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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048770
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】タイヤ構成部材の加圧装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/26 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
B29D30/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158269
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井柳 智
(72)【発明者】
【氏名】上見 隆規
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AR02
4F215VA01
4F215VL11
4F215VP11
4F215VR03
(57)【要約】
【課題】メンテナンスし易いタイヤ構成部材の加圧装置を提供する。
【解決手段】タイヤ構成部材の加圧装置20は、軸部材30と、筒状に形成されて軸部材30を取り囲んで配置され、筒軸方向が軸部材30の軸方向と平行に配置されたシリンダ52と、シリンダ52の外周に沿って配置され、シリンダ52に対して周方向へ相対移動可能に連結された筒状の加圧ロール54と、軸部材30において、軸部材30の軸方向と直交する方向に沿って形成され、軸部材の側面に開口した挿入孔Hと、一端が挿入孔Hへ挿入され他端がシリンダ52に嵌合された状態で移動してシリンダ52を動かすシャフト60と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材と、
筒状に形成されて前記軸部材を取り囲んで配置され、筒軸方向が前記軸部材の軸方向と平行に配置されたシリンダと、
前記シリンダの外周に沿って配置され、前記シリンダに対して周方向へ相対移動可能に連結された筒状の加圧ロールと、
前記軸部材において、前記軸部材の軸方向と直交する方向に沿って形成され、前記軸部材の側面に開口した挿入孔と、
一端が前記挿入孔へ挿入され他端が前記シリンダに嵌合された状態で移動して前記シリンダを動かすシャフトと、
を備えたタイヤ構成部材の加圧装置。
【請求項2】
前記挿入孔へ空気を供給する供給装置を備え、
前記シャフトは、前記挿入孔において前記挿入孔の底と前記シャフトの一端との間の空間へ供給される空気の圧力によって前記挿入孔の内部でスライドして前記軸部材からの突出長さが変わる、請求項1に記載のタイヤ構成部材の加圧装置。
【請求項3】
前記シリンダは、前記軸部材の軸方向に沿って複数並べられて形成され、
前記加圧ロール、前記挿入孔及び前記シャフトは、前記シリンダごとにそれぞれ設けられ、
前記供給装置は、前記シリンダごとに、供給する空気の圧力を調整可能とされている、請求項2に記載のタイヤ構成部材の加圧装置。
【請求項4】
前記挿入孔は、前記軸部材の一方側の側面に開口した第一挿入孔と、前記一方側と反対側の側面に開口した第二挿入孔と、を備え、前記シャフトは、前記第一挿入孔及び前記第二挿入孔のそれぞれに挿入され、それぞれ前記シリンダと嵌合している、
請求項1~3の何れか1項に記載のタイヤ構成部材の加圧装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ構成部材の加圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、タイヤ構成部材を複数の加圧ロールにより加圧する加圧装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-202589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の加圧装置では、加圧ロールが軸部材の周囲で変位して、タイヤ構成部材を加圧する。軸部材には加圧穴が形成されており、この加圧穴から突出する移動部材が加圧ロールを加圧することにより、加圧ロールが変位する。
【0005】
ここで、移動部材の先端は、軸部材の外側において、加圧ロールの内周に連結された支持部に固定されている。この加圧装置をメンテナンスする際には、加圧ロール及び支持部を軸部材から取り外す場合があるが、この場合、移動部材と支持部との固定を解除する必要がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、メンテナンスし易いタイヤ構成部材の加圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一態様のタイヤ構成部材の加圧装置は、軸部材と、筒状に形成されて前記軸部材を取り囲んで配置され、筒軸方向が前記軸部材の軸方向と平行に配置されたシリンダと、前記シリンダの外周に沿って配置され、前記シリンダに対して周方向へ相対移動可能に連結された筒状の加圧ロールと、前記軸部材において、前記軸部材の軸方向と直交する方向に沿って形成され、前記軸部材の側面に開口した挿入孔と、一端が前記挿入孔へ挿入され他端が前記シリンダに嵌合された状態で移動して前記シリンダを動かすシャフトと、を備えている。
【0008】
第一態様のタイヤ構成部材の加圧装置では、軸部材の挿入孔に挿入されたシャフトがシリンダに嵌合された状態で移動してシリンダを動かす。シリンダの外周には、加圧ロールが配置されている。このため、加圧ロールも、シリンダと同調して動かされる。これにより、加圧ロールは、例えばタイヤの成形ドラムを加圧することができる。
【0009】
ここで、シャフトの一端は軸部材の挿入孔に挿入されている一方、他端がシリンダに嵌合されている。このため、シャフトとシリンダとの嵌合を解除すれば、軸部材とシリンダ及び加圧ロールとを、分離することができる。これにより、シャフトとシリンダとが固定されている場合と比較して、加圧装置をメンテナンスし易い。
【0010】
第二態様のタイヤ構成部材の加圧装置は、前記挿入孔へ空気を供給する供給装置を備え、前記シャフトは、前記挿入孔において前記挿入孔の底と前記シャフトの一端との間の空間へ供給される空気の圧力によって前記挿入孔の内部でスライドして前記軸部材からの突出長さが変わる。
【0011】
第二態様のタイヤ構成部材の加圧装置では、シャフトが挿入孔内の空気の圧力により挿入孔の内部でスライドして軸部材からの突出長さが変わる。すなわち、挿入孔内の空気を加圧すれば、シャフトが軸部材から突出する長さが長くなりシリンダを押圧する。また、挿入孔内の空気を減圧すれば、シャフトが軸部材から突出する長さが短くなりシリンダへの押圧力が解除され、シャフトとシリンダとの嵌合を解除できる。
【0012】
第三態様のタイヤ構成部材の加圧装置は、前記シリンダは、前記軸部材の軸方向に沿って複数並べられて形成され、前記加圧ロール、前記挿入孔及び前記シャフトは、前記シリンダごとにそれぞれ設けられ、前記供給装置は、前記シリンダごとに、供給する空気の圧力を調整可能とされている。
【0013】
第三態様のタイヤ構成部材の加圧装置では、シリンダが筒軸方向に沿って複数並べられている。また、それぞれのシリンダごとに、軸部材からの突出長さを変えるための空気の圧力が調整可能とされている。
【0014】
これにより、タイヤの成形ドラムの軸方向に沿って、シリンダ及び加圧ロールの形状を自由に設定することができる。このため、軸方向に沿って湾曲しているタイヤや凹凸があるタイヤを成形することができる。
【0015】
第四態様のタイヤ構成部材の加圧装置は、前記挿入孔は、前記軸部材の一方側の側面に開口した第一挿入孔と、前記一方側と反対側の側面に開口した第二挿入孔と、を備え、前記シャフトは、前記第一挿入孔及び前記第二挿入孔のそれぞれに挿入され、それぞれ前記シリンダと嵌合している。
【0016】
第四態様のタイヤ構成部材の加圧装置では、シャフトが、2つの方向へ開口する第一挿入孔及び第二挿入孔のそれぞれに挿入され、各々がシリンダと嵌合している。このため、第一挿入孔内の空気を加圧すれば、シリンダは一方側へ移動する。一方、第二挿入孔内の空気を加圧すれば、シリンダは一方側とは反対側へ移動する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のタイヤ構成部材の加圧装置は、メンテナンスし易い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るタイヤ構成部材の加圧装置が適用されたタイヤ成形装置を示す側面図である。
図2】(A)は加圧装置を示す正面図であり、(B)は上面図である。
図3】シリンダ及び加圧ローラを示す側面図である。
図4】(A)は軸部材の上面図であり(B)は正面図である。
図5】(A)は流路部材が固定された軸部材の側面図であり、(B)は断面図である。
図6】(A)は流路部材の側面図であり(B)は正面図である。
図7】(A)は流路部材の側面図であり(B)は正面図である。
図8】(A)は流路部材の側面図であり(B)は正面図である。
図9】(A)は流路部材の側面図であり(B)は正面図である。
図10】軸部材にシリンダ及び加圧ローラを組み付けた状態を示す側面図である。
図11】軸部材に対してシリンダ及び加圧ローラを移動させた状態を示す側面図である。
図12】軸部材からシリンダ及び加圧ローラを取り外した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るタイヤ構成部材の加圧装置について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0020】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0021】
各図において矢印X、Yで示す方向は、一例として、後述する供給装置12から供給されるタイヤ構成部材Nの面内方向に沿う方向であり、互いに直交している。このうち、X方向は、タイヤ構成部材Nの供給方向である。また、矢印Zで示す方向はX方向及びY方向と直交する方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。なお、以下の説明においては、便宜的にX、Y方向を横方向、Z方向を上下方向などと称す場合がある。
【0022】
<タイヤ成形装置>
図1には、本発明の実施形態に係るタイヤ構成部材の加圧装置20(以下、「加圧装置20」と称す)が用いられたタイヤ成形装置10の概略構成が側面図で示されている。
【0023】
タイヤ成形装置10は、供給装置12と、成形ドラム14と、加圧装置20と、制御装置(図示せず)と、を備えている。タイヤ成形装置10は、制御装置により制御されて、タイヤの成形動作を実行し、加圧装置20により、タイヤ構成部材Nを成形ドラム14の外周側から加圧する。
【0024】
供給装置12は、タイヤ構成部材Nを搬送する搬送装置12Aを有し、成形ドラム14の回転に合わせて、タイヤ構成部材Nを成形ドラム14へ供給する。
【0025】
成形ドラム14は、タイヤ構成部材Nを成形する円筒状のドラムであり、モータ等を備えた回転装置(図示せず)により、回転軸(Y方向に沿う軸)を中心に所定の速度で回転する。
【0026】
タイヤ構成部材Nは、成形ドラム14の外周に巻き付けられて、円筒状に成形される、例えばトレッドなどの部材である。加圧装置20は、タイヤ構成部材Nの成形ドラム14への配置中に、又は、タイヤ構成部材Nの成形ドラム14への配置後に、タイヤ構成部材Nを成形ドラム14に向かって加圧する。
【0027】
<加圧装置>
加圧装置20は、軸部材30、流路部材40、加圧部材50、後述するシャフト60(図4参照)、保持部材22及び移動装置24を備えて形成されている。
【0028】
軸部材30は、図2(A)に示すように、軸方向の両端部がそれぞれ保持部材22によって保持されている。一対の保持部材22は、図1に示すように、軸部材30を移動装置24に連結している。
【0029】
移動装置24は、例えば、任意に位置決め可能なサーボモータ及びボールスクリュー機構であり、軸部材30を加圧部材50と共に、成形ドラム14の半径方向に移動させる。移動装置24により、軸部材30は、成形ドラム14に接近し、又は、成形ドラム14から離れる。
【0030】
また、移動装置24により、軸部材30と共に加圧部材50も、タイヤ構成部材Nに接触する位置と、タイヤ構成部材Nから離れた位置との間を移動する。加圧部材50は、タイヤ構成部材Nに接触して回転する環状の部材であり、タイヤ構成部材Nを所定の加圧方向Pに加圧する。
【0031】
タイヤ構成部材Nの加圧時には、軸部材30が、加圧位置のタイヤ構成部材Nに沿って配置され、加圧部材50が、タイヤ構成部材Nの外周面に沿って配置される。具体的には、軸部材30は、成形ドラム14の外側において、成形ドラム14の軸方向(Y方向)と平行に配置されている。そして、加圧部材50は、タイヤ構成部材Nの幅方向(Y方向)の全体又は一部を加圧する。
【0032】
<加圧機構>
加圧機構は、軸部材30に対して加圧部材50を移動させ、タイヤ構成部材Nを加圧する機構である。加圧機構は、加圧装置20における軸部材30、流路部材40、加圧部材50、後述するシャフト60(図4参照)を備えて形成されている。
【0033】
図2(A)、(B)に示すように、軸部材30及び流路部材40は、加圧部材50の内側に挿通されている。図3に示すように、加圧部材50は、環状のシリンダ52及びシリンダ52と連結された環状の加圧ロール54を備えている。なお、図2(B)では保持部材22の図示が省略されている。
【0034】
図2に示すように、加圧部材50は、複数(一例として、本実施例においては33個)の「シリンダ52及び加圧ロール54の連結体」によって筒状に形成され、軸部材30を取り囲んで、筒軸方向が軸部材30の軸方向と平行に配置されている。
【0035】
なお、本発明における「筒状に形成されたシリンダ」とは、環状に形成された単体のシリンダ52及び軸部材30の軸方向に並べられた複数のシリンダ52の集合体の双方を指している。
【0036】
同様に、本発明における「筒状の加圧ロール」とは、環状に形成された単体の加圧ロール54及び軸部材30の軸方向に並列に並べられた複数の加圧ロール54の集合体の双方を指している。
【0037】
(シリンダ、加圧ロール)
図3に示すように、それぞれのシリンダ52は、本体部材52Aと外周部材52Bとを備えて形成されている。本体部材52Aは、中空の環状部材であり、環の内側の2箇所に、ガイド部52Cが形成されている。2箇所のガイド部52Cは、それぞれ環の中心点に対して点対称となる位置に形成され、互いに平行に(図3ではZ軸に沿って)形成されている。
【0038】
ガイド部52Cは、図5及び図6に示すように、後述する軸部材30に形成されたガイド溝32に嵌合される部分である。詳しくは後述するが、シリンダ52は、ガイド部52Cがガイド溝32に沿って移動することで、軸部材30に対して移動する。
【0039】
また、シリンダ52の本体部材52Aには、シャフト60の先端が嵌合される嵌合孔52Dが2箇所に形成されている。
【0040】
シリンダ52の外周部材52Bは、本体部材52Aの外周に取付けられた環状部材であり、加圧ロール54の内周面と対向する部材である。外周部材52Bと加圧ロール54との間にはボールベアリングBが配置されている。これにより、加圧ロール54は、シリンダ52に対して周方向へ相対移動可能に連結されている。
【0041】
(軸部材、シャフト)
図2に示すように、軸部材30は、筒状の加圧部材50の内側に配置された角型の棒状部材である。
【0042】
図4(A)、(B)に示すように、軸部材30には、軸部材30の軸方向と直交する方向に沿って、上面から下面に貫通する挿入孔H0、HR1、HR2、HR3~HR16、HL1、HL2及びHL3~HL16が形成されている。
【0043】
なお、加圧装置20がタイヤ成形装置10に取付けられた状態におけるZ方向の端面を、便宜的に「上面」及び「下面」と称している。また、本発明の「軸部材の側面に開口した挿入孔」における「側面」とは、この「上面」及び「下面」を示している。
【0044】
挿入孔H0は、軸部材30の軸方向(Y方向)における中心部分に設けられた貫通孔であり、幅方向(X方向)に2箇所設けられている。
【0045】
挿入孔HR1、HR2、HR3~HR16は、2つの挿入孔H0それぞれの軸方向における一方側に並べて形成された貫通孔である。同様に、挿入孔HL1、HL2、HL3~HL16は、2つの挿入孔H0それぞれの軸方向における他方側に並べて形成された貫通孔である。
【0046】
幅方向(X方向)に2箇所設けられた一対の挿入孔H0は、それぞれ、本発明における「第一挿入孔」及び「第二挿入孔」である。一対の挿入孔HR1、HR2、HR3~HR16、HL1、HL2及びHL3~HL16についても同様である。
【0047】
なお、図4(A)においては、図示を簡略化するため、紙面上方における挿入孔HR2~HR16及びHL2~HL16は省略されている。
【0048】
これらの挿入孔H0、HR1、HR2、HR3~HR16、HL1、HL2及びHL3~HL16は、それぞれ、通気孔Eによって、軸部材30の側面(X方向の端面)と連通されている。
【0049】
なお、以下の説明においては、これらの挿入孔H0、HR1、HR2、HR3~HR16、HL1、HL2及びHL3~HL16を総称して、挿入孔Hと称す場合がある。挿入孔Hは、シリンダ52毎に、2個ずつ(すなわち、一対の挿入孔H0や、一対の挿入孔HR1など)設けられている。
【0050】
また、軸部材30の側面には、ガイド溝32が形成されている。ガイド溝32は、一方の側面においては、軸部材30の上面に開口し(ガイド溝32A)、他方の側面においては軸部材30の下面(ガイド溝32B)に開口している。ガイド溝32A及び32Bは、それぞれ、シリンダ52毎に設けられている。
【0051】
図5(A)、(B)に示すように、軸部材30の幅方向に並んだ一対の挿入孔Hのうち、一方(図5(A)、(B)では左側)の挿入孔Hの下端部は封止部材62によって封止され、上端部が軸部材30の上面に開口している。また、他方(図5(A)、(B)では右側)の挿入孔Hの上端部は封止部材62によって封止され、下端部が軸部材30の下面に開口している。
【0052】
それぞれの挿入孔Hには、シャフト60が挿入されている。一方の挿入孔Hに挿入されたシャフト60は、上端が挿入孔Hから突出した状態で、上下方向に移動することができる。同様に、他方の挿入孔Hに挿入されたシャフト60は、下端が挿入孔Hから突出した状態で、上下方向に移動することができる。
【0053】
加圧装置20の加圧機構には、挿入孔Hへ空気を供給する供給装置(不図示)が設けられている。供給装置から供給された空気は、図5(B)に矢印で示すように、流路部材40の内部から通気孔Eを介して、挿入孔Hの底(封止部材62によって形成された底)とシャフト60の端部との間の内部空間Vへ供給される。なお、供給装置は、内部空間Vから空気を吸引する機構を備えていてもよい。
【0054】
加圧ロール54がタイヤ構成部材Nと接触した状態で、シャフト60は、供給装置から供給される(又は吸引される)空気の圧力によって、挿入孔Hの内部でスライドし、軸部材30からの突出長さが変化する。これにより、シャフト60は、軸部材30の外側で伸縮する。
【0055】
なお、シャフト60の外周面には、挿入孔Hとの間の隙間を封止するゴムなどの弾性部材で形成されたシール部材が取付けられている。これにより、内部空間Vが通気孔Eを除いて気密に形成される。
【0056】
(流路部材)
流路部材40は、軸部材30における幅方向の両側に設けられた棒状部材である。流路部材は、軸部材30の軸方向に沿って配置され、軸部材30に固定されている。それぞれの流路部材40は、板状の流路部材42、44、46及び48を組み合わせて形成されている。
【0057】
図6、7、8及び9には、流路部材42、44、46及び48がそれぞれ示されている。図6(B)、図7(B)、図8(B)及び図9(B)において基準線0、R1、R2、R3~R16、L1、L2及びL3~L16で示した位置は、それぞれ、流路部材40が軸部材30に取付けられた状態で、図4(B)に示した軸部材30の挿入孔H0、HR1、HR2、HR3~HR16、HL1、HL2及びHL3~HL16の中心線と一致する位置である。
【0058】
なお、基準線R1、R2及びR3~R16で示した位置は、それぞれ、基準線0で示した位置を基準として、基準線L1、L2及びL3~L16で示した位置と線対称の位置である。
【0059】
図6(A)、(B)に示すように、流路部材42の両端部にはそれぞれ、供給装置から空気が供給される複数(本実施形態においては、左右にそれぞれ8個ずつ)の供給口S(供給口S1~S16)が設けられている。
【0060】
それぞれの供給口Sは、流路部材42の幅方向(X方向)に沿って、流路部材42の表面から裏面を貫通して形成されている。なお、流路部材40が軸部材30に固定された状態で、軸部材30と反対側の面を「表面」と称し、軸部材30側の面を「裏面」と称す。
【0061】
流路部材42の裏面には、複数の流路M(流路M12、M14及びM15)が形成されている。流路M12は、供給口S12から供給された空気を、基準線L12及びR12で示される位置へ流通させるための流路である。同様に、流路M14は、供給口S14から供給された空気を、基準線L14及びR14で示される位置へ流通させるための流路である。また、流路M15は、供給口S15から供給された空気を、基準線L15及びR15で示される位置へ流通させるための流路である。
【0062】
ここで、図7(B)、図8(B)及び図9(B)に示されるように、流路部材44、46、48において、基準線L12、L14、L15、R12、R14及びR15で示される位置には、貫通孔Kが形成されている。これらの貫通孔は互いに連通しており、さらに図4(B)に示す軸部材30における通気孔Eに連通している。
【0063】
これにより、流路部材42における流路M12を流れた空気は軸部材30における挿入孔HL12及びHR12へ供給され、流路M14を流れた空気は挿入孔HL14及びHR14へ供給され、流路M15を流れた空気は挿入孔HL15及びHR15へ供給される。
【0064】
また、図7(A)、(B)に示した流路部材44の裏面には、複数の流路M(流路M6、M7、M11及びM16)が形成されている。流路M6は、流路部材42の供給口S6から供給された空気を、基準線L6及びR6で示される位置へ空気を流通させるための流路である。同様に、流路M7は、供給口S7から供給された空気を、基準線L7及びR7で示される位置へ流通させるための流路である。また、流路M11は、供給口S11から供給された空気を、基準線L11及びR11で示される位置へ流通させるための流路である。さらに、流路M16は、供給口S16から供給された空気を、基準線L16及びR16で示される位置へ流通させるための流路である。
【0065】
以下、同様に、図8(A)、(B)に示した流路部材46の裏面には、複数の流路M(流路M3、M4、M10及びM13)が形成されている。そして、図9(A)、(B)に示した流路部材48の裏面には、複数の流路M(流路M1、M2、M5、M8及びM9)が形成されている。なお、流路M1は、基準線L1及びR1で示される位置に加えて、基準線0で示される位置にも空気を流通させる。
【0066】
これらの供給口S1~S16に供給される空気量(又は吸引される空気量)は、個別に調整することができる。すなわち、図4(A)に示した挿入孔H0、HR1、HR2及びHR3~HR16へ供給される空気量は、個別に調整することができる。なお、挿入孔HL1、HL2及びHL3~HL16へ供給される空気量は、それぞれ、挿入孔H0、HR1、HR2及びHR3~HR16へ供給される空気量と略一致する。
【0067】
また、図5(A)、(B)に示すように、流路部材40は軸部材30の両側に設けられているため、例えば図4(A)に示す、上下に並んだ2つの挿入孔HL1に供給される空気量は、それぞれ個別に調整することができる。他の上下に並んだ2つの挿入孔Hにおいても同様である。
【0068】
(軸部材、流路部材、シリンダ、加圧ロール及びシャフトの連結)
図10には、軸部材30、流路部材40、シリンダ52、加圧ロール54及びシャフト60を組付けた状態が示されている。より具体的には、図10に示された状態では、流路部材40が固定された軸部材30が、シャフト60によって、シリンダ52及び加圧ロール54の連結体と組付けられている。
【0069】
この図に示されるように、シリンダ52は、軸部材30に組付けられた状態において、2箇所のガイド部52Cがそれぞれ、軸部材30に形成されたガイド溝32A及び32Bに係合している。
【0070】
また、軸部材30の挿入孔Hへ挿入されたシャフト60が、軸部材30から突出している。そして、軸部材30から突出した側のシャフト60の先端は、シリンダ52の本体部材52Aの嵌合孔52Dに嵌合している。
【0071】
ここで、「嵌合」とは、シャフト60の先端が嵌合孔52Dに嵌められた状態で、かつ、固定されていない状態を示している。例えば挿入孔Hの内部空間Vへの空気の供給を停止してシャフト60が自由にスライドできる状態にしたとき、シャフト60の先端を嵌合孔52Dから引き抜くだけで、シャフト60と嵌合孔52Dとの嵌合状態は解除される。
【0072】
2本のシャフト60の先端が嵌合孔52Dに嵌合した状態で、2つの挿入孔Hの内部空間Vへ供給される空気の圧力をそれぞれ調整することで、シャフト60が移動、すなわち、挿入孔Hの内部でスライドし、軸部材30からの突出長さが変わって、軸部材30の外側で伸縮する。これにより、シリンダ52及び加圧ロール54の連結体が、軸部材30に対して相対移動する。
【0073】
例えば、図11に示すように、一方(左側)の挿入孔Hの内部空間Vへ供給される空気の圧力を、他方(右側)の挿入孔Hの内部空間Vへ供給される空気の圧力より大きくすれば、一方(左側)の挿入孔Hに挿入されたシャフト60の突出長さが、他方(右側)の挿入孔Hに挿入されたシャフト60の突出長さより長くなる。このとき、空気の圧力差を大きくすれば、突出長さの差を大きくできる。
【0074】
また、例えば図12に示すように、双方の挿入孔Hの内部空間Vから空気を吸引し、双方のシャフト60の突出長さを短くすることで、シャフト60と嵌合孔52Dとの嵌合状態を解除することができる。これにより、シリンダ52及び加圧ロール54の連結体を、軸部材30から取り外すことができる。
【0075】
なお、加圧装置20を使用する平常時には、内部空間Vを正圧に維持して、シャフト60が外側に付勢された状態を維持することが好ましい。これにより、シリンダ52及び加圧ロール54の連結体が、不意に軸部材30から外れることを抑制できる。
【0076】
<作用及び効果>
本実施形態に係る加圧装置20では、図10及び図11で示すように、軸部材30の挿入孔Hに挿入されたシャフト60が、シリンダ52に嵌合された状態で移動して、シリンダ52を動かす。シリンダ52の外周には、加圧ロール54が配置されている。このため、加圧ロール54も、シリンダ52と同調して動かされる。これにより、加圧ロール54は、図1に示す成形ドラム14及びタイヤ構成部材Nを加圧することができる。
【0077】
ここで、図5に示すように、シャフト60の一端は軸部材30の挿入孔Hに挿入されている一方、他端がシリンダ52の嵌合孔52Dに嵌合されている。このため、シャフト60とシリンダ52との嵌合を解除すれば、図12に示すように、軸部材30とシリンダ52及び加圧ロール54とを、分離することができる。すなわち、シャフト60とシリンダ52とが固定されている場合と比較して、加圧装置20をメンテナンスし易い。
【0078】
また、加圧装置20では、加圧ロール54がタイヤ構成部材Nと接触した状態で、シャフト60が挿入孔Hの内部空間Vにおける空気の圧力により、挿入孔Hの内部でスライドして、軸部材30からの突出長さが変わる。すなわち、内部空間Vの空気を加圧すれば、シャフト60が軸部材30から突出する長さが長くなりシリンダ52を押圧する。また、内部空間Vの空気を減圧すれば、シャフト60が軸部材30から突出する長さが短くなる。また、減圧を続けて負圧にすれば、シリンダ52への押圧力が解除され、シャフト60とシリンダ52との嵌合を解除できる。
【0079】
また、加圧装置20では、図2に示すように、シリンダ52が筒軸方向に沿って複数並べられている。また、それぞれのシリンダ52ごとに、軸部材30からの突出長さを変えるための空気の圧力が調整可能とされている。
【0080】
これにより、成形ドラム14の軸方向に沿って、シリンダ52及び加圧ロール54の形状を自由に設定することができる。このため、軸方向に沿って湾曲しているタイヤ構成部材Nや凹凸があるタイヤ構成部材Nを成形することができる。
【0081】
なお、本実施形態においては、供給装置から挿入孔HL1、HL2及びHL3~HL16へ供給される空気は、それぞれ、挿入孔H0、HR1、HR2及びHR3~HR16へ供給される空気と、同じ流路Mを介して供給される。
【0082】
このため、挿入孔HL1、HL2及びHL3~HL16へ供給される空気量は、それぞれ、挿入孔H0、HR1、HR2及びHR3~HR16へ供給される空気量と等しい。したがって、加圧装置20を使用すれば、タイヤ構成部材Nを、図6(B)等に基準線0で示した位置を中心線として、線対称の形状に成形することができる。
【0083】
なお、本発明における「シリンダごとに、供給する空気の圧力を調整可能とされている」との記載は、「1つのシリンダ52」ごとに、供給する空気の圧力を個別に調整する態様を含む。しかし、本実施形態の挿入孔HL1及びHR1へ供給される空気の圧力が等しいように、「複数のシリンダ52」ごとに、供給する空気の圧力を調整するものとしてもよい。
【0084】
また、加圧装置20では、シャフト60が、2つの方向、すなわち軸部材30の上側へ開口する挿入孔H(第一挿入孔)及び軸部材30の下側へ開口する挿入孔H(第二挿入孔)のそれぞれに挿入され、各々がシリンダ52の嵌合孔52Dと嵌合している。
【0085】
このため、図11に示すように、軸部材30の上側へ開口する挿入孔Hの内部空間Vの空気を加圧すれば、シリンダは上側へ移動する。一方、軸部材30の下側へ開口する挿入孔Hの内部空間Vの空気を加圧すれば、シリンダは下側へ移動する。
【0086】
このように、加圧装置20では、シリンダ52毎にシャフト60が2本設けられているため、例えば1本の場合と比較して、安定した状態でシリンダ52を軸部材30に対して保持できると共に、シリンダ52の移動量を調整し易い。
【0087】
また、2本のシャフト60が、それぞれ同じ方向ではなく反対方向へ伸びており、それぞれのシャフト60の先端がシリンダ52の嵌合孔52Dと嵌合している。このため、挿入孔Hの内部空間Vの空気を正圧に維持することで、シャフト60の付勢力によりシリンダ52を軸部材30に対して保持できる。すなわち、シャフト60をシリンダ52に固定しなくてもよい。
【0088】
なお、本実施形態においては、シャフト60の本数は2本とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばシャフト60の本数は3本や4本で形成してもよい。複数のシャフト60は、シリンダ52の周方向に等間隔で配置してもよいし、偏った配置としてもよい。
【0089】
「偏った配置」とは、例えば2本のシャフト60を軸部材30の上側において伸縮する構成とし、1本のシャフト60を軸部材30の下側において伸縮する構成とする配置等が挙げられる。
【0090】
また、本実施形態においては、シャフト60の先端を、シリンダ52の嵌合孔52Dに嵌合しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばシャフト60の先端に嵌合孔を形成し、シリンダ52に、径方向内側へ向かって突出する突起を形成し、これらの嵌合孔と突起とを嵌合させてもよい。
【0091】
また、本実施形態においては、供給装置が、内部空間Vから空気を吸引する機構を備えている場合について説明したが、空気の吸引機構は必ずしも必要ない。空気を機械的に吸引しなくても、空気の供給を停止した状態でシャフト60を挿入孔Hへ押し込めば、シャフト60とシリンダ52との嵌合を解除できる。
【0092】
また、本実施形態においては、加圧部材50は、33個の「シリンダ52及び加圧ロール54の連結体」によって形成しているが、この連結体の数は、適宜変更することができる。この場合、連結体の数量に応じて、流路部材における供給口Sや流路Mの数量は適宜調整される。
【符号の説明】
【0093】
20 加圧装置、 30 軸部材、 52 シリンダ、 54 加圧ロール、
60 シャフト、 H 挿入孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12