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特開2023-49035高周波信号用の導体路ユニット、台座および導体路ユニットを備えた電子コンポーネント
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  • 特開-高周波信号用の導体路ユニット、台座および導体路ユニットを備えた電子コンポーネント 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049035
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】高周波信号用の導体路ユニット、台座および導体路ユニットを備えた電子コンポーネント
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/02 20060101AFI20230331BHJP
   H01P 3/02 20060101ALI20230331BHJP
   H01P 1/02 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
H01P5/02 603L
H01P3/02 200
H01P1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022153623
(22)【出願日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】10 2021 125 059.5
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カーステン ドレーゲミュラー
(72)【発明者】
【氏名】オン ワイ リー
(72)【発明者】
【氏名】イン チェン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】アミー スン
(72)【発明者】
【氏名】アーティト アオウドムスク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】方向転換時に2つの信号導体間の位相差を低減する高周波信号用の導体路ユニットを提供する。
【解決手段】導体路ユニット1は、支持体2、接地導体及び支持体において接地導体とは反対の側に配置された層状の信号導体10、11の対を含み、対を成す2つの信号導体間に所定の距離dが存在し、信号導体の対は、信号導体の対の方向が転換する変向領域20を有し、変向領域内で対を成す信号導体間に、変向領域外の信号導体同士の距離dに比べて縮小された距離を有する。この場合、信号導体の直線区間21、21’から変向領域に移行する移行領域23、23’における信号導体同士の距離は、各直線区間における2つの信号導体間の中心線30の延長線に対して対称に縮小されており、かつ/又は、方向転換に関して内側の信号導体に、開放式の分岐線路24の配置により容量が導入されている。容量は、変向領域内で内側の信号導体に電気的に接続される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号用の導体路ユニット(1)であって、前記導体路ユニット(1)は、支持体(2)と、接地導体(4)と、前記支持体(2)において前記接地導体(4)とは反対の側に配置された層状の信号導体(10,11)の対と、を含んでおり、対を成す2つの前記信号導体(10,11)間に所定の距離dが存在しており、前記信号導体(10,11)の対は、前記信号導体(10,11)の対の方向が転換する変向領域(20)を有している、高周波信号用の導体路ユニット(1)において、
前記変向領域(20)内で対を成す前記信号導体(10,11)間に、前記変向領域(20)外の前記信号導体(10,11)同士の距離dに比べて減少させられた、縮小された距離dが存在しており、前記信号導体(10,11)の直線区間(21)から前記変向領域(20)に移行する移行領域(23)における前記信号導体同士の距離は、各直線区間における2つの前記信号導体(10,11)間の中心線(30)の延長線に対して対称に縮小されており、かつ/または、方向転換に関して内側の前記信号導体(10)に、開放式の分岐線路(24)の配置により容量が導入されており、前記容量は、前記変向領域(20)内で前記内側の信号導体(10)に電気的に接続されていることを特徴とする、
高周波信号用の導体路ユニット(1)。
【請求項2】
前記縮小された距離dおよび/または前記分岐線路(24)の配置および/または形状は、前記信号導体(10,11)により案内される信号に関して、前記信号導体(10,11)の前記方向転換に起因する2つの前記信号導体(10,11)間の位相差が最小化されるように選択されている、
請求項1記載の導体路ユニット(1)。
【請求項3】
前記変向領域内の2つの前記信号導体(10,11)間の前記距離dの、前記縮小された距離dへの減少は、連続的であり、段部を有していない、
請求項1または2記載の導体路ユニット(1)。
【請求項4】
前記変向領域(20)内の前記信号導体(10,11)は、最大でも-10dBの、コモンモード波とノーマルモード波との間の結合係数を有している、
請求項1から3までのいずれか1項記載の導体路ユニット(1)。
【請求項5】
前記接地導体(4)は、別の導電層として形成されており、前記別の導電層と前記信号導体(10,11)の導電層との間の層距離(D)は、0.025mm~0.65mmの範囲内、好適には0.05mm~0.4mmの範囲内である、
請求項1から3までのいずれか1項記載の導体路ユニット(1)。
【請求項6】
前記信号導体(10,11)の対は、前記支持体(2)の第1の側に配置されており、前記接地導体(4)は、別の導電層の形態で、前記支持体(2)の第2の側に形成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の導体路ユニット(1)。
【請求項7】
前記変向領域(20)内の2つの前記信号導体(10,11)間の前記縮小された距離d:前記変向領域(20)外の前記距離dの比d/dは、0.1~0.95の範囲内、好適には0.4~0.8の範囲内である、
請求項1から5までのいずれか1項記載の導体路ユニット(1)。
【請求項8】
前記変向領域内の前記信号導体(10,11)の縮小された幅W:前記変向領域外の幅Wの比W/Wは、0.1~0.93の範囲内、好適には0.4~0.8の範囲内である、
請求項1から6までのいずれか1項記載の導体路ユニット(1)。
【請求項9】
2つの前記信号導体(10,11)の前記幅Wの縮小は、前記変向領域(20)外に位置する狭窄領域(22)内で行われる、
請求項8記載の導体路ユニット(1)。
【請求項10】
前記分岐線路(24)の長さは、前記導体路ユニット(1)が設計されている最高周波数の波長の4分の1よりも短く選択される、
請求項1から8までのいずれか1項記載の導体路ユニット(1)。
【請求項11】
前記分岐線路(24)は、好適には扇形部材(25)の形態の導電面を有している、
請求項1から9までのいずれか1項記載の導体路ユニット(1)。
【請求項12】
以下の特徴、すなわち:
-前記導体路ユニット(1)は、サブマウント上に配置されている、
-前記支持体(2)は、窒化アルミニウム-セラミック、窒化アルミニウムを含むセラミック、酸化アルミニウム(Al)、ガラス、またはガラスおよびセラミックを含む、
-前記信号導体(10,11)の前記幅W:前記接地導体(4)と前記信号導体(10,11)との間の距離Dの比W/Dは、0.05~3の範囲内、好適には0.1~2の範囲内である、
-前記変向領域(20)外の2つの前記信号導体(10,11)間の前記距離d:前記接地導体(4)と前記信号導体(10,11)との間の前記距離Dの比d/Dは、0.05~3の範囲内、特に好適には0.1~1.5の範囲内である、
-前記導体路ユニット(1)は、遮断周波数、特に比較的高次の波を発生させるための遮断周波数が60GHzを上回るように、好適には70GHzを上回るように形成されている、
のうちの少なくとも1つを備える、
請求項1から11までのいずれか1項記載の導体路ユニット(1)。
【請求項13】
以下の特徴、すなわち:
-前記信号導体(10,11)のうちの少なくとも1つは、前記変向領域(20)内に、2つ以上の湾曲区間を備えた少なくとも1つの縁部を有しており、少なくとも2つの前記湾曲区間の曲率半径は、それぞれ異なって選択されている、
-前記信号導体(10,11)のうちの少なくとも1つは、前記変向領域(20)内に、少なくとも1つの直線区間を備えた縁部を有している、
のうちの少なくとも1つを備える、
請求項1から12までのいずれか1項記載の導体路ユニット(1)。
【請求項14】
電子構成素子と、請求項1から13までのいずれか1項記載の導体路ユニット(1)と、を備えた電子コンポーネント用の台座(100)であって、
前記台座(100)は、電気的なフィードスルーを有しており、前記電子構成素子と前記電気的なフィードスルーとは、両方共、前記導体路ユニット(1)の前記信号導体(10,11)に接続されており、これにより電気信号が、前記フィードスルーから前記信号導体(10,11)を介して前記構成素子へ案内されるようになっている、
電子コンポーネント用の台座(100)。
【請求項15】
電子構成素子と、請求項1から14までのいずれか1項記載の導体路ユニット(1)と、が封入されたハウジングを備えたデバイスの形態の電子コンポーネント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号用の導体路ユニットであって、支持体と、接地導体と、支持体において接地導体とは反対の側に配置された層状の信号導体の対と、を含んでおり、対を成す2つの信号導体間には所定の距離が存在しており、信号導体の対は、信号導体の対の方向が転換する変向領域を有している、高周波信号用の導体路ユニットに関する。本発明の別の態様は、それぞれが前記のような導体路ユニットを有している台座と電子コンポーネントとに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波供給線路は、基本的に周知である。特にこのような供給線路は、電子コンポーネントにデータを供給するために必要とされる。このことは、例えば本出願人の独国特許出願第102020105772.5号明細書に記載されている。
【0003】
このような場合には、サブマウントに配置された、信号導体と接地導体とを含む高周波供給線路が用いられる。このような導体路およびその特性は、例えばAgilent Technologies, Advanced Design System 1.5, Circuit Components, Distributed Components, Kapitel 2(インターネットアドレスhttp://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/ads15/ccdist/ccdist026.htmlで見ることができる)に記載されている。1つの信号導体と1つの接地導体とから成るこのようなユニットは、2線線路とも呼ばれる。
【0004】
従来技術では、2つの信号導体と1つの接地導体とを含む高周波供給線路も周知である。このようなユニットは差分線路とも呼ばれ、高い伝送速度でデータ信号を伝送する場合に使用されることが多い。この線路形式は、2線線路に比べていくつかの利点を有している。プレーナ型の2線線路の1つの実施形態は、例えばマイクロストリップ線路である。差動線路は3重線路であり、多重線路群に属している。
【0005】
データ伝送用の3重線路の利点は、2つの信号導体が結合されている状態において初めて得られる。すなわち、2つの信号導体の距離は、それらの電磁場が互いに重なり合うほど小さくなっている。3重線路には2つの固有波、つまり、ノーマルモード波とコモンモード波とが存在する。2つの信号導体は、接地導体に対する電圧UおよびUを有している。信号導体間には、電圧Udiff=U-Uが存在している。2つの信号導体がノーマルモードで、つまり180°の位相差を備えかつ同じ振幅で制御される場合、Udiffは単一導体の2倍の振幅を有することになる。この理由と別の理由とから、ノーマルモード制御が、3重線路の好ましい運転形式である。このように差動電圧が重要であるため、この線路は差動線路とも呼ばれる。
【0006】
ただし2重の振幅は、両導体の信号が180°の位相差を有している場合にのみ発生する。2つの信号導体間の位相関係は、信号導体が互いに対称である限りは一定である。対称面は中心に位置しており、2つの信号導体間の中心線に沿って延在している。この場合、導体路ユニットは、対称的な3重線路である。対称エラー発生時には、ノーマルモード波とコモンモード波との間に相互作用が生じる。
【0007】
プレーナ型の差動信号導体が方向転換した場合には、方向転換が直角の90°の屈曲なのか、または90°以下の緩やかな円弧なのかにかかわらず、常に対称性が失われる。外側の信号導体は常に、内側の信号導体よりも長くなっている。90°の円弧の例(図2参照)において、長さの差を計算する。内側の線路は円弧半径Rを有しており、外側の線路は円弧半径Rを有している。2つの線路の中心から中心までの距離はPである。長さの差ΔLは、各四分円の円弧の差から得られる。R=R+Pを用いて、長さの差
ΔL=π/2×P
が得られる。
【0008】
長さの差は、2つの信号導体の距離Pにのみ依存する。方向転換の別の実施形態についても、極めて類似した表現が見られる。長さの差ΔLからは、信号導体の位相定数βと共に位相差が得られる。差動信号が極僅かにしか歪曲されないようにするためには、2つの信号導体の位相差が180°未満でなければならない。つまり、2つの信号導体の長さの差は、信号線路の信号の波長の1/2(λ/2)に比べて極小さくなければならない。周波数が高くなるにつれて、線路を介して伝送される信号の波長はますます短くなり、実地において条件を維持することがより困難になる。信号導体の距離は、ますます縮小されねばならない。製造技術が、信号導体の距離ひいては方向転換を伴うこのような差動線路を介した、歪曲の少ない伝送の周波数範囲を制限している。
【0009】
米国特許第9461677号明細書から公知の導体路ユニットでは、差動線路の2つの信号導体の長さの差を補償するために、変向部においてその時々で内側に位置する信号導体の長さが、ループを設けることによって延長される。この場合、信号導体の幅および信号導体同士の距離が、変向領域において縮小される。この場合、変向領域に入る前の2つの信号導体間の中心線に関して、その時々で内側に位置する信号導体が、外側に位置する信号導体の方向にずらされる。このずらし領域内で、2つの導体路はそれぞれ異なる幾何学形状を有している。この領域内では対称性が解消されている。導体路幾何学形状が異なっている場合には、線路インピーダンスの要求を維持することは不可能である。インピーダンスミスマッチを伴う区間が生じる。信号の周波数が高いほど、ずらし領域において反射がより強く発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって本発明の課題は、方向転換時に2つの信号導体間の位相差を有さないか、または少なくとも低減された位相差を有しておりかつ従来技術の欠点を克服する、高周波信号用の導体路ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
高周波信号用の導体路ユニットを提案する。導体路ユニットは、支持体と、接地導体と、支持体において接地導体とは反対の側に配置された層状の信号導体の対と、を含んでおり、対を成す2つの信号導体間には所定の距離dが存在しており、信号導体の対は、信号導体の対の方向が転換する変向領域を有している。
【0012】
さらに第1の態様では、変向領域内で対を成す信号導体間に、変向領域外の信号導体同士の距離dに比べて減少させられた、縮小された距離dが存在しており、信号導体の直線区間から変向領域に移行する移行領域における信号導体同士の距離は、各直線区間における2つの信号導体間の中心線の延長線に対して対称に縮小されている、ということが想定されている。信号導体同士の距離の縮小に対して追加的または択一的に、第2の態様では、方向転換に関して内側の信号導体に、開放式の分岐線路の配置により容量が導入されており、容量は、変向領域内で内側の信号導体に電気的に接続されている。
【0013】
信号導体の対は、接地導体と共に支持体上に、高周波電気信号の伝送に適した差動線路を形成している。この差動線路は、好適には出発点から目標点まで延在しており、この場合、例えば信号源を信号シンクに接続している。出発点と目標点との間には、少なくとも1つの変向領域が位置しており、変向領域内で、差動線路はその方向を転換する。信号源は、例えば電気供給部としてコンタクトピンの形態で形成されていてよく、信号シンクは、例えばレーザダイオード等の電子構成素子であってよい。他のケースでは、例えば電子構成素子がフォトダイオードである場合には、電子構成素子が信号源であってもよく、これに相応してコンタクトピンが信号シンクであってもよい。
【0014】
変向領域とは、その境界が信号導体の方向転換の開始もしくは終了により決められている領域である。方向転換が複数の段階または区間で行われる場合、変向領域は、2つの信号導体のうちの一方が最初の方向転換を有する時に始まり、最後の方向転換が終了した時に終わり、この場合、複数の段階または区間における方向転換では、各方向転換は、回転方向の意味で同じ向きを有している。
【0015】
中心線に関して、信号導体の変向領域は、中心線の、出発方向に沿って延在する第1の直線区間と、中心線の、終点方向に沿って延在する第2の直線区間と、の間に位置する信号導体の部分を含んでいる。出発方向と終点方向との間には、例えば90°または45°であってよい変向角度が形成されており、この場合はもちろん、別の角度を有する変向も可能である。
【0016】
中心線は常に、2つの信号導体間のちょうど中央に延びている。この中心線上の点は、相応して、中心線の各点に関して、この中心線に対して垂直に延びる直線が、各信号導体の、中心線に面した対応する縁部と等距離で交差するように設計され得る。
【0017】
信号導体のうちの1つの信号導体の、中心線に面した縁部の一点は、この点と中心線との間で可能な最短の結合線の設計を介して、中心線上の一点に対応付けられてよい。この場合、この結合線と中心線との交点は、信号導体の縁部の出発点に対応付けられる。この指示に相応して、信号導体の個々の部分または区間を、中心線の対応する区間に対応付けることができ、その逆も同様である。
【0018】
変向領域は、信号導体の縁部が弧状に形成されている態様に関して、2つの信号導体間の中心線が方向転換部を有しておりかつ/または湾曲部を有している、2つの信号導体の領域として定義されてもよい。
【0019】
差動線路の信号導体は、層状に形成されている。これに相応して、信号導体はそれぞれ、導電層もしくは各信号導体の始端部から各信号導体の終端部まで延在しかつ側方において内縁と外縁とにより空間的に画定される導電層の一部により形成される。
【0020】
信号導体の縁部が、第1の直線区間と第2の直線区間との間の変向領域においてそれぞれ部分的に直線として形成されている場合、変向領域は、最初の部分的な方向転換箇所で始まり、例えば45°または90°の完全な方向転換が達成されると終わる。例えば90°の変向の場合、信号導体の縁部は、2段階で45°ずつ変向させられてよく、これにより変向領域は、45°の第1の変向段階から出発して再び45°の第2の変向段階に到るまで延在することになる。
【0021】
第1の態様に基づき想定される変向領域内での信号導体同士の距離の縮小の重要な特徴は、この距離の縮小が対称に推移する点である。このことは特に、内部で信号導体間の距離が縮小される移行領域内では、隣接する直線区間内に延在する中心線に対して、中心線のずれが生じないことを意味する。
【0022】
相応して、移行領域の中心線は、好適には隣接する直線区間の中心線の仮想の延長線として引き続き延びており、移行領域内で中心線の方向転換が生じることはない。
【0023】
全ての態様において、第1の直線区間、第1の移行領域、変向領域、第2の移行領域および第2の直線区間の中心線は連続的に、つまり段部無しで互いに移行し合っている。この場合、特に好適な態様では、移行部は、それぞれ連続微分可能でもあるので、中心線は、変向領域内と移行領域内への移行部とにおいて緩やかに湾曲されており、角隅部を有していない。
【0024】
縮小された距離dは、任意に小さくできるわけではない。それというのも、この距離は、2つの信号導体間にフラッシュオーバーまたはそれどころか短絡を生ぜしめないようにするために十分に大きくなければならないからである。追加的に、各製造方法の製造誤差および可能性が、確実に製造され得る縮小された最小の距離dを制限する。
【0025】
伝送信号に関する2つの信号導体間の距離の差を、特定の製造技術に関して可能であるよりもさらに最小化するためには、2つの信号導体のうちの内側の信号導体の信号が遅延させられてもよい。蛇行状の迂回線路、つまり内側に位置する信号導体の距離の延長、または線路上の追加的な誘電層により遅延を実現することは、従来技術である。本発明の枠内では、内側の線路の位相を高める別の可能性を提案する。
【0026】
このためには、内側の線路に容量性負荷が加えられる。円弧セグメントにおける損失無しの内側の信号導体の位相φは、
【数1】
から算出される。
【0027】
は円弧の長さ、βは位相定数、L’は単位長さ当たりのインダクタンス、C’は内側の信号導体の単位長さ当たりの容量である。信号導体の単位長さ当たりのインダクタンスL’および/または単位長さ当たりの容量C’を高めると、この線路セグメントの位相は増大する。ただしこの手段により、同時に線路のインピーダンスも変化してしまう。このことは望ましくない。開放式の分岐線路を用いて、任意の大きさの容量を調整することができる。開放式は特に、分岐線路の終端が電気的に閉じられておらず、特に接地電位に接続されていないことを意味する。分岐線路による容量の実現は、特に簡単であり、低損失であり、かつ製造においてさらなるコストを生ぜしめない。
【0028】
端部において抵抗が開放された、損失無しの線路の入力インピーダンスZは純粋な負のリアクタンスであり、
【数2】
である。
【0029】
は容量と同様に振る舞う。この線路の代替回路図として、線路入口から接地導体に向かう容量が挙げられることもある。ただし、入力インピーダンスは、周波数にも依存している。よって、容量の値は周波数と共に変化する。
【0030】
の表現において、Zはインピーダンス、βは位相定数、Lは分岐線路とも呼ばれる開放式の導体の長さである。ただし分岐線路の長さLは、差動線路内で伝送される信号のλ/4よりも短いことが望ましく、さもなければ入力インピーダンスは誘導性になる。相応して好適には、分岐線路の長さLは、導体路ユニットが設計されている最高周波数の波長の4分の1よりも短く選択される。特に好適には、長さLは、最高周波数の波長の10分の1よりも短く選択される。
【0031】
例えば、分岐線路の長さLの適合により、負のリアクタンスの大きさが調整される。分岐線路が長いほど、線路入口における容量の値が大きくなる。しかしまた、分岐線路に導電面を、例えば扇形部材の形態で形成することにより、分岐線路の容量を変化させることも可能である。このような導電性の面を形成することにより、分岐線路の幅が増大させられ、分岐線路の長さLを延長する必要無しに、分岐線路の電気容量が増大させられる。
【0032】
変向領域内で差動線路を円弧状に案内する場合、分岐線路は、理想的には円弧の長さの1/2のところに配置され、円弧の内面に向けられる。よって、90°の円弧の場合、分岐線路は45°回動させられている。このようにして、分岐線路の入力インピーダンスが、変向領域内の2つの信号導体のうちの内側の信号導体の円弧セグメントの中心の容量を増大させる。これにより、内側の信号導体には、追加的に容量性負荷が加えられることになる。相応して、位相差が、本発明の第2の態様に基づき内側の信号導体の電気回路により補償される。
【0033】
本発明の1つの重要な特徴は、2つの線路間の位相差が、広い周波数範囲にわたり最小化される点にある。
【0034】
相応して、好適には、縮小された距離dおよび/または分岐線路の配置および/または形状、特に長さは、信号導体により案内される信号に関して、信号導体の方向転換に起因する2つの信号導体間の位相差が最小化されるように選択されている。
【0035】
同様に、コモンモード波とノーマルモード波との結合を最小化することが好適である。結合の基準としては、両波の結合係数が適している。コモンモード波とノーマルモード波との間の結合係数は、好適には-10dB未満である。結合係数の最小化は、本発明の第2の態様では、とりわけ好適には、分岐線路の容量の適合により達成される、もしくは分岐線路の半径方向拡大部の面状の大きさにより達成される。
【0036】
2つの信号導体間の距離が好適には一定である、各信号導体の直線的に延びる区間と、信号導体間の縮小された距離dを含む変向領域と、の間には、好適には、2つの信号導体の距離が縮小する移行領域が存在している。
【0037】
2つの信号導体間の距離は、導体路ユニット全体にわたり一定に、縮小された距離dに設定されるわけではない。それというのも、各信号導体の接触接続のためには、より大きな距離dが必要とされるからである。
【0038】
好適には、2つの信号導体の相互距離の縮小は、突出部または段部無しに連続的に行われる。好適な態様では、この移行部は連続的に延びるだけでなく、連続微分可能に延びていてもよい。
【0039】
好適には、移行領域内では、中心線の方向転換は行われず、2つの信号導体間の距離は、この中心線に対して対称に縮小される。引き続く変向領域内で、信号導体の方向転換に相応して中心線もその方向を転換する。直線区間において変向領域外の中心線の仮想の延長線と、変向領域内の中心線と、の間には、対称的な距離縮小に基づき突出部は生じず、仮想の延長線は、途切れずにかつ突出部無しで、変向領域内の中心線に移行する。
【0040】
変向領域外では、信号導体の幅Wは、好適には変向領域内よりも大きくなっており、これにより、より少ない線路損失が達成され、場合により、例えばボンディングワイヤまたはトランジスタアウトライン(TO)パッケージのピン等のコンポーネントをそこに配置することができる。信号導体の幅Wと必要な線路インピーダンスZとから、信号導体間の距離dが算出される。Z=100Ωの差動線路インピーダンスに関して、例えば信号導体幅Wについては0.05mm~0.250mmの範囲が得られ、距離dについては0.04mm~0.6mmの範囲が得られる。1つの好適な実施形態では、信号導体幅W=0.1mmであり、インピーダンスZ=100Ωに関しては、d=0.09mmが選択されている。
【0041】
必要な線路インピーダンスZを保証するために、相応して好適には、2つの信号導体間の距離の縮小と同時に信号導体の幅も縮小させることが想定されており、これにより、線路インピーダンスZが一定に維持される。特に、縮小された幅Wの相応の適合に基づき、変向領域内の線路インピーダンスが、変向領域外の線路インピーダンスに適合させられることが好適であり、これにより、望ましくないインピーダンス変化が生じることはなく、インピーダンスは、導体路ユニット全体にわたり適合させられている。
【0042】
信号導体の直線区間と変向領域との間には、好適には、信号導体が変向領域外のより大きな幅Wから出発して、変向領域内の縮小された幅Wに狭窄している区間が位置している。この狭窄が行われる信号導体の領域は、本明細書では狭窄領域とも呼ばれる。この幅Wの縮小は、好適には信号導体間の距離dの縮小と共に行われるため、狭窄領域と移行領域とは同一であってよい。図示の例では、導体路幅の縮小は線形に行われる。これは、1つの簡単で好適な縮小の実施形態である。しかしまたこの縮小は、非線形に、例えば指数関数的に行われてもよい。それでもなお、2つの線路の間の対称性は維持され続ける。
【0043】
好適には、2つの信号導体間の縮小された距離dは、変向領域内で一定に保たれる。相応して好適には、信号導体の縮小された幅Wも、変向領域内で一定に保たれる。
【0044】
信号導体の対は、好適には導電性の層により形成される。このためには、導電層をまず支持体に面状に被着し、次いで信号導体の形状および延在部を、導電層の構造化により得る、ということが想定されていてよい。これに対して択一的に、導電層を、例えば印刷法により直接、所望の形状で被着することもできる。導電層のための材料としては、特に銅のような導電性の良好な金属が適している。
【0045】
導体路ユニットにおいて接地導体は、好適には別の導電層として形成されている。この場合、接地導体の延在部は、好適には、別の導電層の構造化により生ぜしめられ、この場合、接地導体は、例えば信号導体に関して既に説明したように得られてよい。別の導電層と信号導体の導電層との間の層距離Dは、好適には0.025mm~0.65mmの範囲内、特に好適には0.05mm~0.4mmの範囲内である。
【0046】
好適には、信号導体の対は、支持体の第1の側に配置されており、接地導体は別の導電層の形態で、支持体の第2の側に形成されている。1つの別の好適な実施形態は、支持体の第2の側の接地導体に対して追加的に、支持体の第1の側の1つまたは複数の接地導体も有している。
【0047】
好適には、支持体の材料は、窒化アルミニウム-セラミック、窒化アルミニウムを含むセラミック、酸化アルミニウム(Al)、ガラス、セラミックまたはこれらの材料のうちの複数の組合せを含む。
【0048】
支持体の第1の側に信号導体が配置されかつ反対の第2の側に接地導体が配置されている実施形態に関して、支持体の厚さは、接地導体と信号導体との間の距離Dに相当する。
【0049】
しかしまた、支持体上に、特に窒化アルミニウム-セラミック、窒化アルミニウムを含むセラミック、酸化アルミニウム(Al)、ガラスまたはセラミックからなる支持体上に、支持体の表面から見て、接地導体の別の導電層と、絶縁層と、信号導体の導電層と、を含む層構造体が配置されている実施形態も考えられる。この場合、絶縁層の厚さは、絶縁層が、接地導体と信号導体との間の所望の距離Dに相当するように選択される。この場合、好適には、層構造体内に位置する接地導体を電気的に接触接続させるために、スルーコンタクト、いわゆるビアが使用される。
【0050】
高周波信号、特に最高60GHz、好適には最高70GHzの信号の伝送時に良好な特性を保証するために、2つの信号導体および接地導体の幾何学的形状は、最適に調整されていることが望ましい。特に導体路ユニットは、好適には、遮断周波数、特に比較的高次の波を発生させるための遮断周波数が60GHzを上回るように、好適には70GHzを上回るように形成されている。
【0051】
好適には、接地導体と信号導体との間の幅W:距離の比W/Dは、0.05~3の範囲内、特に好適には0.1~2の範囲内である。
【0052】
好適には、変向領域外の2つの信号導体間の距離d:接地導体と信号導体との間の距離Dの比d/Dは、0.05~3の範囲内、特に好適には0.1~1.5の範囲内である。
【0053】
好適には、変向領域内の信号導体の縮小された幅W:変向領域外の幅Wの比W/Wは、0.1~0.93の範囲内、特に好適には0.4~0.8の範囲内である。
【0054】
好適には、変向領域内の2つの信号導体間の縮小された距離d:変向領域外の距離dの比d/dは、0.1~0.95の範囲内、特に好適には0.4~0.8の範囲内である。
【0055】
導体路ユニットは、特にトランジスタアウトライン(TO)パッケージ内に収容された電子構成素子を、TOパッケージの電気的な接続ピンに接続するために適している。このようなユニットでは、導体路ユニットは、好適には、TOパッケージの台座の架台に配置された、いわゆるサブマウント上に配置される。
【0056】
変向領域内では、信号導体の方向転換が、1つもしくは互いに画定可能な複数の区間において行われてよい。これにより、形成された差動線路の高周波特性の、より良好な適合を行うことができる。
【0057】
この場合、変向領域内では、信号導体のうちの少なくとも1つが、2つ以上の湾曲区間を備えた少なくとも1つの縁部を有しており、この場合、少なくとも2つの湾曲区間の曲率半径は、それぞれ異なって選択されている、ということが想定されていてよい。追加的または択一的に、変向領域内の信号導体のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの直線区間を備えた縁部を有していてよい。この場合、特に一方の信号導体の所定の区間において、一方の縁部は湾曲されていてよく、その時々の他方の縁部は直線的に形成されていてもよい。
【0058】
導体路ユニットは、特に導電層および/または別の導電層の構造化により得られる追加的な接地面を有していてよい。相応して、追加的な接地面は、特に信号導体の隣に配置されてよい。接地面を電気的に接触接続させるために、支持体にはスルーコンタクトが設けられていてよく、これにより、接地面を支持体の反対側から接触接続させることができる。
【0059】
本発明の別の態様は、本明細書に記載した導体路ユニットのうちの少なくとも1つを含む電子構成素子を備えた電子コンポーネント用の台座の提供である。台座は、電気的なフィードスルーを有しており、電子構成素子と電気的なフィードスルーとは両方共、導体路ユニットの信号導体に接続されており、これにより電気信号が、フィードスルーから信号導体を介して構成素子へ案内されかつ/またはその逆に案内される。
【0060】
台座は、特にトランジスタアウトライン(TO)パッケージ用の台座であってよい。電気的なフィードスルーは、特にガラス-金属フィードスルーとして形成されていてよい。
【0061】
電子構成素子の例には、特にレーザダイオードおよびフォトダイオードが含まれる。
【0062】
本発明の別の態様は、電子構成素子と、本明細書に記載した導体路ユニットと、が封入されたハウジングを備えたデバイスの形態の電子コンポーネントに関する。
【0063】
提案する電子コンポーネントは、特に、例えばグラスファイバケーブルを介した光データ伝送の分野における用途に適している。この場合、導体路ユニットの良好な高周波特性に基づき、特に高いデータ伝送速度が可能になる。
【0064】
以下に本発明を図面につきかつそれに限定すること無しに、より詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】2つの信号導体と1つの接地導体とを有する導体路ユニットの概略的な構造を示す図である。
図2】従来技術による導体路ユニットの平面図である。
図3】本発明による導体路ユニットの第1の実施形態の平面図である。
図4】本発明による導体路ユニットの第2の実施形態の平面図である。
図5】半径方向に開口する分岐線路を備えた導体路ユニットの別の実施形態の平面図である。
図6】第2の実施形態による2つの信号導体間の位相差を示すグラフである。
図7】第2の実施形態による導体路ユニットに関するノーマルモード波とコモンモード波との間の結合係数を示すグラフである。
図8】第2の実施形態による導体路ユニットに関する挿入損失を示すグラフである。
図9】本発明による導体路ユニットを有する電子コンポーネントの台座の一例を示す図である。
図10】導体路ユニットが追加的な接地面を有している、台座の第2の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1には、導体路ユニット1が側方から見た断面図で概略的に示されている。2つの信号導体10,11と、1つの接地導体4と、を含む差動3重線路が示されている。
【0067】
図1に示す例では、導体4,10,11は、支持体2に被着された導電層の構造化により得られる。図1に示す例では、構造化により信号導体10,11を形成する導電層が支持体2の上面に被着されており、構造化により接地導体4を形成する別の導電層が、反対側に位置する支持体2の下面に被着されている。
【0068】
2つの信号導体10,11は、相互距離dと幅Wとを有している。信号導体10,11のこれらの幾何学的なパラメータは、導電層の構造化により予め設定される。接地導体4は一般に、少なくとも接地導体4の幅が、信号導体10,11の幅Wと2つの信号導体10,11間の距離dとの和よりも大きくなるように、広幅に形成されている。接地導体4の幅も同様に、別の導電層の相応の構造化により調整される。接地導体4と各信号導体10,11との間の距離Dは、ここでは支持体2の厚さにより予め設定されている。
【0069】
接地導体4と2つの信号導体10,11とは結合されている。すなわち、導体4,10,11の距離は、導体4,10,11の電磁場が重なり合うほど小さくなっている。2つの信号導体10,11に電気信号が導入されると、信号導体10,11はそれぞれ、接地導体4に対する電圧UおよびUを有することになる。2つの信号導体10,11間には、電圧Udiff=U-Uが生じる。2つの信号導体10,11がノーマルモードで、つまり180°の位相差を備えて同じ振幅で制御される場合、Udiffは、1つの信号導体10,11のみと1つの接地導体4とを備えた単一線路に比べて2倍の振幅を有することになる。
【0070】
ただし2倍の振幅は、2つの信号導体10,11の信号が、180°の位相差を有する場合にのみ発生する。
【0071】
図2には、従来技術による導体路ユニット1が平面図で示されている。直線区間21から出発して、信号導体10,11は変向領域20内で90°だけ変向させられる。接地導体4(図1参照)は、見えない下面側に位置しており、同様に90°だけ変向させられる。
【0072】
差動信号導体10,11の方向転換では、図2に示すように対称性が失われる。それというのも、外側の信号導体11は常に、内側の信号導体10よりも長いからである。内側の信号導体10は円弧半径Rを有しており、外側の信号導体11は円弧半径Rを有している。2つの信号導体の中心から中心までの距離は、Pである。長さの差ΔLは、各四分円の円弧の差から得られる。R=R+Pを用いて長さの差が得られ、ΔL=π/2×Pとなる。
【0073】
図3には、本発明による導体路ユニット1の第1の実施形態の平面図が示されている。この導体路ユニット1もやはり、2つの信号導体10,11と、1つの接地導体4と、を含んでおり(図1参照)、これらは支持体2の互いに反対の側に配置されているため、図3に示す図では、接地導体4は見えない。
【0074】
信号導体10,11は1つの導体対を形成しており、変向領域20内で第1の直線区間21から出発して90°だけ変向させられ、この場合、2つの信号導体10,11のちょうど中間に延在する中心線30が、変向領域20内でその方向を転換している。図3に示す実施例では、方向転換部は、円弧に沿って連続的に延びている。変向領域20の外側では、中心線30はそれぞれ直線状に延びている。方向転換後に、導体対は別の直線区間21’で終わる。
【0075】
本発明に基づき、中心線30は突出部無しで、変向領域20の外側の直線区間から変向領域20内の湾曲領域内へ移行している。さらにこれらの移行部は、図3に示す第1の実施例では連続微分可能でもあるため、円弧形状の接線が途切れずに、直線状に延びる区間に移行している。
【0076】
2つの信号導体10,11は、各端部に元の相互距離dを有している。変向領域20内では、2つの信号導体10,11同士がより密に配置されているため、それらは、そこに縮小された相互距離dを有している。信号導体10,11の距離は、移行領域23内で、元の距離dから縮小された距離dに減少される。
【0077】
つまり有利には、非危機的箇所に、信号導体10,11のより簡単な製造と、特に簡単な電気的な接触接続と、を可能にするより大きな元の距離dが存在している。これに対して変向領域20内では、伝搬時間の差を縮小するために、縮小された距離dが用いられ、この距離dは好適には、製造方法が許す限り狭く選択されており、信号導体10,11間に望ましくない差またはそれどころか短絡が生じることはない。
【0078】
図3に示す実施例では、信号導体10,11は、変向領域20内に縮小された幅Wを有している。この場合、信号導体10,11の幅は、図示の第1の例では移行領域23と一致する狭窄領域22において縮小される。つまりここで、信号導体10,11の幅および距離の縮小が同時に行われる。
【0079】
図4には、本発明による導体路ユニット1の第2の実施形態の平面図が示されている。図3に示した第1の実施形態の場合と同様に、この導体路ユニット1もやはり2つの信号導体10,11と1つの接地導体4とを含んでおり(図1参照)、信号導体10,11と接地導体4とは、支持体2の互いに反対の側に配置されているため、図4に示す図では接地導体4は見えない。図3に示した第1の実施形態に関連して上述したように、信号導体10,11によって形成された対は、90°だけ変向させられる。第1の実施形態の場合と同様に、第1の直線区間21には、変向領域20に通じる第1の移行領域23が続いている。導体対は、第2の移行領域23’において変向領域20から離れ、第2の直線区間21’で終わる。
【0080】
図3に示した第1の実施形態に対して追加的に、内側の信号導体10と外側の信号導体11との間の信号の伝搬時間の差は、変向領域20内の縮小された距離dによってのみ縮小されるわけではない。図4に示す第2の実施形態では、追加的に変向領域20内で内側の信号導体10に容量が接続されており、容量は、ここでは例示的に長さLの分岐線路24として形成されている。
【0081】
分岐線路24は内側に向いており、この例では、変向領域20の外側の中心線30の向きに対して、つまり直線区間の向きに対して45°回動させられている。分岐線路24は、変向領域20内の別の箇所で内側の信号導体10に取り付けられていてもよい。スペース状況に応じて、分岐線路24は別の回転角度で配置されていてもよい。
【0082】
分岐線路24により提供された電気容量による内側の信号導体10の負荷により、内側の信号導体10における電気信号の伝播速度が、外側の信号導体11に比べて低下させられる。この場合、分岐線路24の幾何学形状の選択により、特に長さLの選択により、容量が調整され、その結果、信号の伝搬速度の低下により、変向により惹起された、距離dの縮小によっては完全に補償されない伝搬時間の差が相殺される。
【0083】
図4に示す実施形態では、内側の信号導体10への容量の取付けが、変向領域20における信号導体10,11間の距離および信号導体10,11の幅の縮小と組み合わせられて示されている。このことは、比較的小さな伝搬時間の差のみを電気容量の導入により補償すればよい、という利点を有している。ただしもちろん、容量、特に分岐線路24を使用して、信号伝播時間の補償を、距離の縮小無しでかつ/または信号導体10,11の幅Wの縮小無しで行うことも可能である。
【0084】
図5には、導体路ユニット1の第3の実施形態の平面図が示されている。第3の例は、図4に関して説明した第2の実施例に相応しており、この第3の例では、分岐線路24の幾何学形状が異なって形成されている。
【0085】
ここでは分岐線路24に扇形部材25が設けられており、扇形部材25は導電性であり、特に支持体2の反対の側に設けられた接地導体4と共に、電気容量を形成している。
【0086】
図5に示すように、扇形部材25を使用すると、所定の電気容量を達成するために必要とされる分岐線路24の長さを、図4に示した第2の例に比べて短縮することができる。これにより、特に高周波を有する電気信号用に導体路ユニット1を設計する場合に、分岐線路24の長さは信号波長の1/4未満であるべきであるという基準を、より簡単に守ることができる。さらにこれにより、分岐線路24の所要スペースを減らすことができ、このことは、支持体2に対する分岐線路24の配置を簡単にする。
【0087】
図6図8に示すグラフには、図4に示した第2の実施形態による差動線路の一例に関する位相差、結合係数および挿入損失が示されている。
【0088】
この例では支持体2として、0.254mmの厚さの窒化アルミニウム支持体が選択された。支持体の両面側には導電層が薄膜技術で被着されかつ構造化された。変向領域外では、2つの信号導体間の距離dは75μmであり、信号導体は、それぞれ91μmの線路幅Wを有している。2つの信号導体相互の縮小された距離dは、45μmである。線路幅Wは57μmであり、その結果、100Ωの差動インピーダンスが得られる。これにより、中心から中心までの距離P=102μmが算出され、距離の差は、ΔL=160μmである。歪曲の少ない伝送のための距離の差がλ/10以下であるべき場合、信号周波数は、fmax=63GHz以下であってよい。
【0089】
内側の信号導体10に取り付けられた分岐線路24の形態の容量により、内側の信号導体10内の信号の速度は、外側の信号導体11内の速度に比べて低下させられるため、位相差が大幅に縮小されている。各グラフには、異なる長さL、つまり0μm、250μm、350μm、450μmおよび550μmの分岐線路24に関する各曲線が示されている。
【0090】
図6には、周波数(GHz)に対する2つの信号導体間の位相差(°)が示されている。
【0091】
この場合、分岐線路の長さLの選択により位相差に影響を及ぼすことができる、ということが認められ、この例では、位相差は550μmの長さLに対して最小になる。周波数が30GHzの時に、この例では位相差がゼロになる。よってこの場合、長さの差は完全に補償されている。55GHzまでの全周波数範囲にわたっても、位相差は、分岐線路無しの例、つまり長さLが0の例に比べると、より明確に補償される。0~50GHzの周波数範囲では、位相差は10°未満に保たれ、さらにより高い周波数についても大幅には増加しない。
【0092】
図7には、図4に示した第2の実施形態による導体路ユニットに関する、周波数(GHz)に対するノーマルモード波とコモンモード波との間の結合係数(dB)が示されている。
【0093】
結合係数が小さいほど、位相差は小さくなる。相応して、最小限の結合係数が望ましい。ここでも、最小の結合はやはり、分岐線路の550μmの長さLに対して達成される。
【0094】
図8には、図4に示した第2の実施形態による導体路ユニットに関する、周波数(GHz)に対するノーマルモード波の挿入損失(dB)が示されている。
【0095】
内側の信号導体10に設けられた分岐線路により、ノーマルモード波は極僅かにしか妨害されない、ということが、図8に示すグラフに認められるノーマルモード波の僅かな挿入減衰量により示されている。分岐線路の長さが0より大きい例の場合、挿入減衰量は、45GHzの周波数から初めて、分岐線路無しの挿入減衰量と相違している。55GHzにおいて、追加的な減衰量は約1dBである。
【0096】
全ての例に関して、検査した50GHzまでの周波数範囲における増加は中程度であり、50GHzを上回る周波数において初めて重大な影響を及ぼす。よってこの例では、550μmの分岐線路の長さLでもって、極僅かな挿入減衰量において伝搬時間の差の最良の縮小が達成された。
【0097】
図9には、本発明による導体路ユニット1のうちの1つを含む電子構成素子用の台座100が示されている。
【0098】
台座100は、例えば金属から製造されていて貫通開口102を有しており、貫通開口102を通って、図9に示す例ではピン106の形態の2つの電気導体が案内されている。ピン106は、固定材料104により保持され、固定材料104は、電気的に絶縁性であり、貫通開口102を閉鎖する。固定材料104は、例えばガラスまたはガラスセラミックである。
【0099】
台座100の表面において貫通開口102の近くには架台110が位置しており、架台110には導体路ユニット1の支持体2が被着されている。この場合、特に支持体2の(図9では見えない)下面に配置された接地導体4は、架台110と台座100とに電気的に接続されていてよく、これにより、これらの部品は全て接地電位に位置している。
【0100】
図9から明らかなように、導体路ユニット1の信号導体10,11は、第1の端部においてピン106のすぐ反対の側に位置しかつ好適にはピン106にすぐ隣接するように形成されかつ配置されている。このようにして、ろう接箇所108を介して、ピン106と信号導体10,11との間に電気的な接続を容易に生ぜしめることができる。
【0101】
信号導体10,11は他方の端部において、電子構成素子(図示せず)の接触接続用のコンタクト箇所130を提供するように配置されかつ形成されている。このような電子構成素子は、例えばレーザダイオードまたはフォトダイオードであってよい。中心線30(図3図5参照)に関して、信号導体10,11の対は、ピン106に面した第1の端部を起点としてまず直線的に延び、次いで変向領域20(図3図5参照)に到達し、変向領域20において向きを90°だけ変向させられ、これにより、次いで再び第2の端部まで直線的に延びている。図9に示す例に示された導体路ユニット1は、図5に関して既に説明した導体路ユニット1の第3の実施形態に相当する。これに相応して、導体路ユニット1は、容量として用いられかつ変向領域20内で内側の信号導体10における信号伝搬速度を低下させる扇形部材25を備えた分岐線路24を有している。これにより、変向領域20内で2つの信号導体10,11間の距離が縮小した後も残留する伝搬時間の差の一部が補償される。
【0102】
図10には、電子構成素子用の台座100の別の例が示されている。台座は、図9に関して既に説明したように、架台110に配置された、導体路ユニット1を備える支持体2を有している。架台110に配置された導体路ユニット1は、図4に関して説明した導体路ユニット1の第2の態様と類似しているが、複数の追加的な接地面120を有しており、接地面120は、信号導体10,11から離間されて支持体2の露出した領域を被覆している。接地面120を、台座100もしくは架台110の接地電位に接触接続するためには、ビアとも呼ばれる複数のスルーコンタクト122が設けられている。接地面120は、信号導体10,11と接地導体4(図10では見えない)とにより形成された差動線路の追加的な遮蔽手段として働く。
【0103】
好適な実施例に基づいて本発明を説明したにもかかわらず、本発明は、それらの実施例に限定されるものではなく、多様に変更可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 導体路ユニット
2 支持体
4 接地導体
10 (内側の)信号導体
11 (外側の)信号導体
20 変向領域
21 直線区間
21’ 第2の直線区間
22 狭窄領域
22’ 第2の狭窄領域
23 移行領域
23’ 第2の移行領域
24 分岐線路
25 扇形部材
30 中心線
diff 信号導体間の差動電圧
内側の信号導体と接地導体との間の電圧
外側の信号導体と接地導体との間の電圧
d 内側の信号導体と外側の信号導体との間の距離
内側の信号導体と外側の信号導体との間の縮小された距離
D 接地導体と信号導体との間の距離
W 信号導体の幅
信号導体の縮小された幅
内側の信号導体の曲率半径
外側の信号導体の曲率半径
P 曲率半径の差
分岐線路の長さ
100 台座
102 開口
104 固定材料
106 ピン
108 ろう接箇所
110 架台
120 接地面
122 スルーコンタクト
130 電子構成素子のコンタクト箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号用の導体路ユニット(1)であって、前記導体路ユニット(1)は、支持体(2)と、接地導体(4)と、前記支持体(2)において前記接地導体(4)とは反対の側に配置された層状の信号導体(10,11)の対と、を含んでおり、対を成す2つの前記信号導体(10,11)間に所定の距離dが存在しており、前記信号導体(10,11)の対は、前記信号導体(10,11)の対の方向が転換する変向領域(20)を有している、高周波信号用の導体路ユニット(1)において、
前記変向領域(20)内で対を成す前記信号導体(10,11)間に、前記変向領域(20)外の前記信号導体(10,11)同士の距離dに比べて減少させられた、縮小された距離dが存在しており、前記信号導体(10,11)の直線区間(21)から前記変向領域(20)に移行する移行領域(23)における前記信号導体同士の距離は、各直線区間における2つの前記信号導体(10,11)間の中心線(30)の延長線に対して対称に縮小されており、かつ/または、方向転換に関して内側の前記信号導体(10)に、開放式の分岐線路(24)の配置により容量が導入されており、前記容量は、前記変向領域(20)内で前記内側の信号導体(10)に電気的に接続されていることを特徴とする、
高周波信号用の導体路ユニット(1)。
【請求項2】
前記縮小された距離dおよび/または前記分岐線路(24)の配置および/または形状は、前記信号導体(10,11)により案内される信号に関して、前記信号導体(10,11)の前記方向転換に起因する2つの前記信号導体(10,11)間の位相差が最小化されるように選択されている、
請求項1記載の導体路ユニット(1)。
【請求項3】
前記変向領域内の2つの前記信号導体(10,11)間の前記距離dの、前記縮小された距離dへの減少は、連続的であり、段部を有していない、
請求項1記載の導体路ユニット(1)。
【請求項4】
前記変向領域(20)内の前記信号導体(10,11)は、最大でも-10dBの、コモンモード波とノーマルモード波との間の結合係数を有している、
請求項1記載の導体路ユニット(1)。
【請求項5】
前記接地導体(4)は、別の導電層として形成されており、前記別の導電層と前記信号導体(10,11)の導電層との間の層距離(D)は、0.025mm~0.65mmの範囲内、または、0.05mm~0.4mmの範囲内である、
請求項1記載の導体路ユニット(1)。
【請求項6】
前記信号導体(10,11)の対は、前記支持体(2)の第1の側に配置されており、前記接地導体(4)は、別の導電層の形態で、前記支持体(2)の第2の側に形成されている、
請求項1記載の導体路ユニット(1)。
【請求項7】
前記変向領域(20)内の2つの前記信号導体(10,11)間の前記縮小された距離d:前記変向領域(20)外の前記距離dの比d/dは、0.1~0.95の範囲内、または、0.4~0.8の範囲内である、
請求項1記載の導体路ユニット(1)。
【請求項8】
前記変向領域内の前記信号導体(10,11)の縮小された幅W:前記変向領域外の幅Wの比W/Wは、0.1~0.93の範囲内、または、0.4~0.8の範囲内である、
請求項1記載の導体路ユニット(1)。
【請求項9】
2つの前記信号導体(10,11)の前記幅Wの縮小は、前記変向領域(20)外に位置する狭窄領域(22)内で行われる、
請求項8記載の導体路ユニット(1)。
【請求項10】
前記分岐線路(24)の長さは、前記導体路ユニット(1)が設計されている最高周波数の波長の4分の1よりも短く選択される、
請求項1記載の導体路ユニット(1)。
【請求項11】
前記分岐線路(24)は、扇形部材(25)の形態の導電面を有している、
請求項1記載の導体路ユニット(1)。
【請求項12】
以下の特徴、すなわち:
-前記導体路ユニット(1)は、サブマウント上に配置されている、
-前記支持体(2)は、窒化アルミニウム-セラミック、窒化アルミニウムを含むセラミック、酸化アルミニウム(Al)、ガラス、またはガラスおよびセラミックを含む、
-前記信号導体(10,11)の前記幅W:前記接地導体(4)と前記信号導体(10,11)との間の距離Dの比W/Dは、0.05~3の範囲内、または、0.1~2の範囲内である、
-前記変向領域(20)外の2つの前記信号導体(10,11)間の前記距離d:前記接地導体(4)と前記信号導体(10,11)との間の前記距離Dの比d/Dは、0.05~3の範囲内、または、0.1~1.5の範囲内である、
-前記導体路ユニット(1)は、遮断周波数、特に比較的高次の波を発生させるための遮断周波数が60GHzを上回るように、または、70GHzを上回るように形成されている、
のうちの少なくとも1つを備える、
請求項1記載の導体路ユニット(1)。
【請求項13】
以下の特徴、すなわち:
-前記信号導体(10,11)のうちの少なくとも1つは、前記変向領域(20)内に、2つ以上の湾曲区間を備えた少なくとも1つの縁部を有しており、少なくとも2つの前記湾曲区間の曲率半径は、それぞれ異なって選択されている、
-前記信号導体(10,11)のうちの少なくとも1つは、前記変向領域(20)内に、少なくとも1つの直線区間を備えた縁部を有している、
のうちの少なくとも1つを備える、
請求項1記載の導体路ユニット(1)。
【請求項14】
電子構成素子と、請求項1から13までのいずれか1項記載の導体路ユニット(1)と、を備えた電子コンポーネント用の台座(100)であって、
前記台座(100)は、電気的なフィードスルーを有しており、前記電子構成素子と前記電気的なフィードスルーとは、両方共、前記導体路ユニット(1)の前記信号導体(10,11)に接続されており、これにより電気信号が、前記フィードスルーから前記信号導体(10,11)を介して前記電子構成素子へ案内されるようになっている、
電子コンポーネント用の台座(100)。
【請求項15】
電子構成素子と、請求項1から13までのいずれか1項記載の導体路ユニット(1)と、が封入されたハウジングを備えたデバイスの形態の電子コンポーネント。
【外国語明細書】