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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048836
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】ソケット
(51)【国際特許分類】
   H01R 31/06 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
H01R31/06 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158377
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】相澤 正幸
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚貴
(57)【要約】
【課題】多ピン化に適した構造のソケットを提供する。
【解決手段】それぞれの用途に特化された、互いに形状が異なるコモンコンタクト40、パワーコンタクト50、およびコンタクトペアを成す一対のシグナルコンタクト60を備え、ハウジング20には同一形状のコンタクト支持孔213を配列し、どの種類のコンタクトであっても、そのコンタクト支持孔213に挿し込み可能とした。また、コンタクトはその種類を問わず中央の基部を押してコンタクト支持孔213に挿し込む構造とし、さらに、ハウジング20を、電子部品や回路基板をハウジング20にじか当て可能な構造とした。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な第1面と第2面を有し該第1面と該第2面とに貫通したコンタクト支持孔が複数配列された平板状の底板部と、該第1面の縁に立設して該縁に沿って延びる枠部体とを有するハウジング、および
前記コンタクト支持孔に挿し込まれて前記第1面および前記第2面の双方から突き出た状態に前記底板部に支持された複数のコンタクトを備え、
前記枠部体は、グランド用のパッドと電源用のパッドを含む電気的な接続を担う複数のパッドが底面に形成された電子部品がソケットに搭載される際、前記第1面の面内方向に対し該電子部品を位置決めすることを特徴とし、
前記複数のコンタクトが、
前記コンタクト支持孔に挿し込まれた第1基部、
前記第1面に対応する第1基部の一方の縁から前記第1面側に2本に分かれて突き出た一対の第1突出し部と、突き出た先端側で該一対の第1突出し部を互いに繋いだ第1連結部とを有し、該一対の第1突出し部の、第1基部の一方の縁側の最大距離d1よりも該第1連結部側の最大距離d2が大きい形状を有する第1接触部、および、
前記第2面側に対応する第1基部の他方の縁から前記第2面側に2本に分かれて突き出た一対の第2突出し部と、突き出た先端側で該一対の第2突出し部を互いに繋いだ第2連結部とを有し、該一対の第2突出し部の、第1基部の他方の縁側の最大距離d3よりも該第2連結部側の最大距離d4が大きい形状を有する第2接触部、
を備えた第1コンタクトを含むことを特徴とするソケット。
【請求項2】
前記一対の第1突出し部の最大距離が、前記第1基部から前記第1連結部側に向かうほど連続的に大きく広がるとともに、
前記一対の第2突出し部の最大距離が、前記第1基部から前記第2連結部側に向かうほど連続的に大きく広がっていることを特徴とする請求項1に記載のソケット。
【請求項3】
前記複数のコンタクトが、さらに、
前記コンタクト支持孔に挿し込まれた第2基部、
前記第1面に対応する前記第2基部の一方の縁から前記第1面側に2本に分かれて突き出た一対の第3突出し部を有し先端まで2本に分かれた形状を有する第3接触部、および、
前記第2面に対応する前記第2基部の他方の縁から前記第2面側に2本に分かれて突き出た一対の第4突出し部を有し先端まで2本に分かれた形状を有する第4接触部を備えた第2コンタクトを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のソケット。
【請求項4】
前記複数のコンタクトが、さらに、
互いに面対称形のコンタクトペアを構成する第3コンタクトを含み、
前記コンタクトペアを構成する前記第3コンタクトの各々が、
前記コンタクト支持孔に挿し込まれた第3基部、
前記第1面に対応する前記第3基部の一方の縁から前記第1面側に2本に分かれて突き出た一対の第5突出し部と突き出た先端側で該一対の第5突出し部を互いに繋いだ第3連結部とを有する第5接触部、および、
前記第2面に対応する前記第3基部の他方の縁から前記第2面側に1本突き出た第6突出し部を有する第6接触部を備えた第3コンタクトを含むことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のソケット。
【請求項5】
前記コンタクトペアを構成する2本のコンタクトの前記第5接触部どうしが第1の一定間隔を保ちながら前記第3基部から延び、前記第6接触部どうしが第2の一定間隔を保ちながら該第3基部から延びていることを特徴とする請求項4に記載のソケット。
【請求項6】
配列された前記複数のコンタクト支持孔の各々が、前記コンタクトの種類を問わず挿し込まれたコンタクトを支持する孔であることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載のソケット。
【請求項7】
前記底板部が、前記第1面側に、前記コンタクトの、該第1面側に突き出ていて搭載された前記電子部品に押されて弾性変形した部分を収容する第1収容部と搭載された電子部品を載せる第1台部とを有し、前記第2面側に、前記コンタクトの、該第2面側に突き出ていて回路基板に押されて弾性変形した部分を収容する第2収容部と回路基板に突き当たる第2台部とを有することを特徴とする請求項1から6のうちのいずれか1項に記載のソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底面に2次元的に接触パッドが配列された電子部品が装着されるソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
CPU(中央演算処理装置)等の電子部品は、回路基板に搭載する際に、その回路基板に直接に半田付けするのではなく、インターポーザ方式のソケットを介して実装されることが多い。すなわち、ソケットが回路基板上に置かれ、そのソケットに電子部品が装着されることが多い。そのソケットには、電子部品の底面に配列された接触パッドの各々に接触する複数のコンタクトが、平板状のハウジングの第1面から突き出るようにして配列される。
【0003】
ここで、特許文献1には、電気的な特性の向上を目的としたインターポーザが開示されている。この特許文献1に開示されたインターポーザは、平板状のハウジングに設けられた複数の貫通孔の各々にコンタクトが挿し込まれて、その平板状のハウジングの第1面側と第2面側との双方にコンタクトが突き出た形状を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-018960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、大規模な電子部品に対応できるように、コンタクトの本数が例えば1万本等、極めて多ピンのソケットが要求されてきている。そして、性能面においても更なる高性能化が求められている。また、そのソケットに搭載され得る異なる仕様の電子部品にも、ハウジングやコンタクトを新たに設計し直すことなく、共通のハウジングやコンタクトを使用できる設計であることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、多ピン化に適した構造のソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のソケットは、
互いに平行な第1面と第2面を有し該第1面と該第2面とに貫通したコンタクト支持孔が複数配列された平板状の底板部と、該第1面の縁に立設してその縁に沿って延びる枠部体とを有するハウジング、および
コンタクト支持孔に挿し込まれて第1面および第2面の双方から突き出た状態に底板部に支持された複数のコンタクトを備え、
前記枠部体は、グランド用のパッドと電源用のパッドを含む電気的な接続を担う複数のパッドが底面に形成された電子部品がソケットに搭載される際、前記第1面の面内方向に対し該電子部品を位置決めすることを特徴とし、
前記複数のコンタクトが、
前記コンタクト支持孔に挿し込まれた第1基部、
前記第1基部(41)の一部を成す、前記底板部(21)の前記第1面(211)に対応(対向)する第1基部の一方の縁(41a)から前記第1面側(211)に2本に分かれて突き出た一対の第1突出し部(421)と、突き出た先端側で該一対の第1突出し部を互いに繋いだ第1連結部(422)とを有し、該一対の第1突出し部の、第1基部の一方の縁側の最大距離d1よりも該第1連結部(422)側の最大距離d2が大きい形状を有する第1接触部、および、
前記第1基部の一部を成す、前記底板部の第2面側に対応(対向)する第1基部の他方の縁(41b)から前記第2面(212)側に2本に分かれて突き出た一対の第2突出し部(431)と、突き出た先端側で該一対の第2突出し部を互いに繋いだ第2連結部(432)とを有し、該一対の第2突出し部の、第1基部の他方の縁側の最大距離d3よりも該第2連結部(432)側の最大距離d4が大きい形状を有する第2接触部、
を備えた第1コンタクトを含むことを特徴とする。
【0008】
ここで、前記一対の第1突出し部の最大距離が、前記第1基部から前記第1連結部側に向かうほど連続的に大きく広がるとともに、
前記一対の第2突出し部の最大距離が、前記第1基部から前記第2連結部側に向かうほど連続的に大きく広がっていることが好ましい。
【0009】
本発明のソケットは、上記の形状の第1コンタクトを含んでいる。この第1コンタクトがこの形状を有することで隣接コンタクトとの間の距離が近づく。これにより電気性能の向上が図られ、各種信号伝送用やグランド用、電源用と幅広い用途に使用することができ、様々な電子部品搭載用のソケットを組み立てることが可能となる。
【0010】
また、本発明のソケットにおいて、上記複数のコンタクトが、さらに、
コンタクト支持孔に挿し込まれた第2基部、
第2基部の第1面側の縁から第1面側に2本に分かれて突き出た一対の第3突出し部を有し先端まで2本に分かれた形状を有する第3接触部、および、
第2基部の第2面側の縁から第2面側に2本に分かれて突き出た一対の第4突出し部を有し先端まで2本に分かれた形状を有する第4接触部を備えた第2コンタクトを含むことが好ましい。
【0011】
この第2コンタクトは、2本に分かれたまま電子部品や回路基板に接することで並列回路が形成され電気抵抗が低減され、大電流を必要とする場合に強みを発揮する。
【0012】
また、本発明のソケットにおいて、上記複数のコンタクトが、さらに、互いに面対称形のコンタクトペアを構成する第3コンタクトであって、
そのコンタクトペアを構成する前記第3コンタクトの各々が、
コンタクト支持孔に挿し込まれた第3基部、
第3基部の前記第1面側の縁から第1面側に2本に分かれて突き出た一対の第5突出し部と突き出た先端側で一対の第5突出し部を互いに繋いだ第3連結部とを有する第5接触部、および、
第3基部の第2面側の縁から第2面側に1本突き出た第6突出し部を有する第6接触部を備えた第3コンタクトを含むことも好ましい態様である。
【0013】
この構造の第3コンタクトからなるコンタクトペアであれば、コンタクトペアを構成する2つの第3コンタクトどうしの間の距離を狭めて電気的性能を向上させつつ、第3基部を押して挿し込むことが可能となる。この第3コンタクトは、第1コンタクトでは対応が難しいような高速信号伝送が必要な場合に強みを発揮する。
【0014】
この場合に、コンタクトペアを構成する2本のコンタクトの第5接触部どうしが第1の一定間隔を保ちながら第3基部から延び、第6接触部どうしが第2の一定間隔を保ちながら該第3基部から延びていることが好ましい。
【0015】
これにより、電気的特性をさらに向上させることができる。
【0016】
また、本発明のソケットにおいて、配列された複数のコンタクト支持孔の各々が、コンタクトの種類を問わず挿し込まれたコンタクトを支持する孔であることが好ましい。
【0017】
これにより、複数種類のコンタクトを自由な位置に配置することができ、ハウジングやコンタクトを新たに設計し直すことなく、広範な電子部品の各々に対応したソケットを組み立てることができる。
【0018】
さらに、本発明のソケットにおいて、底板部が、第1面側に、コンタクトの、第1面側に突き出ていて搭載された電子部品に押されて弾性変形した部分を収容する第1収容部と搭載された電子部品を載せる第1台部とを有し、第2面側に、コンタクトの、第2面側に突き出ていて回路基板に押されて弾性変形した部分を収容する第2収容部と回路基板に突き当たる第2台部とを有することが好ましい。
【0019】
これにより、電子部品を底板部上にじか置きし、また、このソケットを回路基板上にじか置きすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の本発明によれば、多ピン化に適した構造のソケットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態としてのソケットの斜視図である。
図2図1に円R1で示した部分の拡大図である。
図3】コモンコンタクトの上面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、側面図(D)、および背面図(E)である。
図4】パワーコンタクトの上面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、側面図(D)、および背面図(E)である。
図5】シグナルコンタクトの上面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、側面図(D)、および背面図(E)である。
図6】シグナルコンタクトペアを示した図である。
図7】ハウジングを示した上面図(A)、正面図(B)、矢印X-Xに沿う断面図(C)、側面図(D)、底面図(E)、矢印Y-Yに沿う断面図(F)、および背面図(G)である。
図8】ハウジングの斜視図である。
図9】各種コンタクトをハウジングに挿し込むピッチに並べて示した図である。
図10】ハウジングの断面とコンタクトを示した図である。
図11】ハウジングとハウジングに挿し込まれた状態のコンタクトを示した上面図(A)、正面図(B)、側面図(C)、底面図(D)、矢印Z-Zに沿う断面図(E)、および背面図(F)である。
図12】ハウジングとハウジングに挿し込まれた状態のコンタクトを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態としてのソケットの斜視図である。
【0024】
また、図2は、図1に円R1で示した部分の拡大図である。
【0025】
このソケット10は、ハウジング20と多数本のコンタクト30を備えている。ハウジング20は、底板部21と枠体部22とを有する。底板部21は、ハウジング20のうちの、互いに平行な第1面211と、その第1面211のうら面である第2面212とを有する平板状の部分であり、第1面211と第2面212とに貫通したコンタクト支持孔213(図2参照)が多数配列されている。
【0026】
また、枠体部22は、第1面211の縁211aに立設してその縁211aに沿って延びている。底板部21の第1面211側には、電子部品70(図11参照)が搭載される。枠体部22は、その電子部品70を搭載する際の第1面211の面内方向の位置決めとして作用する。
【0027】
図2には、いくつかのコンタクト支持孔213が示されているが、これと同様なコンタクト支持孔213が、底板部21の、枠体部22のごく近傍を除きほぼ全面に形成されている。そして、図2に示すように、各コンタクト支持孔213には、各コンタクト30が1本ずつ挿し込まれ各コンタクト支持孔213の内壁に食い込んで底板部21に支持されている。各コンタクト30の、底板部21の厚み方向の長さは底板部21の厚みよりも長く、各コンタクト30は、各コンタクト支持孔213に挿し込まれて第1面211および第2面212の双方から突き出た状態にある。図1では、コンタクト30を図示し切れないので、ごく一部分のみ示している。
【0028】
このソケット10は、回路基板80(図11参照)の上に置かれ、このソケット10に搭載された電子部品70と回路基板80との間の電気的な接続を担っている。
【0029】
本実施形態のソケット10では、互いに形状が異なる3種類のコンタクトが採用されている。そのうちの2種類は、それぞれ単独の1本ずつのコンタクトであり、残りの1種類はコンタクトペアを構成する2本のコンタクトで構成されている。図1図2では代表的にコンタクト30と称したが、以下では、コンタクトの種類ごとに別の符号を付して順に説明する。
【0030】
図3は、コモンコンタクトの上面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、側面図(D)、および背面図(E)である。
【0031】
ソケット10に搭載される電子部品70の底面には、グランド用のパッドと、電源用のパッドと、信号伝送用のパッドが配列されている。このコモンコンタクト40は、それらのパッドのうちのグランド用のパッドと、回路基板80上のグランドとを接続するコンタクトである。
【0032】
このコモンコンタクト40は、第1基部41と、第1接触部42と、第2接触部43と有する。ここで、単に基部と称するのではなく、第1基部41と称するのは、この後説明する他の種類のコンタクトの基部と区別するためである。また、第1接触部42、第2接触部43は、電子部品70側の接触部と回路基板側の接触部とを区別し、さらに他の種類のコンタクトの接触部とを区別すためである。このコモンコンタクト40は、本発明にいう第1コンタクトの一例に相当する。
【0033】
第1基部41は、コンタクト支持孔213に挿し込まれてコンタクト支持孔213の内壁に食い込み、このコモンコンタクト40をハウジング21に支持させる役割を担っている。この第1基部41には、キャリアから切り離された切断部411を有する。このコモンコンタクト40をコンタクト支持孔213に挿し込むにあたっては、第1基部41の左右両側を治具で保持した状態でキャリアから切り離され、第1基部41の左右両側を治具で押すことによってコンタクト支持孔213に挿し込まれる。
また、第1接触部42は、電子部品70のグランド用のパッドへの接触を担っている。この第1接触部42は、第1基部41の第1面211(図1参照)側の縁41aから2本に分かれて第1基部41に対し斜めに第1面211側に突き出た一対の第1突出し部421と、突き出た先端側で一対の第1突出し部421を互いに繋いだ第1連結部422とを有する。この第1接触部42は、バネ性を有し電子部品に押されて弾性変形する。
【0034】
また、第2接触部43は、回路基板80上のグランドへの接触を担っている。この第2接触部43は、第1基部41の第2面212(図1参照)側の縁41bから2本に分かれて第1基部41に対し斜めに第2面212側に突き出た一対の第2突出し部431と、突き出た先端側で一対の第2突出し部431を互いに繋いだ第2連結部432とを有する。この第2接触部43も、第1接触部42と同様、バネ性を有する。そして、この第2接触部43は、回路基板80に押されて弾性変形する。
【0035】
ここで、このコモンコンタクト40の第1接触部42を構成している一対の第1突出し部421は、第1基部41寄りよりも第1連結部422側で互いの間隔が開いた形状を有する。すなわち、第1基部41側の最大距離d1よりも第1連結部422側の最大距離d2の方が大きい。好ましくは、最大距離がd1からd2に向って連続的に大きくなっていることが好ましい。また、これと同様に、第2接触部43を構成している一対の第2突出し部431も、第1基部41寄りよりも第2連結部432側で互いの間隔d2が開いた形状を有する。すなわち、第1基部41側の最大距離d3よりも第1連結部422側の最大距離d4の方が大きい。好ましくは、最大距離がd3からd4に向って連続的に大きくなっていることが好ましい。ここで、d1=d3であることが好ましく、また、d2=d4であることが好ましい。ただし、d1とd3は必ずしもd1=d3である必要はなく、また、d2とd4は必ずしもd2=d4である必要はない。
【0036】
このように、一対の第1突出し部421を第1連結部422側で開いた形状とし、一対の第2突出し部431を第2連結部432側で開いた形状とすることで、隣接コンタクトとの間の距離が近づき、電気性能の向上が図られる。
【0037】
図4は、パワーコンタクトの上面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、側面図(D)、および背面図(E)である。
【0038】
この図4に示すパワーコンタクト50は、電子部品70の電源用のパッドと、回路基板80上の電源とを接続するコンタクトである。このパワーコンタクト50は、本発明にいう第2コンタクトの一例に相当する。
【0039】
このパワーコンタクト50は、第2基部51と、第3接触部52と、第4接触部53とを備えている。
【0040】
第2基部51は、図3に示したコモンコンタクト40の第1基部41と同様、コンタクト支持孔213に挿し込まれてコンタクト支持孔213の内壁に食い込み、このパワーコンタクト50をハウジング21に支持させる役割を担っている。この第2基部51には、キャリアから切り離された切断部511を有する。このパワーコンタクト50をコンタクト支持孔213に挿し込むにあたっては、第2基部51の左右両側を治具で保持した状態でキャリアから切り離され、第2基部51の左右両側を治具で押すことによってコンタクト支持孔213に挿し込まれる。
【0041】
また、第3接触部52は、電子部品70の電源用のパッドへの接触を担っている。この第3接触部52は、第2基部51の第1面211(図1参照)側の縁51aから2本に分かれて第2基部51に対し斜めに第1面211側に突き出た一対の第3突出し部521を有する。これら一対の第3突出し部521は、2本に分かれたまま、電子部品70の電源用のパッドへ接触する。この第3接触部52は、バネ性を有し、電子部品70に押されて弾性変形する。
【0042】
また、第4接触部53は、回路基板80上の電源との接触を担っている。この第4接触部53は、第2基部51の第2面212(図1参照)側の縁51bから2本に分かれて第2基部51に対し斜めに第2面212側に突き出た一対の第4突出し部を有する。これら一対の第4突出し部531は、2本に分かれたまま、回路基板80上の電源へ接触する。この第4接触部53もバネ性を有し、回路基板80に押されて弾性変形する。
【0043】
このパワーコンタクト50は、2本に分かれたまま電子部品や回路基板に接することで並列回路が形成され、電気抵抗が低減されている。
【0044】
図5は、シグナルコンタクトの上面図(A)、正面図(B)、底面図(C)、側面図(D)、および背面図(E)である。
【0045】
また、図6は、シグナルコンタクトペアを示した図である。
【0046】
シグナルコンタクト60は、図6に示すように、面Sに対し左右対称となる面対称形の一対のシグナルコンタクト60,60からなるコンタクトペアを構成している。図5には、そのコンタクトペアを構成する一方のシグナルコンタクト60が示されている。このシグナルコンタクト60は、上述のコモンコンタクト40およびパワーコンタクト50のいずれとも形状の異なるコンタクトであって、図6に示すようなコンタクトペアを構成して、電子部品70と回路基板80との間の信号の伝送を担っている。このシグナルコンタクト60は、本発明にいう第3コンタクトの一例に相当する。
【0047】
このシグナルコンタクト60は、図5に示すように、第3基部61と、第5接触部62と、第6接触部63とを備えている。
第3基部61は、図3に示したコモンコンタクト40の第1基部41や図4に示したパワーコンタクト50の第2基部51と同様、コンタクト支持孔213に挿し込まれてコンタクト支持孔213の内壁に食い込み、このシグナルコンタクト60をハウジング21に支持させる役割を担っている。この第3基部61には、キャリアから切り離された切断部611を有する。このシグナルコンタクト60をコンタクト支持孔213に挿し込むにあたっては、第3基部61を治具で保持した状態でキャリアから切り離され、第3基部61を治具で押すことによってコンタクト支持孔213に挿し込まれる。
【0048】
また、第5接触部62は、第3基部61の第1面211(図1参照)側の縁61aから2本に分かれて第3基部61に対し斜めに第1面211側に突き出た一対の第5突出し部621と、突き出た先端側で一対の第5突出し部621を互いに繋いだ第3連結部622とを有する。この第5接触部62は、電子部品70の信号伝送用のパッドへ接触して、弾性変形する。
【0049】
また、第6接触部63は、第2基部61の第2面212(図1参照)側の縁61bから第3基部61に対し斜めに第2面212側に1本突き出た第6突出し部631を有し回路基板80上の信号伝送路へ接触して弾性変形する。
【0050】
ここで、第5接触部62は一対の第5突出し部621を有するのに対し、第6接触部63を構成する第6突出し部631は1本のみとなっている。このシグナルコンタクト60をコンタクト支持孔213に挿し込む際は、第3基部61が回路基板80側の縁61bの幅方向の中央部分が治具で押される。このため、第6接触部63を、第5接触部62と同様な形状にすると、縁61bの幅方向の中央部分を押すことができないためである。ただし、この形状の第6接触部63は、回路基板80に接して弾性変形する際に微小ながら第6突出し部631にねじれを生じさせる。そこで、治具用のスペースを空ける必要のない電子部品70側では、一対の第5突出し部621を有する構成として、そのねじれをなくしている。
【0051】
また、このシグナルコンタクト60は、図6に示すコンタクトペアとしてみたときに、そのコンタクトペアを構成する2本のシグナルコンタクト60の第5接触部62どうしが第3基部61の幅方向について互いに近づいた位置に第5接触部62および第6接触部63が形成されている。また、第5接触部62どうしが第1の一定間隔を保ちながら第3基部61から延びている。すなわち、図6に示す間隔C1と間隔D1が等しく、C1=D1となっている。また、第6接触部63どうしも、第2の一定間隔を保ちながら第3基部61から延びている。すなわち、図6に示す間隔C2と間隔D2が等しく、C2=D2となっている。さらに、本実施形態では、C1=C2、D1=D2となっている。本実施形態では、コンタクトペアを構成する2本のシグナルコンタクト60をこの形状とすることにより、電気的特性を向上させている。
【0052】
図7は、ハウジングを示した上面図(A)、正面図(B)、矢印X-Xに沿う断面図(C)、側面図(D)、底面図(E)、矢印Y-Yに沿う断面図(F)、および背面図(G)である。
【0053】
また、図8は、ハウジングの斜視図である。
【0054】
この図8には、図1に示したハウジング20の底板部21が大きく拡大され、その底板部21の僅かな一部と、少数のコンタクト支持孔213が示されている。ここでは、この底板部21の僅かな一部をあらためてハウジング20と称する。
【0055】
ここには、平板状のハウジング20に8×8個のコンタクト支持孔213が配列されている。これらのコンタクト支持孔213は、同一形状同一寸法であって、一定のピッチで形成されている。そして、各コンタクト支持孔213の周りには、各コンタクト支持孔213に対応して、各コンタクトのハウジング20から突き出た部分が電子部品70あるいは回路基板80に押されて弾性変形した、各コンタクトのハウジング20から突き出ていた部分が収容される収容部214a,214bと、が載る台部215a,215bが設けられている。図8には、ハウジング20の第1面211が示されているが、図7に示すように、ハウジング20の第2面212も同様の構造となっている。そして、第1面211側の収容部214aおよび台部215aは、本発明にいう第1収容部および第1台部の各一例に相当し、第2面212側の収容部214bおよび台部215bは、本発明にいう第2収容部および第2台部の各一例に相当する。このように、コンタクト支持孔213に対応する収容部214a,214bと台部215a,215bをハウジング20の両面に設けたことにより、電子部品70をハウジング20上にじか置きし、また、ハウジング20を回路基板80上にじか置きすることができる。
【0056】
図9は、各種コンタクトをハウジングに挿し込むピッチに並べて示した図である。
【0057】
コモンコンタクト40どうしを隣接して配置すると、それら隣接したコモンコンタクト40の第1接触部42どうしの間隔は間隔D3、第2接触部43どうしの間隔は間隔D4である。好ましくは、間隔D3=間隔D4である。また、コンタクトペアを構成するシグナルコンタクト60の第5接触部62どうしの間隔は、図6にも示した通り間隔D1、第6接触部63どうしの間隔は間隔D2、好ましくは間隔D1=間隔D2である。これらの間隔D1~D4は、いずれも、コモンコンタクト40とシグナルコンタクト60が隣接したときの、コモンコンタクト40の第1接触部42とシグナルコンタクト60の第5接触部62との間隔D5およびコモンコンタクト40の第2接触部43とシグナルコンタクト60の第6接触部63との間隔D6よりも狭い。これにより、コモンコンタクト40どうし、およびシグナルコンタクト60どうしの電気的な結合が高められている。
【0058】
また、隣接するコンタクトの基部の横幅は、隣接するコンタクトの種類に寄らず、常に一定の横幅Wである。つまり、基部の横幅は、第1基部41、第2基部51、第3基部61のいずれも同一である。このため、ハウジング20に同一寸法のコンタクト支持孔213を形成しておくことにより、コンタクトの種類を問わず、どのコンタクト支持孔213へも、どのコンタクトをも挿し込むことができ、各コンタクト支持孔213は、どの種類のコンタクトが挿し込まれても、その挿し込まれたコンタクトを支持することができる。
【0059】
図10は、ハウジングの断面と各種コンタクトを示した図である。
この図10に示したハウジング20の断面は、図7(C)に示した断面と同一の断面である。また、この図10には、各種コンタクトがコンタクト支持孔213のピッチと同じピッチで配列されている。
ここに示す例では、8個並ぶコンタクト支持孔213に、図の左側のコンタクト支持孔213から順に、2つのコモンコンタクト40、コンタクトペアを成す2つのシグナルコンタクト60、2つのコモンコンタクト40、および2つのパワーコンタクト50が挿し込まれる。
【0060】
この図10に例示したように、どのコンタクト支持孔213へもどの種類のコンタクトをも挿し込むことができる。これにより、複数種類のコンタクトを自由な位置に配置することができ、ハウジングやコンタクトを新たに設計し直すことなく、広範な電子部品の各々に対応したソケットを組み立てることができる。
【0061】
図11は、ハウジングとハウジングに挿し込まれた状態のコンタクトを示した上面図(A)、正面図(B)、側面図(C)、底面図(D)、矢印Z-Zに沿う断面図(E)、および背面図(F)である。
【0062】
また、図12は、ハウジングとハウジングに挿し込まれた状態のコンタクトを示した斜視図である。
【0063】
図12に示すように、ここでは、ハウジング20に、コモンコンタクト40、パワーコンタクト50、およびシグナルコンタクト60が挿し込まれている。
【0064】
また、図11(A)、(C)、(D)、(E)には、ハウジング20に接した状態の電子部品70の底面と、ハウジング20に接した状態の回路基板80の上面が示されている。コンタクトはそのコンタクトの種類に因らず、ハウジング20の両面から突き出ている。
【0065】
この突き出た部分は、電子部品70あるいは回路基板80により押されて弾性変形し、収容部214a,214b(図7図8参照)に収容される。また、電子部品70や回路基板80は、台部215a,215bに押し当てられる。
【0066】
このように、本実施形態のソケット10は、用途に適した複数種類のコンタクトが用意され、一方、コンタクト支持孔213は同一形状とすることで、多ピン化に適した自由度の高い構造のソケットとなっている。
【0067】
なお、本実施形態では、コモンコンタクト40をグランド用として説明したが、コモンコンタクト40はグランド用に限られるものではなく、電源用あるいは信号伝送用としても使用可能である。
【0068】
また、本実施形態のソケット10は、コモンコンタクト40、パワーコンタクト50、および面対称形のシグナルコンタクト60からなるコンタクトペアの全てを備えている。
【0069】
ただし、本発明の基本的な特徴はコモンコンタクト40の形状にあり、したがって、このコモンコンタクト40が備えられていれば、パワーコンタクト50およびシグナルコンタクト60は備えられていなくてもよい。あるいは、コモンコンタクト40を備えるとともにパワーコンタクト50およびシグナルコンタクト60のいずれか一方が備えられていてもよい。さらには、パワーコンタクト50およびシグナルコンタクト60以外の形状のコンタクトが備えられていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 ソケット
20 ハウジング
21 底板部
211 第1面
211a 第1面の縁
212 第2面
213 コンタクト支持孔
214 収容部
215 台部
22 枠体部
30 コンタクト
40 コモンコンタクト
41 第1基部
41a,41b 第1基部の縁
411 切断部
42 第1接触部
421 一対の第1突出し部
422 第1連結部
43 第2接触部
431 一対の第2突出し部
432 第2連結部
50 パワーコンタクト
51 第2基部
51a,51b 第2基部の縁
511 切断部
52 第3接触部
521 一対の第3突出し部
53 第4接触部
531 一対の第4突出し部
60 シグナルコンタクト
61 第3基部
61a,61b 第3基部の縁
611 切断部
62 第5接触部
621 一対の第5突出し部
622 第3連結部
63 第6接触部
631 第6突出し部
70 電子部品
80 回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12