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特開2023-48892濃度算出装置、プログラム、及び濃度算出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048892
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】濃度算出装置、プログラム、及び濃度算出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/552 20140101AFI20230331BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
G01N21/552
G01N21/27 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158468
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100224694
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】川上 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】土橋 万知夫
(72)【発明者】
【氏名】手塚 賢太郎
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE11
2G059EE12
2G059KK01
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】混合物に含まれる成分の濃度を正確に測定しやすくする。
【解決手段】濃度算出装置10は、基材の入射面に入射光が入射されたときに、基材の測定面に散在する混合物で反射されて基材の出射面から出射される出射光の量の、入射光の量に対する関係を示す関係値を、入射光の波長ごとに取得し、混合物における、ある成分の濃度によって、対応する関係値が変化する第1波長を含む第1波長域とは異なる第2波長域に含まれる複数の波長のそれぞれに対応する関係値に基づき、混合物で吸収されていないにも関わらず出射面から出射されなかった逃げ光の量を、第1波長について推定し、推定された逃げ光の量の、入射光の量に対する関係に応じて、濃度を算出する制御部11を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の入射面に入射光が入射されたときに、前記基材の測定面に散在する混合物で反射されて前記基材の出射面から出射される出射光の量の、前記入射光の量に対する関係を示す関係値を、前記入射光の波長ごとに取得し、前記混合物における、ある成分の濃度によって、対応する関係値が変化する第1波長を含む第1波長域とは異なる第2波長域に含まれる複数の波長のそれぞれに対応する関係値に基づき、前記混合物で吸収されていないにも関わらず前記出射面から出射されなかった逃げ光の量を、前記第1波長について推定し、推定された逃げ光の量の、前記入射光の量に対する関係に応じて、前記濃度を算出する制御部を備える濃度算出装置。
【請求項2】
前記複数の波長は、前記濃度によって、対応する関係値が変化しない少なくとも3つの第2波長である請求項1に記載の濃度算出装置。
【請求項3】
前記第2波長域は、前記第1波長域に隣接する請求項1又は2に記載の濃度算出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の波長のそれぞれに対して、取得された関係値をとる関数を、前記逃げ光の量の、前記入射光の量に対する関係を示す推定値を、前記入射光の波長ごとに求めるための関数として決定し、決定された関数を用いて、前記第1波長に対応する推定値を求めることで、前記逃げ光の量を、前記第1波長について推定する請求項1から3のいずれか一項に記載の濃度算出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記関数として、前記複数の波長のそれぞれに対して、取得された関係値をプロットして得られる点を通るスプライン曲線を表すスプライン関数を決定する請求項4に記載の濃度算出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記関数として、前記複数の波長のそれぞれに対して、取得された関係値をプロットして得られる点を通る直線を表す一次関数を決定する請求項4に記載の濃度算出装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記基材の前記入射面に光が入射されたときに、前記測定面に存在し前記測定面を覆っている、前記成分を含む液体で反射されて前記出射面から出射される光の量の、入射された光の量に対する関係を示す基準値を、入射された光の波長ごとに取得し、前記複数の波長として、対応する基準値がゼロである複数の波長を特定する請求項1から6のいずれか一項に記載の濃度算出装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記測定面のうち前記入射光が当たる第1部分の面積に対する、前記第1部分のうち前記混合物が存在する第2部分の面積の比率に基づき、算出された濃度を補正する請求項1から7のいずれか一項に記載の濃度算出装置。
【請求項9】
基材の入射面に入射光が入射されたときに、前記基材の測定面に散在する混合物で反射されて前記基材の出射面から出射される出射光の量の、前記入射光の量に対する関係を示す関係値を、前記入射光の波長ごとに取得することと、
前記混合物における、ある成分の濃度によって、対応する関係値が変化する第1波長を含む第1波長域とは異なる第2波長域に含まれる複数の波長のそれぞれに対応する関係値に基づき、前記混合物で吸収されていないにも関わらず前記出射面から出射されなかった逃げ光の量を、前記第1波長について推定することと、
推定された逃げ光の量の、前記入射光の量に対する関係に応じて、前記濃度を算出することと、
を含む動作をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項10】
基材の入射面に入射光が入射されたときに、前記基材の測定面に散在する混合物で反射されて前記基材の出射面から出射される出射光の量の、前記入射光の量に対する関係を示す関係値を、前記入射光の波長ごとに取得することと、
前記混合物における、ある成分の濃度によって、対応する関係値が変化する第1波長を含む第1波長域とは異なる第2波長域に含まれる複数の波長のそれぞれに対応する関係値に基づき、前記混合物で吸収されていないにも関わらず前記出射面から出射されなかった逃げ光の量を、前記第1波長について推定することと、
推定された逃げ光の量の、前記入射光の量に対する関係に応じて、前記濃度を算出することと、
を含む濃度算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、濃度算出装置、プログラム、及び濃度算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全反射測定法(以下、「ATR法」ともいう)は、入射光が全て出射光として得られる全反射を前提として、混合物に含まれる成分の濃度を測定する吸光測定法である。
【0003】
非特許文献1には、ATR法を用いた定量分析について記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“ATRの注意点 その2:定量分析”,[online][令和3年9月20日検索],インターネット<URL:https://www.an.shimadzu.co.jp/ftir/support/lib/ftirtalk/letter2/atr2.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定面上に散在する混合物の吸光スペクトルをATR法で測定する場合、得られる吸光スペクトルには、混合物による入射光の吸収だけでなく、乱反射等で逃げていく光、すなわち逃げ光も吸光として捉えられる。つまり、得られる吸光スペクトルには、混合物の吸光に、逃げ光を吸光として捉えた分が足し合わされている。その結果、吸光スペクトルの形状がゆがみ、混合物の成分の濃度を求めるのに必要な本来の吸光スペクトルの形状が得られない。
【0006】
しかし、従来技術では、逃げ光の量の、入射光の量に対する関係が一切考慮されていない。したがって、混合物に含まれる成分の濃度を正確に測定することができない。
【0007】
本開示の目的は、混合物に含まれる成分の濃度を正確に測定しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの実施形態に係る濃度算出装置は、基材の入射面に入射光が入射されたときに、基材の測定面に散在する混合物で反射されて基材の出射面から出射される出射光の量の、入射光の量に対する関係を示す関係値を、入射光の波長ごとに取得し、混合物における、ある成分の濃度によって、対応する関係値が変化する第1波長を含む第1波長域とは異なる第2波長域に含まれる複数の波長のそれぞれに対応する関係値に基づき、混合物で吸収されていないにも関わらず出射面から出射されなかった逃げ光の量を、第1波長について推定し、推定された逃げ光の量の、入射光の量に対する関係に応じて、濃度を算出する制御部を備える。このような濃度算出装置においては、推定された逃げ光の量の、入射光の量に対する関係を考慮して、混合物に含まれる成分の濃度が算出される。よって、混合物に含まれる成分の濃度を正確に測定しやすくなる。
【0009】
一実施形態において、複数の波長は、濃度によって、対応する関係値が変化しない少なくとも3つの第2波長である。本実施形態によれば、濃度によって、対応する関係値が変化しない少なくとも3つの波長に注目することで、入射光の減衰分のうち逃げ光による減衰分を特定しやすくなる。したがって、逃げ光の量の推定精度を高めることができる。
【0010】
一実施形態において、第2波長域は、第1波長域に隣接する。本実施形態によれば、第1波長にできるだけ近い第2波長域において、複数の波長のそれぞれに対応する関係値に基づき、逃げ光の量を、第1波長について推定することができる。
【0011】
一実施形態において、制御部は、複数の波長のそれぞれに対して、取得された関係値をとる関数を、逃げ光の量の、入射光の量に対する関係を示す推定値を、入射光の波長ごとに求めるための関数として決定し、決定された関数を用いて、第1波長に対応する推定値を求めることで、逃げ光の量を、第1波長について推定する。本実施形態によれば、複数の波長のそれぞれに対応する関係値に基づき、逃げ光の量の、入射光の量に対する関係を示す推定値を求めることで、逃げ光の量を、第1波長についてより正確に推定することができる。
【0012】
一実施形態において、制御部は、関数として、複数の波長のそれぞれに対して、取得された関係値をプロットして得られる点を通るスプライン曲線を表すスプライン関数を決定する。本実施形態によれば、推定値を、スプライン関数で表されるスプライン曲線から求めることができる。
【0013】
一実施形態において、制御部は、関数として、複数の波長のそれぞれに対して、取得された関係値をプロットして得られる点を通る直線を表す一次関数を決定する。本実施形態によれば、推定値を、一次関数で表される直線から求めることができる。
【0014】
一実施形態において、制御部は、基材の入射面に光が入射されたときに、測定面に存在し測定面を覆っている、成分を含む液体で反射されて出射面から出射される光の量の、入射された光の量に対する関係を示す基準値を、入射された光の波長ごとに取得し、複数の波長として、対応する基準値がゼロである複数の波長を特定する。本実施形態によれば、複数の波長として、対応する基準値がゼロである複数の波長に注目することで、入射光の減衰分のうち逃げ光による減衰分を更に特定しやすくなる。
【0015】
一実施形態において、前記制御部は、前記測定面のうち前記入射光が当たる第1部分の面積に対する、前記第1部分のうち前記混合物が存在する第2部分の面積の比率に基づき、算出された濃度を補正する。本実施形態によれば、混合物の単位面積あたりの量による関係値の変化分を補正することができる。よって、混合物に含まれる成分の濃度をより正確に測定しやすくなる。
【0016】
幾つかの実施形態に係るプログラムは、基材の入射面に入射光が入射されときに、基材の測定面に散在する混合物で反射されて基材の出射面から出射される出射光の量の、入射光の量に対する関係を示す関係値を、入射光の波長ごとに取得することと、混合物における、ある成分の濃度によって、対応する関係値が変化する第1波長を含む第1波長域とは異なる第2波長域に含まれる複数の波長のそれぞれに対応する関係値に基づき、混合物で吸収されていないにも関わらず出射面から出射されなかった逃げ光の量を、第1波長について推定することと、推定された逃げ光の量の、入射光の量に対する関係に応じて、濃度を算出することと、を含む動作をコンピュータに実行させる。このようなプログラムにおいては、推定された逃げ光の量の、入射光の量に対する関係を考慮して、混合物に含まれる成分の濃度が算出される。よって、混合物に含まれる成分の濃度を正確に測定しやすくなる。
【0017】
幾つかの実施形態に係る濃度算出方法は、基材の入射面に入射光が入射されたときに、基材の測定面に散在する混合物で反射されて基材の出射面から出射される出射光の量の、入射光の量に対する関係を示す関係値を、入射光の波長ごとに取得することと、混合物における、ある成分の濃度によって、対応する関係値が変化する第1波長を含む第1波長域とは異なる第2波長域に含まれる複数の波長のそれぞれに対応する関係値に基づき、混合物で吸収されていないにも関わらず出射面から出射されなかった逃げ光の量を、第1波長について推定することと、推定された逃げ光の量の、入射光の量に対する関係に応じて、濃度を算出することと、を含む。このような濃度算出方法においては、推定された逃げ光の量の、入射光の量に対する関係を考慮して、混合物に含まれる成分の濃度が算出される。よって、混合物に含まれる成分の濃度を正確に測定しやすくなる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、混合物に含まれる成分の濃度を正確に測定しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る濃度算出装置の構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る基材の測定面上に散在する混合物と、入射光、逃げ光、及び出射光との関係を示す図である。
図3】基材の測定面に散在する混合物の分布の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る濃度算出装置の動作を示すフローチャートである。
図5】過酸化水素を含む液体試料について測定されたスペクトルを示す図である。
図6】過酸化水素を含む液体試料及び液滴試料について測定されたスペクトルの比較図である。
図7図6の液滴試料について測定されたスペクトルを抜き出した図である。
図8】各液滴試料について、推定値から得られるスプライン曲線を示す図である。
図9】各液滴試料について、測定されたスペクトルから逃げ光の影響を取り除くことで得られる補正スペクトルの例を示す図である。
図10】関係値に基づき光の量を推定する詳細動作を示すフローチャートである。
図11】一変形例に係る第1波長を特定する方法を示す図である。
図12】一変形例に係る推定値を取得するための前処理として、楕円近似を行う例を示す図である。
図13】一変形例に係る推定値を取得するための前処理として、カーブフィッティングを行う例を示す図である。
図14】楕円近似又はカーブフィッティングを用いて求められた推定値を示す図である。
図15】一変形例に係る推定値を取得するための前処理として、直線近似を行う例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の幾つかの実施形態について、図を参照して説明する。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。各実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0021】
本開示の一実施形態について説明する。
【0022】
図1を参照して、本実施形態に係る濃度算出装置10の構成を説明する。
【0023】
濃度算出装置10は、デスクトップコンピュータ若しくはラップトップコンピュータ等の汎用コンピュータ、又は濃度算出専用の機器である。
【0024】
図1及び図2を参照して、本実施形態の概要を説明する。
【0025】
濃度算出装置10は、基材20の入射面21に入射光40が入射されたときに、基材20の測定面22に散在する混合物30で反射されて基材20の出射面23から出射される出射光60の量の、入射光40の量に対する関係を示す関係値を、入射光40の波長ごとに取得する。基材20は、入射面21から入射した入射光40を内部で反射させる任意の材料であってよいが、本実施形態では、プリズムである。具体的には、基材20は、断面が台形状のプリズムであり、台形の一方の脚に相当する面が入射面21、台形の上底に相当する面が測定面22、台形の他方の脚に相当する面が出射面23である。入射光40は、光源から入射面21に照射される。混合物30は、測定面22を完全に覆うことができない液滴、粉体、又は粒体等の任意の物体であってよいが、本実施形態では、図3に示すような液滴である。本実施形態において、液滴は、過酸化水素(H)水溶液の液滴である。図3に示す例では、ハッチングされた部分が液滴に相当する。出射光60は、出射面23から出射された後、受光素子等の光検出器で検出される。関係値は、任意の分光分析法を使用して取得することができるが、本実施形態では、全反射測定法、すなわちATR法を使用して取得される。
【0026】
濃度算出装置10は、混合物30における、ある成分の濃度によって、対応する関係値が変化する第1波長を含む第1波長域とは異なる第2波長域に含まれる複数の波長のそれぞれに対応する関係値に基づき、混合物30で吸収されていないにも関わらず出射面23から出射されなかった逃げ光50の量を、第1波長について推定する。濃度算出装置10は、推定された逃げ光50の量の、入射光40の量に対する関係に応じて、混合物30に含まれる成分の濃度を算出する。
【0027】
本実施形態によれば、推定された逃げ光50の量の、入射光40の量に対する関係を考慮して、混合物30に含まれる成分の濃度が算出される。よって、混合物30に含まれる成分の濃度を正確に測定しやすくなる。
【0028】
次に、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る濃度算出装置10の構成を説明する。
【0029】
濃度算出装置10は、図1に示すように、制御部11と、記憶部12と、出力部13と、入力部14と、通信部15とを備える。
【0030】
制御部11は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つのプログラマブル回路、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの任意の組合せを含む。プロセッサは、CPU若しくはGPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。「CPU」は、central processing unitの略語である。「GPU」は、graphics processing unitの略語である。プログラマブル回路は、例えば、FPGAである。「FPGA」は、field-programmable gate arrayの略語である。専用回路は、例えば、ASICである。「ASIC」は、application specific integrated circuitの略語である。制御部11は、濃度算出装置10の各部を制御しながら、濃度算出装置10の動作に関わる処理を実行する。
【0031】
記憶部12は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらの任意の組合せを含む。半導体メモリは、例えば、RAM又はROMである。「RAM」は、random access memoryの略語である。「ROM」は、read only memoryの略語である。RAMは、例えば、SRAM又はDRAMである。「SRAM」は、static random access memoryの略語である。「DRAM」は、dynamic random access memoryの略語である。ROMは、例えば、EEPROMである。「EEPROM」は、electrically erasable programmable read only memoryの略語である。記憶部12は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部12には、濃度算出装置10の動作に用いられるデータと、濃度算出装置10の動作によって得られたデータとが記憶される。
【0032】
出力部13は、少なくとも1つの出力用インタフェースを含む。出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD又は有機ELディスプレイである。「LCD」は、liquid crystal displayの略語である。「EL」は、electro luminescenceの略語である。出力部13は、濃度算出装置10の動作によって得られるデータを出力する。出力部13は、濃度算出装置10に備えられる代わりに、外部の出力機器として濃度算出装置10に接続されてもよい。接続用インタフェースとしては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)などの規格に対応したインタフェースを用いることができる。「USB」は、Universal Serial Busの略語である。「HDMI(登録商標)」は、High-Definition Multimedia Interfaceの略語である。
【0033】
入力部14は、少なくとも1つの入力用インタフェースを含む。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又はマイクロフォンである。入力部14は、濃度算出装置10の動作に用いられるデータを入力する操作を受け付ける。入力部14は、濃度算出装置10に備えられる代わりに、外部の入力機器として濃度算出装置10に接続されてもよい。接続用インタフェースとしては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)などの規格に対応したインタフェースを用いることができる。
【0034】
通信部15は、少なくとも1つの通信用インタフェースを含む。通信用インタフェースは、例えば、LANインタフェースである。「LAN」は、local area networkの略語である。通信部15は、濃度算出装置10の動作に用いられるデータを受信し、また濃度算出装置10の動作によって得られるデータを送信する。
【0035】
濃度算出装置10の機能は、本実施形態に係るプログラムを、制御部11に含まれるプロセッサで実行することにより実現される。すなわち、濃度算出装置10の機能は、ソフトウェアにより実現される。プログラムは、濃度算出装置10の動作に含まれるステップの処理をコンピュータに実行させることで、当該ステップの処理に対応する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムである。すなわち、プログラムは、コンピュータを濃度算出装置10として機能させるためのプログラムである。
【0036】
プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記録したDVD又はCD-ROMなどの可搬型記録媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行う。「DVD」は、digital versatile discの略語である。「CD-ROM」は、compact disc read only memoryの略語である。プログラムをサーバのストレージに格納しておき、ネットワークを介して、サーバから他のコンピュータにプログラムを転送することにより、プログラムを流通させてもよい。プログラムをプログラムプロダクトとして提供してもよい。
【0037】
コンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、メモリに格納する。そして、コンピュータは、メモリに格納されたプログラムをプロセッサで読み取り、読み取ったプログラムに従った処理をプロセッサで実行する。コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行してもよい。コンピュータは、コンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行してもよい。サーバからコンピュータへのプログラムの転送は行わず、実行指示及び結果取得のみによって機能を実現する、いわゆるASP型のサービスによって処理を実行してもよい。「ASP」は、application service providerの略語である。プログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものが含まれる。例えば、コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータは、「プログラムに準ずるもの」に該当する。
【0038】
濃度算出装置10の一部又は全ての機能が、制御部11に含まれるプログラマブル回路又は専用回路により実現されてもよい。すなわち、濃度算出装置10の一部又は全ての機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0039】
次に、図4から図9を参照して、本実施形態に係る濃度算出装置10の動作について説明する。濃度算出装置10の動作は、本実施形態に係る濃度算出方法に相当する。
【0040】
ステップS101において、濃度算出装置10の制御部11は、基材20の入射面21に入射光40が入射されたときに、基材20の測定面22に散在する混合物30で反射されて基材20の出射面23から出射される出射光60の量を取得する。具体的には、制御部11は、入射光40の波長ごとに、基材20の測定面22に、図3に示すような液滴の状態で散在する混合物30で反射されて基材20の出射面23から出射される出射光60の量を、受光素子等の光検出器を介して取得する。出射光60の量は、入射光40の量から、混合物30により吸収された光の量と逃げ光50の量との和を引いた差に相当する。制御部11は、入射光40の波長ごとに、取得した出射光60の量を示すデータを、記憶部12に記憶する。上述したとおり、本実施形態では、基材20の測定面22に散在する混合物30は、過酸化水素(H)水溶液の液滴である。
【0041】
ステップS102において、濃度算出装置10の制御部11は、ステップS101で取得された出射光60の量の、入射光40の量に対する関係を示す関係値を、入射光40の波長ごとに取得する。具体的には、制御部11は、関係値として、出射光60の量の、入射光40の量に対する比に相当する吸光度を、入射光40の波長ごとに求める。制御部11は、入射光40の波長ごとに、求められた吸光度を記憶部12に記憶する。吸光度は、ランベルト・ベールの法則に従って、次式で求められる。
λ=-log10(I/I
上式で、Aλは波長λにおける吸光度、Iは入射光40の強度、Iは出射光60の強度を示す。
【0042】
ステップS103において、濃度算出装置10の制御部11は、混合物30における、ある成分αの濃度Xによって、対応する関係値が変化する第1波長を含む第1波長域W1とは異なる第2波長域W2に含まれる複数の波長L1、・・・、Lnのそれぞれに対応する関係値に基づき、逃げ光50の量を、第1波長について推定する。本実施形態では、成分αは、過酸化水素である。第1波長は、成分αに固有の波長である。第1波長は、既知の波長として、記憶部12に記憶されている。例えば、第1波長は、過酸化水素では1920nm付近の波長である。図5に、過酸化水素を含む液体試料について、入射光40の波長ごとに、吸光度の実測値を取得し、取得された実測値をプロットすることで生成されたスペクトルを示す。図5に示す例では、第1波長域W1は、1920nm付近の波長範囲、第2波長域W2は、1000nm付近の波長範囲である。図5に示す例では、第2波長域W2として、第1波長域W1の左側に1つの波長域だけが示されているが、複数の波長域を選択してもよい。例えば、第1波長域W1の片側の2つ以上の波長域、又は、第1波長域W1の両側の1つ以上の波長域を、第2波長域W2として選択してもよい。複数の波長の数nは、3以上の整数である。本実施形態において、複数の波長L1、・・・、Lnは、濃度Xによって、対応する関係値が変化しない3つの第2波長L1、L2、L3である。3つの第2波長L1、L2、L3は、成分αに固有の波長である。具体的には、制御部11は、3つの第2波長L1、L2、L3のそれぞれに対して、取得された関係値をとる関数を、逃げ光50の量の、入射光40の量に対する関係を示す推定値を、入射光40の波長ごとに求めるための関数として決定する。本実施形態において、制御部11は、関数として、図8に示すようなスプライン曲線を表すスプライン関数を決定する。制御部11は、決定された関数を用いて、第1波長に対応する推定値を求めることで、逃げ光50の量を、第1波長について推定する。
【0043】
本実施形態に係る関係値に相当する吸光度の実測値は、少なくとも1つの液滴試料について取得すればよい。本実施形態では、吸光度の実測値に対する、単位面積当たりの液滴数の影響を示すために、成分αの濃度は同じであるが液滴数が異なる3種類の液滴試料について、入射光40の波長ごとに、吸光度の実測値を取得する。制御部11は、3種類の液滴試料について、取得された吸光度の実測値をそれぞれプロットすることで、3種類の液滴試料のそれぞれについて、取得された関係値をプロットすることで生成されたスペクトルである、図6に示すような液滴スペクトルP1、P2、P3を生成し、濃度算出装置10の出力部13としてのディスプレイに出力する。図6には、液滴スペクトルP1、P2、P3の基準となるスペクトルとして、3種類の液滴試料と成分αの濃度が同じである液体試料について、入射光40の波長ごとに、吸光度の実測値を取得し、取得された実測値をプロットすることで生成されたスペクトルである、液体スペクトルP0も示してある。図7は、図6に示した液滴スペクトルP1、P2、P3を抜き出した図である。図8は、液滴スペクトルP1、P2、P3のそれぞれに対応する推定値をプロットすることで生成されたスペクトルである、逃げ光スペクトルE1、E2、E3を示す。
【0044】
本実施形態では、濃度算出装置10の制御部11は、図9の左側に示すように、図7に示す液滴スペクトルP1、P2、P3のもとになるデータである吸光度の実測値から、図8に示す逃げ光スペクトルE1、E2、E3のもとになるデータである推定値を差し引くことで、図9の右側に示すような補正スペクトルを生成する。制御部11は、記憶部12から第1波長を読み出し、第1波長を特定する。制御部11は、生成された補正スペクトルに基づき、特定された第1波長の吸光度を求める。
【0045】
ステップS104において、濃度算出装置10の制御部11は、ステップS103で推定された逃げ光50の量の、入射光40の量に対する関係に応じて、濃度Xを算出する。具体的には、制御部11は、ステップS103で求められた吸光度から成分αの濃度Xを算出する。濃度Xと吸光度との間には、ランベルト・ベールの法則より以下の関係が成り立つ。
λ=εcd
上式で、εは吸光係数、cは濃度X、dは光路長を示す。εは物質固有の定数、dはプリズム内の光路長であるので、吸光度Aλを求めることで、濃度Xを算出することができる。
【0046】
ステップS105において、濃度算出装置10の制御部11は、ステップS104で算出された成分αの濃度Xを出力する。具体的には、制御部11は、濃度Xを出力部13としてのディスプレイに表示させる。
【0047】
図10を参照して、図4に示すステップS103の詳細な処理手順について説明する。
【0048】
ステップS201において、濃度算出装置10の制御部11は、基材20の入射面21に光が入射されたときに、測定面22に存在し測定面22を覆っている、成分αを含む液体で反射されて出射面23から出射される光の量の、入射された光の量に対する関係を示す基準値を、入射された光の波長ごとに取得する。そして、制御部11は、対応する基準値がゼロである基準波長を抽出する。具体的には、制御部11は、基準波長として、図7に示す第2波長域W2に含まれる3つの第2波長L1、L2、L3を抽出する。ここで、成分αを含む液体は、測定面22に存在し測定面22を覆っているので、乱反射等が発生しない。したがって、成分αを含む液体で反射されて出射面23から出射される光は、逃げ光50の影響を受けない。つまり、入射された光の波長ごとに取得される基準値は、全反射条件で測定される成分αの正味の吸光度に相当する。よって、ある波長に対応する基準値がゼロであれば、その波長に対応する関係値は、濃度Xによって変化しないということになる。すなわち、制御部11は、基準波長を抽出することで、濃度Xによって変化しない複数の波長を特定することができる。例えば、1000nm付近の波長は、Hの濃度によって、吸光度が変化しないことが知られている。990nm、1000nm、及び1010nmの波長が基準波長として抽出されたとすると、第2波長域W2は、3つの第2波長L1、L2、L3として、990nm、1000nm、及び1010nmの波長を含むことになる。
【0049】
ステップS202において、濃度算出装置10の制御部11は、ステップS201で抽出された基準波長に基づき、スプライン補間を実行する。具体的には、制御部11は、ステップS201で抽出された3つの第2波長L1、L2、L3のそれぞれに対応する関係値をプロットして得られる点を通る、図8に示すようなスプライン曲線を表すスプライン関数を決定する。
【0050】
ステップS203において、濃度算出装置10の制御部11は、ステップS202で実行されたスプライン補間の結果に基づき、スペクトル補正を実行する。具体的には、制御部11は、図9の左側に示すように、液滴スペクトルP1、P2、P3のもとになるデータである吸光度の実測値から、逃げ光スペクトルE1、E2、E3のもとになるデータである推定値を差し引くことで、図9の右側に示すような補正スペクトルを生成する。制御部11は、生成された補正スペクトルを用いて、吸光度の実測値から生成された、液滴スペクトルP1、P2、P3を補正する。
【0051】
本実施形態では、ステップS105の前に、濃度算出装置10の制御部11は、測定面22のうち入射光40が当たる第1部分の面積に対する、第1部分のうち混合物30が存在する第2部分の面積の比率に基づき、ステップS104で算出された濃度Xを補正する。具体的には、濃度算出装置10の通信部15は、カメラによって撮像された液滴の画像を取得する。濃度算出装置10の制御部11は、通信部15によって取得された液滴の画像を解析して、第1部分の面積に対する、第2部分の面積の比率を求め、補正値を算出する。制御部11は、第1波長に対応する関係値に補正値を乗じることで、算出された成分αの濃度を補正する。
【0052】
本実施形態によれば、推定された逃げ光50の量の、入射光40の量に対する関係を考慮して、混合物30に含まれる成分αの濃度が算出される。よって、混合物30に含まれる成分αの濃度Xを正確に測定しやすくなる。
【0053】
本実施形態では、ステップS201において、濃度算出装置10の制御部11は、基準波長を抽出することで、濃度Xによって変化しない複数の波長を特定している。しかし、混合物30が液滴ではなく粉末又は粒体である場合は、液滴に対する液体のような基準物質が準備できず、ステップS201の基準波長を抽出することが困難である。この場合は、図4に示すステップS103で推定値を取得するための前処理として、以下の処理を実行してもよい。
【0054】
図11から図15を参照して、本実施形態の変形例に係る、ステップS103の詳細な処理手順について説明する。図11から図15において、混合物30の吸光度の実測値をプロットした点を通る線を実線で示す。
【0055】
本実施形態の一変形例では、楕円近似を用いて推定値を求める。この場合、制御部11は、まず、入射光40の波長ごとに取得される、関係値である吸光度の実測値を楕円近似した値をプロットして得られる点を通る楕円曲線を表す関数を決定する。制御部11は、決定された関数によって表される楕円曲線に対して凸となる吸光スペクトルを示す波長域を第1波長域W1として特定する。制御部11は、特定された第1波長域W1に含まれる波長のうち、吸光度のピークを示す波長を第1波長として特定する。図11に示すように、楕円曲線に対して凸となる吸光スペクトルを示す波長域は、2つ以上存在し得る。本変形例では、第1波長域W1として特定される波長域は、楕円曲線に対して凸となる吸光スペクトルを示す波長域のうち、隣接する波長域に比べて吸光度の差が大きい方の波長域である。図11に示す例では、右側の円で示される波長域が第1波長域W1に相当し、第1波長域W1に含まれる波長のうち、吸光度のピークを示す波長が、第1波長に相当する。次に、制御部11は、特定された第1波長を含む第1波長域W1とは異なる少なくとも3つの波長域を、第2波長域W2として選択する。具体的には、制御部11は、第1波長域W1とは異なり、楕円曲線に対して漸近する又は楕円曲線の中心に近い吸光スペクトルを示す少なくとも3つの波長域を、第2波長域W2として選択する。図12に示す例では、3つの円で示される波長域が、第2波長域W2として選択される。上述した本実施形態は、成分αが既知であり、既知の第1波長に基づき、第2波長を基準波長として抽出することを前提とするが、本変形例は、成分αが未知であり、第1波長が未知である場合にも適用できる。本変形例は、推定値を取得するための前処理を経て第1波長を特定し、特定した第1波長に基づき、第2波長域W2を選択し、第2波長域W2に含まれる波長の中から第2波長を抽出する。
【0056】
別法として、推定値は、カーブフィッティングを用いて求めてもよい。この場合、制御部11は、まず、入射光40の波長ごとに取得される、関係値である吸光度の実測値を高次曲線近似した値をプロットして得られる点を通る近似曲線を表す関数を決定する。具体的には、制御部11は、入射光40の波長ごとに取得される、関係値である吸光度の実測値を、入射光40の波長範囲全体で平滑化することで、図13の破線で示すような近似曲線を生成する。図13に示す例では、近似曲線に対して凸となる吸光スペクトルを示す波長域が、第1波長域W1として特定される。特定された第1波長域W1に含まれる波長のうち、吸光度のピークを示す波長が、第1波長として特定される。次に、制御部11は、特定された第1波長を含む第1波長域W1とは異なる少なくとも3つの波長域を、第2波長域W2として選択する。具体的には、制御部11は、第1波長域W1とは異なり、近似曲線に対して漸近する又は近似曲線を下回る吸光スペクトルを示す少なくとも3つの波長域を、第2波長域W2として選択する。図13に示す例では、3つの円で示される波長域が、第2波長域W2として選択される。
【0057】
制御部11は、上述した推定値を取得するための前処理において、楕円近似とカーブフィッティングとのいずれか一方を用いて特定された、少なくとも3つの第2波長域W2に含まれる複数の波長のそれぞれに対応する推定値をプロットして得られる点を通る曲線を表す関数を決定する。本変形例では、制御部11は、関数として、図14の破線で示すような、スプライン曲線である逃げ光スペクトルE4を表すスプライン関数を決定する。制御部11は、決定されたスプライン関数を用いて、第1波長に対応する推定値を求めることで、逃げ光50の量を、第1波長について推定する。
【0058】
別法として、推定値は、直線近似を用いて求めてもよい。この場合、第2波長域W2は、第1波長域W1に隣接する波長域である。制御部11は、第2波長域W2に含まれる2つ以上の第2波長のそれぞれに対して、取得された関係値をプロットして得られる点を通る、図15の破線で示すような、直線である逃げ光スペクトルE5を表す一次関数を決定する。例えば、制御部11は、図15に示す、2つの第2波長域W2の各波長域から1つずつ、又は、2つの第2波長域W2のいずれか一方の波長域から2つの波長を、第2波長として選択する。制御部11は、選択した第2波長のそれぞれに対して、取得された関係値をプロットして得られる点を通る、逃げ光スペクトルE5を表す一次関数を決定する。このようにして、制御部11は、決定された一次関数を用いて、第1波長に対応する推定値を求めることで、逃げ光50の量を、第1波長について推定する。
【0059】
図11から図15に示した変形例によれば、混合物30が液滴ではなく粉末又は粒体である場合でも、測定された吸光度の実測値に基づき、逃げ光50の量を、第1波長について推定することができる。
【0060】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックを統合してもよいし、又は1つのブロックを分割してもよい。フローチャートに記載の複数のステップを記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行してもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 濃度算出装置
11 制御部
12 記憶部
13 出力部
14 入力部
15 通信部
20 基材
21 入射面
22 測定面
23 出射面
30 混合物
31 液滴
40 入射光
50 逃げ光
60 出射光
W1 第1波長域
W2 第2波長域
P0 液体スペクトル
P1、P2、P3 液滴スペクトル
E1、E2、E3 逃げ光スペクトル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15