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特開2023-48767ロックボルト及びロックボルトの施工方法
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  • 特開-ロックボルト及びロックボルトの施工方法 図1
  • 特開-ロックボルト及びロックボルトの施工方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048767
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】ロックボルト及びロックボルトの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20230331BHJP
   E21D 9/00 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
E21D20/00 K
E21D9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158261
(22)【出願日】2021-09-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 学会名:令和3年度土木学会全国大会第76回年次学術講演会、掲載アドレス:https://confit.atlas.jp/guide/event/jsce2021/subject/VI-72/tables?cryptoId=(第VI部門 技術開発(1)[VI-72]光ファイバ実装ロックボルトの開発)、掲載日:令和3年8月2日、学会名:令和3年度土木学会全国大会第76回年次学術講演会(Web会議システム「Zoom」を使用したライブ形式(リアルタイムでの発表)で実施。第VI部門 技術開発(1) 2021年9月9日(木)9:30~10:50 VI-11(Room36) [VI-72]光ファイバ実装ロックボルトの開発)、開催日:令和3年9月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】永谷 英基
(72)【発明者】
【氏名】那須 郁香
(72)【発明者】
【氏名】平 陽兵
(72)【発明者】
【氏名】荒木 信博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
(57)【要約】
【課題】地盤に埋設された管状部材を効率的に除去する。
【解決手段】地山1に設けられた掘削孔2内に設置されるロックボルト100は、掘削孔2内に軸方向に沿って配置される棒状本体部10と、棒状本体部10に軸方向に沿って貼り付けられる光ファイバケーブル20と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山に設けられた掘削孔内に設置されるロックボルトであって、
前記掘削孔内に軸方向に沿って配置される棒状本体部と、
前記棒状本体部に軸方向に沿って貼り付けられる光ファイバケーブルと、を備える、
ロックボルト。
【請求項2】
前記光ファイバケーブルは、前記棒状本体部の先端において折り返される折返部と、前記棒状本体部の基端から前記折返部に向かって延びる第1貼付部と、前記折返部から前記棒状本体部の前記基端に向かって延びる第2貼付部と、を有する、
請求項1に記載のロックボルト。
【請求項3】
前記棒状本体部の前記先端に設けられ、前記光ファイバケーブルの前記折返部を保持する保持部をさらに備える、
請求項2に記載のロックボルト。
【請求項4】
前記保持部は、前記棒状本体部の前記先端が挿入される挿入穴を有する、
請求項3に記載のロックボルト。
【請求項5】
前記棒状本体部の先端において前記光ファイバケーブルを保持する保持部をさらに備える、
請求項1に記載のロックボルト。
【請求項6】
前記棒状本体部を前記掘削孔の中央に位置させるスペーサをさらに備え、
前記スペーサは、前記棒状本体部の外周面に取り付けられる取付部と、前記取付部から前記掘削孔の内壁面に向かって延びる延出部と、を有し、
前記取付部は、前記棒状本体部と前記光ファイバケーブルとの間に配置される、
請求項1から5の何れか1つに記載のロックボルト。
【請求項7】
地山に複数の掘削孔を形成する工程と、
棒状に形成された棒状本体部と、前記棒状本体部に軸方向に沿って貼り付けられる光ファイバケーブルと、を備えたロックボルトを、複数の前記掘削孔にそれぞれ挿入する工程と、
前記掘削孔に挿入された前記ロックボルトの前記光ファイバケーブルの端部と、別の前記掘削孔に挿入された前記ロックボルトの前記光ファイバケーブルの端部と、を接続する工程と、含む
ロックボルトの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロックボルト及びロックボルトの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロックボルトは、法面(斜面)の補強部材やトンネルの支保部材として広く用いられている。特許文献1には、ロックボルトによる補強効果を確認するために、ロックボルトの軸力を測定可能とした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-5180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、軸力を検出する検出器として、ひずみゲージが用いられている。ひずみゲージは、貼り付けられた箇所における軸力を検出するものであって、ロックボルトの軸方向における軸力の分布を計測することはできないため、ロックボルトが設けられる地山の挙動を精度よく把握することは難しい。
【0005】
複数のひずみゲージをロックボルトに設けることによって軸力の分布を計測することも考えられるが、設置されるひずみゲージの数に応じて配線が増え、さらには複数の信号処理装置が必要となることから、配策作業が煩雑になるとともに計測に要するコストが増大するおそれがある。
【0006】
本発明は、ロックボルトが設けられる地山の挙動を精度よく容易に把握することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、地山に設けられた掘削孔内に設置されるロックボルトであって、前記掘削孔内に軸方向に沿って配置される棒状本体部と、前記棒状本体部に軸方向に沿って貼り付けられる光ファイバケーブルと、を備える。
【0008】
また、本発明は、ロックボルトの施工方法であって、地山に複数の掘削孔を形成する工程と、棒状に形成された棒状本体部と、前記棒状本体部に軸方向に沿って貼り付けられる光ファイバケーブルと、を備えたロックボルトを、複数の前記掘削孔にそれぞれ挿入する工程と、前記掘削孔に挿入された前記ロックボルトの前記光ファイバケーブルの端部と、別の前記掘削孔に挿入された前記ロックボルトの前記光ファイバケーブルの端部と、を接続する工程と、含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロックボルトが設けられる地山の挙動を精度よく容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るロックボルトの構成を示す図である。
図2図1のA-A線に沿う断面を示す断面図である。
図3図1のB-B線に沿う断面を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るロックボルトの施工方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るロックボルト及びロックボルトの施工方法について説明する。
【0012】
まず、図1~3を参照して、本発明の実施形態に係るロックボルト100の構成について説明する。ここでは、ロックボルト100が、地山1の安定化のために、法面1aに設けられた掘削孔2内に補強部材として挿入される場合について説明する。図1は、掘削孔2内に挿入されたロックボルト100を示した図であり、ロックボルト100の主な構成を示している。図2は、図1のA-A線に沿う断面を示す断面図であり、図3は、図1のB-B線に沿う断面を示す断面図である。
【0013】
ロックボルト100は、棒状に形成された棒状本体部10と、棒状本体部10に軸方向に沿って貼り付けられた光ファイバケーブル20と、棒状本体部10の先端において光ファイバケーブル20を保持する保持部30と、棒状本体部10を掘削孔2の略中央に位置させるために設けられるスペーサ40と、棒状本体部10が挿通する挿通孔15aが形成された支圧板15と、棒状本体部10に螺合されることで支圧板15を法面1aに対して押し付けるナット16と、を備える。
【0014】
棒状本体部10は、表面の節が螺旋状に形成された、いわゆる、ネジ節鉄筋であり、その外周面には、中心軸を挟んでネジ山が形成された一対のネジ部11が設けられているとともに、ネジ山が形成されていない平坦部12が中心軸を挟んで平行に設けられている。掘削孔2が長い場合、棒状本体部10は、複数のネジ節鉄筋が図示しないカプラによって連結されることにより形成される。
【0015】
光ファイバケーブル20は、図示しない光ファイバと鋼製線材とが樹脂材で覆われた断面形状が略扁平状の線状部材であり、掘削孔2内に挿入される棒状本体部10の先端側において折り返される折返部21と、掘削孔2の開口端側である棒状本体部10の基端側から折返部21に向かって延びる第1貼付部22と、折返部21から棒状本体部10の基端側に向かって延びる第2貼付部23と、を有する。
【0016】
第1貼付部22及び第2貼付部23は、棒状本体部10の中心軸を挟んで対向する一対の平坦部12に軸方向に沿ってそれぞれ貼り付けられる。つまり、第1貼付部22及び第2貼付部23は、棒状本体部10の中心軸を挟んで対向して配置される。棒状本体部10に対する第1貼付部22及び第2貼付部23の貼り付けは、例えばエポキシ樹脂等の接着剤を介して行われる。
【0017】
第1貼付部22の端部22aと第2貼付部23の端部23aとは、図1に示されるように、支圧板15に形成された貫通孔15bを通じて掘削孔2の外側に引き出され、他のロックボルト100の光ファイバケーブル20と連結された後、後述の計測装置50に接続される。
【0018】
このように棒状本体部10に貼り付けられた光ファイバケーブル20の光ファイバには、入射されたパルス光を僅かに後方に散乱させる性質があり、この性質を利用することにより、光ファイバにおける複数位置での歪みを計測することが可能である。
【0019】
具体的には、散乱光の周波数は光ファイバの歪みに依存するため、パルス光を光ファイバに入射した際に生じる散乱光の周波数を計測することにより光ファイバの歪みを計測することができる。また、光ファイバにパルス光を入射してから光ファイバ内で発生した散乱光が入射位置に戻るまでの時間を測定することにより、散乱光が発生した位置、すなわち光ファイバに歪みが生じた位置を計測することができる。
【0020】
したがって、光ファイバケーブル20を棒状本体部10に軸方向に沿って貼り付けておくことによって、棒状本体部10の軸方向における軸力の分布を計測することが可能となり、結果として、棒状本体部10が挿入される掘削孔2周囲の地山1の緩みや変位といった挙動を、光ファイバケーブル20に生じた歪みを計測することによって把握することができる。
【0021】
また、光ファイバケーブル20の第1貼付部22と第2貼付部23とを、上述のように、棒状本体部10の中心軸を挟んで対向して配置しておくことによって、第1貼付部22で検出された歪みと第2貼付部23で検出された歪みを比較することで、棒状本体部10が軸方向に変形した状態であるのか、あるいは曲げ変形状態であるのかを特定すること、すなわち、棒状本体部10の周囲の地山1の変位方向や変位位置といった地山1の挙動を精度よく特定することが可能である。
【0022】
保持部30は、図1及び図2に示すように、光ファイバケーブル20の折返部21を保持するために設けられた部材であり、棒状本体部10の先端を覆うキャップ部31と、キャップ部31から棒状本体部10の平坦部12に沿って延びる一対のスロープ部35と、を有する。
【0023】
キャップ部31は、棒状本体部10の先端が挿入される挿入穴33が形成された有底筒状部材であり、先端に向かって外径が放射線状に細くなる鈍頭円錐状(略半球状の先端を有する円錐状)に形成されている。挿入穴33は、雌ネジ穴となっており、棒状本体部10の先端がキャップ部31に螺着されることで、棒状本体部10の先端はキャップ部31によって覆われた状態となる。なお、挿入穴33は雌ネジ穴ではなく、棒状本体部10の先端が挿入または嵌入される穴、例えば、棒状本体部10の断面形状に合わせて二面幅を有するように形成された非貫通孔であってもよい。
【0024】
また、キャップ部31の外周面には、光ファイバケーブル20の折返部21が収容される収容溝32が軸方向に沿って設けられる。具体的には、収容溝32は、図2に示すように、挿入穴33が開口する端面34から先端に向かって中心軸を挟んで形成された一対の溝であり、キャップ部31の先端部において一対の溝が連結されることで1つの溝となっている。収容溝32は、キャップ部31に対して光ファイバケーブル20を折り返して貼り付ける際に、貼り付け作業が円滑に行われるよう、光ファイバケーブル20が所定の貼付位置からずれてしまわないように光ファイバケーブル20を案内するガイド部として機能する。
【0025】
スロープ部35は、キャップ部31の収容溝32の底面と棒状本体部10の平坦部12との間に生じる段差を解消するために設けられた部材であり、収容溝32と平坦部12とを接続するように形成された傾斜溝36を有する。
【0026】
傾斜溝36は、図2に示すように、一端側の径方向における高さが収容溝32の底面、すなわち、キャップ部31において光ファイバケーブル20が貼り付けられる面とほぼ同じ高さであり、他端側、すなわち、キャップ部31から離れる方向に向かって径方向における高さが徐々に低くなるように形成されている。
【0027】
このような傾斜溝36を有するスロープ部35をキャップ部31の端面34に設けておくことにより、キャップ部31と棒状本体部10との間に架け渡される部分において光ファイバケーブル20に極端な折れ曲がり部が生じてしまうことが防止される。つまり、キャップ部31から棒状本体部10に沿って延びて設けられる一対のスロープ部35は、キャップ部31において光ファイバケーブル20が貼り付けられる面と棒状本体部10において光ファイバケーブル20が貼り付けられる面との段差(高低差)を解消する段差解消部として機能する。
【0028】
キャップ部31の端面34に対向する各スロープ部35の端面37には、スロープ部35をキャップ部31に組み付けるための凸部37aが突出して形成されている。一対のスロープ部35は、棒状本体部10の先端がキャップ部31に螺着された後、キャップ部31の端面34に形成された一対の凹部34aに、凸部37aがそれぞれ差し込まれることによってキャップ部31に対して組み付けられる。なお、キャップ部31は、図1に示されるように、棒状本体部10の平坦部12の延長線上に収容溝32が位置した状態となるように棒状本体部10に対して固定される。
【0029】
このように保持部30に形成された収容溝32及び傾斜溝36に沿って光ファイバケーブル20の折返部21が貼り付けられることによって、光ファイバケーブル20は、棒状本体部10の先端部において、極端に折れ曲がってしまうことなく比較的緩やかな曲率で保持される。また、キャップ部31は、光ファイバケーブル20の折返部21が棒状本体部10の先端から外れてしまわないように、棒状本体部10の先端において折返部21を収容溝32によって保持している。
【0030】
このため、比較的細い棒状本体部10に対して光ファイバケーブル20を往復して貼り付けた場合であっても、折返部21において無用な歪みが検知されたり光が遮断されたりすることが回避されるとともに、棒状本体部10を掘削孔2内に挿入する際に光ファイバケーブル20が棒状本体部10の先端から外れてしまうことが回避されることから、棒状本体部10に沿って貼り付けられた光ファイバケーブル20に生じた歪みを計測することによって、棒状本体部10が挿入される掘削孔2周囲の地山1の挙動を精度よく把握することが可能である。
【0031】
なお、掘削孔2内に棒状本体部10が挿入される際に、掘削孔2の内壁面に光ファイバケーブル20の折返部21が当たり損傷してしまうことを防止するために、折返部21が収容された収容溝32及び傾斜溝36には、エポキシ樹脂等の樹脂材が充填される。
【0032】
スペーサ40は、棒状本体部10を掘削孔2の略中央に位置させるために設けられる部材であり、棒状本体部10の外周面に取り付けられる取付部41と、取付部41から掘削孔2の内壁面に向かって延びる延出部42と、を有する。なお、図示省略されているが、スペーサ40は、2つ以上設けられている。
【0033】
延出部42は、一対の取付部41間に設けられた帯状の金属板であり、周方向において略均等に複数、例えば4つ配置される。延出部42は、径方向内側に向かう荷重が作用すると復元力を生じるように形成されており、掘削孔2内に棒状本体部10が挿入される際、掘削孔2の中心軸に対して棒状本体部10の中心軸が大幅にずれてしまうことがないように、掘削孔2内における棒状本体部10の位置決めを行う位置決め部材として機能する。
【0034】
取付部41は、図3に示すように、断面が略C字状に形成された帯状の金属板であり、棒状本体部10に形成された平坦部12を挟み込むようにして棒状本体部10の外周面に取り付けられる。
【0035】
このようにスペーサ40の取付部41が棒状本体部10に取り付けられる部分では、取付部41が棒状本体部10を把持する力が作用することによって、平坦部12と取付部41との間にはほとんど隙間がない状態となる。このため、この部分においても光ファイバケーブル20を平坦部12に貼り付けると、光ファイバケーブル20がスペーサ40の取付部41により押圧されることで、無用な歪みが検知されてしまったり光が遮断されたりするおそれがある。
【0036】
したがって、この部分では、光ファイバケーブル20を平坦部12に貼り付けることなく、図3に示すように、径方向において取付部41の外側の面に光ファイバケーブル20を貼り付けている。換言すれば、スペーサ40の取付部41は、平坦部12と光ファイバケーブル20との間に配置される。
【0037】
次に、上記構成のロックボルト100の施工方法について、図1及び図4を参照して説明する。図4は、複数のロックボルト100が設置された法面1aを、法面1aに対して垂直な方向から見た図である。なお、図1に示される断面図は、図4のC-C線に沿う断面に相当する。
【0038】
まず、法面1aにロックボルト100を挿入するための掘削孔2が複数削孔される(削孔工程)。なお、掘削孔2は、法面1aにコンクリートを吹き付けることによって法枠工を形成した後に行われてもよい。
【0039】
続いて、掘削孔2内にセメントミルクやグラウト等の充填材3を充填した後、上述のようにスペーサ40と保持部30とが予め取り付けられるとともに光ファイバケーブル20が貼り付けられた棒状本体部10を、掘削孔2内へと挿入する(挿入工程)。なお、充填材3は、棒状本体部10が掘削孔2内に挿入された後に充填されてもよい。
【0040】
挿入工程では、光ファイバケーブル20の第1貼付部22と第2貼付部23とが予め決められた方向に向けて配置されるように、例えば、第1貼付部22が上方を向き、第2貼付部23が下方を向くようにして棒状本体部10は掘削孔2内へと挿入される。
【0041】
このように第1貼付部22及び第2貼付部23の向きを予め決めておくことによって、第1貼付部22で検出された歪みと第2貼付部23で検出された歪みとの間に差異が生じた場合に、棒状本体部10の変形方向及び変形位置を特定することができるため、棒状本体部10の周囲の地山1の変位方向や変位位置を容易に把握することが可能となる。
【0042】
次に、支圧板15の挿通孔15aに、法面1aから突出した棒状本体部10を挿通することによって支圧板15を設置し、さらにナット16を棒状本体部10に螺合することによって支圧板15を法面1aに対して仮固定する。
【0043】
そして、充填材3が十分に固化した後、ナット16を所定のトルクで締め付けることにより、法面1aに対して支圧板15が押し付けられた状態となり、ロックボルト100の設置が完了する。
【0044】
ロックボルト100の設置が完了した後、続いて、光ファイバケーブル20の接続が行われる(接続工程)。
【0045】
法面1aへのロックボルト100の設置は、一般的に上方側から下方へ向かって順に行われる。このため、まず、上方に並べて設置されたロックボルト100の光ファイバケーブル20の接続が行われる。
【0046】
具体的には、隣り合って設置されたロックボルト100から引き出された第1貼付部22の端部22aと第2貼付部23の端部23aとがコネクタ25を介して接続される。なお、第1貼付部22の端部22aと第2貼付部23の端部23aとの接続は、融着により行われてもよい。
【0047】
下方側のロックボルト100の設置が完了すると、上方側のロックボルト100から引き出された第2貼付部23の端部23aと下方側のロックボルト100から引き出された第1貼付部22の端部22aとがコネクタ25を介して接続される。
【0048】
このように横方向と上下方向とにおいて、光ファイバケーブル20を順次接続することによって、法面1aに設置されたすべてのロックボルト100の光ファイバケーブル20は、単一のケーブルとして一体的に形成されることになる。なお、光ファイバケーブル20を接続する工程は、充填材3が固化する前に行われてもよい。
【0049】
一体化された光ファイバケーブル20の一端となる第1貼付部22の端部22aは、第1接続ケーブル27を介して計測装置50に接続され、他端となる第2貼付部23の端部23aは、第2接続ケーブル28を介して計測装置50に接続される。
【0050】
計測装置50は、光源、光検出器及び演算部が内蔵された装置であり、パルス光を光ファイバに入射することが可能であるとともに、パルス光を光ファイバに入射した際に生じる散乱光の周波数及び散乱光が入射位置に戻るまでの時間を計測することによって光ファイバに生じた歪み及び歪みが生じた位置を計測することが可能な装置である。このような計測装置50と複数のロックボルト100とによって、地山1の挙動を監視可能なロックボルトシステム200が構築される。
【0051】
なお、計測装置50には、一体化された光ファイバケーブル20の何れか一方の端部が接続されていればよく、この場合、他方の端部は、端面において反射が生じないように油脂、シリコン等のシール材によって閉塞処理される。
【0052】
このような施工方法により、光ファイバケーブル20を備えたロックボルト100を法面1aに複数配置することによって、法面1a全体における緩みや変位を把握することが可能である。
【0053】
また、複数配置されるロックボルト100の光ファイバケーブル20を一体化することによって、ケーブルの配策作業が容易になるとともに、計測装置50を複数用意する必要がなくなることで、計測システムを簡素化することができるとともに、計測に要するコストを低減させることができる。
【0054】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0055】
本実施形態に係るロックボルト100は、掘削孔2内に軸方向に沿って配置される棒状本体部10と、棒状本体部10に軸方向に沿って貼り付けられる光ファイバケーブル20と、を備える。
【0056】
このように、歪みの分布を計測可能な光ファイバケーブル20を、棒状本体部10に沿って貼り付けておくことによって、ロックボルト100の軸方向における軸力の分布を計測することが可能となり、結果として、ロックボルト100が設けられる地山1の挙動を精度よく容易に把握することができる。
【0057】
また、本実施形態に係るロックボルト100の施工方法では、掘削孔2に挿入されたロックボルト100の光ファイバケーブル20と、別の掘削孔2に挿入されたロックボルト100の光ファイバケーブル20と、が接続され、複数配置されるロックボルト100の光ファイバケーブル20が一体化される。
【0058】
このように複数配置されるロックボルト100の光ファイバケーブル20を一体化することによって、ケーブルの配策作業が容易になるとともに、光ファイバケーブル20が接続される計測装置50を複数用意する必要がなくなることで、計測システムを簡素化することができるとともに、計測に要するコストを低減させることができる。
【0059】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0060】
上記実施形態では、棒状本体部10は、表面の節が螺旋状に形成されたネジ節鉄筋である。これに代えて、棒状本体部10は、軸方向に延びるリブとリブに交差する節とを有する一般的な異形鉄筋であってもよい。この場合、先端には、キャップ部31を取り付けるためのネジ部が形成され、基端には、ナット16を取り付けるためのネジ部が形成される。なお、棒状本体部10は、キャップ部31に嵌入される構成、すなわち、キャップ部31の挿入穴33が棒状本体部10の外径よりも僅かに小さな内径を有する穴となっている構成であってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、ロックボルト100は、法面1aに補強部材として挿入される。これに代えて、ロックボルト100は、例えばNATM工法によって構築されるトンネルの外壁に支保部材として挿入されるものであってもよい。この場合も、光ファイバケーブル20を備えたロックボルト100をトンネルの外壁に沿って複数配置することによって、トンネルが構築される地盤の緩みや変位を精度よく把握することが可能である。
【0062】
また、上記実施形態では、複数配置されたロックボルト100の光ファイバケーブル20は一体化され、1つの計測装置50に接続されている。これに代えて、ロックボルト100の光ファイバケーブル20を互いに接続することなく、1つのロックボルト100に対して1つの計測装置50が設けられていてもよい。また、法面1aが比較的広大である場合は、ロックボルト100を複数のグループに分け、グループ毎に光ファイバケーブル20を一体化し、グループ毎に計測装置50を設けてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、全てのロックボルト100が光ファイバケーブル20を備えている。これに代えて、一つ置きや二つ置きに光ファイバケーブル20を備えたロックボルト100を配置し、それ以外のロックボルトには、光ファイバケーブル20を設けないようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、光ファイバケーブル20が、棒状本体部10の先端で折り返すようにして、棒状本体部10の中心軸を挟んで対向して配置されている。これに代えて、光ファイバケーブル20は、棒状本体部10の先端で折り返されることなく、棒状本体部10の先端に、その終端部が配置されていてもよい。この場合、光ファイバケーブル20の終端部は、保持部によって保持される。なお、この場合、折返部21が設けられないことから、保持部は、上述のような形状の保持部30である必要はなく、棒状本体部10の先端において光ファイバケーブル20の終端部を保持できればどのような構成であってもよく、例えば、棒状本体部10の先端に塗布されたエポキシ樹脂を保持部としてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、光ファイバケーブル20の第1貼付部22及び第2貼付部23が、棒状本体部10の中心軸を挟んで対向して配置されている。これに加えて、第1貼付部22及び第2貼付部23と重ならないように、例えば、周方向において第1貼付部22と第2貼付部23との間の中間にさらに光ファイバケーブルを軸方向に沿って配置してもよい。このように棒状本体部10の周方向に所定の間隔をあけて、複数の光ファイバケーブルが軸方向に沿って配置された構成とすることによって、各光ファイバケーブルで検出された歪みを比較することで、棒状本体部10が軸方向に変形した状態であるのか、あるいは曲げ変形状態であるのかを特定すること、すなわち、棒状本体部10の周囲の地山1の変位方向や変位位置といった地山1の挙動を精度よく特定することが可能である。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0067】
100・・・ロックボルト
1・・・地山
2・・・掘削孔
10・・・棒状本体部
20・・・光ファイバケーブル
30・・・保持部
33・・・挿入穴
40・・・スペーサ
41・・・取付部
42・・・延出部
図1
図2
図3
図4