(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048942
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 47/20 20060101AFI20230331BHJP
B24B 5/04 20060101ALI20230331BHJP
B24B 5/08 20060101ALI20230331BHJP
B23Q 5/22 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
B24B47/20
B24B5/04
B24B5/08
B23Q5/22 530H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158546
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000174987
【氏名又は名称】三井精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098279
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 聖
(72)【発明者】
【氏名】浅井 岳見
(72)【発明者】
【氏名】永峯 良明
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
【Fターム(参考)】
3C034AA01
3C034AA05
3C034BB27
3C034BB30
3C034BB37
3C034BB92
3C034CA24
3C034CB01
3C034DD07
3C043AA01
3C043AB03
3C043AB05
3C043CC03
3C043DD02
(57)【要約】
【課題】研削装置及びその制御方法において、オーバライド指令変更時の切込過ぎ緩和機能を実現する技術を提供する。
【解決手段】オーバライドスイッチの操作時にそれをそのまま制御装置に適用するのではなく一旦 砥石回転装置を直線軸で半径方向に研削対象から遠い方向に送りオーバライドを適用させ徐々に元の座標に戻すという操作を自動で行う機能を用意する。さらに、前述の装置を動かすために外側を研削しているか内側を研削しているかの判断を直前の自動切込装置の動作と円弧補間の回転方向の指令の種類を込み合わせて自動で判断する仕組みを備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥石をつけた砥石回転装置を直線軸で半径方向に送ったり固定したりできる自動切込装置を有し、さらに前記砥石回転装置及び自動切込装置を含む装置ごと別の回転装置で回すことができる研削装置で、2軸以上の同期制御を用いた円弧補間により円の内面ないし外面の研削を行うことができる研削装置であって、この研削加工中に前記別の回転装置を用いて前記自動切込装置が前記砥石回転装置を直線に送る方向を円弧の法線方向にそろえることができるように構成された研削装置で、円弧補間の送り速度をオーバライドスイッチで操作者が自由に変更できるように構成された研削装置において、前記オーバライドスイッチの操作時に、オーバライド指令を直ちに制御装置に適用するのではなく、一旦、前記自動切込装置で前記砥石回転装置を前記自動切込装置で研削対象から遠い方向に送り、その後、オーバライドを適用させることを特徴とする研削装置。
【請求項2】
砥石をつけた砥石回転装置を直線軸で半径方向に送ったり固定したりできる自動切込装置を有し、さらに前記砥石回転装置及び自動切込装置を含む装置ごと別の回転装置で回すことができる研削装置で、2軸以上の同期制御を用いた円弧補間により円の内面ないし外面の研削を行うことができる研削装置で、この研削加工中に前記別の回転装置を用いて前記自動切込装置が前記砥石回転装置を直線に送る方向を円弧の法線方向にそろえることができるように構成された研削装置であって、円弧補間の送り速度をオーバライドスイッチで操作者が自由に変更できるように構成された研削装置において、前記オーバライドスイッチの操作時に、オーバライド指令を直ちに制御装置に適用するのではなく、一旦、前記自動切込装置で前記砥石回転装置を直線軸で半径方向に研削対象から遠い方向に送り、その後、オーバライドを適用させ時間の経過とともに徐々に元の座標に戻すという操作を自動で行う機能を有することを特徴とする研削装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の研削装置において、さらに、外側を研削している時と内側を研削している時では逃がす方向を変えることが可能に構成されていることを特徴とする研削装置。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の研削装置において、さらに、外側を研削しているか内側を研削しているかの判断を直前の前記自動切込装置の動作と前記円弧補間の回転方向の指令の種類を込み合わせて自動で判断する仕組みを備えることを特徴とする研削装置。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の研削装置において、逃がしでは前記自動切込装置の動作履歴をさかのぼる方向へ向かって送ることを特徴とする研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置(及びその制御方法)に関し、特に、ジグ研削盤などの砥石をつけた砥石回転装置を切込装置と称す直線軸で半径方向に送ったり固定したりでき、さらにそれらの装置ごと別の回転装置で回すことで円の内面ないし外面の研削を行うことができる研削装置で、さらにこの別の回転装置ごとX-Y-Z三軸の座標空間を送り装置で同時制御するとこができる研削装置(及びその制御方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
ジグ研削盤による加工対象物(以下、「ワーク」と称する)の研削は、例えばいわゆるシングルコラム方式の機械においては、テーブル上に載置されたワークを滑台により前後(Y軸方向)、左右(X軸方向)に移動させつつ、砥石とそれを回転させるための高周波モータが下端に取り付けられた、いわゆるクイルを上下動(Z軸方向)させることにより実現される。なお、いわゆるダブルコラム方式(門形機)のジグ研削盤の場合は、ワークはX軸方向のみに移動させ、Y軸方向については、砥石側(主軸本体)を移動させる。X軸やY軸やZ軸などという軸方向の命名は機械の製作者によって入れ替え可能であることは言うまでもない。
【0003】
また、更に詳細には、大別して次の二通りの研削がある。一つは、主軸に対して砥石の回転軸(砥石軸)を偏心させる(切り込ませる)ことにより、砥石を砥石軸について回転させつつ主軸の連続回転により砥石を旋回させ、すなわち砥石を遊星回転させ、また同時に、クイルを上下動させることにより、砥石を螺旋状に旋回させ、内壁の均等研削による真円の穴ぐり加工を行う研削である。この場合、基本的に、砥石外径の大きさと砥石軸の偏心の程度(切り込み量(例えば最大50mm)に応じて、穴の径が決定されることとなる。他の一つは、曲率が一定でない非真円の穴ぐり加工や曲率が一定でない端部の加工を行う研削である。この場合は、いわゆるチョッピング加工を行う。詳細には、砥石軸は偏心させないか、又は主軸回転中心と砥石の外周とが一致するように砥石の半径相当分だけ砥石を上述の切り込みとは逆方向(マイナス方向)偏心させておき、まず、ワークの加工位置(研削点)までの移動は、X,Y軸送りにより行う。その後、正味切り込み加工分だけ自動で砥石を偏心させ、すなわち自動切り込みを行いつつチョッピング加工を行う。このとき、曲率が一定でないワークの加工面に砥石により切り込む際に、ワークが当接する加工点における法線が、砥石の切り込み方向と常に一致するように、主軸の角度制御(割り出し)を行う。特許文献1は、かかるジグ研削盤の主要構成を開示している。但し、特許文献1は砥石を上下させる構成は省略している。ここでは、直線の往復運動をチョッピングと呼んでいるのであって一般的なチョッピング加工で使われる往復速度の遅い・速いについて制限を設けた定義はしない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したジグ研削盤では、CNCの機能の選択や制御ソフトの作り方によって、例えば、オーバライドスイッチを動作させた直後やオシレーション範囲・速度・中心位置の設定変更させた直後はその後よりも先の面に近づくことがある。そこで,チョッピングおよびオシレーション研削中におけるオーバライドスイッチを含むオシレーション範囲・速度・中心位置の設定変更の際に一瞬だけ砥石の往復範囲の端と研削面の先の面を引き離す指令を重畳させ、しかる後にオーバライドスイッチや前述の設定変更を適用し、往復回数とともに徐々に通常の位置に戻すことにより、往復の範囲の向こう側にある面に砥石が衝突することを防止するソフトウェアまたは機械装置の開発が望まれており、本発明者らは、かかる要望に答える研削装置やその制御方法を特願2018-160030及び特願2019-107534として出願している。
【0006】
上述した送り装置は、例えば2軸例えば(X-Y)平面内で円弧補間を行いながら別の回転装置を使って、切込装置を法線方向、外側または内側、に向けるように加工することで、切込装置の送りの範囲を超える大きさの加工も可能である。また、円弧補間の速度はオーバライドスイッチにより作業者が自由にする倍率を変えられるとするものが多い。
しかしながら、円弧補間の速度を変更してしまうとサーボ系の次数およびフィードフォワード制御の有無に応じた偏差を生じるとともに、遠心力などにより切込過ぎを生じる可能性がある。また、オーバライドスイッチの操作直後に、特に急激な変化時に切込過ぎを感じる可能性がある。
ここで、例えば、サーボだけでも典型的な工作機械用のサーボ制御系での半径の減少ΔRは、速度ループ・電流ループの応答が十分に高速で補間後直線型加減速を使用する場合なら、以下の数式(2)のように近似される。
【数1】
【0007】
本発明の目的は、研削装置及びその制御方法において、オーバライド指令変更時の切込過ぎ緩和機能を実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、オーバライド指令変更時の切込過ぎ緩和機能を実現する研削装置及びその制御方法の構成について、鋭意研究した結果、オーバライドスイッチの操作時にそれをそのまま制御装置に適用するのではなく、一旦 砥石回転装置を切込装置で研削対象から遠い方向に送りオーバライドを適用させることを想到した。または、オーバライドスイッチの操作時にそれをそのまま制御装置に適用するのではなく一旦 砥石回転装置を直線軸で半径方向に研削対象から遠い方向に送りオーバライドを適用させ徐々に元の座標に戻すという操作を自動で行う機能を用意することを想到した。
【0009】
さらに、外側を研削している時と内側を研削している時では逃がす方向を変えることができるようにすれば好適であることも見出した。
【0010】
さらに、前述の装置を動かすために外側を研削しているか内側を研削しているかの判断を直前の自動切込装置の動作と円弧補間の回転方向の指令の種類を組み合わせて自動で判断する仕組みを備えるようにしても良い。
【0011】
尚、逃がしでは自動切込装置の動作履歴をさかのぼる方向へ向かって送るのが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、研削装置及びその制御方法において、オーバライド指令変更時の切込過ぎ緩和機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明が適用される研削装置の一例としてのジグ研削盤を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した研削装置(ジグ研削盤)を各軸の移動又は旋回方向と共に説明するための図である。
【
図3】
図1に示した研削装置(ジグ研削盤)におけるU軸送り装置と砥石軸周辺の拡大図である。
【
図4】
図1に示した研削装置(ジグ研削盤)における回転する砥石によるワークの加工と、U軸、Z軸それぞれの軸移動の関係を示す図である。
【
図5】
図1に示した研削装置(ジグ研削盤)の制御系の概略を示すブロック図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態の研削装置及びその制御方法において、オーバライド指令、実回転速度、自動切込位置の関係を示すグラフである。
【
図7】本発明の第1の実施形態の研削装置における加工プロセス開始から終了までの制御処理のフローチャートである。
【
図8】
図1に示した研削装置(ジグ研削盤)の円弧補間の制御系の概略を示す機能ブロック図である。
【
図9】一般的な円弧補間の制御系の概略を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明の理解を容易にするために、本発明が適用される研削装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明が適用される研削装置の一例を示す斜視図、
図2は、その研削装置を各軸の移動又は旋回方向と共に説明するための図であり、ヘッドに対してU軸送り装置をZ軸直線移動とZ軸周り旋回(C軸と呼称)に旋回させられる。U軸送り装置は砥石軸をU軸方向に直線移動できる。各軸は複数の平行軸を組み合わせたものでも良い。
図3は、その研削装置(ジグ研削盤)におけるU軸送り装置と砥石軸周辺の拡大図、
図4は、その研削装置(ジグ研削盤)における回転する砥石によるワークの加工と、U軸、Z軸それぞれの軸移動の関係を示す図である。本発明が適用される研削装置(ジグ研削盤)10は、
図1に示すように、ベッド12上にテーブル送り装置36およびテーブル30がレール16を介してY軸方向(前後方向)へ移動可能に支持されている。コラム14はベッド12に固定されているが、送り装置36との間にはレール16に沿った方向に相対運動を与えることができる。ベッド12の後部には図示しない送り装置36移動用モータが配設され、このモータにより図示しないボールネジ等を介してテーブル送り装置36がレール16に沿って前後移動されるようになっている。コラム14にはヘッド18がW軸方向に移動可能(昇降可能)に支持され、そのヘッド18の先端には砥石軸20が設けられており、砥石軸20の先端には、砥石100(
図3参照)が取付けられる。コラム14の上部には図示しないヘッド昇降用モータが配設され、このモータにより図示しないボールネジ等を介してヘッド18が昇降されるようになっている。ヘッド18の内部や後部には砥石軸回転用モータ(
図5の302のうちCモータ)が配設され、このモータにより砥石軸20が回転されるようになっている。ヘッド昇降用モータには、図示しない計測手段を構成するエンコーダが付設される。このほかの砥石軸を除く直線軸および回転軸には図示しない場合にもエンコーダおよびモータを備え送り量ないし回転量が算出・制御できるようになっている。このエンコーダから出力されるデータによりヘッド18の昇降量、及び後述するワーク(
図4参照)に対する切り込み量が算出される。W軸方向に平行にZ軸が設けられており、W軸のヘッドの動き、C軸回転およびU軸直線運動を妨げることなくZ軸運動を与えることができる。
【0015】
先に述べた通り、ベッド12上にはレール16を介してY軸送り装置36が載っている。このY軸送り装置36はレール16の方向に沿ってY軸方向に前後直線運動できるように構成されている。このY軸送り装置36の上に更に図示しないレールを介してテーブル30が支持されている。このテーブル30はY軸送り装置36に対して左右方向(X軸方向)に直線運動できるように構成されている。その上面には図示しないワークが着脱可能に設置固定されるようになっている。当然ながらベッド12にはY軸送り装置36を移動する用のモータが配設され、このモータにより図示しないボールネジ等を介してY軸送り装置36がレール16に沿って移動されるようになっている。テーブル30についても同様に図示しないモータおよびボールネジ等を介してY軸送り装置36上を動くようになっている。そして、上記砥石軸回転用モータにより砥石軸20が回転された状態で、上記ヘッド昇降用モータによりヘッド18(砥石軸20)が下降されて、砥石軸20の先端に取り付けられた砥石100がテーブル30上のワークの面に接触させられる。テーブル30は上述の2つのモータでX-Y方向に自由に可動させられる。これにより、ワークの表面が砥石100にて研削されるようになっている。尚、研削装置10は、各種の操作用スイッチ類またはそれに類する入力機器を備え、動作中にその状態を操作者の操作で変更できるように構成され、また砥石100とワークとの接触検知手段としての図示しないAE(アコースティックエミッション)センサをワーク側に備えている。そして、AEセンサによりワークと砥石100との接触を検知したら、操作者にそれを表示するか、スキップ信号により砥石100の送りを止めることができるように構成されている。
【0016】
図1に示す工作機械(研削装置)10は、以上に述べたように、少なくともX-Y-Zの三軸の同時制御ができるCNC制御の工作機械(研削装置)であり、更に、砥石軸20という回転軸と軸方向が平行な駆動軸(回転軸[C軸]又は直線駆動軸)を有している。即ち、工作機械(研削装置)10は、ヘッド18の下部にU軸送り装置40を有しており、このU軸送り装置40は、砥石軸20と、その上部の円盤体27を含む直線送り機構であり、砥石軸20とその上部の円盤体27を、その時のC軸の角度位置に応じて所定のストロークの範囲内で直線移動させる装置であり、この直線移動方向をU軸(方向)と定義している。即ち、
図1に示す工作機械(研削装置)10では、ヘッド18は、Z軸方向に直線移動(上下移動)できる。Z軸との区別のため、W軸送り装置と呼称する。また、ヘッド18に対して、U軸送り装置40をZ軸直線移動とZ軸周り旋回(C軸と呼称する)に旋回させることができる。U軸送り装置40は、砥石軸20をU軸方向に直線移動させることができる。
図2及び
図3を参照して、工作機械(研削装置)10の駆動軸制御を更に具体的に述べれば、工作機械(研削装置)10では、U軸の直線送り機構はC軸の回転側に載っている。砥石軸(U軸)の送り指令によって、U軸送り装置40をU軸の方向に沿って直線移動させることができる。C軸の回転指令によって砥石軸20の中心ごと回転する。更に、このC軸装置は、Z軸装置で鉛直方向に直線移動させることができる。
【0017】
図5は、
図1に示したジグ研削盤の制御系の概略を示すブロック図である。本発明に係るジグ研削盤は、制御系として、制御装置300と、入出力装置310と、各軸モータ320及びそれぞれのモータドライバ330、砥石回転モータ102Aと砥石モータインバータ102invを有している。制御装置300は、コンピュータ数値制御部(CNC)302と、プログラマブルコントローラ304と、I/O(入出力)モジュール306を有している。本発明に係るジグ研削盤の制御系には、入出力装置310として、キーボード、各種スイッチ、温度センサ等と、スキップ信号に関わるツールセッタ、AEセンサ等も有している。
【0018】
ここで、改めて従来例の問題点を説明しておく。
図1乃至
図5に示した研削装置(ジグ研削盤)10において、上述した送り装置は、例えば2軸、例えば(X-Y)平面内で円弧補間を行いながら別の回転装置(C軸回転装置)を使って、自動切込装置104(U軸送り装置40に相当する、以下同様)を法線方向、外側または内側、に向けるように加工することで、自動切込装置104の送りの範囲を超える大きさの加工も可能である。また、円弧補間の速度はオーバライドスイッチにより作業者が自由にする倍率を変えられるとするものが多い。しかしながら、円弧補間の速度を変更してしまうとサーボ系の次数およびフィードフォワード制御の有無に応じた偏差を生じるとともに、遠心力などにより切込過ぎを生じる可能性がある。また、オーバライドスイッチの操作直後に、特に急激な変化時に切込過ぎを感じる可能性がある。
【0019】
そこで、本発明の実施形態の研削装置及びその制御方法においては、オーバライドスイッチの操作時にそれをそのまま制御装置300(
図5参照)に適用するのではなく、一旦 砥石回転装置102を自動切込装置104で研削対象から遠い方向に送りオーバライドを適用させることとした。または、オーバライドスイッチの操作時にそれをそのまま制御装置300(
図5参照)に適用するのではなく一旦 砥石回転装置102を直線軸(U軸)で半径方向に研削対象から遠い方向に送りオーバライドを適用させ徐々に元の座標に戻すという操作を自動で行う機能を用意することとした。さらに、外側を研削している時と内側を研削している時では逃がす方向を変えることができるようにすれば好適である。さらに、前述の装置を動かすために外側を研削しているか内側を研削しているかの判断を直前の自動切込装置104の動作と円弧補間の回転方向の指令の種類を込み合わせて自動で判断する仕組みを備えるようにしても良い。尚、逃がしでは自動切込装置104の動作履歴をさかのぼる方向へ向かって送るのが好適である。
【0020】
即ち、本発明の実施形態の研削装置10は、砥石100をつけた砥石回転装置102を直線軸(U軸)で半径方向に送ったり固定したりできる自動切込装置104を有し、更に、砥石回転装置102や自動切込装置104を含む装置ごと回転装置(C軸回転装置)106で回すことができる研削装置で、2軸以上の同期制御を用いた円弧補間により研削対象の円(厚みを考慮すれば円筒形)の内面ないし外面の研削を行うことができる研削装置であって、この研削加工中に回転装置(C軸回転装置)106を用いて自動切込装置104が砥石回転装置102を直線に送る方向を円弧の法線方向にそろえることができるように構成された研削装置で、円弧補間の送り速度をオーバライドスイッチで操作者が自由に変更できるように構成された研削装置において、このオーバライドスイッチの操作時にオーバーライド指令を直ちに制御装置300に適用するのではなく、一旦 自動切込装置104で砥石回転装置102を自動切込装置104で研削対象から遠い方向に送り、その後、オーバライドを適用させることを特徴とする。
【0021】
また、砥石100をつけた砥石回転装置102を直線軸(U軸)で半径方向に送ったり固定したりできる自動切込装置104を有し、さらに砥石回転装置102や自動切込装置104を含む装置ごと回転装置(C軸回転装置)106で回すことができる研削装置で、2軸以上の同期制御を用いた円弧補間により円の内面ないし外面の研削を行うことができる研削装置で、この研削加工中に回転装置(C軸回転装置)106を用いて自動切込装置104が砥石回転装置102を直線に送る方向を円弧の法線方向にそろえることができるように構成された研削装置で、円弧補間の送り速度をオーバライドスイッチで操作者が自由に変更できるように構成された研削装置において、このオーバライドスイッチの操作時に、オーバーライド指令を直ちに制御装置300に適用するのではなく、一旦 自動切込装置104で砥石回転装置102を直線軸で半径方向に研削対象から遠い方向に送りオーバライドを適用させ、時間の経過とともに徐々に元の座標(CNC制御の目標座標)に戻すという操作を自動で行う機能を用意していることを特徴とする。
【0022】
上記研削装置10において、更に、研削対象の外側(外周面加工時等)を研削している時と内側(内周面加工時等)を研削している時では、上記の逃がす方向を変えるようにしても良い。また、上記研削装置10において、さらに、外側を研削しているか内側を研削しているかの判断を直前の自動切込装置104の動作と円弧補間の回転方向の指令の種類を込み合わせて自動で判断する仕組みを備えるようにしても良い。 さらに、上記研削装置10において、逃がしでは自動切込装置104の動作履歴をさかのぼる方向へ向かって送るようにしても良い。
【0023】
図6は、本発明の実施形態の研削装置及びその制御方法における(a)オーバライド指令、(b)自動切込位置、(c)実回転速度の関係を示すグラフである。本発明の実施形態の研削装置及びその制御方法では、
図6(a)に示すように、オーバライドスイッチが操作された時点で、
図6(b)に破線で示すように、直ちに(制御装置300(
図5参照)に)適用するのではなく、一旦自動切込装置104による自動切込位置を半径方向に研削対象から遠い方向に送り、徐々に元の(座標の)指令位置に戻す操作とすることで、
図6(c)に示すように、実回転速度もその分遅れて追いついてくるようになる。
【0024】
また、
図7は、本実施形態の研削装置における加工プロセス開始から終了までの制御処理のフローチャートである。即ち、本実施形態の研削装置において加工プロセスが開始され(S701)、加工中にオーバライドスイッチの操作等がありオーバライド変化が生じるかチェックし(S702)、速度変化が生じるか否かを判定する(S703)。速度変化が生じる場合は(S703でYES)、その時点で残っている逃がし量に対する逃がし加算量を計算し(S704)、逃がし方向を判断し(S705)、逃がし加算操作を実行し(S706)、速度が変更される(S707)。この変更された速度で切込が行われ、C軸の回転が終了したか否かを判定し(S708)、C軸の回転が終了した場合は(S708でYES)、加工プロセスが終了する(S709)。一方、C軸の回転が終了していなければ(S708でNO)、S702に戻る。また、上述したS703の判定で速度変化が無い場合は(S703でNO)、逃がし減衰操作を実行し(S710)、S708に至る。
【0025】
図8(a)は、
図7に示した加工プロセス開始から終了までの制御処理のメインフローを示し、
図8(b)は、さらに、外側を研削しているか内側を研削しているかの判断を直前の自動切込装置104の動作と円弧補間の回転方向の指令の種類を込み合わせて自動で判断する制御処理のフロー、
図8(c)は、逃がしでは自動切込装置104の動作履歴をさかのぼる方向へ向かって送るようにする制御処理を示す図である。
図8(a)のメインフローについては、
図7を用いて説明した通りである。本実施形態の研削装置では、
図7のS705における逃がし方向を判断するために、さらに、
図8(b)に示すように、自動切込記録を作成しておく。即ち、自動切込指令が開始されると(S801)、自動切込の方向指令を生成する度に(S802)、切込方向を記録しておき(S803)、この切込方向の記録(履歴)を参照して、
図7のS705における逃がし方向を判断する。そして、自動切込の動作が実行されると(S804)、自動切込指令は終了する(S805)。また、逃がし方向を判断するために、
図8(c)に示すように、NCのモーダル情報も参照する。即ち、S806において、モード情報として、円弧/直線・法線方向の向き (経路の右/左?)等を参照し、また、逃がし方向の判断において、主に最後の自動切込を戻す方向を参照する。直前の動作が開始位置への移動である場合は補正量を0扱いする。プロセスの進行状態によって方向が分からない場合は、法線方向制御と円弧補間のモードを確認し、例えば、G41.1かつG02のときU負方向、G42.1かつG02のときU正方向、G41.1かつG03のときU正方向、G42.1かつG03のときU負方向などの加工毎の事前設定を使う。
【0026】
尚、回転速度の変化に応じた切込み過ぎ量(半径変化Δr)は、以下の数式(1)で定義するのが一般的である。
【数2】
【0027】
典型的な工作機械用のサーボ制御系で円弧指令での一定速回転中の半径の減少ΔRは、速度制御部・電流制御部の応答が十分に高速で補間後加減速も十分に高速なら以下の数式(2)のように近似される。
【数3】
【0028】
尚、一般的には
図9に示すような円弧補間の制御系が用いられている。
【符号の説明】
【0029】
10 ジグ研削盤(研削装置)、 100 砥石、 102 砥石回転装置、104 自動切込装置、 106 別の回転装置(C軸回転装置)、300 制御装置、 W ワーク、