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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048771
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】炭素成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20230331BHJP
   C04B 35/524 20060101ALI20230331BHJP
   C04B 35/83 20060101ALI20230331BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
C01B32/05
C04B35/524
C04B35/83
C04B35/80 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158270
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】生駒 英行
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB05
4G146AB07
4G146AD13
4G146AD19
4G146AD20
4G146AD22
4G146BA15
4G146BA16
4G146BA17
4G146BA18
4G146BC03
4G146BC15
4G146CB23
4G146CB35
(57)【要約】
【課題】炭素成形体を簡単に製造することができ、サイズに寄らず様々な炭素成形体を簡単に製造することができ、特に、大型の炭素成形体の製造に適した製造方法を提供する。
【解決手段】3次元印刷による炭素成形体の製造方法であって、(a)第1の原料樹脂を含む第1の層を提供すること、(b)第1の非酸化雰囲気下で、第1の層をレーザー光照射して炭素化させること、(c)炭素化後の第1の層の上に、第2の原料樹脂を含む第2の層を提供すること、及び(d)第2の非酸化雰囲気下で、第2の層をレーザー光照射して炭素化させると共に、炭素化後の第1の層と炭素化後の第2の層を一体化させることを含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元印刷による炭素成形体の製造方法であって、
(a)第1の原料樹脂を含む第1の層を提供すること、
(b)第1の非酸化雰囲気下で、前記第1の層をレーザー光照射して炭素化させること、
(c)炭素化後の前記第1の層の上に、第2の原料樹脂を含む第2の層を提供すること、及び
(d)第2の非酸化雰囲気下で、前記第2の層をレーザー光照射して炭素化させると共に、炭素化後の前記第1の層と炭素化後の前記第2の層を一体化させること
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の原料樹脂及び前記第2の原料樹脂が、それぞれ独立して、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の非酸化雰囲気及び前記第2の非酸化雰囲気が、窒素ガス雰囲気である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザー光照射の強度が、1~200Wである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記(a)~(d)を複数回繰り返すことを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の層及び前記第2の層が、それぞれ独立して、前記第1の原料樹脂及び前記第2の原料樹脂に加えて、それぞれ前記第1の原料樹脂及び前記第2の原料樹脂中に分散しているガラスファイバー、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバーなどのセルロース系材料、カーボンファイバー、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック、アニリンブラックなどの黒色を有する有機顔料からなる群より選択される少なくとも1つの物質を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素成形体の製造方法に関し、特に、3次元印刷による炭素成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素材料は、耐熱性、導電性、熱伝導性及び化学安定性等の性質に優れているため、炭素材料から作られている炭素成形体は、電気、電子、機械、冶金、化学等の幅広い分野に広く使用されている。
【0003】
従来、炭素成形体は、原料樹脂、並びに随意の骨材としての炭素粉末、及び結合剤としてのピッチやタールを用いて予備成形体を形成し、そしてこれを焼成して炭素化することによって製造されていた。
【0004】
しかしながら、この従来の炭素成形体の製造工程は、複雑であって、特に焼成工程では多量の揮発性ガスが発生し、発生したガスが成形体から円滑に揮散、排出されないと、膨れ等の変形や割れが生じ易い。そのため、焼成過程における昇温速度を極めて緩やかに加熱する必要があり、場合によっては、焼成サイクルは1ヶ月以上もの長期間を要している。また、立体形状の最終製品を得るためには、得られた炭素成形体を所望の形状に機械加工する必要がある場合もある。
【0005】
上記のような従来の炭素成形体の製造方法に対して、特許文献1及び2は、3次元印刷による炭素成形体の製造方法を開示している。
【0006】
より具体的には、特許文献1では、高密度化炭素製品の製造方法であって、(a)炭素粉末を提供するステップと、(b)当該炭素粉末の層を堆積するステップと、(c)当該製品のスライスに対応するパターンで結合剤を当該層の上にインクジェットで堆積させるステップと、(d)当該製品の粉末体が完成するまで、追加の炭素粉末層と追加のパターンについてステップ(b)とステップ(c)を繰り返し、当該追加のパターンのそれぞれは当該製品の追加のスライスに相当するものであるステップと、(e)少なくとも当該結合剤の一部が硬化する温度で当該製品の当該粉末体を硬化することにより、硬化した印刷物を提供するステップと、(f)当該硬化した印刷物にピッチを含浸させることにより、含浸された印刷物を提供するステップと、から成る製造方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2では、カーボンエアロゲルの形成方法であって、インクを3D印刷して印刷部品を作製することであり、前記インクは、溶媒、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、及び有機増粘剤を含むものであること、前記印刷部品から溶剤を除去すること、並びに前記印刷部品を炭化して前記エアロゲルを作製すること、を含み、前記レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂は、酸触媒を含み、1:1を超えるホルムアルデヒド:レゾルシノールのモル比を有し、前記増粘剤は、水溶性で、C、H、O原子のみから構成され、かつエーテル官能基又はアルコール官能基のみを含む、カーボンエアロゲルの形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2018-502811号公報
【特許文献2】特表2020-524625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明では、3D印刷によって炭素成形体を製造する新規な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成する本発明は、以下のとおりである。
【0011】
〈態様1〉
3次元印刷による炭素成形体の製造方法であって、
(a)第1の原料樹脂を含む第1の層を提供すること、
(b)第1の非酸化雰囲気下で、前記第1の層をレーザー光照射して炭素化させること、
(c)炭素化後の前記第1の層の上に、第2の原料樹脂を含む第2の層を提供すること、及び
(d)第2の非酸化雰囲気下で、前記第2の層をレーザー光照射して炭素化させると共に、炭素化後の前記第1の層と炭素化後の前記第2の層を一体化させること
を含む、方法。
〈態様2〉
前記第1の原料樹脂及び前記第2の原料樹脂が、それぞれ独立して、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂から選択される、態様1に記載の方法。
〈態様3〉
前記第1の非酸化雰囲気及び前記第2の非酸化雰囲気が、窒素ガス雰囲気である、態様1又は2に記載の方法。
〈態様4〉
前記レーザー光照射の強度が、1~200Wである、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
〈態様5〉
前記(a)~(d)を複数回繰り返すことを含む、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
〈態様6〉
前記第1の層及び前記第2の層が、それぞれ独立して、前記第1の原料樹脂及び前記第2の原料樹脂に加えて、それぞれ前記第1の原料樹脂及び前記第2の原料樹脂中に分散しているガラスファイバー、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバーなどのセルロース系材料、カーボンファイバー、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック、アニリンブラックなどの黒色を有する有機顔料からなる群より選択される少なくとも1つの物質を含む、態様1~5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、焼成炉を使用しないため、サイズに寄らず様々な炭素成形体を簡単に製造することができ、特に、大型の炭素成形体を簡単に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0014】
《炭素成形体の製造方法》
本発明の炭素成形体の製造方法は、
3次元印刷による炭素成形体の製造方法であって、
(a)第1の原料樹脂を含む第1の層を提供すること、
(b)第1の非酸化雰囲気下で、第1の層をレーザー光照射して炭素化させること、
(c)炭素化後の第1の層の上に、第2の原料樹脂を含む第2の層を提供すること、及び
(d)第2の非酸化雰囲気下で、第2の層をレーザー光照射して炭素化させると共に、炭素化後の第1の層と炭素化後の第2の層を一体化させること
を含む、方法
である。
【0015】
3次元印刷には、様々な原理、仕組み、又は種類が開発されているが、その共通の特徴は、「積層する」こと、すなわち、所望の形状が作成するまで、原料からなる層を1枚ずつ繰り返して重ねることである。
【0016】
本発明において用いることができる3次元印刷の方式は、特に限定されるものではなく、レーザーを用いる任意の方式を用いることができる。したがって具体的には、本発明において用いることができる3次元印刷は、デポジション方式(DED:Direct Energy Deposition)であっても、パウダーべッド方式(PBF:Powder Bed Fusion)であってもよい。ここで、デポジション方式の3次元印刷を用いる場合、第1又は第2の原料樹脂を含む材料粉末を下地層に適用して第1又は第2の層を形成するのと同時に、非酸化雰囲気においてレーザー光照射して、この層の炭化を行うことができる。また、パウダーべッド方式の3次元印刷を用いる場合、第1又は第2の原料樹脂を含む材料粉末を下地層上に敷き詰めて第1又は第2の層を形成し、そして非酸化雰囲気においてレーザー光照射して、この層の炭化を行うことができる。
【0017】
本発明は、3次元印刷を用いることによって、焼成炉を使用しないため、サイズに寄らず様々な炭素成形体を簡単に製造することができ、特に、大型の炭素成形体の製造に適している。
【0018】
本発明の発明者らは、炭素化層上に原料樹脂を含む層を提供し、そして非酸化雰囲気下においてこの原料樹脂を含む層にレーザー光を照射することによって、原料樹脂を含む層が炭素化すると共に、炭素化された層とその下に位置する炭素化層とが密着して一体化することを見いだし、これに基づいて、本発明の方法に想到した。なお、理論に限定されるものではないが、レーザー光照射によって樹脂が軟化し、その下の層に密着した後で炭素化することによって、炭素化層間の一体化を促進できると考えられる。
【0019】
なお、本発明において、「一体化」とは、2つの層が互いに密着しており、2つの層の少なくとも一部、好ましくは全部を破壊せずには、それら2つの層を互いに分離できない状態を意味する。
【0020】
〈工程(a)〉
工程(a)では、第1の原料樹脂を含む第1の層を提供する。
【0021】
ここで、第1の層は、後述する工程(b)における炭素化の対象となる層である。また、第1の層が提供される場所として、例えば、製造に用いる装置のステージ上であってもよく、すでに形成されている他の炭素化後の層の上であってもよい。
【0022】
第1の層としては、第1の樹脂を含むフィルムをそのまま用いてもよく、第1の樹脂を含む塗布液を塗布及び乾燥して得られる層であってもよく、又は第1の樹脂としての炭素化可能な樹脂パウダー粒子を散布してなる層であってもよい。
【0023】
第1の層の厚さは、特に限定されず、目的とする炭素成形体の精度や工程(b)のレーザー光の強度等に応じて、適宜設定することができる。例えば、第1の層の厚さは、0.001mm以上、0.005mm以上、0.008mm以上、0.01mm以上、又は0.03mm以上であってよく、また2.0mm以下、1.0mm以下、0.50mm以下、又は0.30mm以下であってよい。
【0024】
第1の原料樹脂及び後述する第2の原料樹脂は、レーザー光照射により炭素化できるものであれば、特に限定されない。例えば、第1の原料樹脂及び第2の原料樹脂は、それぞれ独立して、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂から選択されてよい。
【0025】
熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂(TPI)、塩素化塩ビ樹脂(CPVC)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、又はポリアクリロニトリル樹脂(PAN)等が挙げられるが、これらに限定されない。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、フラン樹脂、又はフェノール樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
また、第1の層及び後述する第2の層において、造形物の強度・導電性・放熱性等の性能アップや密度調整を目的として、それぞれ第1の原料樹脂及び第2の原料樹脂に、様々の物質をコンパウンドすることができる。
【0027】
すなわち、第1の層及び第2の層は、それぞれ独立して、第1の原料樹脂及び第2の原料樹脂に加えて、それぞれ第1の原料樹脂及び第2の原料樹脂中に分散している他の物質を含んでいてもよい。このような物質としては、例えばガラスファイバー、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバーなどのセルロース系材料、カーボンファイバー、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック、アニリンブラックなどの黒色を有する有機顔料からなる群より選択される少なくとも1つの物質を挙げることができる。
【0028】
〈工程(b)〉
工程(b)では、第1の非酸化雰囲気下で、前記第1の層をレーザー光照射して炭素化させる。
【0029】
第1の層をレーザー光照射して炭素化させる際に、第1の層の完全燃焼を予防するために、工程(b)は非酸化雰囲気下で実行される。
【0030】
第1の非酸化雰囲気としては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、若しくはヘリウムガス等の不活性ガス雰囲気、又は水素含有窒素ガス等の還元性雰囲気を採用してよく、中でも窒素ガス雰囲気は、取り扱い容易で、かつ安価である観点から、好ましく用いられる。なお、非酸化雰囲気は、第1の層の完全燃焼を予防して炭素化させることが可能な範囲で、酸素を含有していてもよく、例えば5体積%以下、3体積%以下、又は1体積%以下の範囲で酸素を含有していてもよい。
【0031】
レーザー光照射の強度(出力時のパワー)は、原料樹脂の種類、ビーム径等に合わせて、原料樹脂を含む層が炭素化できる範囲内で適宜に設定してよい。例えば、レーザー光照射の強度は、1W以上、10W以上、15W以上、又は20W以上であってよく、また200W以下、又は100W以下、または50W以下であってよい。
【0032】
レーザー光の波長は、特に限定されず、原料樹脂が吸収する波長の範囲内で適宜設定してよく、例えば0.1μm以上2μm以下であってよい。この際に、レーザー光の波長と、原料樹脂の吸収率が最も高くなる波長との差が小さくなるように設定することが好ましい。
【0033】
レーザー光の走査速度は、特に限定されず、例えば、1.0mm/秒以上、2.0mm/秒以上、3.0mm/秒以上、4.0mm/秒以上、5.0mm/秒以上、又は8.0mm/秒以上であってよく、また、20mm/秒以下、又は15mm/秒以下であってよい。
【0034】
また、レーザー光のビーム径は、特に限定されず、目的とする炭素成形体の精度に応じて、適宜設定してよい。
【0035】
〈工程(c)〉
工程(c)では、上記工程(b)で得られた炭素化後の第1の層の上に、第2の原料樹脂を含む第2の層を提供する。
【0036】
この第2の層は、後述する工程(d)における炭素化の対象となる層である。第2の層としては、第2の樹脂を含むフィルムをそのまま用いてもよく、第2の樹脂を含む塗布液を塗布及び乾燥して得られる層であってもよく、又は第1の層の上に第2の樹脂としての炭素化可能な樹脂パウダー粒子を散布してなる層であってもよい。
【0037】
第2の層の厚さは、特に限定されず、上述した第1の層の厚さを適宜参照してよい。また、第2の層の厚さと第1の層の厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0038】
第2の原料樹脂は、上述した第1の原料樹脂について説明したとおりである。したがって、第2の原料樹脂は、第1の原料樹脂と同じであっても異なっていてもよいが、同じであることが原料樹脂の準備を容易にするために好ましい。
【0039】
〈工程(d)〉
工程(d)では、第2の非酸化雰囲気下で、第2の層をレーザー光照射して炭素化させると共に、炭素化後の前記第1の層と炭素化後の前記第2の層を一体化させる。
【0040】
第2の非酸化雰囲気は、上述した第1の非酸化雰囲気について説明したとおりである。したがって、第2の非酸化雰囲気は、第1の非酸化雰囲気と同じであっても異なっていてもよいが、同じであることが非酸化雰囲気の準備を容易にするために好ましい。
【0041】
レーザー光に関して、上述した工程(b)における記載内容を適宜参照できるため、ここでは説明を省略する。
【0042】
〈工程の繰り返し〉
炭素成形体を製造する際に、上述した工程(a)~工程(d)を複数回繰り返すことによって、所望の炭素成形体を得ることができる。ここで、複数回とは、2回以上であり、回数の上限は、特に限定されず、目的とする炭素成形体の大きさ等に応じて適宜設定できる。
【0043】
〈製造装置〉
本発明において、炭素成形体の製造装置としては、上述した工程(a)~(b)を行えるものであれば、特に限定されない。より具体的には、炭素成形体の製造装置として、例えば、粉末積層式3次元造形装置等の3Dプリンター等を用いてよい。
【実施例0044】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
《実施例1》
プラスチック用モジュール式レーザー溶着装置を用いて、以下の実施例1を行った。
【0046】
より具体的には、予め焼成炉にて炭素化されたポリイミドフィルムの上に、原料樹脂としてのポリイミド樹脂を含むポリイミドフィルム(厚さ:0.1mm)を積層した。
【0047】
そして、窒素ガス雰囲気下で、上層のポリイミドフィルムの一部の領域をレーザー光照射して、炭素化させた。この際、レーザー光の照射条件は、以下のとおりであった:
・レーザー種類:半導体レーザー
・レーザー光波長:940nm
・レーザー光強度:15W
・レーザー光径:直径1.4mm
・レーザー光走査速度:8.0mm/秒
【0048】
(結果及び考察)
炭素化後、目視によって観察したところ、レーザー光照射して炭素化された領域と、それに隣接して積層された炭素化後の層とは密着しており、一体化になっていることが分かった。
【0049】
この結果から、炭素化後の層の上に、本発明の製造方法に係る工程(a)から(d)まで複数回を繰り返すことによって、炭素成形体を簡単に製造できることが考えられる。また、この方法は、サイズによらず様々な炭素成形体にも適していると考えられる。
【0050】
《実施例2》
実施例2は、レーザー光強度を18Wに変更したこと以外に、実施例1と同様にして行われた。実施例1と同様の結果が得られて、再現性があることを確認できた。
【0051】
《実施例3》
実施例3は、レーザー光走査速度を、4mm/秒及び15mm/秒に変更したこと以外に、実施例1と同様にして行われた。そして、いずれの走査速度においても実施例1と同様の結果が得られて、再現性があることを確認できた。
【0052】
《比較例1》
実施例1で用いたポリイミドフィルムに対して、窒素ガス雰囲気下ではなく空気雰囲気下で、実施例1と同様のレーザー光照射を行ったところ、照射箇所のポリイミドフィルムが完全燃焼してしまい、孔が開いた結果となった。