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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048864
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】埋め込み磁石同期モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20230331BHJP
   H02K 21/14 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K21/14 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158420
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮木 淳
(72)【発明者】
【氏名】荒居 雄作
(72)【発明者】
【氏名】神林 恭兵
【テーマコード(参考)】
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H621AA02
5H621BB07
5H621HH01
5H622AA02
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CA14
5H622CB03
5H622CB05
(57)【要約】
【課題】小型、高性能で、コギングを抑制できる埋め込み磁石同期モータを提供する。
【解決手段】ステータと、ステータの内周側に配置されたロータと、を備えるモータであって、ロータは、ロータの周方向に一定間隔で配置されたロータ極を有するロータコアと、ロータコアに取り付けられ、ロータ極を挟んでN極どうしまたはS極どうしが向き合うように配置された一対の永久磁石と、を備え、一対の永久磁石は、回転軸と直交する平面内において、それぞれの永久磁石の磁力と直交する平面が互いに外周側に向けて周方向の間隔が広がるように配置されており、それぞれの永久磁石の磁力と直交する平面がなす角度が130°~150°の範囲とされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータの内周側に配置されたロータと、
を備えるモータであって、
前記ロータは、
前記ロータの周方向に一定間隔で配置されたロータ極を有するロータコアと、
前記ロータコアに取り付けられ、前記ロータ極を挟んでN極どうしまたはS極どうしが向き合うように配置された一対の永久磁石と、
を備え、
前記一対の永久磁石は、回転軸と直交する平面内において、それぞれの永久磁石の磁力と直交する平面が互いに外周側に向けて周方向の間隔が広がるように配置されており、それぞれの永久磁石の磁力と直交する前記平面がなす角度が130°~150°の範囲とされている、埋め込み磁石同期モータ。
【請求項2】
回転軸と直交する平面内において、前記一対の永久磁石のそれぞれの磁力と直交する方向における幅が、前記ロータコアの外径の0.266~0.302倍の範囲とされている、請求項1に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項3】
回転軸と直交する平面内において、前記一対の永久磁石のそれぞれの磁力の方向における厚みが、前記ロータコアの外径の0.056~0.071倍の範囲とされている、請求項1または請求項2に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項4】
前記ロータ極の数が8である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項5】
前記ステータは、ステータコアを備え、
前記ステータコアは、
径方向に延びてコイルが巻き巻かれるコイル装着部を備え、
前記コイル装着部における周方向の幅が、前記ステータコアの内径の0.25~0.36倍の範囲とされている、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項6】
前記ステータのスロット数が12である、請求項5に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項7】
前記ロータコアの外径が33~43mmの範囲にある、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項8】
前記ステータコアの内径が34~44mmの範囲にある、請求項7に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み磁石同期モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁石を有するロータを備える埋め込み磁石同期モータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6507273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、埋め込み磁石同期モータを小型二輪車用の駆動モータに適用する場合、高トルク・高出力の性能が必要とされる。また、搭載されるスペースが限られるためサイズは小さい方が、また二輪車としての取り回し性を考慮するとコギングも小さい方が望ましい。さらに、同期モータの場合、一般的にマグネット使用量を増やすと出せるトルクが増加する傾向にあるが、部品コストの観点からマグネット使用量の低減が望まれる。さらに、モータの製造工程の観点から、マグネットは、ロータに組み込まれた状態で後着磁できることが望まれる。マグネット形状や配置等の自由度が無数にある中で、このような多くの要件を考慮してモータを設計する必要があり、各部の形状を適切に設計することが求められる。しかし、各部の形状・寸法が特性に与える影響は複雑であり、小型二輪車用のモータとしてこれらをバランスよく適切に設計するのは難しいという課題があった。
【0005】
また、ロータコアに肉盗みを形成することにより、モータの軽量化や性能の向上などを図ることができる。しかし、肉盗みを形成する箇所や形状によっては、モータの性能に悪影響を及ぼすおそれがある。したがって、肉盗みを形成する箇所や形状を考慮する必要がある。
【0006】
本発明は、小型、高トルクで、コギングを抑制できる埋め込み磁石同期モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、
ステータと、
前記ステータの内周側に配置されたロータと、
を備えるモータであって、
前記ロータは、
前記ロータの周方向に一定間隔で配置されたロータ極を有するロータコアと、
前記ロータコアに取り付けられ、前記ロータ極を挟んでN極どうしまたはS極どうしが向き合うように配置された一対の永久磁石と、
を備え、
前記一対の永久磁石は、回転軸と直交する平面内において、それぞれの永久磁石の磁力と直交する平面が互いに外周側に向けて周方向の間隔が広がるように配置されており、それぞれの永久磁石の磁力と直交する前記平面がなす角度が130°~150°の範囲とされている、埋め込み磁石同期モータを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型、高トルクで、コギングを抑制できる埋め込み磁石同期モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例の埋め込み磁石同期モータのロータを軸方向から視た図である。
図1A】本実施例の埋め込み磁石同期モータのロータを軸方向から視た図である。
図2】ステータを軸方向から視た図である。
図3】第2の実施例の埋め込み磁石同期モータを構成するロータコアを軸方向から視た図である。
図3A図3の一部拡大図である。
図4】第3の実施例の埋め込み磁石同期モータを構成するロータコアを軸方向から視た図である。
図4A図4の一部拡大図である。
図5】第4の実施例の埋め込み磁石同期モータを構成するロータコアを軸方向から視た図である。
図5A図5の一部拡大図である。
図6】第5の実施例の埋め込み磁石同期モータを構成するロータコアを軸方向から視た図である。
図6A図6の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施例)
図1および図1Aは、本実施例の埋め込み磁石同期モータのロータを軸方向から視た図、図2は、ステータを軸方向から視た図である。なお、以下の記載において、軸方向、径方向、周方向、内周側、外周側は、ロータの回転軸を基準として定義されている。
【0012】
本実施例の埋め込み磁石同期モータとして、8極6スロットモータであって、小型二輪車用の駆動モータを例示する。ただし、本発明の埋め込み磁石同期モータの極数、スロット数および用途は任意であり、実施例の開示内容に限定されない。
【0013】
図1および図1Aは、それぞれ、ロータ20の周方向の一部であって、1極分の角度(45°)について図示している。ロータ20は回転対称形に構成され、他の7極分についても同様の形状とされる。1極分の角度(45°)内では、ロータ20は、中心線RCに対して線対称の形状とされる。
【0014】
図2は、ステータ10の周方向の一部であって、1スロット分の角度(60°)について図示している。ステータ10は回転対称形に構成され、他の5スロット分についても同様の形状とされる。1スロット分の角度(60°)内では、ステータ10は、中心線SCに対して線対称の形状とされる。
【0015】
図1図2に示すように、本実施例の埋め込み磁石同期モータは、ステータ10と、ステータ10の内周側に配置されたロータ20と、を備える。
【0016】
ロータ20は、回転軸X(図1図2)まわりに回転可能に支持されたシャフト20Aと、シャフト20Aに取り付けられ、周方向に一定間隔で配置されたロータ極21Aを有するリング状のロータコア21と、ロータコア21に取り付けられ、ロータ極21Aごとに設けられる一対の永久磁石23と、を備える。一対の永久磁石23は、ロータ極21Aを挟んでN極どうしまたは
S極どうしが周方向に交互に向き合うように配置された直方体形状とされている。永久磁石23は、ロータコア21の軸方向の幅の全体に延設されている。なお、本実施例では、永久磁石23は、ロータコア21に組み付けた状態で後着磁することが可能である。
【0017】
図1では、N極のロータ極21Aを挟んで、一対の永久磁石23のN極に対応する側面23aどうしが斜めに向き合う状態が示され、図1Aでは、S極のロータ極21Aを挟んで、一対の永久磁石23のS極に対応する側面23aどうしが斜めに向き合う状態が示されている。ロータ20においては、N極とS極のロータ極21Aが、45°ごとに周方向に交互に配置されている。
【0018】
図1および図1Aに示すように、ロータコア21には、永久磁石23の外周面23bに隣接する領域において、開口24が形成されている。開口24は、ロータコア21を軸方向に貫通しており、永久磁石23から外周側への磁束の流れを制御し、永久磁石23の外周側での漏れ磁束を抑制する機能を有する。開口24と、ロータコア21の外周端との間には、周方向に延設された架橋部24aが、隣接するロータ極21Aの境界部分であって、互いに隣接する開口24の間には、径方向に延設された架橋部24bが、それぞれ設けられている。
【0019】
また、ロータコア21には、永久磁石23の内周面23cに隣接する領域において、開口25が形成されている。開口25は、ロータコア21を軸方向に貫通しており、開口25は、永久磁石23から内周側への磁束の流れを制御し、永久磁石23の内周側での漏れ磁束を抑制する機能を有する。
【0020】
図2に示すように、ステータ10は、ステータティースを構成するステータコア11と、ステータコア11の外周側に配置されるステータヨーク12とを備える。ステータコア11は、径方向に延びてコイル(不図示)が巻き回されるコイル装着部11aと、コイル装着部11aから内周側に延びてロータ20に対向する対向部11bとを有する。対向部11bの内周面は、ロータ20の外周面との間に所定幅の間隙を介して配置される。対向部11bは、周方向に対し1スロット分の角度(60°)ごとに設けられ、隣接する対向部11bの間には、周方向のスロット開口幅S01(図2)の間隙が設けられている。
【0021】
本実施例では、埋め込み磁石同期モータにおける各部の形状・寸法について、以下の特徴を有する。これらの条件を満たすことにより、小型二輪車の駆動モータとして適したモータサイズを実現することが可能となる。また、小型二輪車用の駆動モータに要求される高トルク・高出力の性能を得ることができる。さらに、コギングを抑制することにより、二輪車としての取り回し性を向上させることができる。さらにまた、マグネット使用量を抑制することができ、コストダウンを図ることができる。本実施例によれば、これらの要素をバランスよく確保することが可能となる。以下の特徴は、本発明の発明者による磁場解析ソフトを用いた解析に基づいて得られたものである。
【0022】
(1)一対の永久磁石23は、ロータ極21Aを挟む位置において、V字形状を呈するように外周側に向かって間隔が広がるように配置されている。すなわち、一対の永久磁石23は、回転軸Xと直交する平面内、すなわち図1において、それぞれの永久磁石23の磁力と直交する側面23aが互いに外周側に向けて周方向の間隔が広がるように配置されており、それぞれの永久磁石23の上記側面23aどうしがなす角度θ(図1)が130°~150°の範囲とされている。角度θがこの範囲よりも小さいと、後着磁により十分な着磁ができなくなる。また、角度θがこの範囲よりも大きいと、十分なトルクを得ることが困難となる。
【0023】
(2)回転軸Xと直交する平面内、すなわち図1において、一対の永久磁石23のそれぞれの磁力と直交する方向における幅R02(図1)が、ロータコア21の外径R01(図1)の0.266~0.302倍の範囲とされている。これにより、モータに必要なトルクを獲得しつつ、永久磁石23のサイズを抑制することで、コストダウンを図ることができる。
【0024】
(3)回転軸Xと直交する平面内、すなわち図1において、一対の永久磁石23のそれぞれの磁力の方向における厚みR03(図1)が、ロータコア21の外径R01の0.056~0.071倍の範囲とされている。これにより、モータに必要なトルクを獲得しつつ、永久磁石23のサイズを抑制することで、コストダウンを図ることができる。
【0025】
(4)コイル装着部11aにおける周方向の幅S02(図2)が、ステータコア11の内径S03(図2)の0.25~0.36倍の範囲とされている。これにより、磁路の断面積を確保しつつ、コイルの巻線のための十分なスペースを確保することができるので、高トルク時(大電流時)における温度上昇を抑制することができる。
【0026】
(5)ロータコア21の外径R01が33~43mmの範囲にある。これにより、小型二輪車の駆動モータとして適した小型モータを得ることができる。
【0027】
(6)ステータコア11の内径S03が34~44mmの範囲にある。これにより、小型二輪車の駆動モータとして適した小型モータを得ることができる。また、ステータ10とロータ20間のエアーギャップを適切な値とすることができる。
【0028】
(第2の実施例)
以下、第2の実施例の埋め込み磁石同期モータについて、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0029】
図3は、第2の実施例の埋め込み磁石同期モータを構成するロータコアを軸方向から視た図、図3Aは、図3の一部拡大図である。図3および図3Aにおいて、第1の実施例に対応する要素には、同一符号を付している。
【0030】
図3および図3Aに示すように、ロータ120を構成するロータコア121には、軸方向に貫通し、永久磁石23(図3A)が収容される貫通孔26と、軸方向に貫通し、シャフト20Aが固定される貫通孔30と、軸方向に貫通する肉盗み31が形成されている。ロータコア121には、周方向の45°ごとに、N極のロータ極121AおよびS極のロータ極121Aが、交互に形成される。
【0031】
貫通孔26には、永久磁石23が収容されるが、貫通孔26のうち、永久磁石23の外周側に開口124が、永久磁石23の内周側に開口125が、それぞれ形成される領域が確保されている(図3A)。開口124は、第1の実施例における開口24と同様、永久磁石23から外周側への磁束漏れを抑制する機能を有する。また、開口125は、第1の実施例における開口25と同様、永久磁石23から内周側への磁束漏れを抑制する機能を有する。
【0032】
開口124は、永久磁石23の外周面23bよりも、図3Aにおいて外周面23bに沿った方向の幅が狭まった狭窄部124Aと、狭窄部124Aの外周側に位置し、狭窄部124Aよりも周方向の幅が拡大する拡大部124Bとを有する。
【0033】
また、図3Aに示すように、開口124(拡大部124B)と、ロータコア121の外周端との間には、周方向に延設された架橋部124aが、隣接するロータ極121Aの境界部分であって、互いに隣接する開口124(拡大部124B)の間には、径方向に延設された架橋部124bが、それぞれ設けられている。
【0034】
肉盗み31は、永久磁石23の内周側端部よりも外周側まで形成されている。すなわち、図3Aにおいて、永久磁石23の内周側端部の位置はラインL3で示され、肉盗み31の外周側端部の位置を示すラインL2は、ラインL3よりも外周側に位置する。また、肉盗み31の外周側端部は、軸方向から視て、肉盗み31を挟み互いに対向する永久磁石23の側面23d(図3A)における径方向の中心どうしを結ぶラインL1(図3A)よりも内周側にある。すなわち、ラインL2は、ラインL1よりも内周側に位置する。
【0035】
また、ロータコア121には、周方向において互いに隣接する2つの肉盗み31の間にあり、永久磁石23の内周側において軸方向に貫通する肉盗み32が形成されている。肉盗み31は、肉盗み32の外周側端部よりも外周側まで形成されている。すなわち、図3において、肉盗み32の外周側端部の位置は、ラインL4により示され、肉盗み31は、ラインL4よりも外周側まで形成されている。
【0036】
本実施例では、ロータコア121に、肉盗み31および肉盗み32を形成しているので、ロータ120の質量および慣性モーメントを低下させることができる。これにより、シャフト20Aを支持するベアリングの小型化、衝撃トルクの抑制、モータの回転に対する制御性の向上、およびモータの軽量化などを図ることができる。
【0037】
また、図3に示すように、肉盗み31および肉盗み32は、いずれも軸方向にロータ120を貫通する丸孔として形成されている。肉盗み31および肉盗み32の形状を複雑な形状ではなく、丸孔とすることにより、金型の製造コストおよびメンテナンス費用を抑制することができる。
【0038】
一般的に、ロータコアに形成された肉盗みは、ロータコアにおける磁束の形成状態に悪影響を与え得るため、トルクの減少など、モータの性能低下を招くおそれがある。しかし、本発明の発明者による磁場解析ソフトを用いた解析によれば、肉盗み31の外周側端部を、肉盗み31を挟み互いに対向する永久磁石23の側面23dにおける径方向の中心どうしを結ぶラインL1よりも内周側に設定した場合には、肉盗み31がモータの特性に悪影響を与えないことが判明している。本実施例では、肉盗み31の外周側端部(ラインL2)をラインL1よりも内周側に設定することにより、肉盗み31によるトルクの減少率をゼロとすることができる。
【0039】
(第3の実施例)
以下、第3の実施例の埋め込み磁石同期モータについて、第2の実施例との相違点を中心に説明する。
【0040】
図4は、第3の実施例の埋め込み磁石同期モータを構成するロータコアを軸方向から視た図、図4Aは、図4の一部拡大図である。図4および図4Aにおいて、第2の実施例に対応する要素には、同一符号を付している。
【0041】
図4および図4Aに示すように、ロータ220を構成するロータコア221には、軸方向に貫通し、永久磁石23が収容される貫通孔26と、軸方向に貫通し、シャフト20Aが固定される貫通孔30と、軸方向に貫通する肉盗み31Aおよび肉盗み32が形成されている。ロータコア221には、周方向の45°ごとに、N極のロータ極221AおよびS極のロータ極221Aが、交互に形成される。
【0042】
肉盗み31Aは、永久磁石23の内周側端部よりも外周側まで形成されている。すなわち、図4Aにおいて、永久磁石23の内周側端部はラインL3で示され、肉盗み31Aの外周側端部を示すラインL2は、ラインL3よりも外周側に位置する。また、本実施例では、肉盗み31Aの外周側端部は、軸方向から視て、肉盗み31Aを挟み互いに対向する永久磁石23の側面23d(図3A)における径方向の中心どうしを結ぶラインL1(図4A)と径方向について同じ位置にある。すなわち、ラインL2は、ラインL1と重なっている。
【0043】
また、ロータコア221には、周方向において互いに隣接する2つの肉盗み31Aの間にあり、永久磁石23の内周側において軸方向に貫通する肉盗み32が形成されている。肉盗み31Aは、肉盗み32の外周側端部よりも外周側まで形成されている。すなわち、図4において、肉盗み32の外周側端部の位置は、ラインL4により示され、肉盗み31Aは、ラインL4よりも外周側まで形成されている。
【0044】
図4に示すように、肉盗み31Aおよび肉盗み32は、いずれも軸方向にロータ220を貫通する丸孔として形成されている。肉盗み31Aおよび肉盗み32の形状を複雑な形状ではなく、丸孔とすることにより、金型の製造コストおよびメンテナンス費用を抑制することができる。
【0045】
本実施例では、ロータコア221に、肉盗み31Aおよび肉盗み32を形成しているので、ロータ220の質量および慣性モーメントを低下させることができる。とくに、肉盗み31Aを、第2の実施例の肉盗み31よりも大径に形成し、肉盗み31よりも外周側まで設けているので、ロータ220の質量および慣性モーメントをさらに低下させることができる。これにより、シャフト20Aを支持するベアリングの小型化、衝撃トルクの抑制、モータの回転に対する制御性の向上、およびモータの軽量化などを、第2の実施例よりもさらに促進することができる。
【0046】
また、本実施例では、肉盗み31Aの外周側端部(ラインL2)をラインL1と同じ位置に設定することにより、肉盗み31Aによるトルクの減少率を効果的に抑制することができる。例えば、肉盗み31Aを形成したことによるトルクの減少率を0.2パーセントに抑制することができる。
【0047】
(第4の実施例)
以下、第4の実施例の埋め込み磁石同期モータについて、第2の実施例および第3の実施例との相違点を中心に説明する。
【0048】
図5は、第4の実施例の埋め込み磁石同期モータを構成するロータコアを軸方向から視た図、図5Aは、図5の一部拡大図である。図5および図5Aにおいて、第2の実施例および第3の実施例に対応する要素には、同一符号を付している。
【0049】
図5および図5Aに示すように、ロータ320を構成するロータコア321には、軸方向に貫通し、永久磁石23が収容される貫通孔26と、軸方向に貫通し、シャフト20Aが固定される貫通孔30と、軸方向に貫通する肉盗み31Bおよび肉盗み32が形成されている。ロータコア321には、周方向の45°ごとに、N極のロータ極321AおよびS極のロータ極321Aが、交互に形成される。
【0050】
肉盗み31Bは、永久磁石23の内周側端部よりも外周側まで形成されている。すなわち、図5Aにおいて、永久磁石23の内周側端部はラインL3で示され、肉盗み31Bの外周側端部を示すラインL2は、ラインL3よりも外周側に位置する。また、本実施例では、肉盗み31Bの外周側端部は、軸方向から視て、肉盗み31Bを挟み互いに対向する永久磁石23の側面23d(図3A)における径方向の中心どうしを結ぶラインL1(図5A)よりも外周側にある。すなわち、ラインL2は、ラインL1よりも外周側に位置する。
【0051】
また、ロータコア321には、周方向において互いに隣接する2つの肉盗み31Bの間にあり、永久磁石23の内周側において軸方向に貫通する肉盗み32が形成されている。肉盗み31Bは、肉盗み32の外周側端部よりも外周側まで形成されている。すなわち、図5において、肉盗み32の外周側端部の位置は、ラインL4により示され、肉盗み31Bは、ラインL4よりも外周側まで形成されている。
【0052】
図5に示すように、肉盗み31Bおよび肉盗み32は、いずれも軸方向にロータ320を貫通する丸孔として形成されている。肉盗み31Bおよび肉盗み32の形状を複雑な形状ではなく、丸孔とすることにより、金型の製造コストおよびメンテナンス費用を抑制することができる。
【0053】
本実施例では、ロータコア321に、肉盗み31Bおよび肉盗み32を形成しているので、ロータ320の質量および慣性モーメントを低下させることができる。とくに、肉盗み31Bを、第3の実施例の肉盗み31Aよりも大径に形成し、肉盗み31Aよりも外周側まで設けているので、ロータ320の質量および慣性モーメントをさらに低下させることができる。これにより、シャフト20Aを支持するベアリングの小型化、衝撃トルクの抑制、モータの回転に対する制御性の向上、およびモータの軽量化などを、第3の実施例よりもさらに促進することができる。
【0054】
ただし、本実施例では、肉盗み31Bの外周側端部(ラインL2)をラインL1よりも外周側に設定しているため、肉盗み31Bによるトルクの減少が生じ得る。したがって、トルク等のモータの性能を考慮しつつ、肉盗み31Bの外周側端部(ラインL2)の位置(径方向の位置)を設定することが望ましい。
【0055】
(第5の実施例)
以下、第5の実施例の埋め込み磁石同期モータについて、第2の実施例との相違点を中心に説明する。
【0056】
図6は、第5の実施例の埋め込み磁石同期モータを構成するロータコアを軸方向から視た図、図6Aは、図6の一部拡大図である。図6および図6Aにおいて、第2の実施例~第4の実施例に対応する要素には、同一符号を付している。
【0057】
図6および図6Aに示すように、ロータ420を構成するロータコア421には、軸方向に貫通し、永久磁石23が収容される貫通孔26と、軸方向に貫通し、シャフト20Aが固定される貫通孔30と、軸方向に貫通する肉盗み31C、肉盗み31Dおよび肉盗み32が形成されている。本実施例では、第2の実施例の肉盗み31のそれぞれに代えて、周方向に配列した一対の肉盗み31Cと、肉盗み31Cよりも内周側であって、周方向において一対の肉盗み31Cの中間に配置された肉盗み31Dと、を設けている。ロータコア421には、周方向の45°ごとに、N極のロータ極421AおよびS極のロータ極421Aが、交互に形成される。
【0058】
肉盗み31Cは、永久磁石23の内周側端部よりも外周側まで形成されている。すなわち、図6Aにおいて、永久磁石23の内周側端部はラインL3で示され、肉盗み31Cの外周側端部を示すラインL2は、ラインL3よりも外周側に位置する。また、肉盗み31Cの外周側端部は、軸方向から視て、肉盗み31Cを挟み互いに対向する永久磁石23の側面23d(図3A)における径方向の中心どうしを結ぶラインL1(図6A)よりも内周側にある。すなわち、ラインL2は、ラインL1よりも内周側に位置する。
【0059】
また、ロータコア421には、周方向において互いに隣接する2つの肉盗み31Dの間にあり、永久磁石23の内周側において軸方向に貫通する肉盗み32が形成されている。肉盗み31Cは、肉盗み32の外周側端部よりも外周側まで形成されている。すなわち、図6において、肉盗み32の外周側端部の位置は、ラインL4により示され、肉盗み31Cは、ラインL4よりも外周側まで形成されている。
【0060】
図6に示すように、肉盗み31C、肉盗み31Dおよび肉盗み32は、いずれも軸方向にロータ420を貫通する丸孔として形成されている。肉盗み31C、肉盗み31Dおよび肉盗み32の形状を複雑な形状ではなく、丸孔とすることにより、金型の製造コストおよびメンテナンス費用を抑制することができる。
【0061】
本実施例では、ロータコア421に、肉盗み31C、肉盗み31Dおよび肉盗み32を形成しているので、ロータ420の質量および慣性モーメントを低下させることができる。これにより、シャフト20Aを支持するベアリングの小型化、衝撃トルクの抑制、モータの回転に対する制御性の向上、およびモータの軽量化などを図ることができる。
【0062】
また、本実施例では、肉盗み31Cの外周側端部(ラインL2)をラインL1よりも内周側に設定することにより、肉盗み31Cおよび肉盗み31Dによるトルクの減少率をゼロとすることができる。
【0063】
以上、実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部または複数を組み合わせることも可能である。
【0064】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0065】
[付記1]
ステータ(10)と、
前記ステータの内周側に配置されたロータ(20)と、
を備えるモータであって、
前記ロータは、
前記ロータの周方向に一定間隔で配置されたロータ極を有するロータコア(21)と、
前記ロータコアに取り付けられ、前記ロータ極を挟んでN極どうしまたはS極どうしが向き合うように配置された一対の永久磁石(23)と、
を備え、
前記一対の永久磁石は、回転軸(X)と直交する平面内において、それぞれの永久磁石の磁力と直交する平面(23a)が互いに外周側に向けて周方向の間隔が広がるように配置されており、それぞれの永久磁石の磁力と直交する前記平面がなす角度(θ)が130°~150°の範囲とされている、埋め込み磁石同期モータ。
【0066】
付記1の構成によれば、角度θが130°~150°の範囲とされているので、永久磁石23に対して、後着磁により十分な着磁が可能となるとともに、十分なトルクを得ることが可能となる。
【0067】
[付記2]
回転軸と直交する平面内において、前記一対の永久磁石のそれぞれの磁力と直交する方向における幅(R02)が、前記ロータコアの外径(R01)の0.266~0.302倍の範囲とされている、付記1に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0068】
付記2の構成によれば、必要なトルクを維持しつつ、永久磁石のサイズを抑制することができる。
【0069】
[付記3]
回転軸と直交する平面内において、前記一対の永久磁石のそれぞれの磁力の方向における厚み(R03)が、前記ロータコアの外径の0.056~0.071倍の範囲とされている、付記1または付記2に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0070】
付記3の構成によれば、必要なトルクを維持しつつ、永久磁石のサイズを抑制することができる。
【0071】
[付記4]
前記ロータ極(21A)の数が8である、付記1~付記3のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0072】
付記4の構成によれば、例えば、二輪車の駆動用モータとして適したモータを得ることができる。
【0073】
[付記5]
前記ステータは、ステータコア(11)を備え、
前記ステータコアは、
径方向に延びてコイルが巻き巻かれるコイル装着部(11a)を備え、
前記コイル装着部における周方向の幅(S02)が、前記ステータコアの内径(S03)の0.25~0.36倍の範囲とされている、付記1~付記4のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0074】
付記5の構成によれば、磁路の断面積を確保しつつ、コイルの巻線のための十分なスペースを確保することができるので、高トルク時(大電流時)における温度上昇を抑制することができる。
【0075】
[付記6]
前記ステータのスロット数が12である、付記5に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0076】
付記6の構成によれば、例えば、二輪車の駆動用モータとして適したモータを得ることができる。
【0077】
[付記7]
前記ロータコアの外径が33~43mmの範囲にある、付記1~付記6のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0078】
付記7の構成によれば、例えば、小型二輪車の駆動モータとして適した小型モータを得ることができる。
【0079】
[付記8]
前記ステータコアの内径が34~44mmの範囲にある、付記7に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0080】
付記8の構成によれば、例えば、小型二輪車の駆動モータとして適した小型モータを得ることができる。また、ステータとロータ間のエアーギャップを適切な値とすることができる。
【符号の説明】
【0081】
10 ステータ
11 ステータコア
11a コイル装着部
20、120、220、320、420 ロータ
21、121、221、321、421 ロータコア
21A、121A、221A、321A、421A ロータ極
23 永久磁石
31 肉盗み
32 肉盗み
X 回転軸
図1
図1A
図2
図3
図3A
図4
図4A
図5
図5A
図6
図6A