IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 全州大學校産學協力團の特許一覧

特開2023-4900ポリイミド共重合体およびそれを用いたポリイミドフィルム
<>
  • 特開-ポリイミド共重合体およびそれを用いたポリイミドフィルム 図1
  • 特開-ポリイミド共重合体およびそれを用いたポリイミドフィルム 図2
  • 特開-ポリイミド共重合体およびそれを用いたポリイミドフィルム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004900
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】ポリイミド共重合体およびそれを用いたポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088065
(22)【出願日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0082004
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522215067
【氏名又は名称】全州大學校産學協力團
【氏名又は名称原語表記】JEONJU UNIVERSITY OFFICE OF INDUSTRY-UNIVERSITY COOPERATION
【住所又は居所原語表記】(Hyojadong 2ga) 303, Cheonjam-ro, Wansan-gu, Jeonju-si, Jeollabuk-do 55069 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ジン ヘ チャン
(72)【発明者】
【氏名】ホン クン キム
(72)【発明者】
【氏名】リ ク カク
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジュ リ
(72)【発明者】
【氏名】ムン ヨン チョイ
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA02
4J043PA05
4J043PA06
4J043QB26
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB01
4J043SB03
4J043SB05
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA042
4J043UA131
4J043UA141
4J043UB061
4J043UB121
4J043UB301
4J043VA011
4J043VA051
4J043ZA12
4J043ZA32
4J043ZA52
4J043ZB21
4J043ZB47
(57)【要約】
【課題】機械的物性、熱的安定性および光学特性が向上したポリイミドフィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態は、複数の構造単位を含むポリイミド共重合体およびそれを含むポリイミドフィルムを提供するものである。複数の構造単位は、脂環式構造を有するジアンヒドリド由来の単位と、エーテル基を含む芳香族ジアミン由来の単位とを含む。これにより、ポリイミドフィルムの機械的物性、熱的安定性および光学特性を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるジアンヒドリド由来の構造単位と、
エーテル基を含む芳香族ジアミン由来の構造単位とを含む、ポリイミド共重合体。
【化1】
【請求項2】
前記芳香族ジアミン由来の構造単位は、下記化学式3で表される第1の構造単位または下記化学式4で表される第2の構造単位を含む、請求項1に記載のポリイミド共重合体。
【化2】
【化3】
(化学式3および化学式4において、nは1~3の整数であり、Yは-S(=O)-または-C(CF-である。)
【請求項3】
前記第1の構造単位は、下記化学式5で表される構造単位および下記化学式6で表される構造単位を含む、請求項2に記載のポリイミド共重合体。
【化4】
【化5】
【請求項4】
前記化学式5で表される前記構造単位と前記化学式6で表される前記構造単位とのモル比は、6:4~2:8である、請求項3に記載のポリイミド共重合体。
【請求項5】
前記第2の構造単位は、下記化学式8で表される構造単位および下記化学式9で表される構造単位を含む、請求項2に記載のポリイミド共重合体。
【化6】
【化7】
【請求項6】
前記化学式8で表される前記構造単位と前記化学式9で表される前記構造単位とのモル比は、8:2~6:4である、請求項5に記載のポリイミド共重合体。
【請求項7】
前記第1の構造単位と前記第2の構造単位とのモル比は、8:2~2:8である、請求項2に記載のポリイミド共重合体。
【請求項8】
固有粘度が0.5~1.2dl/gである、請求項1に記載のポリイミド共重合体。
【請求項9】
重量平均分子量が50,000~200,000g/molである、請求項1に記載のポリイミド共重合体。
【請求項10】
ガラス転移温度(Tg)が200~400℃である、請求項1に記載のポリイミド共重合体。
【請求項11】
請求項1に記載のポリイミド共重合体を含む、ポリイミドフィルム。
【請求項12】
厚さ70μmでASTM E313の規定に準拠して測定した黄色指数(Y.I.)が4.5以下であり、
550nm波長における透過率が85%以上である、請求項11に記載のポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド共重合体およびそれを用いたポリイミドフィルムに関する。より詳細には、複数の単量体または高分子構造を含むポリイミド共重合体、およびそれを用いたポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド(PI)共重合体は主鎖にヘテロイミド環を有しているポリマーであり、芳香族ジアンヒドリドおよび芳香族ジアミンを縮重合した後、イミド化して製造することができる。ポリイミド共重合体は耐熱性、機械的物性、難燃性および低誘電率などに優れ、電子材料、コーティング材料、成形材料、複合材料などの広範な用途を有している。
【0003】
しかしながら、ポリイミド共重合体は、高密度の芳香環構造のため可視光領域での透過度が低いことがある。例えば、500nm付近の波長で透過度が急激に低下し、茶色または黄色に着色することがあり、透明性および高透過性が求められる分野に適用するには限界がある。
【0004】
最近では、フレキシブルディスプレイ、太陽光パネルなどに、耐熱性および機械的物性が改善されたポリイミドフィルムを適用するための研究が盛んに行われている。例えば、ポリイミドフィルムの透明度を改善するために、単量体および溶剤を高純度で精製して重合する方法が試みられている。
【0005】
韓国公開特許第10-2007-0114280号公報では、ポリイミドフィルムの一例を開示しているが、透過率を改善するには十分ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、光学特性および耐久性が向上したポリイミド共重合体を提供することである。
【0007】
本発明の課題は、前記ポリイミド共重合体から製造されたポリイミドフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示的な実施形態によるポリイミド共重合体は、下記化学式1で表されるジアンヒドリド由来の構造単位、およびエーテル基を含む芳香族ジアミン由来の構造単位を含むことができる。
【0009】
【化1】
【0010】
いくつかの実施形態では、前記芳香族ジアミン由来の構造単位は、下記化学式3で表される第1の構造単位または下記化学式4で表される第2の構造単位を含むことができる。
【0011】
【化2】
【0012】
【化3】
【0013】
前記の化学式3および化学式4において、nは1~3の整数であり、Yは-S(=O)-または-C(CF-であってもよい。
【0014】
例えば、前記芳香族ジアミン由来の構造単位は、前記第1の構造単位と前記第2の構造単位とを8:2~2:8のモル比で含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記第1の構造単位は、下記化学式5で表される構造単位および下記化学式6で表される構造単位を含むことができる。
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
【0018】
例えば、前記第1の構造単位は、前記化学式5で表される前記構造単位と前記化学式6で表される前記構造単位とを9:1~1:9のモル比で含むことができ、好ましくは6:4~2:8で含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記第2の構造単位は、下記化学式8で表される構造単位および下記化学式9で表される構造単位を含むことができる。
【0020】
【化6】
【0021】
【化7】
【0022】
例えば、前記第2の構造単位は、前記化学式8で表される前記構造単位と前記化学式9で表される前記構造単位とを9:1~1:9のモル比で含むことができ、好ましくは8:2~6:4で含むことができる。
【0023】
例示的な実施形態によると、前記ポリイミド共重合体は、固有粘度が0.5~1.2dl/gであってもよく、重量平均分子量が50,000~200,000g/molであってもよく、ガラス転移温度(Tg)が200~400℃であってもよい。
【0024】
例示的な実施形態によるポリイミドフィルムは、前述のポリイミド共重合体を含むことができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記ポリイミドフィルムは、厚さ70μmにおいてASTM E313の規定に準拠して測定した黄色指数(Y.I.)が4.5以下であってもよく、550nm波長における透過率が80%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の実施形態によるポリイミド共重合体は、脂環式構造を含む構造単位により、光透過率、黄色指数などの光学特性を向上させることができる。また、エーテル基で連結された芳香族構造を含む構造単位により、耐熱性および耐溶剤性を向上させることができる。
【0027】
また、前記ポリイミド共重合体は、高い固有粘度を有することにより、極性溶媒に対する溶解性を改善することができる。これにより、成形性および加工性を向上させることができる。
【0028】
また、前記ポリイミド共重合体は、異種の構造単位を含むことにより、光学特性が向上し、耐熱性および機械的強度が改善されたポリイミドフィルムを提供することができる。これにより、高温多湿の過酷条件でもポリイミドフィルムの機械的物性および化学的安定性を改善することができ、可視光領域での透過率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、実施例1によるポリイミド共重合体のFT-IRスペクトルグラムである。
図2図2は、実施例1によるポリイミド共重合体の13C-NMRスペクトルグラムである。
図3図3は、実施例1~6によるポリイミドフィルムのUV透過度スペクトルグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態によると、ポリイミド共重合体は、下記化学式1で表されるジアンヒドリド(dianhydride)由来の構造単位、およびエーテル基を含む芳香族ジアミン(diamine)由来の構造単位を含むことができる。
【0031】
【化8】
【0032】
ポリイミド共重合体が前記化学式1で表される脂環式構造を有することにより、芳香族構造のπ電子による電荷移動錯体化(charge transfer complex、CTC)を抑制することができる。この場合、可視光領域での透過率を高めることができ、低い黄色指数を有し、光学特性を向上させることができる。
【0033】
例えば、前記ポリイミド共重合体の黄色指数(yellow index、Y.I.)は4.5以下であってもよく、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下であってもよい。前記黄色指数(Y.I.)は、厚さ70±4μmの試験片に対して、ASTM E313の規定に準拠して測定することができる。
【0034】
例えば、前記ポリイミド共重合体の550nm波長における光透過率は80%以上であってもよく、好ましくは85%以上であってもよい。前記光透過率は、厚さ70±4μmの試験片に対して、550nm波長でUV分光分析計を用いて測定したものであってもよい。
【0035】
前記芳香族ジアミン由来の単位は、ポリイミド共重合体の耐熱性および強度を提供することができる。例えば、芳香族構造は、熱に対する高い安定性を有し、剛直(rigid)な構造により、改善された機械的特性を有することができる。
【0036】
また、芳香族ジアミン由来の単位がエーテル基を含むことにより、隣接する芳香族構造のπ電子の移動が制限され、光学特性を共に改善することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記ジアンヒドリド由来の構造単位と前記芳香族ジアミン由来の構造単位とのモル比は4:6~6:4であってもよく、好ましくは4.5:5.5~5.5:4.5であってもよい。例えば、前記ジアンヒドリド由来の構造単位と前記芳香族ジアミン由来の構造単位とのモル比は5:5であってもよい。前記範囲では、ポリイミド共重合体の機械的特性および耐熱性が向上し、可視光透過度を改善することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記ポリイミド共重合体は、下記化学式2で表される繰り返し単位を含む。
【0039】
【化9】
【0040】
前記化学式2において、Xは-O-、
【0041】
【化10】
、および、
【0042】
【化11】
のうちの少なくとも一つであってもよく、Yは-O-、-S(=O)-または-C(CF-であってもよく、*は結合手である。
【0043】
例えば、前記化学式2で表される繰り返し単位は、ポリイミド共重合体の全繰り返し単位に対して80モル%以上含まれてもよく、好ましくは90モル%以上含まれてもよく、例えば100モル%含まれてもよい。この場合には、耐熱性および機械的物性を改善することができ、芳香族構造による吸光が抑制され、可視光領域での透過率を向上させることができる。
【0044】
例示的な実施形態によると、前記芳香族ジアミン由来の単位は、下記化学式3で表される第1の構造単位及び/又は下記化学式4で表される第2の構造単位を含むことができる。
【0045】
【化12】
【0046】
【化13】
【0047】
前記化学式3におけるnは1~3の整数であってもよく、前記化学式4におけるYは-S(=O)-または-C(CF-であってもよい。
【0048】
前記第1の構造単位は、主鎖内にエーテル結合のみを有し、エーテル基によって全体的に曲がった構造を有することにより、π電子の移動を制限して、可視光領域で高い光学透明度を有することができる。また、第1の構造単位により、ポリイミド共重合体の分子間の積み重ね(stacking)が増加し、鎖間の引力が高くなって機械的強度および初期モジュラスを向上させることができる。
【0049】
前記第2の構造単位は、芳香環が電気陰性度の大きい置換基(CF)や極性官能基(SO)によって連結され、π電子による電荷移動錯体化現象を低減することができる。また、主鎖内に体積の大きい置換基や官能基が存在することにより、分子の動きが抑制され、動きに必要な自由体積を増加させてガラス転移温度を高めることができる。
【0050】
例示的な実施形態によると、前記第1の構造単位は、下記の化学式5~化学式7で表される構造単位の少なくとも一つを含むことができる。
【0051】
【化14】
【0052】
【化15】
【0053】
【化16】
【0054】
いくつかの実施形態では、前記第1の構造単位は、前記化学式5で表される構造単位および前記化学式6で表される構造単位を含むことができる。
【0055】
前記化学式5で表される構造単位は、他の構造単位との結合部位が芳香環のメタ(meta)位に位置して、全体的に曲がった構造を有することができる。この場合には、π電子の移動を制限して光学特性を向上することができ、ポリイミド共重合体に対する溶媒の浸透力が改善されて共重合体の溶解性を向上させることができる。
【0056】
化学式6で表される構造単位は、他の構造単位との結合部位が芳香環のパラ(para)位に位置して、共重合体が全体的に剛直な直線構造を有することができる。この場合には、鎖同士が密接に存在して分子間の引力が増加し、高分子鎖のセグメント運動(segmental motion)が制限されるので、耐熱性および機械的特性を改善することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、化学式5で表される構造単位と化学式6で表される構造単位とのモル比は9:1~1:9であってもよく、好ましくは8:2~2:8、より好ましくは6:4~2:8であってもよい。この場合には、化学式5で表される構造単位によって共重合体の加工性および光学特性を向上させることができ、化学式6で表される構造単位によって耐熱性および機械的物性を共に改善することができる。
【0058】
一実施形態では、前記第1の構造単位は、前記化学式5および前記化学式6で表される構造単位に加えて、前記化学式7で表される構造単位をさらに含むことができる。
【0059】
化学式7で表される構造単位は、熱安定性の高い芳香環の含有量が相対的に高くて熱膨張係数が低くなり、低い高温重量損失量(weight loss)および高い初期分解温度(decomposition temperature)を有することができる。
【0060】
例示的な実施形態によると、第2の構造単位は下記の化学式8~化学式10で表される構造単位の少なくとも一つを含むことができる。
【0061】
【化17】
【0062】
【化18】
【0063】
【化19】
【0064】
いくつかの実施形態では、前記第2の構造単位は、前記化学式8で表される構造単位および前記化学式9で表される構造単位を共に含むことができる。
【0065】
化学式8で表される構造単位は、他の構造単位との結合部位が芳香環のメタ(meta)位に位置して、全体的に曲がった構造を有しているので、光学特性を向上させることができる。また、電気陰性度の大きいスルホニル基により、低い熱膨張係数を有することができる。
【0066】
化学式9で表される構造単位は、主鎖が全体的にパラ(para)形態の剛直な直線構造を有しており、スルホニル基(SO)が高分子鎖の動きを阻害して共重合体の熱的安定性および機械的物性を改善することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、化学式8で表される構造単位と化学式9で表される構造単位とのモル比は9:1~1:9であってもよく、好ましくは8:2~2:8、より好ましくは8:2~6:4であってもよい。前記範囲内では、ポリイミド共重合体の熱的安定性および機械的物性が改善され、光学特性を向上させることができる。
【0068】
一実施形態では、前記第2の構造単位は、前記の化学式8および化学式9で表される構造単位に加えて、前記化学式10で表される構造単位をさらに含むことができる。
【0069】
この場合には、体積の大きい置換基(-CF)によって自由な鎖の動きが難しくなるので、ポリイミド共重合体の自由体積が増加し、高いガラス転移温度を有することができる。また、芳香族構造が熱的に安定した官能基(-C(CF-)によって連結されるので、熱分解温度および高温重量残余量(weight residue)を高めることができる。
【0070】
また、強力な電子求引性(electro withdrawing)基である置換基が芳香族構造のπ電子を引き寄せて電子の移動を阻害することができる。これにより、ポリイミド共重合体は低い黄色指数を有することができ、光学透過度が向上できる。
【0071】
例示的な実施形態によると、前記ポリイミド共重合体は、前記第1の構造単位および前記第2の構造単位を共に含むことができる。例えば、前記第1の構造単位と前記第2の構造単位とのモル比は8:2~2:8であってもよく、好ましくは6:4~4:6であってもよい。
【0072】
前記範囲内では、ポリイミド共重合体の耐熱性および光学特性が向上し、ポリイミド共重合体は高い機械的特性を有することができる。例えば、第1の構造単位により、分子間の積み重ねおよび鎖間の引力を高めることができ、これにより、ポリイミド共重合体の耐熱性および機械的物性を向上させることができる。例えば、第2の構造単位により、π電子の移動を制限して共重合体の光学的特性を向上させることができ、主鎖内に体積の大きい置換基及び/又は官能基を有することにより、高いガラス転移温度を有することができる。
【0073】
例示的な実施形態によると、前記ポリイミド共重合体の固有粘度(intrinsic viscosity、IV)は0.5~1.2dl/gであってもよく、好ましくは0.8~1.2dl/gであってもよい。前記範囲内では、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの非プロトン性極性溶媒に対する溶解性に優れたものにすることができる。例えば、前記固有粘度は、ポリイミド共重合体0.1gを常温でジメチルアセトアミド(DMAc)100mlに溶解した後、ウベローデ粘度計を用いて測定することができる。
【0074】
芳香族ポリイミド共重合体は、構造単位の大部分が芳香環で構成されており、末端に芳香族または環状構造を含む。そのため、共重合体は低い固有粘度を有することになり、これにより、極性溶媒への溶解度が非常に低いことがある。
【0075】
例示的な実施形態によるポリイミド共重合体は、構造単位内の芳香環の含有量が少なく、高分子鎖が全体的に曲がった構造を有するか、または体積の大きい置換基を有することにより、極性溶媒に対して高い溶解度を示すことができる。
【0076】
例えば、ポリイミド分子の間への溶媒の浸透が容易であるので、完全にイミド化された状態でも高い固有粘度を有することができる。この場合、溶媒キャストによるフィルム成形性および加工性を改善することができ、低温加工が求られる電気/電子材料に容易に適用できる。
【0077】
例示的な実施形態によると、前記ポリイミド共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン換算の重量平均分子量)は50,000~2,000,000g/molであってもよく、好ましくは50,000~1,000,000g/molであってもよい。具体的には、前記ポリイミド共重合体の重量平均分子量は50,000~200,000g/molであってもよい。例えば、前記重量平均分子量は、ゲルクロマトグラフィー(GPC)法を用いて測定することができる。
【0078】
重量平均分子量が50,000g/mol未満であると、ポリイミド共重合体の機械的物性および耐熱性が低下することがある。重量平均分子量が2,000,000g/molを超えると、ポリイミド共重合体の粘度が上昇し、溶解度が低下することがある。前記範囲内では、ポリイミド共重合体の機械的物性、耐熱性を維持しながら成形性および加工性を改善することができる。
【0079】
前記ポリイミド共重合体は、主鎖内にエーテル基および極性官能基を有しているが、パラ(para)形態の直線構造を有する構造単位を含むことで、全体的に剛直な直線構造を有することができる。これにより、ガラス転移温度、熱分解温度、高温重量残余量などの熱的特性を改善することができる。
【0080】
一実施形態では、前記ポリイミド共重合体のガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)は180℃以上であってもよく、好ましくは200~400℃であってもよい。ガラス転移温度が180℃未満であると、高温安定性が十分に提供されないことがあり、ガラス転移温度が400℃を超えると、ポリイミド共重合体の加工性および成形性が低下することがある。
【0081】
一実施形態では、前記ポリイミド共重合体の熱分解温度(decomposition temperature、Td)は450℃以上であってもよく、好ましくは450~500℃であってもよい。例えば、熱分解温度は窒素ガス雰囲気下で常温から10℃/minの昇温速度で加熱し、重量が初期重量に対して2%減少したときの温度であってもよい。前記範囲内では、ポリイミド共重合体の熱的安定性を向上させることができる。
【0082】
一実施形態では、前記ポリイミド共重合体の600℃における重量残余量(weight residue,wtR 600)は、初期重量に対して40%以上であってもよく、好ましくは45%以上、具体的には45~50%であってもよい。例えば、重量残余量は、窒素ガス雰囲気下で常温から10℃/minの昇温速度で加熱し、初期重量に対する600℃における重量の百分率であってもよい。
【0083】
前記ポリイミド共重合体は、前述した構造単位を含むことによって分子間の積み重ね(stacking)が緻密であり、隣接する高分子鎖間の引力が高く、機械的物性を改善できる。
【0084】
一実施形態では、前記ポリイミド共重合体の最終強度(ultimate strength)は70MPa以上であってもよく、好ましくは80MPa以上であってもよい。例えば、前記ポリイミド共重合体の最終強度は80~100MPaであってもよい。
【0085】
一実施形態では、前記ポリイミド共重合体の初期弾性率(initial modulus)は2.2GPa以上であってもよく、好ましくは2.5GPa以上であってもよい。例えば、前記ポリイミド共重合体の初期弾性率は2.5~3.5GPaであってもよく、具体的には3.0~3.5GPaであってもよい。
【0086】
一実施形態では、前記ポリイミド共重合体の引張伸度(elongation percent at break)は2%以上であってもよく、好ましくは3~5%であってもよい。
【0087】
前記ポリイミド共重合体の機械的特性は、厚さ70μmでASTM D882の規定に準拠し、引張試験機(instron 5564)を用いて、5mm/minの引張速度および23℃の温度の条件で測定することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、前記ポリイミド共重合体は、ポリアミック酸溶液を閉環脱水して形成することができる。
【0089】
例示的な実施形態によると、前記ポリイミド共重合体はポリアミック酸から形成することができる。例えば、ポリアミック酸溶液をイミド化反応によって形成することができる。
【0090】
ポリアミック酸は、ジアミン(diamine)単量体とジアンヒドリド(dianhydride)単量体の共重合体を含むことができる。
【0091】
例えば、前記ポリアミック酸は、ジアミン単量体、ジアンヒドリド単量体および溶媒を含む混合物を撹拌して調製することができる。この場合には、ジアンヒドリド単量体の酸無水物基が開環してジアミン単量体のアミン基(-NH)と縮合反応することにより、アミド構造を有するポリアミック酸を形成することができる。前記混合物を撹拌する段階は、窒素雰囲気下で行うことができる。
【0092】
一実施形態では、前記混合物を攪拌する段階は、順次に約-10~10℃で約0.5~2時間攪拌する段階、および15~35℃で約12~16時間撹拌する段階を含むことができる。前記段階を順次行うことによって混合物を安定化させることができ、ポリアミック酸の重合度を高めることができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、前記溶媒は、アセトン(Aceton)、トルエン(Toluene)、メタノール(CHOH)、テトラヒドロフラン(THF)、ピリジン(Pyridine)、クロロホルム(CHCl)、ジクロロメタン(CHCl)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などを含むことができる。これらは単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、前記ジアンヒドリド単量体として、脂環式構造を有する単量体を含むことができる。例えば、ジアンヒドリド単量体として、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(1,2,4,5-cyclohexanetetracarboxylic dianhydride)を含むことができる。
【0095】
脂環式構造を有するジアンヒドリド単量体を含むことにより、ベンゼン構造のπ電子による電荷移動錯体化現象を抑制することができる。また、脂環式構造を1つだけ含むことにより、ポリイミド共重合体が、1つの脂環式環が一定に繰り返される短い構造を有することによって、耐熱性および機械的物性を向上させることができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、前記ジアミン単量体はエーテル基を有する単量体を含むことができる。例えば、ジアミン単量体として、3,4-オキシジアニリン(3,4-oxydianiline)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-bis(3-aminophenoxy)benzene)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,4-bis(4-aminophenoxy)benzene)、m-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-スルホン(m-bis[4-(3-aminophenoxy)phenyl]-sulfone)、p-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-スルホン(p-bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]sulfone)、及び/又は2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル]ヘキサフルオロプロパン)(2,2-bis[4-(4-aminophenoxy)-phenyl]hexafluoropropane)などを含むことができる。
【0097】
ジアミン単量体がエーテル基を含む場合には、π電子の移動を阻害してポリイミド共重合体の耐熱性を向上させることができる。また、エーテル基の場合は、体積が小さくて分子間の積み重ね(stacking)を増進させることができ、これにより、ポリイミド共重合体の機械的特性を向上させることができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、前記ジアンヒドリド単量体およびジアミン単量体は、40:60~60:40のモル比で重合することができ、好ましくは45:55~55:45のモル比で重合することができる。この場合には、ジアンヒドリド単量体の酸無水物基とジアミン単量体のアミン基のモル比が類似することにより、ポリアミック酸の重合度が向上し、これから形成されたポリイミド共重合体の機械的特性を改善することができる。
【0099】
前記形成されたポリアミック酸溶液を乾燥してイミド化(imidization)することにより、ポリイミド共重合体を形成することができる。
【0100】
ポリアミック酸溶液を乾燥する段階は、約40~100℃の温度で約1~3時間行うことができる。例えば、前記乾燥段階は、約40~60℃で約0.5~1.5時間行う第1の乾燥段階、および約70~90℃で約0.5~1.5時間行う第2の乾燥段階を含むことができる。好ましくは、第1の乾燥段階は約50℃で1時間行うことができ、第2の乾燥段階は約80℃で1時間行うことができる。一実施形態では、前記乾燥段階は真空状態で行うことができる。
【0101】
乾燥工程を段階的に行うことにより、混合溶液の乾燥時間を短縮するとともに、高温によるイミド化反応の急激な進行を防止することができる。例えば、第1の乾燥段階を行うことにより、ポリアミック酸を安定化させるとともに、水分または溶媒を徐々に揮発させることができ、第2の乾燥段階を行うことにより、混合溶液に含まれる水分または溶媒を完全に除去することができる。
【0102】
前記イミド化段階は、熱的イミド化法、化学的イミド化法、再沈法などにより行うことができる。好ましくは、加工性、高収率および高分子量の観点から段階的な熱イミド化法を行うことができる。例えば、熱処理工程によってポリアミック酸が閉環脱水され、ポリイミドに変換され得る。
【0103】
熱処理工程は、順次に100~130℃、130~160℃および160~190℃でそれぞれ約0.5~1時間行う第1の熱処理段階、順次に190~220℃および220~240℃でそれぞれ約0.5~1時間行う第2の熱処理段階、および、240~260℃の温度で約0.5~2時間行う第3の熱処理段階を含むことができる。このように、熱処理段階を、加熱温度をゆっくりと昇温して段階的に行うことにより、ポリアミック酸単位のポリイミドへの変換率を高めることができ、例えば完全なイミド化反応を実現することができる。
【0104】
好ましくは、前記熱処理段階は、順次に約110℃、約140℃および約170℃でそれぞれ30分間行う第1の熱処理段階、順次に約195℃および約220℃でそれぞれ30分間行う第2の熱処理段階、および約250℃で30分間行う第3の熱処理段階を含むことができる。
【0105】
熱処理段階の熱処理温度が高すぎると、ポリイミド共重合体の変形または収縮が引き起こされることがあり、膜またはフィルム状のポリイミドを提供できないことがある。
【0106】
その後、製造されたポリイミド共重合体を極性溶媒に溶解して鋳型に注入し、溶媒を乾燥し、ポリイミドフィルムを形成することができる。このとき、鋳型は目的とする形状および厚さによって制限されることなく選択することができる。前述のポリイミド共重合体は、高い固有粘度を有しているので極性溶媒に対する溶解性が高くなり、ポリイミド共重合体の成形性および加工性を向上させることができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、前記ポリアミック酸溶液の乾燥段階の前に、ポリアミック酸溶液を基材上に塗布する段階をさらに含むことができる。例えば、乾燥工程によってポリアミック酸溶液中に存在する水分および溶媒を除去することにより、ポリアミック酸フィルムを形成することができる。
【0108】
前記基材としては、例えば、PET基板、SUS基板またはガラス基板などを用いることができる。前記塗布は、例えば、スピンコート、バーコート、スプレーコート、スリットコートなどの塗布方法により行うことができる。
【0109】
その後、ポリアミック酸フィルムに対して前述の熱処理工程を行うことにより、前述のポリイミド共重合体を含むポリイミドフィルムを形成することができる。この場合、ポリイミドフィルムを基材から除去する段階をさらに含むことができる。例えば、ポリイミドフィルムが形成されている基材を水に浸漬し、基材からポリイミドフィルムを剥離することができる。
【0110】
例示的な実施形態によると、前記ポリイミドフィルムの厚さは約50~100μmであってもよく、好ましくは60~80μmであってもよい。前記範囲内では、ポリイミドフィルムの透明性および機械的性質を向上させることができる。
【0111】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0112】
実施例及び比較例
実施例1
ジメチルアセトアミド(DMAc)12mlに、ジアンヒドリド単量体としての1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(1,2,4,5-cyclohexanetetracarboxylic dianhydride)1.3×10-2モル(2.91g)を加え、常温(25℃)で30分間攪拌した後、ジアミン単量体としての3,4-オキシジアニリン(3,4-oxydianiline)1.3×10-2モル(2.60g)を加えた。その後、窒素雰囲気下で0℃で1時間攪拌し、常温で14時間攪拌して、ポリアミック酸(polyamic acid, PAA)溶液を調製した。
【0113】
前記調製したポリアミック酸溶液をコートバーを用いてガラス板にコートした。前記コートの後、真空状態のオーブンで50℃の温度で1時間維持した後、80℃の温度で1時間維持した。
【0114】
その後、窒素雰囲気下で順次に110℃、140℃、170℃、200℃、230℃および250℃の温度でそれぞれ30分間熱処理し、ポリイミドフィルムを合成した。その後、ガラス板を5wt%フッ酸(HF)水溶液に浸漬して、ガラス板から合成されたポリイミドフィルムを除去し、厚さ71±3μmのポリイミドフィルムを得た。
【0115】
図1は、実施例1によるポリイミドフィルムのFT-IRスペクトル示す。図1を参照すると、C=O伸張ピークを1778および1698cm-1で確認することができ、1337cm-1でイミドの特性であるC-N-Cストレッチに該当するピークを確認することができる。したがって、前述の熱処理段階により、最終的にポリイミド共重合体が合成されたことを確認することができる。
【0116】
図2は、実施例1によるポリイミドフィルムの13C-NMRスペクトルを示す。図2において、121.59、128.78、133.01、154.99および158.54ppmはベンゼン環に含まれる13Cを示し、21.31および38.16ppmは脂肪族環に含まれる13Cを表す。図2を参照すると、前述の熱処理段階により、脂肪族環および芳香族環を有するポリイミド共重合体が合成されたことを確認することができる。
【0117】
実施例2~20
ジアミン単量体1.3×10-2モルを下記表1に示すように添加した以外は、実施例1と同様の方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0118】
【表1】
【0119】
比較例1~12
ジアンヒドリド単量体1.3×10-2モルおよびジアミン単量体1.3×10-2モルを下記表2に示すように添加した以外は、実施例1と同様の方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0120】
【表2】
【0121】
表1及び表2に示す具体的な成分名は、以下の通りである。
ジアンヒドリド単量体(A)
A-1:1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(1,2,4,5-cyclohexanetetracarboxylic dianhydride)
A-2:ピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride)
A-3:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’-(Hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride)
ジアミン単量体(B)
B-1:3,4-オキシジアニリン(3,4-oxydianiline)
B-2:1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-bis(3-aminophenoxy)benzene)
B-3:1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,4-bis(4-aminophenoxy)benzene)
B-4:m-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-スルホン(m-bis[4-(3-aminophenoxy)phenyl]-sulfone)
B-5:p-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-スルホン(p-bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]sulfone)
B-6:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル]ヘキサフルオロプロパン)(2,2-bis[4-(4-aminophenoxy)-phenyl]hexafluoropropane)
B-7:4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(4,4’-diaminodicyclohexylmethane)
B-8:2,2’-ジアミノビフェニル(2,2’-diaminobiphenyl)
【0122】
実験例
(1)固有粘度の測定
実施例及び比較例によるポリイミド共重合体0.1gを25℃でDMAc100mlに溶解した後、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計で固有粘度を測定した。ポリイミド共重合体が溶解しなくて測定不可能な場合は「-」で示した。
【0123】
(2)黄色指数および光透過率の評価
実施例及び比較例によるポリイミドフィルムの黄色指数(Yellow index, Y.I)をASTM E313の規定に準拠し、分光測色計(CM-3600D、Konica Minolta)を用いて測定した。
また、実施例及び比較例によるポリイミドフィルムの550nm波長における光透過率をUV分光分析計(UV-3600、Shimadzu)を用いて測定した。
【0124】
(3)ガラス転移温度(Tg)
実施例及び比較例によるポリイミドフィルムを示差走査型熱量計(DSC 200F3、Netzsch)を用いて、ガラス転移温度(glass transition temperature、Tg)を測定した。具体的には、20℃/minの昇温速度で-30℃から300℃に昇温してガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
表3および表4を参照すると、本発明の例示的な実施形態によるポリイミドフィルムの場合は、550nmにおいて85%以上の光透過率を有し、黄色指数が4.5以下の低い値を示した。また、全体的に高い固有粘度を有しているため、極性溶媒に対して改善された溶解度を有することができる。
【0128】
全体的に芳香族構造を有している比較例1~10の場合は、芳香環の含有量が増加して光学特性が劣化し、固有粘度が低くて溶解度が劣化することを確認できる。
【0129】
脂環族ジアミン単量体に由来する構造を有している比較例11の場合は、熱的安定性および機械的物性が顕著に劣化しており、エーテル基を含んでいない比較例12の場合は、光学特性が低下した。
【0130】
図3は、実施例1~6によるポリイミドフィルムのUV透過図を示す。図3を参照すると、実施例1~6の場合は、カットオフ波長(cut-off wavelength)が310nm以下で示された。このことから、可視光領域の前に光透過が行われることを確認することができる。また、500nm以上の波長で80%以上の向上した透過率を有することを確認することができる。
【0131】
(4)耐熱性の評価
1)熱分解温度(Td)および重量残余量(wt 600
実施例によるポリイミドフィルムに対して、熱重量分析装置(TGA Q500, TA instrument)を用いて熱分解温度(decomposition temperature, Td)を測定した。具体的には、10℃/minの昇温速度で0℃から600℃に昇温し、ポリイミドフィルムの初期重量が2%減少したときの温度を測定して熱分解温度(Td)とした。その後、600℃における重量残余量(weight residue,wtR 600)を測定した。
【0132】
2)熱膨張係数(CTE)
実施例によるポリイミドフィルムに対して、熱機械分析計(TMA 2940、TA instrument)を用いて、10℃/minの昇温速度および5gの荷重条件で50~150℃における熱膨張係数(CTE)を測定した。
【0133】
【表5】
【0134】
(5)機械的性質
実施例によるポリイミドフィルムを5mm×70mmに切断した後、ASTM D882の規定に準拠し、引張試験機(instron 5564、instron)を用いて、5mm/minの引張速度および23℃の温度で降伏強度(ultimate strength)、初期弾性率(initial modulus)および引張伸度(elongation percent at break)を測定した。測定値は、各数値を12回測定し、各数値における最大値と最小値を除いた残りの値の平均値で計算した。
【0135】
(6)気体透過度
実施例によるポリイミドフィルムに対して、ASTM D3985の規定に準拠し、酸素透過率装置(OX-TRAN 2/61, Mocon)を用いて、23℃、0%RHで100%のO濃度条件で30分間酸素ガス透過度を測定した。
【0136】
【表6】
【0137】
表5および表6を参照すると、メタ(meta)の結合構造を有するジアミン単量体B-2またはB-4に由来する構造単位、およびパラ(para)の結合構造を有するジアミン単量体B-3またはB-5に由来する構造単位をすべて含む実施例7~14の場合は、各構造単位のモル比によって高いガラス転移温度および向上した光学特性を同時に満足した。
【0138】
実施例6の場合は、ポリイミド共重合体が全体的に非常に曲がった構造を有することにより、分子間の緻密な積み重ねが難しくなり、機械的物性および気体透過度がやや低下した。
【0139】
極性置換基非含有ジアミン単量体(B-1~B-3)および極性置換基含有ジアミン単量体(B-4~B-6)をすべて使用した実施例15~20の場合は、極性置換基非含有ジアミン単量体に由来する単位によって機械的強度が改善され、極性置換基含有ジアミン単量体に由来する単位によって光学特性および耐熱性が確保された。
図1
図2
図3