(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048948
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】携帯型頸部支持装置
(51)【国際特許分類】
A61G 5/12 20060101AFI20230331BHJP
A47G 9/10 20060101ALI20230331BHJP
A47C 16/00 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
A61G5/12 703
A47G9/10 V
A47C16/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021173491
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】521463333
【氏名又は名称】鬼谷 慶子
(71)【出願人】
【識別番号】721006747
【氏名又は名称】郡 健太
(72)【発明者】
【氏名】鬼谷 慶子
【テーマコード(参考)】
3B095
3B102
【Fターム(参考)】
3B095GA05
3B102AA07
3B102AB07
3B102AC02
(57)【要約】
【課題】 従来のヘッドレストなどの頸部支持装置は、座席に背もたれがあることが前提になっており、背もたれの形状によっては装着が困難な場合がある。また、車両での使用が想定されていることが多く、車椅子等に装着して使用する場合は頸部支持装置自体が目立ってしまうという整容面の問題や、重量のため自走や運搬に支障をきたし、着脱が困難という課題がある。
【解決手段】本発明は、人体の後頚部に適合し背側から支持する頚部支持部分と、頚部支持部分の左右から座面方向に伸ばしたベルトとにより構成される。ベルトを座席の座面直下または使用者の大腿部と座面との間にくぐらせて、ベルトと頚部支持部分との張力およびベルトと座面との摩擦力により装置全体を保持することによって、使用者の頚部の荷重を支持することが可能となる。以上を特徴とする携帯型頸部支持装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後頭結節から第七頸椎にかけて、左右の乳様突起間の範囲に適合する形状の頚部支持部分と、その左右に付属するベルトから構成され、胸鎖乳突筋の走行に沿って使用者の前面に流し座面まで伸ばした前記ベルトの張力によって、前記頚部支持部分が受ける頚部の荷重を支持することを特徴とする頚部支持装置。
【請求項2】
前記ベルト部分にバックルを有し前記頚部支持部分の着脱が可能であることを特徴とする請求項1に記載の頸部支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席や車椅子等で使用可能な携帯型の頚部支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、座位時に頭頚部を支持するために、ヘッドレスト、ネックピロー、ネックカラーが用いられてきた。ヘッドレストおよびネックピローは、多くは車両や航空機の座席での快適さのために使用することが想定されており、座席の背もたれの上部に設置される。ネックカラーは、頚部に障害のある患者などで頚部を安定させる目的で使用される。
【0003】
また、携帯可能な頚部支持装置として、背もたれにベルトを巻きつけて使用するネックレストがあった(特許文献1参照)。このような形状には、背もたれの傾斜や使用者の着座姿勢に合わせて自由に位置を変更できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から頭頸部を支持するための装置として広く用いられてきたヘッドレスト、ネックピロー、ネックカラーの三者および、先行技術の携帯型ネックレスト(特許文献1参照)についての問題点を列挙する。
【0006】
ヘッドレストは、座席や車椅子に着脱する場合は工具を必要とすることが多く、携帯性に劣る。また、背もたれの形状によっては設置が困難な場合がある。車椅子に搭載した場合は、ヘッドレスト自体の重量により後方転倒しやすくなり、全体重量が増えるため走行の際により労力を必要とするという課題がある。さらに、ヘッドレストを搭載した状態では車椅子全体の容積が増加し、小型の車両に車載できない場合があり運搬が不便である。
【0007】
ネックピローもヘッドレストと同様に、座席の背もたれがあることが前提になっており、背もたれに十分な高さがなければ頚部まで到達しないため装着が困難な場合がある。また、首全体を覆うため外気温が高い場合熱がこもり不快感を生じることがある。
ネックカラーは携帯性に優れ、背もたれを前提としないが、頚部全体を覆うためネックピロー同様熱がこもりやすいほか、圧迫感があり整容面にも劣る。
【0008】
先行技術(特許文献1参照)にある、座席の背もたれにベルトを巻きつけて使用するタイプの携帯型ネックレストは、頚部後面を支持するため、ネックピローのように頚部全体を覆うことなく快適に使用できる。しかし、この携帯型ネックレストは背もたれの高さの範囲でしか設置できないため、背もたれが低い座席や車椅子では頚部までネックレストが到達しないという問題点や、背もたれが壁と一体となっていたり、ベルトが通る隙間がなかったりする座席にはベルトを裏通しできず設置できないという問題点がある。
本発明は、これらの問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、後頭結節から第七頸椎にかけて、左右の乳様突起間の範囲に適合する形状の頚部支持部分と、その左右に付属するベルトから構成され、胸鎖乳突筋の走行に沿って使用者の前面に流し座面まで伸ばした前記ベルトの張力によって、前記頚部支持部分が受ける頚部の荷重を支持することを特徴とする頚部支持装置である。
【0010】
前記ベルトは胸鎖乳突筋の走行に沿って使用者の前面に流し、座面方向に伸ばし、座席の座面直下または使用者の大腿部と座面との間にくぐらせたのち左右から合流する。ベルトと頚部支持部分との張力およびベルトと座面との摩擦力により装置全体を保持することによって、使用者の頚部の荷重を支持することが可能となる。
【0011】
本発明を使用することにより、幅広い形状の座席や車椅子において、頚部の安定性を高められ、座位姿勢を快適かつ整容的に保持することができるようになる。本発明は従来のヘッドレストとは異なり、着脱に工具を必要とせず、簡便に使用可能である。頚部支持部分に接続されたベルトは座面との摩擦力により保持され、背もたれに固定する必要がないため背もたれの有無や形状によらずに使用することが出来る。頚部支持部分は後頚部を背側から支持するため、目立ちにくく整容面にも優れている。頚部全体を覆っていないため、従来のネックピローやネックカラーのような熱がこもる問題も発生しない。
【発明の効果】
【0012】
本発明を使用することにより、幅広い形状の座席や車椅子において、頚部の安定性を高められ、座位姿勢を快適かつ整容的に保持することができるようになる。本発明は従来のヘッドレストとは異なり、着脱に工具を必要とせず、簡便に使用可能である。頚部支持部分に接続されたベルトは座面との摩擦力により保持され、背もたれに固定する必要がないため背もたれの有無や形状によらずに使用することが出来る。頚部支持部分は後頚部を背側から支持するため、目立ちにくく整容面にも優れている。頚部全体を覆っていないため、従来のネックピローやネックカラーのような熱がこもる問題も発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】 本発明の車椅子での使用例を示した図である。
【
図2】 本発明における頚部支持部分の詳細を示した図である。
【
図3】 本発明のベルト部分を座面直下にくぐらせて使用した場合のベルトの拡大図である。
【
図4】 本発明のベルト部分を使用者の大腿部と座面との間にくぐらせて使用した場合の全体図である。
【
図5】 本発明のベルト部分を使用者の大腿部と座面との間にくぐらせて使用した場合に本発明が受ける力を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は人体の後頚部に適合し背側から支持する頚部支持部分と、頚部支持部分の左右から座面方向に伸ばしたベルトとにより構成される。頚部支持部分の上縁は後頭結節付近、下縁は第七頸椎付近、左右側縁は乳様突起前縁付近に適合するような形状をしている。前記ベルトは使用者により長さを調節することが可能である。前記ベルトは胸鎖乳突筋の走行に沿って使用者の前面に流し、座面方向に伸ばし、座席の座面直下または使用者の大腿部と座面との間にくぐらせたのち左右から合流する。前記ベルトと前記頚部支持部分との張力およびベルトと座面との摩擦力により装置全体を保持することによって、使用者の頚部の荷重を支持することが可能となる。
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は、座席あるいは車椅子で使用可能だが、車椅子で使用する場合は
図1のような概観となる。本発明は、大きく分けて頚部支持部分(1)、頚部側ベルト(2)、座面側ベルト(3)から構成される。
図1の点線部分は使用者の身体によって隠れる部分を示しており、目立ちにくい仕様となっている。頚部側ベルト(2)、座面側ベルト(3)のいずれかまたは両方にはアジャスタなどの、使用者により各ベルトの長さを調節することを可能にする機構が備わっている。
【0016】
頚部支持部分(1)は、
図2のように使用者の後頭結節(4)から第七頸椎にかけて、両側の乳様突起(5)間の範囲に適合する形状となっており、左右に頚部側ベルト(2)を設ける。頚部側ベルト(2)の、頚部支持部分(1)とは対側の方向に、
図3のようなバックル(6)を設ける。バックル(6)は、頚部側ベルト(2)と座面側ベルト(3)とを連結する。 左右からの座面側ベルト(3)は座面直下あるいは使用者の大腿部と座面との間で合流する。本発明は以上のような構成である。
【0017】
本発明を使用するときは、
図2のように使用者の後頭結節(4)から第七頸椎にかけて、両側の乳様突起(5)間の範囲の後頚部に接する形で本発明を肩の上に載せる。
頚部側ベルト(2)は胸鎖乳突筋の走行を目安に
図4のように体の前面に流し、座面方向に向かって伸ばす。あらかじめ座面側ベルト(3)は座面直下(
図3参照)あるいは使用者の大腿部と座面との間(
図4参照)にくぐらせておき、
図3のようなバックル(6)によって頚部側ベルト(2)と接続する。
【0018】
本発明は、ベルトを座席の座面直下または使用者の大腿部と座面との間にくぐらせて使用可能だが、大腿部と座面との間にくぐらせて使用するのが最も簡便であるため、以下に詳細な使用例を示す。
図5は、本発明が十分に軽いと仮定した場合に、ベルト部分を使用者の大腿部と座面との間にくぐらせて使用した際に本発明に加わる力の方向を図示している。頚部支持部分(1)は頚部の荷重を受けるが、頚部支持部分は使用者の肩に載っているため、肩からの垂直抗力を受け、ベルトの張力とともに頚部の荷重を支持する。座面側ベルト(3)が座面と接する部分では、張力が頚部支持部分(1)方向へと働くが、ベルトが座面と接しており摩擦力が働くため、体重負荷と併せてベルトを保持する。
【0019】
十分な張力と摩擦力が得られる範囲では、本発明の位置は保たれ、使用者の頚部を安定させる。使用者はベルトの長さを調節することで張力を増減させることができ、ベルトをくぐらせる位置を変えることで座面とベルトのなす角Θをもたれたい角度に応じて調節できる。使用者はベルトの長さとΘの大きさを調節することで最も快適な姿勢を探索しながら本発明を使用する。
【0020】
本発明を使用することにより、頚部の安定性を高められ、座位姿勢を快適に保持することができる。ベルトの起始部の走行は胸鎖乳突筋に沿っている。また、頚部支持部分が頚部を支持する範囲の上縁の後頭結節には後頭下筋群が付着しており、側縁の乳様突起では胸鎖乳突筋が起始している。よって、人体本来の頚部支持に近似した形態であり、頚部の運動の妨げにならないため、快適である。
【0021】
各部品の材質の例について以下に記載する。
頚部支持部分はポリエチレンなどの素材を骨格とし、人体の頚部と接する部分はウレタンゴムなどの柔らかく伸縮性のある素材を前記骨格に重ねる。頚部支持部分と頚部側ベルトの接合部には天然ゴムの短いベルトを設けることで、ベルト全体の張力の変化を緩やかにすることもできる。頚部側ベルトおよび座面側ベルトには、ポリプロピレンなどが使用可能であるが、特に頚部側ベルトはポリ塩化ビフェニルなどの透明な素材を使用することで、使用時に目立ちにくくなる。バックルにはポリアセタール樹脂などが使用できる。
【0022】
各部品の寸法の例について以下に記載する。
頚部支持部分は横幅16~20cm、高さ7~11cm、厚みは約5~10mm程度である。頚部側ベルトは、長さ40~45cm程度である。座面側ベルトは長さ35~45cm程度である。
【符号の説明】
【0023】
1 頚部支持部分
2 頚部側ベルト
3 座面側ベルト
4 後頭結節
5 乳様突起
6 バックル