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  • 特開-リンス剤組成物及び乾燥仕上げ方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048801
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】リンス剤組成物及び乾燥仕上げ方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/20 20060101AFI20230331BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20230331BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
C11D3/20
C11D3/30
C11D1/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158327
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】591225132
【氏名又は名称】株式会社アルボース
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】松本 孝彬
(72)【発明者】
【氏名】藤井 豊
(72)【発明者】
【氏名】中川 和雄
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC03
4H003AC04
4H003BA12
4H003DA05
4H003DA12
4H003DA17
4H003DA19
4H003DC02
4H003EB04
4H003EB05
4H003EB07
4H003EB08
4H003EB14
4H003ED02
4H003ED28
4H003FA21
(57)【要約】
【課題】本発明は、乾燥性能に優れ、かつ乾燥後の跡残りも少ないリンス剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、(A)芳香族カルボン酸、(B)アルカノールアミン、および(C)非イオン性界面活性剤を含有するリンス剤組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族カルボン酸、(B)アルカノールアミン、および(C)非イオン性界面活性剤を含有するリンス剤組成物。
【請求項2】
(A)芳香族カルボン酸が、安息香酸、サリチル酸、およびフタル酸から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のリンス剤組成物。
【請求項3】
(B)アルカノールアミンが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、およびトリスヒドロキシメチルアミノメタンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のリンス剤組成物。
【請求項4】
(C)非イオン性界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、およびプロピレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載のリンス剤組成物。
【請求項5】
(A)芳香族カルボン酸および(B)アルカノールアミンを合計0.1質量%以上含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のリンス剤組成物。
【請求項6】
さらに、(D)アルコール類を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のリンス剤組成物。
【請求項7】
(D)アルコール類が、エタノール、プロピレングリコール、およびグリセリンから選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載のリンス剤組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のリンス剤組成物を用いることを特徴とする、乾燥仕上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のリンス剤組成物及びそれを用いた乾燥仕上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みの医療器具は、安全性や効率性の観点から、一般的に、ウォッシャーディスインフェクター等の自動洗浄・乾燥装置による洗浄が行われている。このような自動洗浄・乾燥装置では、通常、予備洗浄工程、本洗浄工程、すすぎ工程、最終すすぎ工程、乾燥工程を経る。ここで、最終すすぎ工程は、その後の乾燥時間を短縮するために、乾燥機能を有するリンス剤の入ったすすぎ水で被洗浄物をすすぎ処理する工程である。乾燥時間の短縮は、作業従事者の作業時間を短縮することができ、作業従事者への負担の軽減にもつながることから、より乾燥性能に優れるリンス剤が求められている。
【0003】
また、リンス剤は、衛生上のメリットや見た目のきれいさを得る目的で使用される場合も多く、すすぎ水によって乾燥後に生じる跡残りを低減できるリンス剤の開発も行われている。例えば、特許文献1には、ウォータースポットとよばれるシミや白斑を低減する効果を有する、特定のグリセリン及びポリグリセリンの混合物と、脂肪酸とのエステル化反応によって得られるポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分として含有する食器洗浄機用リンス剤が提案されている。しかしながら、リンス剤の乾燥性能および乾燥後の跡残りの低減には未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-008259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、乾燥性能に優れ、かつ乾燥後の跡残りも少ないリンス剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、非イオン性界面活性剤を含むリンス剤組成物において、芳香族カルボン酸およびアルカノールアミンを組み合わせて含有させたリンス剤組成物が、乾燥性能に優れ、かつ乾燥後の跡残りも少ないことを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0007】
[1](A)芳香族カルボン酸、(B)アルカノールアミン、および(C)非イオン性界面活性剤を含有するリンス剤組成物。
[2]芳香族カルボン酸が、安息香酸、サリチル酸、およびフタル酸から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載のリンス剤組成物。
[3](B)アルカノールアミンが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、およびトリスヒドロキシメチルアミノメタンから選ばれる少なくとも1種である、[1]または[2]に記載のリンス剤組成物。
[4](C)非イオン性界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、およびプロピレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載のリンス剤組成物。
[5](A)芳香族カルボン酸および(B)アルカノールアミンを合計0.1質量%以上含有する、[1]~[4]のいずれかに記載のリンス剤組成物。
[6]さらに、(D)アルコール類を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載のリンス剤組成物。
[7](D)アルコール類が、エタノール、プロピレングリコール、およびグリセリンから選ばれる少なくとも1種である、[6]に記載のリンス剤組成物。
[8][1]~[7]のいずれかに記載のリンス剤組成物を用いることを特徴とする、乾燥仕上げ方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乾燥性能に優れ、かつ乾燥後の跡残りも少ないリンス剤組成物を提供することができる。とくに本発明のリンス剤組成物は、乾燥性能に優れることから、例えば、医療器具の洗浄後、乾燥促進のために好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1および比較例2の跡残り評価試験における跡残りの様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書中で使用される用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で解釈される。
【0011】
本発明において、リンス剤組成物は、非イオン性界面活性剤を乾燥促進成分として含有し、洗浄、濯ぎ後の被洗浄物を乾燥させる際、乾燥工程の前に、乾燥時間の短縮を目的として被洗浄物に処理(リンス)されるものをさす。したがって、本発明のリンス剤組成物には、洗浄剤を用途とするものは含まれない。このようなリンス剤組成物は、典型的には、ウォッシャーディスインフェクター等の洗浄・乾燥装置の最終すすぎ工程において、すすぎ用の水に希釈されて使用される。とくにウォッシャーディスインフェクターにおける最終すすぎ工程は、前述のとおり、その後の乾燥時間を短縮するために行われる工程であり、乾燥性能に優れ、かつ乾燥後の跡残りも少ない本発明のリンス剤組成物は、これに好適に用いることができる。なお、ここで、ウォッシャーディスインフェクターとは、医療機器等の製品を洗浄し、常圧で熱水消毒することを意図した装置のことをいう。
【0012】
<リンス剤組成物>
本発明のリンス剤組成物は、(A)芳香族カルボン酸、(B)アルカノールアミンおよび(C)非イオン性界面活性剤を含有する。本発明のリンス剤組成物は、(A)芳香族カルボン酸および(B)アルカノールアミンを組み合わせて含有することで、リンス剤組成物に含まれる(C)非イオン性界面活性剤に基づく乾燥性能を向上させることができる。また、このような成分の組み合わせにより、乾燥後の跡残りが低減されている。
【0013】
[(A)芳香族カルボン酸]
本発明において、(A)芳香族カルボン酸は、当該技術分野において公知のものを、特に制限なく、広く使用することができる。具体的に、例えば、安息香酸、サリチル酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ケイ皮酸、トルイル酸、フタル酸、フェニル酢酸、2-フェニルプロピオン酸、フェノキシ酢酸、フェニルピルビン酸、t-ブチル安息香酸、3,5-ジ-t-ブチル安息香酸、3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸、ベンゾイル安息香酸、アントラニル酸、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、1,2-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシフェニル酢酸、3-ヒドロキシフェニル酢酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸、マンデル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2-メトキシフェニル酢酸、3-メトキシフェニル酢酸、4-メトキシフェニル酢酸等を使用できる。
【0014】
このような芳香族カルボン酸の中でも、安息香酸、サリチル酸およびフタル酸を好適に使用でき、とくに安息香酸を好適に使用できる。なお、本発明のリンス剤組成物は上記(A)芳香族カルボン酸を1種単独で含有してもよいし、複数種を含有していてもよい。
【0015】
本発明のリンス剤組成物における(A)芳香族カルボン酸の含有量は、本発明の効果が奏される範囲であれば特に制限はないが、例えば、0.01質量%以上60質量%以下の範囲とすることができる。(A)芳香族カルボン酸の含有量の下限としては、乾燥促進、仕上がりの観点から、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が更に好ましい。また、(A)芳香族カルボン酸の含有量の上限としては、リンス剤組成物の安定性の観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。(A)芳香族カルボン酸の含有量の数値範囲としては、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0016】
[(B)アルカノールアミン]
本発明において、(B)アルカノールアミンは、当該技術分野において公知のものを、特に制限なく、広く使用することができる。具体的には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールおよびトリスヒドロキシメチルアミノメタンを使用することができる。中でも、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールおよびトリスヒドロキシメチルアミノメタンを好適に使用でき、とくにトリエタノールアミンを好適に使用できる。なお、本発明のリンス剤組成物は上記(B)アルカノールアミンを1種単独で含有してもよいし、複数種を含有していてもよい。
【0017】
本発明のリンス剤組成物における(B)アルカノールアミンの含有量は、本発明の効果が奏される範囲であれば特に制限はないが、例えば、0.01質量%以上60質量%以下の範囲とすることができる。(B)アルカノールアミンの含有量の下限としては、乾燥促進、仕上がりの観点から、1質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、9質量%以上が更に好ましい。また、(B)アルカノールアミンの含有量の上限としては、リンス剤組成物の安定性の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましい。(B)アルカノールアミンの含有量の数値範囲としては、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、6質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、9質量%以上25質量%以下であることが更に好ましい。
【0018】
本発明のリンス剤組成物中の(A)芳香族カルボン酸と(B)アルカノールアミンの質量比[(A)/(B)]は、pHが弱酸性~弱アルカリ性になるように調整される。例えば、0.01~100であり、0.1~10であることが好ましく、0.3~2.0であることがより好ましく、0.5~1.0であることがとくに好ましい。
【0019】
また、本発明のリンス剤組成物中の(A)芳香族カルボン酸および(B)アルカノールアミンの合計含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上がより好ましく、9質量%以上が更に好ましく、15質量%以上が特に好ましい。
【0020】
[(C)非イオン性界面活性剤]
本発明のリンス剤組成物における(C)非イオン性界面活性剤は、乾燥性能に寄与する成分である。本発明において、(C)非イオン性界面活性剤は、非イオン性界面活性剤に分類されるものであれば特に限定されず使用でき、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール、エチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、エチレンジアミンテトラポリオキシプロピレンポリオキシエチレン、アルキルアルカノールアミド、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、およびプロピレングリコール脂肪酸エステルを使用することができる。中でも、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、およびプロピレングリコール脂肪酸エステルを好適に使用でき、とりわけ、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルを好適に使用できる。
【0021】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノカプリル酸モノグリセリル、モノカプリン酸モノグリセリル、モノラウリン酸モノグリセリル、モノミリスチン酸モノグリセリル、モノパルミチン酸モノグリセリル等が例示でき、モノカプリル酸モノグリセリル、モノカプリン酸モノグリセリル、およびモノラウリン酸モノグリセリルが好ましい。
【0022】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリン酸ジグリセリル、モノラウリン酸ジグリセリル、モノミリスチン酸ジグリセリル、モノカプリル酸ヘキサグリセリル、モノカプリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、モノカプリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等が例示でき、モノカプリル酸ヘキサグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、およびモノラウリン酸ジグリセリルが好ましい。
【0023】
ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンカプリル酸グリセリル、ポリオキシエチレンカプリン酸グリセリル、ポリオキシエチレンラウリン酸グリセリル、ポリオキシエチレンミリスチン酸グリセリル、ポリオキシエチレンパルミチン酸グリセリル、ポリオキシエチレンイソステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル等が例示でき、ポリオキシエチレンカプリル酸グリセリル、ポリオキシエチレンカプリン酸グリセリル、ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリルおよびポリオキシエチレンイソステアリン酸グリセリルが好ましい。
【0024】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、カプリル酸ソルビタン、カプリン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン等が例示でき、カプリル酸ソルビタンが好ましい。
【0025】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、ラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ミリスチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、パルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ベヘニン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が例示でき、ラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンおよびオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンが好ましい。
【0026】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖モノラウリン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジオレイン酸エステル等が例示でき、ショ糖モノラウリン酸エステルが好ましい。
【0027】
プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、モノカプリル酸プロピレングリコール、モノカプリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノミリスチン酸プロピレングリコール、モノパルミチン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノベヘン酸プロピレングリコールが例示でき、モノカプリル酸プロピレングリコールが好ましい。
【0028】
なお、本発明のリンス剤組成物は上記(C)非イオン性界面活性剤を1種単独で含有してもよいし、複数種を含有していてもよい。
【0029】
本発明のリンス剤組成物における(C)非イオン性界面活性剤の含有量は、本発明の効果が奏される範囲であれば特に制限はないが、例えば、0.1質量%以上70質量%以下の範囲とすることができる。(C)非イオン性界面活性剤の含有量の下限としては、乾燥促進、仕上がりの観点から、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。また、(C)非イオン性界面活性剤の含有量の上限としては、リンス剤組成物の安定性の観点から、50質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。(C)非イオン性界面活性剤の含有量の数値範囲としては、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、3質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0030】
[(D)アルコール類]
本発明のリンス剤組成物は、上記の成分に加えて(D)アルコール類を含有することができる。本発明のリンス剤組成物における(D)アルコール類は、貯蔵安定性の観点から含有される。(D)アルコール類は、当該技術分野において公知のものを、特に制限なく使用でき、1価のアルコール類のみでなく、2価、3価の多価アルコール類も使用できる。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール等を使用することができる。中でも、エタノール、プロピレングリコール、およびグリセリンを好適に使用できる。なお、本発明のリンス剤組成物は上記(D)アルコール類を1種単独で含有してもよいし、複数種を含有していてもよい。
【0031】
また、本発明のリンス剤組成物において、(D)アルコール類は必須の成分でなく、アルコール類を含有しなくともよい。本発明のリンス剤組成物が、アルコール類を含有しない場合、消防法上の危険物になる可能性を回避できて有利である。
【0032】
本発明のリンス剤組成物における(D)アルコール類の含有量に、特に制限はないが、例えば、0.1質量%以上70質量%以下の範囲とすることができる。(D)アルコール類の含有量の下限としては、貯蔵安定性の観点から、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。また、(D)アルコール類の含有量の上限としては、危険物になる可能性を回避する観点から、50質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。(D)アルコール類の含有量の数値範囲としては、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、3質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0033】
本発明のリンス剤組成物は、上記(A)~(D)成分に加えて、必要に応じて水、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、防錆剤、pH調整剤、退色防止剤、増粘剤、分散剤、安定化剤、着色剤、香料等を含有させることができる。
【0034】
本発明のリンス剤組成物が含有する水としては、特に限定されず、例えば水道水、イオン交換水、精製水、蒸留水、純水、軟水等が挙げられる。
【0035】
本発明のリンス剤組成物のpHは、25℃で3以上11以下の範囲に設定することが好ましく、貯蔵安定性の観点から、4以上の範囲に設定するのがより好ましく、5以上の範囲に設定するのが更に好ましく、6以上の範囲に設定することが特に好ましい。また、10以下の範囲に設定することがより好ましく、9以下の範囲に設定することが更に好ましく、8以下の範囲に設定することが特に好ましい。リンス剤組成物のpHの数値範囲としては、3以上11以下の範囲に設定することがより好ましく、4以上10以下が更に好ましく、5以上9以下が特に好ましく、6以上8以下が最も好ましい。
【0036】
本発明のリンス剤組成物は、上述の各成分を常法により混合することで製造することができる。
【0037】
本発明のリンス剤組成物は、上述のとおり乾燥時間の短縮を目的として使用されるものであって、例えば、乾燥促進用リンス剤組成物ともいうことができる。また、例えば、仕上げ剤組成物、すすぎ剤組成物、乾燥促進剤組成物、乾燥仕上げ剤組成物ともいうことができる。
【0038】
また、本発明のリンス剤組成物は、乾燥性能に優れ、かつ乾燥後の跡残りも少ないリンス剤であることから、食器、コンテナ容器、医療器具等をリンスするのに好適に用いられ得る。中でも洗浄、濯ぎ後のコンテナ容器、医療器具をリンスするのに好適に用いられ、とくにウォッシャーディスインフェクター用のリンス液として好適に用いられ得る。なおここで、医療器具としては、例えば、鑷子、鉗子、剪刀、膿盆、吸引管、内視鏡、カテーテル、注射針等が含まれ、コンテナ容器としては、例えば、医療器具を入れておく滅菌コンテナ等が含まれる。
【0039】
本発明のリンス剤組成物の使用態様は特に限定されるものではないが、例えば水等で例えば50~100,000倍、好ましくは70~10,000倍、より好ましくは100~10,000倍、最も好ましくは200~1000倍に希釈した水溶液として、医療器具等のリンスに使用することができる。そこで、使用時(希釈時)の各成分の濃度として、具体的に以下の濃度が例示できる。
【0040】
(A)芳香族カルボン酸の使用時の濃度は、例えば、0.00001質量%以上0.5質量%以下の範囲とすることができる。下限としては、0.0001質量%以上が好ましく、0.0005質量%以上がより好ましく、0.007質量%以上が更に好ましい。また、上限としては、0.3質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.025質量%以下であることが更に好ましい。使用時の濃度の数値範囲としては、0.0001質量%以上0.3質量%以下であることが好ましく、0.0005質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましく、0.007質量%以上0.025質量%以下であることが更に好ましい。
【0041】
(B)アルカノールアミンの使用時の濃度は、例えば、0.00001質量%以上0.5質量%以下の範囲とすることができる。下限としては、0.0001質量%以上が好ましく、0.0006質量%以上がより好ましく、0.009質量%以上が更に好ましい。また、上限としては、0.4質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.03質量%以下であることが更に好ましい。使用時の濃度の数値範囲としては、0.0001質量%以上0.4質量%以下であることが好ましく、0.0006質量%以上0.2質量%以下であることがより好ましく、0.009質量%以上0.03質量%以下であることが更に好ましい。
【0042】
(C)非イオン性界面活性剤の使用時の濃度は、例えば、0.00001質量%以上0.8質量%以下の範囲とすることができる。下限としては、0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。また、上限としては、0.6質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.045質量%以下であることが更に好ましい。使用時の濃度の数値範囲としては、0.0001質量%以上0.6質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上0.3質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上0.045質量%以下であることが更に好ましい。
【0043】
(D)アルコール類の使用時の濃度は、例えば、0.00001質量%以上1.0質量%以下の範囲とすることができる。下限としては、0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。また、上限としては、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.045質量%以下であることが更に好ましい。使用時の濃度の数値範囲としては、0.0001質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上0.045質量%以下であることが更に好ましい。
【0044】
<乾燥仕上げ方法>
本発明の乾燥仕上げ方法は、本発明のリンス剤組成物を用いることを特徴とする。この方法によれば、本発明のリンス剤組成物を用いることから、乾燥時間の短縮および乾燥後の跡残りの抑制を期待できる。より具体的に、本発明の乾燥仕上げ方法は、例えば、以下に説明するように実施できる。なお、この乾燥仕上げ方法の説明には、前述の本発明のリンス剤組成物の記載が援用できる。
【0045】
本発明の乾燥仕上げ方法は、例えば、食器、コンテナ容器、医療器具等を含む広い範囲のものを対象物とすることができるが、好ましくは、コンテナ容器、医療器具を対象物とする。
【0046】
本発明の乾燥仕上げ方法は、典型的には、対象物を本発明のリンス剤組成物を用いてリンスする工程と、リンス後の対象物を乾燥する工程を含む。例えば、本発明の乾燥仕上げ方法は、一般的なウォッシャーディスインフェクターによる洗浄機・乾燥機機能により、その最終すすぎ工程および乾燥工程で実施される。ただし、本発明の乾燥仕上げ方法は、ウォッシャーディスインフェクターによる洗浄機・乾燥機機能によるものでなくても、広く実施が可能である。
【0047】
リンス工程では、対象物を本発明のリンス剤組成物を用いてリンスする。典型的には、本発明のリンス剤組成物を水で所定倍に希釈し、その希釈水溶液で対象物を処理する。より具体的にはこの処理は、例えば、ウォッシャーディスインフェクターのような噴射洗浄機であれば、その最終すすぎ工程において上記希釈水溶液が対象物に噴射されることで行われる。ここでの希釈倍率はリンス剤組成物における記載の希釈倍率でよく、また、この処理は、例えば70℃以上において行われる。
【0048】
乾燥工程では、上記リンス後の対象物を乾燥する。乾燥方法は、とくに限定されるものではないが、典型的には、リンス後の対象物を、乾燥機を用いて乾燥させればよい。例えば、ウォッシャーディスインフェクターによる場合であれば、最終すすぎ後その乾燥工程において、ウォッシャーディスインフェクターの乾燥機機能により乾燥される。
【0049】
また、本発明の乾燥仕上げ方法は、例えば、リンス工程の前工程として、さらに、対象物を、洗浄剤を用いて洗浄する工程、および洗浄後の対象物を、水を用いてすすぐすすぎ工程を有していてもよい。例えば、一般的なウォッシャーディスインフェクターであれば、通常、予備洗浄工程(水のみで洗浄する工程)、本洗浄工程(洗浄剤を用いて洗浄する工程)、すすぎ工程、最終すすぎ工程(本発明におけるリンス工程)、乾燥工程を経るが、本発明の乾燥仕上げ方法においても、同様の工程を含ませることができる。
【0050】
なお、本発明の乾燥仕上げ方法は、前述のとおり、ウォッシャーディスインフェクターにより好適に実施が可能であることから、例えば、ウォッシャーディスインフェクターを用いる乾燥仕上げ方法、ウォッシャーディスインフェクターにおける乾燥仕上げ方法などであってもよい。
【0051】
<乾燥方法>
本発明の乾燥方法は、本発明のリンス剤組成物を用いることを特徴とする。この方法によれば、本発明のリンス剤組成物を用いることから、乾燥時間の短縮および乾燥後の跡残りの抑制を期待できる。この乾燥方法は、具体的には、上記乾燥仕上げ方法と同様の工程により実施可能であり、上記乾燥仕上げ方法における説明がこの乾燥方法の説明に援用される。
【実施例0052】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0053】
下記表1に示す組成のリンス剤組成物を調製し、以下の試験を行った。なお、表1中の数値の単位は質量%である。
【0054】
[跡残り評価試験]
表1の各リンス剤組成物について、脱塩水を用いて0.5%希釈液を作成し、これら希釈液を100mLずつステンレスプレート(SUS430)の表面にかけ、このステンレスプレートを110℃に設定された乾燥機内に設置することで、ステンレスプレート上の希釈液を完全に乾燥させた。乾燥後、ステンレスプレート表面の跡残りの様子を目視で観察し、各リンス剤組成物の跡残りを評価した。評価基準は以下のとおりである。
〇:白い跡残りが認められなかった、若しくはほとんど認められなかった
×:白い跡残りがはっきりと認められた
【0055】
[濡れ性評価試験]
ステンレスプレート(SUS430)を100℃に設定されたホットプレート上に設置することで、ステンレスプレートを加熱した。表1の各リンス剤組成物について、水道水を用いて0.1%希釈液を作成し、これら希釈液を20μLずつ前記ステンレスプレート(SUS430)の表面に滴下し、完全に乾燥させた。乾燥後、ステンレスプレート表面の跡残り部分の面積について、顕微鏡を用いて測定した。測定された跡残りの面積に基づいて、各リンス剤組成物の濡れ性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:面積が27.5mm以上
○:面積が25mm以上27.5mm未満
×:面積が25mm未満
【0056】
【表1-1】
【0057】
【表1-2】
【0058】
【表1-3】
【0059】
【表1-4】
【0060】
跡残り評価試験および濡れ性評価試験の結果を表1に示す。表1に示されるとおり、非イオン性界面活性剤にくわえ、芳香族カルボン酸およびアルカノールアミンを含有する実施例1~27のリンス剤組成物は、跡残りがほとんどなく、かつ濡れ性にも優れていた。とくに、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルのいずれか1種を含有するリンス剤組成物(実施例1~24)は、より優れた濡れ性を有しており、とくに乾燥性能が高いことがわかった。一方、芳香族カルボン酸およびアルカノールアミンを含有しない比較例1のリンス剤組成物は、跡残りはほとんどなかったものの、濡れ性に劣っていた。また、芳香族カルボン酸およびアルカノールアミンではなく、安息香酸ナトリウムを含有する比較例2のリンス剤組成物は、濡れ性には優れていたものの、跡残りが目立った。
【0061】
以上のとおり、本発明のリンス剤組成物は、乾燥後の跡残りがほとんどなく、かつ濡れ性にも優れ、リンス剤として優れることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のリンス剤組成物は、乾燥性能に優れ、かつ乾燥後の跡残りも少ない。このため、例えば、医療器具等をウォッシャーディスインフェクターで洗浄する際に使用されるリンス液として好適に用いられ得る。
図1