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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048772
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】孔測定方法、及び距離測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20230331BHJP
   E21B 47/04 20120101ALI20230331BHJP
   E21B 47/08 20120101ALI20230331BHJP
   G01C 5/00 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
G01C15/00 104B
E21B47/04
E21B47/08
G01C5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158272
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 勇一
(72)【発明者】
【氏名】大石 康平
(72)【発明者】
【氏名】本地川 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】三浦 宏行
(72)【発明者】
【氏名】石橋 啓司
(72)【発明者】
【氏名】水上 翔太
(57)【要約】
【課題】地盤の孔の所定位置までの深さを測定する測定精度を高めることを目的とする。
【解決手段】孔測定方法は、地盤Gの孔10内に吊り下げられた距離測定装置40によって、距離測定装置40と、孔10の上部に配置された反射対象物80との間の距離を測定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の孔内に吊り下げられた距離測定装置によって、該距離測定装置と、前記孔の上部又は上方に配置された反射対象物との間の距離を測定する、
孔測定方法。
【請求項2】
平面視にて互いに交差する二方向において、前記距離測定装置により、該距離測定装置から前記孔の両側の孔壁までの距離をそれぞれ測定する、
請求項1に記載の孔測定方法。
【請求項3】
前記距離測定装置は、削孔機のケリーバーの先端部に取り付けられた状態で、前記孔内に吊り下げられる、
請求項1又は請求項2に記載の孔測定方法。
【請求項4】
地盤の孔内に吊り下げられ、前記孔の上部又は上方に配置された反射対象物との間の距離を測定する深さ測定部と、
前記深さ測定部と共に前記孔内に吊り下げられ、平面視にて互いに交差する二方向において、前記孔の両側の孔壁との間の距離をそれぞれ測定する孔壁測定部と、
を備える距離測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔測定方法、及び距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無水掘りによって施工された杭孔の拡径部の孔径を測定する測定装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-191247号公報
【特許文献2】特開2008-122118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、杭孔の穴壁に沿って深さ方向に設置された巻尺を、杭孔に挿入されたカメラで撮像することにより杭孔の深さを測定する。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、巻尺を蛇行させずに直線的に設置することが難しく、孔の深さの測定精度が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、地盤の孔の所定位置までの深さを測定する測定精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の孔測定方法は、地盤の孔内に吊り下げられた距離測定装置によって、該距離測定装置と、前記孔の上部又は上方に配置された反射対象物との間の距離を測定する。
【0008】
請求項1に係る孔測定方法によれば、地盤の孔内に吊り下げられた距離測定装置によって、距離測定装置と、孔の上部又は上方に配置された反射対象物との間の距離を測定する。
【0009】
このように地盤の孔内に距離測定装置を吊り下げることにより、距離測定装置と反射対象物との間の距離を測定することができる。また、孔に対する距離測定装置の吊り下げ位置(吊り下げ深さ)を調整することにより、地盤の孔の所定位置までの深さを測定することができる。
【0010】
したがって、地盤の孔の所定位置までの深さを測定する測定精度を高めることができる。
【0011】
請求項2に記載の孔測定方法は、請求項1に記載の孔測定方法において、平面視にて互いに交差する二方向において、前記距離測定装置により、該距離測定装置から前記孔の両側の孔壁までの距離をそれぞれ測定する。
【0012】
請求項2に係る孔測定方法によれば、平面視にて互いに交差する二方向において、距離測定装置により、距離測定装置から孔の両側の孔壁までの距離をそれぞれ測定する。これにより、例えば、孔の中心に距離測定装置を配置することにより、孔の孔径(直径)を測定することができる。
【0013】
また、平面視にて互いに交差する二方向において、距離測定装置から、孔の両側の孔壁までの距離をそれぞれ測定することにより、孔の中心に対する距離測定装置の位置ずれ量を算出することができる。この位置ずれ量に基づいて、孔の孔径を補正することにより、孔径の測定精度を高めることができる。
【0014】
請求項3に記載の孔測定方法は、請求項1又は請求項2に記載の孔測定方法において、前記距離測定装置は、削孔機のケリーバーの先端部に取り付けられた状態で、前記孔内に吊り下げられる。
【0015】
請求項3に係る孔測定方法によれば、距離測定装置は、削孔機のケリーバーの先端部に取り付けられた状態で、孔内に吊り下げられる。
【0016】
ここで、削孔機のケリーバーは、鉛直精度が高く、かつ、軸回りの回転も制御可能とされる。したがって、地盤の孔の所定位置までの深さを測定する測定精度を高めることができる。
【0017】
また、削孔機のケリーバーを流用して孔内に距離測定装置を吊り下げることにより、コストを削減することができる。
【0018】
請求項4に記載の距離測定装置は、地盤の孔内に吊り下げられ、前記孔の上部又は上方に配置された反射対象物との間の距離を測定する深さ測定部と、前記深さ測定部と共に前記孔内に吊り下げられ、平面視にて互いに交差する二方向において、前記孔の両側の孔壁との間の距離をそれぞれ測定する孔壁測定部と、を備える。
【0019】
請求項4に係る距離測定装置によれば、深さ測定部、及び孔壁測定部を備える。深さ測定部は、地盤の孔内に吊り下げられ、孔の上部又は上方に配置された反射対象物との間の距離を測定する。
【0020】
このように地盤の孔内に距離測定装置を吊り下げることにより、距離測定装置と反射対象物との間の距離を測定することができる。また、孔に対する距離測定装置の吊り下げ位置(吊り下げ深さ)を調整することにより、地盤の孔の所定位置までの深さを測定することができる。
【0021】
したがって、地盤の孔の所定位置までの深さを測定する測定精度を高めることができる。
【0022】
また、孔壁測定部は、深さ測定部と共に孔内に吊り下げられ、平面視にて互いに交差する二方向において、孔の両側の孔壁との間の距離をそれぞれ測定する。これにより、例えば、孔の中心に距離測定装置を配置することにより、孔の孔径を測定することができる。
【0023】
また、平面視にて互いに交差する二方向において、孔壁測定部から孔の両側の孔壁までの距離をそれぞれ測定することにより、孔の中心に対する距離測定装置の位置ずれ量を算出することができる。この位置ずれ量に基づいて、孔の孔径を補正することにより、孔径の測定精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、地盤の孔の所定位置までの深さを測定する測定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態における削孔機を示す立面図である。
図2】(A)~(D)は、一実施形態に係る孔測定方法の手順を示す縦断面図である。
図3図2(B)の拡大縦断面図である。
図4図3に示される距離測定装置を示す平面図である。
図5】(A)及び(B)は、孔と距離測定装置との位置関係を模式的に示す平面図である。
図6】一実施形態における制御装置を示すブロック図である。
図7図3に示される反射対象物を示す平面図である。
図8】(A)及び(B)は、一実施形態に係る距離測定装置による孔の孔壁距離、及び孔深さの測定結果を示すグラフである。
図9】孔の中心から外れた位置におけるX軸方向及びY軸方向の孔の必要孔幅を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る孔測定方法、及び距離測定装置について説明する。
【0027】
図1図2(A)、図2(B)、図2(C)、及び図2(D)に示されるように、本実施形態に係る孔測定方法は、水等を使用しない無水掘りによって地盤Gに掘削(削孔)された孔10の所定深さの孔径(直径)を測定する。孔10は、例えば、場所打ち杭用の杭孔とされる。
【0028】
本実施形態では、アースドリル工法によって孔10を削孔する。図1には、アースドリル工法に用いられる削孔機(アースドリル機)20が示されている。削孔機20は、本体22と、ブーム24と、フロントアーム26と、回転駆動装置28と、ケリーバー30と、掘削ヘッド32とを備えている。
【0029】
フロントアーム26は、本体22から延出している。このフロントアーム26の先端部には、回転駆動装置28が設けられている。回転駆動装置28は、ケリーバー30を鉛直、かつ、回転可能に支持している。この回転駆動装置28によって、ケリーバー30が軸回りに回転駆動される。
【0030】
図2(A)~図2(D)に示されるように、ケリーバー30は、伸縮式とされている。このケリーバー30は、互いに伸縮可能に挿入される第一ケリーバー30A、第二ケリーバー30B、及び第三ケリーバー30Cを有している。なお、ケリーバー30は、伸縮式に限らない。
【0031】
図1に示されるように、ケリーバー30の先端部(下端部)には、掘削ヘッド(掘削パケット)32が着脱可能に取り付けられる。掘削ヘッド32は、ケリーバー30と一体に回転可能にケリーバー30に取り付けられる。そして、地盤Gを掘削する際には、回転駆動装置28によってケリーバー30及び掘削ヘッド32を回転させながら降下させる。これにより、掘削ヘッド32によって、地盤Gを掘削される。
【0032】
(距離測定装置)
図3に示されるように、孔10の孔径を測定する際には、掘削ヘッド32に換えて、ケリーバー30の先端部(下端部)に距離測定装置40が着脱可能に取り付けられる。距離測定装置40は、ケリーバー30によって孔10内に吊り下げられる。
【0033】
距離測定装置(レーザ距離測定装置)40は、ベース42と、一対の第一孔壁用レーザ距離計50Xと、一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yと、深さ用レーザ距離計60とを有している。
【0034】
図4に示されるように、ベース42は、平面視にて、矩形のパネル状に形成されている。ベース42の中央部には、取付部44が設けられている。取付部44は、角筒状に形成されており、ベース42の中央部から上方へ突出している。この取付部44には、断面矩形状のケリーバー30の先端部30Tが挿入される。この状態で、取付部44及びケリーバー30の先端部30Tにピン46(図3参照)を貫通させることにより、ケリーバー30の先端部にベース42が取り付けられる。
【0035】
一対の第一孔壁用レーザ距離計50X、一対の第二孔壁用レーザ距離計50Y、及び深さ用レーザ距離計60は、例えば、光パルス方式や位相差方式等の一般的なレーザ距離計とされる。各第一孔壁用レーザ距離計50X、第二孔壁用レーザ距離計50Y、及び深さ用レーザ距離計60は、測定対象物に照射したレーザ光、及び測定対象物で反射されたレーザ光に基づいて、予め定められた測定起点から測定対象物までの距離を測定(算出)する。
【0036】
一対の第一孔壁用レーザ距離計50X、一対の第二孔壁用レーザ距離計50Y、及び深さ用レーザ距離計60は、測定対象物に対し、レーザ光を照射するとともに、測定対象物で反射されたレーザ光を受光する照射受光部52,62を有している。
【0037】
なお、各図に適宜示されるX軸及びY軸は、平面視にて互いに直交する二方向を示している。また、X軸及びY軸は、平面視にて互いに交差する二方向の一例である。
【0038】
(第一孔壁用レーザ距離計)
一対の第一孔壁用レーザ距離計50Xは、取付部44に対して所定方向(X軸方向)の両側に配置されている。また、一対の第一孔壁用レーザ距離計50Xは、平面視にて、各々の照射受光部52を互いに反対側(外側)に向けて配置される。さらに、一対の第一孔壁用レーザ距離計50Xは、レーザ光の照射方向が水平で、かつ、同一直線上に位置するように配置されている。
【0039】
図5(A)に示されるように、一対の第一孔壁用レーザ距離計50Xは、所定方向(X軸方向)において、予め定められた測定起点から孔10の孔壁10Sまでの距離(以下、「孔壁距離」という)を測定(算出)する。
【0040】
なお、本実施形態では、一例として、一対の第一孔壁用レーザ距離計50Xの測定起点が、平面視にて、距離測定装置40の中心40Cに設定されているが、この測定起点は適宜変更可能である。また、第一孔壁用レーザ距離計50Xは、孔壁測定部の一例である。
【0041】
(第二孔壁用レーザ距離計)
図4に示されるように、一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yは、取付部44に対して所定方向と直交する直交方向(Y軸方向)の両側に配置されている。また、一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yは、平面視にて、各々の照射受光部52を互いに反対側(外側)に向けて配置される。さらに、一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yは、レーザ光の照射方向が、水平で、かつ、同一直線上に位置するように配置されている。
【0042】
図5(A)に示されるように、各第二孔壁用レーザ距離計50Yは、直交方向(Y軸方向)において、予め定められた測定起点から孔10の孔壁10Sまでの距離(以下、「孔壁距離」という)を測定(算出)する。
【0043】
なお、本実施形態では、一例として、一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yの測定起点が、平面視にて、距離測定装置40の中心40Cに設定されているが、この測定起点は適宜変更可能である。また、第二孔壁用レーザ距離計50Yは、孔壁測定部の一例である。
【0044】
(深さ用レーザ距離計)
図3に示されるように、深さ用レーザ距離計60は、照射受光部52を上側に向けて配置されている。また、深さ用レーザ距離計60は、レーザ光の照射方向が鉛直になるように配置されている。換言すると、深さ用レーザ距離計60のレーザ光の照射方向は、一対の第一孔壁用レーザ距離計50X及び一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yのレーザ光の照射方向と直交している。
【0045】
深さ用レーザ距離計60は、予め定められた測定起点から、スタンドパイプ12の上に載置された後述する反射対象物80までの距離(以下、「孔深さ」ともいう)を測定(算出)する。反射対象物80は、距離測定装置40の構成要素と捉えることも可能である。
【0046】
なお、本実施形態では、深さ用レーザ距離計60の測定起点が、一対の第一孔壁用レーザ距離計50X及び一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yの測定高さと同じ高さに設定されている。また、深さ用レーザ距離計60は、レーザ光がケリーバー30と干渉しないように、取付部44から離れた位置に配置されている。また、深さ用レーザ距離計60は、深さ測定部の一例である。
【0047】
(制御装置)
図6に示されるように、一対の第一孔壁用レーザ距離計50X、一対の第二孔壁用レーザ距離計50Y、及び深さ用レーザ距離計60は、インターネット等の無線通信回線を介して、制御装置70と接続されている。一対の第一孔壁用レーザ距離計50X、及び一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yは、測定した孔壁距離を、無線送受信機を介して制御装置70に出力する。また、深さ用レーザ距離計60は、測定した孔深さを、無線通信回線を介して制御装置70に出力する。
【0048】
制御装置70は、例えば、クラウド上のサーバコンピュータによって実現される。この制御装置70には、インターネット等の無線通信回線を介して、現場監督等が保有するノートパソコン等の携帯端末72が接続されている。制御装置70は、図3に示されるように、例えば、深さ用レーザ距離計60から入力された孔深さdから、地面GSからのスタンドパイプ12の突出長さLを差し引き、深さ用レーザ距離計60の測定起点から地面GSまでの孔深さd(=d-L)を算出する孔深さ算出部を有している。
【0049】
制御装置70は、一対の第一孔壁用レーザ距離計50X、一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yから入力された孔壁距離、及び孔深さ算出部で算出された孔深さを、図示しない記録装置に記録するとともに、所定の表示形式に変換して携帯端末72(図6参照)に表示する。
【0050】
なお、一対の第一孔壁用レーザ距離計50X、及び一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yの測定高さと、深さ用レーザ距離計60の測定起点とが、鉛直方向にずれている場合、例えば、孔深さ算出部において、一対の第一孔壁用レーザ距離計50X、及び一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yの測定高さと、深さ用レーザ距離計60の測定起点との鉛直方向の距離(ずれ量)に基づいて、孔深さdを算出しても良い。
【0051】
また、一対の第一孔壁用レーザ距離計50X、及び一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yの測定起点が、距離測定装置40の中心40C以外に設定されている場合、例えば、制御装置70の孔壁距離算出部において、各測定起点から距離測定装置40の中心40Cまでの距離(ずれ量)に基づいて、距離測定装置40の中心40Cから孔壁10Sまでの孔壁距離を算出しても良い。
【0052】
(孔測定方法)
次に、本実施形態に係る孔測定方法の一例について説明する。
【0053】
図1及び図2(A)に示されるように、先ず、削孔機20のケリーバー30を回転させながら、掘削ヘッド32によって、地盤Gに所定深度(第一深度D1)の孔10を掘削する。また、孔10の上部にスタンドパイプ12を挿入する。スタンドパイプ12は、円筒状に形成されており、その上部を孔10から上方へ突出させた状態で孔10に挿入される。なお、スタンドパイプ12は、孔10の上部を構成する。
【0054】
次に、孔10からケリーバー30を引き上げ、掘削ヘッド32を距離測定装置40に交換する。次に、ケリーバー30によって距離測定装置40を吊り下げた状態で、距離測定装置40をスタンドパイプ12内に挿入する。そして、図7に示されるように、スタンドパイプ12の中心12Cに、距離測定装置40の中心40Cが位置するように、スタンドパイプ12に対するケリーバー30の位置(平面位置)を調整する。
【0055】
具体的には、一対の第一孔壁用レーザ距離計50X、及び一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yによって、スタンドパイプ12の孔壁12Sまでの孔壁距離をそれぞれ測定する。そして、一対の第一孔壁用レーザ距離計50X、及び一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yで測定された孔壁距離が全て同じになるように、削孔機20のブーム24等によって、スタンドパイプ12に対するケリーバー30の位置(平面位置)を調整する。
【0056】
次に、スタンドパイプ12の上端部に、反射対象物80を載置する。反射対象物80は、例えば、平面視にて矩形枠状の枠体82と、枠体82の下面に取り付けられた反射板84とを有している。
【0057】
反射対象物80は、スタンドパイプ12(孔10)の略半分を覆うように、スタンドパイプ12の上端部に載置される。また、反射対象物80の端部には、ケリーバー30を避けるための略半円状の凹部86が形成されている。図3に示されるように、反射対象物80は、深さ用レーザ距離計60のレーザ照射受光部62を上方から覆うように設置される。
【0058】
この状態で、ケリーバー30を伸長させ、ケリーバー30に吊り下げられた距離測定装置40が地面GSから第一深度D1(図2(A)参照)付近に達するまで、一対の第一孔壁用レーザ距離計50X、及び一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yによって、孔壁距離をそれぞれ測定するとともに、深さ用レーザ距離計60によって孔深さを測定する。
【0059】
一対の第一孔壁用レーザ距離計50X、一対の第二孔壁用レーザ距離計50Y、及び深さ用レーザ距離計60で測定された孔壁距離、及び孔深さは、図示しない無線送受信機を介して、制御装置70(図6参照)に出力される。
【0060】
制御装置70は、孔深さ算出部において、深さ用レーザ距離計60から入力された孔深さ(d)に基づき、距離測定装置40から地面GSまでの孔深さ(d)を算出する。また、制御装置70は、各第一孔壁用レーザ距離計50X、各第二孔壁用レーザ距離計50Yから入力された孔壁距離、及び孔深さ算出部で算出した孔深さ(d)を記録装置に記録するとともに、所定の表示形式に変換して携帯端末72(図6参照)に表示する。
【0061】
次に、図2(C)に示されるように、スタンドパイプ12の上端部から反射対象物80を撤去する。また、ケリーバー30によって距離測定装置40を引き上げ、距離測定装置40を掘削ヘッド32に交換する。この状態で、ケリーバー30を回転させながら掘削ヘッド32によって、孔10が所定深度(第二深度D2)に達するまで地盤Gを再び掘削する。
【0062】
ここで、図8(A)及び図8(B)には、距離測定装置40によって測定された孔壁距離、及び地面GSからの孔深さ(d)が示されている。なお、図8(A)及び図8(B)には、後述する孔10の拡径部10Eまでの孔壁距離、及び地面GSからの孔深さ(d)が示されている。また、図8(A)及び図8(B)には、孔10の鉛直度の許容範囲が示されている。孔10の鉛直度の許容範囲は、例えば、鉛直に対する孔壁10Sの傾きが±1/100以内に設定されている。
【0063】
図8(B)に示されるように、第一深度D1までは、孔10の深度が深くなるに従って、孔10がY軸方向の負側(-側)へ徐々に曲がっている。そのため、第一深度D1から第二深度D2まで孔10を掘削する際には、孔10がY軸方向の正側(+側)へ曲がるように調整しながら孔10を掘削する。
【0064】
次に、孔10からケリーバー30を引き上げ、掘削ヘッド32を距離測定装置40に交換する。そして、図2(D)に示されるように、スタンドパイプ12の上端部に反射対象物80の載置した状態で、距離測定装置40によって、第一深度D1から第二深度D2までの孔壁距離、及び孔深さ(d)をそれぞれ測定する。
【0065】
次に、スタンドパイプ12の上端部から反射対象物80を撤去するとともに、ケリーバー30によって距離測定装置40を引き上げ、距離測定装置40を図示しない拡径用掘削ヘッドに交換する。そして、ケリーバー30を回転させながら拡径用掘削ヘッドによって、孔10が所定深度(第三深度D3)に達するまで地盤Gを再び掘削し、図2(D)に二点鎖線で示されるように、孔10の下端部に拡径部10Eを形成する。
【0066】
次に、孔10からケリーバー30を引き上げ、図示しない拡径用掘削ヘッドを距離測定装置40に交換する。そして、スタンドパイプ12の上端部に反射対象物80の載置した状態で、距離測定装置40によって、第二深度D2から第三深度D3までの孔壁距離、及び孔深さ(d)をそれぞれ測定する。
【0067】
ここで、孔10が曲がっている場合、図5(B)に示されるように、所定深度における孔10の中心10Cから距離測定装置40の中心40Cがずれる。この場合、距離測定装置40では、所定深度における孔10の半径を正確に測定することができない。なお、図5(B)には、地面GS(スタンドパイプ12)における孔10が二点鎖線で示されている。
【0068】
この対策として本実施形態では、図9に示されるように、前述した孔10の鉛直度の許容範囲(例えば孔壁10Sの傾きの±1/100)内、すなわち孔10の中心10Cの心ずれ量の許容範囲内において、孔10の中心10Cから外れた位置におけるX軸方向及びY軸方向の孔10の必要孔幅WX,WYをそれぞれ算出しておく。
【0069】
なお、孔10の中心10Cの心ずれ量は、平面視において、基準となる孔10の中心10Cに対する所定深さの孔10の中心10Cの位置ずれ量である。基準となる孔10の中心10Cは、例えば、スタンドパイプ12の中心12Cや、地面GSにおける孔10の中心10Cとされる。
【0070】
次に、図5(B)に示されるように、例えば、一対の第一孔壁用レーザ距離計50Xによって測定されたX軸方向の孔壁距離xa,xbの差分から、X軸方向において、所定深度における孔10の中心10Cに対する距離測定装置40の位置ずれ量ΔX(=(xa-xb)/2)を算出する。これと同様に、一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yによって測定されたY軸方向の孔壁距離ya,ybの差分から、Y軸方向において、所定深度における孔10の中心10Cに対する距離測定装置40の位置ずれ量ΔY(=(ya-yb)/2)を算出する。
【0071】
算出した距離測定装置40の位置ずれ量ΔX,ΔYに基づいて、図9の表からX軸方向及びY軸方向の必要孔幅を求める。例えば、距離測定装置40の位置ずれ量ΔX,ΔYがそれぞれΔX1,ΔY1の場合、図9の表から、所定深度における孔10の中心10Cの心ずれ量が許容範囲内となり、ΔX1,ΔY1の交点から、X軸方向及びY軸方向の必要孔幅WX,WYが求められる。
【0072】
なお、例えば、距離測定装置40の位置ずれ量ΔX,ΔYがそれぞれΔX2,ΔY2の場合、所定深度における孔10の中心10Cの心ずれ量が許容範囲外となる。
【0073】
次に、測定した孔壁距離xa,xbから、X軸方向における孔10の孔幅wx(=xa+xb)を算出する。これと同様に、測定した孔壁距離ya,ybから、Y軸方向における孔10の孔幅wy(=ya+yb)を算出する。
【0074】
次に、必要孔幅WX,WYと、算出した孔幅wx,wyとをそれぞれ比較する。そして、算出した孔幅wx,wyが必要孔幅WX,WY以上の場合(wx≧WX,wy≧WY)、孔10の掘削精度が許容範囲内となる。一方、算出した孔幅wx,wyが、必要孔幅WX,WY未満の場合(wx<WX,wy<WY)、孔10の掘削精度が許容範囲外となる。
【0075】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0076】
図3に示されるように、本実施形態に係る孔測定方法によれば、地盤Gの孔10内に吊り下げられた距離測定装置40によって孔深さを測定する。より具体的には、距離測定装置40の深さ用レーザ距離計60によって、スタンドパイプ12の上端部に載置された反射対象物80の反射面84Lまでの距離(孔深さd)を測定する。
【0077】
このように地盤Gの孔10内に距離測定装置40を吊り下げることにより、距離測定装置40と反射対象物80との間の距離を測定することができる。また、孔10に対する距離測定装置40の吊り下げ位置(吊り下げ深さ)を調整することにより、地盤Gの孔10の所定位置までの孔深さを測定することができる。
【0078】
したがって、本実施形態では、地盤Gの孔10の所定位置までの孔深さを測定する測定精度を高めることができる。
【0079】
また、本実施形態では、平面視にて互いに直交するX軸方向及びY軸方向において、距離測定装置40により、当該距離測定装置40から孔10の両側の孔壁10Sまでの距離をそれぞれ測定する。
【0080】
例えば、図5(B)に示されるように、一対の第一孔壁用レーザ距離計50Xによって、孔10のX軸方向両側の孔壁距離xa,xbをそれぞれ測定する。また、一対の第二孔壁用レーザ距離計50Yによって、孔10のY軸方向両側の孔壁距離ya,ybをそれぞれ測定する。これらの孔壁距離xa,xb,ya,ybから、所定深度における孔10の中心10Cに対する距離測定装置40の中心40Cの位置ずれ量を算出することができる。この位置ずれ量に基づいて、孔10の孔径を補正することにより、孔10の孔径の測定精度を高めることができる。
【0081】
さらに、本実施形態では、図9に示されるように、孔10の中心10Cの心ずれ量の許容範囲内において、孔10の中心10Cから外れた位置におけるX軸方向及びY軸方向の孔10の必要孔幅WX,WYを予め算出しておく。これにより、孔10の鉛直精度を容易に確認することができる。
【0082】
また、本実施形態では、距離測定装置40が、削孔機20のケリーバー30の先端部30Tに取り付けられた状態で、孔10内に吊り下げられる。
【0083】
ここで、削孔機20のケリーバー30は、鉛直精度が高く、かつ、回転駆動装置28によってケリーバー30の回転も制御可能とされる。このケリーバー30に距離測定装置40を吊り下げることにより、地盤Gの孔10の所定位置までの深さを測定する測定精度を高めることができる。
【0084】
また、削孔機20のケリーバー30を流用して孔10内に距離測定装置40を吊り下げることにより、コストを削減することができる。
【0085】
さらに、距離測定装置40(一対の第一孔壁用レーザ距離計50X、一対の第二孔壁用レーザ距離計50Y、深さ用レーザ距離計60)で測定された孔壁距離、及び孔深さは、例えば、クラウド上の制御装置70で所定の表示形式に変換され、携帯端末72に表示される。
【0086】
これにより、例えば、事務所等において、携帯端末72を保有する現場監督等が、距離測定装置40の測定結果を早期に確認することができるとともに、当該測定結果に基づいて、孔10の掘削方向等を早期に是正することができる。したがって、孔10の施工性が向上するとともに、孔10の鉛直精度を高めることができる。
【0087】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0088】
上記実施形態では、スタンドパイプ12の上端部に反射対象物80を載置した。しかし、反射対象物80は、孔10の上部又は上方において、深さ用レーザ距離計60を上から覆うように配置すれば良い。したがって、反射対象物80は、スタンドパイプ12の上端部に限らず、例えば、スタンドパイプ12の中に配置されても良いし、スタンドパイプ12の上端部から上方へ離れた位置に配置されても良い。また、スタンドパイプ12がない場合は、例えば、孔10の周囲に仮設した架台等の上や、地面GSに反射対象物を配置しても良い。
【0089】
また、上記実施形態では、ケリーバー30によって距離測定装置40を孔10内に吊り下げた。しかし、距離測定装置40は、ケリーバー30に限らず、例えば、ワイヤーやロープ等の吊り材によって、孔内に吊り下げても良い。この場合、距離測定装置40が回転しないように、多点吊りすることが望ましい。
【0090】
また、上記実施形態では、距離測定装置40の深さ測定部が、深さ用レーザ距離計60、距離測定装置40の孔壁測定部が、第一孔壁用レーザ距離計50X及び第二孔壁用レーザ距離計50Yとされている。しかし、距離測定装置40の深さ測定部及び孔壁測定部は、レーザ距離計に限らず、例えば、超音波距離計であっても良い。
【0091】
また、上記実施形態では、孔10に拡径部10Eが設けられている。しかし、拡径部10Eは、適宜省略可能である。
【0092】
また、上記実施形態では、孔10が杭孔とされている。しかし、上記実施形態に係る孔測定方法は、地盤Gに形成される種々の孔に適用可能である。
【0093】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0094】
10 孔
10S 孔壁
20 削孔機
30 ケリーバー
40 距離測定装置
50X 第一孔壁用レーザ距離計(孔壁測定部)
50Y 第二孔壁用レーザ距離計(孔壁測定部)
60 深さ用レーザ距離計(深さ測定部)
80 反射対象物
G 地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9