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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048744
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】コイル挿入装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/085 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
H02K15/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158226
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149098
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149102
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 習
(74)【代理人】
【識別番号】100136102
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 雅子
(72)【発明者】
【氏名】菅野 友久
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP13
5H615SS09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コイル移動機構を後退させる時に、スロット内のコイルやウエッジと干渉することを抑制するコイル挿入装置を提供する。
【解決手段】コイル挿入装置は、ステータコアの軸方向に貫通する複数のスロットに、コイルを軸方向一側から他側に向けて相対移動させることにより挿入するコイル挿入装置であって、ステータコアの径方向内側に配置され、ステータコアに対して軸方向に相対移動し、コイルを軸方向一側から他側に向けて相対移動させるコイル移動機構を備え、コイル移動機構は、径方向に移動する径方向移動部140を含み、径方向移動部140の径方向外側端縁141は、ステータコアの径方向内側端縁よりも径方向内側、または、同じ径方向位置、に移動する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの軸方向に貫通する複数のスロットに、コイルを軸方向一側から他側に向けて相対移動させることにより挿入するコイル挿入装置であって、
前記ステータコアの径方向内側に配置され、前記ステータコアに対して軸方向に相対移動し、前記コイルを軸方向一側から他側に向けて相対移動させるコイル移動機構を備え、
前記コイル移動機構は、径方向に移動する径方向移動部を含み、
前記径方向移動部の径方向外側端縁は、前記ステータコアの径方向内側端縁よりも径方向内側、または、同じ径方向位置、に移動する、コイル挿入装置。
【請求項2】
前記径方向移動部の径方向外側端縁は、さらに、前記ステータコアの径方向内側端縁よりも径方向外側に移動する、請求項1に記載のコイル挿入装置。
【請求項3】
前記径方向移動部の軸方向幅は、前記コイル移動機構の軸方向幅よりも小さい、請求項1または2に記載のコイル挿入装置。
【請求項4】
前記ステータコアの径方向内側かつ前記コイル移動機構の径方向外側において、前記ステータコアの周方向に並んで配置され、軸方向に延び、前記コイルを保持する、複数のブレードをさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のコイル挿入装置。
【請求項5】
前記コイル移動機構は、前記径方向移動部の軸方向他側に配置される他側部材をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のコイル挿入装置。
【請求項6】
前記ステータコアの径方向内側かつ前記コイル移動機構の径方向外側において、前記ステータコアの周方向に並んで配置され、軸方向に延び、前記コイルを保持する複数のブレードをさらに備え、
前記他側部材は、前記ブレードの周方向間隔に配置される第一フィン部を有し、
前記第一フィン部の径方向外側端縁は、前記ステータコアの径方向内側端縁よりも径方向内側に位置し、
前記径方向移動部の径方向外側端縁は、前記第一フィン部の径方向外側端縁よりも径方向外側の第一位置と、前記第一フィン部の径方向外側端縁よりも径方向内側または同じ径方向位置の第二位置と、の間を径方向に移動する、請求項5に記載のコイル挿入装置。
【請求項7】
前記他側部材は、軸方向に移動することによって、前記コイル移動機構の軸方向幅が変わる、請求項5または6に記載のコイル挿入装置。
【請求項8】
前記コイル移動機構は、前記コイル移動機構の軸方向幅の変化に伴って、前記径方向移動部が径方向に移動するカム機構を有する、請求項7に記載のコイル挿入装置。
【請求項9】
前記他側部材及び前記径方向移動部の一方は、他方に向かって軸方向に延びる突起部を有し、
前記他側部材及び前記径方向移動部の他方は、前記突起部を受ける窪み部を有し、
前記カム機構は、前記突起部と前記窪み部とで構成される、請求項8に記載のコイル挿入装置。
【請求項10】
前記突起部及び前記窪み部の少なくとも一方は、テーパ面を有する、請求項9に記載のコイル挿入装置。
【請求項11】
前記コイル移動機構は、前記径方向移動部に径方向の付勢力を付与する付勢部をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のコイル挿入装置。
【請求項12】
前記径方向移動部は、
径方向内側に位置する第一部と、
径方向外側に位置する第二部と、
を有し、
前記第一部の周方向幅は、前記第二部の周方向幅よりも大きい、請求項1~11いずれか1項に記載のコイル挿入装置。
【請求項13】
前記コイル移動機構は、前記径方向移動部の軸方向一側に配置される一側部材をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のコイル挿入装置。
【請求項14】
前記コイル移動機構は、前記径方向移動部の軸方向他側に配置される他側部材をさらに含み、
前記他側部材または前記一側部材は、径方向に延びるガイド部を有し、
前記ガイド部は、前記径方向移動部の径方向の移動を案内する、請求項13に記載のコイル挿入装置。
【請求項15】
前記ステータコアの径方向内側かつ前記コイル移動機構の径方向外側において、前記ステータコアの周方向に並んで配置され、軸方向に延び、前記コイルを保持する複数のブレードをさらに備え、
前記一側部材は、前記ブレードの周方向間隔に配置される第二フィン部を有し、
前記第二フィン部の径方向外側端縁は、前記ステータコアの径方向内側端縁よりも径方向内側に位置し、
前記径方向移動部の径方向外側端縁は、前記第二フィン部の径方向外側端縁よりも径方向外側の第一位置と、前記第一フィン部の径方向外側端縁よりも径方向内側または同じ径方向位置の第二位置と、の間を径方向に移動する、請求項13または14に記載のコイル挿入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータコアのスロットにコイルを挿入するコイル挿入装置が知られている。例えば、特開平5-236712号公報(特許文献1)には、ステータコア内に下方から挿入されてコイルを押圧するストリッパが上下動可能に設けられていることが開示されている(段落[0003])。また、コイル挿入後は、ストリッパを後退させた後、ステータコアをコイル挿入装置から取り外すことが開示されている(段落[0005])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-236712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のコイル挿入装置において、ストリッパを後退させる時に、ストリッパがスロット内のコイルやウエッジと干渉する恐れがある。
【0005】
本発明は、コイル移動機構を後退させる時に、スロット内のコイルやウエッジと干渉することを抑制するコイル挿入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点からのコイル挿入装置は、ステータコアの軸方向に貫通する複数のスロットに、コイルを軸方向一側から他側に向けて相対移動させることにより挿入するコイル挿入装置であって、ステータコアの径方向内側に配置され、ステータコアに対して軸方向に相対移動し、コイルを軸方向一側から他側に向けて相対移動させるコイル移動機構を備え、コイル移動機構は、径方向に移動する径方向移動部を含み、径方向移動部の径方向外側端縁は、ステータコアの径方向内側端縁よりも径方向内側、または、同じ径方向位置、に移動する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、コイル移動機構を後退させる時に、スロット内のコイルやウエッジと干渉することを抑制するコイル挿入装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ステータの軸方向に垂直な断面の模式図である。
図2図2は、実施形態のコイル挿入装置を示す模式図である。
図3図3は、実施形態のコイル挿入装置を示す模式図である。
図4図4は、実施形態のコイル移動機構を示す模式図である。
図5図5は、実施形態のコイル移動機構を示す模式図である。
図6図6は、実施形態のコイル移動機構を示す模式図であり、図4の領域VIの断面を示す。
図7図7は、実施形態のコイル移動機構を示す模式図であり、図5の領域VIIの断面を示す。
図8図8は、実施形態のコイル挿入方法のフローチャートである。
図9図9は、比較例のコイル挿入方法の模式図である。
図10図10は、変形例のコイル移動機構の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
また、以下の説明において、ステータ1の中心軸が延びる方向、すなわちスロット21の貫通方向を「軸方向」とする。軸方向に沿った一側を下(後)側、他側を上(前)側とする。上下(前後)方向は、位置関係を特定するために用いるためであって、実際の方向を限定するものではない。すなわち、下方向は重力方向を必ずしも意味するものではない。軸方向は、特に限定されず、鉛直方向、水平方向、これらの方向に交差する方向などを含む。
【0011】
また、ステータ1の中心軸に直交する方向を「径方向」とする。さらに、ステータ1の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とする。
【0012】
また以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示す場合がある。よって、各構成要素の寸法及び比率は実際のものと必ずしも同じではない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示する場合がある。
【0013】
(ステータ)
図1に示すように、ステータ1は、モータの構成部品であって、図示しないロータと相互作用して回転トルクを発生させる。本実施形態のステータ1は、いくつかのスロット21を跨いでコイル10を巻きつける分布巻きとされる。ステータ1は、コイル10と、ステータコア20と、ウエッジ30と、絶縁紙40と、を備える。
【0014】
<ステータコア>
ステータコア20は、中空の円柱形状に形成される。ステータコア20は、薄い珪素鋼鈑を重ねて形成される。ステータコア20には、複数のティース23が放射状に形成される。ティース23同士の間には、スロット21が形成される。ティース23は、スロット21を介して径方向に延びる。スロット21には、径方向開口部であるスロットオープン22が形成される。本実施形態のステータコア20は、一体型のステータコアである。
【0015】
<コイル>
コイル10は、コイル線が環状に巻きけられてなる。本実施形態のコイル線は、丸線であるが、特に限定されず、平角線などでもよい。
【0016】
コイル10は、二つのコイル辺部と、コイル渡り部と、を有する。二つのコイル辺部は、スロット21内に収容される。具体的には、一方のコイル辺部が収納されるスロット21と、他方のコイル辺部が収納されるスロット21とは、異なる。一方のコイル辺部が収納されるスロット21と、他方のコイル辺部が収納されるスロット21とは、図1に示すように別のスロットを介して周方向に配置されてもよく、隣り合っていてもよい(図示せず)。
【0017】
<ウエッジ>
ウエッジ30は、スロット21に挿入されたコイル10と、ステータコア20との間に配置される。図1では、ウエッジ30は、コイル10と、スロットオープン22との間に配置される。ウエッジ30は、スロットオープン22を塞ぐ。ウエッジ30は、ステータコア20とコイル10とを絶縁する。ウエッジ30の軸方向長さは、スロット21の軸方向長さよりも大きい。
【0018】
本実施形態のウエッジ30は、軸方向視においてU字形状である。詳細には、図1に示すように、周方向に延びる周方向部と、周方向部の両端部から径方向外側に向けて延びる2つの径方向部と、を含む。周方向部は、径方向内側に位置する。周方向部及び径方向部は、1つの部材で構成されてもよく、互いに異なる部材が接続されてもよい。
【0019】
<絶縁紙>
図1に示すように、絶縁紙40は、スロット21に挿入されたコイル10を被覆する。絶縁紙40は、スロット21において径方向内側を除く空間を区画するティースに沿って配置される。本実施形態の絶縁紙40は、U字形状である。詳細には、周方向に延びる周方向部と、周方向部の両端部から径方向内側に向けて延びる2つの径方向部と、を含む。周方向部は、径方向外側に位置する。図1では、絶縁紙40の開口とウエッジ30の開口とは、互いに反対の方向である。
【0020】
絶縁紙40は、ステータコア20の軸方向一側及び他側の端面から突出して折り返されたカフス部を有する。
【0021】
(コイル挿入装置)
図1図7を参照して、コイル挿入装置100について説明する。なお、図2図4及び図6は、コイル移動機構(ストリッパ120)が軸方向一側から他側に向けて移動(前進)する状態を示し、図3図5及び図7は、コイル移動機構(ストリッパ120)が軸方向他側から一側に向けて移動(後退)する状態を示す。
【0022】
図1に示すように、コイル挿入装置100は、ステータコア20の軸方向に貫通する複数のスロット21に、コイル10を、軸方向一側から他側(図2では、下側から上側)に向けて挿入する。詳細には、コイル挿入装置100は、ステータコア20の2つのスロット21を跨ぐようにそれぞれのスロットオープン22からコイル線が環状に巻き付けられたコイル10を挿入する。
【0023】
また、本実施形態のコイル挿入装置100は、ステータコア20の軸方向に貫通するスロット21に、スロット21に挿入されたコイル10とステータコア20との間に配置されるウエッジ30を、軸方向一側から他側に向けて挿入する。ここでは、コイル挿入装置100は、ステータコア20の複数のスロット21のそれぞれにウエッジ30を挿入する。
【0024】
コイル挿入装置100は、図2に示すように、複数のブレード110と、コイル移動機構としてのストリッパ120と、を備える。
【0025】
<ブレード>
図2に示すように、ブレード110は、コイル10を保持する。ブレード110は、ステータコア20の径方向内側かつストリッパ120の径方向外側において、ステータコア20の周方向に並んで配置され、軸方向に延びる。ストリッパ及び複数のブレード110により、コイル10をスロット21に容易に挿入できる。
【0026】
ブレード110は、複数のティース23を介して配置される。ブレード110は、後述するストリッパ120に引っ掛けられたコイル10を軸方向及び径方向に沿ってスロット21まで導く。ブレード110は、スロットオープン22に配置される形状を有する。ブレード110は、軸方向に延びる棒状の部材である。ブレード110は、軸方向に移動する可動ブレードである。
【0027】
本実施形態のブレード110の径方向外側端縁は、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向内側に位置するが、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向外側に位置してもよい。
【0028】
ブレード110は、ブレード用駆動部(図示せず)により、軸方向に移動する。詳細には、ブレード110は、軸方向他側に移動すること、及び軸方向一側に移動することが可能である。ブレード用駆動部は、ブレード110に取り付けられて、軸方向に押す部材と、この部材を軸方向に移動させる駆動源と、を含む。
【0029】
<ストリッパ>
ストリッパ120は、コイル10を移動させるコイル移動機構である。ストリッパ120は、ステータコア20の径方向内側に配置され、ステータコア20に対して軸方向に相対移動する。ストリッパ120は、コイル10を軸方向一側から他側に向けて相対移動させる。
【0030】
ストリッパ120は、コイル10を軸方向一側から他側に向けて挿入する。ストリッパ120は、コイル10に接触する。ストリッパ120により、コイル10がステータコア20の径方向内側を軸方向に移動しつつ、コイル10の一部がスロットオープン22からスロット21内部に挿入される。具体的には、ストリッパ120は、コイル10の径方向の内側を引っ掛けて、ブレード110に沿ってコイル10を引き上げる。
【0031】
ストリッパ120は、ストリッパ用駆動部(図示せず)により、軸方向に移動する。詳細には、ストリッパ120は、軸方向他側に移動すること、及び軸方向一側に移動することが可能である。ストリッパ用駆動部は、ストリッパ120に取り付けられて、軸方向に押す部材と、この部材を軸方向に移動させる駆動源と、を含む。
【0032】
図2図7に示すように、ストリッパ120は、シャフト121と、一側部材130と、径方向移動部140と、他側部材150と、を含む。一側部材130は、径方向移動部140よりも軸方向一側に配置される。他側部材150は、径方向移動部140よりも軸方向他側に配置される。一側部材130と、径方向移動部140と、他側部材150と、は、互いに異なる部材である。すなわち、一側部材130と、径方向移動部140と、他側部材150と、は、互いに分離しており、別部材である。
【0033】
一側部材130、径方向移動部140及び他側部材150は、図2及び図3に示すように、シャフト121の径よりも大きな径を有する大径部122を構成する。大径部122は、スロットオープン22に配置される形状を有する。
【0034】
シャフト121は、軸方向に延びる。詳細には、シャフト121は、軸方向一側から他側まで延びる。シャフト121は、軸方向幅が一定である。
【0035】
大径部122は、シャフト121の軸方向他端部に設けられる。大径部122には、環状のコイル10の径方向の内側が引っ掛けられる。シャフト121と大径部122との中心軸は、同じである。
【0036】
径方向移動部140は、径方向に移動する。図5に示すように、径方向移動部140の径方向外側端縁141は、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向内側、または、同じ径方向位置、に移動する。これにより、図3に示すように、ストリッパ120が軸方向他側から一側に向けて移動(後退)する時に、図5及び図7に示すように、径方向移動部140の径方向外側端縁141を、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向内側、または、同じ径方向位置、にすることが可能である。このため、図3に示すように、ストリッパ120を後退させる時に、スロット21内のコイル10やウエッジ30と干渉することを抑制することができる。
【0037】
図4及び図6に示すように、径方向移動部140の径方向外側端縁141は、さらに、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向外側に移動する。これにより、図2に示すように、ストリッパ120が軸方向一側から他側に向けて移動(前進)する時に、図4及び図6に示すように、径方向移動部140の径方向外側端縁141を、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向外側にすることが可能である。このため、図2に示すように、ストリッパ120を前進させる時に、コイル10やウエッジ30を容易に前進させることができる。
【0038】
径方向移動部140の軸方向幅は、ストリッパ120の軸方向幅よりも小さい。本実施形態では、径方向移動部140の軸方向幅は、大径部122の軸方向幅よりも小さい。このように、ここでは、径方向移動部140の軸方向幅は、ストリッパ120の軸方向幅の一部である。このため、径方向移動部140を容易に径方向に移動することができる。
【0039】
また、径方向移動部140の周方向幅は、ストリッパ120の周方向幅よりも小さい。径方向移動部140は、周方向において、所定の間隔を隔てて配置される。このように、ここでは、径方向移動部140の周方向幅は、ストリッパ120の周方向幅の一部である。
【0040】
図6及び図7に示すように、径方向移動部140は、径方向内側に位置する第一部142と、径方向外側に位置する第二部143と、を有する。第一部142の周方向幅は、第二部143の周方向幅よりも大きい。第二部143によって、径方向移動部140の強度を向上できる。
【0041】
第一部142と第二部143とは、別の部材で構成されてもよいが、本実施形態では、1つの部材で構成される。第一部142は、径方向移動部140の支持部の役割を担う。
【0042】
径方向移動部140は、軸方向において、一側部材130と他側部材150とに挟まれる。このため、径方向移動部140の径方向の移動をより安定させることができる。
【0043】
径方向移動部140は、一側部材130及び他側部材150の一方に取り付けられる。本実施形態では、径方向移動部140は、一側部材130に取り付けられる。
【0044】
他側部材150は、径方向移動部140及び一側部材130の軸方向他側に配置される。他側部材150は、ストリッパ120の天部を構成する。他側部材150は、コイル10の挿入に寄与する。このため、他側部材150によって、径方向移動部140に加えられるコイル10の挿入に伴う負荷を低減できる。
【0045】
他側部材150は、ブレード110の周方向間隔に配置される第一フィン部151を有する。第一フィン部151の径方向外側端縁151aは、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向内側に位置する。径方向移動部140の径方向外側端縁141は、図4に示すように、第一フィン部151の径方向外側端縁151aよりも径方向外側の第一位置と、図5に示すように、第一フィン部151の径方向外側端縁151aよりも径方向内側または同じ径方向位置の第二位置と、の間を径方向に移動する。図2に示すように、ストリッパ120の前進時には、図4及び図6に示すように、径方向移動部140を第一位置に位置することで、コイル10やウエッジ30を容易に前進させることができる。図3に示すように、ストリッパ120の後退時には、図5及び図7に示すように、径方向移動部140を第二位置にすることで、スロット21内のコイル10やウエッジ30と干渉することを抑制することができる。
【0046】
また、図4及び図5に示すように、第一フィン部151と径方向移動部140とは、周方向位置が重なる。
【0047】
他側部材150は、軸方向他側から一側に向けて広がる円錐台形状を有する。第一フィン部151は、他側部材150の軸方向一側端部に配置される。このため、第一フィン部151は、他側部材150において最も径方向外側に位置する。
【0048】
他側部材150は、一側部材130に対して相対移動する。他側部材150は、軸方向に移動することによって、ストリッパ120の軸方向幅が変わる。ここでは、他側部材150は、軸方向に移動することによって、大径部122の軸方向幅が変わる。他側部材150の軸方向の移動に伴って、径方向移動部140を径方向に移動させることができる。
【0049】
詳細には、ストリッパ120が前進する時には、図4に示すように、他側部材150と、径方向移動部140及び一側部材130との隙間がない(または小さい)第一状態である。ストリッパ120が後退する時には、図5に示すように、他側部材150と、径方向移動部140及び一側部材130との隙間がある(または大きい)第二状態である。図4に示す第一状態のストリッパ120の軸方向幅は、図5に示す第二状態のストリッパ120の軸方向幅より小さい。
【0050】
一側部材130は、径方向移動部140及び他側部材150の軸方向一側に配置される。一側部材130は、ストリッパ120(ここでは大径部122)の底部を構成する。一側部材130によって、径方向移動部140を支持できるので、径方向移動部140の径方向の移動を安定させることができる。一側部材130は、シャフト121に取り付けられる。
【0051】
一側部材130は、ブレード110の周方向間隔に配置される第二フィン部131を有する。第二フィン部131の径方向外側端縁131aは、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向内側に位置する。径方向移動部140の径方向外側端縁141は、第二フィン部131の径方向外側端縁131aよりも径方向外側の第一位置と、第二フィン部131の径方向外側端縁131aよりも径方向内側または同じ径方向位置の第二位置との間を径方向に移動する。図2に示すように、ストリッパ120の前進時には、図4及び図6に示すように、径方向移動部140を第一位置に位置することで、コイル10やウエッジ30を容易に前進させることができる。図3に示すように、ストリッパ120の後退時には、図5及び図7に示すように、径方向移動部140を第二位置にすることで、スロット21内のコイル10やウエッジ30と干渉することを抑制することができる。
【0052】
他側部材150または一側部材130は、径方向に延びるガイド部を有する。ガイド部は、径方向移動部140の径方向の移動を案内する。これにより、径方向移動部140の径方向の移動範囲を制限することができる。
【0053】
ガイド部は、凹部または凸部である。本実施形態では、径方向移動部140は、軸方向一側に突出する凸部144を有する。一側部材130は、径方向移動部140の凸部144を受ける、ガイド部としての凹部132を有する。凹部132は、溝、レールなどの形状である。
【0054】
なお、径方向移動部140が軸方向他側に突出する凸部を有してもよい。この場合、他側部材150は、ガイド部としての凹部を有する。また、径方向移動部140が凹部を有し、他側部材150または一側部材130がガイド部としての凸部を有してもよい。
【0055】
ストリッパ120は、ストリッパ120の軸方向幅の変化に伴って、径方向移動部140が径方向に移動するカム機構を有する。カム機構により、径方向移動部140を容易に径方向に移動することができる。
【0056】
ここでは、ストリッパ120は、他側部材150及び一側部材130の少なくとも一方の軸方向の移動に伴って、径方向移動部140が径方向に移動するカム機構を有する。
【0057】
具体的には、他側部材150及び径方向移動部140の一方は、他方に向かって軸方向に延びる突起部152を有する。他側部材150及び径方向移動部140の他方は、突起部152を受ける窪み部145を有する。カム機構は、突起部152と窪み部145とで構成される。突起部152と窪み部145とが接することにより、カム機構が動作して、径方向移動部140を径方向に移動することができる。
【0058】
図6及び図7では、他側部材150は、突起部152を有する。径方向移動部140の他方は、窪み部145を有する。
【0059】
他側部材150の一側部材130に対する軸方向の相対移動により、他側部材150の突起部152または窪み部が軸方向に移動する。この移動に伴って、径方向移動部140の窪み部145または突起部が、他側部材150の突起部152または窪み部と接するので、径方向移動部140が径方向に移動する。
【0060】
突起部152及び窪み部145の少なくとも一方は、テーパ面152a、145aを有する。突起部152及び窪み部145の少なくとも一方のテーパ面152a、145aが接することにより、カム機構が容易に動作するので、径方向移動部140を径方向に容易に移動することができる。
【0061】
本実施形態では、他側部材150にテーパ面152aを有する突起部152が形成され、径方向移動部140にテーパ面145aを有する窪み部145が形成される。軸方向に移動する突起部152のテーパ面と、窪み部145のテーパ面145aとが接することにより、径方向移動部140が径方向に移動する。
【0062】
具体的には、他側部材150の一側部材130に対する軸方向の相対移動により、図4及び図6に示す状態から図5及び図7に示す状態(前進時)に、または、図5及び図7に示す状態から図4及び図6に示す状態(後退時)に、他側部材150の突起部152が軸方向に移動する。径方向移動部140の窪み部145が、他側部材150の突起部152または窪み部と接するので、突起部152の移動に伴って、径方向移動部140が径方向に移動する。
【0063】
また、ストリッパ120は、径方向移動部140に径方向の付勢力を付与する付勢部(図示せず)をさらに含む。付勢部により、ストリッパ120の前進時または後退時の径方向移動部の移動を容易に実現できる。
【0064】
付勢部は、例えば、径方向移動部140の径方向内側端部と、一側部材130とを接続する。付勢部は、例えば、バネである。ストリッパ120の前進時には、他側部材150と一側部材130との隙間がない(隙間があっても小さい)ので、テーパ面145a、152a同志が接することによって、図6のように、径方向移動部140が径方向外側に移動する。この状態において、ストリッパ120が後退すると、付勢部によって、径方向移動部140に径方向内側に付勢力が働くので、図7に示すように、径方向移動部140が径方向内側に移動する。
【0065】
また、コイル挿入装置100は、ウエッジ30をスロット21に挿入するための部材と、ウエッジ30をスロット21に案内するウエッジガイドをさらに備える。
【0066】
(コイル挿入方法)
続いて、図1図8を参照して、本実施形態のコイル挿入方法を説明する。本実施形態のコイル挿入方法は、上述したコイル挿入装置100を用いたコイル10の挿入方法である。
【0067】
まず、図8に示すように、コイル挿入装置100をステータコア20に設置する(ステップS1)。このステップS1では、ステータコア20の軸方向一側にコイル10及びコイル挿入装置100を配置する。詳細には、複数のブレード110間に保持されるようにコイル10を配置する。また、複数のブレード110の径方向の中央であって軸方向一側に、ストリッパ120を配置する。
【0068】
次に、ストリッパ120を軸方向一側から他側に向けて移動する(ステップS2)。このステップS2では、ストリッパ120は、ブレード110とともに軸方向他側に移動する。この移動においては、ステータコア20の径方向内側に、ブレード110が位置する。本実施形態では、ブレード用駆動部によりブレード110を前進(上昇)させるとともに、ストリッパ用駆動部によりストリッパ120を前進させる。コイル10の内側はストリッパ120に引っ掛けられた状態で移動するので、コイル10は軸方向他側に移動する。
【0069】
このステップS2では、図2図4及び図6に示すように、径方向移動部140の径方向外側端縁は、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向外側に位置する。ここでは、径方向移動部140の径方向外側端縁141は、第一フィン部151及び第二フィン部131の径方向外側端縁151a、131aよりも径方向外側の第一位置に位置する。
【0070】
このステップS2では、他側部材150が一側部材130に対して軸方向一側に相対移動することによって、ストリッパ120(大径部122)の軸方向幅が短くなる。ここでは、他側部材150と径方向移動部140及び一側部材130との軸方向の隙間がない第一状態である。
【0071】
ストリッパ120は、ストリッパ120の軸方向幅が短くなることに伴って、カム機構により、径方向移動部140が径方向外側に移動する。詳細には、図4及び図6に示すように、一側部材130が他側部材150に対して軸方向他側に相対移動することによって、他側部材150の突起部152のテーパ面152aと、径方向移動部140の窪み部145のテーパ面145aとが摺動し、径方向移動部140が径方向外側に移動する。この移動に伴って、径方向移動部140の凸部144は、一側部材130の凹部132内を径方向外側に移動する。このとき、凸部144が凹部132の径方向外側の壁面よりも径方向外側に移動しないので、凹部132及び凸部144によるガイド部によって、径方向移動部140の径方向の移動範囲を制限する。
【0072】
このように、ストリッパ120が軸方向一側から他側に向けて移動(前進)する時に、径方向移動部140の径方向外側端縁141を、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向外側にすることができる。このため、ストリッパ120を前進させる時に、コイル10やウエッジ30を容易に前進させることができる。
【0073】
次に、ストリッパ120を軸方向他側から一側に向けて移動する(ステップS3)。このステップS3は、コイル10の挿入時に抵抗が大きいとき、コイル10の挿入後などに、実施される。
【0074】
このステップS3では、図2図4及び図6に示すように、径方向移動部140の径方向外側端縁141は、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向内側、または、同じ径方向位置、に移動する。ここでは、径方向移動部140の径方向外側端縁141は、第一フィン部151及び第二フィン部131の径方向外側端縁151a、131aよりも径方向内側、または、同じ径方向位置の第二位置に移動する。
【0075】
なお、このステップS3では、他側部材150が一側部材130に対して軸方向他側に相対移動することによって、ストリッパ120(大径部122)の軸方向幅が長くなる。ここでは、他側部材150と径方向移動部140及び一側部材130との軸方向の隙間がある第二状態である。
【0076】
ストリッパ120は、ストリッパ120の軸方向幅が長くなることに伴って、カム機構により、径方向移動部140が径方向内側に移動する。詳細には、図5及び図7に示すように、一側部材130が他側部材150に対して軸方向一側に相対移動することによって、他側部材150の突起部152のテーパ面152aと、径方向移動部140の窪み部145のテーパ面145aとが摺動し、径方向移動部140が径方向内側に移動する。このとき、本実施形態では、付勢部によって、径方向移動部140に径方向内側に付勢力が働くので、径方向移動部140が径方向内側に容易に移動する。
【0077】
また、この移動に伴って、径方向移動部140の凸部144は、一側部材130の凹部132内を径方向内側に移動する。このとき、凸部144が凹部132の径方向内側の壁面よりも径方向内側に移動しないので、凹部132及び凸部144によるガイド部によって、径方向移動部140の径方向の移動範囲を制限する。
【0078】
ステップS2を実施して、ブレード110及びストリッパ120を軸方向他側に移動することによって、ステータコア20のスロット21にコイル10を挿入することができる。またストリッパ120を軸方向他側に移動することによって、スロット21にウエッジ30を挿入することができる。
【0079】
次に、コイル挿入装置100をステータコア20から取り外す(ステップS4)。具体的には、ストリッパ120を軸方向一側に向かって移動する。このステップS4では、ステップS3が実施される。
【0080】
以上の工程(ステップS1~S4)を実施することにより、ステータコア20の軸方向に貫通する複数のスロット21に、コイル10及びウエッジ30を挿入することができる。その結果、図1に示すステータ1を製造できる。
【0081】
なお、図2及び図3において絶縁紙40を図示していないが、コイル挿入方法は、スロット21に挿入されるコイル10を絶縁紙40で被覆する工程をさらに備える。この工程では、スロット21に予め絶縁紙40を配置して、コイル10をスロット21に挿入してもよい。また、絶縁紙40を被覆したコイル10をスロット21に挿入してもよい。
【0082】
以上説明したように、本実施形態のコイル挿入装置100及びコイル挿入方法によれば、ストリッパ120が軸方向他側から一側に向けて移動(後退)する時に、径方向移動部140の径方向外側端縁141を、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向内側、または、同じ径方向位置、にすることが可能である。
【0083】
図9に示す比較例では、ストリッパ124は径方向移動部を含まない。このため、ストリッパ120を後退させる時に、ストリッパ120の突出部125がコイル10やウエッジ30と擦れてしまう。このため、コイル10の占積率が高い場合には、ウエッジ30が傷ついてしまう。
【0084】
これに対して、本実施形態では、ストリッパ120を後退させる時に、径方向移動部140によって、ストリッパ120を前進させる時と異なり、ストリッパ120に比較例の突出部125が存在しないので、スロット21内のコイル10やウエッジ30と干渉することを抑制することができる。このため、コイルの占積率が高い場合であっても、ウエッジ30が傷つくことを抑制できる。
【0085】
したがって、本実施形態のコイル挿入装置100は、コイル10の占積率が高いステータ1の製造に好適に用いられる。
【0086】
(変形例1)
上述した実施形態では、径方向移動部140を径方向に移動させるために、カム機構を有するストリッパ120を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本変形例では、図10に示すように、ストリッパは、駆動部161と、接続部162と、を有する。
【0087】
具体的には、駆動部161は、駆動力を発生させる。接続部162は、径方向移動部140の径方向内側端部に接続される。接続部162は、駆動部161で発生させた駆動力を受けて、径方向移動部140を径方向に移動する。駆動部161及び接続部162によって、図10の実線に示すように、径方向移動部140の径方向外側端縁141をステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向外側に移動することと、図10の点線に示すように、径方向移動部140の径方向外側端縁141をステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向内側または同じ径方向位置に移動すること、が可能である。
【0088】
上述した実施形態では、カム機構の駆動力は、コイル10を挿入する負荷になる。本変形例では、カム機構が不要であるので、一側部材130、径方向移動部140及び他側部材150の構造を簡素化することができる。
【0089】
(変形例2)
上述した実施形態では、図1に示すように、コイルを挿入する2つのスロット21は、スロット21を4つ挟んだ一のスロット21と他のスロット21とされるが、これに限定されない。
【0090】
(変形例3)
上述した実施形態では、2つのスロット21に1つのコイル10を挿入する方法を例に挙げて説明した。4つ以上のスロット21に、複数のコイル10を同時に挿入してもよい。
【0091】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
1 :ステータ
10 :コイル
20 :ステータコア
21 :スロット
30 :ウエッジ
100 :コイル挿入装置
110 :ブレード
120 :ストリッパ
130 :一側部材
131 :第二フィン部
131a,141、151a :径方向外側端縁
132 :凹部
140 :径方向移動部
142 :第一部
143 :第二部
144 :凸部
145 :窪み部
145a,152a :テーパ面
150 :他側部材
151 :第一フィン部
152 :突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10