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特開2023-49027電気的に作動される膨張可能な口を有するカテーテル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049027
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】電気的に作動される膨張可能な口を有するカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
A61B17/22 528
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022153460
(22)【出願日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】17/487,060
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515248931
【氏名又は名称】ニューラヴィ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・コンロン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE05
(57)【要約】
【課題】改善された吸引回収カテーテルを提供すること。
【解決手段】本明細書に記載される装置は、作動血塊回収カテーテルシステムを含む。システムは、カテーテルの遠位先端部に位置決めされた金属領域を有するカテーテルを含む。金属領域は、二金属コイル構成にある少なくとも2つの当接金属を含む。二金属コイルは、膨張して、血管の内壁との封止を形成する。いくつかの実施例では、二金属コイルはまた、血塊を血管からの除去のために捕捉する。二金属コイルは、異なる熱膨張係数を有する金属系材料から製造される。導電性ワイヤは、電流コントローラから金属領域の少なくとも一部分までカテーテルの長手方向軸に沿って延在する。金属領域への電流により、二金属コイルが、緊密な構成から膨張構成に遷移し、血塊を除去する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
カテーテルであって、前記カテーテルの内側管腔を画定する壁を有し、前記内側管腔が、電流コントローラを有する近位ハブと遠位先端部との間に延在する、カテーテルと、
前記カテーテルの前記遠位先端部に位置決めされたコイル状構成にある少なくとも2つの当接金属を含む金属領域であって、
前記金属領域の第1の金属の少なくとも一部分が、二金属コイルの外周を含み、前記金属領域の第2の金属の少なくとも一部分が、前記二金属コイルの内周を含む、金属領域と、
前記電流コントローラと電気的に連通し、かつ前記金属領域の少なくとも一部分と電気的に連通する、前記カテーテルの長手方向軸に沿って延在する2つの導電性ワイヤと、を備える、システム。
【請求項2】
前記金属領域の少なくとも一部分が、電流刺激時に、緊密な構成から膨張構成に可逆的に膨張するように構成されており、
前記緊密な構成が、前記膨張構成の第2の直径よりも小さい第1の直径を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記二金属コイルの少なくとも一部分が、前記遠位先端部で前記カテーテルに固定されており、前記2つの導電性ワイヤと係合されており、
前記2つの導電性ワイヤから前記二金属コイルの少なくとも一部分に印加された電流が、前記二金属コイルを、前記二金属コイルの第1の端部と第2の端部との間のたわみに沿って、前記膨張構成に移動させる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記二金属コイルの前記少なくとも2つの当接金属の前記第1の金属が、第1の熱膨張係数を含み、
前記二金属コイルの前記少なくとも2つの当接金属の前記第2の金属が、第2の熱膨張係数を含み、
前記第1の熱膨張係数が、前記第2の熱膨張係数とは異なる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の金属が、前記第2の金属の前記熱膨張係数よりも低い熱膨張係数を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記金属領域の少なくとも一部が、放射線不透過性領域を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記カテーテルの前記遠位先端部の少なくとも一部分が、前記二金属コイルの周囲に配設された弾性ジャケットを含み、前記金属領域を越えて前記カテーテルの前記遠位先端部から近位に延在する弾性領域を形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記弾性領域が、前記二金属コイルが前記緊密な構成から前記膨張構成に膨張する際、可逆的に膨張するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記電流コントローラから、前記2つの導電性ワイヤを通り、前記カテーテルに固定された前記二金属コイルの第1の端部及び/又は第2の端部のうちの少なくとも1つに向かい、前記二金属コイルの長さの大部分を通り、かつ前記電流コントローラへの戻り経路を通る、電流経路を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記2つの導電性ワイヤのうちの少なくとも一方が、前記二金属コイルの前記第1の端部に電気的に固定されており、
戻り経路が、前記二金属コイルの前記第2の端部に電気的に固定され、かつ前記長手方向軸に沿って延在する、前記2つの導電性ワイヤのうちの少なくとも他方を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
システムであって、
弾性領域を含む遠位先端部を有するカテーテルと、
前記カテーテルの前記遠位先端部で前記弾性領域内に位置決めされた二金属コイルと、を備え、
第1の金属の少なくとも一部分が、前記二金属コイルの外周を含み、第2の金属の少なくとも一部分が、前記二金属コイルの内周を含む、システム。
【請求項12】
前記二金属コイルの少なくとも一部分が、緊密な構成から膨張構成に可逆的に膨張するように構成されており、
前記緊密な構成が、前記膨張構成の第2の直径よりも小さい第1の直径を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記二金属コイルの少なくとも一部分が、前記カテーテルに固定され、前記弾性領域内の弾性ジャケットによって封入されており、
前記膨張構成が、前記二金属コイルの第1の端部と第2の端部との間のたわみを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記二金属コイルの前記第1の金属が、第1の熱膨張係数を含み、
前記二金属コイルの前記第2の金属が、第2の熱膨張係数を含み、
前記第1の熱膨張係数が、前記第2の熱膨張係数とは別個である、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記二金属コイルの前記第1の金属が、前記二金属コイルの前記第2の金属の前記熱膨張係数よりも低い熱膨張係数を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記カテーテルの長手方向軸に沿って延在する2つの導電性ワイヤと、
前記2つの導電性ワイヤのうちの少なくとも一方に第1の電流を提供するように構成された電流コントローラと、
前記2つの導電性ワイヤと電気的に連通する前記カテーテルの金属領域であって、
前記金属領域が、前記二金属コイルを備え、
前記金属領域の少なくとも一部分が、放射線不透過性領域を含み、
前記金属領域の少なくとも一部分が、電流刺激時に、緊密な構成から膨張構成に可逆的に膨張するように構成されている、金属領域と、を更に備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
方法であって、
カテーテルの遠位先端部内に二金属コイルの少なくとも一部分を取り付けることであって、
前記二金属コイルが、第1の熱膨張係数を含む第1の金属と、前記第1の熱膨張係数とは別個の第2の熱膨張係数を含む第2の金属と、を備える、取り付けることと、
導電性ワイヤの第1の端部を、前記二金属コイルを含む金属領域に接続することであって、
前記二金属コイルの少なくとも一部分が、前記カテーテルに固定されている、接続することと、
前記導電性ワイヤの第2の端部を電流コントローラに接続することと、を含む、方法。
【請求項18】
電流を、前記導電性ワイヤを通して、電流コントローラから前記金属領域に印加することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記電流によって、前記二金属コイルを、緊密な構成から膨張構成に膨張させることを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金属領域の周囲に弾性ジャケットを取り付けることを更に含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、血管内の医療治療中に血管から急性閉塞物を除去するための装置及び方法に関する。より具体的には、本開示は、電気的に作動される膨張可能な口を有する血塊回収カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血塊回収カテーテル及び装置は、多くの場合、患者が急性虚血性脳卒中(acute ischemic stroke、AIS)、心筋梗塞(myocardial infarction、MI)、及び肺塞栓症(pulmonary embolism、PE)などの状態に罹患している場合に、血管内介入のための機械的血栓除去に使用される。標的血管が挿入部位に対して小径で、距離があり、ひどく入り組んでいる際、神経血管床などの遠隔領域にアクセスすることは、従来の技術では困難である。
【0003】
血塊自体は、血管の形状を採る単純な管状構造から、一度に多数の血管にまたがり得る長いストランド状の配置にまで及ぶ、多数の複雑な形態及び一貫性を採ることにより、処置を複雑化し得る。血塊が古いか新しいか(age of a clot)もまた、その伸展性に影響を及ぼし得、より古い血塊が、新鮮な血塊よりも圧縮性が低い傾向にある。フィブリンに富む血塊はまた、効果的に把持されるのではなく、機械的血栓除去装置の外側表面に沿って、血塊を回転させ得る粘着性の性質を有することにおける課題も提示する。軟質の血塊領域と堅固な血塊領域との組み合わせはまた、遠位塞栓につながる断片化を伴って、吸引中に分離し得、これは、現在利用可能な装置で到達することができない血管内で生じ得る。加えて、脆弱血管を損傷することなく、血塊を血管壁に接着する結合部を破壊することは、著しく困難な課題である。
【0004】
従来の血塊回収カテーテル、特に神経血管内で動作するためのカテーテルは、多数の欠点に悩まされ得る。最初に、カテーテル自体の直径は、脈管構造に前進するために十分小さくなければならず、これは神経血管系との関連において非常に小さい。カテーテルはまた、経路に沿って滑らかな前進を提供するために軸方向の剛性も有しながら、脈管構造をナビゲートし、かつ高歪みに耐えるために十分に可撓性でなければならない。標的部位に達すると、本体から回収される典型的な物体は、カテーテル先端部よりも実質的により大きいサイズであり得、先端部に物体を回収することがより困難になる。例えば、フィブリンに富む血塊は、多くの場合、従来の固定口カテーテルの先端部内に詰まってしまう可能性があるため、抽出することが困難であり得る。この詰まりは、血塊のより軟質の部分を堅固な領域から剪断させて、遠位の塞栓をもたらす場合がある。
【0005】
小径かつ固定された先端部サイズはまた、処置中に血液及び血栓材料を除去するのに必要な吸引を誘導する際に、より効率性に劣り得る。吸引は、機械的血栓除去装置又は他の方法を使用することによって生じるいかなる断片化も、少なくとも静止して保持され得、その結果、断片が遠位血管を移動及び閉塞することができないように、十分に強力でなければならない。しかしながら、従来の固定口カテーテルで吸引するとき、吸引流のかなりの部分は、血塊が存在しないカテーテルの先端部の近位の血管流体から来ることになる。これは、吸引効率を著しく低下させ、血塊除去の成功率を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
開示される設計は、上記の欠陥に対処する改善された吸引回収カテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に提示された実施例は、血管内の医療治療中に血管から急性閉塞物を除去するための装置及び方法を含む。より具体的には、本開示は、電気的に作動される血塊回収カテーテルシステムに関する。血管内の閉塞物を回収するための例示的なシステムは、カテーテル、金属領域、及び2つの導電性ワイヤを含むことができる。カテーテルは、カテーテルの内側管腔を画定する壁を有することができる。内側管腔は、電流コントローラを有する近位ハブとカテーテルの遠位先端部との間に延在することができる。金属領域は、二金属コイルを形成する、コイル状構成にある少なくとも2つの当接金属を含むことができる。金属領域は、カテーテルの遠位端部において、又はその近くに位置付けられ得る。金属領域の第1の金属の少なくとも第1の部分は、二金属コイルの外周を構成することができ、金属領域の第2の金属の少なくとも一部分は、二金属コイルの内周を構成することができる。2つの導電性ワイヤは、カテーテルの長手方向軸に沿って延在することができ、電流コントローラと電気的に連通し、金属領域の少なくとも一部分と電気的に連通することができる。
【0008】
金属領域の少なくとも一部分は、電流刺激時に緊密な構成から膨張構成に可逆的に膨張するように構成されることができる。緊密な構成は、膨張構成の第2の直径よりも小さい第1の直径を含むことができる。
【0009】
二金属コイルの少なくとも一部分は、遠位先端部においてカテーテルに固定されることができ、2つの導電性ワイヤと係合されることができる。2つの導電性ワイヤから二金属コイルの少なくとも一部分に印加される電流は、二金属コイルの第1の端部と第2の端部との間のたわみに沿って、二金属コイルを膨張構成に移動させることができる。
【0010】
二金属コイルの少なくとも2つの当接金属のうちの第1の金属は、第1の熱膨張係数を含むことができる。二金属コイルの少なくとも2つの当接金属のうちの第2の金属は、第2の熱膨張係数を含むことができる。第1の熱膨張係数は、第2の熱膨張係数とは異なり得る。
【0011】
第1の金属は、第2の金属の熱膨張係数よりも低い熱膨張係数を含むことができる。
【0012】
金属領域の少なくとも一部は、放射線不透過性領域を含むことができる。
【0013】
カテーテルの遠位先端部の少なくとも一部分は、二金属コイルの周囲に配設された弾性ジャケットを含むことができる。弾性ジャケットは、カテーテルの弾性領域を形成することができ、カテーテルの遠位先端部から金属領域を超えて近位に延在することができる。
【0014】
弾性領域は、二金属コイルが緊密な構成から膨張構成に膨張する際、可逆的に膨張するように構成されることができる。
【0015】
システムは、電流コントローラから、2つの導電性ワイヤを通り、カテーテルに固定された二金属コイルの第1の端部及び/又は第2の端部のうちの少なくとも1つに向かい、二金属コイルの長さの大部分を通り、かつ電流コントローラへの戻り経路を通る、電流経路を更に含むことができる。
【0016】
2つの導電性ワイヤのうちの少なくとも一方は、二金属コイルの第1の端部に電気的に固定されることができる。戻り経路は、二金属コイルの第2に電気的に固定され、長手方向軸に沿って延在する、2つの導電性ワイヤのうちの少なくとも他方を含むことができる。
【0017】
血管内の閉塞物を回収するための別の例示的なシステムは、カテーテル及び二金属コイルを含むことができる。カテーテルは、弾性領域を有する遠位先端部を含むことができる。二金属コイルは、カテーテルの遠位先端部で弾性領域内に位置決めされることができる。第1の金属の少なくとも一部分は、二金属コイルの外周を構成し、第2の金属の少なくとも一部分は、二金属コイルの内周を構成する。
【0018】
二金属コイルの少なくとも一部分は、緊密な構成から膨張構成に可逆的に膨張するように構成されることができる。緊密な構成は、膨張構成の第2の直径よりも小さい第1の直径を含むことができる。
【0019】
二金属コイルの少なくとも一部分は、カテーテルに固定されることができ、弾性領域内の弾性ジャケットによって封入されることができる。膨張構成は、二金属コイルの第1の端部と第2の端部との間のたわみを含むことができる。
【0020】
二金属コイルの第1の金属は、第1の熱膨張係数を含むことができる。二金属コイルの第2の金属は、第2の熱膨張係数を含むことができる。第1の熱膨張係数は、第2の熱膨張係数とは別個であり得る。二金属コイルの第1の金属は、二金属コイルの第2の金属の熱膨張係数よりも低い熱膨張係数を含むことができる。
【0021】
血管内の閉塞物を回収するためのそれらシステムは、2つの導電性ワイヤ及び金属領域を更に含むことができる。2つの導電性ワイヤは、カテーテルの長手方向軸に沿って延在することができる。電流コントローラは、2つの導電性ワイヤのうちの少なくとも一方に第1の電流を提供するように構成されることができる。カテーテルの金属領域は、2つの導電性ワイヤと電気的に連通することができる。金属領域は、二金属コイルを含むことができる。金属領域の少なくとも一部分は、放射線不透過性領域を含むことができる。金属領域の少なくとも一部分は、電流刺激時に緊密な構成から膨張構成に可逆的に膨張するように構成されることができる。
【0022】
患者の血管から閉塞性血栓を回収する例示的な方法は、カテーテルの遠位先端部内に二金属コイルの少なくとも一部分を取り付けることと、導電性ワイヤの第1の端部を、二金属コイルを含む金属領域に接続することと、導電性ワイヤの第2の端部を電流コントローラに接続することと、を含むことができる。金属領域内の二金属コイルは、第1の熱膨張係数を有する第1の金属、及び第1の熱膨張係数とは別個の第2の熱膨張係数を有する第2の金属を含むことができる。二金属コイルの少なくとも一部分は、カテーテルに固定されることができる。
【0023】
患者の血管から閉塞性血栓を回収する方法は、導電性ワイヤを通して、電流コントローラから二金属コイルの第1の端部に電流を印加することを更に含むことができる。方法は、電流によって、二金属コイルを緊密な構成から膨張構成に膨張させることを更に含むことができる。方法は、金属領域の周囲に弾性ジャケットを取り付けることを更に含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示の上記及び更なる態様は、添付の図面の以下の説明と併せて更に考察され、様々な図面において、同様の数字は、同様の構造要素及び特徴を示す。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、本開示の原理を例解することが重視されている。図は、限定としてではなく単なる例解として、本発明の装置の1つ又は2つ以上の実装形態を描写している。当業者は、ユーザの必要性により良好に適するように、複数の図面から要素を着想し組み合わせ得ることが予想される。
図1A】本開示の態様による、例示的な作動血塊回収システムの側面の例示である。
図1B】本開示の態様による、例示的な作動血塊回収システムの側面の例示である。
図2A】本開示の態様による、血管内の標的部位に例示的な作動血塊回収システムを送達する方法を示す。
図2B】本開示の態様による、血管内の標的部位に例示的な作動血塊回収システムを送達する方法を示す。
図3A】本開示の態様による、例示的な二金属コイル設計の例示である。
図3B】本開示の態様による、例示的な二金属コイル設計の例示である。
図3C】本開示の態様による、例示的な二金属コイル設計の例示である。
図3D】本開示の態様による、例示的な二金属コイル設計の例示である。
図3E】本開示の態様による、例示的な二金属コイル設計の例示である。
図3F】本開示の態様による、例示的な二金属コイル設計の例示である。
図4A】本開示の態様による、膨張可能な先端部を有する例示的な作動血塊回収システムの例示である。
図4B】本開示の態様による、膨張可能な先端部を有する例示的な作動血塊回収システムの例示である。
図5】本開示の態様による、埋め込まれた導電性ワイヤを有する例示的な作動血塊回収システムの断面の例示である。
図6】本開示の態様による、血塊回収システムを製造する方法を例示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に開示される解決策は、血塊剪断のリスクを低減させ、モジュール式遠位先端部を介して血流を制限/停止させるために、漏斗を形成するように膨張することができる血塊回収カテーテルを対象とする。流量制限及び大きい先端部の付いた設計は、実質的により大きい吸引効率を提供し、塞栓移動(emboli migration)のリスクを低減させる。かかる利点はまた、神経血管床内の血管が特に小さく遠回りである、脳卒中介入処置の場合に特に有益であり得、結果として、膨張及び減少することができる先端部を有する血塊回収カテーテルが、入り組んでいる血管を通って容易に移動しながら、血塊の場所における吸引効率を増加させることができる。カテーテルはまた、比較的低プロファイルのアクセスシース及び外側カテーテルと適合可能であり得、そのため(大腿部アクセスの場合)患者の鼠径部における穿刺創を容易かつ確実に閉鎖することができる。カテーテルはまた、内部及び/又は外部低摩擦ライナ、並びに支持構造体の周囲に配設された外側ポリマージャケット、弾性シース、又は膜を特徴とすることができる。膜は、カテーテルの口において二金属コイルを有する作動されたカテーテル先端部を封入するか、又はカテーテルの口が膜から独立して移動することができるように、二金属コイル上に嵌合される、エラストマ材料であり得る。エラストマ膜は、緊密又は緩い嵌合であり得る。緩い嵌合のエラストマ膜は、緊密な嵌合の膜よりもより容易に開放される。膜は、袋状であり得、非エラストマ材料で作製されることができ、そのため膜を開放する力は、緊密な嵌合のエラストマ膜の力と比較して低い。膜は、カテーテルの口の径方向外向きに近位に延在するために戻る前に、カテーテルの口の径方向内向きに近位場所から遠位に延在するように反転することができ、膜の内側層及び外側層は、近位場所で、又は膜の全長上で、ともに結合されるか、又はリフローされる。膜は、内側管及び外側管を備えることができ、内側管及び外側管の近位端部及び遠位端部は、2つの管がカテーテル先端部及び二金属コイルの周囲にソックを形成し、二金属コイルがソック内で自由に移動及び膨張するように、ともに結合されるか、又はリフローされる。
【0026】
これらの改善は、閉塞を除去し、処置時間を短縮するために、カテーテル及び他の装置の複雑な領域への安全かつより迅速なアクセスにつなげることができる。本明細書は、多くの場合、機械的血栓除去治療に関連しているが、システム及び方法は、他の処置及び他の身体通路にも同様に適合させることができる。
【0027】
血管系内の様々な血管にアクセスすることは、それらが冠状動脈、肺、又は脳であるかどうかに関わらず、周知の手順工程及び多数の従来の市販のアクセサリ製品の使用を伴う。血管造影材料、回転止血弁、及びガイドワイヤなどのこれらの製品は、検査機関及び医療処置において広く使用されている。これらの製品が以下の説明におけるシステム及び方法と併せて用いられるとき、それらの機能及び正確な構成は、関連技術において既知ではない。
【0028】
本システム及び方法は、二金属材料の特性を用いて、血塊回収装置の遠位寸法をカスタマイズする。二金属材料は、加熱されるか又は電気的に刺激されたとき、異なる率で屈曲又は膨張し得る、2つの異なる金属からなる。異なる熱膨張により、二金属材料は、加熱されるときに一方向に屈曲し、冷却されるときに反対方向に屈曲する。熱が二金属材料から除去されると、材料は、その元の位置に戻ることができる。代替的に、又はそれに加えて、熱が二金属材料から除去されるとき、血塊回収装置は、二金属材料をその元の位置に戻すことを支援するためにガイドカテーテル内に格納され得る。二金属材料は、所定の温度で特定の変位位置に屈曲又は膨張するように設定することができる。説明は、二金属材料を考察するが、本発明は、そのように限定されないことに留意されたい。本発明者らは、以下に記載される結果を生成することができる任意の合金を使用することを企図する。これは、二金属合金中の不純物から3つ又は4つ以上の元素、金属又は他のものの合金にまで及ぶ。
【0029】
本明細書に記載される様々な実施例は、カテーテルの口において二金属材料を含むことができ、そのため、カテーテルの口は、膨張すると漏斗形状に類似し得、脈管構造に径方向の力を及ぼし得る。流体は、膨張した漏斗形状の口に吸引され、次いで、カテーテルに吸引されて、漏斗内に血栓を捕捉することができる。二金属材料は、吸引物をカテーテルに方向付ける弾性ジャケット被覆又は膜を含むことができる。二金属材料は、カテーテルの内側管腔内に配設されることができる。二金属材料が膨張及び折り畳まれる際、カテーテルの内径が増加及び減少されて、カテーテルへの流量を調節することができる。
【0030】
本開示は、金属領域を加熱して、二金属材料を膨張構成に屈曲させるためのシステムを提供する。1つ又は2つ以上の導電性ワイヤは、金属領域及び/又は二金属材料に電流を提供することができる。次いで、二金属材料の自然な導電率は、二金属材料を膨張構成に屈曲させることができる。金属領域又は二金属材料が、過熱し、周囲の脈管構造に外傷を引き起こさないように、金属領域及び/又は二金属材料の温度を監視するために、熱電対もまた提供され得る。いくつかの実施例では、ペルチェチップなどの熱電冷却回路が提供されて、二金属材料をその元の位置に遷移させるか、又は反対方向に屈曲して、カテーテル先端部のより緊密な構成を引き起こすことができる。本開示は、二金属材料のための様々な例示的設計を提供する。
【0031】
様々な装置及び方法が、電気的に作動される血塊回収カテーテルを提供するために開示され、装置及び方法の実施例が、添付の図面を参照して説明されることになる。図1A及び図1Bは、例示的な血塊回収システム100の例示を提供する。システム100は、カテーテル200の内側管腔202、電流コントローラ500、及び遠位先端部を画定する、壁を有するカテーテル200を含むことができる。内側管腔202は、電流コントローラ500を有する近位ハブと遠位先端部との間に延在することができる。システム100は、コイル状構成にある少なくとも2つの当接金属を含む金属領域300、「二金属コイル」302を含むことができる。二金属コイル302は、カテーテル200の遠位先端部に位置決めされることができる。二金属コイル302は、図1Bに示されるように、カテーテル200の遠位先端部を膨張させることができる。いくつかの実施例では、以下でより詳細に説明されるように、二金属コイル302は、カテーテル200の内側管腔202内、カテーテル200の壁内、又は膜内に配設されることができる。
【0032】
二金属コイル302は、以下で更に考察されるように、反転膜、二層封止膜、又はオーバーモールドされた膜若しくは浸漬膜内に封入され、弾性ジャケットを形成することができる。二金属コイル302が内側膜層及び外側膜層内に収容される場合、二金属コイル302は、妨害されず移動することができる。オーバーモールドされた膜が供給される場合、膜材料のより分離した領域を伸張するために二金属コイル302が必要とされ得るため、より多くの抵抗が存在し得る。電流が金属領域300及び/又は二金属コイル302を通過する際、金属領域300及び二金属コイル302は、電流を含むために絶縁され得ることが理解される。膜材料は、金属領域300及び二金属コイル302を絶縁するために役立ち得る。
【0033】
二金属コイル302は、膨張構成及び緊密な構成を有し得る。図1Aは、第1の直径D1を有する緊密な構成にある二金属コイル302を示し、一方で図1Bは、第2の直径D2を有する膨張構成における同じ二金属コイル302を示す。いくつかの実施例では、膨張構成は、漏斗の形状であり得る。
【0034】
二金属コイル302は、少なくとも2つの当接金属を含むことができる。図3A図3Fに示されるように、金属領域の第1の金属304の少なくとも一部分は、コイル形状の外部上に位置決めされ、二金属コイル302の外周を形成することができる。同様に、金属領域の第2の金属306の少なくとも一部分は、コイル形状の内部に位置決めされ、二金属コイル302の内周を形成することができる。異なる金属材料は、リベット留め、ろう付け、溶接、又は2つの金属材料を接合するための任意の他の好適な様式によってそれらの長さに沿ってともに接合され得る。
【0035】
第1の金属304は、第1の熱膨張係数を有することができる。第2の金属306は、第2の熱膨張係数を有することができる。第1の熱膨張係数は、第2の熱膨張係数とは異なり得、そのため二金属コイル302を形成する2つの当接金属が、加熱時に、折り畳まれた構成から膨張構成に、若しくは逆もまた同様に遷移し、冷却時にその以前の構成に戻ることができる。二金属コイル302の金属材料は、限定されるものではないが、鋼、銅、及び真鍮を含む、任意の好適な金属系材料を含むことができる。いくつかの実施例では、二金属コイル302は、異なる熱膨張係数を有する2つ又は3つ以上の材料を含むことができ、また放射線不透過性及び/又は生体適合性金属系材料も含むことができる。一実施例では、二金属コイルは、Ni-Ti(ニチノール)などの形状記憶材料を含まない。代替的に、ニチノールは、全体的又は部分的に、二金属コイル302のために使用されることができるが、ニチノールの形状記憶特徴部は、体温ではなく、電流コントローラ500によって生成された温度に設定される。
【0036】
2つ又は3つ以上の異なる係数を有する金属系材料は、一度加熱されると、より低い熱膨張係数を有する金属材料が、装置の二金属コイル302を膨張形状に屈曲又は膨張させ得るように、装置を製造することを可能にする。概して、材料が有する熱膨張係数が高いほど、材料が加熱に応答して膨張することになる。図1A及び図1Bの例示的な二金属コイル302を考慮すると、二金属コイル302は、折り畳まれた構成で提供されることができる(図1A)。次いで、二金属コイル302は、より低い熱膨張係数を有する材料が二金属コイル302を屈曲及び膨張させ、装置の遠位先端部に膨張構成(図1B)を形成させることができるように、好適な温度に加熱されることができる。電流を除去すること又は他の方法のいずれかによって、熱源が除去されると、二金属コイル302は再冷却され、そのため、熱膨張係数を有する材料により、二金属コイル302はその緊密な構成(図1A)に戻る。いくつかの実施例では、冷却は、ワイヤ及び/又は熱電対ワイヤとの伝導を通して、かつ後続の二金属コイル302及び/又は膜材料の周囲に配設されたカテーテル200の弾性ジャケット204を通して容易に達成され得る。特定の実施例では、二金属コイル302の周囲に配設された弾性ジャケット204の弾性は、二金属コイル302がその緊密な構成に戻ることを支援し得る。
【0037】
図2A及び図2Bは、二金属材料の遷移特性を使用して、血塊回収システム100を作動させる例示的な方法を提供する。カテーテル200及び二金属コイル302を含む、作動血塊回収システム100は、血塊(blood clot、BC)を含む血管内の標的部位まで前進することができる。これは、システム100を、外側カテーテルを通して前進させることによって完了し得る。しかしながら、以下に説明されるように、カテーテル200及び二金属コイル302は、外側カテーテルを必要とすることなく標的部位まで前進することができる。カテーテル200及び二金属コイル302が標的部位に到達すると、二金属コイル302は、図2Aに示されるように、その緊密な構成になり得る。これにより、二金属コイル302が、容易に入り組んでいる血管を通って前進することを可能にし得る。二金属コイル302が標的部位にあると、二金属コイル302は加熱されて、以下でより詳細に説明されるが、二金属コイル302が緊密な構造から膨張構造に遷移することを可能にすることができる。図2Bに示される例では、加熱されると、二金属コイル302は、血管に力を及ぼすことができる漏斗形状に膨張する。次いで、血塊は、膨張された二金属コイル302を通してカテーテルに吸引され、標的部位から除去され得る。いくつかの実施例では、二金属コイル302は、能動的に冷却され得、そのため、二金属コイル302は、血塊を捕捉するためにその緊密な構成に折り畳まれる。代替的に、二金属コイル302は、電流が二金属コイル302から除去され、その後、二金属コイル302及び/又は膜材料の周囲に配設されたカテーテル200弾性ジャケット204を通るとき、自動的に冷却され得る。加えて、二金属コイル302の周囲に配設された弾性ジャケット204は、電流が二金属コイル302から除去されると、二金属コイル302がその緊密な構成に戻ることを支援し得る。
【0038】
再び図1A及び図1Bを参照すると、上述の合金を含む、様々な二金属材料は、異なる線形熱膨張係数を有し、システム100が特定の処置のためにカスタマイズされることを可能にする。二金属材料(第1の金属304及び/又は第2の金属306)は、熱膨張係数が、ヒト血液を上回る(例えば、37℃を上回る)ように選択又は処理されることができ、そのため、二金属コイル302は、血管内の意図された起動場所に到達する前に不注意に起動されない。材料の熱膨張係数は、独立して、約8×10-6m/(m℃)~約20×10-6m/(m℃)の範囲であり得、これは20℃~212℃(例えば、20℃~65℃、40℃~60℃など)の温度範囲と相関し得る。理想的には、熱膨張係数は、約45℃~約55℃の温度範囲と相関し得る。これは、緊密な構成から膨張構成への遷移に関して二金属コイル302を加熱するために必要とされるエネルギーを最小限に抑えながら、送達構成のための膨張可能な特性を確実にするのに役立ち得る。
【0039】
本明細書で使用する場合、任意の数値又は数値の範囲についての「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の一部又は構成要素の集合が、意図された目的に沿って機能させるような好適な寸法の許容範囲を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、記載された値の±10%の値の範囲を指してもよく、例えば、「約50℃」は、45.001℃~54.999℃の値の範囲を指してもよい。
【0040】
二金属コイル302は、二金属コイル302に電流を提供することによって加熱されることができる。二金属材料、例えば、鋼及び銅の高い導電性は、二金属コイル302を電流に応答して加熱させることができ、次いで熱が緊密な構成から膨張構成への遷移を引き起こす。システム100は、電子電流コントローラ500を有する近位ハブを含んで、必要とされる電流を二金属コイル302に提供することができる。電子電流コントローラ500は、電流源に接続され得る電気接点を有するオンオフスイッチなどのスイッチで起動されることができる。電子電流コントローラ500は、着色LED電球、又は他の好適なインジケータを含むことができる。着色LED電球は、二金属コイル302が「オン」モードにおいて膨張するように構成されるときに点滅することができる。電子電流コントローラ500は、例えば、およそ3~12V、より好ましくは、およそ5~9Vの範囲の電源を使用して、およそ300mA~およそ1500mA(例えば、およそ500mA~およそ1000mA)を二金属コイル302に供給することができる。電流は、1~1000ミリ秒、より好ましくは、1~100ミリ秒の電流内の遮断を伴い、1~1000ミリ秒、より好ましくは、100~500ミリ秒でパルス化され得る。パルス化は、二金属コイル302の温度を、設定温度範囲の間に維持することを可能にし、温度が範囲間に保たれるように、パルスのオンセグメントは二金属コイル302を加熱し、パルスのオフセグメントはそれが冷却されることを可能にする。温度は、温度が範囲外になる場合にパルスが変化することができるように、熱電対によって監視され得る、例えば、電流の連続的な供給は、温度を急速に上昇させるために使用されることができ、パルスは、二金属コイル302の温度を上方範囲下に保つために低くすることができる。電子電流コントローラ500はまた、電子電流コントローラ500の近位端部上に開口部502を有して、カテーテル200の内側管腔202へのアクセスを提供することができる。開口部502は、ルアーネジ又は他の好適なコネクタとのルアーコネクタ嵌合に嵌合するように構成されることができる。ルアーコネクタは、カテーテル200の内側管腔202へのアクセスを提供することができる。図1A及び図1Bに示されるように、ルアーコネクタは、カテーテル200の内側管腔202への固定されたアクセスを提供することを支援するための雄ネジを含むことができる。
【0041】
1つ又は2つ以上の導電性ワイヤ400、400b(例えば、正のリード及び負のリード)は、電子電流コントローラ500と二金属コイル302との間に延在して、二金属コイル302を加熱するための電流を提供することができる。電流コントローラ500は、電流源に接続され得る電気接点を有するオンオフスイッチを含むことができる。導電性ワイヤ400、400bは、ワイヤがカテーテル200の外側表面又は内側表面上に露出しないように、カテーテル200の層内に埋め込まれることができる。これにより、ワイヤが外側カテーテルを通るシステム100の移動を制限することなく、システム100が外側カテーテルに前進することを可能にし得る。導電性ワイヤ400、400bは、二金属コイル302に電流を提供するのに好適な、銅又は任意の他の材料を含み得る。カテーテル200のシャフトの長さ全体にわたる埋め込まれた導電性ワイヤ400、400bは、電子電流コントローラ500と二金属コイル302との間のカテーテル200の伸張に対する引張強度及び抵抗を増加させることができる。カテーテル200のシャフトの強度を増加させることは、吸引中に望ましく、より大きい吸引効率及び血塊の抽出を提供することができる。
【0042】
システム100は、二金属コイル302に接続されて、二金属コイル302の温度を監視する熱電対を更に含むことができる。二金属コイル302が特定の温度を上回って加熱される場合、二金属コイル302は、周囲の脈管構造を燃焼させる可能性がある。これを防止するために、熱電対は、電流によって加熱される際、二金属コイル302の温度を監視することができる。二金属コイル302が特定の温度、例えば、50℃を超える場合、熱電対は、この情報を電子電流コントローラ500に伝達して、二金属コイル302に供給されている電流を停止することができる。熱電対は、二金属コイル302(例えば、アンカー支柱)と2つの導電性ワイヤ400、400bのうちの一方との間に溶接され得る、白金、ステンレス鋼、又は他の好適な導電性ワイヤを備え得、ここで電子電流コントローラ500が、二金属コイル302と熱電対ワイヤとの間の抵抗率における差を測定して、二金属コイル302の温度を判定する。これは、較正され得、かつ線形温度関係を有し得る。
【0043】
システム100は、二金属コイル302と電気的に連通する熱電冷却回路を含むことができる。熱電冷却回路は、例えば、二金属コイル302に近接して配設された、ペルチェチップを含むことができる。上で説明されたように、二金属コイル302が冷却されるとき、より低い熱膨張係数を有する二金属コイルの金属材料は、緊密な構成へと屈曲又は遷移することができる。これは、二金属コイル302内の血塊を捕捉して、完了し得る。二金属材料が自然に冷却されることを可能にする代わりに、熱電冷却回路は、二金属コイル302からの熱をポンプ圧送して、二金属コイル302をより急速に冷却することができる。
【0044】
示されていないが、システム100は、吸引源と組み合わせて使用されることができる。多くの場合、膨張した二金属コイル302は、標的部位において血管の壁と封止して、カテーテル200の遠位端部に吸引を方向付けることができる。換言すれば、膨張した二金属コイル302はまた、流れを停止し、二金属コイル302に近接する血液の不要な吸引、又は塞栓移動を防止することができる。
【0045】
図2A及び図2Bは、血管を通して挿入された二金属コイル302用のカテーテル200を図示する。いくつかの実施例では、カテーテル200は、外側カテーテルを通して挿入され得るが、外側カテーテルは必要とされない。図2A及び図2Bにおいて図示されるように、二金属コイル302用のカテーテル200は、ガイドカテーテル(図2A又は図2Bには示されていないガイドカテーテル)から前進するために必要とされる唯一のカテーテルであり得る。カテーテル200及び二金属コイル302は、例えば、システムが、非常に可撓性であり、自己作動するため、ガイドカテーテルからより遠くに進行することができる。したがって、ガイドカテーテルは、例えば、内部頚動脈内に存在することができ、カテーテル200及び二金属コイル302は、完全にM1又はM2血管まで延在することができる。
【0046】
図3A図3Fは、例示的な二金属コイル設計の例示である。二金属コイル302は、重なり合うコイル又はばねコイルを含む、様々な形状を有することができる。代替的に、二金属コイル302は、ステップインターロックコイル(図3A及び図3B)、角度インターロックコイル(図3C及び図3D)などの緊密な構成にあるときに、コイル交差又は重複を低減する形状を有することができる。二金属コイル302の長さは、示されるものよりも長くてもよく、又は短くてもよい。長さは、例えば、血管壁とのより多くの表面積接触を提供するため、又は二金属コイル302内の血塊の受容空間を増加させるために増加され得る。
【0047】
金属領域300又は二金属コイル302は、鋼などの非放射線不透過性材料から主に形成されることができ、白金及び/又はタングステンなどの放射線不透過性材料から作製された放射線不透過性領域314を含むことができる。二金属コイル302の放射線不透過性材料及び非放射線不透過性材料は、同心円状に溶接されることができる。放射線不透過性領域314は、二金属コイル302内又は二金属コイル302の近くの金属領域300内に位置決めされることができる。放射線不透過性領域314は、医師が治療処置中にカテーテル200の遠位先端部、金属領域300、又は二金属コイル302の設置を容易に可視化することができるように、カテーテル200の遠位先端部から所定の距離に位置決めされることができる。
【0048】
図4A及び図4Bは、膨張可能な先端部を有する例示的な作動血塊回収システムの例示である。カテーテル先端部は、カテーテル200の遠位先端部から近位に、かつ金属領域300の少なくとも一部分上に延在する弾性領域300aを有することができる。いくつかの実施例では、弾性領域300aは、金属領域300全体にわたって延在する。例えば、金属領域300は、カテーテル200の遠位先端部から、長手方向軸L-Lに沿って、およそ1mm以下で近位に延在することができ、一方で弾性領域300aは、カテーテル200の遠位先端部から、長手方向軸L-Lに沿って、およそ1mm以上で近位に延在することができる。弾性領域300aは、カテーテル200の遠位先端部において非外傷性先端部を形成することができる。二金属コイル302は、弾性ジャケット204内に封入されることができる。弾性ジャケット204は、流体吸引を二金属コイル302に、かつカテーテル200に方向付ける手段を提供することができる。弾性ジャケット204はまた、折り畳まれた構成で二金属コイル302の位置を維持することができる。弾性ジャケット204材料としては、良好な引裂抵抗を伴い高弾性及び絶縁性を有する、Chronoprene、Chronosil、Chronoflex、並びに他のケイ素及びウレタンポリマーなどの好適な弾性ポリウレタンを挙げることができる。弾性ジャケット204は、二金属コイル302が膨張したとき、弾性ジャケット204が伸張することを可能にするように低い硬さを有することができる。例えば、弾性ジャケット204は、典型的に00範囲のショア硬さ、及びショアA0.1~ショアA100(例えば、ショアA40~ショアA80)を有することができる。弾性ジャケット204は、膨張することが意図され得る二金属コイル302を封入しているため、弾性ジャケット204はまた、例えば、200~2200%(例えば、400~800%)の膨張度を有することができる。
【0049】
二金属コイル302の表面は、例えば、二金属コイル302が弾性ジャケット204によって完全に封入されるか、又は封止されていない場合、導体である血液から金属材料を絶縁するために、パリレンなどの高い誘電強度を有する材料のフィルムでコーティングされることができる。
【0050】
二金属コイル302は、上で説明された弾性ジャケット204によって、及び2つの導電性ワイヤ400、400bを固定することによって、カテーテル200の遠位先端部において金属領域300内の所定の位置に保持されることができる。2つの導電性ワイヤ400、400bは、溶接、リベット留め、ろう付け、又は他の好適な方法によって固定されることができる。いくつかの実施例では、2つの導電性ワイヤ400、400bは、二金属コイル302の特定の部分に固定されることができ、そのため二金属コイル302の第1の端部308及び第2の端部312が独立して移動するか、又は屈曲することができる。代替的に、二金属コイル302の第1の端部308は、カテーテル200に固定されることができ、そのため二金属コイル302が膨張し、収縮する際、第1の端部308が固定され、第2の端部312が自由に移動又は屈曲する。
【0051】
図5は、埋め込まれた導電性ワイヤを有する例示的な作動血塊回収システムの断面の例示である。いくつかの実施例では、二金属コイル302の特定の部分を絶縁することにより、二金属コイル302が別個の起動シーケンスを有することを可能にし得る。二金属コイル302の第1の端部308は、電流を受容する際に膨張するように構成されることができ、二金属コイル302の第2の端部312は、電流を受容する際に締まるように構成することができる。これにより、ユーザが、金属材料が冷却するのを待つ代わりに、二金属コイル302の1つの部分に電流を印加することによって、二金属コイル302を締めるか、又は折り畳むことを可能にし得る。電流は、負のリードを通って二金属コイル302の一方の側に流れ、二金属コイル302の他方の側に更なる電気抵抗経路内で流れることができ、正のリードを通って戻る。二金属コイル302のセグメントは、絶縁体によって分割されることができ、異なるセグメントは、各々独立した組の正及び負のリードワイヤを有することができる。
【0052】
いくつかの実施例では、カテーテル200から延在する代わりに、二金属コイル302は、カテーテル200の内側管腔202内に位置決めされ得る。同様の様式で、二金属コイル302が内側管腔202の内側で膨張する際、カテーテル200のボアサイズは、流れを調節するために増加させることができる。
【0053】
図6は、血塊回収システムを製造する方法を例示するフロー図である。図6の方法工程は、理解されるように、本明細書に記載される例示的手段のいずれかによって、又は同様の手段によって実装されることができる。図6に概説される方法600を参照すると、工程610において、方法600は、カテーテルの遠位先端部内に二金属コイルの少なくとも一部分を取り付けることを含むことができる。二金属コイルは、第1の熱膨張係数を有する第1の金属、及び第1の熱膨張係数とは別個の第2の熱膨張係数を有する第2の金属を含むことができる。
【0054】
工程620では、方法600は、導電性ワイヤの第1の端部をカテーテルの金属領域に接続することを含むことができる。金属領域は、導電性ワイヤが金属領域に固定されるか、又は二金属コイルに直接固定されるように、二金属コイルを含むことができる。
【0055】
工程630では、方法600は、導電性ワイヤの第2の端部を電流コントローラに接続することを含むことができる。
【0056】
工程640は、導電性ワイヤを通して、電流を電流コントローラから金属領域に印加することを含む。電流を金属領域に印加することはまた、電流を直接又は間接的に二金属コイルに印加することを含み得る。ユーザは、患者の外部の電子回路を起動することができる。
【0057】
工程650では、方法600は、電流によって、二金属コイルを、緊密な構成から膨張構成に膨張させることを含むことができる。
【0058】
示されていないが、方法600は、弾性ジャケットを金属領域の周囲に取り付けることを更に含み得、そのため、上で説明されたように、弾性ジャケットが金属領域の膨張を可能にする。
【0059】
方法600は、工程650の後に終了し得る。他の実施形態では、上述の実施例による付加的な工程を実行することができる。例えば、方法600は、外側カテーテル又はアクセスシースを通して標的部位にカテーテルを前進させることを含むことができる。方法600はまた、第1の電流を停止させて、二金属コイルの少なくとも第1の端部を冷却することを含むことができる。二金属材料を冷却することにより、少なくとも第1の端部を閉塞性血栓上で締めさせて、除去のための血栓の捕捉を改善することができる。方法600は、閉塞性血栓を二金属コイルに吸引することを更に含み得る。吸引は、二金属コイルによってカテーテルに方向付けられ得る。方法600はまた、患者から閉塞性血栓を有するカテーテルを引き抜くことを含み得る。血栓が二金属コイル内に捕捉された状態で、血栓は、不十分な捕捉に起因して、血栓がカテーテルから外れる心配をすることなく、患者の血管から引き出すことができる。
【0060】
いくつかの実施例では、方法600は、二金属コイルの少なくとも第2の端部に第2の電流を送達することを含み得る。第2の端部は、異なる熱膨張係数など、第1の端部とは異なる変換特性を有することができる。例えば、第2の端部は、反対方向に屈曲させて、二金属コイルを締めることを引き起こすように構成され得、これは、加熱されると、二金属コイルを血栓上で折り畳むことができることを意味する。したがって、方法600は、第2の電流を介して、二金属コイルの第2の端部を加熱して、二金属コイルの第2の部分を膨張構成から折り畳まれた構成に、かつ閉塞性血栓の上で変化させることを含み得る。
【0061】
方法600はまた、二金属コイルの少なくとも第1の端部を熱電冷却回路で冷却して、二金属コイルの少なくとも第1の端部を閉塞性血栓の上で折り畳むか、又は締めさせることを含むことができる。ペルチェチップなどの熱電冷却回路は、システムから熱をポンプ圧送することができる。この効果を使用して、熱電冷却回路は、二金属コイルの少なくとも第1の端部を冷却し、閉塞性血栓の周囲でより急速に折り畳ませることができる。
【0062】
方法600は、定常二金属コイル温度を維持するために一連のパルスで電流を送達することを含むことができ、電子回路は、温度を監視し、それに応じてパルス持続時間及び/又は長さを調節することができる。
【0063】
方法600はまた、熱電対を用いて二金属コイルの温度を監視することを含み得る。いくつかの実施例では、熱電対は、二金属コイルが特定の温度、例えば、50℃を超えるかどうかを判定し、二金属コイルが温度を超える場合に第1の電流を停止させるために監視することができる。
【0064】
本明細書に含まれる記述は、本開示の実施形態の例であり、本開示の範囲を何ら制限するものではない。本明細書に記載されるように、本開示は、代替的な構造要素の幾何学的形状を使用することと、様々な例示的実施形態からの形状及び構造要素を組み合わせることと、代替材料などを使用することと、を含む、吸引装置の多くの変形及び修正を企図する。これらの修正は、本開示が関連する当業者には明らかであり、以下の特許請求の範囲内であることが意図される。
【0065】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
カテーテルであって、前記カテーテルの内側管腔を画定する壁を有し、前記内側管腔が、電流コントローラを有する近位ハブと遠位先端部との間に延在する、カテーテルと、
前記カテーテルの前記遠位先端部に位置決めされたコイル状構成にある少なくとも2つの当接金属を含む金属領域であって、
前記金属領域の第1の金属の少なくとも一部分が、二金属コイルの外周を含み、前記金属領域の第2の金属の少なくとも一部分が、前記二金属コイルの内周を含む、金属領域と、
前記電流コントローラと電気的に連通し、かつ前記金属領域の少なくとも一部分と電気的に連通する、前記カテーテルの長手方向軸に沿って延在する2つの導電性ワイヤと、を備える、システム。
(2) 前記金属領域の少なくとも一部分が、電流刺激時に、緊密な構成から膨張構成に可逆的に膨張するように構成されており、
前記緊密な構成が、前記膨張構成の第2の直径よりも小さい第1の直径を含む、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記二金属コイルの少なくとも一部分が、前記遠位先端部で前記カテーテルに固定されており、前記2つの導電性ワイヤと係合されており、
前記2つの導電性ワイヤから前記二金属コイルの少なくとも一部分に印加された電流が、前記二金属コイルを、前記二金属コイルの第1の端部と第2の端部との間のたわみに沿って、前記膨張構成に移動させる、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記二金属コイルの前記少なくとも2つの当接金属の前記第1の金属が、第1の熱膨張係数を含み、
前記二金属コイルの前記少なくとも2つの当接金属の前記第2の金属が、第2の熱膨張係数を含み、
前記第1の熱膨張係数が、前記第2の熱膨張係数とは異なる、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記第1の金属が、前記第2の金属の前記熱膨張係数よりも低い熱膨張係数を含む、実施態様4に記載のシステム。
【0066】
(6) 前記金属領域の少なくとも一部が、放射線不透過性領域を含む、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記カテーテルの前記遠位先端部の少なくとも一部分が、前記二金属コイルの周囲に配設された弾性ジャケットを含み、前記金属領域を越えて前記カテーテルの前記遠位先端部から近位に延在する弾性領域を形成する、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記弾性領域が、前記二金属コイルが前記緊密な構成から前記膨張構成に膨張する際、可逆的に膨張するように構成されている、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記電流コントローラから、前記2つの導電性ワイヤを通り、前記カテーテルに固定された前記二金属コイルの第1の端部及び/又は第2の端部のうちの少なくとも1つに向かい、前記二金属コイルの長さの大部分を通り、かつ前記電流コントローラへの戻り経路を通る、電流経路を更に備える、実施態様1に記載のシステム。
(10) 前記2つの導電性ワイヤのうちの少なくとも一方が、前記二金属コイルの前記第1の端部に電気的に固定されており、
戻り経路が、前記二金属コイルの前記第2の端部に電気的に固定され、かつ前記長手方向軸に沿って延在する、前記2つの導電性ワイヤのうちの少なくとも他方を含む、実施態様9に記載のシステム。
【0067】
(11) システムであって、
弾性領域を含む遠位先端部を有するカテーテルと、
前記カテーテルの前記遠位先端部で前記弾性領域内に位置決めされた二金属コイルと、を備え、
第1の金属の少なくとも一部分が、前記二金属コイルの外周を含み、第2の金属の少なくとも一部分が、前記二金属コイルの内周を含む、システム。
(12) 前記二金属コイルの少なくとも一部分が、緊密な構成から膨張構成に可逆的に膨張するように構成されており、
前記緊密な構成が、前記膨張構成の第2の直径よりも小さい第1の直径を含む、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記二金属コイルの少なくとも一部分が、前記カテーテルに固定され、前記弾性領域内の弾性ジャケットによって封入されており、
前記膨張構成が、前記二金属コイルの第1の端部と第2の端部との間のたわみを含む、実施態様11に記載のシステム。
(14) 前記二金属コイルの前記第1の金属が、第1の熱膨張係数を含み、
前記二金属コイルの前記第2の金属が、第2の熱膨張係数を含み、
前記第1の熱膨張係数が、前記第2の熱膨張係数とは別個である、実施態様11に記載のシステム。
(15) 前記二金属コイルの前記第1の金属が、前記二金属コイルの前記第2の金属の前記熱膨張係数よりも低い熱膨張係数を含む、実施態様14に記載のシステム。
【0068】
(16) 前記カテーテルの長手方向軸に沿って延在する2つの導電性ワイヤと、
前記2つの導電性ワイヤのうちの少なくとも一方に第1の電流を提供するように構成された電流コントローラと、
前記2つの導電性ワイヤと電気的に連通する前記カテーテルの金属領域であって、
前記金属領域が、前記二金属コイルを備え、
前記金属領域の少なくとも一部分が、放射線不透過性領域を含み、
前記金属領域の少なくとも一部分が、電流刺激時に、緊密な構成から膨張構成に可逆的に膨張するように構成されている、金属領域と、を更に備える、実施態様11に記載のシステム。
(17) 方法であって、
カテーテルの遠位先端部内に二金属コイルの少なくとも一部分を取り付けることであって、
前記二金属コイルが、第1の熱膨張係数を含む第1の金属と、前記第1の熱膨張係数とは別個の第2の熱膨張係数を含む第2の金属と、を備える、取り付けることと、
導電性ワイヤの第1の端部を、前記二金属コイルを含む金属領域に接続することであって、
前記二金属コイルの少なくとも一部分が、前記カテーテルに固定されている、接続することと、
前記導電性ワイヤの第2の端部を電流コントローラに接続することと、を含む、方法。
(18) 電流を、前記導電性ワイヤを通して、電流コントローラから前記金属領域に印加することを更に含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記電流によって、前記二金属コイルを、緊密な構成から膨張構成に膨張させることを更に含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記金属領域の周囲に弾性ジャケットを取り付けることを更に含む、実施態様17に記載の方法。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図5
図6
【外国語明細書】