(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048748
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】スピニングリール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
A01K89/01 G
A01K89/01 A
A01K89/01 B
A01K89/01 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158235
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】新妻 翔
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BA00
2B108BB00
2B108BE00
2B108BE04
2B108BH00
(57)【要約】
【課題】従来のスピニングリールの有する問題を好適に解決することができるスピニングリールを、提供する。
【解決手段】スピニングリール1は、スプール軸15と、スプール7と、ピニオンギア17と、オシレーティング機構21と、中間ギア31,33と、を有する。ピニオンギア17は、リール本体3に回転可能に支持される。オシレーティング機構21は、スプール軸15を前後方向に往復移動させる。中間ギア31,33は、ピニオンギア17及びオシレーティング機構21の間に配置される。中間ギア31,33は、ピニオンギア17の回転を減速してオシレーティング機構21に伝達する。スプール軸15のストローク量Sを、釣り糸の巻き取りピッチP及び中間ギア31,33のモジュールMによって除算した値は、60以上である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記リール本体に対して前後方向に移動可能に支持されるスプール軸と、
前記スプール軸に連結され、釣り糸が巻き付けられるスプールと、
前記リール本体に回転可能に支持されるピニオンギアと、
前記スプール軸を前記前後方向に往復移動させる往復移動機構と、
前記ピニオンギア及び往復移動機構の間に配置され、前記ピニオンギアの回転を減速して前記往復移動機構に伝達する中間ギアと、
を備え、
前記スプール軸のストローク量を前記釣り糸の巻き取りピッチ及び前記中間ギアのモジュール(ピッチ円の直径/歯数)によって除算した値が、60以上である、
スピニングリール。
【請求項2】
前記値は、150以下である、
請求項1に記載のスピニングリール。
【請求項3】
前記巻き取りピッチは、1.0mm以下である、
請求項1又は2に記載のスピニングリール。
【請求項4】
前記スプールは、外周に前記釣り糸が巻き付けられる糸巻き胴部と、前記糸巻き胴部の前端から径方向外側に延びる前フランジと、を有し、
前記前フランジの外径は、60mm未満である、
請求項1から3のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【請求項5】
前記中間ギアは、第1中間ギアと、第2中間ギアと、を有し、
前記第1中間ギアのモジュール及び前記第2中間ギアのモジュールのうちの小さい方のモジュールが、前記中間ギアの前記モジュールとして選択され、
前記第1中間ギアは、前記スプール軸と平行な第1軸まわりに回転可能に設けられ、前記ピニオンギアに噛み合う第1大径ギアと、前記第1大径ギアよりも小径であり前記第1大径ギアと一体回転する第1小径ギアと、を有し、
前記第2中間ギアは、前記第1軸と平行な第2軸まわりに回転可能に設けられ、前記第1小径ギアに噛み合う第2大径ギアと、前記第2大径ギアよりも小径であり前記第2大径ギアと一体回転する第2小径ギアと、を有し、
前記往復移動機構は、前記第2小径ギアに噛み合う従動ギアと、前記従動ギアと一体的に回転するウォームシャフトと、を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
スピニングリールでは、スプールが前後に往復移動する際の死点、すなわちスプールが最も前方に配置された位置及びスプールが最も後方に配置された位置において、様々な問題が発生することが知られている。例えば、釣り糸の放出時には、死点において、釣り糸同士が接触することによって、ノイズの発生とともに釣り糸の放出抵抗が大きくなる。これにより、飛距離が低下することが知られている。そこで、この死点における問題を解決するために、スプールを大口径化する技術、スプールの往復移動のストロークを伸ばす技術(例えば特許文献1を参照)、釣り糸の巻き取りピッチを細かくする技術(例えば特許文献2を参照)が、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-106898号
【特許文献2】特開平11-000086
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、スプールが大口径化されると、スプールに釣り糸を巻き付けるためのロータも大口径化する。ここで、このロータの回転を許容する空間を確保するためには、釣竿装着脚部から筐体部までの距離を大きくする必要がある。すなわち、スプールの大口径化によって、スピニングリールが大型化するという問題が生じる。
【0005】
また、スプールの往復移動のストロークを伸ばすと、往復移動機構の前後方向の長さが大きくなる。このため、この往復移動機構を収納するために、筐体部を大きくする必要がある。すなわち、スプールの往復移動のストローク量の増加によって、筐体部すなわちスピニングリールが大型化するという問題が生じる。
【0006】
一方で、前述の技術と比較して、釣り糸の巻き取りピッチを細かくした場合、スピニングリールの大型化の抑制には有効である。しかし、釣り糸の巻き取りピッチを細かくしようとすればするほど、減速比の大きな減速機構のような複雑な構造や、溝間の肉厚が薄いウォームシャフトのような製造困難な部品を、用意する必要がある。すなわち、スピニングリールの構造が複雑になったり、スピニングリールの製造コストが高くなったりするという問題が生じる。
【0007】
例えば、上記の減速比の大きな減速機構を単純なギア列で構成する形態としては、ギアを小モジュールで構成することが考えられる。しかし、ギアを小モジュールで構成する場合、ギアの強度を考慮しながらギアを設計する必要がある。このため、釣り糸の太さやスプールのサイズに応じて適切なギアを設計するためには、多くの試作を行い、複雑な強度計算を行う必要がある。
【0008】
このように、死点における問題を解決するための従来技術は、上記のような様々な問題をかかえている。
【0009】
そこで、本発明では、往復移動機構及びスプールを設計する上で有用な基本構造が提案される。すなわち、本発明では、往復移動機構及びスプールを設計する際の基準値を設定し、この基準値を用いて往復移動機構及びスプールが設計される。
【0010】
本発明の目的は、従来のスピニングリールの有する問題を好適に解決することができる基本構造を有するスピニングリールを、提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面に係るスピニングリールは、スプール軸と、スプールと、ピニオンギアと、往復移動機構と、中間ギアと、を有する。スプール軸は、リール本体に対して前後方向に移動可能に支持される。スプールは、スプール軸に連結される。スプールには、釣り糸が巻き付けられる。ピニオンギアは、リール本体に回転可能に支持される。往復移動機構は、スプール軸を前後方向に往復移動させる。
【0012】
中間ギアは、ピニオンギア及び往復移動機構の間に配置される。中間ギアは、ピニオンギアの回転を減速して往復移動機構に伝達する。スプール軸のストローク量を、釣り糸の巻き取りピッチ及び中間ギアのモジュールによって除算した値は、60以上である。
【0013】
本スピニングリールは、スプール軸のストローク量を釣り糸の巻き取りピッチ及び中間ギアのモジュールによって除算した値を60以上になるように、構成される。この構成を用いて往復移動機構及びスプールを設計することによって、従来のスピニングリールの有する問題を好適に解決することができる。
【0014】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、スプール軸のストローク量を、釣り糸の巻き取りピッチ及び中間ギアのモジュールによって除算した値は、150以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、巻き取りピッチが1.0mm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、スプールは、外周に釣り糸が巻き付けられる糸巻き胴部と、糸巻き胴部の前端から径方向外側に延びる前フランジと、を有することが好ましい。この場合、前フランジの外径は60mm未満である。
【0017】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、中間ギアが、第1中間ギアと、第2中間ギアと、を有することが好ましい。第1中間ギアのモジュール及び第2中間ギアのモジュールのうちの小さい方のモジュールが、中間ギアのモジュールとして選択される。
【0018】
第1中間ギアは、スプール軸と平行な第1軸まわりに回転可能に設けられる。第1中間ギアは、ピニオンギアに噛み合う第1大径ギアと、第1大径ギアよりも小径であり第1大径ギアと一体回転する第1小径ギアと、を有する。
【0019】
第2中間ギアは、第1軸と平行な第2軸まわりに回転可能に設けられる。第2中間ギアは、第1小径ギアに噛み合う第2大径ギアと、第2大径ギアよりも小径であり第2大径ギアと一体回転する第2小径ギアと、を有する。往復移動機構は、第2小径ギアに噛み合う従動ギアと、従動ギアと一体的に回転するウォームシャフトと、を有する。
この構成によって、スプール軸の前後方向の移動を減速させながら釣り糸をスプールに巻き付けることができるので、比較的単純な構造で、従来のスピニングリールの有する問題を好適に解決することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスピニングリールは、従来のスピニングリールの有する問題を好適に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態によるスピニングリールの側面図。
【
図2】スピニングリールの側カバー及び本体ガードを取り外した側面図。
【
図4】オシレーティング機構を説明するための分解斜視図。
【
図6】釣り糸の巻き付け量を増加させるために用いられる構成を説明するための側面図。
【
図7】本発明のスピニングリール及び従来のスピニングリールにおける基本構造の各数値及びキャスティング・リーリングの総合評価を表にして示した図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態が採用されたスピニングリール1は、
図1に示すように、リール本体3と、ハンドル5と、スプール7と、ロータ9と、を備える。
図2に示すように、スピニングリール1は、ハンドル軸11と、駆動ギア13と、スプール軸15と、ピニオンギア17と、減速機構19と、オシレーティング機構21(往復移動機構の一例)と、をさらに備える。なお、
図2は、
図1に示すスピニングリール1の側カバー1a及び本体ガード1bが取り外された図である。
【0023】
図1に示すように、ハンドル5は、リール本体3に回転可能に支持される。本実施形態では、ハンドル5がリール本体3の左側に配置される場合の例が示される。ハンドル5はリール本体3の右側に配置されてもよい。ハンドル5は、ハンドル軸11に装着される。
【0024】
図2に示すように、ハンドル軸11は、リール本体3に回転可能に支持される。駆動ギア13は、ハンドル軸11と一体的に回転可能なようにハンドル軸11に装着される。駆動ギア13は、ピニオンギア17に噛み合う。
【0025】
スプール7には、釣り糸が巻き付けられる。
図2に示すように、スプール7は、スプール軸15とともにリール本体3に対して前後方向に移動可能に構成される。スプール7は、スプール軸15に連結される。例えば、スプール7は、図示しないドラグ機構を介して、スプール軸15の先端部に連結される。
【0026】
スプール7は、中心軸心X2を有する。スプール7がスプール軸15に連結された状態において、スプール7の中心軸心X2は、後述するスプール軸心X1と同軸である。
【0027】
図3に示すように、スプール7は、糸巻き胴部7aと、前フランジ7bと、スカート部7cと、を有する。糸巻き胴部7aの外周には、釣り糸が巻き付けられる。糸巻き胴部7aは筒状に形成される。前フランジ7bは、糸巻き胴部7aの前端から径方向外側に延びる。前フランジ7bは糸巻き胴部7aと一体に形成される。前フランジ7bは円板状に形成される。前フランジ7bは、外径Rを有する。前フランジ7bの外径Rは、前フランジ7bの外周面7b1によって定義される。前フランジ7bの径方向外側には、スプールカラー10が配置される(
図2を参照)。スプールカラー10は、前フランジ7bの外周面7b1を覆う。
【0028】
スカート部7cは、糸巻き胴部7aの後端に一体に形成される。スカート部7cは、後フランジ7c1と、筒状部7c2と、を有する。後フランジ7c1は、糸巻き胴部7aの後端から径方向外側に延びる。後フランジ7c1は糸巻き胴部7aと一体に形成される。後フランジ7c1は円板状に形成される。筒状部7c2は、後フランジ7c1の外周部から後方に延びる。筒状部7c2は後フランジ7c1と一体に形成される。筒状部7c2は筒状に形成される。
【0029】
図2に示すように、スプール軸15は、リール本体3に対して前後方向に移動可能に支持される。スプール軸15は、筒状のピニオンギア17の内周部に挿通される。スプール軸15は、オシレーティング機構21の作動によって、リール本体3に対して前後方向に往復移動する。
【0030】
スプール軸15は、スプール軸心X1を有する。前後方向及び軸方向は、スプール軸心X1が延びる方向である。径方向は、スプール軸心X1から離れる方向である。周方向及び回転方向は、スプール軸心X1まわりの方向である。
【0031】
オシレーティング機構21は、スプール軸15を前後方向に移動させる。オシレーティング機構21は、例えば、オシレーティング機構21は、ハンドル軸11の回転に連動してスプール軸15を前後方向に移動させる。オシレーティング機構21は、リール本体3の内部空間に配置される。
【0032】
図2及び
図4に示すように、オシレーティング機構21は、ウォームシャフト23と、スライダ25と、ウォームシャフトギア27(従動ギアの一例)と、を有する。ウォームシャフト23は、スプール軸15及びスライダ25を前後方向に移動させるために回転する。ウォームシャフト23は、スプール軸15と平行に配置される。ウォームシャフト23は、リール本体3に回転可能に支持される。ウォームシャフト23は、回転軸心W1を有する。
【0033】
ウォームシャフト23は、軸本体23aと、溝部23bと、を有する。軸本体23aは、一方向に長い軸部材である。軸本体23aは、回転軸心W1が延びる軸方向に延びる。溝部23bは、軸本体23aの外周面に設けられる。溝部23bには、後述する爪部材26が係合する。
【0034】
スライダ25は、スプール軸15に装着される。例えば、スライダ25は、スプール軸15の後端に固定される。スライダ25は、ウォームシャフト23の回転によって前後方向に移動する。
【0035】
例えば、
図4に示すように、スライダ25には爪部材26が装着される。爪部材26は、スプール軸15及びスライダ25に回動可能に装着される。爪部材26は、ウォームシャフト23の溝部23bに係合する。これにより、ウォームシャフト23が回転すると、爪部材26がウォームシャフト23の溝部23bに沿って移動する。これにより、スライダ25が前後方向に移動する。
【0036】
図2及び
図4に示すように、ウォームシャフトギア27は、ウォームシャフト23に装着される。例えば、ウォームシャフトギア27は、回転軸心W2を有する。ウォームシャフトギア27の回転軸心W2がウォームシャフト23の回転軸心W1と同心になるように、ウォームシャフトギア27はウォームシャフト23に装着される。ウォームシャフトギア27は、ウォームシャフト23と一体的に回転する。
【0037】
図4に示すように、ウォームシャフトギア27は、ギア本体27aと、挿通孔27bと、を有する。ギア本体27aは、円板状に形成される。ギア本体27aは、減速機構19の第2小径ギア33b(後述する)に噛み合う。
【0038】
挿通孔27bは、ギア本体27aに設けられる。例えば、挿通孔27bは、ウォームシャフトギア27の回転軸心W2が延びる軸方向において、ギア本体27aを貫通する。挿通孔27bには、ウォームシャフト23が挿通される。この状態において、ウォームシャフト23は、ウォームシャフトギア27と一体的に回転する。
【0039】
図2に示すように、ピニオンギア17は筒状に形成される。ピニオンギア17は、リール本体3に回転可能に支持される。ピニオンギア17は、スプール軸15の径方向外側に配置される。ピニオンギア17は、スプール軸15に対して回転する。ピニオンギア17は、スプール軸心X1まわりに回転する。
【0040】
図5に示すように、減速機構19は、ピニオンギア17の回転を減速してオシレーティング機構21に伝達する。
図5では、各ギアのギア歯は省略されている。各ギアが互いに噛み合う部分には、ハッチングが施されている。
【0041】
減速機構19は、ピニオンギア17及びオシレーティング機構21の間に配置される。例えば、減速機構19は、ピニオンギア17及びウォームシャフトギア27の間に配置される。減速機構19は、第1中間ギア31と、第2中間ギア33と、を有する。
【0042】
第1中間ギア31は、スプール軸心X1と平行な第1軸A1まわりに回転可能に設けられる。第1中間ギア31は、リール本体3に回転可能に支持される。第1中間ギア31は、第1モジュールM1を有する。第1モジュールM1は、第1中間ギア31のピッチ円の直径d1を、第1中間ギア31の歯数z1で除算することによって算出される。この算出式は、「M1=d1/z1」によって表現される。
図5では、第1中間ギア31の歯数z1を示す引出線は、二点破線にて示されている。
【0043】
第1中間ギア31は、第1大径ギア31aと、第1小径ギア31bと、を有する。第1大径ギア31aは、ピニオンギア17に噛み合う。第1大径ギア31aの回転軸心は、第1軸A1である。第1小径ギア31bは、第1大径ギア31aよりも小径に形成される。第1小径ギア31bは、第1大径ギア31aと一体に形成され、第1大径ギア31aと一体的に回転する。第1小径ギア31bの回転軸心は、第1軸A1である。
【0044】
第2中間ギア33は、第1軸A1と平行な第2軸A2まわりに回転可能に設けられる。第2中間ギア33は、リール本体3に回転可能に支持される。第2中間ギア33は、第2モジュールM2を有する。第2モジュールM2は、第2中間ギア33のピッチ円の直径d2を、第1中間ギア31の歯数z2で除算することによって算出される。この算出式は、「M2=d2/z2」によって表現される。
図5では、第2中間ギア33の歯数z2を示す引出線は、二点破線にて示されている。
【0045】
第2中間ギア33は、第2大径ギア33aと、第2小径ギア33bと、を有する。第2大径ギア33aは、第1小径ギア31bに噛み合う。第2大径ギア33aの回転軸心は、第2軸A2である。第2小径ギア33bは、第2大径ギア33aよりも小径に形成される。第2小径ギア33bは、第2大径ギア33aと一体に形成され、第2大径ギア33aと一体的に回転する。第2小径ギア33bの回転軸心は、第2軸A2である。第2小径ギア33bは、ウォームシャフトギア27に噛み合う。
【0046】
ハンドル5の回転操作によってハンドル軸11が回転すると、駆動ギア13が回転する。駆動ギア13の回転は、ピニオンギア17に伝達される。ピニオンギア17の回転は、上述した減速機構19を介してウォームシャフトギア27に伝達される。ウォームシャフトギア27の回転は、ウォームシャフト23に伝達される。ウォームシャフト23の回転によって、スライダ25及びスプール軸15が前後方向に移動する。
【0047】
図1及び
図2に示すように、ロータ9は、スプール7に釣り糸を巻き付けるために用いられる。ロータ9は、リール本体3の前部に配置される。ロータ9は、リール本体3に対して回転可能に構成される。ロータ9は、ピニオンギア17の径方向外側に配置される。ロータ9は、ピニオンギア17に対して一体的に回転可能に装着される。
【0048】
ハンドル5の回転操作によってハンドル軸11が回転すると、駆動ギア13が回転する。駆動ギア13の回転は、ピニオンギア17に伝達される。ロータ9は、ピニオンギア17の回転に連動して回転する。
【0049】
上記の構成を有するスピニングリール1は、以下のように構成される。
図3及び
図6に示す前フランジ7bの外径Rは、60mm未満である。例えば、前フランジ7bの外径Rは、35mm以上且つ60mm未満であることが好ましい。前フランジ7bの外径Rは、40mm以上56mm未満であることがより好ましい。前フランジ7bの外径Rは、前フランジ7bの外周面7b1によって定義される。
【0050】
釣り糸の巻き取りピッチPは、1.0mm以下である。例えば、釣り糸の巻き取りピッチPは、0.4mm以上且つ1.0mm以下であることが好ましい。より望ましくは、釣り糸の巻き取りピッチPは、0.55mm以上0.90mm以下であることが好ましい。釣り糸の巻き取りピッチPは、糸巻き胴部7a上において互いに隣接する釣り糸の軸方向間隔である。
【0051】
なお、糸巻き取りピッチPは、オシレーティング機構21の構造によっては一定でない。このため、ここでは、平均糸巻き取りピッチが、糸巻き取りピッチPとして用いられる。平均糸巻き取りピッチは、往復のストローク距離(2S)を、スプール7が前後に一往復する間にロータ9が回転する回数(N)によって除算した値(2S/N)である。
【0052】
スプール軸15のストローク量Sを、釣り糸の巻き取りピッチPと、第1中間ギア31の第1モジュールM1及び第2中間ギア33の第2モジュールM2のうちの小さい方のモジュールMとによって、除算した値(S/(P・M))は、60以上である。スプール軸15のストローク量Sを、釣り糸の巻き取りピッチPと、第1中間ギア31の第1モジュールM1及び第2中間ギア33の第2モジュールM2のうちの小さい方のモジュールMとによって、除算した値(S/(P・M))は、150以下である。これら関係は、関係式「60≦(S/(P・M))≦150」によって表現される。
【0053】
図6に示すように、スプール軸15のストローク量Sは、オシレーティング機構21によってスプール軸15が前後方向に移動する量である。スプール軸15のストローク量Sは、12mm以上且つ25mm以下であることが好ましい。スプール軸15のストローク量Sは、13mm以上23mm以下であることがより好ましい。
【0054】
図7は、本発明を採用したスピニングリール1(採用機種1及び2)、採用機種1及び2の諸元を変更することによって本発明を採用可能なスピニングリール1(比較機種3)、及び、中間ギアまたは中間ギアに相当するギアを有する従来のスピニングリール(従来機種1~3)において、上記の各数値及びキャスティング・リーリングの総合評価を表にしたものである。
【0055】
図7の「キャスティング・リーリングの総合評価」は、複数の試験者が各スピニングリールの「サイズカテゴリA,B,C」ごとにキャスティングとリーリング(釣り糸巻き取り)とを行った際の静粛性・伸び感、巻取の安定性等を一対比較試験法で官能評価し、順位付けしたものである。なお、「キャスティング・リーリングの総合評価」の符号は、アルファベットがサイズカテゴリを示し、数値は評価順を示している。
【0056】
例えば、サイズカテゴリAの中では、採用機種1の総合評価A1は、従来機種1の総合評A2と比較して、評価が高い。サイズカテゴリBの中では、採用機種2の総合評価B1は、従来機種2の総合評価B2と比較して、評価が高い。サイズカテゴリCの中では、比較機種3の総合評価C1は、従来機種3の総合評価C2と比較して、評価が高い。このように、採用機種1、採用機種2、及び比較機種3の総合評価A1,B1,C1は、各サイズカテゴリA,B,Cの中で従来機種の総合評価A2,B2,C2と比べて高評価を得ている。
【0057】
上述したスピニングリール1は、以下のような特徴を有する。スプール軸15のストローク量Sを釣り糸の巻き取りピッチP及び中間ギア31,33のモジュールMによって除算した値(S/(P・M))が60以上になるように、スピニングリール1は構成される。この構成を用いてオシレーティング機構21及びスプール7を設計することによって、従来のスピニングリールの有する問題を好適に解決することができる。
【0058】
スピニングリール1では、スプール軸15のストローク量Sを釣り糸の巻き取りピッチP及び中間ギア31,33のモジュールMによって除算した値(S/(P・M))は150以下である。スピニングリール1では、巻き取りピッチPが1.0mm以下である。スピニングリール1では前フランジ7bの外径Rは60mm未満である。スピニングリール1は第1中間ギア31及び第2中間ギア33を有するので、スプール軸15を前後方向に減速しながら釣り糸を糸巻き胴部7aに巻き付けることができる。これにより、比較的単純な構造で、従来のスピニングリールの有する問題を好適に解決することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、スピニングリールに利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 スピニングリール
3 リール本体
5 ハンドル
7 スプール
7a 糸巻き胴部
7b 前フランジ
15 スプール軸
17 ピニオンギア
21 オシレーティング機構
23 ウォームシャフト
25 スライダ
27 ウォームシャフトギア
31 第1中間ギア
31a 第1大径ギア
31b 第1小径ギア
33 第2中間ギア
33a 第2大径ギア
33b 第2小径ギア
d1 第1中間ギアのピッチ円の直径
d2 第2中間ギアのピッチ円の直径
M モジュール
M1 第1中間ギアのモジュール
M2 第2中間ギアのモジュール
P 巻き取りピッチ
R 前フランジの外径
S スプール軸のストローク量
z1 第1中間ギアの歯数
z2 第2中間ギアの歯数