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  • 特開-カバーテープおよび電子部品包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049018
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】カバーテープおよび電子部品包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/86 20060101AFI20230331BHJP
   B65D 75/36 20060101ALI20230331BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230331BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230331BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230331BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
B65D85/86 300
B65D75/36
B65D65/40 D
B32B27/30 A
B32B27/36
B32B27/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150956
(22)【出願日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2021157705
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022133170
(32)【優先日】2022-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 皓基
(72)【発明者】
【氏名】増井 健
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
3E096
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AB41
3E067AB47
3E067AC04
3E067AC11
3E067AC18
3E067BA34A
3E067BB14A
3E067BB18A
3E067BB25A
3E067BC04A
3E067BC07A
3E067CA11
3E067CA24
3E067EA06
3E067EA29
3E067EA32
3E067EA35
3E067EB27
3E067EC08
3E067EE46
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD07
3E067GD10
3E086AB02
3E086AC07
3E086AC35
3E086AD30
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB85
3E086BB90
3E086CA31
3E086DA08
3E096AA06
3E096BA09
3E096CA14
3E096CC01
3E096DB06
3E096DC03
3E096EA04X
3E096EA11X
3E096FA31
3E096GA01
3E096GA07
4F100AK06C
4F100AK12A
4F100AK25A
4F100AK42B
4F100AK71A
4F100AL01A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA22A
4F100GB15
4F100GB41
4F100JA06A
4F100JC00C
4F100JG03A
4F100JK06
4F100JL12A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】キャリアテープからの剥離強度が安定しているとともに、剥離後の外観に優れたカバーテープを提供する。
【解決手段】基材層と、前記基材層の一方の面に積層されたシーラント層と、を含む電子部品包装用のカバーテープであって、前記シーラント層は、(A)(メタ)アクリレート共重合体と、(B)石油由来の樹脂と、を含むカバーテープ。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層の一方の面に積層されたシーラント層と、を含む電子部品包装用のカバーテープであって、
前記シーラント層は、(A)(メタ)アクリレート共重合体と、(B)石油由来の樹脂と、を含むカバーテープ。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)の(メタ)アクリレート含有率は、10モル%以上25モル%以下である、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)の190℃、21.2Nにおけるメルトフローレート(MFR)は、3g/10min以上15g/10min以下である、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)は、エチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、およびエチレン-ブチル(メタ)アクリレート共重合体から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項5】
前記石油由来の樹脂(B)は、脂肪族系、芳香族系、ジシクロペンタジエン(DCPD)系、およびこれらの共重合系の石油由来樹脂から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項6】
前記石油由来の樹脂(B)の含有量は、前記シーラント層全体に対して、1質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項7】
前記シーラント層は、帯電防止剤をさらに含む、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項8】
前記シーラント層は、ポリスチレン系樹脂をさらに含む、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項9】
前記基材層が、ポリエステルフィルムである、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項10】
中間層をさらに備え、
前記基材層、前記中間層、前記シーラント層がこの順に積層されている、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項11】
前記中間層は、バイオマス由来の樹脂を含む、請求項10に記載のカバーテープ。
【請求項12】
前記バイオマス由来の樹脂は、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂を含む、請求項11に記載のカバーテープ。
【請求項13】
前記中間層は、石油由来の樹脂をさらに含む、請求項10に記載のカバーテープ。
【請求項14】
電子部品が格納されたキャリアテープと、
前記電子部品を封止するように前記キャリアテープに前記シーラント層が接着された請求項1~13のいずれかに記載のカバーテープと、を備える電子部品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーテープおよび電子部品包装体に関する。より詳細には、カバーテープ、およびこのカバーテープを用いて製造される電子部品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ICチップなどの電子部品は、その製造後、実装工程に供されるまでの間、汚染を防止すべく包装材にてパッキングされ、紙製或いはプラスチック製のリールに巻き取られた状態で、保管および輸送される。この電子部品の包装には、自動実装装置による基板への実装工程に対応するように、テープ状の包装材が用いられており、この包装材は、長尺のシートに所定の間隔をおいて複数個の凹状の格納ポケットが形成されたキャリアテープと、該キャリアテープにヒートシールされるカバーテープから構成される。電子部品は、キャリアテープの格納ポケットに収容された後、キャリアテープの上面に蓋材としてのカバーテープが重ねられ、加熱したシールバーでカバーテープの両端を長さ方向に連続してヒートシールされて、電子部品包装体とされる。
【0003】
この電子部品包装体は、半導体基板への実装工程に移送され、次いで、キャリアテープからカバーテープが剥離され、格納された電子部品が取り出され、この電子部品は半導体基板に実装される。電子部品の実装工程において、カバーテープの剥離が円滑に行われることが重要となる。また近年の高速実装化に伴い、カバーテープの剥離速度が上昇し、これによりカバーテープの剥離強度の向上が求められている。例えば、特許文献1には、剥離強度が剥離速度の影響を受けにくく、従来の剥離強度管理方法においても高速実装時の剥離強度が異常に高まらないカバーテープを得る観点から、所定の厚さ、引張弾性率を有する基材層と、ポリスチレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂、脂肪酸アミドを含有し、所定の厚さ、引張弾性率を有するヒートシール層を備えるカバーテープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-263257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1記載の技術では、カバーテープの剥離時に、カバーテープのシーラント層がキャリアテープ側にとどまり、シーラント層と中間層との間で剥離が生じる場合があった。その結果、カバーテープの適切な剥離強度を得ることができない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ヒートシール層を構成する樹脂組成物の配合を調整することにより、カバーテープを剥離する際に、当該カバーテープのヒートシール層が凝集破壊し、キャリアテープからの剥離強度が安定しているとともに、剥離後の外観に優れたカバーテープが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明によれば、以下に示すカバーテープおよび電子部品包装体が提供される。
[1]基材層と、
前記基材層の一方の面に積層されたシーラント層と、を含む電子部品包装用のカバーテープであって、
前記シーラント層は、(A)(メタ)アクリレート共重合体と、(B)石油由来の樹脂と、を含むカバーテープ。
[2]前記(メタ)アクリレート共重合体(A)の(メタ)アクリレート含有率は、10モル%以上25モル%以下である、項目[1]に記載のカバーテープ。
[3]前記(メタ)アクリレート共重合体(A)の190℃、21.2Nにおけるメルトフローレート(MFR)は、3g/10min以上15g/10min以下である、項目[1]または[2]に記載のカバーテープ。
[4]前記(メタ)アクリレート共重合体(A)は、エチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、およびエチレン-ブチル(メタ)アクリレート共重合体から選択される少なくとも1つを含む、項目[1]~[3]のいずれかに記載のカバーテープ。
[5]前記石油由来の樹脂(B)は、脂肪族系、芳香族系、ジシクロペンタジエン(DCPD)系、およびこれらの共重合系の石油由来樹脂から選択される少なくとも1つを含む、項目[1]~[4]のいずれかに記載のカバーテープ。
[6]前記石油由来の樹脂(B)の含有量は、前記シーラント層全体に対して、1質量%以上20質量%以下である、項目[1]~[5]のいずれかに記載のカバーテープ。
[7]前記シーラント層は、帯電防止剤をさらに含む、項目[1]~[6]のいずれかに記載のカバーテープ。
[8]前記シーラント層は、ポリスチレン系樹脂をさらに含む、項目[1]~[7]のいずれかに記載のカバーテープ。
[9]前記基材層が、ポリエステルフィルムである、項目[1]~[8]のいずれかに記載のカバーテープ。
[10]中間層をさらに備え、
前記基材層、前記中間層、前記シーラント層がこの順に積層されている、項目[1]~[9]のいずれかに記載のカバーテープ。
[11]前記中間層は、バイオマス由来の樹脂を含む、項目[10]に記載のカバーテープ。
[12]前記バイオマス由来の樹脂は、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂を含む、項目[11]に記載のカバーテープ。
[13]前記中間層は、石油由来の樹脂をさらに含む、項目[10]~[12]のいずれかに記載のカバーテープ。
[14]電子部品が格納されたキャリアテープと、
前記電子部品を封止するように前記キャリアテープに前記シーラント層が接着された項目[1]~[13]のいずれかのいずれかに記載のカバーテープと、を備える電子部品包装体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャリアテープからの剥離強度が安定しているとともに、剥離後の外観に優れたカバーテープが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るカバーテープの構成を示す断面図である。
図2】本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープをキャリアテープにシールした状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。また、本明細書中、「a~b」との記載は、「a以上b以下」を意味する。
【0011】
本実施形態に係るカバーテープ10は、図1に示すように、基材層3と、基材層3の一方の面に設けられたシーラント層2とを含む。ここで、カバーテープ10は、基材層3/シーラント層2の二層構造であってもよいし、例えば、基材層3とシーラント層2との間に別の層である中間層1を介在させた、基材層3/中間層1/シーラント層2のような多層構造であってもよい。シーラント層2は、カバーテープ10の最表面であり、カバーテープ10の一方の面を構成し、これにより後述するキャリアテープ20に密着することができる。また本実施形態において、基材層1と、中間層1と、シーラント層2とは、ともに略同じ幅と長さで、切れ目や分断なく存在している。
【0012】
カバーテープの使用方法について図2を参照して説明する。図2に示すとおり、カバーテープ10は、電子部品の形状に合わせて凹状のポケット21が連続的に設けられたキャリアテープ20の蓋材として用いられる。具体的には、カバーテープ10は、キャリアテープ20のポケット21の開口部全面を覆うように、キャリアテープ20の表面に接着(ヒートシール)させて使用する。すなわち、カバーテープ10におけるシーラント層2がキャリアテープ20と接するようにヒートシールされる。なお、本明細書中、カバーテープ10と、キャリアテープ20とを接着して得られた構造体のことを、電子部品包装体100と称する。
【0013】
この包装体100は、上述のように、紙製あるいはプラスチック製のリールに包装体100を巻いた状態で、電子回路基板等に表面実装を行う作業領域まで搬送される。電子部品の表面実装工程において、カバーテープ10がキャリアテープ20から剥離されて、電子部品がパッケージから自動的に取出され、電子回路基板上に実装される。
【0014】
以下、カバーテープ10の各層の態様、素材などについて説明する。
【0015】
[シーラント層]
本実施形態のカバーテープ10が備えるシーラント層2は、カバーテープ10の最表面に存在する層であり、キャリアテープ20に密着される層である。
シーラント層2は、キャリアテープ20からカバーテープ10を剥がす際に、凝集破壊する。すなわち、カバーテープ10のキャリアテープ20からの剥離は、カバーテープ10とキャリアテープ20との接着面の剥離ではなく、シーラント層2の凝集破壊により生じる。このように、カバーテープ10とキャリアテープ20との接着面と、剥離面とが異なることにより、カバーテープの剥離強度が安定する。また、このカバーテープ10のキャリアテープ20からの剥離が、シーラント層2の凝集破壊により生じることにより、剥離後の外観が良好となる。
【0016】
本実施形態のカバーテープ10が備えるシーラント層2の剥離強度は、これに用いる材料およびその配合量、製造方法を選択することにより調整することができる。
本実施形態のカバーテープ10が備えるシーラント層2は、(A)(メタ)アクリレート共重合体、および(B)石油由来の樹脂、を含む樹脂組成物から作製される。このような樹脂組成物からなるシーラント層2を用いることにより、カバーテープ10をキャリアテープ20から剥離する際に、シーラント層2の凝集破壊が生じ、これにより剥離強度が安定する。
【0017】
・(メタ)アクリレート共重合体(A)
本実施形態においてシーラント層2に用いられる(メタ)アクリレート共重合体(A)は、その(メタ)アクリレート含有率が、例えば、10モル%以上25モル%以下であり、好ましくは、12モル%以上22%以下であり、より好ましくは、15モル%以上20モル%以下である。(メタ)アクリレート含有率が上記範囲の(メタ)アクリレート共重合体を用いることにより、得られるシーラント層2は適切な凝集力を有し、結果としてカバーテープ10とキャリアテープ20との剥離強度をより適切な範囲に制御することができる。ここで、(メタ)アクリレート共重合体の(メタ)アクリレート含有率とは、(メタ)アクリレート共重合体に含まれる(メタ)アクリレート由来の構造単位の割合(モル%)をいう。
【0018】
本実施形態においてシーラント層2に用いられる(メタ)アクリレート共重合体(A)の190℃、21.2Nにおけるメルトフローレート(MFR)は、カバーテープ10とキャリアテープ20との剥離強度を適切な範囲とする観点から、好ましくは、3g/10min以上であり、より好ましくは、5g/10min以上である。また、同様の観点から、(メタ)アクリレート共重合体(A)MFRは、好ましくは15g/10min以下であり、より好ましくは12g/10min以下、さらに好ましくは10g/10min以下である。ここで、(メタ)アクリレート共重合体(A)のMFRは、190℃、21.2Nの条件でJIS-K-7210に準じて測定される。
【0019】
本実施形態においてシーラント層2に用いられる(メタ)アクリレート共重合体(A)としては、例えば、エチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、およびエチレン-ブチル(メタ)アクリレート共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリレート共重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
シーラント層2中の(メタ)アクリレート共重合体(A)の含有量は、シーラント層2全体に対して、例えば、40質量%以上95質量%以下であり、好ましくは、45質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは、50質量%以上85質量%以下である。シーラント層2中の(メタ)アクリレート共重合体(A)の含有量が上記範囲であることにより、得られるシーラント層2は、カバーテープ20に対する優れたヒートシール性を有するとともに、適切な剥離強度を有する。
【0021】
・石油由来の樹脂(B)
本実施形態においてシーラント層2に用いられる石油由来の樹脂(B)としては、脂肪族系、芳香族系、ジシクロペンタジエン(DCPD)系、およびこれらの共重合系の石油由来樹脂等が挙げられる。市販品としては、荒川化学工業社の水素化石油樹脂、商品名「アルコン」シリーズなどがある。これらは1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。シーラント層2は、石油由来の樹脂(B)を含むことにより、粘着性を有し、これによりシーラント層2は、カバーテープ20に対する優れたヒートシール性を有するとともに、適切な剥離強度を有する。
【0022】
石油由来の樹脂(B)は、シーラント層2全体に対して、例えば、1質量%以上20質量%以下である。シーラント層2中の石油由来の樹脂(B)の配合量の下限値は、シーラント層2全体に対して、好ましくは、2質量%以上であり、より好ましくは、3質量%以上であり、特に好ましくは、5質量%以上である。シーラント層2中の石油由来の樹脂(B)の配合量の上限値は、シーラント層2全体に対して、14質量%%以下であり、より好ましくは、12質量%以下であり、特に好ましくは、10質量%以下である。
【0023】
シーラント層2は、さらに以下の成分を含んでもよい。
・帯電防止剤(C)
シーラント層2は、帯電防止剤(C)を含んでもよい。これにより、帯電防止能を向上させることができる。
帯電防止剤(C)としては、例えば、リチウムイオンを含むものが挙げられる。リチウムイオンが樹脂中に存在する高分子型帯電防止剤を用いることができる。これにより、優れた帯電防止性能が持続的に安定して発揮される。
リチウムイオンは、例えば、リチウム塩のような形で帯電防止剤に含有させることができる。このリチウム塩としては、塩化リチウム、フッ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム、メタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸リチウム等が挙げられる。
【0024】
帯電防止剤(C)に含まれるリチウムイオンは、金属元素量測定により確認することができる。帯電防止剤に含まれるリチウムイオン量は、例えば、50μg/g以上(50ppm以上)であることが好ましい。
【0025】
帯電防止剤(C)としては、リチウムイオンを含むもの以外にも、公知の帯電防止剤を用いることができる。また、リチウムイオンを含むものと、そうでないものとを併用することもできる。
リチウムイオンを含まない帯電防止剤としては、例えば、以下を挙げることができる。
-ポリエーテル構造を含むポリマー(例えば、ポリエーテルエステルアミドなどのポリアミド系コポリマー、ポリオレフィンとポリエーテルのブロックポリマー、ポリエチレンエーテル及びグリコールからなるポリマーなど)、カリウムアイオノマーなどのカルボン酸塩基含有ポリマー、第4級アンモニウム塩基含有コポリマーなど。
-酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属フィラー。
-ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)、ポリアセチレン、ポリアニリン等の導電性ポリマー。
-導電カーボン
【0026】
シーラント層2が帯電防止剤(C)を含む場合、その量(2種以上を含む場合は合計量)は、シーラント層2全体に対して、例えば1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。これにより、適切な帯電防止能を得ることができる。
また、帯電防止剤の含有量は、シーラント層2全体に対して、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。帯電防止剤はしばしば高価である。よって、帯電防止剤の含有量をこのようにすることで、カバーテープ10作製のコスト低減につながる。
【0027】
・ポリスチレン系樹脂(D)
シーラント層2は、ポリスチレン系樹脂(D)を含んでもよい。シーラント層2がポリスチレン系樹脂(D)を含む場合、シーラント層2の凝集力を調整することができ、キャリアテープからカバーテープを剥離する際に、シーラント層2の凝集剥離を起こしやすくすることができる。凝集剥離とは、シーラント層自体が破れる事により剥離する様式のことをいう。
【0028】
このポリスチレン系樹脂(D)は、特に限定されないが、例えばポリスチレン、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体、水素添加スチレンブロック共重合体、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS;High Impact Polystyrene)、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS;General Purpose Polystyrene)等が含まれ、これらを2種以上組合せて用いてもよい。
中でも、透明性が高く、また、帯電防止性能と剥離強度とをバランスよく向上させるという観点からスチレン-(メタ)アクリレート共重合体を用いることが好ましい。
【0029】
シーラント層2がスチレン-(メタ)アクリレート共重合体を含む場合、その量は、シーラント層2全体に対し、10質量%以上30質量%以下の量であり、好ましくは、15質量%以上25質量%以下の量である。上述の範囲でスチレン-(メタ)アクリレート共重合体を用いることにより、得られるカバーテープ10をキャリアテープ20から剥離する場合の剥離強度を、カバーテープ10の破断や、カバーテープ10の樹脂残りが生じず、容易に剥離できる程度にすることができる。このスチレン-(メタ)アクリレート共重合体は、スチレンと(メタ)アクリレートとの共重合物であり、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体中の(メタ)アクリレート含有率は、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体全体に対し45モル%以上80モル%以下である。
ここで、(メタ)アクリレート含有率とは、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体に含まれる(メタ)アクリレート由来の構造単位の割合(モル%)をいう。上述の範囲の(メタ)アクリレート含有率であることにより、これを含むシーラント層2は、良好な剥離性を備える。
【0030】
本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体は、230℃、3.8kgにおけるメルトフローレート(MFR)が、5g/10min以上30g/10min以下である。上記範囲のメルトフローレートを有するスチレン-(メタ)アクリレート共重合体を用いることにより、これを含むシーラント層2の剥離性が好適なものとなる。
【0031】
その他添加成分
シーラント層2は、その特性を損なわない範囲で、上記成分のほか、アンチブロッキング剤、スリップ剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、界面活性剤、無機フィラー等の任意の添加剤を含んでいてもよい。かつ/または、シーラント層3の表面には、これらのコーティング処理が施されていてもよい。
【0032】
アンチブロッキング剤の例としては、シリカ、アルミノ珪酸塩(ゼオライト等)などを
挙げることができる。シーラント層2がアンチブロッキング剤を含有することで、シーラント層3のブロッキングが緩和される。
【0033】
スリップ剤の例としては、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイルパルミドアミド、ステアリルパルミドアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチレンビスオレイルアミド、エチレンビスオレイルアミド、エチレンビスエルカ酸アミドなどの各種アミド類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、水添ひまし油などが挙げられる。シーラント層2がスリップ剤を含有することで、押出加工等の加工性、離ロール性、フィルム滑り性などが向上される。
【0034】
シーラント層2中のその他添加成分の量は、添加目的に応じて適宜調整すればよい。典型的には、シーラント層2全体に対して0.01~10質量%程度の範囲で調整すればよい。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物から作製されるシーラント層2の厚さは、2μm以上10μm以下であることが好ましく、3μm以上8μm以下であることがより好ましい。シーラント層2の厚さが上記上限値以下のものであれば、ヒートシール時の染み出しを制御しやすくなり、また、シーラント層2の厚さが、上記下限値以上のものであれば、カバーテープ10のキャリアテープ20に対する剥離強度が好適なものとなる。
【0036】
一実施形態において、シーラント層2の表面側(シーラント層2の、基材層3とは反対側の面)には、微細な凹凸が設けられていてもよい。これにより、電子部品の貼り付きを防止することができる。シーラント層2が凹凸表面を有する場合、その表面粗さは、例えば、3~20μm、好ましくは、5~25μmである。シーラント層2に凹凸を付与する方法は、当該分野で公知の技術を用いることができる。
【0037】
[基材層]
基材層3は、シーラント層2を積層してカバーテープを作製する際、キャリアテープ20に対してカバーテープ10を接着させる際、およびカバーテープ10を使用する際に、外部から加わる応力に耐え得る程度の機械的強度を有するとともに、キャリアテープ20に対してカバーテープ10を接着させる際に加わる熱履歴に耐え得る程度の耐熱性を有することが好ましい。また、基材層3を構成する材料は、加工が容易である観点から、フィルム状に加工された形態であることが好ましい。
【0038】
基材層3の上記特性は、これを構成する材料を適宜選択することにより調整することができる。基材層3を構成する材料の具体例としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタアクリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。中でも、カバーテープ10の機械的強度と柔軟性を向上させる観点から、ポリエステル系樹脂、ナイロン6を用いることが好ましい。基材層3はさらに、滑剤等の添加剤を含有してもよい。
【0039】
基材層3は、上述した材料を含む単層フィルムの形態であってもよいし、上述した材料を各層に含む多層フィルムの形態であってもよい。また、基材層3を形成するために使用するフィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、一軸方向又は二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。カバーテープ10の機械的強度を向上させる観点からは、一軸方向又は二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。
【0040】
基材層3の厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。また、基材層3の厚さは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下である。基材層3の厚さが上記上限値以下である場合、カバーテープ10の剛性が高くなりすぎず、シール後のキャリアテープ20に対して捻り応力がかかった場合であっても、カバーテープ10がキャリアテープ20の変形に追従し、剥離してしまうことを抑制することができる。また、基材層3の厚さが上記下限値以上である場合、カバーテープ10の機械的強度を良好なものとすることができるため、キャリアテープ20からカバーテープ10を高速で剥離する際、カバーテープ10が破断してしまうことを抑制することができる。
【0041】
基材層3の全光線透過率は、好ましくは、80%以上であり、さらに好ましくは、85%以上である。こうすることで、後述するカバーテープ10とキャリアテープ20とからなる包装体100において、キャリアテープ20のポケット21内に電子部品が正しく収容されているか否かを検査することができる程度に必要な透明性を付与することができる。言い換えれば、基材層3の全光線透過率を上記下限値以上とすることにより、カバーテープ10とキャリアテープ20とからなる包装体100の内部に収容した電子部品を、当該包装体100の外部から視認して確認することが可能となる。なお、基材層3の全光線透過率は、JIS K7361-1(1999)に準じて測定することが可能である。
【0042】
[中間層]
一実施形態において、基材層3とシーラント層2との間に中間層1を設けてもよい。中間層1を設けることにより、カバーテープ10全体のクッション性を向上させることができる。
【0043】
一実施形態において、中間層1を形成する材料としては、石油由来の樹脂である、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、およびポリエチレンが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、カバーテープ10全体のクッション性を向上させる観点から、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、およびポリスチレン系樹脂を含むことが好ましい。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)または直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)がより好ましい。また、中間層1は、当該分野で一般的に使用される添加剤を含んでもよい。
【0044】
一実施形態において、中間層1は、バイオマス由来の樹脂、好ましくはバイオマス由来のポリオレフィン樹脂、より好ましくは、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂を含む。中間層1を構成する樹脂の少なくとも一部を、バイオマス由来の樹脂で構成することにより、地球環境に対する負荷を低減することができる。また、バイオマス由来の樹脂を含む樹脂層を中間層として備えるカバーテープは、化石燃料由来のポリオレフィンからなるポリオレフィン樹脂層を備えるカバーテープと同等の性能を有する。
【0045】
中間層1は、石油由来の樹脂のみから構成されてもよいし、バイオマス由来の樹脂のみから構成されてもよいし、石油由来の樹脂とバイオマス由来の樹脂との混合物から構成されてもよい。
【0046】
中間層1が、石油由来の樹脂とバイオマス由来の樹脂との混合物から構成される場合、中間層1に含まれるバイオマス由来の樹脂の量は、中間層1全体に対して、例えば、20質量%以上100以下である。バイオマス由来の樹脂の量の下限値は、環境負荷を低減する観点から、中間層1全体に対して、好ましくは、30質量%以上であり、より好ましくは、40質量%以上であり、さらにより好ましくは、45質量%以上である。バイオマス由来の樹脂の量の上限値は、得られるカバーテープの性能を維持する観点から、中間層1全体に対して、好ましくは、95質量%以上であり、より好ましくは、90質量%以上である。
【0047】
中間層1を設ける場合、その厚さは、カバーテープ全体のクッション性を向上させる観点から、好ましくは、10μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは、15μm以上25μm以下である。
【0048】
[その他の層]
カバーテープ10は、上記の各層に加え、他の層を備えていてもよい。
他の層としては、例えば、カバーテープ10の機械的強度を高めるための補強層、あるいは、基材層1と中間層2の間、および/または、中間層2とシーラント層3の間に設けられる接着層が挙げられる。
【0049】
(補強層)
カバーテープ10は、シーラント層2の中間層1側の面上の任意の位置に、さらに補強層を備えていてもよい。補強層を備えることにより、さらにカバーテープ10の機械的強度を高めることができる。
【0050】
補強層を構成する材料の具体例としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタアクリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、およびABS樹脂等が挙げられる。中でも、カバーテープ10の機械的強度を向上させる観点から、ポリエステル系樹脂が好ましい。また、カバーテープ10の機械的強度および/または柔軟性を向上させる観点から、ポリアミド系樹脂、特にナイロン6を用いることが好ましい。また、補強層は、滑材などの添加剤を含んでもよい。
【0051】
補強層は、シーラント層2の中間層1側の面上であれば、いずれの位置に設けられてもよい。または、補強層は、基材層3の中間層1側の面と反対側の表面に設けられてもよい。
【0052】
補強層は、1層のみであってもよいし、2層以上あってもよく、例えば、補強層は、上述した材料が積層された多層フィルムにより形成されてもよい。補強層を形成するために用いられるフィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、一軸方向又は二軸方向に延伸されたフィルムであってもよい。カバーテープ10の機械的強度を一層向上させる観点からは、一軸方向又は二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0053】
補強層の厚さは特に限定されない。補強層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。また、補強層の厚さは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下である。
補強層の厚さが50μm以下であることで、カバーテープ10の剛性が高くなりすぎない。これにより、シール後のキャリアテープ20に対して捻り応力がかかった場合でも、カバーテープ10がキャリアテープ20の変形に追従しやすい。よって、カバーテープ10がキャリアテープ20から意図せず剥離してしまうことを抑制することができる。
補強層の厚さが5μm以上であることで、カバーテープ10の機械的強度を十分良好なものとすることができる。よって、例えばキャリアテープ20からカバーテープ10を高速で剥離する場合でも、カバーテープ10が破断してしまうことを抑制することができる。
【0054】
補強層の全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。これにより、カバーテープ10とキャリアテープ20とからなる電子部品包装体100において、電子部品が正しく収容されているか否かを検査できる程度に必要な透明性を確保することができる。言い換えると、補強層の全光線透過率を80%以上とすることにより、カバーテープ10とキャリアテープ20とからなる包装体の内部に収容した電子部品を、外部から視認して確認しやすくなる。全光線透過率は、JIS-K-7361に準じて測定することが可能である。
【0055】
(接着層)
カバーテープ10は、基材層3の中間層1側の面上の任意の位置に、さらに接着層を備えていてもよい。接着層を備えることにより、基材層3と、これに積層される他の層(シーラント層2または中間層1等)との密着性を向上させることができ、結果として、カバーテープ10の機械的強度を高めることができるとともに、剥離強度の安定化を図ることができる。より詳細には、基材層3が、接着層を介して中間層1またはシーラント層2と積層されることにより、これらの層間の密着性が向上する。これによりカバーテープ10をキャリアテープ20から剥離する際、シーラント層2と基材層3または中間層1との間の破壊による剥離を防ぐことができる。
【0056】
接着層を形成する材料としては、例えば、公知の溶剤系または水系の各種アンカーコート剤を使用することができる。アンカーコート剤についてより具体的には、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系などのものを挙げることができる。
【0057】
なお、基材層3に対してコロナ処理またはプラズマ処理を行うことにより、基材層3と他の層との密着性を向上させることができる。このコロナ処理またはプラズマ処理は公知の条件を適宜選択して行えばよい。
【0058】
その他、本実施形態の電子部品包装用のカバーテープ10は、基材層3、中間層2およびシーラント層3とは別に、帯電防止層を備えていてもよい。
【0059】
[カバーテープ]
カバーテープ10の幅や長さは、主としてキャリアテープの幅および長さに応じて適宜設定することができる。カバーテープ10の厚みは、例えば、20~80μmであり、好ましくは、25~70μmである。典型的には、カバーテープ10の幅は、1~100mm程度、長さは100~30000m程度である。
【0060】
[カバーテープの製造方法]
本実施形態のカバーテープ10の製造方法は特に限定されない。例えば、公知の押出法、ラミネート法、塗布法などを適用することで製造することができる。一例として、本実施形態のカバーテープ10は、押出ラミネート法により製造することができる。
【0061】
より具体的には、本実施形態のカバーテープ10は、以下(1)~(4)の手順で製造することができる。
(1)基材層3に相当するフィルムを準備する。
(2)(1)で準備したフィルムの片面にラミネート剤を塗り、その上に中間層1に相当する層を、押出ラミネート法により製膜する。これにより、基材層3/中間層1の2層構成のフィルムを得る。
(3)(2)の2層構成のフィルムの、中間層1が露出している面に、シーラント層2に相当する層を、押出ラミネート法により製膜する。これにより3層構成のフィルムを得る。
(4)必要に応じ、得られた3層構成のフィルムを、適当な長さおよび幅に裁断する。
【0062】
工程(2)および(3)の押出ラミネートにおいては、基材層3に相当するフィルムの片面に、溶融状態の樹脂材料を製膜する。樹脂材料としては、上記[中間層]および[シーラント層]の欄で挙げた樹脂や各種添加剤などが挙げられる。樹脂材料が2種以上の素材を含む場合には、製膜前に(溶融状態において)適切に混合されることが好ましい。工程(2)における押出温度は適宜調整すればよい。例えば150~350℃の間で調整することができる。
【0063】
[電子部品包装体]
上述のカバーテープ10と、電子部品がポケット21(凹部)に収容されたキャリアテープ20とから、電子部品包装体100を得ることができる。これについて図2を参照しつつ説明する。
【0064】
図2において、カバーテープ10は、電子部品の形状に合わせて凹状のポケット21が連続的に設けられた帯状のキャリアテープ20の蓋材として用いられている。具体的には、カバーテープ10は、キャリアテープ20のポケット21の開口部全面を覆うように、キャリアテープ20の表面に接着(通常、ヒートシール)される。なお、以降、カバーテープ10と、キャリアテープ20とを接着して得られた構造体のことを、電子部品包装体100と称する。
【0065】
電子部品包装体100は、例えば、以下の手順で作製することができる。
まず、キャリアテープ20のポケット21内に電子部品を収容する。
次いで、キャリアテープ20のポケット21の開口部全面を覆うように、キャリアテープ20の表面にカバーテープ10をヒートシール法により接着する。この際、カバーテープ10におけるシーラント層2がキャリアテープ20と接するようにする(つまり、図2におけるカバーテープ10の「裏面」がシーラント層2となるようにしてヒートシールを行う)。こうすることで、電子部品が密封収容された構造体(電子部品包装体100)が得られる。
ヒートシールの具体的なやり方や条件は、カバーテープ10がキャリアテープ20に十分強く接着する限り特に限定されない。典型的には、公知のテーピングマシンを用い、温度100~240℃、荷重0.1~10kgf、時間0.0001~1秒の範囲内で行うことができる。
【0066】
キャリアテープ20の素材は、ヒートシールによりカバーテープ10を接着可能である限り特に限定されないが、ポリスチレン樹脂を含む材料、ポリカーボネート樹脂を含む材料、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む材料などの樹脂製、または紙製が挙げられる。なかでも、剥離強度を効果的に向上させる観点から、樹脂製であることが好ましい。
上述のカバーテープ10を、これら材料で構成されたキャリアテープにヒートシールして電子部品包装体とすることで、シーラント層のキャリアテープ側への残存を一層低減しやすい。
【0067】
電子部品包装体100は、例えば、リールに巻かれ、その後、電子部品を電子回路基板等に実装する作業領域まで搬送される。リールの素材は、例えば、金属製、紙製、プラスチック製などである。
【0068】
電子部品包装体100が作業領域まで搬送された後、カバーテープ10をキャリアテープ20から剥離し、収容された電子部品を取り出す。
【0069】
電子部品包装体100内に収容される電子部品は、特に限定されないが、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、コンデンサ、圧電素子、光学素子、LED関連部材、コネクタ、電極など、電気・電子機器の製造に用いられる部品全般を挙げることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0071】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
(実施例1~10、比較例1)
表1に記載の成分を表1に記載の質量部で配合して二軸押出機にて混練し、シーラント層を構成するための樹脂組成物を得た。基材層として膜厚19μmのPETフィルム(東洋紡社製、E7455)を使用し、この上に、中間層として石油由来の樹脂である低密度ポリエチレン(住友化学社製、スミカセンL705、LDPE)を押出ラミネート法により押出温度300℃で厚み20μmに製膜し、製膜した中間層表面にコロナ処理を施し、濡れ指数を40Dyn以上にした後、中間層表面にさらにシーラント層として上記の樹脂組成物を押出ラミネート法により押出温度200℃で厚み5μmに製膜し、各例のカバーテープを得た。
【0073】
(実施例11~13)
表1に記載の成分を表1に記載の質量部で配合して二軸押出機にて混練し、シーラント層を構成するための樹脂組成物を得た。基材層として膜厚19μmのPETフィルム(東洋紡社製、E7455)を使用し、この上に、中間層として植物由来低密度ポリエチレン(ブラスケム社製、SBC818)を押出ラミネート法により押出温度300℃で厚み20μmに製膜し、製膜した中間層表面にコロナ処理を施し、濡れ指数を40Dyn以上にした後、中間層表面にさらにシーラント層として上記の樹脂組成物を押出ラミネート法により押出温度200℃で厚み5μmに製膜し、各例のカバーテープを得た。
【0074】
(実施例14)
表1に記載の成分を表1に記載の質量部で配合して二軸押出機にて混練し、シーラント層を構成するための樹脂組成物を得た。基材層として膜厚19μmのPETフィルム(東洋紡社製、E7455)を使用し、この上に、中間層として、石油由来の低密度ポリエチレン(住友化学社製、スミカセンL705、LDPE-2)と植物由来低密度ポリエチレン(ブラスケム社製、SBC818)とを、表1に示す重量比で、自動質量計量混合器を用いてドライブレンドし、混合物を押出ラミネート法により押出温度300℃で厚み20μmに製膜し、製膜した中間層表面にコロナ処理を施し、濡れ指数を40Dyn以上にした後、中間層表面にさらにシーラント層として上記の樹脂組成物を押出ラミネート法により押出温度200℃で厚み5μmに製膜し、各例のカバーテープを得た。
【0075】
表1に記載の成分の詳細を以下に示す。
[中間層]
・LDPE(α―1):石油由来低密度ポリエチレン(住友化学社製、スミカセンL705、LDPE)
・・LDPE(α―2):植物由来低密度ポリエチレン(ブラスケム社製、SBC818)
【0076】
[シーラント層]
((メタ)アクリレート共重合体(A))
・(メタ)アクリレート共重合体(A-1):エチレン-エチルアクリレート共重合体(NUC社製の「NUC6170」、エチルアクリレート含有率:18モル%、MFR(190℃、21.2N):6g/10min)
・(メタ)アクリレート共重合体(A-2):エチレン-メチルアクリレート共重合体(日本ポリエチレン社製の「レクスパールEB240H」、メチルアクリレート含有率:20モル%、MFR(190℃、21.2N):6g/10min)
・(メタ)アクリレート共重合体(A-3):エチレン-メチルメタクリレート共重合体(住友化学社製の「アクリフトWH303-F」、メチルメタクリレート含有率:18モル%、MFR(190℃、21.2N):7g/10min)
・(メタ)アクリレート共重合体(A-4):エチレン-ブチルアクリレート共重合体(アルケマ社製の「ロトリル17BA07N」、メチルメタクリレート含有率:17モル%、MFR(190℃、21.2N):7g/10min)
【0077】
(石油由来樹脂(B))
・石油由来樹脂(B-1):荒川化学社製、「アルコンP-140」
・石油由来樹脂(B-2):出光興産社製、「アイマーブP-140」
・石油由来樹脂(B-3):東燃ゼネラル石油社製、「T-REZ OP501」
【0078】
(帯電防止剤(C))
・帯電防止剤(C-1):リチウムイオンを含む帯電防止剤(三洋化成工業社製、「ペレクトロンPVH」)
(ポリスチレン系樹脂(D))
・ポリスチレン系樹脂(D-1):スチレン-(メタ)アクリレート共重合体(新日鐵住金化学社製、「エスチレンMS-750」、(メタ)アクリレート含有率:75モル%)
・ポリスチレン系樹脂(D-2):スチレン-(メタ)アクリレート共重合体(新日鐵住金化学社製、「エスチレンMS-600」、(メタ)アクリレート含有率:60モル%)
【0079】
得られたカバーテープの剥離強度および剥離後の外観をそれぞれ以下の方法で評価した。評価結果を表1にあわせて示す。
・剥離強度-1:ポリカーボネート(PC)キャリアテープに対する剥離強度
得られたカバーテープを、幅5.5mmの寸法にして、幅8mmの寸法のキャリアテープに対しヒートシール機を用いて、以下の条件でヒートシールして、試験片とした。
得られた試験片を用いてカバーテープとキャリアテープの剥離強度を、以下の条件に従い測定した。
(ヒートシール条件)
設備:TWA-6621
アイロンサイズ:0.4mm×28mm
温度:180℃
荷重:5kg
シール時間:60ms
キャリアテープ送りピッチ:4mm
キャリアテープ:導電ポリカーボネート(3M社製:#3000)
(剥離強度測定条件)
剥離機:PTS-5000K
剥離速度:300mm/min
剥離角度:175~180°
規格:JIS C 0806-3
【0080】
・剥離強度-2:ポリスチレン(PS)キャリアテープに対する剥離強度
得られたカバーテープを、幅5.5mmの寸法にして、幅8mmの寸法のキャリアテープに対しヒートシール機を用いて、以下の条件でヒートシールして、試験片とした。
得られた試験片を用いてカバーテープとキャリアテープの剥離強度を、以下の条件に従い測定した。
(ヒートシール条件)
設備:TWA-6621
アイロンサイズ:0.4mm×28mm
温度:180℃
荷重:5kg
シール時間:60ms
キャリアテープ送りピッチ:4mm
キャリアテープ:導電ポリスチレン(住友ベークライト社製:E980E)
(剥離強度測定条件)
剥離機:PTS-5000K
剥離速度:300mm/min
剥離角度:175~180°
規格:JIS C 0806-3
【0081】
(剥離外観)
ポリカーボネート(PC)キャリアテープおよびポリスチレン(PS)キャリアテープに対する剥離強度測定後、各キャリアテープについて、凝集剥離によりキャリアテープ表面に転写したシーラント層をマイクロスコープにて20~50倍で観察し、下記基準で評価を行った。
(基準)
A:転写したシーラント層は途切れておらず、幅も安定しており、まだらにもならず均一な外観になっている。
る。
B:転写したシーラント層は途切れておらず、幅も安定しており毛羽立ちもみられないが、まだらになっている箇所がある。
C:転写したシーラント層は途切れていないが、幅が不安定もしくは毛羽立ちが発生している箇所がある。
D:転写したシーラント層が部分的に途切れている箇所がある。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
実施例1~10のカバーテープは、剥離強度に優れるとともに、剥離後の剥離外観が良好であった。実施例11~14の、バイオマス由来樹脂を含む中間層を備えるカバーテープは、剥離強度に優れるとともに、剥離後の剥離外観が良好であり、石油由来の樹脂からなる中間層を備える実施例1~10のカバーテープと同等の性能を備えていた。
【符号の説明】
【0085】
1 中間層
2 シーラント層
3 基材層
10 電子部品包装用カバーテープ(カバーテープ)
20 キャリアテープ
21 ポケット
100 電子部品包装体
図1
図2