手段12は、ドロップ数パターン202の中間調パターン202aやドロップ数パターン203の中間調パターン203aのように、最大ドロップと「0」ドロップで表現し、最大ドロップ画素に「0」ドロップ画素を隣接させるようにドロップ数を変更する。
【0028】
これにより、風紋が目立ち易い中間調領域において、インクジェットヘッドからインクを吐出した場合、高ドロップインクが気流で多少流れたとしても、隣接する「0」ドロップ画素に着弾するためムラとして見えにくくなる。
【0029】
ガンマ補正処理手段13は、最低ドロップ数に応じたドットゲインを補正する。
【0030】
ハーフトーン処理手段14は、ガンマ補正処理手段13によりガンマ補正された画像データに対して、グレースケールを表現するように、ハーフトーン処理を実行する。
【0031】
印刷手段15は、画像データ処理部11により画像処理された画像データに基づいて、インクジェットヘッドからインクを吐出することにより用紙に印刷する。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の処理内容を示したフローチャートである。
【0033】
図3に示すように、ステップS101において、中間調領域検出手段10は、画像データの注目画素周辺領域を参照し、濃度が均一な領域や、非エッジな領域であれば連続吐出領域とて検出する。
【0034】
連続吐出領域とて検出した領域について(ステップS103;YES)、最低ドロップ数変更手段12は、中間調領域検出手段10が検出した中間調領域に対して、高ドロップと「0」ドロップで表現し、高ドロップ画素に「0」ドロップ画素を隣接させるようにドロップ数を変更する(ステップS105)。
【0035】
ステップS107において、ガンマ補正処理手段13は、最低ドロップ数に応じたドットゲインを補正する。
【0036】
ステップS109において、ハーフトーン処理手段14は、ガンマ補正処理手段13によりガンマ補正された画像データに対して、グレースケールを表現するように、最低ドロップ数、最大ドロップ数でハーフトーン処理を実行する。
【0037】
なお、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1では、
図3に示したように、平均濃度または注目画素の濃度が「48」~「111」である場合は、最小ドロップ数を「2」、最大ドロップ数を「3」とし、平均濃度または注目画素の濃度が「112」~「207」である場合、最小ドロップ数を「3」、最大ドロップ数を「3」としたが、これに限らず、印刷する用紙の種類によって最小ドロップ数を切り替える濃度範囲を変更するようにしてもよい。
【0038】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。
【0039】
(付記1)
画像データを処理する画像データ処理部と、
前記画像データから中間調が連続する中間調領域を検出する中間調領域検出手段と、を備え、
前記画像データ処理部は前記画像データからインク吐出量を決定する場合に、
前記中間調領域検出手段が検出した前記中間調領域を、前記中間調領域の濃度に基づく最大インク吐出量の画素とインクを吐出しない画素とで形成し、かつ、前記最大インク吐出量で形成する画素同士が隣接しないようにインク吐出量を決定する
ことを特徴とする画像処理装置。
【0040】
これにより、風紋が目立ち易い中間調領域において、インクジェットヘッドからインクを吐出した場合、最大インク吐出量のインクが気流で多少流れたとしても、隣接するインクを吐出しない「0」ドロップ画素に着弾するためムラとして見えにくくなる。そのため、粒状性を維持しつつ風紋ムラの目立ちやすい中間調領域で風紋ムラを抑制することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 画像処理装置
10 中間調領域検出手段
11 画像データ処理部
12 最低ドロップ数変更手段
13 ガンマ補正処理手段
14 ハーフトーン処理手段
15 印刷手段