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特開2023-48808ゴルフクラブ用シャフト、及び、ゴルフクラブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048808
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ用シャフト、及び、ゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/10 20150101AFI20230331BHJP
   A63B 53/12 20150101ALI20230331BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20230331BHJP
【FI】
A63B53/10 A
A63B53/12 B
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158335
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】508374380
【氏名又は名称】株式会社スポーツライフプラネッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 禎志
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA05
2C002CS04
2C002MM02
2C002MM04
(57)【要約】
【課題】振動減衰効果が高く、重量バランスの調整がし易いと共に、使用時に違和感が生じることのないゴルフクラブ用シャフトを提供する。
【解決手段】本発明は、軸方向に3本以上のシャフトパーツ11,12,13が連結されるゴルフクラブ用シャフト10であって、隣接するシャフトパーツが軸方向で重なることなく、各シャフトパーツの端縁を当て付けて固定する接合部材20,30を有することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に3本以上のシャフトパーツが連結されるゴルフクラブ用シャフトであって、
隣接するシャフトパーツが軸方向で重なることなく、各シャフトパーツの端縁を当て付けて固定する接合部材を有することを特徴とするゴルフフクラブ用シャフト。
【請求項2】
前記3本以上のシャフトパーツは、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂材によるプリプレグシートによって成形されたFRP製、及び、スチール製のものが含まれていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフフクラブ用シャフト。
【請求項3】
前記接合部材は、露出する本体部と、前記本体部に軸方向に突出して前記シャフトパーツの内周面に接合される突出部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のゴルフフクラブ用シャフト。
【請求項4】
前記突出部の外周面には、軸方向に連続して凹凸が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のゴルフフクラブ用シャフト。
【請求項5】
前記接合部材は、露出する本体部と、前記本体部に形成され、前記シャフトパーツの外周面を接合する軸方向穴と、を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のゴルフフクラブ用シャフト。
【請求項6】
前記軸方向穴の内周面には、軸方向に連続して凹凸が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のゴルフフクラブ用シャフト。
【請求項7】
前記接合部材の露出する本体部は、先端側に向けて次第に縮径するテーパを有することを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項8】
前記接合部材の露出する本体部は、軸方向に10mm~70mmの範囲で形成されていることを特徴とする請求項7に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項9】
前記シャフトパーツは、グリップが装着される元側シャフト、ヘッドが装着される先端シャフト、及び、これらの間に配設される中間シャフトの3本で構成され、
前記接合部材は、先端シャフトと中間シャフトとの間、及び、元側シャフトと中間シャフトとの間に配設されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載されたゴルフクラブ用シャフトを有することを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項11】
請求項10に記載されたゴルフクラブは、その重心が前記接合部材の位置に設定されることを特徴とするゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ用シャフトに関し、詳細には、複数のパーツによって構成されるゴルフクラブ用シャフト、及び、そのようなシャフトを備えたゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフクラブ(特に、パタークラブ)に用いられるシャフトは、強化繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシートで成形されたFRP製、或いは、スチール製のものが知られている。また、最近では、BGT社が開発したスタビリティシャフト(非特許文献1)や、キャロウェイ社のパタークラブに装着されるストロークラボシャフト(非特許文献2)のように、FRP製のシャフトパーツとスチール製のシャフトパーツを連結させた複合シャフトも知られている。
【0003】
前記複合シャフトは、中間から手元がFRP製、中間から先端がスチール製となっており、両者を、金属や樹脂等の接合部材(接合パーツ)で軸方向に連結した構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】https://stabirityshaft.jp
【非特許文献2】https://callawaygolf.jp/special/strokelab#2019/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スタビリティシャフトは、2つのシャフト(FRP製、スチール製)を接合部材で軸方向に連結する構成であるため、接合部分でのシャフトの径差が大きくなり、構えたときの視認性が悪く、違和感が生じ易い。また、ストロークラボシャフトは接合部分の径差が少ないが、シャフト部分が細いため、グリップとシャフトの太さの違いが大きく、同じく違和感が生じ易い。また、上記した複合シャフトは2つのシャフトを接合部材の両側で接続するため(接合部分が2か所)、振動減衰効果が少ない。更に、比重の重い部分が中間部に存在したり、グリップエンド側に存在することから、クラブの重心位置等を考慮して、適切な重量バランスに設定することが難しい。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、振動減衰効果が高く、重量バランスの調整がし易いと共に、使用時に違和感が生じることのないゴルフクラブ用シャフト、及び、ゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係るゴルフクラブ用シャフトは、軸方向に3本以上のシャフトパーツが連結され、隣接するシャフトパーツが軸方向で重なることなく、各シャフトパーツの端縁を当て付けて固定する接合部材を有することを特徴とする。
【0008】
上記したゴルフクラブ用シャフトは、シャフトが3本以上に分割され、隣接するシャフトパーツを接合部材で固定するため、隣接するシャフト間の径差(接合部分でのシャフトの外径差)を小さくすることが可能となり、使用時に違和感が生じることが抑制される。また、3本以上のシャフトを接合、固定することから、振動減衰効果が高くなり、接合部材の配設個所も増えるので、重量バランスの調整が行い易くなる。
【0009】
また、本発明は、上記した構成のシャフトを有するゴルフクラブであることを特徴とする。この場合、ゴルフクラブとしては、アイアンクラブ、ウッドクラブ(ドライバー、フェアウェイウッド、ユーティリティ)、パタークラブ等が含まれるが、特に、スイング時にシャフトを視認し易く、安定したストロークを実現することが可能になることから、パタークラブに適した構成となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、振動減衰効果が高く、重量バランスの調整がし易いと共に、使用時に違和感が生じることのないゴルフクラブ用シャフト、及び、ゴルフクラブが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るゴルフクラブ(パタークラブ)の一実施形態を示す図。
図2】(a)は図1に示すゴルフクラブに用いられる接合部材(元側接合部材)の側面図、(b)は図(a)を先端側から見た図、(c)は図(a)を基端側から見た図。
図3】(a)は図1に示すゴルフクラブに用いられる接合部材(先側接合部材)の側面図、(b)は図(a)を先端側から見た図、(c)は図(a)を基端側から見た図。
図4】本発明の別の実施形態を示す図であり、(a)は先側接合部材を示す側面図、(b)は図(a)を先端側から見た図、(c)は図(a)を基端側から見た図。
図5図4の先側接合部材を配設したゴルフクラブ(パタークラブ)を示す図。
図6】ゴルフクラブシャフトの重量分布例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るゴルフクラブ用シャフト、及び、ゴルフクラブの実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、ゴルフクラブの一実施形態を示す図である。本実施形態に係るゴルフクラブ1は、シャフト10の先端にヘッド50を止着したパタークラブとして構成されたものであり、シャフト10の基端部には、グリップ60が止着されている。
【0013】
前記ヘッド50は、打球面51を具備した金属製で構成されており、ヒール側の上面には、上方に突出するようにホーゼル部52が形成されている。前記ホーゼル部52の先端には、シャフト固定穴を備えたシャフト連結部(ソケット)53が設けられており、シャフト固定穴にシャフト10の先端側が嵌合、止着されることで、ヘッド50とシャフト10が一体化される。なお、ヘッド50の構成(形状、大きさ等)や、ヘッド50とシャフト10の固定方法については、種々変形することができ、特定の構造に限定されることはない。
【0014】
前記シャフト10は、軸方向に3本以上のシャフトパーツが連結されることで構成されており、本実施形態では、3本のシャフトパーツで構成されている。以下、これら3本のシャフトパーツについては、前記グリップ60が装着される部分を元側シャフト11、ヘッド50が装着される部分を先端シャフト13、及び、これらの間に配設されるシャフトを中間シャフト12とも称する。これらの分割されたシャフトパーツは、元側シャフト11と中間シャフト12との間、及び、中間シャフト12と先端シャフト13との間に、シャフト同士を連結、固定する接合部材20,30が配設されることで、1本のシャフトとして構築される。
【0015】
前記3本以上のシャフトパーツは、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂材によるプリプレグシートによって成形されたFRP製のものが含まれており、本実施形態では、3本ともFRP製の管状体で構成されている。また、シャフトパーツには、スチール製の管状体が含まれていても良い。例えば、それまで使用していたゴルフクラブのシャフトがスチール製であった場合、シャフトの先端側を切断し、その部分に接合部材を配設し、それよりも後方側にFRP製の中間シャフト及び元側シャフトを連結、固定することで、既存のゴルフクラブを容易にバランス調整(カスタマイズ)することが可能となる。
【0016】
なお、FRP製のシャフトパーツは、長さ、重量、肉厚、プリプレグシートの強化繊維の構成や樹脂含浸量、巻回数、配列パターン等、適宜変形することが可能である。また、シャフトパーツは、中実状に構成されたものであっても良い。
【0017】
前記隣接するシャフト同士を連結、固定する接合部材20,30は、隣接するシャフトパーツが軸方向で重なることなく、各シャフトパーツの端縁を当て付けて固定するよう構成されている。すなわち、隣接するシャフトの端縁は、前記連結、固定状態において、接合部材を介在して軸方向に離間した状態(分離した状態)になっており、これによりヘッドで打球した際の振動の減衰効果が高められ、打感を良好にすることが可能となる。
【0018】
前記元側シャフト11と中間シャフト12との間に配設される接合部材20は、シャフトの中間よりも手元側にあることが好ましい。また、中間シャフト12と先端シャフト13との間に配設される接合部材30は、シャフトの中間よりも先端側にあることが好ましい。このように接合部材20,30をシャフトの中間に対して両側に配設することで、パタークラブでは、ストロークを安定化させることが可能となる。特に、ゴルフクラブの重心を、接合部材30の位置となるように設定することで、視覚的に重心位置(重い部分)をプレーヤに意識させることができ、ストロークを安定化させることが可能となる。
【0019】
次に、図1に加え、図2及び図3を併せて参照しながら、接合部材20,30の構成について説明する。
前記接合部材20,30の重量については、ゴルフクラブの仕様、シャフトの仕様、ヘッドの重量、全体のシャフトバランス等を考慮して適切な重さのものが用いられるが、先側の接合部材30については、10~20g、元側の接合部材20については、20~30g乃至は20~40gのものが用いられる。この場合、接合部材20,30の構成材料については特に限定されることはないが、硬質樹脂、金属等で一体形成することが可能である。
【0020】
前記接合部材20は、図2に示すように、露出する本体部21と、本体部21に軸方向の両側に突出してシャフトパーツ(元側シャフト11,中間シャフト12)の内周面に接合される突出部22,23と、を備えている。前記突出部22には、元側シャフト11の先端側が嵌入され、前記突出部23には、中間シャフト12の基端側が嵌入される。この場合、嵌入されたシャフト11,12の各端縁11a,12aは、本体部21の軸方向両側に形成された段部22b,23bに当て付けられ、各シャフトの表面は、段部に当て付いた状態で本体部21の表面と面一になるように構成されている。
【0021】
本実施形態において、各シャフト11,12の内周面と、突出部22,23の外周面との固定は、接着で行なわれる。このため、突出部22,23の表面には、アンカー効果を高めるように、例えば、軸方向に沿って連続するように凹凸22a,23aを形成しておくことが好ましい。このような凹凸については、図2に示すように、軸方向に連続形成されたリング状、乃至は、螺旋状に形成したり、表面を粗面化する等、適宜変形することが可能である。
或いは、各シャフト11,12の内周面に雌ネジを形成すると共に、突出部22,23の外周面に雄ネジを形成して螺合構造によって着脱可能な構成にすることで、シャフトパーツや接合部材の交換、分解が容易に行えるようになる。また、雄ネジ、雌ネジによる螺合方法は、本体部21部分の内部構造にて実施することも可能である。
【0022】
ここで、図2及び図3を参照して、上記した各シャフトパーツ11,12,13の径と接合部材20,30の具体的な寸法について例示しながら説明する。
なお、本実施形態では、元側シャフト11,中間シャフト12,先側シャフト13は、ストレート状の管状体として構成されているが、先細状のテーパが形成された構成であっても良い。
【0023】
前記元側シャフト11の内径(接合部材20の突出部22の外径)D1は、12.80mmであり、その外径(接合部材20の段部22bの外径)D2は、15.00mmである。従って、元側シャフト11の肉厚は、2.20mmとなっている。前記段部22bは、この肉厚の元側シャフト11の端縁11aが当て付いて、元側シャフト11の表面と本体部21が面一状となる。なお、元側シャフト11の内径と接合部材20の突出部22の外径D1は、元側シャフトが挿入できるように、両者の間に多少のクリアランス(例えば、0.1mm程度)が設けられている。すなわち、元側シャフト11の内径と接合部材20の突出部22の外径D1は厳密に一致しなくても良い。
【0024】
また、中間シャフト12の内径(接合部材20の突出部23の外径)D3は、7.80mmであり、その外径(接合部材20の段部23bの外径)D4は、12.00mmである。従って、中間シャフト12の肉厚は、4.20mmとなっている。前記段部23bは、この肉厚の中間シャフト12の端縁12aが当て付いて、中間シャフト12の表面と本体部21が面一状となる。
上記した構成によれば、元側シャフト11は、中間シャフト12と比較すると、太径で薄肉厚に形成されている。
【0025】
前記接合部材20の本体部21は、元側シャフト11と中間シャフト12の外径差(15.00mmと12.00mmの外径差;3.00mm)が、視覚上、自然に変化するように、表面に先細状のテーパを備えている。この場合、本体部21の軸方向長さLについては、シャフト11,12の肉厚や径にもよるが、短すぎると径差が把握し易くなり、長すぎると重量が重くなり過ぎる(各パーツを接合した後のシャフト重量が)ことから、軸方向に10mm~50mmの範囲で形成されていることが好ましい。本実施形態の本体部21の軸方長さLは、30mmに設定されており、これにより、ストレート状に形成された元側シャフト11と中間シャフト12の外径差を違和感無く連続させることが可能となる。
【0026】
前記突出部22,23の軸方向長さL1,L2については、短すぎると接合強度が弱くなると共にシャフトが撓み易くなってしまい、長すぎると重量増加するため、軸方向に40mm~60mmの範囲で形成されていることが好ましい。本実施形態の突出部22,23の軸方長さL1,L2は、共に50mmに設定されており、これにより、接合強度を高くしてシャフトの撓みを防止している。
なお、突出部については、軸方向に長く形成し、その内部を空洞状に形成することで、軽量化を図ることも可能であり、これにより軸方向長さを長くすることも可能である。
【0027】
前記接合部材30は、図3に示すように、露出する本体部31と、本体部31に軸方向の両側に突出してシャフトパーツ(中間シャフト12,先側シャフト13)の内周面に接合される突出部32,33と、を備えている。前記突出部32には、中間シャフト12の先端側が嵌入され、前記突出部33には、先側シャフト13の基端側が嵌入される。この場合、嵌入されたシャフトパーツ12,13の各端縁12a,13aは、それぞれ本体部31の段部32b,33bに当て付けられ、各シャフトの表面は、段部に当て付いた状態で本体部31の表面と面一になるように構成されている。
【0028】
前記各シャフト12,13の内周面と、突出部32,33の外周面との固定は、接着で行なわれる。このため、突出部32,33の表面には、アンカー効果を高めるように、例えば、軸方向に沿って連続するように凹凸32a,33aを形成しておくことが好ましい。このような凹凸については、図3に示すように、軸方向に連続形成されたリング状、乃至は、螺旋状に形成したり、表面を粗面化する等、適宜変形することが可能である。
或いは、各シャフト12,13の内周面に雌ネジを形成すると共に、突出部32,33の外周面に雄ネジを形成して螺合構造によって着脱可能な構成にすることで、シャフトパーツや接合部材の交換、分解が容易に行えるようになる。また、雄ネジ、雌ネジによる螺合方法は、本体部31部分の内部構造にて実施することも可能である。
【0029】
前記接合部材30の基端側は、前記ストレート状の中間シャフト12の先端部分が嵌入されて固定されることから、接合部30の突出部32の外径D3、及び、段部32bの外径D4は、前記接合部材20の突出部23の外径D3、段部23bの外径D4と同じに設定される。なお、中間シャフト12がテーパ形状である場合、その限りではない。
【0030】
前記接合部材30の先端側は、ストレート状の先側シャフト13の基端部分が嵌入されて固定される。前記先側シャフト13の内径(接合部材30の突出部33の外径)D5は、4.80mmであり、その外径(接合部材30の段部33bの外径)D6は、9.40mmである。従って、先側シャフト13の肉厚は、4.60mmとなっている。前記段部33bは、この肉厚の先側シャフト13の端縁13aが当て付いて、先側シャフト13の表面と本体部31が面一状となる。なお、先側シャフト13の内径と接合部材30の突出部33の外径D5は、先側シャフトが挿入できるように、両者の間に多少のクリアランス(例えば、0.1mm程度)が設けられている。すなわち、先側シャフト13の内径と接合部材30の突出部33の外径D5は厳密に一致しなくても良い。
【0031】
以上の構成によれば、先側シャフト13は、中間シャフト12と比較すると、細径で肉厚に形成されている。すなわち、上記した3本のシャフトパーツ11~13については、元側シャフト11の肉厚<中間シャフト12の肉厚<先側シャフト13の肉厚となるように形成され、元側シャフト11の外径>中間シャフト12の外径>先側シャフト13の外径となるように形成されている。
【0032】
なお、前記接合部材30の本体部31は、中間シャフト12と先側シャフト13の外径差(12.00mmと9.40mm)が、視覚上、自然に変化するように、表面に先細状のテーパを備えている。この場合、本体部31の軸方向長さLについては、シャフト12,13の肉厚や径にもよるが、短すぎると径差が把握し易くなり、長すぎると重量が重くなり過ぎる(各パーツを接合した後のシャフト重量が)ことから、軸方向に10mm~40mmの範囲で形成されていることが好ましい。本実施形態の本体部31の軸方長さLは、20mmに設定されており、これにより、ストレート状に形成された中間シャフト12と先側シャフト13の外径差を違和感無く連続させることが可能となる。
【0033】
また、前記突出部32,33の軸方向長さL1,L2については、短すぎると接合強度が弱くなると共にシャフトが撓み易くなってしまい、長すぎると重量増加するため、軸方向に40mm~60mmの範囲で形成されていることが好ましい。本実施形態の突出部32,33の軸方長さL1,L2は、共に50mmに設定されており、これにより、接合強度を高くしてシャフトの撓みを防止している。
なお、突出部については、軸方向に長く形成し、その内部を空洞状に形成することで、軽量化を図ることも可能である。
【0034】
前記接合部材30の先端側の突出部33には、ストレート状の先側シャフト13の基端部分が嵌入されて固定されるが、9.4mm程度の通常外径のシャフトだけではなく、太径で厚肉のシャフト(オーバーホーゼルタイプ)を配設しても良い。例えば、先側シャフト13の外径が12.0mmのような太径シャフトを用いることも可能であり、このような太径シャフトを用いることで、従来のシャフトでは、撓み易く、捩じれ易かった先端部分に太径のシャフトや高剛性のシャフト(先側シャフト)を配設することが可能となる。なお、太径の先側シャフトを用いる場合、或いは、中間シャフトとの径差が少ないような先側シャフトを用いる場合、接合部材30の本体部31の形状や径、突出部32,33の外径など、適宜変形することが可能である。
【0035】
以上のように、ゴルフクラブ(パタークラブ)のシャフトを3本構造(3本のストレート状のシャフトパーツ;元側シャフト11,中間シャフト12,先側シャフト13)にし、各シャフトを接合部材20,30で連結、固定した構造によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0036】
上記したように、3つのシャフトパーツを2つの接合部材で連結、固定することで、グリップ60が装着される元側シャフト11は太く形成することができ、先側シャフト13はヘッドを装着するために細く形成することができる。しかも中間シャフト12が配設されることから、元側と先端側の外径差が大きくても、接合部材20,30の露出する本体部21,31のテーパによって、違和感のないシャフト構造とすることができる。
【0037】
また、接合部材20,30は、隣接するシャフトパーツの端縁部分を、重ねることなく分断された状態(異種材料が分断された状態)で連結、固定することから、振動減衰効果が高くなって打感の向上が図れる。特に、シャフトは、5つのパーツ(2つの接合部材と、3本のシャフトパーツ)で構成されるため、従来の2本継ぎのシャフト構造と比較しても、振動減衰効果が高くなる。
【0038】
また、接合部材20,30は重量体となることから、シャフトの重量を接合部材に集中させ、かつ、各シャフトパーツを軽量化することで、シャフト部分の総重量を重くしなくても済む。この場合、例えば、図6に示すように、パタークラブでは、シャフト長が850mm程度に形成され、先端から約100~210mmの範囲に接合部材30を配設し、先端から約380~500mmの範囲に接合部材20を配設することで、シャフトとして先端側(ヘッド側)と、基端側(グリップ側)に重量が集中した領域を設置することができる。特に、グリップ60が装着される部分の直下に接合部材20による重量体が位置することで、スイング時に余計な動きが少なくなってストロークがシンプルとなり、安定した感覚が得られるようになる。
【0039】
また、先端側に接合部材30による重量体が位置することで、ヘッドの軌道が安定し、ストロークを安定化させることができる。この場合、ゴルフクラブの重心を、接合部材30の位置となるように設定することで、視覚的に重心位置(重い部分)をプレーヤに意識させることができ、パタークラブのようなゴルフクラブでは、ストロークをより安定化させることが可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、各シャフトパーツをストレート状に構成したことから、成型性が向上すると共に、異方性の改善効果が得られるようになる。この場合、上記した接合部材20,30の露出する本体部21,31のテーパによって、隣接するシャフトパーツ間の外径差が小さくなるため、見た目の向上が図れる。特に、本体部21,31の軸方向長さを長くすることでその効果を高めることができる。
【0041】
さらに、局所的に、素材・長さ・重量・剛性・肉厚・外径を変化させたシャフトを成型しやすくなり、カスタマイズ性が高くなる。例えば、先側シャフト13を太径化したり、高剛性のカーボン素材を用いることで、撓み易く捩じれ易い部分を効果的に強化することが可能となる。また、接合部材20,30によって、シャフトの中空部分が少なくなるため、その部分で所望の硬さやトルクに設定し易くなる。
【0042】
また、細径の先側シャフト13を用いる場合、特に、パタークラブでは、先側を座屈させる機会が多いことから、先側シャフト13を外側接着にすることで、座屈に対する強度を高めることができる。また、単に先側シャフトと接合部材を変更することで、通常の外径のシャフトだけでなく、太径シャフトに容易に交換することが可能となる。
【0043】
図4及び図5は、本発明の別の実施形態を示す図であり、図4(a)~(c)は先側の接合部材を示す図、図5は、図4の先側接合部材を配設したゴルフクラブ(パタークラブ)を示す図である。なお、図1と同様な部分については、同一の参照符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0044】
この実施形態では、先側の接合部材40は、露出する本体部41と、本体部41に形成され、先側シャフト13の基端側外周面を接合する軸方向穴43とを有している。
【0045】
前記軸方向穴43には、先側シャフト13の基端側が嵌入され、軸方向穴43の内周面と先側シャフト13の基端側外周面とは、先側シャフト13の端縁13aが軸方向穴43の底部に当て付いた状態で接着によって固定される。また、本体部41の基端側には、図3に示した構成と同様、中間シャフト12の内周面に嵌入される突出部42が設けられている。そして、突出部42に嵌入された中間シャフト12の端縁12aは、本体部41の段部42bに当て付けられ、段部に当て付いた状態で本体部41の表面と面一になるように構成されている。
【0046】
図3で示した構成と同様、突出部42の表面には、アンカー効果を高めるように、例えば、軸方向に沿って連続するように凹凸42aを形成しておくことが好ましい。また、軸方向穴43の内周面にも、アンカー効果を高めるように、軸方向に沿って連続するように凹凸(図示せず)を形成しておくことが好ましい。
【0047】
前記接合部材40の先端側の軸方向穴43には、ストレート状の先側シャフト13の基端部分が嵌入されて固定される。具体的に、先側シャフト13の外周面に接着個所を設けることで、上記した接合部材30の先端側の突出部33では接合に不向きな内径が細いシャフト(例えば、外径D5が4mm以下の先側シャフト)や、中実状に構成されているようなシャフトであっても配設することができる。すなわち、上記した接合部材30の構成において、内径が細いシャフトを用いる場合(本体部31との境界部分を起点にしてシャフト折れに繋がる可能性がある)や、そもそも突出部33に入らない中実状のシャフトを用いる場合では、上記した構成(図4に示す構成)の接合部材40を用いることが好ましい。ただし、接合部材30の素材を強い素材にすれば、内径が細いシャフトであっても接合部材30を使用することが可能である。
【0048】
なお、前記接合部材40の軸方向穴43の内径D7については、中間シャフトの端縁が当て付く本体部41の段部42bの外径D4との間で、ある程度の径差を確保することが好ましい。具体的には、例えば、内径D7と外径D4の径差(本体部41の肉厚)は、1mm以上確保することで、本体部41の肉厚が薄くなり過ぎて強度が低下するようなことはない。勿論、接合部材40の素材を強い素材にすれば、本体部41の肉厚が1mm未満のものであっても使用することは可能である。
【0049】
前記本体部41の軸方向長さL´については、図3に示した突出部33の長さL2と同様な長さが確保されていれば良く、軸方向に40mm~70mmの範囲で形成されていれば良い。本実施形態の本体部41の軸方長さL´は、軸方向穴43による接着部分の長さを50mm程度確保しており、その露出部分を含めて軸方長さL´は60mmに設定されている。これにより、接合強度を高くしてシャフトの撓みを防止している。
【0050】
また、前記突出部42の軸方向長さL1´についても、図3に示した突出部32の長さL1と同様な長さが確保されていれば良く、軸方向に40mm~60mmの範囲で形成されていることが好ましい。本実施形態の突出部42の軸方長さL1´は、50mmに設定されており、これにより、接合強度を高くしてシャフトの撓みを防止している。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
本発明は、ゴルフクラブのシャフトを3本以上に分割(3本以上のシャフトパーツ)し、各シャフトパーツの端縁を当て付けて固定する接合部材を有する構造であれば良く、各シャフトパーツの構成(素材、肉厚、外径、内径、剛性など)は、適宜、変形することが可能である。また、シャフトパーツは4本以上であっても良く、接合部材の配設位置や構成(素材、外観意匠、重量、長さ、隣接するシャフトパーツとの接合構造など)についても適宜、変形することが可能である。
【0052】
さらに、本実施形態における接合部材は、本体部に、隣接するシャフトパーツの端縁を当て付けてシャフトパーツが軸方向に重ならないように構成したが、隣接するシャフトパーツの端縁同士が当て付いて連結、固定するような構成であっても良い。更に、上記した実施形態では、ゴルフクラブとしてパタークラブを例示したが、アイアンクラブにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 ゴルフクラブ(パタークラブ)
10 シャフト
11 元側シャフト(シャフトパーツ)
12 中間シャフト(シャフトパーツ)
13 先側シャフト(シャフトパーツ)
20,30 接合部材
50 ヘッド
60 グリップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6