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特開2023-4883配合を容易にするカーボンナノチューブ分散体およびその使用
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  • 特開-配合を容易にするカーボンナノチューブ分散体およびその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004883
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】配合を容易にするカーボンナノチューブ分散体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/174 20170101AFI20230110BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230110BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20230110BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230110BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20230110BHJP
   C01B 32/159 20170101ALI20230110BHJP
【FI】
C01B32/174
C08L101/00
C08K7/06
C08K3/04
B82Y30/00
C01B32/159
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022078932
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000225854
【氏名又は名称】楠本化成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 大介
(72)【発明者】
【氏名】堀口 崇
(72)【発明者】
【氏名】門脇 侃志
【テーマコード(参考)】
4G146
4J002
【Fターム(参考)】
4G146AA12
4G146AB06
4G146AD37
4G146CB10
4G146CB35
4G146CB36
4G146DA07
4J002AA001
4J002BB031
4J002BB121
4J002BC031
4J002CC041
4J002CD021
4J002CD051
4J002CK021
4J002CM041
4J002CP031
4J002DA016
4J002FA056
4J002FD016
4J002HA08
(57)【要約】
【課題】多層カーボンナノチューブや導電性カーボンブラックと比較して、比表面積が著しく大きいため分散させることが極めて難しく、機能を発揮するための適切な分散条件の見極めが難しい単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を、工業的に最も効率的に機能が発揮できるバンドルと呼ばれる凝集体、もしくは添加時にバンドル状態になる様分散したカーボンナノチューブ分散体を経由することで、各種素材に物理的特性を付与すること、および高機能化した素材を提供すること。
【解決手段】単層カーボンナノチューブと液状化可能な素材を0.1:99.9~25:75の比率(重量比)で混合、分散することにより、易分散型単層カーボンナノチューブ分散体の調製に成功し、上記課題の解決に至った。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層カーボンナノチューブを0.1~25重量%含有する分散体であって、前記分散体は、前記単層カーボンナノチューブに加えて、樹脂、溶媒、水、界面活性剤、可塑剤および添加剤のうち少なくとも1つを含有することを特徴とする、前記分散体。
【請求項2】
請求項1記載の分散体を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単層カーボンナノチューブ、または単層カーボンナノチューブの配合による物性の向上、および単層カーボンナノチューブを様々な系に簡便に適応させることのできる単層カーボンナノチューブ分散体に関する。
更に詳しくは、カーボンナノチューブの機能として知られる物性、例えば電気伝導性、熱伝導性、物理的強度、可撓性、靭性、衝撃耐性、破断耐性、耐摩耗性等を、単独もしくは複合的に低負荷、短時間、低添加量で向上させることができ、最終製品の軽量化、小型化、高容量化、長寿命化に寄与する、易分散型単層カーボンナノチューブ分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、その特異的な表面積とアスペクト比および導体としての性質から、発見以来、電気、電子、化学、工学的応用など多種多様な研究論文が報告されており、産業的期待の大きな素材として知られている。
【0003】
近年、需要が大幅に増加し、さらなる効率化が急務となっている一次、二次電池等のエネルギー用途においては、導電助剤として一般的にカーボンブラックが使用されている。カーボンブラックの導電性はカーボン微粒子が鎖状に連結することによりもたらされるため、一定濃度以上の添加を要し、電池等の高容量化に必要な活性物質の増量の妨げとなる。
【0004】
電子、電気分野では、導電性を付与するために、銀を代表とする金属や合金の微粒子が使われるが、これらは使用条件によりマイグレーションやウィスカなどの不具合を引き起こすことがある。また、金属は比重が大きく、最終製品の小型化、軽量化の妨げとなる。
【0005】
また、電子、電気分野に限らず、各種産業分野において、静電気や電磁波の発生は事故や不具合の要因となるため、帯電防止措置は非常に重要となる。帯電防止措置には、一般的に金属、カーボンブラック、および酸化物微粒子が用いられるが、金属は重さや加工性に問題があり、カーボンブラックや酸化物微粒子は大量に配合する必要があるため素材の物性変化や着色を引き起こすという欠点がある。
【0006】
カーボンナノチューブは、大きく多層カーボンナノチューブと単層カーボンナノチューブに分けられる。多層カーボンナノチューブは、早い段階で大量生産、産業化への応用がなされているが、単層カーボンナノチューブは、機能への期待は大きいものの多層カーボンナノチューブほどの利用には至っていない。これは、分散および添加方法が難しいという課題があるためである。
【0007】
しかしながら、文献、学会発表、メーカーの公開情報などで、単層カーボンナノチューブの性能が多層カーボンナノチューブより優れているという事例、応用例が数多く報告されている。
【0008】
下記非特許文献1から6では、単層カーボンナノチューブを電池に応用した際の効果として、鉛蓄電池でのサイクル特性の向上、他の導電助剤に対して低い添加量、リチウムイオン2次電池でのサイクル特性の向上、エネルギー密度向上、充放電特性向上の機能を紹介している。また、固体酸化物に配合することで導電性付与効果が得られており、この結果はセラミックやガラス、固体電池への単層カーボンナノチューブの配合可能性を示唆するものである。
【0009】
下記非特許文献7から10では、単層カーボンナノチューブを床用塗料に配合した例が示されている。水性アクリル系床用塗料、および水性エポキシ系床用塗料において、単層カーボンナノチューブは他の炭素系導電フィラーと比べて低添加量で帯電防止能を付与することができ、低添加量であるため床材を任意の色に着色可能であることが示されている。特に、緑顔料を使用した導電性床材において、単層カーボンナノチューブは0.01%の低添加量にて、発色を損なわずに10Ω・cmの帯電防止能を実現している。
【0010】
下記非特許文献11から13では、繊維強化プラスチックへ単層カーボンナノチューブを配合した例が示されている。これらの文献では、ガラス繊維強化プラスチックへの帯電防止性付与効果だけでなく、ガラス繊維強化プラスチックおよび炭素繊維強化プラスチックへの強度向上と耐剥離性の付与、およびその作用機構について述べられている。
【0011】
下記非特許文献14から18では、単層カーボンナノチューブのゴム等エラストマーへの添加事例が示されている。これらの文献では、単層カーボンナノチューブを適切に分散することで、NRやSBRといった一般的なゴムに限らず、塩化ビニル、ポリウレタン、フッ素系等の様々な素材に、導電性を付与でき、また、素材の強度を向上できることが示唆されている。
【0012】
下記非特許文献19から21では、シリコーン樹脂を例として、単層カーボンナノチューブが、導電性カーボンブラックと比較して低添加量で導電性付与機能を発揮し、樹脂物性に与える影響が小さいことが示されており、パーコレーションカーブも特異的であることが提示されている。
【0013】
このように、単層カーボンナノチューブの添加により、各種素材にて種々の有用な効果が得られることが知られているが、これらの効果を得るためには、単層カーボンナノチューブの凝集を防ぎ、適切な状態の広がりを構築する必要がある。しかしながら、単層カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブや導電性カーボンブラックと比較して比表面積が著しく大きいため、その分散は極めて困難である。また、適切な分散条件の見極めも難しく、単層カーボンナノチューブの実用化が遅れる要因となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Anjan Banerjee et al 2016 J. Electrochem. Soc. 163 A1518
【非特許文献2】OCSiAl社ニュースリリース,[online],2014年8月14日,[2022年3月1日検索]インターネット〈 https://ocsial.com/ja/news/-tuball-batt-works-effectively-in-nmc-based-libs-/ 〉
【非特許文献3】OCSiAl社ニュースリリース,[online],2016年5月17日,[2022年3月1日検索]インターネット 〈 https://ocsial.com/ja/news/-nanotube-coated-foil-by-ocsial-increases-energy-density-and-prolongs-battery-life-/〉
【非特許文献4】楠本化成著 ,JETI,日本出版制作センター, 2017年Vol.65 No.5 p51-53
【非特許文献5】OCSiAl社ニュースリリース,[online],2019年2月28日,[2022年3月1日検索]インターネット 〈 https://ocsial.com/ja/news/-now-made-in-japan-asian-battery-manufacturers-welcome-highly-conductive-nanotube-additive-/ 〉
【非特許文献6】清水大介, 日本化学会第100春季年会2020予稿,講演番号:1PC-014
【非特許文献7】OCSiAl社ニュースリリース,[online],2017年1月13日,[2022年3月1日検索]インターネット 〈 https://ocsial.com/ja/news/-best-crete-rolls-out-a-brand-new-product-for-the-malaysian-market-epoxy-conductive-flooring-with-tuball-single-wall-carbon-nanotubes-/ 〉
【非特許文献8】OCSiAl社ニュースリリース,[online],2017年2月27日,[2022年3月1日検索]インターネット 〈 https://ocsial.com/ja/news/-neocrete-challenging-its-competitors-with-its-advanced-technologies-/〉
【非特許文献9】OCSiAl 2016 compounding world October 2016 p34-37
【非特許文献10】楠本化成著 ,JETI,日本出版制作センター, 2017年Vol.65 No.4 p83-85
【非特許文献11】OCSiAl社ニュースリリース,[online],2017年1月13日,[2022年3月1日検索]インターネット 〈 https://ocsial.com/ja/news/-carbon-nanotubes-a-game-changer-in-reinforcing-composites-/〉
【非特許文献12】楠本化成著 ,JETI,日本出版制作センター, 2018年Vol.66 No.2 p40-41
【非特許文献13】楠本化成著 ,JETI,日本出版制作センター, 2018年Vol.66 No.8 p72-74
【非特許文献14】OCSiAl社ニュースリリース,[online],2016年9月11日,[2022年3月1日検索]インターネット 〈 https://ocsial.com/ja/news/-ocsials-new-product-impresses-latex-glove-manufacturers-at-irgce-2016-/ 〉
【非特許文献15】OCSiAl社ニュースリリース,[online],2019年4月15日,[2022年3月1日検索]インターネット 〈 https://ocsial.com/ja/news/-ensure-safety-and-keep-costs-down-how-nanotubes-in-polyurethane-shafts-can-solve-industrial-challenges-/ 〉
【非特許文献16】OCSiAl社ニュースリリース,[online],2020年5月8日,[2022年3月1日検索]インターネット 〈 https://ocsial.com/ja/news/-oil-and-gas-and-automotive-sectors-will-benefit-from-durable-polymers-with-graphene-nanotubes-/ 〉
【非特許文献17】楠本化成著 ,日本ゴム協会誌, 2020年Vol.93 No.8 p279-282
【非特許文献18】OCSiAl社ニュースリリース,[online],2018年12月18日,[2022年3月1日検索]インターネット 〈 https://ocsial.com/ja/news/-graphene-nanotubes-make-difference-in-the-pvc-plastisol-industry-/ 〉
【非特許文献19】OCSiAl社ニュースリリース,[online],2017年1月23日,[2022年3月1日検索]インターネット 〈 https://ocsial.com/ja/news/-tuball-revolutionary-carbon-nanotubes-for-the-tyre-industry-/ 〉
【非特許文献20】OCSiAl社ニュースリリース,[online],2014年12月8日,[2022年3月1日検索]インターネット 〈 https://ocsial.com/ja/news/-tuball-single-wall-carbon-nanotubes-demonstrated-superior-results-when-compared-to-other-single-swcnt-and-multi-wall-carbon-nanotubes-mwcnt-in-the-series-of-tests-conducted-by-dresden-university-/ 〉
【非特許文献21】OCSiAl社ニュースリリース,[online],2015年2月22日,[2022年3月1日検索]インターネット 〈 https://ocsial.com/ja/news/-technische-universitt-dresden-and-fraunhofer-iws-are-investigating-new-potential-applications-for-cnt-enhanced-materials-/ 〉
【非特許文献22】楠本化成著 ,JETI,日本出版制作センター, 2017年Vol.65 No.6 p36-39
【非特許文献23】OCSiAl 2016 compounding world September 2016 p57-58
【非特許文献24】楠本化成著 ,JETI,日本出版制作センター, 2018年Vol.66 No.4 p99-101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、単層カーボンナノチューブが工業的に最も効率的に機能するとされる凝集体である単層カーボンナノチューブバンドルおよび添加時にバンドル状態になるよう調製した単層カーボンナノチューブ分散体、並びに前記バンドルおよび分散体の添加により各種素材に物理的特性を付与することおよび前記バンドルおよび分散体の添加により高機能化した素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、単層カーボンナノチューブと液状化可能な素材を0.1:99.9~25:75の比率(重量比)で混合、分散することにより、易分散型単層カーボンナノチューブ分散体が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0017】
本発明による易分散型単層カーボンナノチューブ分散体により、各種部材の製造原料や加工用塗工液の調製工程における単層カーボンナノチューブ分散が容易となり、分散工程による発熱や長時間の処理に起因する材料の分解、吸湿、揮発による物性低下という不具合を減らすことができる。また、通常工程を変化させずに添加でき、工程の時間短縮による効率化にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は分散が不十分なSWCNT分散体の図面代用写真(顕微鏡写真)である。
図2図2は分散が良好なSWCNT分散体の図面代用写真(顕微鏡写真)である。
図3図3は樹脂中の銀粒子に吸着したSWCNTの図面代用写真(電子顕微鏡写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の易分散型単層カーボンナノチューブ分散体について詳細に説明する。
【0020】
1.易分散型単層カーボンナノチューブ分散体
本発明の易分散型単層カーボンナノチューブ分散体は、単層カーボンナノチューブと液状化可能な素材を0.1:99.9~25:75の比率(重量比)で混合、分散し、単層カーボンナノチューブをバンドルと呼ばれる安定した凝集体状態とすることで得られる。
【0021】
上記、液状化可能な素材は、各種部材の製造原料や加工用塗工液の調製工程に適した温度下で相溶性または分散性を有するものであればよく、物質として限定されない。
【0022】
液状化可能な素材の例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フェノール‐ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等の熱硬化樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンスルファイド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド等の熱可塑樹脂、シリコーンオイル、ポリアルキレングリコール類、ポリグリコール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類等の液状ポリマー類、シリコーン樹脂、未加硫ゴム、熱可塑性エラストマー等のエラストマー等、アニオン系、カチオン系ノニオン系等の各種界面活性剤類を例示することができるが、液状化が可能であればこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
易分散型単層カーボンナノチューブ分散体は、液状化する目的で、必要に応じて有機溶剤や水を含有することができる。用いられる有機溶剤としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、アルコール、エーテル、ポリグリコール、環状溶媒、テルペン等を挙げることができるが、使用する系に合わせて溶剤を選択することが望ましい。
【0024】
有機溶剤の例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、エチルアセテート、ノルマルプロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ノルマルブチルアセテート、イソブチルアセテート、ヘキシルアセテート、その他アルキルカルボキシレート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、その他カーボネート類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ノナン、ノルマルデカン、イソデカン、ノルマルドデカン、イソドデカン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート等を挙げることができるが、工程に適用できればこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
また、本発明の易分散型単層カーボンナノチューブ分散体は、単層カーボンナノチューブの湿潤および分散安定化を容易にする目的で、分散剤を含むことができる。用いられる分散剤としては、オクチルアミン、ヘキシルアミン、オレイルアミン等のアミン化合物、ドデカンチオール等の硫黄化合物、オレイン酸等のカルボン酸化合物、アンモニウム基を有する分岐高分子化合物、ジチオカルバメート基を有する低分子化合物または高分子化合物、デンドリマー、ハイパーブランチポリマー、分子末端にアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマー、リン酸エステル系分散剤、ポリエチレンイミングラフトポリマー系分散剤等を含む市販の分散剤を使用することができるが、単層カーボンナノチューブを媒体中に分散させることができればこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明による易分散型単層カーボンナノチューブ分散体は、対象とする素材の製造設備で同時に分散できるよう、使用目的および工程に合わせた濃度や硬さに調製するものであり、その製造方法は限定されない。
【0027】
易分散型単層カーボンナノチューブ分散体の分散方法は、非常に多くの文献にて報告されており、分散機メーカーが推奨する方法も多数あるが、本分散体の調製においては、バンドルの状態に到達できるものであればどのような分散方法でもよい。分散装置の例としては、高速撹拌機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、自公転ミキサー、ロールミル、湿式ミル、コロイドミル、ビーズミル、アトライター、ボールミル、超音波分散機、高圧分散機、スタティックミキサー、ニーダー、バンバリーミキサー、エクストルーダー等が知られている。
【0028】
2.単層カーボンナノチューブ分散体の用途と効果
単層カーボンナノチューブの理想的な分散は、目的とする組成物中にてバンドル状態となり、3次元的な相互作用により連結した網目構造をとることである。この極めて細い炭素の3次元的網目構造により、導電性および強度向上効果が得られる。また、副次的には、希薄な物理ゲルに近似した状態をとることによる特異なレオロジー特性付与効果、吸着凝集性を持った細い繊維が均一に分散していることによる相関密着性向上効果が得られる。
【0029】
単層カーボンナノチューブのバンドル直径は組成物の極性等により10nmから100nm程度となり、重量%としてはごく少量で3次元構造を構築可能である。この特性から、顔料としての隠ぺい力は著しく低くなるが、薄膜として加工した場合は高い光透過率を示し、着色顔料と併用した場合はその色相を妨げずに導電性等の種々の機能を付与することができる。
【実施例0030】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。また、実施例中の「%」および「部」は特に断らない限り、「重量%」および「重量部」を示す。
【0031】
実施例1
〈水系分散液〉
水に界面活性剤を添加し、各種分散機を用いて単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を分散した。100μm以上の素粒子が見られず、透過光の顕微鏡観察でバンドルが確認できる状態であることを、分散の基準とした。単層カーボンナノチューブはOCSiAl社製TUBALL 01RW03を使用し、界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(関東化学製、鹿1級/以下、SDBS)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(日本製紙製、サンローズF30MC/以下、CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(富士フィルム和光純薬製、和光一級/以下、HEC)、ポリカルボン酸(日本触媒製、アクアリックHL-415/以下、PCA)、フォスファノールRS-710(東邦化学製/以下、PH)、ポリビニルアルコール(関東化学製、PVA500/以下、PVA)、およびポリビニルピロリドン(K-30/以下、PVP)、アデカ(登録商標)プルロニックF-88(ADEKA製/以下、N1)、エマルゲン120(花王製/以下、N2)、およびレオドールTW-O120(花王製/以下、N3)を用いた。分散機としては、高速撹拌機(以下、M1)、ホモジナイザー(以下、M2)、ビーズミル(以下、M3)、超音波分散機(以下、M4)、高圧分散機(以下、M5)、ロールミル(以下、M6)、自転交転ミキサー(以下、M7)を使用した。表1に分散性を示す。
【0032】
【表1】
【0033】
分散性は以下の基準で評価した。
「×」は、分散しないまたは粒子が十分に細かくならない状態(図1)、「△」は、分散性はあるが濃度によって増粘、起泡、発熱等により分散の進行が阻害される状態、「〇」は、一定の水準での分散が可能な状態(図2)である。「-」は、適用不能または未確認を示す。
【0034】
実施例2
〈溶剤系分散液〉
溶剤に界面活性剤を添加し、各種分散機を用いて単層カーボンナノチューブを分散した。透過光の顕微鏡観察でバンドルが確認できる状態であることを、分散の基準とした。単層カーボンナノチューブはOCSiAl社製TUBALL 01RW02を使用し、界面活性剤としては、エチルセルロース(ダウケミカル製、STD-4/以下、EC)、ブチラール樹脂(積水化学製、S-LEC/以下、PVB)、アクリル樹脂(楠本化成製、ER 2602/以下、ER)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびポリビニルピロリドン(K-30/以下、PVP)を用いた。溶剤には、酢酸ブチル(以下、BAc)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGME)、イソプロパノール(以下、IPA)、キシレン(以下、XL)、ターピネオール(以下、TPO)、ブチルカルビトールアセテート(以下、BCA)、およびN-メチルピロリドン(以下、NMP)を用いた。表2に分散性を示す。
【0035】
【表2】
【0036】
実施例3
〈無溶剤系分散体〉
液状の樹脂を基材として、各種分散機を用いて単層カーボンナノチューブを分散した。100μm以上の素粒子が見られない状態を、分散の基準とした。単層カーボンナノチューブはOCSiAl社製TUBALL 01RW02を使用し、基材としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(以下、BPA)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(以下、BPF)、ポリエチレングリコール(以下、PEG)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(以下、POA)、ポリカーボネートジオール(以下、PCD)、ポリエステルジオール(以下、PED)、液状ポリオレフィン(LPO)、液状ポリブタジエン(以下、LPB)、エポキシアクリレートオリゴマー(EPA)、液状シリコーン樹脂(LSR)、可塑剤として用いられるフタル酸ジイソノニル(以下、DINP)、および反応性希釈剤として用いられるグリシジルアルキルエステル(GAE)を用いた。表3に分散性を示す。
【0037】
【表3】
【0038】
実施例4
〈室温硬化シリコーンゴム:RTV〉
室温硬化型シリコーンゴム(信越化学製/T-1300)の主剤を用いて、実施例3に基づき、1%の単層カーボンナノチューブ分散体を調製した。この分散体を、シリコーンゴム中の単層カーボンナノチューブ濃度が0.05%になるよう自転公転ミキサーで均一に混合し、硬化剤添加後、厚さ2mmのゴムシートに硬化させた。このゴムシートの表面抵抗率は10Ω/□であった。また、単層カーボンナノチューブ分散体を混合する際、酸化チタン1%と赤い着色顔料であるジケトピロロピロール0.5%、または酸化チタン1%と青い着色顔料であるフタロシアニンブルー0.5%を添加し、着色性を確認した。その結果、前者は茜色に着色し、表面抵抗率は10Ω/□であった。後者はブルーグレイに着色し、表面抵抗率は10Ω/□であった。
【0039】
実施例5
〈液状シリコーンゴム:LSR〉
液状シリコーンゴム(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製/LSR7060)を用いて、実施例3に基づき、1%の単層カーボンナノチューブ分散体を調製した。この分散体を、シリコーンゴム中の単層カーボンナノチューブ濃度が0.05%、0.1%、および0.2%になるよう均一に混合し、単層カーボンナノチューブ含有LSRを調製した。この単層カーボンナノチューブ含有LSRを、液状射出成型機(LIM)でシート状に成型した。このシートの物性は表4の通りであった。
【0040】
【表4】
【0041】
実施例6
〈EPDMの物性改良〉
EPDM(三井化学製/EPT3092)に可塑剤、フィラー、加硫剤を加え、ニーダーで混錬し、主剤を調製した。この主剤に、単層カーボンナノチューブ濃度が0.3%となるよう単層カーボンナノチューブ分散体(TUBALL MATRIX 610bata/OCSiAl製)を添加し、2本ロールミルで練り込み、厚さ2mmの加硫シートを作成した。その物性を表5に示す。
【0042】
【表5】
【0043】
実施例7
〈ウレタンエラストマー〉
ポリエーテルポリオール(三洋化成製/GP-3000)を用いて、実施例3に基づき、1%の単層カーボンナノチューブ分散体を調製した。この分散体を、ポリウレタン化したときに単層カーボンナノチューブ濃度が0.05%になるよう均一に混合し、イソシアネート(旭化成製/デュラネートTPA-100)と混合し、触媒添加後、厚さ1.5mmのシートに硬化させた。このポリウレタンシートの表面抵抗率は10Ω/□であった。
【0044】
実施例8
〈ポリアミド樹脂〉
ガラスファイバー30%配合の66ナイロン(E2000G30/ユニチカ製)に、単層カーボンナノチューブマスターバッチ(PD0435/OCSiAl製)を、単層カーボンナノチューブ濃度が0.05%および0.1%になるよう2軸エクストルーダーでコンパウンド化し、ダンベル型に成型した。この成型体の表面抵抗率は、0.05%で106.3Ω/□、0.1%で105.8Ω/□であった。
【0045】
実施例9
〈ポリカーボネート樹脂〉
ポリカーボネート樹脂(ユーピロンS3000R/三菱エンジニアリングプラスチック製)に、単層カーボンナノチューブ(01RW02/OCSiAl製)を濃度1%となるよう添加し、加圧ニーダーを用いてコンパウンド化した後、円形シートに成型した。この成型体の表面抵抗率は10Ω/□であった。
【0046】
実施例10
〈ポリプロピレン樹脂〉
ポリプロピレン樹脂(プライムポリプロJ106G/プライムポリマー製)に、単層カーボンナノチューブマスターバッチ(TUBALL MATRIX 801(CNT濃度10%)/OCSiAl製)を濃度1%となるよう添加し、2軸エクストルーダーを用いてコンパウンド化した後、円形シートに成型した。この成型体の表面抵抗率は10Ω/□であった。
【0047】
実施例11
〈エポキシ樹脂〉
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(jER807/三菱ケミカル製)に、実施例3に基づき、単層カーボンナノチューブ(01RW02/OCSiAl製)を混合し、1%の単層カーボンナノチューブ分散体を調製した。この分散体を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828/三菱ケミカル製)に、単層カーボンナノチューブ濃度0.05%となるよう自転公転ミキサーで混合し、ポリアミン系硬化剤を混合して、250μmアプリケーターで製膜した。硬化膜に対し、往復型耐摩耗試験機を用い、研磨パッドを摩擦材として200回往復で摩耗試験を行った。その結果を表6に示す。
【0048】
【表6】
【0049】
実施例12
〈エポキシ樹脂接着〉
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(jER807/三菱ケミカル製)に、実施例3に基づき、単層カーボンナノチューブ(01RW02/OCSiAl製)を混合し、1%の単層カーボンナノチューブ分散体を調製した。この分散体を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828/三菱ケミカル製)に、単層カーボンナノチューブ濃度が0.1%になるよう自転公転ミキサーで混合し、ポリアミン系硬化剤を混合して、円形のアルミニウム治具(接着面積0.58mm、厚み1mm)を接着、硬化させた。この接着面に対し、抵抗値および引っ張りによる破壊応力を測定した結果を表7に示す。
【0050】
【表7】
【0051】
実施例13
〈炭素繊維強化プラスチック〉
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(jER807/三菱ケミカル製)に、実施例3に基づき、単層カーボンナノチューブ(01RW02/OCSiAl製)を混合し、1%の単層カーボンナノチューブ分散体を調製した。この分散体を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER1001-75/三菱ケミカル製)および硬化剤のジシアンジアミド(東京化成工業製)に、単層カーボンナノチューブ濃度が0.1%になるよう混合し、平織カーボンクロス(200g/m)に含侵後、溶媒を乾燥させてプリプレグを調製した。このプリプレグを10層積層し、熱プレスにて硬化させ試験片を作成した。この試験片の物性を表8に示す。
【0052】
【表8】
【0053】
実施例14
〈ガラス繊維強化プラスチック〉
DINP(田岡化学製)に、実施例3に基づき、単層カーボンナノチューブ(01RW02/OCSiAl製)を混合し、1%の単層カーボンナノチューブ分散体を調製した。この分散体をFRP手摘み用ポリエステル樹脂(日本特殊塗料製)に、単層カーボンナノチューブ濃度が0.1%になるよう混合し、#200ガラスクロスに含侵後、ハンドレイアップ法にて試験片を作成した。この試験片の物性を表9に示す。
【0054】
【表9】
【0055】
実施例15
〈UV硬化ハードコート〉
実施例3の技術に基づき開発されたCSV-051(単層カーボンナノチューブ濃度1%/楠本化成製)を、UVハードコート用ワニスに、単層カーボンナノチューブ濃度が0.03%、0.05%、および0.10%となるよう添加し、PETフィルム上に帯電防止膜を形成して試験片を作成した。この試験片の物性を表10に示す。
【0056】
【表10】
【0057】
実施例16
〈グリース〉
アルキルナフタレンスルホン酸塩含有ポリアルファオレフィン(NA-SUL CA-770FG/King Industries製)およびポリアルファオレフィンに、実施例3に基づいて、単層カーボンナノチューブ(01RW02/OCSiAl製)に混合し、単層カーボンナノチューブ分散体を調製した。これらの分散体を、流動パラフィンに、単層カーボンナノチューブ濃度が0.05%となるよう自転公転ミキサーで混合し、抵抗値を測定したところ、それぞれ117MΩ、0.4MΩであった。
【0058】
実施例17
〈水性硬質ウレタン床用塗料〉
実施例3の技術に基づき開発されたCSC-063(単層カーボンナノチューブ濃度1%/楠本化成製)を、水性硬質ウレタン床用塗料(ユータックコンプリート/日本特殊塗料製)に、単層カーボンナノチューブ濃度が0.001%、0.002%、および0.004%となるよう添加し、塗膜を作成した。この試験塗膜の表面抵抗率を表11に示す。
【0059】
【表11】
【0060】
実施例18
〈ウレタン床用塗料〉
実施例3の技術に基づき開発されたNCD-001(単層カーボンナノチューブ濃度1%/楠本化成製)を、ウレタン床用塗料(ユータックE-30N/日本特殊塗料製)に、単層カーボンナノチューブ濃度が0.02%となるよう配合し、塗膜を作成した。この試験塗膜の表面抵抗率は10Ω/□で、色相の変化はあまり見られなかった。
【0061】
実施例19
〈溶剤型ウレタン床用塗料〉
実施例3の技術に基づき開発されたNCD-001(単層カーボンナノチューブ濃度1%/楠本化成製)を、ウレタン床用塗料(ボウジンテックス500U/水谷ペイント製)に、単層カーボンナノチューブ濃度が0.02%および0.05%となるよう配合し、塗膜を作成した。この試験塗膜の表面抵抗率を表12に示す。
【0062】
【表12】
【0063】
実施例20
〈水系アクリル塗料〉
実施例1の技術に基づき、単層カーボンナノチューブ濃度0.2%の水分散液を調製し、この水分散液を、水系アクリルエマルション(Neocryl A-1127/Covestro Coating Resins製)に、単層カーボンナノチューブ濃度が0.025%、0.05%、および0.075%となるよう配合し、塗膜を作成した。この試験塗膜の表面抵抗率および透過率を表13に示す。
【0064】
【表13】
【0065】
実施例21
〈溶剤系アクリル塗料〉
実施例3の技術に基づき、単層カーボンナノチューブ濃度10%の反応性希釈剤分散液体を調製し、アクリル樹脂(ACRYDIC A-166/DIC製)およびパール顔料を含む塗料に、単層カーボンナノチューブ濃度が0.08%となるよう配合し、塗膜を作成した。比較として、前記の塗料に導電性カーボンブラック(CB)を0.8%となるよう配合し、塗膜を作成した。これら試験塗膜の表面抵抗率を表14に示す。
【0066】
【表14】
【0067】
実施例22
〈導電性ペースト〉
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(jER807/三菱ケミカル製)に、実施例3に基づき、単層カーボンナノチューブ(01RW01/OCSiAl製)を混合し、1%の単層カーボンナノチューブ分散体を調製した。ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828/三菱ケミカル製)、硬化剤であるジシアンジアミド(東京化成工業製)、および通常では導電性が得られない銀粒子60%を混合した導電インクに、この分散体を、単層カーボンナノチューブ濃度が0.1%になるように混合し、基板上で硬化させた。この導電インクの導電性の変化を表15に示し、銀粒子と単層カーボンナノチューブの相互作用を示す電子顕微鏡像を図3に示した。
【0068】
【表15】
【産業上の利用可能性】
【0069】
単層カーボンナノチューブは、系中に適切に分散できれば、特異的な物性付与効果を示す素材である。エネルギーの効率化、金属の代替素材となることによる軽量化、強度補強効果による耐久性向上や軽量化など、種々の産業分野におけるニーズへの対応が期待されている。
図1
図2
図3