(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048963
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】キャスタ、及び走行体
(51)【国際特許分類】
B60B 33/00 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
B60B33/00 502D
B60B33/00 V
B60B33/00 502B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034438
(22)【出願日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2021158525
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504134759
【氏名又は名称】SKマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 純雄
(57)【要約】 (修正有)
【課題】前進後進方向転換時の横振れを抑制できるキャスタを提供する。
【解決手段】走行体に固定される固定部2と、前記固定部の下側に前記固定部に対して相対的に移動自在に取り付けられ、走行面に平行に移動する可動部3と、前記可動部の下側に取り付けられる車輪部4と、を備える、キャスタ。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体に固定される固定部と、
前記固定部の下側に前記固定部に対して相対的に移動自在に取り付けられ、走行面に平行に移動する可動部と、
前記可動部の下側に取り付けられる車輪部と、を備える
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャスタであって、
対向配置される外周面と内周面を備え、
前記固定部及び前記可動部のうちの一方が前記外周面を有し、他方が前記内周面を有する
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項3】
請求項2に記載のキャスタであって、
前記固定部及び前記可動部のうちの一方が前記外周面を有する円柱部を備え、他方が前記内周面を有する孔部を備える
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項4】
請求項3に記載のキャスタであって、
前記固定部は、前記円柱部を有する縦断面視T字形状の固定部材を備え、
前記可動部は、頂壁に前記円柱部の下端が挿通する前記孔部を有する
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項5】
請求項4に記載のキャスタであって、
前記固定部は、前記円柱部の下端面に固定される補助部材であって前記孔部より幅または直径が大きい補助部材を備え、
前記可動部は、周壁により囲まれる内部空間であって前記補助部材を平行移動可能に収容する内部空間を有する
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項6】
請求項3に記載のキャスタであって、
前記可動部は、前記円柱部を有する縦断面視⊥字形状の可動部材を備え、
前記固定部は、底壁に前記円柱部の上端が挿通する前記孔部を有する
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項7】
請求項6に記載のキャスタであって、
前記可動部は、前記円柱部の上端面に固定される補助部材であって前記孔部より幅または直径が大きい補助部材を備え、
前記固定部は、周壁により囲まれる内部空間であって前記補助部材を平行移動可能に収容する内部空間を有する
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項8】
請求項2に記載のキャスタであって、
前記固定部及び前記可動部のうちの一方が前記内周面を有する筒部を備え、他方が前記外周面を有する円盤部を備える
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項9】
請求項8に記載のキャスタであって、
前記可動部は、前記円盤部を有し、
前記固定部は、前記円盤部を平行移動可能に収容する前記筒部を有し、底壁に前記円盤部より直径が小さい開口を有する
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項10】
請求項1に記載のキャスタであって、
前記固定部及び前記可動部のうちの一方が円柱部を備え、他方が孔部と当該孔部内に配置される芯部材とを備えてリング部が形成され、
前記円柱部は、一部が前記リング部を挿通している
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項11】
請求項10に記載のキャスタであって、
前記可動部は、前記円柱部を有する縦断面視⊥字形状の可動部材を備え、
前記固定部は、底壁に前記孔部を有する固定部材と、前記芯部材とを備える
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項12】
請求項11に記載のキャスタであって、
一端が前記円柱部に直接的にまたは間接的に取付けられ、他端が前記固定部材の前記孔部より外方であって相対する位置にそれぞれ取り付けられる、一対の引張コイルばねを備える
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載のキャスタであって、
前記孔部の内周面の相対する位置に一対の凹み部を有する
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のキャスタであって、
前記車輪部は、車輪と、車軸と、ボディとを備え、前記ボディにおける、前記車軸を支える部材と前記可動部に取り付けるための部材とが旋回軸部材により回転自在に結合され、前記旋回軸部材の軸心に対して前記車軸の軸心が偏心している
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のキャスタであって、
前記車輪部は、車輪と、車軸と、ボディとを備え、前記ボディにおける、前記車軸を支える部材と前記可動部に取り付けるための部材とが回転不能に結合されている
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のキャスタであって、
前記固定部と前記可動部の間に、所定の距離を維持すると共に摩擦係数を低減するための介在部が配置される
ことを特徴とするキャスタ。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のキャスタを備える
ことを特徴とする走行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスタ、及び走行体に関する。
【背景技術】
【0002】
キャスタは、手押し台車、自動走行台車等に多用されている。キャスタが使用される手押し台車の例として、荷物運搬用の台車、買い物かごを乗せて人が押す軽量台車等がある。キャスタが使用される自動走行台車としては、最近脚光を浴びている無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)等がある。以下では、キャスタが使用される台車、搬送車等を総じて「走行体」と言う。キャスタは、車輪の大小及び走行体への取付方法の相違はあるものの、固定式と自在式の2種に大別される。
【0003】
固定式キャスタ(以下「固定キャスタ」とも言う)は、車輪と車軸とボディの3つの主要部分で構成されている。車輪は、ゴム、ナイロン、金属(鉄等)等の材質で作製されており、中心の回転部には通常ベアリングが組み込まれているが、廉価なキャスタではベアリングを省いたものもある。車軸は、一般的に金属製であり、走行体の荷重を受けながら車輪の回転動作を支えている。ボディは、正面視略U字形となっており、車軸を支えると同時に走行体にキャスタを持たせる役目を果たしている。固定式キャスタは、ボディに回転部分を有せず固定的に走行体本体に接合されるので、走行体に4つの固定式キャスタを取り付けた場合、前後方向には自由に走行できるが、走行体を左右に操舵することは不可である。
【0004】
一方、自在式キャスタ(以下「自在キャスタ」とも言う)は、車輪と車軸とボディの3つの主要部分で構成されている点は固定式キャスタと同様であるが、ボディの車軸を支えるU字状部材と走行体本体に取り付ける取付部材が垂直の旋回軸部材を経由して結合されている点が固定式キャスタと異なる。すなわち、自在式キャスタは、旋回軸部材を中心として車輪を支えるU字状部材が回転自在になっており、なおかつ車輪を支える車軸と旋回軸間にある一定の偏心量をなしている。自動車の操舵輪がキャスタ角を有している事により直進性を確保しているのと同様に、自在式キャスタは旋回軸部材による水平方向の回転により走行体の操舵を可能にすると同時に、操舵した方向へ自在に方向変換が可能になる。
【0005】
手押し台車でも四輪のうち2つの前輪を自在式キャスタ、2つの後輪を固定式キャスタとしたものや、四輪すべてを自在式キャスタとしたものが実用化されている。自動走行台車では、例えば、後輪の2つの固定式キャスタを走行動力を伝える左右の動輪として使用し、操舵の場合は左右の動輪に回転速度差を与えて走行体の方向転換を行うが、2つの前輪を自在キャスタとすることにより自在な方向転換を行うことができる。
【0006】
自在式キャスタは、方向転換を行うためには必要な要素部品であるが、走行体が前進後進の方向転換を行う際には前述した旋回軸の偏心量に起因する横振れ現象が発生する。人力で押す手押し台車の場合でも前後に作動した場合に横振れ現象を経験するが、手動し台車の場合は問題にならない場合が多い。しかしながら、正確な直進性を必要とする自動走行台車の場合は、前後の方向転換の場合の横振れに起因する軌道からの逸脱は大きな欠点となる。
【0007】
自在式キャスタの横振れ現象を改善するものとして、例えば、「少なくとも、下面の一端側に自在キャスター(4)を取付ける下プレート(1)と、該下プレート(1)の他端側上面に回転自在に軸支する上プレート(2)と、前記下プレート(1)と前記上プレート(2)との間に装着する転動部材(3)とから構成するものであり、前記下プレート(1)に自在キャスター(4)を取付けた際、該自在キャスター(4)の車輪(41)の偏心量(e)に対して、前記上プレート(2)の中心軸(21)が、前記自在キャスター(4)の旋回部(43)の中心線から偏心量(E)になるように前記上プレート(2)が前記下プレート(1)に軸支されたことを特徴とする自在キャスターの偏心補正部材」(特許文献1の請求項1を参照)、「上下二段の枢動部を備え、下段枢動部は上段枢動部の枢軸に取り付けられることにより前記上段枢動部に対して旋回自在にされ、前記下段枢動部は、前記下段枢動部の枢軸に取り付けられることにより自在に旋回する、ホイールを軸支するための自在金具を有していることを特徴とする自在キャスター」(特許文献2の請求項1を参照)、「上下二段の回動部を備え、前記上段の回動部の上段支持軸と前記下段の回動部の下段支持軸のそれぞれの軸支部分が1つの軸受ブロック内に水平方向にずらして組み込まれ、前記上段回動部の上段支持軸が走行体の底面に固定され、前記下段回動部の下段支持軸にホイールを軸支する自在金具が設置されていることを特徴とする自在キャスター」(特許文献3の請求項1を参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-112232号公報
【特許文献2】特開2013-151287号公報
【特許文献3】実用新案登録第3208653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1、特許文献2及び特許文献3の基本原理は同じである。すなわち、自在キャスタ自身の偏心量(旋回軸に対する車輪の偏心量)をe(又はD1)、上プレートの偏心量(旋回軸に対する上プレートの偏心量)をE(又はD2)として、e=E(D1=D2)であるから、自在キャスタの偏心量e(又はD1)により自在キャスタが前進から後進へ方向転換する際の横振れ量を自在キャスタの上部に位置する上プレートの偏心量E(又はD2)による旋回動作で相殺しようとするものである。e=Eであれば一見相殺して横振れが解消できるようにも見えるが、以下の理由により相殺による横振れの解消は難しい。
【0010】
特許文献2を例に説明すると、車輪8と走行面の抵抗をFとした場合、自在キャスタB(下段駆動部B)の回転中心6に作用するモーメントはT1=F×D1で、上プレートA(上段駆動部A)の回転中心3に作用するモーメントはT2=F×(D1+D2)である。よって、明らかにT2>T1となる。自在キャスタBの軸受と上プレートAの軸受の転がり抵抗はほぼ同じなので、車輪の走行抵抗で回転する軸受はほぼ上プレートAの軸受となる。これは、自在キャスタBの偏心量D1による横振れを相殺する目的であるにもかかわらず、前進から後進へ方向転換時に回転するのは上プレートAの軸受の方であるということになる。結果として偏心量(D1+D2)分の自在キャスタBの動きとなり、自在キャスタBの旋回時の偏心量は、却って自在キャスタB単独の場合よりも大きくなってしまい、目的を達成することができない。
【0011】
なお、自在式キャスタによる横振れの防止のために、「オムニホイール」、「メカナムホイール」と呼ばれる特殊な車輪が実用化されている。特徴は、複数の太鼓型の小車輪が車輪の外周部に車輪の車軸と直交する位置に配置されている点である。これらの特殊車輪は、それぞれの小車輪が回転自在に取り付けられているので、走行体の車輪に利用した場合、前後方向転換の際に太鼓型の小車輪が自在に回転し、走行体の横振れをある程度減少できる。
【0012】
しかしながら、これらの特殊車輪は、複数の太鼓型ローラとそれを支持するための軸を含んで構成されているため、構造が複雑であり、部品点数が多く、コストアップになる。また、隙間が多い構造となるので走行面の異物を噛み込む可能性が高い、車輪が1回転する毎に複数の小車輪が走行面と接触するので間欠的な打撃音が発生する等の問題は避けられない。
【0013】
本願発明は、上記課題の少なくとも一つを解決するためのものであり、前進後進方向転換時の横振れを抑制できるキャスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下の通りである。上記課題の少なくとも一部を解決すべく、本発明の一態様に係るキャスタは、走行体に固定される固定部と、前記固定部の下側に前記固定部に対して相対的に移動自在に取り付けられ、走行面に平行に移動する可動部と、前記可動部の下側に取り付けられる車輪部と、を備える。
【0015】
上記キャスタにおいて、対向配置される外周面と内周面を備え、前記固定部及び前記可動部のうちの一方が前記外周面を有し、他方が前記内周面を有する。
【0016】
上記キャスタにおいて、前記固定部及び前記可動部のうちの一方が前記外周面を有する円柱部を備え、他方が前記内周面を有する孔部を備える。
【0017】
上記キャスタにおいて、前記固定部は、前記円柱部を有する縦断面視T字形状の固定部材を備え、前記可動部は、頂壁に前記円柱部の下端が挿通する前記孔部を有する。
【0018】
上記キャスタにおいて、前記固定部は、前記円柱部の下端面に固定される補助部材であって前記孔部より幅または直径が大きい補助部材を備え、前記可動部は、周壁により囲まれる内部空間であって前記補助部材を平行移動可能に収容する内部空間を有する。
【0019】
上記キャスタにおいて、前記可動部は、前記円柱部を有する縦断面視⊥字形状の可動部材を備え、前記固定部は、底壁に前記円柱部の上端が挿通する前記孔部を有する。
【0020】
上記キャスタにおいて、前記可動部は、前記円柱部の上端面に固定される補助部材であって前記孔部より幅または直径が大きい補助部材を備え、前記固定部は、周壁により囲まれる内部空間であって前記補助部材を平行移動可能に収容する内部空間を有する。
【0021】
上記キャスタにおいて、前記固定部及び前記可動部のうちの一方が前記内周面を有する筒部を備え、他方が前記外周面を有する円盤部を備える。
【0022】
上記キャスタにおいて、前記可動部は、前記円盤部を有し、前記固定部は、前記円盤部を平行移動可能に収容する前記筒部を有し、底壁に前記円盤部より直径が小さい開口を有する。
上記キャスタにおいて、前記固定部及び前記可動部のうちの一方が円柱部を備え、他方が孔部と当該孔部内に配置される芯部材とを備えてリング部が形成され、前記円柱部は、一部が前記リング部を挿通している。
上記キャスタにおいて、前記可動部は、前記円柱部を有する縦断面視⊥字形状の可動部材を備え、前記固定部は、底壁に前記孔部を有する固定部材と、前記芯部材とを備える。
上記キャスタにおいて、一端が前記円柱部に直接的にまたは間接的に取付けられ、他端が前記固定部材の前記孔部より外方であって相対する位置にそれぞれ取り付けられる、一対の引張コイルばねを備える。
上記キャスタにおいて、前記孔部の内周面の相対する位置に一対の凹み部を有する。
【0023】
上記キャスタにおいて、前記車輪部は、車輪と、車軸と、ボディとを備え、前記ボディにおける、前記車軸を支える部材と前記可動部に取り付けるための部材とが旋回軸部材により回転自在に結合され、前記旋回軸部材の軸心に対して前記車軸の軸心が偏心している。
【0024】
上記キャスタにおいて、前記車輪部は、車輪と、車軸と、ボディとを備え、前記ボディにおける、前記車軸を支える部材と前記可動部に取り付けるための部材とが回転不能に結合されている。
【0025】
上記キャスタにおいて、前記固定部と前記可動部の間に、所定の距離を維持すると共に摩擦係数を低減するための介在部が配置される。
【0026】
上記課題の少なくとも一部を解決すべく、本発明の他の一態様に係る走行体は、上記キャスタを備える。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、前進後進方向転換時の横振れを抑制できるキャスタを提供することができる。
【0028】
本発明に係るキャスタは、従来の自在式キャスタを用いた走行体に於ける前進後進方向転換時に発生する横振れを大幅に減少できる。これにより、特に直進性が要求される自動走行台車(例えば、AGV)において、より正確な直進運動が行えるようになる。
【0029】
また、従来の自在式キャスタは方向転換の際の横振れ時に不要な偶力が発生し、その分走行動力のエネルギーが増加してしまうが、本発明に係るキャスタは、これを低減することにより、無駄なエネルギーを省いて省エネ化でき、二酸化炭素の排出削減にも貢献できる。
【0030】
また、本発明に係るキャスタは、上記特殊車輪(オムニホイール、メカナムホイール)より構造が簡単で、部品点数が少なく、コストを削減できる。また、上記特殊車輪に存在する問題点を回避できる。
【0031】
上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】実施形態1に係るキャスタの一例を示す側面図である。
【
図1B】実施形態1に係るキャスタの一例を示す正面図である。
【
図2】実施形態1に係るキャスタの一例の動作を説明する図である。
【
図3】従来の自在式キャスタによる走行体の前後方向転換を示す図である。
【
図4】実施形態1に係るキャスタの一例による走行体の前後方向転換を示す図である。
【
図5】実施形態1に係るキャスタの他の一例の動作を説明する図である。
【
図6A】実施形態1の変形例1に係るキャスタを示す側面図である。
【
図6B】実施形態1の変形例1に係るキャスタを示す正面図である。
【
図7A】実施形態1の変形例2に係るキャスタを示す側面図である。
【
図7B】実施形態1の変形例2に係るキャスタを示す正面図である。
【
図8A】実施形態2に係るキャスタの一例を示す側面図である。
【
図8B】実施形態2に係るキャスタの一例を示す正面図である。
【
図9A】実施形態2の変形例1に係るキャスタを示す側面図である。
【
図9B】実施形態2の変形例1に係るキャスタを示す正面図である。
【
図10A】実施形態2の変形例2に係るキャスタの一例を示す側面図である。
【
図10B】実施形態2の変形例2に係るキャスタの一例を示す正面図である。
【
図11A】実施形態3に係るキャスタの一例を示す側面図である。
【
図11B】実施形態3に係るキャスタの一例を示す正面図である。
【
図12A】実施形態4に係るキャスタの一例を示す側面図である。
【
図12B】実施形態4に係るキャスタの一例を示す正面図である。
【
図13A】実施形態5に係るキャスタの一例を示す側面図である。
【
図13B】実施形態5に係るキャスタの一例を示す正面図である。
【
図14】実施形態5に係るキャスタの芯部材の一例を説明するための図である。
【
図15】実施形態5に係るキャスタの動作を説明するための模式図である。
【
図16】実施形態5に係るキャスタの固定部材の他の例を説明するための図である。
【
図17A】実施形態5の変形例1に係るキャスタの一例を示す側面図である。
【
図17B】実施形態5の変形例1に係るキャスタの引張コイルばねの一例を示す平面図である。
【
図18】実施形態5に係るキャスタの他の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態の例について、図面を参照して説明する。なお、下記実施形態(変形例)において共通する構成要素については、前出の符号と同様な符号を付し説明を省略することがある。また、構成要素等の形状、位置関係等に言及する場合は、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0034】
<実施形態1>
図1Aは実施形態1に係るキャスタの一例を示す側面図で、
図1Bはその正面図である。各図において一部は断面で示している(以下、各側面図及び正面図において同じ)。各図において、Xは前後方向(水平方向)、Yは上下方向(鉛直方向)、Zは横方向(奥行方向)を示している(以下、各図において同じ)。
【0035】
本実施形態のキャスタ1は、走行体に固定される固定部2と、固定部2の下側に固定部2に対して相対的に移動自在に取り付けられ、走行面に平行に移動する可動部3と、可動部3の下側に取り付けられる車輪部4と、を備える。キャスタ1は、好ましくは、さらに介在部5を備える。
【0036】
固定部2と可動部3は、対向配置される外周面と内周面を備え、固定部2及び可動部3のうちの一方が外周面を有し、他方が内周面を有する。具体的には、一例として、固定部2及び可動部3のうちの一方が外周面を有する円柱部を有し、他方が内周面を有する孔部を有する。
【0037】
本実施形態では、固定部2は、走行体本体(不図示)に固定される固定部材21と、補助部材22とを備え、固定部材21が円柱部211を有し、円柱部211の下端面に補助部材22が固定される。
【0038】
固定部材21は、本体部が平板状で、本体部の下端面に円柱部211が設けられる。円柱部211は、円柱状(直径d)で、本体部の下端面の中央から下方に垂直に延びている。すなわち、固定部材21は縦断面(XY断面及びYZ断面)視T字形状の部材である。
【0039】
補助部材22は、平板状部材で、固定部材21の円柱部211と直交するように円柱部211の下端面に固定される。補助部材22は、例えばボルト等の締結部材でカシメにより円柱部211の下端面に固定される。補助部材22は、好ましくは円形で、直径(円形以外の形状では幅)が固定部材の本体部より小さく、円柱部211より大きい。固定部2は、全体として、縦断面視士の字形状を成している。
【0040】
本実施形態では、可動部3は、頂壁を構成する孔部材31と、周壁及び底壁を構成する収容部材32とを備え、孔部材31と収容部材32とが互いに固定される。固定方法は、特に限定されず、接着や締結部材による締結等の手法が用いられる。なお、収容部材32は、底壁を有せず、後述の取付部材432が底壁を兼ねてもよい。
【0041】
孔部材31は、平板状部材で、中央に円柱部211の下端が挿通する孔部311を有する。孔部311は、孔部材31を厚み方向に貫通する貫通孔である。孔部311は、一例として、
図2に示すように平面視正円形状(直径D)である。直径Dは、円柱部211の直径dより大きい。なお、孔部311は、平面視楕円形状(長径D)であってもよく、この場合は長径Dが円柱部211の直径dより大きく、短径が円柱部211が挿通できるように直径dより大きい。
【0042】
収容部材32は、孔部材31の下側に配置される凹状部材である。収容部材32は、周壁により囲まれる内部空間Sを有し、補助部材22が平行移動可能に収容される。好ましくは、内部空間Sは、横断面(XZ断面)視円形の空間で、直径が孔部311の直径(長径)Dより大きい。言い換えれば、孔部材31は、上方から内部空間Sの一部を覆う。
【0043】
固定部材21、孔部材31、収容部材32の平面形状(外周形状)は特に限定されないが、一例として円形で、例えば外周径が同大の円形である。なお、孔部材31が収容部材32より大きく収容部材32の外周より外側にはみ出す等、同大でなくてもよいことは言うまでもない。固定部2及び可動部3は、例えば、金属製である。なお、所定の動作を可能とし、所定の強度が確保できれば、他の材料が用いられてもよい。一例として、当接の際の騒音を抑制するために、固定部材21の円柱部211の外周面及び孔部材31の孔部311の内周面の一方又は双方にゴムや樹脂等によるコーティング層が設けられる。固定部材21及び孔部材31の一方又は双方がゴムや樹脂等の材料で形成されてもよい。
【0044】
可動部3は、XZ平面において並進運動及び回転運動が可能に固定部2と係り合っている。言い換えれば、可動部3は、固定部2に対して相対的に移動自在に取り付けられ、走行面に平行に移動する。
【0045】
詳細に説明すると、ここでは、固定部材21の円柱部(直径d)211が孔部材31の孔部(直径または長径D)311を挿通し孔部311内で平行移動可能になっている。言い換えれば、固定部2及び可動部3は、互いに相手方に対して、最大ストローク量Δd=D-dの範囲内で平行移動自在である。なお、Δdは、通常の遊び以上の値であることは言うまでもない。Δdは、例えば1/2d以上の値である。また、円柱部211の下端に固定される補助部材22の幅(直径)が孔部311の直径(長径)Dより大きく、固定部2と可動部3が係り合う状態から離脱することはない。円柱部211の下端が収容部材32の内部空間Sに進入し、補助部材22が内部空間Sに収容されるが、内部空間Sの直径が補助部材22の直径よりも少なくともΔdだけ大きく、深さが補助部材22の厚み(締結部材が下端面から突出する場合はその突出分を含む)より大きいため、円柱部211の平行移動に伴って平行移動する補助部材22が収容部材32と干渉することはない。
【0046】
走行する際は、楕円形(又は後述の
図5の例のように長円形)又は円形の孔部311にガイドされる円柱部211が、孔部311の内周面の進行方向端面に密接し、車輪部4を進行方向に引く作用となり、走行体が直進するときは直線状に牽引する。また、走行体を曲線状に円弧を描いて走行させる場合も、曲線状に牽引するので、走行体がスムーズにカーブを走行できる。
【0047】
可動部3と固定部2が相対的に移動する際に、孔部材31の上端面及び下端面と固定部材21の下端面及び補助部材22の上端面とが滑り移動することになるが、好ましくは固定部2と可動部3の間に所定の距離を維持すると共に摩擦係数を低減するための介在部5が配置される。
【0048】
介在部5は、一例として介在部材として3つ以上(
図2に示す例では6つ)のフリーボールベアリング51により構成される。これらのフリーボールベアリング51は、固定部材21の下端面と孔部材31の上端面の間に円柱部211を囲うように配置される。具体的な配置位置は、特に限定されないが、一例としてフリーボールベアリング51同士がほぼ等間隔になるように配置される。フリーボールベアリング51は、外周取付部により固定部材21の下端面に圧入、接着またはボルト締めにより取り付けられる。固定部2又は可動部3が動くと、フリーボールベアリング51は外周取付部から突出しているメインボールが孔部材31の上端面において各々自在に転がる。フリーボールベアリング51は、メインボール(金属球)が図示しない内部の多数の小さなボール(金属球)により支えられ低摩擦で回転するので、転がり抵抗が、後述の鋼球434の転がり抵抗より小さい。
【0049】
介在部5の高さ(または固定部材21の下端面からの突出高さ)は、補助部材22が孔部材31の下端面と接触しないようになる値である。言い換えれば、介在部5により可動部3を固定部2から所定距離突き放し、補助部材22の上端面と孔部材31の下端面が直接接触しないように隙間を設けることで、両者間の摩擦を回避できる。
【0050】
車輪部4は、車輪41と、車輪41の回転を支える車軸42と、ボディ43とを備える。ボディ43は、車軸42を支える正面視U字形状のU字状部材431と、車輪部4を取り付けるための取付部材432とを有し、U字状部材431と取付部材432とが垂直の旋回軸部材433を介して回転自在に結合される。言い換えれば、車輪部4には従来の自在キャスタが用いられ、車輪部4は、ボルト等の締結部材により取付部材432が収容部材32の下端面に締結されることで、可動部3に取り付けられる。車輪部4における旋回軸部材433の軸心に対する車軸42の軸心の偏心量(以下「車輪部偏心量」と言う)はeである。初期状態において、固定部2の円柱部211の中心は、旋回軸部材433の軸心と一致する位置にある。
【0051】
車輪部4は、公知技術が適宜用いられ、詳細な説明は省略するが、旋回軸部材433は、例えばピン部材であり、U字状部材431と取付部材432とが離脱しないように両者をカシメにより結合する。U字状部材431と取付部材432の間には、複数の鋼球434が配置される。
【0052】
図2は、実施形態1に係るキャスタの一例の動作を説明する図である。
図2において、上図は観察者が横方向から観察した図で、下図はそのAA線断面図である。なお、以下では前進後進方向転換(前後方向転換)は、後方へ走行し、その後停止し、反対方向の前方へ方向転換する例を説明するが、前方から後方への方向転換は、以下の説明と逆方向への動作となる。
【0053】
キャスタ1は、当初は、(1)の状態、すなわち、円柱部211が孔部311の中心にあり、孔部311と同心円状となる状態にある。(1)の状態から走行体本体(不図示)が後方(図中の+X方向)へ移動すると、走行体本体に固定されている固定部2が後方へ移動し、フリーボールベアリング51が可動部3の上端面において同じく後方へ移動し、円柱部211の後端(即ち外周面の後端面)が孔部311の後端(即ち内周面の後端面)に当接する。更に、走行体本体が後方へ移動すると、(2)の状態となり、結果的にキャスタ1全体が後方へ移動する。
【0054】
キャスタ1は、(2)の状態から反対方向、ここでは前方(図中の-X方向)へ方向転換する場合、車輪部4が(2)の状態から180度旋回する。本実施形態のキャスタ1は、車輪部4の旋回軸に対して、固定部2の偏心量が0~1/2Δdの間で自由に変化し、車輪部4の旋回角度に対して自由に支点が移動できるので、車輪部偏心量eを相殺することにより走行体の軌道を直線上に保ち、走行体の横振れを抑制できる。
【0055】
言い換えれば、走行体本体が元の走行方向の反対方向である前方へ移動すると、走行体本体に固定されている固定部2が前方へ移動し、車輪部4の旋回前または旋回時に、可動部3が前方へ移動し、ストローク量(0~Δd)が増大する。これにより、車輪部4の旋回中の横方向に増大する偏心量を低減できる。一例として、キャスタ1は、車輪部4が90度旋回した時点で(3)の状態になり、車輪部4が180度旋回した時点で(4)の状態になる。
【0056】
図3は従来の自在キャスタによる走行体の前後方向転換を示す図である。
図4は実施形態1に係るキャスタの一例による走行体の前後方向転換を示す図である。以下では、従来例と対比して、走行体全体の前進後進方向転換を説明する。
【0057】
図3に示すように、従来の自在キャスタ9は、走行体本体10に取り付けられ、偏心量eを有する。走行体が後方(+X方向)へ走行する場合は、(1)のように、偏心量eは自在キャスタ9の旋回軸の走行方向の反対方向に存在するため、走行体は問題なく後方へ移動する。
【0058】
一方、走行体が(1)の状態から前方(-X方向)へ移動する場合は、(2)のように自在キャスタ9が旋回する。その際に、自在キャスタ9は、車輪の中心が直進軌道上に残ろうとするため、偏心量eにより走行体が引っ張られて傾きが生じる。これは、走行体に元の軌道から偏心量eだけずれる力が作用するためである。走行体がさらに前方へ移動すると、(3)のように自在キャスタ9の偏心量eは旋回軸より後方に存在するようになり、前方へ直進する。
【0059】
従来の自在キャスタ9は、とりわけ、高精度が要求されるAGV等では、この前後方向転換時の偏心量eに起因する走行体の横振れが問題とされている。より具体的には、横振れにより、狭所では他の物体に衝突したり、走行路(磁気テープなど)から外れて停止したり所望の作業ができなかったり、画像認識で自律走行している場合は視野がずれて誤動作したりする問題が生じる。
【0060】
本実施形態のキャスタ1は、このような偏心量eによる走行体の横振れを抑制できる。
図4に示すように、キャスタ1は、走行体本体10に取り付けられ、従来例と同様に偏心量eを有する。走行体には、一例として、キャスタ1が2つ、固定キャスタ8(AGVの場合は固定キャスタ8の代わりにモータ付駆動輪が用いられる)が2つ取り付けられる。走行体が後方(+X方向)へ移動する場合は、(1)のように偏心量eはキャスタ1の旋回軸に対して走行方向の反対方向に存在するため、走行体は問題なく後方へ移動する。
【0061】
走行体が後方から前方(-X方向)へ方向転換する場合は、(2)のように車輪部4が旋回する。従来例と同様に車輪部偏心量eだけ走行体に軌道からずれる力が作用するが、Δdの範囲内で可動部3が移動して、偏心量eにより走行体を引っ張ろうとする力が打ち消される。キャスタ1は、この打消し作用により、走行体の横振れを抑制できる。偏心量e=Δdであれば、方向転換時のずれを0に近づけられる。これにより、例えば高精度AGVにおける方向転換時の横振れを抑制できる。最大ストローク量Δdは、一例として、偏心量eに等しい値である。最大ストローク量Δdは、偏心量eより大きい又は小さい値であってもよい。
【0062】
図5は、実施形態1に係るキャスタの他の一例の動作を説明する図である。
図5において、上図は観察者が横方向から観察した図で、下図はそのAA線断面図である。本例では、キャスタ1は、孔部311が長円形(2つの半円形の辺を有する角丸長方形)である。孔部311の両半円辺間最大距離である最大幅Dは、円柱部211の直径dより大きい。なお、孔部311の両半円辺の直径は、円柱部211が挿通できるように直径dよりやや大きい。キャスタ1は、孔部311をこのような長円形とすることで、直進性がさらによくなることが期待できる。
【0063】
<実施形態1の変形例1>
図6Aは実施形態1の変形例1に係るキャスタを示す側面図で、
図6Bはその正面図である。本例は、可動部3及び車輪部4が上記と異なる。
【0064】
可動部3は、ここでは、箱状の可動部材30に構成される。可動部材30は、頂壁の中央に孔部311を有し、横断面(XZ断面)視円形である。可動部材30は、底壁と周壁を有し、周壁により囲まれる内部空間Sを有する。言い換えれば、上記孔部材31及び収容部材32が一体に形成されて可動部材30のようになってよい。
【0065】
車輪部4は、ここでは、ダブル車輪構造を有する。具体的には、車輪部4は、並列に配置される2つの車輪41と、両車輪41の回転をそれぞれ支える2つの車軸42と、両車軸42を支えるボディ44とを備える。ボディ44は、両車軸をそれぞれ支える2つのU字状部分を有する部材441と、取付部材432と、旋回軸部材433と、鋼球434とを有する。取付部材432は、下端に補助部445が設けられ、この補助部445により旋回軸部材433を介して部材441と回転自在に結合される。車輪部4は、このようにダブル車輪構造を備えるため、耐荷重が増加する。
【0066】
<実施形態1の変形例2>
図7Aは実施形態1の変形例2に係るキャスタを示す側面図で、
図7Bはその正面図である。本例は、介在部5の各フリーボールベアリング51が、孔部材31の上端面に取り付けられる点が上記と異なる。
【0067】
すなわち、3つ以上のフリーボールベアリング51は、孔部材31の上端面に孔部311を囲うように配置される。具体的な配置位置は、特に限定されないが、一例として、フリーボールベアリング51同士がほぼ等間隔になるように配置される。各フリーボールベアリング51は、外周取付部により孔部材31の上端面に圧入、接着またはボルト締めにより取り付けられる。このように構成しても、可動部3と固定部2の間の摺動を転動に変えて摩擦係数を低減でき、フリーボールベアリング51の孔部材31上端面からの突出高さを補助部材22が孔部材31の下端面と接触しないようになる値に設定することで両者間の摩擦を回避できる。
【0068】
<実施形態2>
図8Aは実施形態2に係るキャスタの一例を示す側面図で、
図8Bはその正面図である。本実施形態のキャスタ1は、主に固定部2及び可動部3が上記実施形態1ないし変形例と異なる。本実施形態では、固定部2が孔部231を有し、可動部3が円柱部331を有する。
【0069】
固定部2は、ここでは、固定部材23により構成される。固定部材23は、例えばボルト等の締結部材により走行体本体10に固定される。固定部材23は、凹状部材で、底壁と周壁を有し、周壁により囲まれる横断面(XZ断面)視円形の内部空間Sを有する。固定部材23は、底壁の中央に後述の円柱部331の上端が挿通する孔部231を有する。孔部231は、底壁を厚み方向に貫通する貫通孔である。孔部231は、一例として、平面視正円形(直径D)である。孔部231は、上記孔部311のように、楕円形(長径D)であってもよいし、長円形(最大幅D)であってもよい。直径(または長径、最大幅。以下同じ。)Dは、円柱部331の直径dより大きい。また、内部空間Sの直径が孔部231の直径Dより大きい。初期状態において、固定部2の孔部231の中心は、旋回軸部材433の軸心と一致する位置にある。
【0070】
可動部3は、ここでは、可動部材33と、補助部材34とを備える。可動部材33は、本体部が平板状で、本体部の上端面に円柱部331が設けられる。円柱部331は、図示のように本体部と別部材で構成され、例えばボルト等の締結部材により本体部に固定されてもよいし、本体部と一体に一部材で構成されてもよい。円柱部331は、円柱状(直径d)で、本体部の上端面の中央から上方に垂直に延びている。すなわち、可動部材33は縦断面(XY断面及びYZ断面)視⊥字形状の部材である。補助部材34は、平板状部材で、可動部材33の円柱部331と直交するように、円柱部331の上端面に例えばボルト等の締結部材で固定される。補助部材34は、好ましくは円形で、直径が可動部材33の本体部より小さく、円柱部331より大きい。可動部3は、全体として、縦断面視工の字形状を成している。
【0071】
可動部3は、並進運動及び回転運動が可能に固定部2と係り合っている。言い換えれば、可動部3は、固定部2に相対的に移動自在に取り付けられる。具体的には、ここでは、可動部材33の円柱部331が固定部材23の孔部231を挿通し孔部231内で平行移動可能になっている。言い換えれば、固定部2及び可動部3は、互いに相手方に対して、最大ストローク量Δd=D-dの範囲内で移動自在である。また、円柱部331の上端に固定された補助部材34の直径が孔部231の直径Dより大きく、固定部2と可動部3が係り合う状態から離脱することはない。円柱部331の上端が固定部材23の内部空間Sに進入し、補助部材34が内部空間Sに収容されるが、内部空間Sの直径が補助部材34の直径よりも少なくともΔdだけ大きく、深さが補助部材34の厚み(締結部材が下端面から突出する場合はその突出分を含む)より大きいため、円柱部331の移動に伴って移動する補助部材34が固定部材23と干渉することはない。
【0072】
このように、上記実施形態1とは逆に、本実施形態では固定部2に孔部231が設けられる、可動部3に円柱部331が設けられるが、上記実施形態と同様に可動部3と固定部2が相対的に移動自在で可動部3が走行面に平行に移動自在であり、同様な効果を奏する。固定部2及び可動部3は、例えば、金属製である。なお、所定の動作を可能とし、所定の強度が確保できれば、他の材料が用いられてもよい。一例として、当接の際の騒音を抑制するために、固定部材23の孔部231の外周面及び可動部材33の円柱部331の内周面の一方又は双方にゴムや樹脂等によるコーティング層が設けられる。固定部材23及び可動部材33の一方又は双方がゴムや樹脂等の材料で形成されてもよい。
【0073】
介在部5は、ここでは、3つ以上のフリーボールベアリング51が、可動部材33の上端面に円柱部331を囲うように配置される。具体的な配置位置は、特に限定されないが、一例として、フリーボールベアリング51同士がほぼ等間隔になるように配置され、外周取付部により可動部材33の上端面に圧入、接着またはボルト締めにより取り付けられる。介在部5は、可動部3と固定部2の間の摺動を転動に変えて摩擦係数を低減でき、フリーボールベアリング51の可動部材33の上端面からの突出高さを補助部材34の下端面が固定部材23の底壁の上端面と接触しないようになる値に設定することで両者間の摩擦を回避できる。なお、フリーボールベアリング51は、固定部材23の下端面に取り付けられてもよい。
【0074】
<実施形態2の変形例1>
図9Aは実施形態2の変形例1に係るキャスタを示す側面図で、
図9Bはその正面図である。本例は、介在部5が上記と異なる。
【0075】
介在部5は、ドーナツ状のケージに複数列(図示では3列)のボールを植え込んで形成される介在部材52により構成される。介在部材52は、固定部材23の底壁の下端面と可動部材33の上端面の間に配置される。好ましくは、介在部材52の転がり抵抗は、鋼球434の転がり抵抗より小さい。可動部材33には、介在部材52の高さより低く、1/2高さより高い周壁332が設けられ、介在部材52が可動部材33からはみ出したり、抜け落ちたりしないようになっている。
【0076】
介在部材52は、固定部材23の底壁の下端面に取り付けられてもよい。介在部材52は、可動部材33の上端面に取り付けられてもよい。このような場合は、周壁332は設けなくてよい。介在部材52のケージの平面形状は特に限定されない。介在部材52は、複数に分割されてもよい。言い換えれば、介在部5は、ケージに複数のボールを植え込んで形成される介在部材52を複数(例えば3つ以上)含み、複数の介在部材52が孔部231ないし円柱部331を囲うように構成されてもよい。各介在部材52の平面形状は特に限定されない。
【0077】
介在部5の高さは、補助部材34の下端面が固定部材23の底壁の上端面と接触しないようになる値である。介在部材52はフリーボールベアリング51のメインボールよりも小さな複数のボールを転動させる構成であるため、フリーボールベアリング51よりも高さを低くすることができるので、省スペース化が期待できる。
【0078】
<実施形態2の変形例2>
図10Aは実施形態2の変形例1に係るキャスタを示す側面図で、
図10Bはその正面図である。本例は、介在部5が上記と異なる。より具体的には、上記変形例1では、フリーボールベアリング51の代わりに、介在部材52が用いられたが、本例では、介在部材53が用いられる。
【0079】
介在部材53は、対向配置される2つの摩擦係数の低い低摩擦板531と低摩擦板532とを有する。低摩擦板531及び低摩擦板532は、平板状で、例えば樹脂製や金属製等である。低摩擦板531及び低摩擦板532は、好ましくは、平面視ドーナツ状で、同心円状となるように、一方が固定部材23の底壁の下端面に固定され、他方が可動部材33の上端面に固定される。固定部2又は可動部3が動くと、両低摩擦板が滑り移動する。好ましくは、両低摩擦板間の滑り摩擦は、鋼球434の転がり摩擦より小さい。なお、低摩擦板531及び低摩擦板532の平面形状は特に限定されない。また、介在部材53は、複数に分割されてもよい。言い換えれば、介在部5は、1対の低摩擦板531と低摩擦板532とを有する介在部材53を複数対(例えば3対以上)含み、固定部材23及び可動部材33の一方に固定される低摩擦板531と、他方に固定される相手方の低摩擦板532とが対向配置されるように構成されてもよい。各低摩擦板531、各低摩擦板532の平面形状は特に限定されない。
【0080】
介在部5の高さは、補助部材34の下端面が固定部材23の底壁の上端面と接触しないようになる値である。介在部材53は平板状であるため、フリーボールベアリング51よりも高さを低くすることができるので、省スペース化が期待できる。
【0081】
<実施形態3>
図11Aは実施形態3に係るキャスタの一例を示す側面図で、
図11Bはその正面図である。本実施形態のキャスタ1は、固定部2及び可動部3が上記実施形態ないし変形例と異なる。
【0082】
キャスタ1は、対向配置される外周面と内周面を備え、固定部2及び可動部3のうちの一方が外周面を有し、他方が内周面を有する。本実施形態では、キャスタ1は、固定部2及び可動部3のうちの一方が内周面を有する筒部(内周直径D)を有し、他方が外周面を有する円盤部(直径d)を有する。一例として、ここでは、固定部2が筒部241を有し、可動部3が円盤部である可動部材35により構成される。
【0083】
固定部2は、ここでは、筒部241が頂壁と底壁242を連結する平面視円形の箱状部材である。固定部材24は、頂壁により走行体本体(不図示)に取り付けられ、底壁242の中央に開口Pを有する。開口Pは、直径が筒部241の内周直径Dより小さい。初期状態において、固定部2の筒部241の中心は、旋回軸部材433の軸心と一致する位置にある。固定部2は、筒部241が平面視楕円形(長径D)または長円形(最大幅D)の箱状部材であってもよい。
【0084】
可動部3は、円盤状の可動部材35により構成される。円盤部をなす可動部材35は、直径dが、固定部材24の筒部241の直径(または長径、最大幅)Dより小さく、開口Pより大きい。
【0085】
可動部3は、並進運動及び回転運動可能に固定部2と係り合っている。言い換えれば、可動部3は、固定部2に相対的に移動自在に取り付けられ、走行面に平行に移動する。具体的には、ここでは、可動部材35は、筒部241の内周に収容され、筒部241に規制される範囲内で平行移動可能になっている。言い換えれば、固定部2及び可動部3は、互いに相手方に対して、最大ストローク量Δd=D-dの範囲内で移動自在である。また、可動部材35の直径dが開口Pの直径より大きく、固定部2と可動部3が係り合う状態から離脱することはない。筒部241の高さは、少なくとも可動部材35の厚みより大きいことは言うまでもない。
【0086】
介在部5の3つ以上のフリーボールベアリング51は、ここでは、固定部材24の頂壁の下端面に取り付けられる。具体的な配置位置は、特に限定されないが、一例としてフリーボールベアリング51同士がほぼ等間隔になるように円周上に配置される。固定部2又は可動部3が動くと、各フリーボールベアリング51のメインボールが可動部材35の上端面において各々自在に転がる。フリーボールベアリング51の転がり抵抗は、鋼球434の転がり抵抗より小さい。介在部5の高さ(または固定部材21の下端面からの突出高さ)は、可動部材35の下端面が底壁242の上端面と接触しないようになる値で、両者間に摩擦を回避するための隙間が形成される。
【0087】
キャスタ1は、ここでは、当初は、円盤部である可動部材35が筒部241の中心にあり、筒部241と同心円状となる状態にある。走行体本体(不図示)が後方へ移動すると、走行体本体に固定されている固定部2が後方へ移動し、筒部241前端(即ち内周面の前端面)が可動部材35の前端(即ち外周面の前端面)に当接し、更に移動すると、結果的にキャスタ1全体が後方へ移動する。この状態から、反対方向である前方へ方向転換する場合、車輪部4の旋回軸に対して、固定部2の偏心量が0~1/2Δd(Δd=D―d)の間で自由に変化し、車輪部4の旋回角度に対して自由に支点が移動できるので、車輪部偏心量eを相殺することにより走行体の軌道を直線上に保ち、走行体の横振れを抑制できる。
【0088】
このように、本実施形態のキャスタ1は、上記実施形態と同様に可動部3と固定部2が相対的に移動自在で可動部3が走行面に平行に移動自在であり、同様な効果を奏する。固定部2及び可動部3は、例えば、金属製である。なお、所定の動作を可能とし、所定の強度が確保できれば、他の材料が用いられてもよい。一例として、当接の際の騒音を抑制するために、固定部材24の筒部241の内周面及び可動部材35の内周面の一方又は双方にゴムや樹脂等によるコーティング層が設けられる。固定部材24及び可動部材35の一方又は双方がゴムや樹脂等の材料で形成されてもよい。
【0089】
本実施形態のキャスタ1も上記実施形態と同様に、介在部5のフリーボールベアリング51が可動部材35の上端面に取り付けられてもよいし、介在部5に介在部材52または介在部材53が用いられてもよい。
【0090】
<実施形態4>
図12Aは実施形態4に係るキャスタの一例を示す側面図で、
図12Bはその正面図である。本実施形態のキャスタ1は、車輪部4が上記実施形態ないし変形例と異なる。
【0091】
車輪部4は、ここでは、車輪41と、車輪41の回転を支える車軸42と、ボディ43とを備える。ボディ43は、車軸42を支える正面視U字形状のU字状部材431と、車輪部4を取り付けるための取付部材432とを有する。車輪部4は、ここでは、旋回軸部材433を有せず、U字状部材431と取付部材432とが回転不能に結合されている。言い換えれば、車輪部4には従来の固定キャスタが用いられる。
【0092】
本実施形態のキャスタ1は、回転機能を有しない車輪部4(従来の固定キャスタ)に固定部2及び可動部3を設けることで、方向転換運動ができるようにする。好ましくは、本実施形態のキャスタ1は、孔部311が長円形であり、特に直進走行に適している。本実施形態のキャスタ1は、上記実施形態ないし変形例に比べてコストを低減できるため、とりわけ前進後進方向転換のみを必要とする場合好適である。
【0093】
なお、本実施形態のキャスタ1における固定部2及び可動部3は、図示以外の上記実施形態ないし変形例の構成が用いられてもよい。上記実施形態2の構成が用いられる場合は好ましくは孔部231が長円形であり、上記実施形態3の構成が適用される場合は好ましくは筒部241が平面視長円形である。
【0094】
<実施形態5>
図13Aは実施形態5に係るキャスタの一例を示す側面図で、
図13Bはその正面図である。
図14は、実施形態5に係る芯部材の一例を説明するための図で、
図13AのBB線横断面の一部を示すものである。本実施形態のキャスタ1は、さらに芯部材を備える。
【0095】
芯部材は、上記孔部内に配置される。言い換えれば、上記キャスタ1は、固定部2及び可動部3のうちの一方が円柱部を備え、他方が孔部を備えるが、芯部材は、その孔部内に配置される。以下では、固定部2に芯部材を設ける例、すなわち、上記実施形態2に芯部材を組み合わせる例を図示し、説明するが、他の実施形態に組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0096】
図示のキャスタ1は、走行体本体10に固定される固定部2と、固定部2の下側に固定部2に対して相対的に移動自在に取り付けられ、走行面に平行に移動する可動部3と、可動部3の下側に取り付けられる車輪部4と、を備える。キャスタ1は、好ましくは、さらに介在部5を備える。可動部3、車輪部4及び介在部5は、上記実施形態2ないしその変形例と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0097】
固定部2は、固定部材23と、芯部材25とを備える。固定部材23は、上記実施形態2と同様に、凹状部材で、底壁に孔部231を有する(詳細は上記実施形態2を参照)。
【0098】
芯部材25は、少なくとも円柱部分を有し、好ましくは更に円柱部分の下方に円柱部分より直径が大きい大径部分を有する。言い換えれば、芯部材25は、好ましくは、縦断面視⊥字形状である。芯部材25は、円柱部分と大径部分が別体に形成された後一体化されてもよいし、図示のように一体に一部材で構成されてもよい。芯部材25は、例えばボルト等の締結部材により走行体本体10に固定される。
【0099】
芯部材25は、固定部材23の孔部231の中央に配置される。芯部材25は、縦断面視⊥字形状である場合は、下方の大径部分が孔部231内にその中央に配置される。芯部材25が孔部231内に配置されることで、芯部材25と孔部231で横断面視リング状の貫通部分であるリング部Kが形成される。また、芯部材25の円柱部分により、固定部材23の周壁により囲まれる内部空間Sも横断面視リング状になる。
【0100】
可動部3は、円柱部331を有する縦断面視⊥字形状の可動部材33を備え、好ましくは、さらに、直径が円柱部331の直径より大きい補助部材34を備える。可動部3は、円柱部331の一部がリング部Kを挿通し、並進運動及び回転運動が可能に固定部2と係り合っている。より具体的には、円柱部331が直径がリング部Kの幅よりやや小さく、リング部Kに沿って芯部材25の周りを相対移動でき、補助部材34が直径がリング状の内部空間Sの幅より小さく、内部空間Sにおいて芯部材25の周りを相対移動できる。また、可動部3は、円柱部331を軸心に回転することができる。
【0101】
図14に示すように、本実施形態では、可動部3は、芯部材25の周りをリング部Kに沿って右回転(時計方向)または左回転(反時計方向)する。なお、以下では、円柱部331の中心と芯部材25の中心との間の距離をrとする。
【0102】
本実施形態のキャスタ1の前進後進方向転換を、後方(+X方向)へ走行し、その後停止し、反対方向の前方(-X)へ走行する例で説明する。
図13Aに示すように、走行体本体10が後方へ移動すると、走行体本体10に固定されている固定部2が後方へ移動し、可動部3の円柱部331が固定部材23の孔部231の前端(即ち内周面の前端面)であるM部にぶつかり可動部3が後方へ移動し、車輪部4も後方へ移動する。
【0103】
方向転換の際は、走行体本体10が前方へ移動すると、円柱部331が孔部231、より具体的にはリング部Kにおいて右回転又は左回転して、孔部231の後端(即ち内周面の後端面)であるN部にぶつかり、可動部3が前方へ移動し、車輪部4も前方へ移動する。
【0104】
図15は、キャスタ1の動作を説明するための模式図で、上方から観察したものである。図示のように、例えば、後進から前進(-X方向)へ方向転換する際、本実施形態のキャスタ1は、車輪41が、芯部材25の周りを矢印方向に90度回った段階で、ほぼ180度反転できるので、偏心量eを相殺し、横振れを減少することができる。
【0105】
このように、本実施形態のキャスタ1は、芯部材25が存在することにより、円柱部331が半径rで必ず回転するので、車輪41の偏心量eにより生ずる横振れを減少することができる。
【0106】
図16は、固定部材23の他の例を説明するための図で、上方から観察したものである。図示のように、本例では、固定部材23は、孔部231の内周面の相対する位置に一対の凹み部2311を有する。固定部材23は、一対の凹み部2311が前方及び後方にそれぞれ配置されるように走行体本体10に固定される。言い換えれば、本例では、一対の凹み部2311に上記前端のM部及び後端のN部がそれぞれ包含されている。キャスタ1は、直進時に凹み部2311に円柱部331の外周面の一部が当接し収まるため、直進性が向上する。
【0107】
<実施形態5の変形例1>
図17Aは実施形態5の変形例1に係るキャスタの一例を示す側面図で、
図17Bは引張コイルばねの一例を示す平面図である。本例では、キャスタ1は、一対の引張コイルばね6を備える。
【0108】
一対の引張コイルばね6は、一端61が可動部材33の円柱部331に直接的にまたは間接的に取付けられ、他端62が固定部材23の孔部231より外方であって相対する位置にそれぞれ取り付けられる。一対の引張コイルばね6は、一方が前方に、他方が後方に配置される。
【0109】
図示例では、両引張コイルばね6は、補助部材34の頂面に設けられる共用のピン部材に一端61を掛けて円柱部331に間接的取り付けられ、孔部231の外方であって前後相対する位置に設けられる一対のピン部材に他端62をそれぞれ掛けて固定部材23に取り付けられる。両引張コイルばね6の他端を掛ける一対のピン部材は、横方向においてM部及びN部と同位置となるように配置され、芯部材25の中心を通る直線上に配置される。
【0110】
キャスタ1が後方(+X方向)に移動しているときは、前方の引張コイルばね6が円柱部331を前方へ引いて安定状態を保っている。このとき、円柱部331は孔部231のM部に当たっている。
【0111】
一方、この状態からキャスタ1が前方(-X方向)へ移動するときは、円柱部331が速やかに回転してN部に当たるようにする必要がある。後方の引張コイルばね6は、伸びが前方の引張コイルばね6より長く弾性力が大きいため、円柱部331を速やかにN部に近づくようにアシストすることができる。なお、次に、反対方向へ方向転換する際は、今度は、前方の引張コイルばね6の伸びが長くなっているので、同様にアシストすることができる。
【0112】
このように、本例の一対の引張コイルばね6は、円柱部331が回転することをアシストしてキャスタ1の横振れ防止のサポートの役目を果たすことができる。
【0113】
以上、本実施形態及びその変形例について説明したが、前述のように、芯部材は、上記実施形態1ないしその変形例と組み合わせることもできる。すなわち、芯部材が可動部3の孔部内に配置され、可動部3にリング部Kが形成されてもよい。一例として、
図18に示すように、芯部材36は、例えばT字形状に構成され、大径部分が可動部3の可動部材30の孔部311の中央に配置される。また、固定部2は、円柱部211の直径がリング部Kの幅よりやや小さく、補助部材22の直径がリング状の内部空間Sの幅より小さく形成される。
【0114】
本実施形態及びその変形例は、実施形態4と組み合わせることもでき、車輪部4に従来の固定キャスタが用いられてもよい。
【0115】
以上、本発明に係るキャスタの実施形態について説明したが、これらは本発明の一例に過ぎず、本発明はこれらに限定されない。本発明には、以上の各実施形態やその変形例を組み合わせた形態や、さらに様々な変形例が含まれる。請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0116】
1…キャスタ、2…固定部、21,23,24…固定部材、22…補助部材、211…円柱部、231…孔部、2311…凹み部、25…芯部材、3…可動部、30,33,35…可動部材、31…孔部材、32…収容部材、34…補助部材、36…芯部材、311…孔部、331…円柱部、4…車輪部、41…車輪、42…車軸、43…ボディ、431…U字状部材、432…取付部材、433…旋回軸部材、434…鋼球、5…介在部、51…フリーボールベアリング、52,53…介在部材、6…引張コイルばね、10…走行体本体、K…リング部。