(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048906
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】非加熱食肉製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20230331BHJP
【FI】
A23L13/00 Z
A23L13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158488
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000113067
【氏名又は名称】プリマハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 重城
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC05
4B042AD01
4B042AK01
4B042AK07
4B042AK20
4B042AP13
4B042AP16
4B042AP17
4B042AP21
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、新たな食感として、柔らかく、しっとりとした口どけの非加熱食肉製品を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するため、測定装置「Cutometer DUAL MPA580」(Courage+Khazaka社製)を用いた粘弾性測定方法において、測定開始後1.99秒における吸い込み距離(mm)であるA値が0.40mm以上であることを特徴とする、非加熱食肉製品を提供する。この非加熱食肉製品によれば、従来の非加熱食肉製品と比べて、柔らかく、しっとりとした口どけの非加熱食肉製品を提供することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
「Cutometer DUAL MPA580」(Courage+Khazaka社製)を用いた粘弾性測定方法において、吸引終了時間2秒間として測定した場合の吸引終了時における侵入深度(A値)が0.40mm以上であることを特徴とする、非加熱食肉製品。
【請求項2】
前記粘弾性測定方法において、前記吸引終了時間から2秒間経過後(測定開始から4秒後)の侵入深度(B値)と、前記A値により算出される戻り率が70.0%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の非加熱食肉製品。
【請求項3】
厚さが0.5~5.0mmのスライス状の生ハムであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の非加熱食肉製品。
【請求項4】
以下の工程1及び工程2を備えることを特徴とする、非加熱食肉製品の製造方法。
(工程1)直進水流噴射ノズルを用いて食肉塊に調味液を注入する工程。
(工程2)調味液を注入した食肉塊を成型せずに燻煙又は乾燥する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ハムなどの非加熱食肉製品、及び、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生ハムなどの非加熱食肉製品は、食肉塊を調味液に漬けて塩漬し、その後、成型のためのモールドに収容して乾燥する。また、食肉塊に調味液を注入する方法としては、塩漬の他にも、一本針インジェクターや多針型インジェクター、無針型インジェクターなどにより食肉塊に調味液を注入する方法があり、様々な加工方法が知られている。
例えば、特許文献1には、直進水流噴射ノズルを用いて食肉塊に調味液を注入し、調味液を注入した食肉塊を吸水シートで包装した後に、モールドに収容して、その後乾燥する生ハムの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生ハムなどの非加熱食肉製品の開発においては、肉の噛み応えが感じられるように、硬く、弾力のある食感が求められていた。しかし、さらなる商品の多様化が進み、新たな食感の非加熱食肉製品が求められている。
本発明の課題は、新たな食感として、柔らかく、しっとりとした口どけの非加熱食肉製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、調味液の注入方法や乾燥方法などの加工方法を調整することにより、柔らかく、しっとりとした口どけの非加熱食肉製品が得られるという知見に至り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の非加熱食肉製品及びその製造方法、非加熱食肉製品を軟化する方法である。
【0006】
上記課題を解決するための本発明の非加熱食肉製品は、「Cutometer DUAL MPA580」(Courage+Khazaka社製)を用いた粘弾性測定方法において、吸引終了時間2秒間として測定した場合の吸引終了時における侵入深度(A値)が0.40mm以上であることを特徴とするものである。
本発明の非加熱食肉製品によれば、従来の非加熱食肉製品と比べて、柔らかく、しっとりとした口どけの非加熱食肉製品を提供することができる。
【0007】
本発明の非加熱食肉製品の一実施態様としては、前記粘弾性測定方法において、前記吸引終了時間から2秒間経過後(測定開始から4秒後)の侵入深度(B値)と、前記A値により算出される戻り率が70.0%以下であることを特徴とする。
この特徴によれば、柔らかさに加え、さらに弾力性が弱く、生肉のような食感の非加熱食肉製品を提供することができる。
【0008】
本発明の非加熱食肉製品の一実施態様としては、厚さが0.5~5.0mmのスライス状の生ハムであることを特徴とする。
この特徴によれば、本発明の非加熱食肉製品において、柔らかく、しっとりとした口どけの食感をより表現することができる。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の非加熱食肉製品の製造方法は、以下の工程1及び工程2を備えることを特徴とするものである。
(工程1)直進水流噴射ノズルを用いて食肉塊に調味液を注入する工程。
(工程2)調味液を注入した食肉塊を成型せずに燻煙又は乾燥する工程。
この非加熱食肉製品の製造方法によれば、柔らかく、しっとりとした口どけの非加熱食肉製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新たな食感として、柔らかく、しっとりとした口どけの非加熱食肉製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の粘弾性測定方法における試料の測定位置を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の生ハムと市販の生ハムについて、「Cutometer DUAL MPA580」(Courage+Khazaka社製)を用いた粘弾性測定方法により測定したA値及びB値を示すグラフである。
【
図3】本発明の生ハムと市販の生ハムについて、A値を対比するグラフである。
【
図4】本発明の生ハムと市販の生ハムについて、A値及びB値から算出した戻り率を示すグラフである。
【
図5】本発明の生ハムと市販の生ハムについて、戻り率を対比するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の非加熱食肉製品及びその製造方法について詳細に説明する。なお、実施態様に記載する事項については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、これらに限定されるものではない。また、非加熱食肉製品及びその製造方法の各発明の説明において記載した技術的事項は、いずれの発明にも適用されるものである。
【0013】
[非加熱食肉製品]
本発明の非加熱食肉製品は、「Cutometer DUAL MPA580」(Courage+Khazaka社製)を用いた粘弾性測定方法において、吸引終了時間2秒間として測定した場合の吸引終了時における侵入深度(A値)が0.40mm以上であることを特徴とするものである。
本発明の非加熱食肉製品によれば、従来の非加熱食肉製品と比べて、柔らかく、しっとりとした口どけの非加熱食肉製品を提供することができる。
【0014】
本発明における「Cutometer DUAL MPA580」(Courage+Khazaka社製)を用いた粘弾性測定方法とは、例えば、特開2019-184505号公報に開示される方法を利用するものであり、本発明における具体的な測定条件は以下のとおりである。
【0015】
<測定条件>
測定装置:「Cutometer DUAL MPA580」(Courage+Khazaka社製)
測定プローブ:「Cutometer CT580」(Courage+Khazaka社製)
<測定方法>
非加熱食肉製品の原木(肉塊)を1.2mm厚にスライス(スライス断面積55~60cm
2)して、測定用の試料とする。前記試料のスライス面に測定プローブを押し当て、測定を開始し、測定プローブに吸い込まれる非加熱食肉製品の侵入深度を測定する。測定開始後、2秒後に吸い込みを停止して解放する。測定開始後1.99秒時点における侵入深度(mm)をA値、測定開始後4秒後における侵入深度(mm)をB値とする。
前記試料のスライス面における測定位置は、前記試料のスライス面の略中央部の直径2cmの範囲内(
図1の破線の範囲)の5か所とし(
図1の「×」印の位置)、その平均値を前記試料のA値及びB値とする。
さらに、同一原木からスライスして切り出した3枚の試料について測定し、その平均値を非加熱食肉製品のA値及びB値とする。
【0016】
本発明の非加熱食肉製品において、上記A値は0.40mm以上である。この範囲とすることにより、従来の非加熱食肉製品と比べて、柔らかく、しっとりとした口どけの非加熱食肉製品を提供することができる。また、上記A値は、好ましくは0.50mm以上であり、より好ましくは0.55mm以上であり、特に好ましくは0.60mm以上である。
【0017】
さらに、本発明の非加熱食肉製品は、以下の式(1)により算出される戻り率が70.0%以下であることが好ましい。戻り率をこの範囲とすることにより、柔らかさに加え、さらに弾力性が弱く、生肉のような食感の非加熱食肉製品を提供することができる。戻り率は、より好ましくは67.5%以下であり、さらに好ましくは65.0%以下である。
戻り率(%)={(A値-B値)/A値}×100 ・・・式(1)
【0018】
本発明の非加熱食肉製品とは、食肉製品の規格基準により規定される「非加熱食肉製品」であり、「食肉を塩漬けした後、燻煙し、又は乾燥させ、かつ、その中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法による加熱殺菌を行っていない食肉製品(ただし、乾燥食肉製品を除く。)」である。具体例としては、例えば、生ハム、生ベーコン、パンチェッタ、生サラミソーセージ、生ジャーキー等が挙げられる。柔らかく、しっとりとした口どけの非加熱食肉製品を提供するという本発明の効果が一層発揮されるという観点から、好ましくは生ハムである。
【0019】
本発明の非加熱食肉製品に用いる食肉は特に限定されない。例えば、豚、牛、羊、馬などの家畜、鶏、鴨、七面鳥、アヒルなどの家禽、猪、鹿、熊などの野生鳥獣、サケ、サンマ、マグロなどの魚類、イカ、タコなどの魚介類、クジラなどの海洋哺乳類等でもよい。柔らかく、しっとりとした口どけの非加熱食肉製品を提供するという本発明の効果が一層発揮されるという観点から、好ましくは豚肉、牛肉であり、特に好ましくは豚肉である。
【0020】
食肉として豚肉、牛肉を使用する場合、その使用部位は特に限定されないが、例えば、モモ肉、ロース肉、肩ロース肉、肩肉、ヒレ肉、バラ肉などが挙げられる。柔らかく、しっとりとした口どけの非加熱食肉製品を提供するという本発明の効果が一層発揮されるという観点から、好ましくはモモ肉、ロース肉、肩ロース肉、肩肉であり、特に好ましくはロース肉である。
【0021】
本発明の非加熱食肉製品の形状は、特に限定されないが、例えば、スライス状、ブロック状等でもよい。しっとりとした口どけの非加熱食肉製品を提供するという本発明の効果が一層発揮されるという観点から、好ましくはスライス状である。スライス状の場合、その厚さは、特に限定されないが、例えば、0.5~5.0mmである。厚さの下限値は、好ましくは0.8mm以上であり、より好ましくは1.0mm以上である。厚さの上限値は、好ましくは3.0mm以下であり、より好ましくは2.0mm以下であり、さらに好ましくは1.5mm以下である。なお、本発明における厚さとは、スライサーの設定する厚さである。
【0022】
本発明の非加熱食肉製品の水分量は、特に制限されないが、例えば、50~70質量%である。水分量の下限値は、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。水分量の上限値は、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは65質量%以下である。水分量が50質量%以上の場合、柔らかく、しっとりとした口どけの食感が向上するという効果がある。一方、水分量が70質量%以下の場合、保存性に優れるという効果がある。
【0023】
本発明の非加熱食肉製品の塩化ナトリウムの含有量は、特に制限されないが、例えば、3.0~6.0質量%である。塩化ナトリウムの含有量の下限値は、好ましくは4.0質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上である。塩化ナトリウムの含有量の上限値は、好ましくは6.0質量%以下であり、より好ましくは5.5質量%以下である。塩化ナトリウムが3.0質量%以上の場合、保存性に優れるという効果がある。一方、塩化ナトリウムの含有量が6.0質量%以下の場合、塩味が強くなりすぎず、食肉の旨みを強く感じることができる。非加熱食肉製品の水分量を増加すると、やわらかくなる一方で、保存性が低下するため、塩化ナトリウムの含有量を上記範囲とすることにより、やわらかさ、保存性及び食肉の旨みをバランスよく発揮することができる。
【0024】
[非加熱食肉製品の製造方法]
本発明の非加熱食肉製品の製造方法は、上記の非加熱食肉製品を得ることができれば特に制限されないが、例えば、食肉塊に調味液を含浸させる塩漬処理、及び、塩漬処理された食肉塊を乾燥する乾燥処理を備える。また、乾燥処理の前又は後に、必要に応じて食肉塊に煙をかける燻煙処理を行う。その他、食肉塊を所定の大きさにカットするせん断処理を設けてもよい。
【0025】
<塩漬処理>
塩漬処理は、食肉塊に調味液を含浸させる手段であれば、どのような手段を適用してもよい。例えば、調味液に食肉塊を浸漬する浸漬法や、調味液を食肉塊に注入するインジェクション法などが挙げられる。
インジェクション法としては、例えば、一本針型インジェクションや多針型インジェクション、無針型インジェクションなどが挙げられる。本発明の非加熱食肉製品の製造方法において、無針型インジェクションが好ましい。なお、無針型インジェクションは、直進水流噴射ノズルを用いて食肉塊に調味液を注入する工程(工程1)である。無針型インジェクションによれば、他の塩漬処理に比べて、非加熱食肉製品が柔らかく、しっとりとした口どけとなる。
【0026】
無針型インジェクションにおいて、調味液を注入する際の最大注入圧力は、特に制限されないが、例えば、50~2000kgf/cm2である。なお、最大注入圧力とは、調味液を注入する圧力を上昇させていき、到達する最大の注入圧力のことである。最大注入圧力の下限値は、好ましくは100kgf/cm2以上であり、より好ましくは200kgf/cm2以上であり、さらに好ましくは300kgf/cm2以上である。一方、最大注入圧力の上限値は、好ましくは1500kgf/cm2以下であり、より好ましくは1000kgf/cm2以下であり、さらに好ましくは800kgf/cm2以下であり、特に好ましくは600kgf/cm2以下である。この範囲とすることにより、柔らかく、しっとりとした口どけの食感が向上するという効果がある。
【0027】
調味液の注入量は、特に制限されないが、例えば、食肉塊100質量部に対して5~60質量部である。注入量の下限値は、食肉塊100質量部に対して、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは15質量部以上である。また、注入量の上限値は、食肉塊100質量部に対して、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは40質量部以下であり、特に好ましくは30質量部以下である。この範囲とすることにより、柔らかく、しっとりとした口どけの食感が向上するという効果がある。
【0028】
<燻煙処理・乾燥処理>
乾燥処理は、食肉塊を乾燥させる手段であれば、どのような手段を適用してもよい。例えば、温度及び湿度が所定値に調整された乾燥庫内に静置して乾燥する手段や、デシカント除湿機により除湿された除湿空気を当てて食肉塊を乾燥する手段などが挙げられる。
乾燥庫内の温度は、非加熱食肉製品の製造方法に適した温度であればよく、例えば、5~30℃である。下限値として、好ましくは10℃以上であり、より好ましくは15℃以上である。上限値として、好ましくは25℃以下であり、より好ましくは20℃以下である。この乾燥手段における乾燥時間は、特に制限されないが、例えば、1~8日、好ましくは3~6日の乾燥時間を例示することができる。
デシカント除湿機により除湿された除湿空気の露点温度は、例えば、5℃以下であり、好ましくは0℃以下であり、より好ましくは-5℃以下である。また、除湿空気の風速は、例えば、0.1~5.0m/sである。この乾燥手段における乾燥時間は、特に制限されないが、例えば、1~8日、好ましくは3~6日の乾燥時間を例示することができる。
【0029】
燻煙処理は、煙を食肉塊にかける処理であり、乾燥処理の前又は後に行われる処理である。燻材は、特に制限されないが、例えば、桜などが挙げられる。燻煙温度は、特に限定されないが、例えば、25℃以下であり、好ましくは20℃以下である。燻煙時間は、特に制限されないが、例えば、1~8日、好ましくは3~6日の燻煙時間を例示することができる。
【0030】
燻煙処理又は乾燥処理において、食肉塊は、水分を吸収及び蒸発することができる吸水シートで包装することが好ましい。吸水シートで食肉塊を包装すると、吸水シートの毛細管現象により食肉塊の表面から均一に水分が蒸発するため、食肉塊の硬さに偏りが生じにくく、全体的に均一に柔らかくなるという効果を奏する。
【0031】
吸水シートとしては、例えば、吸水性の高い不織布などが挙げられる。具体例としては、ポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)からなる上層及び下層と、レーヨン及びPE/PPとからなる中間層により形成された不織布などが挙げられる。商業的に流通する市販品としては、例えば、フレッシュマット(福助工業社製)、Kシート(極東貿易社製)などが挙げられる。
【0032】
また、燻煙処理・乾燥処理において、調味液を注入した食肉塊を成型せずに燻煙又は乾燥する工程(工程2)を備えることが好ましい。本発明における「成型」とは、食肉塊に対して、形を整える処理を施すことであり、例えば、食肉塊を紐で巻いて形を整える手段や、食肉塊を成型のためのモールド(金型)に収容する手段などが挙げられる。食肉塊を成型すると非加熱食肉製品の硬さが硬くなることから、食肉塊を成型せずに燻煙又は乾燥することにより、非加熱食肉製品が柔らかくなり、しっとりとした口どけの食感が向上するという効果がある。
【実施例0033】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例]
豚肉(部位:ロース肉)の骨や豚毛を除去して整形したものを食肉塊として準備した。以下の配合の調味液を調製し、自社で開発した無針型インジェクター(プリマハム社製)を用いて、上記豚肉5kgに調味液1kgを注入した。なお、最大注入圧力は500kgf/cm2とした。
次いで、豚肉の食肉塊を、不織布製の吸水シート(福助工業社製「フレッシュマット」)に包装し、乾燥台に置いた状態で、燻煙処理を行い、室温18±2℃、湿度70±10%に設定された乾燥庫で水分活性が0.95未満になるまで乾燥を行った。
得られた生ハムの原木を、厚さ1.2mmに設定したスライサーでスライスして切り出して、スライス状の生ハムを得た。
【0034】
得られたスライス状の生ハムの水分量は、63質量%であった。なお、生ハムの水分量は、常圧加熱乾燥法により測定した。また、塩化ナトリウム濃度は、5.2質量%であった。なお、塩化ナトリウム濃度は、原子吸光光度法(塩酸抽出法)によりナトリウム濃度を分析し、ナトリウム量に2.54を乗じて算出したものを塩化ナトリウム濃度とした。
【0035】
(調味液)
調味液の配合は、食塩20質量%、糖類20%、酸化防止剤0.6質量%、発色剤0.3質量%、その他16質量%、添加水約43.1質量%とした。
【0036】
原木の略中央部から切り出された3枚を粘弾性測定用の試料とし、前述した測定条件にて、A値及びB値を測定した。12個の生ハムの原木について測定したA値及びB値を、
図2に示すグラフにプロットした。また、その平均値を
図3に示した。なお、
図3中の誤差バーは、標準偏差を示す。
さらに、A値及びB値から戻り率を算出し、
図4にプロットした。また、その平均値を
図5に示した。なお、
図5中の誤差バーは、標準偏差を示す。
【0037】
[比較例]
本発明の生ハムと比較して、市場に流通する生ハムの市販品12パックについて、それぞれA値及びB値を測定し、
図2プロットし、その平均値を
図3に示した。さらに、A値及びB値から戻り率を算出し、
図4にプロットし、その平均値を
図5に示した。
【0038】
<評価>
実施例の各原木から切り出されたスライス状の生ハムと、比較例の市販品について、食感を評価した。評価方法は、6名のパネラーによる官能評価とし、各パネラーの食感に対するコメントを以下に示す。
【0039】
(実施例の生ハムの食感に対するコメント)
・とてもやわらかい。
・口の中でほぐれる(肉の結着が弱い)。
・弾力がすくない。
・ザラザラする。
・水っぽくしっとりしている(生っぽい)、サラダに合いそう。
・ふんわりしている。
【0040】
(比較例の生ハムの食感に対するコメント)
・しっかりしている。
・乾燥している感じがする。
・結着が強い
・弾力が強い。噛み応えがある。
・何回か噛まないとほぐれない。
・硬い。
【0041】
上記コメントを参照すると、本発明の生ハムによると、柔らかく、しっとりとした口どけの生ハムを得ることができた。一方、市販品のものは、硬く、弾力のある食感であることがわかった。
本発明の非加熱食肉製品及びその製造方法は、生ハム、生ベーコン、パンチェッタ、生サラミソーセージ、生ジャーキー等に利用することができる。特に、新たな食感の生ハムを提供することができる。
また、本発明の非加熱食肉製品の製造方法は、非加熱食肉製品を軟化する方法の発明に利用することができる。