(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048886
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】紐締め装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65H 75/38 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
B65H75/38 L
B65H75/38 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158461
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 剛
(72)【発明者】
【氏名】福島 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】大迫 翔太
【テーマコード(参考)】
3F068
【Fターム(参考)】
3F068AA14
3F068BA00
3F068CA02
3F068CA06
3F068DA02
3F068FA03
3F068GA02
3F068HA02
3F068HA08
3F068HB14
3F068HB18
3F068JB03
(57)【要約】
【課題】ハウジングの機械的強度の低下を抑制しつつ組み立てに際した紐類の取り扱いを容易にすること。
【解決手段】筒状部21には、軸線AXに沿って筒状部21の一端から他端に向けて延びるスリット60が形成される。スリット60は、筒状部21の一端側に位置する第1部分61と筒状部21の他端側に位置する第2部分62を含む。リング状部材30は、リング状部材30がスリット60の第1部分61を被覆してスリット60の第2部分62に紐類用の通路を形成するように筒状部21に対して取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐類の巻き取り又は繰り出しのために軸線(AX)周りに回動可能なスプール(10)と、
前記スプール(10)の収容空間を定めるべく前記軸線(AX)に沿って延びる筒状部(21)を含むハウジング(20)と、
前記ハウジング(20)の前記筒状部(21)に対して取り付けられるリング状部材(30)を備え、
前記筒状部(21)には、前記軸線(AX)に沿って前記筒状部(21)の一端から他端に向けて延びる1以上のスリット(60)が形成され、前記スリット(60)が前記筒状部(21)の一端側に位置する第1部分(61)と前記筒状部(21)の他端側に位置する第2部分(62)を含み、
前記リング状部材(30)は、前記リング状部材(30)が前記スリット(60)の前記第1部分(61)を被覆して前記スリット(60)の前記第2部分(62)に前記紐類用の通路を形成するように前記筒状部(21)に対して取り付けられる、紐締め装置。
【請求項2】
前記ハウジング(20)の前記筒状部(21)には歯列(70)が設けられ、前記スリット(60)が前記歯列(70)を横断するように設けられることを特徴とする請求項1に記載の紐締め装置。
【請求項3】
前記スリット(60)の前記第1部分(61)は、前記歯列(70)において隣接する歯部(71)の中間に設けられた幅狭部であることを特徴とする請求項2に記載の紐締め装置。
【請求項4】
前記スリット(60)の前記第2部分(62)は、前記幅狭部に隣接した位置で前記幅狭部に空間連通した幅広部であることを特徴とする請求項3に記載の紐締め装置。
【請求項5】
前記筒状部(21)は、前記幅広部を画定するべく対向した一対の壁面(21m,21n)と、前記幅狭部を画定するべく前記一対の壁面(21m,21n)からお互いに接近するように突出した一対の突出部(21p,21q)を含むことを特徴とする請求項4に記載の紐締め装置。
【請求項6】
前記スリット(60)は、その延在方向において異なる2以上の幅を有し、その異なる2以上の幅の最小幅が少なくとも前記歯列(70)を横断する範囲に設定されることを特徴とする請求項2に記載の紐締め装置。
【請求項7】
前記筒状部(21)の一端部(21c)の内側に歯列(70)が形成され、前記筒状部(21)の前記一端部(21c)の外側に前記リング状部材(30)が取り付けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の紐締め装置。
【請求項8】
前記リング状部材(30)は、少なくとも前記スリット(60)の前記第1部分(61)に嵌合するリブ(33)を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の紐締め装置。
【請求項9】
前記リング状部材(30)は、少なくとも前記スリット(60)の前記第1部分(61)に嵌合するリブ(33)を有し、
前記リブ(33)の高さは、前記リング状部材(30)が前記筒状部(21)に対して取り付けられた時、前記歯列(70)の歯部(71)の間の凹部(72)の底と同等の深さ位置に前記リブ(33)の頂面(33j)が配置されるように設定されることを特徴とする請求項2に記載の紐締め装置。
【請求項10】
前記ハウジング(20)は、前記筒状部(21)が立設した平板部(22)を有し、前記平板部(22)には前記スリット(60)に空間連通した穴(24)が設けられることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の紐締め装置。
【請求項11】
前記1以上のスリット(60)は、4以上のスリット(60)を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の紐締め装置。
【請求項12】
前記スプール(10)及び前記ハウジング(20)上に配置され、かつ前記スプール(10)と前記ハウジング(20)の係合状態の制御のために前記スプール(10)に対して係合するカバー(40)を更に備え、
前記スプール(10)の係合部(80)と前記ハウジング(20)の係合部(70)の係合に基づいて、前記軸線(AX)に関して一定又は異なる角度間隔で前記スプール(10)が前記ハウジング(20)に対して位置決め可能であり、
前記ハウジング(20)の係合部(70)は、前記ハウジング(20)の前記筒状部(21)の内壁面に形成された歯列(70)であり、前記スプール(10)の係合部(80)は、前記軸線(AX)に関する径方向に揺動可能な腕部(80)であり、前記カバー(40)には前記腕部(80)を押圧するための第1突部(45)が設けられることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の紐締め装置。
【請求項13】
前記スプール(10)にはスロット(19)が形成され、
前記カバー(40)には前記スロット(19)に挿入される第2突部(46)が設けられ、
前記第2突部(46)は、前記カバー(40)から前記スプール(10)への回転力の伝達のために前記スロット(19)の壁面を押圧可能に設けられることを特徴とする請求項12に記載の紐締め装置。
【請求項14】
前記紐締め装置に含まれる全てのパーツが非金属材料から成ることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の紐締め装置。
【請求項15】
スプール(10)に対して紐類を取り付ける工程と、
ハウジング(20)の筒状部(21)内に前記スプール(10)を配置する工程と、
前記ハウジング(20)の前記筒状部(21)にその一端から他端に向けて延びるように形成されたスリット(60)に前記紐類を導入する工程と、
前記筒状部(21)の前記一端側の前記スリット(60)の第1部分(61)を被覆して前記筒状部(21)の前記他端側の前記スリット(60)の第2部分(62)に前記紐類用の通路を形成するように前記筒状部(21)に対してリング状部材(30)を取り付ける工程を含む、紐締め装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紐締め装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば、同文献の
図3に図示のように、主にノブ、スプール、ハウジングから構成される紐締め装置が開示されている。スプールに設けられた歯止めの先端が、ハウジングの凹みに進入する。スプールには被駆動部が設けられ、ノブに設けられた駆動部により駆動される(駆動部について同文献の
図19参照)。同文献の
図24から理解されるように、ノブの回動によってノブの駆動部がスプールの被駆動部を押す。同文献の
図25から理解されるように、ノブの回動によってノブの駆動部がスプールの歯止めを押す。このようにしてスプールから紐が繰り出され又はスプールに紐が回収される。
【0003】
特許文献2にはダイヤルに設けられた環状ギヤにベース部材の爪が係合する形態が開示されている(例えば、同文献の
図1,8参照)。同文献の
図29にはドラム収容部の環状壁の上に環状部を固定することが開示されている。環状部を部分的に切り欠くことによって上述の爪が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第2378911号明細書
【特許文献2】特開2018-23614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紐締め装置においてスプールを収容するハウジングにはスプールの保持のために機械的な強度又は安定性が求められる。この目的のためにハウジングに孔を設けて孔を介してハウジング内外に紐類を通すことが行われている。しかしながら、このような場合、その孔に対して紐類を通す作業負担があり、紐締め装置の製造効率を高めることに障害となっている。本願発明者は、上述の説明から理解されるように、ハウジングの機械的強度の低下を抑制しつつ組み立てに際した紐類の取り扱いを容易にするという新たな課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る紐締め装置は、紐類の巻き取り又は繰り出しのために軸線周りに回動可能なスプールと、スプールの収容空間を定めるべく軸線に沿って延びる筒状部を含むハウジングと、ハウジングの筒状部に対して取り付けられるリング状部材を含む。筒状部には、軸線に沿って筒状部の一端から他端に向けて延びる1以上のスリットが形成され、スリットが筒状部の一端側に位置する第1部分と筒状部の他端側に位置する第2部分を含む。リング状部材は、リング状部材がスリットの第1部分を被覆してスリットの第2部分に紐類用の通路を形成するように筒状部に対して取り付けられる。
【0007】
本開示の別態様に係る紐締め装置の製造方法は、スプールに対して紐類を取り付ける工程と、ハウジングの筒状部内にスプールを配置する工程と、ハウジングの筒状部にその一端から他端に向けて延びるように形成されたスリットに紐類を導入する工程と、筒状部の一端側のスリットの第1部分を被覆して筒状部の他端側のスリットの第2部分に紐類用の通路を形成するように筒状部に対してリング状部材を取り付ける工程を含む。
【0008】
幾つかの実施形態においては、ハウジングの筒状部には歯列が設けられ、スリットが歯列を横断するように設けられる。
【0009】
幾つかの実施形態においては、スリットの第1部分は、歯列において隣接する歯部の中間に設けられた幅狭部である。
【0010】
幾つかの実施形態においては、スリットの第2部分は、幅狭部に隣接した位置で幅狭部に空間連通した幅広部である。筒状部は、幅広部を画定するべく対向した一対の壁面と、幅狭部を画定するべく一対の壁面からお互いに接近するように突出した一対の突出部を含み得る。
【0011】
幾つかの実施形態においては、スリットは、その延在方向において異なる2以上の幅を有し、その異なる2以上の幅の最小幅が少なくとも歯列を横断する範囲に設定される。
【0012】
幾つかの実施形態においては、筒状部の一端部の内側に歯列が形成され、筒状部の一端部の外側にリング状部材が取り付けられる。
【0013】
幾つかの実施形態においては、リング状部材は、少なくともスリットの第1部分に嵌合するリブを有する。
【0014】
幾つかの実施形態においては、リング状部材は、少なくともスリットの第1部分に嵌合するリブを有し、リブの高さは、リング状部材が筒状部に対して取り付けられた時、歯列の歯部の間の凹部の底と同等の深さ位置にリブの頂面が配置されるように設定される。
【0015】
幾つかの実施形態においては、ハウジングは、筒状部が立設した平板部を有し、平板部にはスリットに空間連通した穴が設けられる。
【0016】
幾つかの実施形態においては、1以上のスリットは、4以上のスリットを含む。
【0017】
幾つかの実施形態においては、紐締め装置は、スプール及びハウジング上に配置され、かつスプールとハウジングの係合状態の制御のためにスプールに対して係合するカバーを更に含む。スプールの係合部とハウジングの係合部の係合に基づいて、軸線に関して一定又は異なる角度間隔でスプールがハウジングに対して位置決め可能であり得る。ハウジングの係合部は、ハウジングの筒状部の内壁面に形成された歯列であり、スプールの係合部は、軸線に関する径方向に揺動可能な腕部であり、カバーには腕部を押圧するための第1突部が設けられ得る。
【0018】
幾つかの実施形態においては、スプールにはスロットが形成され、カバーにはスロットに挿入される第2突部が設けられ、第2突部は、カバーからスプールへの回転力の伝達のためにスロットの壁面を押圧可能に設けられる。
【0019】
幾つかの実施形態においては、紐締め装置に含まれる全てのパーツが非金属材料から成る。
【発明の効果】
【0020】
本開示の一態様によれば、ハウジングの機械的強度の低下を抑制しつつ組み立てに際した紐類の取り扱いを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の一態様に係る紐締め装置の概略的な分解斜視図である。
【
図2】本開示の一態様に係る紐締め装置の概略的な斜視図であり、紐締め装置から紐類のループが延出している。
【
図3】カバーが取り外された状態の紐締め装置の概略的な斜視図である。
【
図4】締結具が取り外された紐締め装置の概略的な上面図である。
【
図5】
図4の一点鎖線X5-X5に沿う紐締め装置の概略的な断面模式図である。
【
図6】スプールとカバーの組立品の斜視図であり、スプールの下面が示される。
【
図9】スプールとハウジングの係合状態を示す概略的な上面図である。
【
図10】歯列における歯部のピッチとスロットの角度範囲の関係を示す概略的な上面図である。
【
図11】スプールの腕部の先端部がハウジングの歯列のある凹みから隣接する別の凹みに移動することを説明するために参照される概略図である。
【
図12】スプールの腕部の先端部がハウジングの歯列のある凹みから隣接する別の凹みに移動することを説明するために参照される概略図である。
【
図13】スプールの腕部の先端部がハウジングの歯列のある凹みから隣接する別の凹みに移動することを説明するために参照される概略図である。
【
図14】ハウジングの筒状部のスリットに紐類が挿入されることを示す模式図である。
【
図15】ハウジングの筒状部のスリットに紐類が挿入された後、スリットに対してリング状部材のリブが嵌合することを示す模式図である。
【
図16】スリットの幅広部に対して選択的にリブが嵌合するバリエーションを示す模式図である。
【
図17】スプールがゼンマイにシャフトを介して連結したバリエーションを示す模式図であり、ゼンマイの作動により紐類がスプールに自動的に巻き取られる。
【
図18】ハウジングとカバーが上下反転して設けられた別のバリエーションを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1乃至
図18を参照しつつ、様々な実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本願に開示された紐締め装置及びその製造方法にのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々な紐締め装置及びその製造方法にも通用する普遍的な特徴として理解される。本明細書では、説明の便宜上、後述の軸線AXが上下方向に一致するものとして説明する。
【0023】
図1に示すように、紐締め装置1は、スプール10、ハウジング20、リング状部材30、カバー40、及び締結具50を含む。紐締め装置1にはスプール10の回動軸に一致する軸線AXが設定されており、ハウジング20、スプール10、リング状部材30、カバー40、及び締結具50が軸線AX上(即ち、同軸上)に配置される。静止部材であるハウジング20との関係においてスプール10及びカバー40は軸線AX周りに回動可能である。カバー40の回動に同調してスプール10が回動して紐締め装置1から紐類が繰り出され又は紐締め装置1により紐類が巻き取られる。紐締め装置を単にリールと呼ぶこともできる。
【0024】
紐締め装置1は、組み立て状態(
図2参照)で十分に薄く、従って、靴類に限らず衣類にも活用可能である。例えば、紐締め装置1は、ズボン又はスカートの裾上げ、ズボン又はスカートのウエスト調整のために用いることができる。勿論、靴、鞄、リュックサック、登山用リュックといった紐締めが必要な他の用途にも活用可能である。
【0025】
紐締め装置1の組み立ての詳細については後述するが、その概要としては、
図1乃至
図3から分かるように、予め紐類(
図3にて不図示)が取り付けられたスプール10をハウジング20内に配置し、ハウジング20に対してリング状部材30を取り付け、ハウジング20上にカバー40を配置し、締結具50をハウジング20に締結する。紐類は、柔軟性のある線材であり、例えば、天然又は化学繊維から形成された紐、或いは樹脂性のワイヤーである。
【0026】
幾つかの実施形態においては、スプール10に係合部(例えば、腕部80)が設けられ、ハウジング20に係合部(例えば、歯列70)が設けられ、これらの係合部が一つのペアとして係合し得る。この係合に基づいて軸線AXに関して一定又は異なる角度間隔(例えば、15°又は30°又は45°)でスプール10がハウジング20に対して位置決めされる。これにより(例えば、紐締め装置1から引き出される紐類の長さ調整のために)スプール10の漸次の又は段階的な回動が確保できる。紐類に付与される引っ張り力によってスプール10が意図せずに回動してしまうことも抑止され得る。
【0027】
以下、より詳細に説明する。
図4は、紐締め装置の概略的な上面図である。
図5は、
図4の一点鎖線X5-X5に沿う紐締め装置の概略的な断面模式図である。
図6は、スプールとカバーの組立品の斜視図であり、スプールの下面が示される。
図7は、ハウジングの下面を示す斜視図である。
図8は、カバーの下面を示す斜視図である。
図9は、スプールの腕部とハウジングの筒状部の歯列の係合状態を示す概略的な上面図である。
【0028】
図5及び
図6に示すように、スプール10は、スプール軸部12とフランジ部13,14を有し、これらによって軸線AXに関する周方向(以下、単に周方向と呼ぶ)に延びる紐類用の第1溝11が画定される。スプール軸部12は、筒状外壁12aと、筒状内壁12bと、筒状外壁12a及び筒状内壁12bを連結する環状の連結壁12cを有する。スプール軸部12(例えば、筒状内壁12bの内側)に貫通孔16(
図1参照)が形成され、後述のハウジング20のハウジング軸部23が挿通可能である。筒状外壁12aと筒状内壁12bの間には第2溝15が形成され、そこに設けられた紐止部17(
図6参照)に紐類を固定することができる。フランジ部13,14は、スプール軸部12から径方向外側に延びる環状部材である。フランジ部13,14は、お互いに平行に配置され、両者の間で第1溝11の一定の溝幅を画定する。フランジ部13,14が非平行に配置される形態も想定される。
【0029】
第1溝11と第2溝15は、スリット12d(
図6参照)を介して空間連通しており、スリット12dに紐類を導入することで第1溝11と第2溝15の両方に紐類を配置することができる。スプール10に対する紐類の取り付け態様については
図6の破線で示すとおりであり、図示例では、あるスリット12dから第2溝15に紐類が導入され、スプール軸部12の筒状内壁12bの周囲を延び、別のスリット12dを介して第2溝15から退出する。第2溝15に紐類の結び目を配置して第2溝15から紐類を脱落し難くすることもできる。
【0030】
図3に示すように、スプール10は、係合部としての腕部80と、腕部80が片持梁として連結した連結部18を有する。腕部80は、軸線AXに関する径方向(以下、単に径方向と呼ぶ場合がある)に揺動可能なバネ部である。腕部80は、第1棒部81と第1棒部81に対して所定角をなすように延びる第2棒部82を有する。第1棒部81は、連結部18に対して凹み89を形成するように設けられ、また第2棒部82よりも長く延び、これらのいずれか又は両方のおかげで腕部80の十分な弾性(例えば、弾性的な枢動)が確保される。第2棒部82は、第1棒部81から離間するに応じてテーパー状に幅広になり、腕部80の先端部83の所望の幅が確保される。腕部80の先端部83は、歯列70の歯部71の間の凹部72の形状に合致するように形状づけられ、例えば、その先端に向けてその幅が漸減するリッジ状又はV字状の突出形状を持つ。腕部80の先端部83を他の形状、例えば、半円状に形状付けることもできる。連結部18には周方向に延びるスロット19が形成され、カバー40の後述の第2突部46が挿入される。
【0031】
スプール10は、必ずしも一体物(例えば、一つの射出成形品)に限らず、スプール軸部12とフランジ部13,14を含む第1パーツと、腕部80と連結部18を含む第2パーツの組立品であり得る。第1パーツ(例えば、フランジ部)に対して第2パーツ(例えば、連結部18)を機械的に固定して同様のスプールを構築することができる。
【0032】
図1に示すように、ハウジング20は、筒状部21と、筒状部21が立設した平板部22と、軸線AX上に設けられ、軸線AXに沿って延びるハウジング軸部23を有する。筒状部21は、スプール10の収容空間を定めるべく軸線AXに沿って延び、その上端(一端)21aにおいてスプール10の導入のための開口を有し、その下端(他端)21bにおいて平板部22により閉鎖されている(スプール10の回動を妨害しないような開口を形成しても良い)。筒状部21は、断面正円形状の円筒状部であるが、他の形状を取ることもできる。
【0033】
平板部22は、衣服等への紐締め装置1の取付のために設けられ、接着、縫着、磁着などによって衣類等に固定される。ハウジング軸部23は、スプール10を軸支するため、かつ締結具50との嵌合のために設けられる。スプール10の貫通孔16にハウジング20のハウジング軸部23を通すことによって両者が係合する。スプール10とハウジング20の間の軸着の態様は様々であり、図示例に限られるべきではない。ハウジング20ではなくスプール10に軸部を設けることも可能である。また、スプール10を軸支しない形態も想定される。図示例では、ハウジング軸部23は、二股に分岐した先端部を有し、これらの間に締結具50が挿入固定される。
【0034】
筒状部21には係合部として歯列70が形成される。歯列70は、例えば、筒状部21の上端部(一端部)21c(例えば、その内側又は内壁面)に形成される。歯列70は、径方向に突出した歯部71が軸線AX回りの周方向に配列されて構成され、周方向で隣接する歯部71の間には凹部72が形成される。歯部71は、一対の傾斜面のこれらの傾斜面の間に設けられた頂面を有する。凹部72は、周方向で隣接する歯部71の傾斜面とこれらの傾斜面の間に設けられた底面を有する。
【0035】
筒状部21には、軸線AXに沿って筒状部21の上端21aから下端21bに向けて延びるスリット60が形成される。スリット60は、典型的には、軸線AXに平行な方向において長く延びるが、必ずしもこの限りではない。スリット60は、筒状部21の上端21a側に(又は寄りに)位置する第1部分61と筒状部21の下端21b側に(又は寄りに)位置する第2部分62を含む。
【0036】
スリット60は、軸線AXに沿って歯列70を横断するように設けられる。かかる構成によれば、筒状部21の上端21a寄りに又は近傍に歯列70を設けることができ、紐締め装置1及び/又はハウジング20の薄厚化も促進される。この追加又は代替の効果として、歯列70に対応して腕部80も筒状部21の上端21a近傍に位置付けられるため、カバー40とスプール10の係合(例えば、第1突部45と腕部80の係合)を簡単に確保することができる。
【0037】
スリット60は、その延在方向において異なる2以上の幅を有し、その異なる2以上の幅の最小幅が少なくとも歯列70を横断する範囲に設定される。例えば、スリット60の第1部分61は、歯列70において隣接する歯部71の中間に設けられた幅狭部であり、スリット60の第2部分62は、幅狭部に隣接した位置(例えば、その下方)で幅狭部に空間連通した幅広部である。このようにスリット60の幅狭部を歯列70に対応した位置に設けることで(例えば、周方向で隣接する歯部71の中間に設けることで)、歯列70への腕部80の先端部の係合が不十分になることが抑制される。
【0038】
4つのスリット60によって筒状部21が4つに区分(又は分割)されているが、他の区分数(分割数)も採用可能である(例えば、2つのスリット60によって筒状部21を2つに区分することもできる)。4つのスリット60を形成する場合、紐締め装置から2つのループを出すことができ、アパレル用途において利用し易くなる。平板部22にスリット60に空間連通した穴24を設けることもできる(
図7参照)。これにより比較的複雑ではない金型を用いてハウジング20を成形することが促進される。
【0039】
筒状部21は、スリット60の幅広部を画定するべく対向した一対の壁面21m,21nと、スリット60の幅狭部を画定するべく一対の壁面21m,21nからお互いに接近するように突出した一対の突出部21p,21qを有する(
図1、
図14参照)。一対の突出部21p,21qは、スリット60を幅狭にするべくお互いに接近するように突出する。このような突出部21p,21qをリング状部材30に係合させれば、リング状部材30とハウジング20の連結が強化される。
【0040】
リング状部材30は、リング本体31と、リング本体31に一体的に形成された閉鎖部32を有する(
図1参照)。リング状部材30がハウジング20の筒状部21に取り付けられる時、スリット60が閉鎖部32により被覆され、スリット60からの紐類の抜け出しを阻止される。リング状部材30は、ハウジング20の筒状部21の上端部21cの外側に取り付けられ、又はその内側に取り付けられる。いずれの場合においてもスリット60がリング状部材30により被覆される。
【0041】
筒状部21とリング状部材30の連結強化のためにリング状部材30(例えば、その閉鎖部32)にリブ33を設けてスリット60の一部に嵌合させることができる。リブ33は、幾つかの場合、T字形又は十字型のリブである。例えば、リブ33は、スリット60の第1部分61に嵌合するべく軸線AX沿いに延びる第1リブ33aと第1リブ33aに直交するように延びる第2リブ33bを含む。第1リブ33aがスリット60の幅狭部に嵌合し、第2リブ33bがスリット60の幅広部の一部に嵌合する。筒状部21の一対の突出部21p,21qと第2リブ33bの接触によって筒状部21からリング状部材30が上方に取り外されることが阻止される。
【0042】
リブ33の高さは、リング状部材30が筒状部21に対して取り付けられた時、歯列70の歯部71の間の凹部72の底(例えば、底面)と同等の深さ位置にリブ33の頂面33j(例えば、リブ33の頂面の少なくとも一部)が配置されるように設定され得る(
図9参照)。これによりスリット60が設けられた位置でも他の位置と同様に歯列70と腕部80の係合が確保され、スリット60の形成位置においてカバー40の操作感覚に違いが生じることが抑制される。なお、リブ33の頂面33jは、筒状部21への取付状態において軸線AXに平行に延びる平坦面であり、閉鎖部32の内面32jから径方向内側に位置する。
【0043】
筒状部21は、ある程度の可撓性を有し、スリット60の近傍において撓み易い。筒状部21を変形させることで筒状部21に対してリング状部材30を取り付けることができる。嵌合の追加又は代替として、筒状部21に対してリング状部材30を接着して固定することもできる。リング状部材30は、筒状部21の段差面とリング状部材30の段差面が合致するように筒状部21に対して取り付けられる(例えば、
図5参照)。
【0044】
本実施形態においては、リング状部材30は、リング状部材30がスリット60の第1部分61を被覆してスリット60の第2部分62に紐類用の通路を形成するように筒状部21に対して取り付けられる。かかる構成によれば、ハウジング20の機械的強度の低下を抑制しつつ紐類の取り扱いを容易にすることができる。例えば、筒状部21の上端21aに紐類を置いてスリット60のある位置で下方に引き下げることでスリット60に紐類を容易に導入することができる。その後、筒状部21にリング状部材30を取り付けることによってスリット60(端的には、スリット60の第2部分に形成された紐類用の通路)からの紐類が抜け出ることが阻止される。紐類用の通路からの紐類の抜け出し阻止の目的のために、上述のスリット60の幅変動及び/又は突出部21p,21qの採用が有効である。なお、第1部分61と第2部分62は異なる幅を有する必要はない。
【0045】
図1,
図2,
図5に示すように、カバー40は、スプール10及びハウジング20上に配置され、ハウジング20からのスプール10の脱落を抑止する。カバー40は、筒状部21に取り付けられたリング状部材30を包囲するように設けられてリング状部材30を外力から保護する。カバー40は、天板41と、天板41の外周から下方に延びてリング状部材30の径方向外側に位置するスカート部42と、天板41の中心に設けられた締結具50を受容するための受容部43を有する。スカート部42の外面には滑り止めのための多数の溝44が形成されている。受容部43には軸線AXに沿って延びる貫通孔が形成され、締結具50とハウジング20のハウジング軸部23との嵌合を可能にする。
【0046】
カバー40は、紐締め装置1からの紐類の繰り出し長さを調整するためにヒトによって操作される被操作部材である。カバー40は、スプール10とハウジング20の係合状態の制御のためにスプール10に対して係合する。
図5,8,9に示すように、例えば、カバー40は、カバー40に付与された回転力をスプール10に伝達するための第1及び第2突部45,46を有する。第1突部45は、スプール10の腕部80を(周方向に)押圧する。第2突部46は、スプール10のスロット19の壁面を押圧する。
【0047】
第1突部45は、カバー40(例えば、天板41の下面)から下方に突出して設けられ、また周方向に沿って長く延びる。このように第1突部45が設けられることにより、カバー40をスプール10に嵌合する際に、第1突部45が第1の腕部80と第2の腕部80との間に誤って入り込むことが抑制され、及び/又は、腕部80との十分又は確実な接触が促進される。第1突部45は、その長手方向において第1端部45aと第2端部45bを有する。第1突部45は、その第2端部45bで腕部80の第2棒部82を押圧することができ、これにより片持梁の腕部80が撓み、第2棒部82が径方向内側に変位し、その先端部83が歯列70の凹部72から退避する。2つの腕部80に対応して2つの第1突部45が設けられる。
【0048】
第2突部46は、カバー40(例えば、天板41の下面)から下方に突出して設けられた円柱状突起である。カバー40の第2突部46がスプール10のスロット19に挿入され、カバー40とスプール10が機械的にリンクされる。第1突部45が腕部80を押圧する反時計回りの方向とは反対の時計回りの方向に動くようにカバー40が回動される時、第2突部46がスロット19の壁面を押圧し、カバー40からスプール10に回転力が伝達され、カバー40とスプール10が同方向に回動する。2つのスロット19に対応して2つの第2突部46が設けられる。第2突部46を設けることで、時計回りにカバー40が回動される時に、後述の歯部71の角度ピッチごとにカバー40を回動することができ、一度に複数の角度ピッチごとに回動することが抑制される。
【0049】
図10を参照して、歯列70における歯部71の角度ピッチとスロットの周方向長の角度範囲の関係を説明する。
図10に示すように歯部71の角度ピッチが15°であり、スプール10が15°単位で回動可能であり、カバー40も15°単位で回動可能である。スロット19は、歯部71の角度ピッチと同等又はそれ以上の角度範囲を持つように周方向沿いに長く延びる。スロット19に第2突部46を挿入することによりカバー40とスプール10の相対的な角度差を歯部71の角度ピッチと同等(例えば、1倍~1.1倍の範囲内、又は、1倍~1.2倍の範囲内)とすることができ、両者の安定した回動が促進される。なお、図示例では、スロット19の周方向沿いの長さの角度範囲は、歯部71の角度ピッチの2倍の約30°であるが、これに限定されるものではない。スロット19の周方向沿いの長さの角度範囲は、好ましくは15°~20°であり、より好ましくは15°~17.5°又は15°~16°である。
【0050】
締結具50は、ハウジング20からスプール10及びカバー40が外れないようにハウジング20のハウジング軸部23に対して連結される。図示のもの以外の様々な連結具が採用可能である。
【0051】
図11~
図13を参照して、紐締め装置1からの紐類の繰り出しのためにカバー40の回動に同調してスプール10が回動することを説明する。
図11に示すとき、腕部80が歯列70のある凹部72に嵌合している。カバー40が反時計回り(第1方向)に回動し始めると、カバー40の第1突部45が反時計回りに軸線AX回りに旋回し始め、
図12から分かるように腕部80の第2棒部82を同方向に押圧し始める。すると、腕部80が撓み始め、第2棒部82が径方向内側に変位する。第2棒部82の先端部83が凹部72から十分に退避するとカバー40から伝達される回転力に応じてスプール10も回動して第2棒部82が反時計回りの方向で一つ隣の凹部72に係合する(
図13参照)。第2突部46は、スロット19内を僅かに動いてスロット19の壁面に接触しない。場合によっては、第2突部46は、スロット19の壁面を押すことができ、これによりカバー40に付与された回転力がスプール10に伝達される。このようにしてカバー40の回動に応じてスプール10を回動させて紐締め装置1から紐類を繰り出すことができる。スプール10はハウジング20により軸支されて安定して回動することができる。スプール10は歯列70における歯部71の角度ピッチごとに使用者にクリック感を与えながら回動することができる。
【0052】
次に、紐締め装置1に紐類を巻き取るためにカバー40の回動に同調してスプール10が回動することを説明する。
図11~
図13に示したカバーの回動方向とは反対の時計回りの方向(第2方向)にカバー40を回動するとしても腕部80の十分な可撓性のおかげでスプール10を回動させることができる。即ち、カバー40を時計回りに回動させる時、第2突部46がスロット19の壁面を押してカバー40の回転力がスプール10に伝達される。カバー40の第1突部45は、スプール10の腕部80から離れるように動くため、第1突部45により腕部80の弾性的な変形又は変位が妨げられない。このようにして腕部80が径方向内側に変位でき、時計回りの方向で一つ隣の凹部72に係合することができる。このようにしてカバー40の回動に応じてスプール10を回動させて紐締め装置1に紐類を巻き取ることができる。時計回りの方向(第2方向)にカバー40を回動する際にも、スプール10は歯列70における歯部71の角度ピッチごとに使用者にクリック感を与えながら回動することができる。
【0053】
紐締め装置1が衣服に用いられる場合、紐締め装置1による紐締めが強いとその衣服を着ている者に圧迫感を与えてしまう。従って、スプール10の両方向の回動を許容して紐類を締めることと緩めることの両方を可能とすると良い。
【0054】
紐締め装置1の組み立て方法は、スプール10に対して紐類を取り付ける工程と、ハウジング20の筒状部21内にスプール10を配置する工程と、ハウジング20の筒状部21にその一端から他端に向けて延びるように形成されたスリット60に紐類を導入する工程と、筒状部21の一端側のスリット60の第1部分61を被覆して筒状部21の他端側のスリット60の第2部分62に紐類用の通路を形成するように筒状部21に対してリング状部材30を取り付ける工程を含む。工程の順番は任意に様々に変更可能であり、列挙した順番に拘束されない。幾つかの工程を同時に行うこともできる。例えば、スリット60に紐類を導入した後、スプール10に対して紐類を取り付けることができる。スリット60に紐類を導入した後、ハウジング20の筒状部21にスプール10を配置することができる。
【0055】
図14及び
図15を参照してスリット60への紐類の導入工程とスリット60の閉鎖工程について説明する。
図14に示すように、スプール10に取り付けられた又は取り付けられる前の紐類をスリット60に導入することができる。即ち、スリット60は、上方で開放しているため、スリット60内に簡単に紐類を導入することができる。詳細には、スリット60を挟んで隣接する歯部71の傾斜面により案内されて紐類がスリット60に導入される。紐類は圧迫によって縮小し、圧迫から解放されると元形状に復帰する。従って、スリット60に幅狭部を設けることがスリット60への紐類の導入の障害にはならない。
【0056】
その後、
図15に示すように、筒状部21に対してリング状部材30を取り付け、この時、第1リブ33aがスリット60の幅狭部に嵌合し、第2リブ33bがスリット60の幅広部の一部に嵌合する。このようにしてスリット60に導入された紐類がスリット60から抜け出ることが阻止される。リング状部材30にリブを設けなくてもスリット60からの紐類の脱落は防止されるが、それによってリング状部材30と筒状部21の連結が強化されて筒状部21の機械的な強度が高められる。更なる一例を挙げれば、
図16に示すように、リング状部材30の第1リブ33aを省略することもできる。第1リブ33aに替えて第2リブ33bを省略することもできる。
【0057】
紐締め装置1に含まれる全てのパーツは、非金属材料から成り、例えば樹脂から成る。具体的には、スプール10、ハウジング20、リング状部材30、カバー40、及び締結具50の各々が樹脂から成る。このように、紐締め装置1には金属パーツが含まれないため、縫製工場等において、出荷前に金属(例えば、折れた針等)が服に紛れていないかを検査する検針対応が可能である。
【0058】
上述の本開示の様々な特徴は、
図1~
図16に図示した実施例又は
図1~
図16に照らして上述の説明から理解可能な様々な実施例に限定されず、他の様々な実施形態に流用可能である。例えば、単一のループが形成されるように紐類をスプール10に取り付け、ハウジング20の2つのスリット60に個別に通すようにしても良い。即ち、紐類のループ数は、2以上に限られず、単一であっても良い。また、ハウジング20に設けられるスリット60の数は、紐類のループ数に応じて増減可能である。同様、全てのスリット60を紐類の通路として用いる必要はない。
【0059】
スプール10の係合部とハウジング20の係合部を省略することもできる。紐締め装置1による紐の自動的な締め付け機能が望まれるならば、ゼンマイ(巻きばね)を用いることができる。
図17は、この形態に関し、スプール10がゼンマイ90にシャフト91を介して連結されている。紐締め装置1から紐類を引き出すことによってスプール10が回動し、ゼンマイ90に回転力が蓄積される。紐締め装置1から紐類を引き出すことを止めると、ゼンマイ90に蓄積された回転力に応じてスプール10が逆方向に回動し、紐類が巻き取られる。このような形態においても、上述と同様にハウジング20の筒状部21にスリット60を設け、かつハウジング20の筒状部21に対してリング状部材30を取り付けることで上述と同様の効果が得られる。
図18は、紐締め装置1の構成パーツの配置が
図17と比較して上下で反転していることを念のため示すものである。
【0060】
上述の教示を踏まえ、当業者は、各実施形態又は各特徴に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。リング状部材の形状は、筒状部への様々な取付態様のために様々に変更可能である。例えば、筒状部の外側にリング状部材を取り付ける他、筒状部の内側にリング状部材を取り付けることもできる。筒状部の上端を被覆するようにリング状部材を設けることもできる。ハウジング、スプール、リング状部材、カバーの個々は、一つの一体物(射出成形品)に限らず、複数パーツの組立品であり得る。スリットは、第1部分の上方に第3部分を有することもできる。第3部分は、第1部分よりも広い幅であり得る。
【符号の説明】
【0061】
1 :紐締め装置
10 :スプール
11 :第1溝
12 :スプール軸部
13 :フランジ部
14 :フランジ部
15 :第2溝
16 :貫通孔
17 :紐止部
18 :連結部
19 :スロット
20 :ハウジング
21 :筒状部
21m :壁面
21n :壁面
21p :突出部
21q :突出部
22 :平板部
24 :穴
30 :リング状部材
33 :リブ
33a :第1リブ
33b :第2リブ
33j :頂面
40 :カバー
45 :第1突部
46 :第2突部
50 :締結具
60 :スリット
61 :第1部分
62 :第2部分
70 :歯列
71 :歯部
72 :凹部
80 :腕部
81 :第1棒部
82 :第2棒部
83 :先端部
89 :凹み
AX :軸線