(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004893
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】アントラキノン誘導体テトラアミンモノマー、それに由来する真性黒色ポリイミド及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20230110BHJP
C07C 225/36 20060101ALI20230110BHJP
C07C 221/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C08G73/10
C07C225/36
C07C221/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083523
(22)【出願日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】202110708909.2
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】513059401
【氏名又は名称】同▲済▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】路 慶華
(72)【発明者】
【氏名】周 ▲与▼
【テーマコード(参考)】
4H006
4J043
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC52
4H006BB14
4H006BB31
4H006BJ50
4H006BN30
4H006BU48
4J043PA04
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4J043ZB47
4J043ZB50
(57)【要約】 (修正有)
【課題】遮光性能がよく、優れた機械的特性、熱安定性、及び誘電特性を有する真性黒色ポリイミドを提供する。
【解決手段】アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーは、下記の一般式Iで表される構造を有する。本アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーは、2つのアミン基のみが重縮合反応することができるので、線状重合体を得ることができる。アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーから得られる真性黒色ポリイミドは、遮光性能がよく、優れた機械的特性、熱安定性、及び誘電特性を有し、全波長帯における光透過率が1%未満ある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式Iで表される構造を有することを特徴とするアントラキノン誘導体テトラアミンモノマー。
【請求項2】
請求項1に記載のアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーを調製する方法であって、前記方法は、濃硫酸及び濃硝酸の存在下で、1,8-ジヒドロキシ-9,10-アントラキノンを1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラニトロ-9,10-アントラキノンにニトロ化し、続いてニトロ基をアミノ基に還元し、1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンを得ることを含むことを特徴とするアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの調製方法。
【請求項3】
請求項1に記載のアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーを調製する方法であって、前記方法は、濃硫酸及び濃硝酸の存在下で、濃硫酸及び濃硝酸の存在下で、1,8-ジヒドロキシ-4,5-ジニトロ-9,10-アントラキノンを1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラニトロ-9,10-アントラキノンにニトロ化し、続いてニトロ基をアミノ基に還元し、1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンを得ることを含むことを特徴とするアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの調製方法。
【請求項4】
請求項1に記載のアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーに由来する構造単位と、ジアミンモノマーに由来する構造単位と、酸無水物モノマーに由来する構造単位とを含む真性黒色ポリイミドであって、前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーに由来する構造単位は、前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーに由来する構造単位と前記ジアミンモノマーに由来する構造単位との総モル数の4%-100%を占めることを特徴とする真性黒色ポリイミド。
【請求項5】
前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーに由来する構造単位は、前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーに由来する構造単位と前記ジアミンモノマーに由来する構造単位との総モル数の4%-10%を占めることを特徴とする請求項4に記載の真性黒色ポリイミド。
【請求項6】
前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーと前記ジアミンモノマーの反応に関与するアミン基の総モル数と、前記酸無水物モノマーの反応に関与するカルボン酸無水物基の総モルとの比は1:1であることを特徴とする請求項4に記載の真性黒色ポリイミド。
【請求項7】
前記酸無水物モノマーは、4,4’-(アセチレン-1,2-ジイル)ジフタル酸無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボン酸)ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物及びジフェニルスルフィド二無水物のうちの1つ又は複数であることを特徴とする請求項4に記載の真性黒色ポリイミド。
【請求項8】
前記ジアミンモノマーは、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル、2-(4-アミノフェニル)-5-アミノベンゾオキサゾール、2-(4-アミノフェニル)-5-アミノベンズイミダゾール、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2-(4-アミノフェニル)-6-アミノベンゾオキサゾール、2,2-p-フェニル-ビス(5-アミノベンゾオキサゾール)及び2,2’-p-フェニル-ビス(6-アミノベンゾオキサゾール)のうちの1つまたは複数であることを特徴とする請求項4に記載の真性黒色ポリイミド。
【請求項9】
請求項4に記載の真性黒色ポリイミドを調製する方法であって、前記方法は以下のステップ:
(1)無水・無酸素条件下で、請求項1に記載のアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーとジアミンモノマーを所定の重量比で混合し、溶解するまで攪拌して均一な溶液を形成し、次に酸無水物モノマーを添加し、冷水浴中で所定の時間撹拌及び反応させた後、黒色のポリアミック酸溶液が得られ;
(2)黒色のポリアミック酸溶液をイミド化して、真性黒色ポリイミドを得る、
ことを特徴とする真性黒色ポリイミドの調製方法。
【請求項10】
前記黒色のポリアミック酸溶液のイミド化は、脱泡後、黒色のポリアミック酸溶液を自動フィルムコーティング機によって乾燥した清浄なガラス板上に均一に塗布して、昇温硬化の手順を80℃/3時間、100℃/1時間、200℃/2時間、300℃/4時間とするようにイミド化反応を熱イミド化法によって実施することを含む、ことを特徴とする請求項9に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、有機合成の技術分野に関し、特に、本出願は、アントラキノン誘導体テトラアミンモノマー、アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの調製方法、当該アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーに由来する真性黒色ポリイミド、及び当該真性黒色ポリイミドの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
黒色ポリイミド(PI)フィルムは、不透明、低光吸収、低光透過率、低光反射係数などの特性を有し、以下の分野で重要な応用価値がある。(1)フレキシブル回路基板(FPC)の基板フィルム:黒は光を効果的に遮断し、競合他社による回路設計のクラックを防ぎでき、また、黒はシンプルな色で、簡潔な美学の要件にさらに合致する;(2)リチウム電池:リチウム電池パック接続部品を絶縁保護し、黒色ポリイミドは光を遮断し、銅の酸化を防止できる;(3)ワイヤレス充電:ワイヤレス充電には、コイルの絶縁保護として極薄の黒色ポリイミドフィルム接着剤が必要であるが、現在、黒色ポリイミドは要件を満たせないため、通常のポリイミドがカーボンブラックで塗布されて一時的に使用されている;(4)航空宇宙:衛星アンテナに使用される場合、イメージングシステムやセンサーへのさまざまな迷光の干渉を排除または回避でき;光吸収フィルムとして、光固定減衰器や光ターミネータの作成に使用できる。
【0003】
現在、黒色PIフィルムの調製には、主に3つの方法がある。(1)グラフェン、ペリレンブラック、その他の有機及び無機フィラーを添加する方法;(2)特殊なモノマーを使用して、ポリイミド分子鎖の電荷移動錯体の形成を増加させる方法。例えば、Liu ら(J Polym Res(2019)26:171)は、電子豊富な芳香族ジアミンモノマー、4,4’-ジアミノジフェニルアミン(NDA)、及びPMDAを使用して共重合したが、100%NDAを使用しても、ポリマーの色はまだ黒くなくなかった。従って、共役によるポリイミドの黒色は、完全に達成できない黒色であり、しかも、特殊なモノマーを大量に使用すると、黒色ポリイミドフィルムのコストが高くなる。さらに、公開番号CN109180936Aの中国発明特許出願は、市販のジアミンとの共重合法を採用し、両方の配合比率を調整することによって一連の真性型黒色ポリイミドを調製した。公開番号CN111574426Aの中国発明特許出願は、イソインジゴ構造を含むジアミンモノマーを設計して合成し、それを市販の二無水物と単独重合して、一連の真性型黒色ポリイミドを調製した。
しかし、上記の黒色ポリイミドの調製方法には、以下の欠点が多少ある。
【0004】
1.調製プロセスは複雑であり、いずれも不均一な機械的特性やピンホールを回避するために、フィラーを、PIマトリックスにより均一に分散させるように事前に修飾する必要がある。
【0005】
2.無機フィラーの導入は、PIフィルムの機械的及び熱的特性をある程度改善できるが、PIフィルムの絶縁性及び破壊強度を破壊し、電子産業での用途に悪影響を及ぼす。
【0006】
3.有機顔料の導入は、PIフィルムの電気的特性への影響を回避できるが、熱分解温度が低いため、高温領域でのPIフィルムの使用が妨げられ、環境要因によって容易に分解され、耐候性に乏しい。
4.既存の真性型黒色ポリイミドはまだ光透過率が不足しており、可視光帯域全体で1%未満であることを保証することはできない。
そのため、当技術分野では、真性黒色ポリイミド及びその調製方法を開発する必要があり続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願の目的は、モル吸光係数の高い新規アントラキノン誘導体モノマーを提供することであり、アントラキノン構造に複数の助色基を導入し、その吸収波長が広範囲に広がるため、上記の技術的な問題を解決できる。
本出願の目的はまた、アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの調製方法を提供することである。
本出願の目的はまた、アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーを使用することによって合成された真性黒色ポリイミドを提供することである。
本出願の目的はまた、真性黒色ポリイミドの調製法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的な問題を解決するために、本出願は次の技術案を提供する。
第1の態様では、本出願は、下記の一般式Iで表される構造を有することを特徴とするアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーを提供する。
【0009】
一実施形態において、アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーにおいて2つのアミン基のみが重縮合反応することができるので、線状重合体を得ることができる。
【0010】
第2の態様では、本出願は、第1の態様に記載のアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの調製方法を提供し、当該方法は、濃硫酸及び濃硝酸の存在下で、1,8-ジヒドロキシ-9,10-アントラキノンを1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラニトロ-9,10-アントラキノンにニトロ化し、続いてニトロ基をアミノ基に還元し、1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンを得ることを含むことを特徴とする。
【0011】
もう一つの実施形態において、本出願は、第1の態様に記載のアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの調製方法を提供し、当該方法は、濃硫酸及び濃硝酸の存在下で、1,8-ジヒドロキシ-4,5-ジニトロ-9,10-アントラキノンを1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラニトロ-9,10-アントラキノンにニトロ化し、続いてニトロ基をアミノ基に還元し、1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンを得ることを含むことを特徴とする。
【0012】
第3の態様では、本出願は、第1の態様に記載のアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーに由来する構造単位と、ジアミンモノマーに由来する構造単位と、酸無水物モノマーに由来する構造単位とを含む真性黒色ポリイミドであって、前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーに由来する構造単位は、前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーに由来する構造単位と前記ジアミンモノマーに由来する構造単位との総モル数の4%-100%を占めることを特徴とする真性黒色ポリイミドを提供する。好ましい実施形態において、前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーに由来する構造単位は、前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーに由来する構造単位とジ前記アミンモノマーに由来する構造単位との総モル数の4%-80%を占める。好ましい実施形態において、前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーに由来する構造単位は、前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーに由来する構造単位と前記ジアミンモノマーに由来する構造単位との総モル数の4%-10%を占める。
【0013】
第1の態様の一実施形態では、前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーと前記ジアミンモノマーの、反応に関与するアミン基の総モル数と、前記酸無水物モノマーの、反応に関与するカルボン酸無水物基の総モルとの比は1:1である。この実施形態では、アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーに分子内水素結合が存在するため、オルト位とパラ位におけるアミン基は活性が異なり、2つのオルト位のアミン基のみが共重合反応に関与することができる。
【0014】
第1の態様の一実施形態では、前記酸無水物モノマーは、4,4’-(アセチレン-1,2-ジイル)ジフタル酸無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボン酸)ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物及びジフェニルスルフィド二無水物のうちの1つ又は複数である。
【0015】
第1の態様の一実施形態では、前記ジアミンモノマーは、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル、2-(4-アミノフェニル)-5-アミノベンゾオキサゾール、2-(4-アミノフェニル)-5-アミノベンズイミダゾール、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2-(4-アミノフェニル)-6-アミノベンゾオキサゾール、2,2-p-フェニル-ビス(5-アミノベンゾオキサゾール)及び2,2’-p-フェニル-ビス(6-アミノベンゾオキサゾール)のうちの1つまたは複数である。
第4の態様では、本出願は、第3の態様に記載の真性黒色ポリイミドの調製方法を提供し、前記方法は、以下のステップを含むことを特徴とする。
【0016】
(1)無水・無酸素条件下で、第1の形態に記載のアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーとジアミンモノマーを所定の重量比で混合し、溶解するまで攪拌して均一な溶液を形成し、次に酸無水物モノマーを添加し、冷水浴中で所定の時間撹拌及び反応させた後、黒色のポリアミック酸溶液が得られ;
(2)黒色のポリアミック酸溶液をイミド化して、真性黒色ポリイミドを得る。
【0017】
第4の態様の一実施形態では、前記黒色のポリアミック酸溶液のイミド化は、脱泡後、黒色のポリアミック酸溶液を自動フィルムコーティング機によって乾燥した清浄なガラス板に均一に塗布して、昇温硬化の手順を80℃/3時間、100℃/1時間、200℃/2時間、300℃/4時間とするようにイミド化反応を熱イミド化法によって実施することを含む。
【発明の効果】
【0018】
従来技術と比較して、本出願の有益な効果は、本出願の黒色ポリイミドが、遮光性能がよく、良好な機械的特性、熱安定性及び誘電特性を有し、全波長帯における光透過率が1%未満であることである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は実施例1によるアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの紫外線吸収スペクトルを示す。
【
図2】
図2は実施例1によるアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの赤外線スペクトルを示す。
【
図3】
図3は実施例1によるアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの水素核磁気スペクトルを示す。
【
図4】
図4は、白いA4紙上の実施例3によるポリイミドの光学写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
黒色ポリイミドは、幅広い潜在的な用途の見通しがあるため、国内外の多くの研究チームの関心を呼び起こした。例えば、公開番号CN105860112Bの中国発明特許は、PI前駆体ポリアミック酸(PAA)溶液をポリアクリロニトリル溶液とブレンドすることにより、PIの優れた機械的特性とPAN予備酸化後の不透明な黒色膜の両方を備えた黒色フィルムが得られることを開示した。公開番号CN105482115Bの中国発明特許は、カーボンブラックまたは炭素繊維粉末などの黒色フィラー及びカップリング剤をポリアミック酸溶液に添加し、次に脱泡してキャストすることでフィルムを形成する方法を報告した。公開番号CN108017910Aの中国発明特許出願は、カーボンブラック顔料をポリアミック酸溶液に添加し、濾過後に凝集剤を添加し、次に脱泡してキャストすることでフィルムを形成する方法を報告した。公開番号CN110387040Aの中国発明特許出願は、遷移金属窒化物、遷移金属炭化物、遷移金属ホウ化物及び貴金属などの導電性ナノ粒子、並びにグラフェン、炭素系ナノ材料、黒色顔料、黒色染料などをポリアミック酸溶液に添加し、脱泡してキャストすることでフイルムを形成する方法を報告し、遮蔽性が大幅に向上している。公開番号CN108976447Aの中国発明特許出願は、異なる粒子サイズのカーボンブラックをポリアミック酸溶液に添加し、次に脱泡及び塗布して、極薄の黒色ポリイミドフィルムを調製する方法を報告した。
【0021】
真性黒色ポリイミドは、優れた遮光特性を備えているだけでなく、モノマーの種類と使用量を調整することで、機械的、熱的、及び電気的特性を向上させることができる。従って、真性黒色ポリイミドの新しい調製方法を継続的に開発することは非常に重要である。
一実施形態では、本出願は、下記の一般式Iに表される構造を有する新規なアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーを提供する。
【0022】
一実施形態では、本出願は、上記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの調製方法を提供し、当該方法は、濃硫酸及び濃硝酸の存在下で、1,8-ジヒドロキシ-9,10-アントラキノンを1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラニトロ-9,10-アントラキノンにニトロ化し、続いてニトロ基をアミノ基に還元し、1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンを得ることを含む。
【0023】
もう一つの実施形態では、アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの調製方法は、濃硫酸及び濃硝酸の存在下で、1,8-ジヒドロキシ-4,5-ジニトロ-9,10-アントラキノンを1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラニトロ-9,10-アントラキノンにニトロ化し、続いてニトロ基をアミノ基に還元し、1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンを得ることを含む。
【0024】
一実施形態では、本出願はまた、上記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマー、ジアミンモノマー及び酸無水物モノマーを反応させることによって形成された真性黒色ポリイミドを提供する。当該実施形態において、アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの含有量は、好ましくは、すべてのアミンモノマーの総モルの4%-100%である。第1の態様では、アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの含有量がすべてのアミンモノマーの総モルの4%未満である場合、調製されたポリイミドは、純粋な黒色ではなく、黄色から暗緑色を呈する。別の態様では、アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの含有量がすべてのアミンモノマーの総モルの10%を超える場合、得られた真性黒色ポリイミドフィルムのLAB値はあまり変化しない。従って、好ましい一実施形態において、アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーの含有量は、好ましくは、すべてのアミンモノマーの総モルの4%-10%である。
【0025】
本出願はまた、まず、アントラキノン誘導体テトラアミンモノマー、ジアミンモノマー及び酸無水物モノマーを反応させてポリアミック酸溶液を得、次に、ポリアミック酸溶液をイミド化して、真性黒色ポリイミドを得ることを含む、上記黒色真性ポリイミドの調製方法に関する。
実施例
【0026】
本出願は、実施例を参照して、以下でさらに記述及び説明される。特に指定のない限り、使用するすべての化学原料は市場から購入できる。当業者は、以下の実施例が単なる例示であることを理解することができる。
以下の実施例では、使用される特性評価方法は次のとおりである。
水素核磁気共鳴スペクトル(1H NMR):
【0027】
反応生成物及び中間体の核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルは、ドイツのブルカーAVANCE III HD 400/500で得られる。サンプルの準備方法:清潔で乾燥したガラスNMRチューブで、約10mgのサンプルを約0.5mLの重水素化試薬に完全に溶解する。溶解性の高い生成物は、室温で溶媒としての重水素化クロロホルム(CDCl3)に溶解する一方、溶解性の低い生成物は、溶媒として重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)を使用する。DMSO-d6は、より低い室温で固化しやすいため、サンプルを添加する前にヘアドライヤーでブローする必要がある。室温で試験する場合、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として使用し、化学シフトは0ppmである。
フーリエ変換赤外分光法(FT-IR):
【0028】
乾燥した環境で、Nicolet iS5(ThermoFisher Scientific, Inc., USA)フーリエ変換赤外分光計(FTIR)のATRモードをテストに使用し、テストの前に、モノマー(4NADA)をまず80℃の真空オーブンに2時間入れて置いて水分を取り除く。スキャン範囲は4000-650cm-1、解像度は2cm-1、スキャン回数は32回に設定され、平均値を自動的に取得する。
紫外可視スペクトル(UV-Vis):
【0029】
真性黒色ポリイミドフィルムの光透過率は、日本島津UV-2600分光光度計で分析し、スキャン範囲は360-800cm-1に設定される。モノマーのUV吸光度も日本島津UV-2600分光光度計で分析し、希薄溶液の吸光度を検出する。モノマー濃度は30μMで、選択した溶媒はN,N-ジメチルホルムアミドである。
CIELAB色空間:
【0030】
調製された真性黒色ポリイミドフィルムの反射率は、米国PerkinElmer会社のLAMBDA950UV/Vis/NIR分光光度計で試験される。組み込みの変換式と、使用されるCIE標準光源D65の相対スペクトル関数分布及びCIE1976標準色度オブザーバーを組み合わせることにより、L*、a*、b*パラメーター値が色域変換計算によって得られる。採用される光源は標準光源D65で、観測角度は10°である。
熱性能分析(TGA&DMA&TMA):
【0031】
真性黒色ポリイミドフィルムの熱重量分析は、窒素保護下でTA Discovery 550型熱重量分析装置(TGA)で実行され、ガス流量は50mL/minであり、温度を20℃/minで室温から120℃まで上昇させ、15分間滞在した後、温度を10℃/minで50℃から800℃に上昇させた。
【0032】
ガラス転移温度(Tg)は、TA Q800動的熱機械分析装置(DMA)で実行され、真性黒色ポリイミドフィルムを同じ幅(0.5cm)の長方形のストリップにカットし、負荷周波数を1Hzに設定し、窒素保護下で温度を5℃/minの速度で30℃から500℃に上昇させる。
【0033】
真性黒色ポリイミドフィルムの熱寸法安定性は、引張モードのTAQ 400熱機械分析装置(TMA)で、温度の上昇に伴うストリップサイズの変化を測定することにより分析した。真性黒色ポリイミドフィルムを均一な幅(0.5cm)の細長いストリップに調製し、静的負荷は0.05N、昇温速度は10℃/min、昇温範囲は室温から400℃、窒素流量は50mL/minでした。プログラム昇温ステップは2つの部分に分かれており、1番目のステップは、同じ速度で昇温してから冷却し、熱イミド化中のフィルムの残留内部応力を除去することであり、2番目のステップは400℃までの加熱の曲線データを記録する。
機械的特性分析:
【0034】
真性黒色ポリイミドフィルムの機械的特性は、三思泰捷SUST CMT1104電子万能試験機によって測定された。サンプルは幅1cmの長方形のストリップにカットされ、引っ張り速度は5mm/minであり、ASTM D882-02試験基準に従って、複数の有効な試験結果の平均値を取った。
誘電性能分析:
【0035】
真性黒色ポリイミドフィルムの誘電特性は、カナダKeysight N5227Bネットワークアナライザーによって測定され、辺の長さが3*4mmを超える長方形のサンプルを準備して誘電率及び誘電損失の試験を行った。サンプルは80℃で2時間乾燥した後、センサーに配置し、テスト周波数を選択してテストに供した。テスト周波数は24GHz、40GHz、及び60GHzであり、サンプルの厚さは25ミクロン、媒体は空気であった。
モノマー合成実施例
実施例1
【0036】
三口フラスコに1,8-ジヒドロキシ-9,10-アントラキノン(1.0mmol)を加え、0℃で5mlの濃硫酸と4mlの濃硝酸を加え、4時間激しく機械的に攪拌した後、砕いた氷に注ぎ、吸引濾過で溶媒を除去し、固体物質を水/飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、真空中で一晩乾燥させて、黄色の粗生成物1を得た。
【0037】
粗生成物1を、シリカゲルクロマトグラフィー(ショートカラム)により精製し、溶離液(メタノール)で溶出して、黄色の生成物1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラニトロ-9,10-アントラキノンを得た。
【0038】
上記の黄色の生成物(1mmol)を秤量し、フラスコ内でエタノールに溶解し、Na2S・9H2O(8mmol)を秤量し、蒸留水で飽和状態まで溶解し、フラスコに加えた。混合物を12時間還流反応させ;室温に冷却した後、それを、準備した氷水混合物に注ぎ、絶えず撹拌していた。濾過後、水で洗浄し、一晩真空乾燥して、黒色の目的生成物である1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンが得られた。
【0039】
上記のモノマーの紫外線吸収スペクトルと赤外スペクトルを測定し、その結果をそれぞれ
図1と
図2に示す。
図1に示すように、モノマーは400-700nmの可視光帯域において強い吸収を示し、同時に、半値幅は150nm近くに達し、それ自体の平面共役構造と分子内水素結合の影響と相まって、モノマーは黒色を呈することとなる。
図2に示すように、3500-3200cm
-1にある赤外線吸収ピークは、オルトアミノ基とパラアミノ基に順番に属することができ、ピークのシフトとピークの広がりは両方とも、後者に分子内水素結合があること、つまり、2つのアミノ基の間に反応性に違いがあることを示している。同時に、1567cm
-1に現れたカルボニルピークは、分子内にさまざまな水素結合があること、つまり、カルボニル基がヒドロキシル基及びパラアミノ基と分子内水素結合を形成していることも示している。この異常な水素結合により、通常1700cm
-1付近に現れるカルボニルピークが1567cm
-1に低下した。
アミノ基間のこの活性の違いは、
図3でも確認されており、つまり、オルトアミノ水素のNMRピークはより高い磁場で現れる。
実施例1による1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンのモル吸光係数も測定された。
【0040】
モル吸光係数の計算方法は次のとおりである。
モル吸光係数とは、濃度が1mol/Lのときの吸光係数を指し、εで表される。その計算式は次のとおりである。
ここで、Aは紫外分光光度計で測定される紫外吸光度、εはモル吸光係数、bは吸収セルの厚さ、cは測定しようとする液体のモル濃度である。
【0041】
従って、1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンの紫外吸収スペクトルと組み合わせると、最大吸収波長λmaxでのモル吸光係数は約105L/(mol・cm)になり、ここで、測定しようとする液体のモル濃度は30μM、吸収セルの厚さは1cm、最大吸収波長での吸光度は0.296であり、このとき、当該希釈溶液はまだ濃い青色に見え、モル吸光係数が十分に強い、と分かる。
実施例2
【0042】
三口フラスコに1,8-ジヒドロキシ-4,5-ジニトロ-9,10-アントラキノン(1.0mmol)を加え、0℃で3mlの濃硫酸と2mlの濃硝酸を加え、4時間激しく機械的に攪拌した後、砕いた氷に注ぎ、吸引濾過で溶媒を除去し、固体物質を水/飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、真空中で一晩乾燥させて、黄色の粗生成物1を得た。
【0043】
粗生成物1をメタノールに溶解し、次にシクロヘキサンを加えて再結晶化して、黄色の生成物1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラニトロ-9,10-アントラキノンを得た。
【0044】
上記の黄色の生成物(1mmol)を秤量し、フラスコ内でN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、そして0.01gのパラジウム炭素を秤量してフラスコに加えた。混合物を水素雰囲気下で標準大気圧で12時間還流し反応させ;室温に冷却した後、準備した水に注ぎ、絶えず撹拌していた。濾過後、水で洗浄し、一晩真空乾燥して、黒色の目的生成物である1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンが得られた。
上記のモノマーの紫外線吸収スペクトルと赤外スペクトルを測定し、その結果をそれぞれ
図1と
図2に示す。
上記の精製及び還元手段は、実施例1の精製及び還元手段と交換可能に使用することができる。
【0045】
真性黒色ポリイミドの調製実施例
実施例3
本実施例は、真性黒色ポリイミドPI-1の合成に関するものである。
【0046】
モル比が4:96である1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンとODA(4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、及びPMDA(ピロメリット酸二無水物)によって黒色ポリイミドフィルムを調製し、固形分が15.3%であった。前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーと前記ジアミンモノマーの、反応に関与するアミン基の総モル数と、前記酸無水物モノマーの、反応に関与するカルボン酸無水物基の総モル数との比は1:1であった。
【0047】
窒素導入口、メカニカルスターラー、及び冷水浴を備えた100mLの三口丸底フラスコに、十分な水と酸素の除去及び窒素保護の条件下で、0.36mmolの目的モノマー、5.64mmolのODA、及び10mlのDMAcを加え、溶解して均一な溶液を形成するまで撹拌した;上記の溶液に合計6mmolのPMDAを3回加え、冷水浴中で14時間撹拌し、反応させた後、特定の粘度を有する黒色のポリアミック酸溶液が得られた。
【0048】
上記ポリアミック酸溶液を、脱泡後、自動フィルムコーティング機によって乾燥した清浄なガラス板上に均一に塗布し、熱イミド化法を採用してイミド化反応を実施した。昇温硬化の手順は以下の通りである:80℃/3時間、100℃/1時間、200℃/2時間、300℃/4時間。
実施例4
本実施例は、真性黒色ポリイミドPI-2の合成に関するものである。
【0049】
モル比が6:94である1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンとODA(4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、及びPMDA(ピロメリット酸二無水物)によって黒色ポリイミドフィルムを調製し、固形分が15.3%であった。前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーと前記ジアミンモノマーの、反応に関与するアミン基の総モル数と、前記酸無水物モノマーの、反応に関与するカルボン酸無水物基の総モル数との比は1:1であった。
【0050】
窒素導入口、メカニカルスターラー、及び冷水浴を備えた100mLの三口丸底フラスコに、十分な水と酸素の除去及び窒素保護の条件下で、0.36mmolの目的モノマー、5.64mmolのODA、及び10mlのDMAcを加え、溶解して均一な溶液を形成するまで撹拌した;上記の溶液に合計6mmolのPMDAを3回加え、冷水浴中で14時間撹拌し、反応させた後、特定の粘度を有する黒色のポリアミック酸溶液が得られた。
【0051】
上記ポリアミック酸溶液を、脱泡後、自動フィルムコーティング機によって乾燥した清浄なガラス板上に均一に塗布し、熱イミド化法を採用してイミド化反応を実施した。昇温硬化の手順は以下の通りである:80℃/3時間、100℃/1時間、200℃/2時間、300℃/4時間。
実施例5
本実施例は、真性黒色ポリイミドPI-3の合成に関するものである。
【0052】
モル比が8:92である1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンとODA(4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、及びPMDA(ピロメリット酸二無水物)によって黒色ポリイミドフィルムを調製し、固形分が15.3%であった。前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーと前記ジアミンモノマーの、反応に関与するアミン基の総モル数と、前記酸無水物モノマーの、反応に関与するカルボン酸無水物基の総モル数との比は1:1であった。
【0053】
窒素導入口、メカニカルスターラー、及び冷水浴を備えた100mLの三口丸底フラスコに、十分な水と酸素の除去及び窒素保護の条件下で、0.36mmolの目的モノマー、5.64mmolのODA、及び10mlのDMAcを加え、溶解して均一な溶液を形成するまで撹拌した;上記の溶液に合計6mmolのPMDAを3回加え、冷水浴中で14時間撹拌し、反応させた後、特定の粘度を有する黒色のポリアミック酸溶液が得られた。
【0054】
上記ポリアミック酸溶液を、脱泡後、自動フィルムコーティング機によって乾燥した清浄なガラス板上に均一に塗布し、熱イミド化法を採用してイミド化反応を実施した。昇温硬化の手順は以下の通りである:80℃/3時間、100℃/1時間、200℃/2時間、300℃/4時間。
実施例6
本実施例は、真性黒色ポリイミドPI-4の合成に関するものである。
【0055】
モル比が10:90である1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンとODA(4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、及びPMDA(ピロメリット酸二無水物)によって黒色ポリイミドフィルムを調製し、固形分が15.3%であった。前記アントラキノン誘導体テトラアミンモノマーと前記ジアミンモノマーの、反応に関与するアミン基の総モル数と、前記酸無水物モノマーの、反応に関与するカルボン酸無水物基の総モル数との比は1:1であった。
【0056】
窒素導入口、メカニカルスターラー、及び冷水浴を備えた100mLの三口丸底フラスコに、十分な水と酸素の除去及び窒素保護の条件下で、0.36mmolの目的モノマー、5.64mmolのODA、及び10mlのDMAcを加え、溶解して均一な溶液を形成するまで撹拌した;上記の溶液に合計6mmolのPMDAを3回加え、冷水浴中で14時間撹拌し、反応させた後、特定の粘度を有する黒色のポリアミック酸溶液が得られた。
【0057】
上記ポリアミック酸溶液を、脱泡後、自動フィルムコーティング機によって乾燥した清浄なガラス板上に均一に塗布し、熱イミド化法を採用してイミド化反応を実施した。昇温硬化の手順は以下の通りである:80℃/3時間、100℃/1時間、200℃/2時間、300℃/4時間。
実施例7
【0058】
モル比が80:20である1,8-ジヒドロキシ-2,4,5,7-テトラアミノ-9,10-アントラキノンとODA(4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、及びPMDA(ピロメリット酸二無水物)によって黒色ポリイミドフィルムを調製し、固形分が15.3%であった。前記テトラアミンモノマーと前記ジアミンモノマーの、反応に関与するアミン基の総モル数と、前記酸無水物モノマーの、反応に関与するカルボン酸無水物基の総モル数との比は1:1であった。
【0059】
窒素導入口、メカニカルスターラー、及び冷水浴を備えた100mLの三口丸底フラスコに、十分な水と酸素の除去及び窒素保護の条件下で、0.36mmolの目的モノマー、5.64mmolのODA、及び10mlのDMAcを加え、溶解して均一な溶液を形成するまで撹拌した;上記の溶液に合計6mmolのPMDAを3回加え、冷水浴中で14時間撹拌し、反応させた後、特定の粘度を有する黒色のポリアミック酸溶液が得られた。
【0060】
上記ポリアミック酸溶液を、脱泡後、自動フィルムコーティング機によって乾燥した清浄なガラス板上に均一に塗布し、熱イミド化法を採用してイミド化反応を実施した。昇温硬化の手順は以下の通りである:80℃/3時間、100℃/1時間、200℃/2時間、300℃/4時間。
【0061】
実施例6の真性黒色ポリイミドと比較して、実施例7の真性黒色ポリイミドは、光学特性が低く、弾性率が増加し、破断点伸び率及び引張強度が低下し、誘電特性がほとんど変化していなかった。
比較例1
本実施例はPMDA-ODAタイプのPI膜の合成に関するものである。
【0062】
モル比が1:1であるODA(4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)とPMDA(ピロメリット酸二無水物)によってカプトン型ポリイミドフィルムを調製し、固形分が15.1%であった。前記ジアミンモノマーのアミン基の総モル数と前記酸無水物モノマーのカルボン酸無水物基の総モル数との比は1:1であった。
【0063】
窒素導入口、メカニカルスターラー、及び冷水浴を備えた100mLの三口丸底フラスコに、十分な水と酸素の除去及び窒素保護の条件下で、6mmolのODA及び10mlのDMAcを加え、溶解して均一な溶液を形成するまで撹拌した;上記の溶液に合計6mmolのPMDAを3回加え、冷水浴中で14時間撹拌し、反応させた後、特定の粘度を有する淡黄色のポリアミック酸溶液が得られた。
【0064】
上記ポリアミック酸溶液を、脱泡後、自動フィルムコーティング機によって乾燥した清浄なガラス板上に均一に塗布し、熱イミド化法を採用してイミド化反応を実施した。昇温硬化の手順は以下の通りである:80℃/3時間、100℃/1時間、200℃/2時間、300℃/4時間。
比較例2
比較例2は、寧波今山から購入した、明るい表面でドープされた黒色フィルム、品番BY112である。
比較例3
比較例3は、寧波今山から購入した、マットでドープされた黒色フィルム、品番BY112である。
特性評価
【0065】
実施例3-6及び比較例1-3によるポリイミドの紫外線吸収スペクトル及びLAB値、誘電特性、熱特性及び機械的特性を測定し、試験結果を以下の表1-4に示す。
【0066】
表1 実施例3-6及び比較例1-3のポリイミドの600nmにおける透過率T
600(%)及びLAB値。
【0067】
表2 実施例3-6及び比較例1-3のポリイミドの熱特性データ及び機械的特性データ
【0068】
表3 実施例3-6及び比較例1-3のポリイミドの機械的特性データ
【0069】
表4 実施例3-6及び比較例1-3のポリイミドの誘電特性データ
【0070】
上記のデータから、本開示に記載されているアントラキノン誘導体テトラアミンモノマーが全アミンモノマーのモル数の4%以上を占める場合、調製された黒色ポリイミドは良好な遮光性能を有し、優れた機械的特性、熱安定性、及び誘電特性を有し、かつ全波長帯における光透過率は1%未満であることがわかる。
【0071】
実施例の上記の説明は、当業者が本出願を容易に理解し、適用するために開示されるものである。これらの実施例に様々な修正を容易に行うことができ、かつ本明細書に記載の一般原理を、創造的な労働を払わずに他の実施例に適用できることは当業者にとっては明らかである。従って、本出願は、本明細書の実施例に限定されず、当業者は、本出願に開示された内容に基づいて、本出願の範囲及び精神から逸脱することなく行われた改善と変更は、本出願の範囲内にある。