(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048995
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】デジタル印刷装置、工作物の製造及び工作物への印刷を行う方法、印刷が行われた工作物を供給するシステム
(51)【国際特許分類】
B05C 9/12 20060101AFI20230331BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230331BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230331BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20230331BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230331BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20230331BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20230331BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20230331BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20230331BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
B05C9/12
B05D7/00 K
B05D7/24 301M
B05D1/26 Z
B05D3/00 C
B05D3/06 102Z
B05C5/00 101
B05C11/10
B05C13/02
B41J2/01 109
B41J2/01 127
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022137804
(22)【出願日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】21199532
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520227776
【氏名又は名称】ヒンターコプフ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・シュルツ
【テーマコード(参考)】
2C056
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056FB09
2C056HA44
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC71
4D075AC88
4D075AC91
4D075BB42Z
4D075BB46Z
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4D075EC47
4F041AA01
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA34
4F042AA03
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA22
4F042DB41
4F042DB51
4F042DF28
4F042DF29
4F042DF32
(57)【要約】
【課題】印刷ヘッドの機能を維持するための洗浄作業を行わなければならない洗浄間隔の延長を可能にする、デジタル印刷装置を提供する。
【解決手段】デジタル印刷装置1であって、印刷ヘッド支持体2を備え、印刷ヘッド支持体に、印刷方向11にインキ滴を吐出する印刷ヘッド3と、インキ滴を硬化させる乾燥ユニット4とが取り付けられていて、印刷ヘッドと乾燥ユニットとは、作業空間22を画定し、作業空間において、印刷ヘッドによる工作物の外側表面への印刷像の塗布及び乾燥ユニットによる工作物上の印刷像の乾燥が行われ、乾燥ユニットは、インキ滴の光化学重合に用いられる電磁波を供給するように構成されていて、乾燥ユニットが、放射源18を有し、放射源18は、395ナノメートルの波長、好ましくは385ナノメートルの波長、特に365ナノメートルの波長で強度最大値を有する電磁波を供給するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物(8)に印刷を行うデジタル印刷装置(1)であって、
印刷ヘッド支持体(2)を備え、印刷ヘッド支持体(2)に、印刷方向(11)にインキ滴を吐出する印刷ヘッド(3)と、インキ滴を硬化させる乾燥ユニット(4)とが取り付けられていて、印刷ヘッド(3)と乾燥ユニット(4)とは、作業空間(22)を画定し、作業空間(22)において、印刷ヘッド(3)による工作物(8)の外側表面(12)への印刷像の塗布及び乾燥ユニット(4)による工作物(8)上の印刷像の乾燥が行われ、乾燥ユニット(4)は、インキ滴の光化学重合に用いられる電磁波を供給するように構成されている、デジタル印刷装置(1)において、
乾燥ユニット(4)が、放射源(18)を有し、放射源(18)は、395ナノメートルの波長で、好ましくは385ナノメートルの波長で、特に365ナノメートルの波長で強度最大値を有する電磁波を供給するように構成されていることを特徴とする、デジタル印刷装置(1)。
【請求項2】
放射源(18)は、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化アルミニウムガリウムインジウム、ダイヤモンドのうちの群からなる半導体を有する発光ダイオードとして設けられていて、半導体は、単色の電磁波を供給するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のデジタル印刷装置。
【請求項3】
放射源(18)は、最大放射強度の50%で、13ナノメートルよりも小さい波長間隔で電磁波を供給するように構成されている、及び/又は最大放射強度の25%で、20ナノメートルより小さい波長間隔で電磁波を供給するように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のデジタル印刷装置。
【請求項4】
放射源(18)と作業空間(22)との間に、400ナノメートルより大きいカットオフ波長、好ましくは390ナノメートルより大きいカットオフ波長、特に370ナノメートルより大きいカットオフ波長を有する、特に吸収フィルタとして又はダイクロイックフィルタとして構成されたショートパスフィルタ(19)が配置されていることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載のデジタル印刷装置。
【請求項5】
印刷ヘッド支持体(2)は、機械フレーム(5)に固定されていて、機械フレーム(5)に、工作物用の搬送装置、特に機械フレーム(5)に回動自在に軸支された工作物回転台(6)が配置されていて、搬送装置は、作業空間(22)に工作物(8)を供給するように、及び作業空間(22)内で工作物(8)を印刷方向(11)に対して横向きに整列された回転軸線(10)を中心に回転させるように構成されていることを特徴とする、請求項1、2、3又は4記載のデジタル印刷装置。
【請求項6】
透明又は半透明の材料からなる工作物(8)の製造及び工作物への印刷を行う方法であって、
デジタル印刷装置(1)の作業空間(22)に工作物(8)を供給する、ステップと、
印刷ヘッド(3)から工作物の外側表面(12)の印刷領域(15)にインキ滴を吐出する、ステップと、
工作物(8)を、回転軸線(10)を中心に回転させることによって外側表面(12)に印刷像を作成する、ステップと、
放射源(18)から供給される、395ナノメートルの波長で、好ましくは385ナノメートルの波長で、特に365ナノメートルで強度最大値を有する電磁波を、印刷像の少なくとも部分領域に照射することによってインキ滴を硬化させる、ステップと、
を有することを特徴とする、方法。
【請求項7】
工作物(8)を、400ナノメートルより小さい波長範囲で25%未満、好ましくは15%未満、特に5%未満の光学透過率を有するガラス材料から製造することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工作物(8)をプラスチックから製作し、その際、プラスチックは、2-(2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、(2-ヒドロキシフェニル)-s-トリアジン、ヒドロキシベンゾフェノン、オキサルアニリド、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、ステアリン酸カドミウムの群から選択された紫外放射の吸収材を有することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
回転軸線(10)を中心として工作物(8)を回転させるとき、印刷像が設けられる工作物(8)の外側表面(12)と印刷ヘッド(3)との間の距離が一定であることを特徴とする、請求項6、7又は8に記載の方法。
【請求項10】
印刷が行われた工作物(8)を供給するシステムであって、
請求項1から5のいずれか一項に記載のデジタル印刷装置と、
400ナノメートルより小さい波長範囲で25%未満、好ましくは15%未満、特に5%未満の電磁波の光透過率を有するガラス材料から製造された工作物(8)及び/又は特に2-(2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、(2-ヒドロキシフェニル)-s-トリアジン、ヒドロキシベンゾフェノン、オキサルアニリド、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、ステアリン酸カドミウムの群からなる紫外放射の吸収材を有するプラスチックから製造された工作物(8)と、
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル印刷装置、工作物の製造及び工作物への印刷を行う方法並びに印刷が行われた工作物を供給するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第3473446号明細書において、デジタル印刷装置が知られていて、このデジタル印刷装置は、印刷ヘッドモジュールとインキユニットとを有し、インキユニットは、印刷ヘッドモジュールに印刷インキを供給するように構成されていて、印刷ヘッド支持体は、支持体インタフェースを有し、支持体インタフェースは、印刷ヘッドインタフェースに連結されるように構成されていて、印刷ユニット保持部、印刷ユニットインタフェース、インキユニット、印刷ヘッドインタフェース、支持体インタフェース及び印刷ヘッドモジュールは、印刷方向に沿って配置された列状のアセンブリを形成し、鉛直方向に工作物平面の下方に配置された部分に、少なくとも1つのインキ貯蔵部及び乾燥モジュールが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、印刷ヘッドの機能を維持するための洗浄作業を行わなければならない洗浄間隔の延長を可能にする、デジタル印刷装置、工作物の製造及び工作物への印刷を行う方法並びに印刷が行われた工作物を供給するシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、第1の観点によれば、工作物に印刷を行うデジタル印刷装置によって解決される。この場合、デジタル印刷装置は、印刷ヘッド支持体を備え、印刷ヘッド支持体に、印刷方向にインキ滴を吐出する印刷ヘッドと、インキ滴を硬化させる乾燥ユニットとが取り付けられていて、印刷ヘッドと乾燥ユニットとは、作業空間を画定し、作業空間において、印刷ヘッドによる工作物の外側表面への印刷像の塗布及び乾燥ユニットによる工作物上の印刷像の乾燥が行われ、乾燥ユニットは、インキ滴の光化学重合に用いられる電磁波を供給するように構成されていて、乾燥ユニットが、放射源を有し、放射源は、395ナノメートルの波長で、好ましくは385ナノメートルの波長で、特に365ナノメートルの波長で強度最大値を有する電磁波を供給するように構成されていることが想定されている。
【0006】
この種のデジタル印刷装置では、工作物が、限られた期間にわたって作業空間に定位置に配置されていて、回転運動を行い、その際、工作物の回転軸線は、印刷方向に対して横向きに整列されていることが想定されている。これにより、工作物の外側表面上に大面積の印刷像の作成が可能となる。典型的には、印刷ヘッドは、少なくとも1つのインキノズル列を有し、インキノズル列は、直線状で等ピッチに間隔が置かれた複数のインキノズルを有し、この場合、インキノズルの各々は、印刷方向に個別にインキ滴を吐出するように構成されている。したがって、工作物の回転運動によって、互いに対して平行に整列された複数のインキ滴列が、工作物の外側表面に吐出され、これにより、印刷像が作成され得る。したがって、印刷像は、印刷ヘッドのインキノズルから吐出されるインキ滴列の線幅の何倍もの広がりを有し得る。
【0007】
工作物の回転によって、乾燥ユニットに対する印刷領域の相対運動がもたらされるので、工作物の外側表面に塗布されたインキ滴が、乾燥ユニットの電磁波の作用範囲に至り、その結果、相応に調整された印刷インキが、光化学重合によって硬化させられる。
【0008】
原則として、乾燥ユニットは、印刷ヘッドとは反対の側に配置されていることが前提となる。というのも、これにより、作業室内に配置された工作物による、乾燥ユニットから供給される電磁波に対する有利な遮断効果が引き起こされ得るからである。有利には、乾燥装置の放射源の中心ビームは、インキ滴の印刷方向に対して逆向きに平行に整列されている。特に有利には、中心ビームと印刷方向とは、互いに対して同軸に配置されている。
【0009】
したがって、乾燥装置から供給される電磁波は、原理的には、印刷ヘッドに到達でき、これにより、印刷インキの所望されない硬化、ひいては印刷ヘッドのインキノズルの閉塞が生じることになる。実際には、乾燥ユニットは、工作物が作業空間内に配置されていて、工作物の存在によって、少なくとも1つの放射源と印刷ヘッドの印刷ノズルとの間の光路が遮断されているときにだけ電磁波の放出が行われるように、運転される。
【0010】
もちろん、ある程度の光伝導性を有する材料から製造された多くの工作物では、放射源から出発して印刷ヘッドまでの電磁波の所望されない進行が生じるので、これにより、印刷ヘッドにおいて印刷インキの所望されない硬化が起こり得る。
【0011】
したがって、本発明によれば、乾燥ユニットに、395ナノメートルの波長で強度最大値を有する電磁波を供給する少なくとも1つの放射源、特に複数の放射源だけが装着されることが想定されている。電磁放射が紫外光の範囲に対応付けられた放射源の使用によって、より長い波長の光と比べて短い波長に基づいて、ある種の光導体として作用し得る工作物における電磁放射の進行が低減又は阻止される。
【0012】
したがって、印刷ヘッドに、印刷ヘッドにおける印刷インキの硬化をもたらし得る放射強度が生じないので、この手段によって、印刷インキの所望されない硬化によるインキノズルの閉塞のリスクが著しく減じられる。その結果、より長い波の電磁波を供給する他の乾燥ユニットと比較して、印刷ヘッドの2回の洗浄工程の間の時間間隔を表す洗浄間隔を延長できる。
【0013】
本発明の有利な発展形態は、従属請求項の対象である。
【0014】
有利には、放射源は、窒化アルミニウム(AIN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化アルミニウムガリウムインジウム(AlGalnN)、ダイヤモンド(C)の群からなる半導体を有する発光ダイオードとして設けられていて、半導体は、単色の電磁波を供給するように構成されている。原則として、前述の半導体を有する発光ダイオードは、単色の光を放出するように構成されていて、ただし、半導体により供給される光と周囲の材料との相互作用に基づいて、発光ダイオードから供給される波長スペクトルが広がることが前提となっている。
【0015】
本発明の一発展形態では、放射源は、最大放射強度の50%で、13ナノメートルよりも小さい波長間隔で電磁波を供給するように構成されている、及び/又は最大放射強度の25%で、20ナノメートルより小さい波長間隔で電磁波を供給するように構成されていることが想定されている。その意味するところによれば、放射源が、狭帯域の波長分布を有する電磁波を放出するので、放射源の強度最大値を決定する波長であって、発光ダイオードでは半導体から放出される単色の光の波長に相応する波長から出発して、極めて低い強度しか有しない特により長い波の電磁波が供給される。したがって、相応に調整された印刷インキの使用と相俟って、印刷インキの重合が、短波の電磁波の照射のときにだけ惹起され、短い波長に基づいて、これに関する工作物を通る電磁波の進行が行われない状況に鑑みて、直接印刷ヘッドにおけるインキの乾燥が回避される。
【0016】
本発明の別の形態では、放射源と作業空間との間に、400ナノメートルより大きいカットオフ波長、好ましくは390ナノメートルより大きいカットオフ波長、特に370ナノメートルより大きいカットオフ波長を有する、特に吸収フィルタとして又はダイクロイックフィルタとして構成されたショートパスフィルタが配置されていることが想定されている。このようなショートパスフィルタによって、波長がショートパスフィルタのカットオフ波長よりも大きい電磁波は、ショートパスフィルタの種類に応じて、フィルタ材料に吸収される(吸収フィルタ)又はフィルタで反射され(ダイクロイックフィルタ)、したがって、工作物まで到達せず、ひいては印刷ヘッドに至らない。好ましくは、ショートパスフィルタのカットオフ波長は、放射源が強度最大値を有する波長よりも数ナノメートル大きいことが想定されている。例えば、強度最大値が365ナノメートルにある放射源が、カットオフ波長が390ナノメートル、好ましくは370ナノメートルにあるショートパスフィルタと組み合わされることが想定されている。
【0017】
相応に調整されたショートパスフィルタによって、放射源から放出され、工作物から印刷ヘッドまで導かれ得る波長は、少なくとも大体において、好ましくはほぼ完全に、特に完全に遮断され、それにより、工作物の構成自由度の向上が可能になる。構成自由度は、特に材料選択に関する。というのも、この種のショートパスフィルタを使用するとき、工作物自体が所望されない波長の吸収を保証することにあまり注意を払う必要がないからである。このことは、特にプラスチック材料では重要であり、そうでないときは、適切な吸収材を備え付けなければならす、この吸収材は、コストの増加と、各々のプラスチック材料の材料特性の変化との両方をもたらし得る。
【0018】
有利には、印刷ヘッド支持体は、機械フレームに固定されていて、機械フレームに、工作物用の搬送装置、特に機械フレームに回動自在に軸支された工作物回転台が配置されていて、搬送装置は、作業空間に工作物を供給するように、及び作業空間内で工作物を印刷方向に対して横向きに整列された回転軸線を中心に回転させるように、構成されている。これにより、短時間で大量の工作物に印刷を行うために使用できるデジタル印刷装置が提供される。この場合、印刷ヘッド支持体は、好ましくは機械フレームに定位置に固定されていて、機械フレームに、場合によっては、一連の、例えば別の印刷ヘッド支持体及び/又は印刷工程の実行前後に工作物の前処理又は後処理を行う装置等の別の作業ステーションが設けられてもよい。
【0019】
好適には、搬送装置が、直線状又は円弧状の搬送経路に沿って工作物を搬送するように構成されていて、この場合、各々の工作物に対してステップ運動を行う、つまり加工段階の間の、特に印刷中の、工作物の運動段階及び加工段階の間の工作物の一連の運動を行うことが想定されている。
【0020】
したがって、工作物がその都度作業室内に留まり、その際、回転軸線を中心とする回転を行い、その際、回転軸線は、印刷方向に対して横向きに整列されていることが想定されている。この手段によって、例えば回転軸線に対して同軸に配置された、工作物の、環状に形成された外周面に少なくとも部分的に印刷を行えることを保証できる。
【0021】
本発明の課題は、透明又は半透明の材料からなる工作物の製造及び工作物への印刷を行う方法であって、以下のステップ、つまりデジタル印刷装置の作業空間に工作物を供給する、ステップと、印刷ヘッドから工作物の外側表面の印刷領域にインキ滴を吐出する、ステップと、工作物を、回転軸線を中心に回転させることによって外側表面に印刷像を作成する、ステップと、放射源によって供給される、395ナノメートルの波長で、好ましくは385ナノメートルの波長で、特に365ナノメートルで強度最大値を有する電磁波を、印刷像の少なくとも部分領域に照射することによってインキ滴を硬化させる、ステップと、によって解決される。
【0022】
方法の一改良形態では、工作物を、400ナノメートルより小さい波長範囲で25%未満、好ましくは15%未満、特に5%未満の光学透過率を有するガラス材料から製造することが想定されている。この場合、工作物自体が、ショートパスフィルタの形態で作用し、これにより、印刷ヘッドへの長波の電磁波の進行を回避する他の手段を補助する。
【0023】
方法の別の形態では、工作物をプラスチックから製作し、その際、プラスチックは、2-(2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、(2-ヒドロキシフェニル)-s-トリアジン、ヒドロキシベンゾフェノン、オキサルアニリド、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、ステアリン酸カドミウムの群から選択された紫外放射の吸収材を有することが想定されている。この種の工作物は、工作物の光伝導性に基づいて印刷ヘッドまで到達し得るより長い波の電磁波が工作物に吸収され、したがって、印刷ヘッドでのインキの所望されない乾燥がもたらされないことを保証する。
【0024】
方法の一発展形態では、回転軸線を中心として工作物を回転させるとき、印刷像が設けられる工作物の外側表面と印刷ヘッドとの間の距離が一定であることが想定されている。
【0025】
好ましくは、工作物が、少なくとも印刷像の領域で回転対称に構成されていることが想定されている。特に好適には、工作物全体が回転対称であり、特に円筒スリーブの形態で構成されていることが想定されている。
【0026】
本発明の課題は、印刷が行われた工作物を供給するシステムによって解決され、このシステムは、本発明に係るデジタル印刷装置と工作物とを備え、この場合、工作物は、400ナノメートルより小さい波長範囲で25%未満、好ましくは15%未満、特に5%未満の電磁波の光透過率を有するガラス材料から製造されている及び/又はプラスチックから製造されている。
【0027】
本発明の有利な実施形態が図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】印刷ヘッド支持体と、印刷ヘッドと、乾燥ユニットと、回動自在に軸支された主軸上に保持された工作物とを有するデジタル印刷装置を著しく概略化した側面図で示す。
【
図2】
図1に示されたデジタル印刷装置を著しく概略化した正面図で示し、そこには、印刷ヘッド支持体は示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1及び
図2に著しく概略化して示されたデジタル印刷装置1は、単に概略的に示されただけの印刷ヘッド支持体2を有し、印刷ヘッド支持体2に、同様に概略的に示されただけの印刷ヘッド3及び概略的に示された乾燥ユニット4が定位置に取り付けられている。印刷ヘッド支持体2は、同様に概略的にしか示されていない機械フレーム5に結合されていて、機械フレーム5は、詳細には示されていない形で、図示されていない、製造場所の床板上に定位置に載置されている。
【0030】
機械フレーム5に、記号でしか示されていない工作物回転台6が、回動軸線9を中心に回動自在に軸支されていて、この場合、工作物回転台6は、実際には、例えば円盤状に形成されてよく、半径方向外側に位置する周方向面に、半径方向に整列された複数の主軸が設けられていて、そのうち、
図13には例示的に1つの主軸7だけが示されている。主軸7は、回転軸線10を中心に回動自在に工作物回転台6に保持されていて、単なる例として、円筒形に成形されて構成されている。主軸7は、単なる例として円形スリーブ状に構成された工作物8を保持するために用いられ、工作物8は、例えば、透明又は半透明のプラスチック材料から製造されたプラスチック容器であってよい。
【0031】
印刷ヘッド3は、工作物8の外側表面12に対向して配置された下面20で、図示されていない複数のインキノズルの後方に設けられている。インキノズルは、一直線に沿って等ピッチで配置されていて、この場合、この直線は、回転軸線10に対して平行に整列されている。インキノズルの各々は、図示されていない、印刷ヘッド3用の制御装置によって個別に制御でき、これにより、印刷方向11の、図示されていないインキ滴の吐出を可能にする。単なる例として、主軸7(これに保持された工作物8とともに)と印刷ヘッド3とは、印刷工程の実行中に、印刷方向11が工作物8の外側表面12の面法線と同一であるように相互に整列されている。図示されていないインキノズルの配置によって、印刷ヘッド3は、回転軸線10に対して平行に向けられた直線に沿って、自由に選択可能な数のインキ滴を、工作物8の外側表面12へ吐出できる。したがって、外側表面12に印刷像を作成するために、回転軸線10を中心とする工作物8の回転が行われ、その結果、相並んで位置する複数のインキ滴によって印刷像を作成できることが想定されている。工作物8の外側表面12の、印刷ヘッド3によって印刷可能な領域は、印刷領域15とも称され、円筒面の一部の形状を有する。
【0032】
特に
図2の描画から看取されるように、印刷ヘッド3とは反対の側に、乾燥ユニット4が配置されている。乾燥ユニット4は、印刷ヘッド3と相俟って、作業空間22を画定する。作業空間22内へ、各々の工作物8が装着された主軸7は、回動軸線9を中心とする工作物回転台6の回転によって旋回可能である。そのために、工作物回転台6は、回動ステップ運動を行い、その際、旋回運動と静止段階との連続が想定されていて、その際、静止段階の間に工作物8への印刷が行われ、この静止段階において、工作物8は、回転軸線10を中心とする主軸7の回転によって、印刷ヘッド3に対して相対移動させられる。
【0033】
乾燥ユニット4は、ハウジング16を有し、ハウジング16には、凹部17が設けられていて、凹部17には、単なる一例として発光ダイオードとして構成された複数の放射源18が配置されている。この場合、放射源18の各々は、波長395ナノメートル、好ましくは385ナノメートル、特に365ナノメートルのいずれかで強度最大値が存在するスペクトル波長分布を有する電磁波を供給するために設けられている。好ましくは、全ての放射源18は、同一に構成されていて、それに応じて、各々が同一のスペクトル波長分布を有する。
【0034】
放射源18は、放射源18が最大強度を有する空間方向を示す、各々の放射源18の中心ビーム21が、それぞれ反対側に位置するインキノズルの印刷方向11に対して平行で特に同軸に整列されるように、構成されていて、かつ凹部17内に配置されている。
【0035】
ハウジング16における凹部17は、フィルタ19で覆われていて、その光学特性は、放射源18から供給される電磁波の、所定のカットオフ波長を超える波長が、少なくともほぼ完全に遮断されるように選択されている。このことは、フィルタ19の構成に応じて、電磁波の吸収又は電磁波の反射によって達成される。単なる例として、フィルタ19のカットオフ波長は、放射源18が強度最大値を有するときの波長より数ナノメートル大きいところにあることが想定されている。
【0036】
工作物8は、好ましくは、光学的に透明な又は光学的に半透明な材料、特にガラス又はプラスチック又はガラスとプラスチックの複合材料から製造されていて、したがって、可視光が工作物8を低損失で通過できる特性を有する。したがって、工作物8は、380ナノメートルから780ナノメートルの波長範囲にある電磁波に対して導波路を形成する。工作物8の透明性又は半透明性を断念しなくてよいように、そしてインキ滴の乾燥のために乾燥ユニット4から工作物8の外側表面12に供給される電磁波が印刷ヘッド3まで進行することを回避するために、工作物8は、適切な材料選択によって、400ナノメートルより小さい波長、好ましくは390ナノメートルより小さい、特に370ナノメートルより小さい波長を有する電磁波の進行が少なくとも本質的に妨げられるように構成されている。
【0037】
このような特性は、工作物8の材料としてガラスを使用するとき、相応の吸収材によって実現できる。吸収材は、好ましくは、吸収材によって、使用されるガラス材料のその他の特性が変化しない又は僅かにしか変化しないような性質を有する。工作物8にプラスチックが使用されるとき、同様にそれぞれのプラスチック材料に適合した吸収材を使用できる。
【0038】
したがって、印刷装置1と工作物8をまとめて考慮すると、印刷システム30が得られる。印刷システム30は、以下に要約される特性に基づいて、印刷ヘッドを洗浄するための長い洗浄間隔が保証された、インクジェット印刷法での透明又は半透明の工作物への印刷を可能にする。
【0039】
印刷ヘッド3から図示されていないインクジェットノズルを介して印刷方向11に工作物8の印刷範囲15へ吐出されるインキ滴のインキは、波長が400ナノメートルより小さい、好ましくは390ナノメートルより小さい、特に370ナノメートルより小さい電磁波により重合するように構成されている。
【0040】
工作物8は、透明の材料、特にガラス及び/又はプラスチックから製造されていて、この場合、そのために使用される材料は、相応の吸収材による、波長が400ナノメートルより小さい、好ましくは390ナノメートルより小さい、特に370ナノメートルより小さい電磁波の少なくとも部分的な吸収を保証する。
【0041】
少なくとも1つの放射源18は、395ナノメートルの波長、好ましくは385ナノメートルの波長、特に365ナノメートルの波長で強度最大値を有する電磁波を供給するように構成されている。
【0042】
さらに、少なくとも1つの放射源18と、印刷ヘッド3と乾燥ユニット4とによって画定される作業空間22との間にフィルタ19が配置されていて、フィルタ19は、400ナノメートルより大きいカットオフ波長、好ましくは390ナノメートルより大きいカットオフ波長、特に370ナノメートルより大きいカットオフ波長を有するショートパスフィルタとして構成されていることが想定されている。
【外国語明細書】