(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004905
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】車両のホイールアライメント調整システム及び調整方法
(51)【国際特許分類】
B62D 17/00 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
B62D17/00 A
B62D17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090831
(22)【出願日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】10-2021-0083086
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジェ ミン
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203BC44
3D203BC46
3D203CB34
(57)【要約】
【課題】車両のホイールアライメント調整システムを提供する。
【解決手段】本発明の車両のホイールアライメント調整システムは、ロボットを介して移動するベースと、ベースに移動可能に設けられ、アクチュエータを介して移動する調整アームと、調整アームの上端部に設けられ、ボルトヘッド又はナットを固定する固定部と、ロボットを制御してベースが車両サスペンションのトー調整部又はキャンバー調整部に進入するようにし、アクチュエータを制御して調整アームの固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整する制御部と、を含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを介して移動するベースと、
ベースに移動可能に設けられ、アクチュエータを介して移動する調整アームと、
調整アームの上端部に設けられ、ボルトヘッド又はナットを固定する固定部と、
ロボットを制御してベースが車両サスペンションのトー調整部又はキャンバー調整部に進入するようにし、アクチュエータを制御して調整アームの固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整する制御部と、を含むことを特徴とする車両のホイールアライメント調整システム。
【請求項2】
制御部は、車両のホイールアライメントの初期値を計算し、計算された初期値に基づいて、ホイールアライメントの調整が必要な車両であるかを分類して、ホイールアライメントの調整が必要な車両に対して固定部が車両のホイールアライメントを調整することを特徴とする、請求項1に記載の車両のホイールアライメント調整システム。
【請求項3】
制御部で調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であるかを判断する判断部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の車両のホイールアライメント調整システム。
【請求項4】
制御部は、調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であると判断部で判断した場合、車両のホイールアライメントの調整を完了し、調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内ではないと判断した場合、車両のホイールアライメントを繰り返し調整することを特徴とする請求項3に記載の車両のホイールアライメント調整システム。
【請求項5】
ベースは、ベース上部とベース下部から構成され、ロボットは、空気圧シリンダを介してベース上部に連結され、制御部は、ロボットを制御してベース上部をベース下部を基準にチルト(tilting)して、ベースが車両サスペンションのトー調整部又はキャンバー調整部へ進入するようにすることを特徴とする請求項1に記載の車両のホイールアライメント調整システム。
【請求項6】
調整アームは、ベースの両側に設けられた第1アーム及び第2アームから構成され、固定部は、ボルトヘッド固定部とナット固定部から構成され、ボルトヘッド固定部とナット固定部は、第1アームと第2アームにそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1に記載の車両のホイールアライメント調整システム。
【請求項7】
固定部は、ボルトヘッド固定部とナット固定部から構成され、調整アームの上端部の両側にそれぞれ設けられ、調整アームの回転に応じてボルトヘッド固定部又はナット固定部が車両のサスペンションを向くことを特徴とする請求項1に記載の車両のホイールアライメント調整システム。
【請求項8】
固定部は、一つのボディ、ボディの一方側に設けられた溝状のボルトヘッド固定部、及びボディの他方側に設けられた溝状のナット固定部から構成されたことを特徴とする請求項7に記載の車両のホイールアライメント調整システム。
【請求項9】
請求項6に記載の車両のホイールアライメント調整システムを用いたホイールアライメント調整方法であって、
ベースの両側に離隔するように設けられた第1アーム及び第2アームの相互間の距離がアクチュエータを介して調整されるステップと、
制御部でロボットを制御してベースが車両サスペンションのトー調整部又はキャンバー調整部に進入するステップと、
制御部でアクチュエータを制御して、ボルトヘッド固定部とナット固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにするにより、車両のホイールアライメントを調整するステップと、を含むことを特徴とする車両のホイールアライメント調整方法。
【請求項10】
車両のホイールアライメントを調整するステップでは、車両のホイールアライメントの初期値を計算し、計算された初期値に基づいて、ホイールアライメント調整が必要な車両であるかを分類して、ホイールアライメント調整が必要な車両に対してボルトヘッド固定部とナット固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整することを特徴とする請求項9に記載の車両のホイールアライメント調整方法。
【請求項11】
制御部でアクチュエータを制御してボルトヘッド固定部とナット固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整するステップの後には、
調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であるか否かを判断部で判断するステップをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の車両のホイールアライメント調整方法。
【請求項12】
請求項7に記載の車両のホイールアライメント調整システムを用いたホイールアライメント調整方法であって、
調整アームがアクチュエータを介して調整されるステップと、
制御部でロボットを制御してベースが車両サスペンションのトー調整部又はキャンバー調整部に進入するステップと、
制御部でアクチュエータを制御してボルトヘッド固定部とナット固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整するステップとを、含むことを特徴とする車両のホイールアライメント調整方法。
【請求項13】
車両のホイールアライメントを調整するステップでは、車両のホイールアライメントの初期値を計算し、計算された初期値に基づいて、ホイールアライメント調整が必要な車両であるかを分類して、ホイールアライメント調整が必要な車両に対してボルトヘッド固定部とナット固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整することを特徴とする請求項12に記載の車両のホイールアライメント調整方法。
【請求項14】
制御部でアクチュエータを制御して、ボルトヘッド固定部とナット固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整するステップの後には、
調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であるか否かを判断部で判断するステップをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の車両のホイールアライメント調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のホイールアライメント調整システム及び調整方法に係り、より詳細には、簡単な調整ツール構造を用いて車両のホイールアライメントの調整を自動化するための車両のホイールアライメント調整システム及び調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車生産工場には、車両のホイールアライメント調整を自動化するために多くの技術開発が行われており、トー及びキャンバーを調整して車両のホイールアライメント調整を自動化することは困難な状況が存在する。
【0003】
従来、ホイールアライメントを調整する調整ツールの重量が非常に重いため、可搬荷重の大きいロボットを使用しなければならず、既存のピットを適用することができないという問題があった。また、調整ツールとロボットが非常に大きくて重いため、車両のホイールアライメント測定設備は狭い空間に設置することが難しく、狭い空間に配置された場合にはメンテナンス時間が長くなって生産性が低下した。また、複雑な調整ツールの構造により固定ツール自体の故障が発生する確率が高く、ホイールアライメントを調整する時間も長くかかるという問題がある。
【0004】
このような従来のホイールアライメント調整システムは、構造が複雑であってメンテナンスが困難であるという問題がある。
【0005】
上記の背景技術として説明された事項は、本発明の背景技術に対する理解を増進するためのものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者に既に知られている従来技術に該当すると認めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2015-0071631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、簡単な調整ツール構造を用いて車両のホイールアライメントの調整を自動化してメンテナンスが非常に容易であり、ホイールアライメント測定設備の下にいつでも設置が可能であるため、工事、製作及びメンテナンスのコスト削減を可能にする、車両のホイールアライメント調整システム及び調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための手段として、本発明の車両のホイールアライメント調整システムは、ロボットを介して移動するベースと、ベースに移動可能に設けられ、アクチュエータを介して移動する調整アームと、調整アームの上端部に設けられ、ボルトヘッド又はナットを固定する固定部と、ロボットを制御してベースが車両サスペンションのトー調整部又はキャンバー調整部に進入するようにし、アクチュエータを制御して調整アームの固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整する制御部と、を含む、ことを特徴とする。
【0009】
制御部は、車両のホイールアライメントの初期値を計算し、計算された初期値に基づいて、ホイールアライメント調整が必要な車両であるかを分類して、ホイールアライメント調整が必要な車両に対して固定部が車両のホイールアライメントを調整することができる。
【0010】
制御部で調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であるかを判断する判断部をさらに含むことができる。
【0011】
制御部は、判断部で調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であると判断した場合、車両のホイールアライメントの調整を完了し、調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内ではないと判断した場合、車両のホイールアライメントを繰り返し調整することができる。
【0012】
ベースは、ベース上部とベース下部から構成され、ロボットは、空気圧シリンダを介してベース上部に連結され、制御部は、ロボットを制御してベース上部をベース下部を基準にチルト(tilting)して、ベースが車両サスペンションのトー調整部又はキャンバー調整部に進入することができる。
【0013】
調整アームは、ベースの両側に設けられた第1アーム及び第2アームから構成され、固定部は、ボルトヘッド固定部とナット固定部から構成され、ボルトヘッド固定部及びナット固定部は、第1アームと第2アームにそれぞれ設けられることができる。
【0014】
固定部は、ボルトヘッド固定部とナット固定部から構成され、調整アームの上端部の両側にそれぞれ設けられ、調整アームの回転に応じてボルトヘッド固定部又はナット固定部が車両のサスペンションを向くことを特徴とすることができる。
【0015】
固定部は、一つのボディ、ボディの一方側に設けられた溝状のボルトヘッド固定部、及びボディの他方側に設けられた溝状のナット固定部から構成できる。
【0016】
上記の目的を達成するための方法として、本発明の車両のホイールアライメント調整方法は、調整アームは、ベースの両側に設けられた第1アーム及び第2アームから構成され、固定部は、ボルトヘッド固定部とナット固定部から構成され、ボルトヘッド固定部とナット固定部は、第1アームと第2アームにそれぞれ設けられた車両のホイールアライメント調整システムを用いたホイールアライメント調整方法であって、ベースの両側に離隔するように設けられた第1アーム及び第2アームの相互間の距離がアクチュエータを介して調整されるステップと、制御部でロボットを制御して、ベースが車両サスペンションのトー調整部又はキャンバー調整部に進入するステップと、制御部でアクチュエータを制御してボルトヘッド固定部とナット固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにするにより、車両のホイールアライメントを調整するステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
車両のホイールアライメントを調整するステップでは、車両のホイールアライメントの初期値を計算し、計算された初期値に基づいて、ホイールアライメント調整が必要な車両であるかを分類して、ホイールアライメント調整が必要な車両に対してボルトヘッド固定部とナット固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整することを特徴とすることができる。
【0018】
制御部でアクチュエータを制御してボルトヘッド固定部とナット固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整するステップの後には、調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であるかを判断部で判断するステップをさらに含むことができる。
【0019】
本発明のホイールアライメント調整方法は、固定部が、ボルトヘッド固定部とナット固定部から構成され、調整アームの上端部の両側にそれぞれ設けられ、調整アームの回転に応じてボルトヘッド固定部又はナット固定部が車両のサスペンションを向く車両のホイールアライメント調整システムを用いたホイールアライメント調整方法であって、調整アームがアクチュエータを介して調整されるステップと、制御部でロボットを制御してベースが車両サスペンションのトー調整部又はキャンバー調整部に進入するステップと、制御部でアクチュエータを制御してボルトヘッド固定部とナット固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整するステップと、を含むことを特徴とする。
【0020】
車両のホイールアライメントを調整するステップでは、車両のホイールアライメントの初期値を計算し、計算された初期値に基づいて、ホイールアライメント調整が必要な車両であるかを分類して、ホイールアライメント調整が必要な車両に対してボルトヘッド固定部とナット固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整することができる。
【0021】
制御部でアクチュエータを制御してボルトヘッド固定部とナット固定部がトー調整部又はキャンバー調整部のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整するステップの後には、調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であるかを判断部で判断するステップをさらに含むことができる。
【0022】
以上、本発明の特定の実施形態に関連して図示及び説明したが、以下の特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想から逸脱することなく、本発明に多様な改良及び変更を加え得るのは、当該技術分野における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、簡単な調整ツール構造を用いて車両のホイールアライメントの調整を自動化してメンテナンスが非常に容易であり、ホイールアライメント測定設備の下にいつでも設置が可能であるので、工事、製作及びメンテナンスのコスト削減を可能にする、車両のホイールアライメントを調整することができる。
本発明で得られる効果は、上述した効果に制限されず、上述していない別の効果は、以降の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態による車両のホイールアライメント調整システムを示す図である。
【
図2】それぞれ車両のホイールアライメントを調整するための調整アームの2つのツール及び1つのツールを示す図である。
【
図3】車両のホイールアライメントを調整するためのトー及びキャンバーを示す図である。
【
図4】車両のホイールアライメント調整方法が運用されるフローチャートである。
【
図5】車両のホイールアライメント調整方法で調整プログラムが運用されるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、様々な実施形態による車両のホイールアライメント調整システム及び測定方法をさらに詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の一実施形態による車両のホイールアライメント調整システムを示す図である。
図2はそれぞれ車両のホイールアライメントを調整するための調整アームの2つのツール及び1つのツールを示す図である。
図3は車両のホイールアライメントを調整するためのトー及びキャンバーを示す図である。
図4は車両のホイールアライメント調整方法が運用されるフローチャートである。
図5は車両のホイールアライメント調整方法で調整プログラムが運用されるフローチャートである。
【0027】
図1は本発明の一実施形態による車両のホイールアライメント調整システムを示す図である。
図1に示すように、ロボットを介して移動するベースAと、ベースAに移動可能に設けられ、アクチュエータDを介して移動する調整アームBと、調整アームBの上端部に設けられ、ボルトヘッド又はナットを固定する固定部Cと、ロボットを制御してベースAが車両サスペンションのトー調整部100又はキャンバー調整部200に進入するようにし、アクチュエータDを制御して調整アームBの固定部Cがトー調整部100又はキャンバー調整部200のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整する制御部Eと、を含む、車両のホイールアライメント調整システムを構成する。
【0028】
本発明は、簡単な調整ツール構造を用いて車両のホイールアライメントの調整を自動化してメンテナンスが非常に容易であり、ホイールアライメント測定設備の下にいつでも設置が可能であって工事、製作及びメンテナンスのコスト削減を図ることに特徴がある。このためには、車両のホイールアライメントの調整を自動化することができるようにシステムを構成してロボットを制御し、ベースAが車両サスペンションのトー調整部100又はキャンバー調整部200に進入するようにし、アクチュエータDを制御して調整アームBの固定部Cがトー調整部100又はキャンバー調整部200のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整するようにしなければならない。
【0029】
車両のホイールアライメント調整は、車両のホイールの位置、方向及び相互バランスなどを正しく維持するアライメントを行う作業を意味し、一般に、ホイールアライメント調整は、トー、キャスター及びキャンバーを調整することにより行われる。通常、整備所で調整する代表的なアライメントは、トーとキャンバーの調整である。車両のタイヤとサスペンションは、人に例えると、「足」と「足首」に相当する部分である。人の足は、道路の傾きに応じて足首が微細に動いて人の「足裏」が水平となるようにしてバランスをとり、地面との最適な摩擦によって前方に進む。人が歩くときに内股に歩く人も在り、歩くときに外股に歩く人も在るだろう。このような原理は車両においても同様に現れるが、人の「足裏」はキャンバーに対応し、人の「足取り」はトーと対応する。キャンバーを正しく調整すると、運転方向、精度及び安定性を向上させるが、キャンバー角を誤って調整すると、タイヤの摩耗及びステアリングの問題を引き起こすおそれがある。また、車両のステアリング側で最も重要なのはトーであり、トーは車両の直進時の安定性とコーナー進入時に影響を与える。つまり、車両のホイールアライメントを調整して車両の安定性及び精度の向上を図り、最終的に運転者の安全を担保する必要があるのである。
【0030】
しかし、従来、ホイールアライメントを調整する調整ツールの重量が非常に重いため、可搬荷重の大きいロボットを使用しなければならず、既存のピットを適用することができないという問題があった。また、調整ツールとロボットが非常に大きくて重いため、車両のホイールアライメント測定設備は狭い空間に設置することが難しく、狭い空間に配置された場合にはメンテナンス時間が長くなって生産性が低下した。また、複雑な調整ツールの構造により固定ツール自体の故障が発生する確率が高く、ホイールアライメントを調整する時間も長くかかるという問題がある。このような従来のホイールアライメント調整システムは、構造が複雑であってメンテナンスが困難であるという問題がある。
【0031】
したがって、本発明は、簡単な調整ツール構造を用いて車両のホイールアライメントの調整を自動化してメンテナンスが非常に容易であり、ホイールアライメント測定設備の下にいつでも設置が可能であって工事、製作及びメンテナンスのコスト削減を可能にする、車両のホイールアライメントを調整することができる。
【0032】
具体的には、ベースAは、ロボットを介して移動し、車両のホイールアライメント調整が行われる箇所であって、調整アームB、及び調整アームBの上端部に設けられた固定部Cが配置される。ベース上部Hの側面にはレーザー距離センサーFが配置されて車高の測定が可能である。測定された車高に応じて、車種別に距離範囲を外れるとアラームを発して、車両と自動調整ツールの衝突を防止することができる。調整アームBは、ベースAに移動可能に設けられ、アクチュエータDを介して移動する。アクチュエータDは、ベース上部Hの側面に配置され、流体エネルギーを用いて調整アームBを移動させることができる。また、調整部Lは、リニアモータ上で線形移動ができるようにアクチュエータDと連結される。このとき、ホイールアライメント調整システムにおけるホイールアライメント調整時に車両との干渉を避けるために、アクチュエータDは持続的に移動し、トー調整作業及びキャンバー調整作業が行われる。
【0033】
固定部Cは、調整アームBの上端部に設けられてボルトヘッド又はナットを固定する。固定部Cは、2つのツールからなる車両のホイールアライメント調整システムでは第1アームg1と第2アームg2がボルトヘッド固定部Cとナット固定部Cを構成し、1つのツールからなる車両のホイールアライメント調整システムではナットランナgが固定部Cのボルトヘッド固定部Cとナット固定部Cの役割を担当する。また、1つのツールからなる車両のホイールアライメント調整システムは、通常、ボルトの末端に六角部が適用されたボルトとナットタイプのツールであり、中空ロータリーサーボモータMを用いてナットランナgを180度回転させながら作業を行うことができる。このとき、車両が進入すると、ナットの締結方向に移動して六角部ソケットを挿入してトー又はキャンバー調整を行い、調整ツールをボルトから除去する。その後、ナットランナgを180度回転させてナット締結ソケットをナットに挿入した後、ナットを締結し、ロボット溝に復帰する。
【0034】
制御部Eは、ロボットを制御してベースAが車両サスペンションのトー調整部100又はキャンバー調整部200に進入するようにし、アクチュエータDを制御して調整アームBの固定部Cがトー調整部100又はキャンバー調整部200のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整することができる。制御部Eは、車両の内部又は外部でアクチュエータDを制御して調整アームBの固定部Cがトー調整部100又はキャンバー調整部200のボルト及びナットを操作するようにすることができる。このとき、ベース上部Hは、ベース下部Jを基準にチルトしてベースAが車両サスペンションのトー調整部100又はキャンバー調整部200に進入することができる。
【0035】
図3は車両のホイールアライメントを調整するためのトー及びキャンバーを示す図である。
【0036】
図3に示すとおり、制御部Eは、車両のホイールアライメントの初期値を計算し、計算された初期値に基づいて、ホイールアライメント調整が必要な車両であるかを分類して、ホイールアライメント調整が必要な車両に対して固定部Cが車両のホイールアライメントを調整することを特徴とする。
【0037】
車両のホイールは、ホイールナックル300を介して車両に固定され、ホイールナックル300、トー調整部100及びキャンバー調整部200は、アッパーアーム400、コントロールアーム500、ローアーム600を介して相互連結される。トー調整部100を介してトー値を調整する際に、キャンバー調整部200と相互連結されているのでキャンバー値が変わり、これと同様に、キャンバー調整部200を介してキャンバー値を調整する際に、トー調整部100と相互連結されているのでトー値が変わる。このとき、制御部Eで計算された車両のホイールアライメントの初期値によって、トー調整が必要な車両であるか、キャンバー調整が必要な車両であるか、又はキャンバーとトー調整が一緒に必要な車両であるか、すなわちトー調整のみが必要な車両であるか、キャンバー調整のみが必要な車両であるか、キャンバーとトー調整の両方が必要な車両であるかを分類して、固定部Cで車両のホイールアライメントの調整が可能である。
【0038】
制御部Eで調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であるかを判断する判断部をさらに含むことができる。
【0039】
制御部Eは、アクチュエータDを制御して調整アームBの固定部Cがトー調整部100又はキャンバー調整部200のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整し、判断部で調整された車両のトー値及びキャンバー値を確認することができる。車両のホイールアライメント調整システムを介して、トー調整のみが必要な車両、キャンバー調整のみが必要な車両、キャンバーとトー調整の両方が必要な車両であるかを分類して、固定部Cで車両のホイールアライメントの調整が行われた後にも、調整された車両のホイールトー値、キャンバー値が、車両のホイールアライメント調整システムで設定したトー値及びキャンバー値の正常範囲以内であるかを判断して、調整を完了するか、再びホイールアライメントの調整が必要であるかを判断する。
制御部Eは、調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であると判断部で判断した場合、車両のホイールアライメントの調整を完了し、調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内ではないと判断した場合、車両のホイールアライメントを繰り返し調整することを特徴とする。
【0040】
調整された車両のトー値及びキャンバー値を確認して正常範囲以内であると判断部で判断されると、ホイールアライメント調整が完了するが、正常範囲以内ではないと判断した場合には、ホイールアライメント調整過程が再び行われる。車両のホイールアライメント調整システムの判断部で車両のトー値及びキャンバー値を確認して正常範囲以内であると判断されると、再びホイールのトー及びキャンバーを調整する必要なしに調整プログラムは終えることができる。しかし、車両のホイールアライメント調整システムの判断部で車両のトー値及びキャンバー値を確認して正常範囲以内ではないと判断した場合、すなわちホイールアライメントを調整せずに走行し続けるときに車両の安定性及び精度を図ることができないと判断する場合には、再びホイールのトー及びキャンバーを調整する必要があると判断して、調整プログラムが再び実行される作業が行われる。
【0041】
ベースAは、ベース上部Hとベース下部Jから構成され、ロボットは、空気圧シリンダKを介してベース上部Hに連結され、制御部Eは、ロボットを制御してベース上部Hをベース下部Jを基準にチルトして、ベースAが車両サスペンションのトー調整部100又はキャンバー調整部200に進入するようにすることを特徴とすることができる。制御部Eは、ロボットを制御してベースAが車両サスペンションのトー調整部100又はキャンバー調整部200に進入するようにし、アクチュエータDを制御して調整アームBの固定部Cがトー調整部100又はキャンバー調整部200のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整することができる。制御部Eは、車両の内部又は外部でアクチュエータDを制御して調整アームBの固定部Cがトー調整部100又はキャンバー調整部200のボルト及びナットを操作するようにすることができる。このとき、ベースA上部Hは、ベース下部Jを基準にチルトしてベースAが車両サスペンションのトー調整部100又はキャンバー調整部200に進入することができる。ベースA上部Hは、ベース下部Jを基準にチルトすることにより、車両のホイールアライメントを調整する際にベースAは上下左右に車両サスペンションのトー調整部100又はキャンバー調整部200に進入することができる。
【0042】
図2はそれぞれ車両のホイールアライメントを調整するための調整アームBの2つのツール及び1つのツールを示す図である。
【0043】
図2に示すとおり、調整アームBは、ベースAの両側に設けられた第1アームg1及び第2アームg2で構成され、固定部Cは、ボルトヘッド固定部Cとナット固定部Cで構成され、ボルトヘッド固定部Cとナット固定部Cは、第1アームg1と第2アームg2にそれぞれ設けられることができる。
【0044】
第1アームg1と第2アームg2は、ナットランナgとも呼ばれる調整アームBの上端部に設けられてボルトヘッド又はナットを固定する固定部Cである。固定部Cは、2つのツールからなる車両のホイールアライメント調整システムでは第1アームg1と第2アームg2がボルトヘッド固定部Cとナット固定部Cを構成し、1つのツールからなる車両のホイールアライメント調整システムではナットランナgが固定部Cのボルトヘッド固定部Cとナット固定部Cの役割を担当する。
【0045】
固定部Cは、ボルトヘッド固定部Cとナット固定部Cから構成され、調整アームBの上端部の両側にそれぞれ設けられ、調整アームBの回転に応じてボルトヘッド固定部C又はナット固定部Cが車両のサスペンションを向くことを特徴とする。
【0046】
一つのツールからなる車両のホイールアライメント調整システムは、通常、ボルトの末端に六角部が適用されたボルトとナットタイプのツールであり、中空ロータリーサーボモータMを用いてナットランナgを180度回転させながら作業を行うことができる。このとき、車両が進入すると、ナットの締結方向に移動して六角部ソケットを挿入してトー又はキャンバー調整を行い、調整ツールをボルトから除去する。その後、ナットランナgを180度回転させてナット締結ソケットをナットに挿入した後、ナットを締結し、ロボット溝に復帰する。調整アームBの回転に応じてボルトヘッド固定部C又はナット固定部Cが車両のサスペンションを向くので、ナットランナの回転に応じて、車両のホイールアライメント調整システムが1つのツールからなる場合にもホイールアライメントの調整が可能である。
【0047】
固定部Cは、1つのボディ、ボディの一方側に設けられた溝状のボルトヘッド固定部C、及びボディの他方側に設けられた溝状のナット固定部Cから構成できる。
1つのツールからなる車両のホイールアライメント調整システムにおいて、固定部Cの形状が問題となる。このとき、ナットランナgを180度回転させてナット締結ソケットをナットに挿入した後、ナットを締結し、ロボット溝に復帰するので、ナットランナgが180度回転してホイールアライメントを調整することができなければならない。したがって、固定部Cは、1つのボディ、ボディの一方側に設けられた溝状のボルトヘッド固定部C、及びボディの他方側に設けられた溝状のナット固定部Cから構成されれば、ナットランナが180度回転してホイールアライメントを調整することができる。
【0048】
図4は車両のホイールアライメント調整方法が運用されるフローチャートである。
【0049】
図5は車両のホイールアライメント調整方法で調整プログラムが運用されるフローチャートである。
【0050】
図4及び
図5に示すとおり、調整アームが、ベースの両側に設けられた第1アーム及び第2アームから構成され、固定部が、ボルトヘッド固定部とナット固定部から構成され、ボルトヘッド固定部とナット固定部が、第1アームと第2アームにそれぞれ設けられた車両のホイールアライメント調整システムを用いたホイールアライメント調整方法として、ベースAの両側に離隔するように設けられた第1アームg1及び第2アームg2の相互間の距離がアクチュエータDを介して調整されるステップ(S20)と、制御部Eでロボットを制御してベースAが車両サスペンションのトー調整部100又はキャンバー調整部200に進入するステップ(S30、S40、S50、S70)と、制御部EでアクチュエータDを制御してボルトヘッド固定部Cとナット固定部Cがトー調整部100又はキャンバー調整部200のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整するステップ(S63)と、を含む、車両のホイールアライメント調整方法を構成する。
【0051】
車両のホイールアライメントを調整するステップ(S60、S63)では、車両のホイールアライメントの初期値を計算(S61)し、計算された初期値に基づいて、ホイールアライメント調整が必要な車両であるかを分類(S62)して、ホイールアライメントの調整が必要な車両に対してボルトヘッド固定部Cとナット固定部Cがトー調整部100又はキャンバー調整部200のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整(S63)することを特徴とする。
【0052】
制御部EでアクチュエータDを制御してボルトヘッド固定部Cとナット固定部Cがトー調整部100又はキャンバー調整部200のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整するステップ(S63)の後には、調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であるかを判断部で判断するステップ(S80)をさらに含むことができる。
【0053】
固定部が、ボルトヘッド固定部とナット固定部から構成され、調整アームの上端部の両側にそれぞれ設けられ、調整アームの回転に応じてボルトヘッド固定部又はナット固定部が車両のサスペンションを向く車両のホイールアライメント調整システムを用いたホイールアライメント調整方法として、調整アームBがアクチュエータDを介して調整されるステップと、制御部Eでロボットを制御してベースAが車両サスペンションのトー調整部100又はキャンバー調整部200に進入するステップ(S30)と、制御部EでアクチュエータDを制御してボルトヘッド固定部Cとナット固定部Cがトー調整部100又はキャンバー調整部200のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整するステップ(S60、S63)と、を含む、車両のホイールアライメント調整方法を構成する。
【0054】
車両のホイールアライメントを調整するステップ(S60、S63)では、車両のホイールアライメントの初期値を計算(S61)し、計算された初期値に基づいて、ホイールアライメント調整が必要な車両であるかを分類(S62)して、ホイールアライメント調整が必要な車両に対してボルトヘッド固定部Cとナット固定部Cがトー調整部100又はキャンバー調整部200のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整(S63)することを特徴とする。
【0055】
制御部EでアクチュエータDを制御してボルトヘッド固定部Cとナット固定部Cがトー調整部100又はキャンバー調整部200のボルト及びナットを操作するようにすることにより、車両のホイールアライメントを調整するステップ(S63)の後には、調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であるか否かを判断部で判断するステップ(S80)をさらに含むことができる。
【0056】
判断部で調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であるか否かを判断するステップ(S80)の後には、調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内でないと判断した場合、車両のホイールアライメントを繰り返し調整するステップ(S63)をさらに含むことができる。
【0057】
調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であるか否かを判断部で判断するステップ(S80)の後には、調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であると判断した場合、車両のホイールアライメントの調整を完了するステップ(S64)をさらに含むことができる。
【0058】
判断部で調整された車両のホイールアライメントが正常範囲以内であるか否かを判断するステップ(S80)の後には、車両のホイールアライメント調整ロボットが初期位置に移動するステップ(S10)をさらに含むことができる。
【0059】
以上、本発明の特定の実施形態に関連して図示し説明したが、以下の特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想から逸脱することなく、本発明に多様な改良及び変更を加え得るのは、当該技術分野における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【符号の説明】
【0060】
A ベース
B 調整アーム
C 固定部
D、I アクチュエータ
E 制御部
F レーザー距離センサー
g、g1、g2 ボルトヘッド固定部及びナット固定部(ナットランナ)
H ベース上部
J ベース下部
K 空気圧シリンダ
L 調整部
M 中空ロータリーサーボモータ
100 トー調整部
200 キャンバー調整部
300 ホイールナックル
400 アッパーアーム
500 コントロールアーム
600 ローアーム